説明

屈曲部を有する貫通孔を形成する方法

【課題】本発明の目的は、部材において、ズレ(行き過ぎ)が生じない屈曲部を有する貫通孔を形成し、かつ、作業時間を短縮することを目的とする。
【解決手段】一方端から穴あけ作業を行う工程と、他方端から直線に部材を貫通させる工程と、貫通孔の行き過ぎ部分においてねじ穴を形成する工程と、貫通孔の行き過ぎ部分の1段目に圧入ピンを圧入する工程と、貫通孔の行き過ぎ部分の2段目に栓ネジを螺入する工程からなる方法によって、部材において屈曲部を有する貫通孔を形成。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部材の貫通孔を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、部材において、図1、図2におけるように、直線の貫通孔を形成するには、一方端から他方端に向かってガンドリル等によって穴あけをすればよい。
【0003】
しかし、形成しようとする貫通孔が、図3、図4におけるように直線でない場合、すなわち、貫通孔に屈曲部が存在する場合には、従来は、一方端からガンドリル等によって穴あけすることに加え、他方端からもガンドリル等によって穴あけし、屈曲部において正確に交差させる方法によっていたが、この方法では、特に穴の経が小さいほどズレ(行き過ぎ)が生じやすい(図5)。
【0004】
そこで、ズレ(行き過ぎ)の発生を防止するためには、穴あけ作業に慎重さが必要となるため、作業時間が大幅に必要となる。
【0005】
つまり、屈曲部において正確に交差させるためには、穴あけの行き過ぎがあってはならないため、少しずつ穴あけ作業及び確認作業をすすめなくてはならないため、作業時間の増大は回避しがたいのである。
【0006】
また、屈曲部を有する貫通孔のある部材を形成するために図6におけるように、あらかじめ型枠を形成し、張り合わせるという方法も考えられるが、この方法では、張り合わせ時の接着溶剤のはみ出し(図7)、強度の低下、漏れ等が問題となる。
【0007】
なお、曲がり穴の形成方法として、特許文献1のような技術があるが、このようなレーザーを利用する方法では、部材が樹脂などの場合には、溶解のおそれがあるため利用できないし、また、一般にかかるレーザー装置は高額で、中小企業の場合には導入が経済的に困難であるという事情がある。
【特許文献1】特開2002−59281
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、部材において、ズレ(行き過ぎ)が生じない屈曲部を有する貫通孔を形成し、かつ、作業時間を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような技術的手段を提供する。
【0009】
すなわち、部材の一方端から穴あけ作業を行い、他方端からの穴あけ作業においては、直線に部材を貫通させ(図8)、さらに、貫通孔の行き過ぎ部分において、ねじ穴を形成し(図9)、1段目に圧入ピンを圧入し(図10)、2段目に栓ネジを螺入する(図11)方法により上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0010】
一方端からガンドリル等によって穴あけすることに加え、他方端からもガンドリル等によって穴あけし、屈曲部において正確に交差させる方法では、特に穴の経が小さいほどズレ(行き過ぎ)が生じやすく、ズレ(行き過ぎ)の発生を防止するためには慎重さが必要であるため、作業時間が大幅にかかっていたが、本発明により、他方端からの穴あけ作業においては一切ズレ(行き過ぎ)を気にする必要がなく、作業が容易であるため、作業時間が大幅に短縮される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施形態を以下に示すが、実施形態は下記に限定されるものではない。
【0012】
図12におけるように、一方端(▲1▼方向)からガンドリル等により、所定の目標位置まで穴(下穴)あけ作業を行う。この際、行き過ぎを押さえるため、穴(下穴)あけ作業は、目標位置の若干手前までで終える。
【0013】
図13におけるように、ガンドリル等で他方端(▲2▼方向)から直線にのびた貫通孔(下穴)を形成する。
【0014】
図14におけるように、行き過ぎ部分においてタップ加工によるネジ穴を形成する。ただし、後に述べるように、行き過ぎ部分の1段目に圧入ピンをする圧入こととの関係で、ネジ穴の穴あけ作業は図14における目標位置2より手前までで終える。
【0015】
図15は、図14の局所拡大図である。タップ加工による形成するネジ穴経をいかなる長さにするかは任意であるが、後に述べるように、行き過ぎ部分に圧入する圧入ピンを肩のある形状とすることとの関係で、ネジ穴の経は圧入ピンの肩幅が確保されるような長さとする。
【0016】
図16は、図15において、圧入ピンを圧入した図である。圧入ピンは、貫通孔を通る液体や気体の漏れを防止するために、肩のある凸形状とする。
【0017】
圧入ピンの突起部分の長さは、目標位置2を超える長さであってよい。後述するように、圧入された圧入ピンの突起部分のうち目標位置を超えた部分については、リーマ加工により削りとるからである(図18)。
【0018】
圧入ピンを圧入後、栓ネジを螺入するが(図17)、貫通孔を通る液体や気体の漏れを防止するために、栓ネジの胴回りに接着溶剤を塗布してもよい。
【0019】
本発明は、屈曲部を2箇所以上有する貫通孔を形成する場合にも応用できる。図19において、一方端(▲1▼方向)と他方端(▲2▼方向)とからの穴あけ作業のみでは、そもそも網掛け部分の通路を形成することはできない。そこで、▲3▼位置ないしは▲4▼位置から他方の位置へ直線にのびた貫通孔を形成し、▲3▼位置及び▲4▼位置双方から、圧入ピンの圧入及び栓ネジの螺入を行うことにより、網掛け部分の通路を形成することができる。
【0020】
本発明の方法を利用できる部材は広範囲である。POM(PolyOxyMethylene)、PET(polyethylene terephthalate)などの樹脂のほか、金属、木材等でも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】 部材において直線の貫通孔が形成されている図。
【図2】 部材において直線の貫通孔が形成されている図。
【図3】 部材において屈曲部を有する貫通孔が形成されている図。
【図4】 部材において屈曲部を有する貫通孔が形成されている図。
【図5】 部材において屈曲部を有する貫通孔が形成されている図であって、屈曲部に行きすぎが発生している図。
【図6】 部材において屈曲部を有する貫通孔を形成するために予め型枠により成型された部品を張り合わせる図。
【図7】 部材において屈曲部を有する貫通孔を形成するために予め型枠により成型された部品を張り合わせた図であって、接着溶剤のはみ出しが発生している図。
【図8】 部材において屈曲部を有する貫通孔を形成するために一方端及び他方端それぞれの方向から穴あけ作業を行い、他方端の穴あけ作業においては、直線に伸びた貫通孔が形成されている図。
【図9】 図8の状態において、タップ加工を施した状態を表した図。
【図10】 図9の状態において、圧入ピンを圧入した状態を表した図。
【図11】 図10の状態において、栓ネジを螺入した状態を表した図。
【図12】 一方端から穴あけ作業を行った図。
【図13】 他方端から穴あけ作業を行い、直線に伸びた貫通孔が形成されている状態を表した図。
【図14】 他方端から穴あけ作業を行い、直線に伸びた貫通孔が形成されている状態を表した図。
【図15】 図14の局所拡大図。
【図16】 図15の状態において、圧入ピンが圧入された状態を表した図。
【図17】 図16の状態において、栓ネジを螺入する状態を表した図。
【図18】 図17の状態において、リーマ加工を施す状態を表した図。
【図19】 部材において屈曲部を2箇所以上有する貫通孔が形成された図
【符号の説明】
【0022】
1 行き過ぎ部分
2 接着溶剤のはみ出し

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部材において屈曲部を有する貫通孔を形成する方法であって、一方端から穴あけ作業を行う工程と、他方端から直線に部材を貫通させる工程と、貫通孔の行き過ぎ部分においてねじ穴を形成する工程と、貫通孔の行き過ぎ部分の1段目に圧入ピンを圧入する工程と、貫通孔の行き過ぎ部分の2段目に栓ネジを螺入する工程からなる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−61576(P2009−61576A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−259212(P2007−259212)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(507328117)株式会社日幸製作所 (1)
【Fターム(参考)】