説明

屋外機器点検用可動建屋および点検方法

【課題】機器点検毎に点検用建屋を設置する手間が掛からないようにし、点検対象機器の位置に合せて屋外機器点検用可動建屋を固定することができるとともに、直接点検機器を吊り込むことができるようにする。
【解決手段】ドーム型屋根に支持されたスライド式屋根と、低部を支持する開閉式床と、この床に設けられた牽引サポートと、床を支持するタイヤと、屋根に設けられた昇降用のホイストと、側壁に設けられたドア、窓、空気調和機、および換気扇と、スライド式屋根を支持する固定用サポートとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外に設置された機器の点検に際して移動設置することが可能な屋外機器点検用可動建屋および点検方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、屋外設置機器の点検を行う場合には、点検対象機器付近に点検用仮設建屋を設置して点検するか、点検対象機器を車両で移動して、メンテナンス建屋またはメーカ等の工場において点検することが行われている。
【0003】
このように、従来では点検用仮設建屋を設置し、点検に必要な附帯設備や機材等を準備して点検するか、点検機器を車両にて構内または一般道を輸送して別の場所にて点検を実施し、点検後に再度車両にて輸送して復旧することが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−91630号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の屋外機器点検においては、以下のように種々の課題がある。まず、毎回の点検毎に仮設の点検用建屋を構築したり、附帯設備や機材等を準備するのことに多くの手間が費やされている。
【0005】
また、構内の建屋で点検する際には、車両による移動が発生するとともに、エリア確保や他の機器の点検スケジュール等との調整が必要となっている。
【0006】
さらに、外部メーカの工場等にて検を行う際には、一般道の輸送が必要となり、重量および高さ制限等のために、機器の一部取外しなどが発生してしまう。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、点検に必要な附帯設備や機材を点検用可動建屋に設置し、点検対象機器の設置場所に移動することができるようにすることにより、点検の段取りに要する時間の短縮と、環境の向上等、効率良い作業を実施することで、屋外機器点検用可動建屋とそれを用いて屋外設置機器を効率よく点検することができる点検方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明では、屋外に設置された機器を点検する機器点検用可動建屋であって、側壁により支持されたドーム型屋根と、このドーム型屋根に設けられた開口部を開閉するスライド式屋根と、前記側壁を支持するとともに床面に開閉可能なハッチを有する開閉式床と、この床に設けられ車両等への連結による牽引が可能な牽引サポートと、前記床を支持する走行用のタイヤと、前記屋根に設けられ点検対象となる機器を昇降する昇降用のホイストと、前記側壁に設けられたドア、窓、空気調和機および換気扇と、前記床を地面等に固定支持する固定用サポートと、前記ドーム型屋根の近傍に設けられた電源引込箱と、前記床の上方側面を開閉するシャッタと、前記床上に設置され点検用機器を支持する点検架台とを備えたことを特徴とする屋外機器点検用可動建屋を提供する。
【0009】
また、本発明では、前記機器点検用可動建屋を使用して、屋外機器の点検を行うことを特徴とする屋外機器点検方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の屋外機器点検用可動建屋および点検方法によれば、機器点検毎に点検用建屋を設置する手間が掛からず、また点検対象機器の位置に合せて屋外機器点検用可動建屋を固定することができるとともに、直接点検機器を吊り込むことができる。したがって、点検の段取りに要する時間の短縮と、環境の向上等、効率良い作業を実施することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る屋外機器点検用可動建屋および点検方法の実施形態について図1ないし図10を参照して説明する。
【0012】
図1に全体構成を示すように、本実施形態の屋外機器点検用可動建屋50は、左右1対の側壁36,36により支持された前後方向に長い固定構造のドーム型屋根1と、このドーム型屋根1の外側を覆うスライド式屋根2と、側壁36の基部を支持する開閉式床3とを備えている。
【0013】
開閉式床3は例えば平面視で前後方向に長い長方形状をなしており、この開閉式床3の長辺側に1対の側壁36が対向して立上っている。これら各側壁36の上端部に跨るように前後方向から見て下面側が内径となる部分円筒状のドーム型屋根1の直線状の両辺が支持されており、このドーム型屋根1の上側外周面にスライド式屋根2が被さり、ドーム型屋根1の軸方向に移動可能となっている。
【0014】
床3の長手方向側面部には左右1対のフック状の牽引サポート4が設けられるとともに、床3には、走行車輪としての複数のタイヤ5が設けられ、これにより野外の路面上等での走行が可能となっている。なお、本実施形態ではタイヤ5としての車輪が全て従動輪である。また、ドーム型屋根2の一端側内面部位には左右方向に横長なガイドレール37を介してホイスト6が設けられるとともに、側壁36にはドア7、窓8、空気調和機9および換気扇10等が設けられている。なお、図1には、床3上に点検対象となる点検機器11を搭載した状態が示されている。
【0015】
また、図2に一方の側面構成を示すように、本実施形態の屋外機器点検用可動建屋50には、上述のドーム型屋根1、スライド式屋根2、開閉式床3、タイヤ5、ホイスト6、ドア7、窓8、空気調和機9および換気扇10に加えて、床位置を固定するためのジャッキ等からなる固定用サポート12と、電源引込箱13と、ホイスト6を吊るためのホイストガータ14とが設けられている。ホイストガータ14はドーム型屋根1の下端高さ位置に前後方向に沿い、左右一対設けられ、ガイドレール37を屋外機器点検用可動建屋50の前後方向に移動することができるようになっている。また、固定用サポート12は、例えば開閉式床3の下部に前後配置で対をなすとともに、下記の図3に示すように左右方向にも対をなし、計4体が配置されている。電源引込箱13は、ホイスト6と前後方向反対側の位置で、ホイストガータ14と略同一高さ位置に設けられている。
【0016】
次に、図3に他方向の側面形状を示すように、本実施形態の屋外機器点検用可動建屋50は、上述のドーム型屋根1、開閉式床3、タイヤ5および固定用サポート12に加え、背面側を閉塞するための昇降可能なシャッタ15を備えている。このシャッタ15は、ドーム型屋根1の下部に設けられたシャッタボックス16に収納可能とされており、下方への引出しにより建屋背面側を閉塞できるとともに、上昇およびシャッタボックス16への収納により建屋背面側を開口できるようになっている。
【0017】
また、図4に示すように、本実施形態における屋外機器点検用可動建屋50は、上述のドーム型屋根1、開閉式床3、タイヤ5、ホイスト6、固定用サポート12、ホイストガータ14に加えて、床上に点検架台17を備えた構成とされている。この点検架台17を使用して、床上に搭載した点検機器11を点検することができる。
【0018】
さらに図5に示すように、本実施形態の屋外機器点検用可動建屋50は、ドーム型屋根1、開閉式床3、タイヤ5、固定用サポート12、ホイストガータ14に加え、前面側にシャッタボックス16と、左右方向に沿って開閉できる横開きシャッタ18を備えている。
【0019】
また、図6は屋外機器点検用可動建屋50底面図であり、この図に示すように、本実施形態の屋外機器点検用可動建屋50は、開閉式床3として、タイヤ5および固定用サポート12に加えて、床3を開閉するための床開閉ハッチ19を備え、タイヤは車輪軸20により支持されている。床開閉ハッチ19は例えば3枚のハッチ構造で、1枚ずつ任意に開閉することにより、開口面積を調整することが可能である。
【0020】
さらにまた、図7(a)に示すように、本実施形態の屋外機器点検用可動建屋50において、床開閉ハッチ19の下面は平坦であり、同図(b),(c)に示すように、床開閉ハッチ19の下面には、開閉ハッチ吊りサポート21が設けられるとともに、開閉ハッチの上下隅角部位には重ね部としてのはめ込み部22が設けられている。
【0021】
図8(a),(b)は、本実施形態の屋外機器点検用可動建屋50のドーム型屋根1と、スライド式屋根2とを詳細に示している。ドーム型屋根1には開口部38が設けられ、この部位に設けられたスライド式屋根受部23に沿ってスライド式屋根2を移動することにより、開口部36を開閉することができる。すなわち、スライド式屋根2には移動用滑車としてのスライド式屋根ローラ24と、スライド式屋根2を前後方向(矢印方向)に移動するためのスライドロープ25とが設けられ、スライドロープ25はドーム型屋根1に設けたガイドローラ26に支持されてロープ長手方向に移動できる構成とされている。
【0022】
図9は、屋外機器点検用可動建屋50の固定用サポート12の構成を、拡大図として詳細に示している。すなわち、開閉式床3の下面には固定サポートベース30が固定ネジ29を介して取付けられ、この固定サポートベース30に押し上げネジ部28が下向きに挿入されており、押し上げネジ部28の下端部に固定用サポート12の本体部分が設けられている。そして、回転ハンドル27によって固定用サポート12を回転することで、押し上げネジ部28に対して固定用サポート12が昇降できるようになっている。
【0023】
さらに、図10は、ホイスト6の吊下げ構成を詳細に示している。この図10に示すように、前記のホイスト6はホイスト横行レール31に支持されており、ホイスト横行レール31の両端には走行ローラ33を介してホイストガータ14が設けられている。ホイスト横行レール31の上部にはホイスト駆動部32が走行ローラ33を介して横架可能に搭載されており、このホイスト駆動部32はホイスト用ペンダント35によって横行操作できるようになっている。
【0024】
以上の実施形態によれば、車輪式構成を備えたことにより、点検するための各機器の設置場所に容易に移動することが可能になる。すなわち、点検に必要な附帯設備および機材が、一式揃っているので、種々の作業を容易に行うことができる。
【0025】
また、スライド式屋根2が開閉することにより、上部からの機器搬入が容易に行えるようになる。また、空気調和機9を設けたことにより、屋外機器点検用可動建屋内部の温湿度を、調整し、快適な作業環境とすることができる。さらに、開閉式床3と床開閉ハッチ19により地下ピットからの機器搬入が可能となる。また、屋外機器点検用可動建屋から張出したホイスト6により屋外設置の機器上部に覆い被さることができる。
【0026】
また、本実施の形態によれば、点検機器11の輸送を無くすることと占有の点検スペースが確保できるので、他の点検作業と錯綜せず機器点検工程に合せて実施できるため、待ち時間等無く無駄な工数を減らすことができる。
【0027】
さらに、本実施形態によれば、点検対象機器の近傍に設置し、位置を固定するための固定用サポート12が床と一体で、構成されて任意の場所に固定可能である。また、ホイスト6ガータが、建屋50から外に突き出ていてホイスト6が建屋50の外まで稼動する。さらにまた、建屋50の中で使用する電源を一括して外部との取合いを電源引込箱13とする。そして、建屋50の正面および背面にシャッタ15が取付けられて、外部と仕切ることが可能である。
【0028】
また、機器点検用の足場用に低所用架台と高所用架台が設置され、点検ピットからの機器搬入用に建屋50の床が3枚のハッチ構造になっている。そして、外部クレーンで搬出入するためのドーム型屋根1にローラの付いたスライド式屋根2が取付けられ、牽引サポート4を使用して人力または、車両にて移動することができる。
【0029】
また、換気扇10、窓8および空気調和機9により室内の温湿度等の環境を機器仕様に合せて調整することができる。また、点検する屋外設置機器の場所に点検用可動建屋50を移動することができる。
【0030】
以上のように、本実施形態においては、機器点検毎に点検用建屋を設置する手間が掛からず、点検対象機器の位置に合せて屋外機器点検用可動建屋50を固定することができ、ホイストガータ14が、建屋50から外に突き出ていることで、直接点検機器11を吊り込むことができる。
【0031】
また、外部電源を電源引込箱13に接続することにより点検用可動建屋50で使用する全ての電気治具類に電源を供給することができ、正面および背面にシャッタ15が取付けられていることで機材の搬出入が容易にできる。機器点検用の低所用および高所用架台が設置されていることにより点検機器11の取扱場所に容易にアクセスすることができ、開閉式床3が3枚のハッチ構造になっていることで地下ピットからの機器搬入が容易に行える。
【0032】
また、スライド式屋根2を取付けていることで、大型クレーンによる機器の搬出入を容易にできる。牽引サポート4を人力または、車両で引き可動することができる。換気扇10、窓8および空気調和機9により室内の温湿度等の環境を機器仕様に合せて設定することができる。
【0033】
さらに、屋外設置機器の点検を点検用可動建屋50の移動により、機器本体の輸送を無くすることができ、屋外機器点検用可動建屋50を使用して機器を点検することにより他の点検作業に左右されず作業ができ、品質精度を良くして無駄な工数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施形態による屋外機器点検用可動建屋構成を示す斜視全体図。
【図2】本発明の一実施形態による屋外機器点検用可動建屋構成を示す側面図。
【図3】本発明の一実施形態による屋外機器点検用可動建屋構成を示す背面図。
【図4】本発明の一実施形態による屋外機器点検用可動建屋構成を示す正面透視図。
【図5】本発明の一実施形態による屋外機器点検用可動建屋構成を示す正面図。
【図6】本発明の一実施形態による屋外機器点検用可動建屋構成を示す下部面図。
【図7】(a),(b),(c)は本発明の一実施形態による屋外機器点検用可動建屋構成を示す床開閉ハッチ構造図。
【図8】(a),(b)は本発明の屋外機器点検用可動建屋構成を示す開閉スライドドーム屋根構造図。
【図9】本発明の一実施形態による屋外機器点検用可動建屋の固定サポート構造構成を示す図。
【図10】本発明の一実施形態による屋外機器点検用可動建屋のホイスト構造構成を示す図。
【符号の説明】
【0035】
1 ドーム型屋根
2 スライド式屋根
3 開閉式床
4 牽引サポート
5 タイヤ
6 ホイスト
7 ドア
8 窓
9 空気調和機
10 換気扇
11 点検機器
12 固定用サポート
13 電源引込箱
14 ホイストガータ
15 シャッタ
16 シャッタ収納ボックス
17 点検架台
18 横開きシャッタ
19 床開閉ハッチ
20 車輪軸
21 開閉ハッチ吊りサポート
22 開閉ハッチはめ込み部
23 スライド式屋根受部
24 スライド式屋根ロープ
25 スライドロープ
26 ガイドローラ
27 回転ハンドル
28 押し上げネジ部
29 固定ネジ
30 固定サポートベース
31 ホイスト横行レール
32 ホイスト駆動部
33 走行ローラ
34 横行ローラ
35 ホイスト用ペンダント
36 側壁
37 ガイドレール
38 開口部
50 建屋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設置された機器を点検する機器点検用可動建屋であって、側壁により支持されたドーム型屋根と、このドーム型屋根に設けられた開口部を開閉するスライド式屋根と、前記側壁を支持するとともに床面に開閉可能なハッチを有する開閉式床と、この床に設けられ車両等への連結による牽引が可能な牽引サポートと、前記床を支持する走行用のタイヤと、前記屋根に設けられ点検対象となる機器を昇降する昇降用のホイストと、前記側壁に設けられたドア、窓、空気調和機および換気扇と、前記床を地面等に固定支持する固定用サポートと、前記ドーム型屋根の近傍に設けられた電源引込箱と、前記床の上方側面を開閉するシャッタと、前記床上に設置され点検用機器を支持する点検架台とを備えたことを特徴とする屋外機器点検用可動建屋。
【請求項2】
前記固定用サポートが前記床と一体に構成されている請求項1記載の屋外機器点検用可動建屋。
【請求項3】
前記ホイストを支持するホイストガータを備え、このホイストガータが前記側壁から外方に突き出ている請求項1記載の屋外機器点検用可動建屋。
【請求項4】
請求項1〜3の屋外機器点検用可動建屋を使用して、屋外機器の点検を行うことを特徴とする屋外機器点検方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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