説明

局部洗浄装置

【課題】 超音波振動によって洗浄ノズルの汚れを分解して取り除くことができ、ノズル掃除の手間が省けると共に洗浄ノズルを常に清潔に保つことができ、しかも、トイレの床などを汚水で汚すこともない局部洗浄装置を提供すること。
【解決手段】 局部洗浄時以外の時に少なくとも洗浄ノズル1の先端部分を漬けるための洗浄液3が溜められる洗浄ケース2と、洗浄ノズル1が浸けられた洗浄液3を超音波振動させることで、発生する微細な気泡によって洗浄ノズル1を洗浄する超音波振動子4とを備えた局部洗浄装置8である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局部洗浄装置に関し、詳しくは洗浄ノズル自体の汚れを洗い落すための技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、既設の洋式便器に便座装置を取り付け、用便後に人体の局部(被洗浄部)に温水を噴射して洗浄するための洗浄ノズルを備えた局部洗浄装置が普及しつつある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、特許文献1に示される洗浄ノズルで洗浄している間も便意をもよおすことがあり、洗浄ノズルが排泄物で汚れてしまった場合、汚れたままで洗浄ノズルが後退して小さな枠内に収納されてしまい、このため、ノズル掃除がしずらいという問題が生じる。また、洗浄ノズルを引き出すための手がかりとなる取手を設けたり、電動式で洗浄ノズルが出てくるようにした場合でも、ノズル掃除に手間がかかり、手を汚してしまうだけでなく、特に汚れのひどい箇所や微細な隙間に入った汚れは布やブラシ、水などでは十分には落ちないといった問題やトイレの床などを汚水で汚すといった問題がある。
【0004】
なお従来では、収納位置まで後退した洗浄ノズルからノズル洗浄水を吐出させて洗浄ノズルの表面の汚れを洗い落すようにしているが、実際にはしつこい汚れはほとんど落ちないという問題があった。
【特許文献1】特開平2000−213039号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、超音波振動によって洗浄ノズルの汚れを分解して取り除くことができ、ノズル掃除の手間が省けると共に洗浄ノズルを常に清潔に保つことができ、しかもトイレの床などを汚水で汚すこともない局部洗浄装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明にあっては、洗浄ノズル1から人体の局部に向かって局部洗浄水Wを噴射させる局部洗浄装置において、局部洗浄時以外の時に少なくとも洗浄ノズル1の先端部分を漬けるための洗浄液3が溜められる洗浄ケース2と、前記洗浄ノズル1が浸けられた洗浄液3を超音波振動させることで、発生する微細な気泡5によって洗浄ノズル1を洗浄する超音波振動子4とを備えていることを特徴としている。
【0007】
このような構成とすることで、洗浄時以外の時に、少なくとも洗浄ノズル1の先端部分を洗浄ケース2の洗浄液3中に漬けて超音波振動子4を駆動することで、超音波振動によって洗浄液3中に目に見えない細かい気泡5が無数に発生し、これらの気泡5がはじける瞬間に出る衝撃波6が汚れを粉砕して、洗浄ノズル1の表面の汚れが除去され、汚れを容易に且つすっきり取り除くことができる。
【0008】
また、前記洗浄ノズル1を便器ボウル7内に向けて突出した使用位置と該使用位置よりも後退した収納位置との間で出し入れ自在とすると共に、洗浄ノズル1の収納位置に、少なくとも洗浄ノズル1の先端部分を洗浄液3に漬けることができるように洗浄ケース2を配置するのが好ましく、この場合、洗浄ノズル1の収納位置に洗浄ケース2を配置するので、洗浄ケース2が利用者からは見えず、しかも洗浄ケース2が便器ボウル7側に突出しないため、便器ボウル7の清掃の邪魔になることがなく、洗浄ケース2の納まりが良好となる。
【0009】
また、前記収納位置まで後退した洗浄ノズル1から、洗浄ノズル1の表面の汚れを洗い落すためのノズル洗浄水W1を吐出させると共に、該ノズル洗浄水W1を洗浄ケース2内に溜めるようにするのが好ましく、この場合、洗浄ノズル1を洗浄するノズル洗浄水W1を洗浄ケース2内に溜めて洗浄液3として再利用できるので、洗浄ケース2へ洗浄液3を供給するための専用の給水路や開閉弁等を別途設ける必要がなくなる。つまり洗浄ノズル1自体が洗浄ケース2内に洗浄液3を供給するための給水手段を兼ねるようになる。
【0010】
また、前記洗浄ケース2内の洗浄液3を洗浄ケース2の外部に排水するための排水手段12と、排水後の洗浄ケース内に洗浄液3を補給する給水手段とを設けるのが好ましく、この場合、洗浄ノズル1を洗浄した後の汚れた洗浄液3を洗浄ケース2の外部に排出できるので、洗浄ケース2を常に清潔に保つことができるようになる。
【0011】
また、前記洗浄ノズル1を乾燥させるためのノズル乾燥手段を備え、このノズル乾燥手段は局部に温風を供給して乾かすための局部乾燥手段を兼用しているのが好ましく、この場合、濡れている洗浄ノズル1を温風で乾かすことができ、洗浄ノズル1の雑菌の繁殖等を防止でき、洗浄ノズル1をより一層清潔に保つことができると共に、簡易な構造で且つ低コストで、局部乾燥手段を実現できるようになる。
【発明の効果】
【0012】
本発明にあっては、洗浄時以外の時に、少なくとも洗浄ノズルの先端部分を洗浄ケースの洗浄液中に漬けて、超音波振動子の超音波振動によって洗浄液中に目に見えない細かい気泡を無数に発生させて汚れを粉砕するので、手の届かないような微細な隙間の汚れや、ミクロの汚れでも確実且つ効果的に分解除去できるようになり、従来のような布やブラシ、水などでは落ちない汚れでも、容易にすっきり取り除くことができ、ノズル掃除の手間が省けると共に、洗浄ノズルを常に清潔に保つことができ、しかも、超音波振動による洗浄を洗浄ケース内部で行なうので、汚れた洗浄液が便器ボウルの外部に飛散したりすることがなく、トイレの床などを汚水で汚す心配がないものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基いて説明する。
【0014】
本実施形態の局部洗浄装置8は、図1、図2に示すように、局部に向かって局部洗浄水Wを噴射させるための洗浄ノズル1を備えている。この洗浄ノズル1として、例えば特開2000−291105号公報などにより公知となっている臀部洗浄ノズル、ビデ洗浄ノズル等の従来技術を採用することができ、詳細な説明は省略する。なお図2中の7は便器ボウル、9は便座本体、10は便蓋である。
【0015】
前記洗浄ノズル1の収納位置には、図1に示すように、洗浄ノズル1全体を覆うことができるノズルカバー13が設けられている。このノズルカバー13の内側には、可動式の洗浄ケース2が回動自在に設置されている。洗浄ケース2は上方に開口した容器状に形成され、少なくとも洗浄ノズル1の先端部分を収納できる大きさを有している。本例の可動式の洗浄ケース2は、その後端部に設けた回転軸14を中心にして上向き姿勢と横向き姿勢とに回転自在とされ、回転軸14はノズルカバー13側に保持されている。また洗浄ケース2の底部2aは側面から見て略C字状に曲成されており、図1(b)のように洗浄ケース2が横向き姿勢になったときに中の洗浄液3を残らず排水できるようにしている。
【0016】
ここで、可動式の洗浄ケース2を上向き姿勢と横向き姿勢との間で回転させる手段として、回転軸14にピニオン12aを取り付け、一方、洗浄ノズル1の先端部分の下面側に、洗浄ノズル1の移動方向に沿ってピニオン12aと噛み合うラック12bを延設している。用便後に洗浄ノズル1が図1(a)の矢印A方向に後退してくると、ラック12bがピニオン12aを時計回り方向に回転させ、これにより洗浄ケース2が回転軸14を中心に図1(b)の矢印B方向に回転して横向き姿勢から上向き姿勢へと変わり、洗浄ノズル1の先端部分が収納され、その後、給水路から一定時間、洗浄ノズル1に水が供給されて洗浄ノズル1の吐出口1aからノズル洗浄水W1(図1(b))が吐出する。このノズル洗浄水W1は、前記局部洗浄水Wよりも水勢が弱く、洗浄ノズル1の先端部分の表面を周回して洗浄するようになり、さらに流れ落ちるノズル洗浄水W1が洗浄ケース2内に溜められるようになっている。
【0017】
一方、局部洗浄時には洗浄ノズル1が図1(a)の矢印C方向に前進するが、このときラック12bがピニオン12aを反時計回り方向に回転させることにより、洗浄ケース2は回転軸14を中心に図1(a)の矢印D方向に回転して上向き姿勢から横向き姿勢へと変化する。これにより、洗浄ノズル1は洗浄ケース2から出て便器ボウル7内に向けて突出可能となり、またこのとき洗浄ケース2が横向き姿勢になることで、中の汚れた洗浄液3が便器ボウル7内に落とされ、洗浄ケース2は空の状態となり、この空の状態で洗浄ノズル1が後退してくるまで待機する。
【0018】
前記洗浄ケース2の内部には、超音波振動子4が配置されている。図4は超音波振動子4と洗浄ノズル等のような被洗浄対象物1´との位置関係を説明する原理図であり、図5は超音波振動により汚れが落ちる原理図である。図5のように超音波振動子4は、被洗浄対象物1´が浸けられた洗浄液3を超音波振動させることで、洗浄液3中に目に見えない細かい気泡5(キャビテーション)が無数に発生し、これらの気泡5がはじける瞬間に出る衝撃波6が汚れ11を粉砕して、被洗浄対象物1´の表面の汚れが分解除去されるものである。なお超音波振動子4として、例えば特開2003−53085号公報などにより公知となっている技術を採用できるので、詳細な説明は省略する。
【0019】
しかして、局部洗浄時以外の時、つまり洗浄ノズル1が収納位置まで後退したときは、洗浄ケース2の洗浄液3中に少なくとも洗浄ノズル1の先端部分が漬かった状態となり、この状態で超音波振動子4を駆動させる。これにより前記図5で示したように超音波振動によって発生する細かい無数の気泡5によって汚れ11が粉砕されて、汚れを分解除去できる。従って、手の届かないような微細な隙間の汚れや、ミクロの汚れでも確実且つ効果的に分解除去できるようになり、従来のような布やブラシ、水などでは落ちない汚れでも容易にすっきり取り除くことができる。しかも、超音波振動による洗浄を洗浄ケース2内部で行なうので、汚れた洗浄液3が便器ボウル7の外部に飛散することがなく、トイレの床などを汚水で汚す心配がなくなる。
【0020】
なお、超音波振動子4による汚れ分解を行なうタイミングは、必ずしも洗浄ノズル1が後退して洗浄ケース2に入った直後に限らず、例えば洗浄ノズル1が洗浄ケース2から出て行く直前であってもよい。
【0021】
また本例では、洗浄ノズル1の収納位置に、少なくとも洗浄ノズル1の先端部分を洗浄液3に漬けることができるように洗浄ケース2を配置したので、洗浄ケース2が利用者からは見えず、しかも洗浄ケース2が便器ボウル7側に突出しないため、便器ボウル7の清掃の邪魔になることがなく、そのうえ洗浄ケース2を回動させることで、洗浄ケース2が洗浄ノズル1の出し入れの邪魔にならず、結果、洗浄ケース2の納まりがきわめて良好となる。
【0022】
さらに本例では、ラック12bとピニオン12aとで、洗浄ケース2内の洗浄液3を洗浄ケース2の外部に排水するための排水手段12を構成したので、簡易な構造で排水手段12を構成でき、しかも排水時に洗浄ケース2が横向き姿勢となり、汚れた洗浄液3が洗浄ケース2の外部に流れ落ちて便器ボウル7内に流されるので、洗浄ケース2を常に清潔に保てるようになる。また洗浄ケース2自体の汚れも洗浄液3と同時に外部に排出されるので、洗浄ケース2を手で清掃をする手間も省けるようになる。
【0023】
なお、前記ピニオン12aとラック12bに代えて、例えば、洗浄ケース2の底に弁を設けておき、弁を開いて洗浄ケース2内の汚れた洗浄液3を便器ボウル7に放出させる構成とすることも可能である。
【0024】
さらに本例では、前記収納位置にある洗浄ノズル1から上向きに吐出するノズル洗浄水W1を下側の洗浄ケース2内に溜める方法として、図1(b)に示すように、ノズルカバー13の天面側に下向き凹曲状をした水跳ね返し部15を設けてある。これにより、上向きのノズル洗浄水W1を水跳ね返し部15で下方に跳ね返して下側の洗浄ケース2内部に溜めることができるようになり、ノズル洗浄時の節水を実現できる。しかも、洗浄ケース2へ洗浄液3を供給するための専用の給水路や開閉弁等を別途設ける必要がなくなる。つまり洗浄ノズル1自体が洗浄ケース2内に洗浄液3を補給するための給水手段を兼ねるので、構造をより簡略化できるものである。なお、給水手段の他例として、専用の給水路から洗浄ケース2内に直接給水することも可能である。
【0025】
さらに他の例として、濡れている洗浄ノズル1を温風で乾かすためのノズル乾燥手段(図示せず)を設け、ノズルカバー13に設けた温風噴出し口16(図1(b))から温風を吹き出させて洗浄ノズル1を乾燥させるようにしてもよい。この場合、濡れている洗浄ノズル1を乾かすことで雑菌の繁殖等を防止でき、洗浄ノズル1を一層、清潔に保つことができる。しかも、ノズル乾燥手段のダクトの途中から別のダクトを分岐状に接続して、この別のダクトから臀部に向かって温風を供給することも可能であり、この場合、ノズル乾燥手段が局部乾燥手段を兼用するようになり、局部洗浄装置8の一層の低コスト化、簡素化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態であり、(a)は洗浄ノズルが便器ボウル内に突出した使用位置にある状態を示す図、(b)は洗浄ノズルが収納位置まで後退した状態で洗浄ケース内で洗浄される状態を示す図である。
【図2】同上の洗浄ノズルが使用位置にある場合の斜視図である。
【図3】同上の洗浄ケースの斜視図である。
【図4】水槽中での超音波振動子と被洗浄対象物の位置関係の一例を説明する原理図である。
【図5】同上の超音波振動によって汚れが落ちる原理図である。
【符号の説明】
【0027】
1 洗浄ノズル
2 洗浄ケース
3 洗浄液
4 超音波振動子
5 微細な気泡
7 便器ボウル
12 排水手段
W 局部洗浄水
W1 ノズル洗浄水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄ノズルから人体の局部に向かって局部洗浄水を噴射させる局部洗浄装置において、局部洗浄時以外の時に少なくとも洗浄ノズルの先端部分を漬けるための洗浄液が溜められる洗浄ケースと、前記洗浄ノズルが浸けられた洗浄液を超音波振動させることで、発生する微細な気泡によって洗浄ノズルを洗浄する超音波振動子とを備えていることを特徴とする局部洗浄装置。
【請求項2】
前記洗浄ノズルが、便器ボウル内に向けて突出した使用位置と該使用位置よりも後退した収納位置との間で出し入れ自在とされると共に、洗浄ノズルの収納位置に、少なくとも洗浄ノズルの先端部分を洗浄液に漬けることができるように洗浄ケースを配置したことを特徴とする請求項1記載の局部洗浄装置。
【請求項3】
前記収納位置まで後退した洗浄ノズルから、洗浄ノズルの表面の汚れを洗い落すためのノズル洗浄水を吐出させると共に、該ノズル洗浄水を洗浄ケース内に溜めるようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の局部洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄ケース内の洗浄液を洗浄ケースの外部に排水するための排水手段と、排水後の洗浄ケース内に洗浄液を補給する給水手段とを設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の局部洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄ノズルを乾燥させるためのノズル乾燥手段を備え、このノズル乾燥手段は局部に温風を供給して乾かすための局部乾燥手段を兼用していることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の局部洗浄装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−274604(P2006−274604A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93118(P2005−93118)
【出願日】平成17年3月28日(2005.3.28)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】