説明

屋根

【課題】水勾配に沿った方向に屋根面材を分割した場合でも、この分割位置にて雨水を水下側に円滑に流すことができる屋根を提供すること。
【解決手段】屋根本体4を構成する屋根面状体10の水上側屋根面状体10Aと水下側屋根面状体10Bとの間に、中母屋11位置で水下側に下がる段差が形成されているので、この段差によって水上側屋根面状体10A上の雨水が水下側屋根面状体10B側に流れやすくできる。特に、水上側屋根面状体10Aにおける水上側パネル14Aの水下側端縁を係止する中母屋11の係止片が板状に形成されているので、水上側パネル14Aから上方への突出寸法が最小化でき、水上側パネル14A上面に水が溜まることを防止することができる。従って、水上側屋根面状体10Aを流れる雨水等を水下側に円滑に流し、埃等がパネル14に付着することを防止して屋根の美観が維持できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根に関し、詳しくは、水上側面材と水下側面材との間に設置される交差支持部材を備えた屋根に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外に設けられるカーポートやテラス、サンルーム、アプローチ等の屋外構造物に設置される屋根であって、複数に分割された屋根面材(屋根板)と、屋根面材の端縁を支持する垂木および押え材とを有する屋根構造が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載された屋根構造では、水上側から水下側に向かって垂木が水勾配に応じた傾斜を有して設置され、この垂木の上側に屋根面材が支持されるとともに、屋根面材の上側から垂木に押え材が固定され、これらの垂木および押え材で屋根面材の側端縁を挟持することで屋根面材が支持されるようになっている。
【0003】
【特許文献1】特開2006−249681号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の屋根構造において、水勾配に沿った方向に屋根の長さ寸法を長く形成しようとすると、屋根面材自体の長さ寸法が制約を受けることから、その方向に関しても屋根面材を複数に分割した構造が採用される。このように水勾配に沿った方向に屋根面材を分割した構造では、その分割位置においても前記垂木および押え材と略同様の構成を有した支持部材が設置され、この支持部材と前記垂木および押え材とが交差して格子状となった内部に各屋根面材が支持されることとなる。
しかしながら、水勾配と交差する方向に延びる支持部材において、前記押え材と同様に屋根面材の上面から上方に突出した押え材を用いると、この押え材の水上側に屋根面材との段差が形成され、この段差部分に雨水や埃等が溜まりやすくなって、この埃等が屋根面材に付着して美観を損なうという問題がある。
【0005】
本発明の目的は、水勾配に沿った方向に屋根面材を分割した場合でも、この分割位置にて雨水を水下側に円滑に流すことができる屋根を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の屋根は、水上側に設置される水上側面材と、この水上側面材よりも水下側に設置される水下側面材と、前記水上側面材と前記水下側面材との間に設置されて水上側から水下側に向かう方向と交差して延びる交差支持部材とを少なくとも備えた屋根であって、前記交差支持部材は、前記水上側面材の下側に位置する支持部材本体と、この支持部材本体の上面側に設けられて前記水上側面材の水下側端縁を支持する第1支持部と、前記支持部材本体の水下側に設けられて前記水下側面材の水上側端縁を支持する第2支持部とを有し、前記第2支持部が前記第1支持部よりも下方に形成されて前記水上側面材と前記水下側面材とが段差を有して設置されていることを特徴とする。
【0007】
以上の本発明によれば、交差支持部材において、水上側面材の水下側端縁を支持する第1支持部よりも下方に、水下側面材の水上側端縁を支持する第2支持部が形成され、水上側面材よりも水下側面材が下方に位置して水下側に下がった段差が設けられているので、水上側面材上面を流れた雨水等が水下側面材に落下して流れやすくなる。さらに、交差支持部材の支持部材本体が水上側面材の下側に位置する、すなわち、水上側面材が支持部材本体の上面を覆って水下側に延びて設置されるので、支持部材本体が水上側面材よりも上方に突出することがなく、雨水等が溜まることを防止することができる。従って、水上側面材上面を流れる雨水等を水下側に円滑に流すことができ、埃等が屋根面材に付着することを防止して屋根の美観が維持できる。
この際、本発明の屋根全体において、水上側面材と水下側面材とは、少なくとも一対で設けられていればよく、一の水上側面材のさらに水上側に他の水上側面材を設けてもよく、この場合には前記一の水上側面材を水下側面材とみなすことができ、逆に一の水下側面材のさらに水下側に他の水下側面材を設けた場合には前記一の水下側面材を水上側面材とみなすことができる。このように、屋根の水上側から水下側に向かう全長に関して、屋根面材を複数に分割したことで、個々の面材を作業者が扱いやすい大きさに設定することができ、例えば一人の作業者によって屋根の組立作業を実施することも可能になり、施工性を向上させることができる。
【0008】
この際、本発明の屋根では、前記第1支持部は、前記支持部材本体から上方に延びて前記水上側面材の下面に当接する第1当接部と、前記支持部材本体の水下側から前記水上側面材の水下側端縁に沿って上方に延びる立上片部と、この立上片部の上端縁から水上側に延びて前記水上側面材の上面に当接する第2当接部とを有して構成され、前記第2当接部が前記水上側面材の上面に沿った板状に形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、交差支持部材における第1当接部と第2当接部とで水上側面材を把持して支持することができ、従来の垂木および押え材のように別体の部材で上下から挟持しなくてもよいので、交差支持部材の構造を簡単化するとともに部品点数を削減することができる。さらに、第2当接部が水上側面材の上面に沿った板状に形成されているので、水上側面材上面から上方への第2当接部の突出寸法を小さくすることができ、第2当接部と水上側面材上面との段差寸法を最小限にして、この段差部分に雨水等が溜まりにくくすることができる。
【0009】
さらに、本発明の屋根では、前記水上側面材における水上側から水下側に向かう方向に沿った側端縁は、当該水上側面材を上下から挟持する側方支持部材で支持されており、前記交差支持部材の立上片部には、前記側方支持部材を水下側に貫通させる切欠きが形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、水勾配に沿って延びる側方支持部材と交差する交差支持部材の立上片部に切欠きを形成し、この切欠きに側方支持部材を貫通させることで、側方支持部材の水下側端部が交差支持部材の立上片部よりも水下側に延びて位置することとなる。従って、側方支持部材の上面や側面を伝わって流れる雨水等を立上片部よりも水下側、つまり水下側面材の上方位置まで誘導して落下させることができる。さらに、水上側面材の側端縁位置から側方支持部材の内部に雨水等が浸入したとしても、この雨水を側方支持部材の水下側端部から水下側面材の上方位置で落下させて排水することができる。
【0010】
この際、本発明の屋根では、前記側方支持部材の水下側端部は、前記交差支持部材の上面に止水部材を介して支持されていることが好ましい。
このような構成によれば、側方支持部材と交差支持部材との間に止水部材が設けられているので、側方支持部材の下面を伝わって水上側への雨水等の逆流を防止することができる。
【0011】
また、本発明の屋根では、前記水上側面材は、水上側から水下側に向かう方向と交差して並べて設置される複数の水上側面材から構成され、これら複数の水上側面材同士の隣接する側端縁は、当該水上側面材を上下から挟持する中間支持部材で支持されており、前記中間支持部材は、前記水上側面材の下面に当接する第1中間支持部材と、当該水上側面材の上面に当接する第2中間支持部材とを有して構成され、前記第1中間支持部材の水下側端部は、前記交差支持部材の支持部材本体上面に支持されるとともに、当該交差支持部材の立上片部よりも水上側に位置して設けられ、前記立上片部には、水抜き孔が形成されていることが好ましい。
このような構成によれば、水勾配に沿って延びる中間支持部材における第1中間支持部材の水下側端部を交差支持部材の立上片部よりも水上側に位置させ、立上片部に水抜き孔を形成したことで、中間支持部材の内部に雨水等が浸入したとしても、この水を第1中間支持部材に沿って水下側へ流すとともに、交差支持部材の支持部材本体上面を介して水抜き孔から排水することができる。そして、水抜き孔から排水された水を水下側面材に落下させて水下側へ流すことができ、交差支持部材位置における雨水の滞留を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る屋根1を示す斜視図である。図2は、屋根1を示す側面図である。
図1および図2において、屋根1は、屋外に設けられるカーポートの空間上方を覆うものであって、地面から立設された2本の支柱2と、これらの支柱2の上端から略水平に延びる支持梁3と、これらの支持梁3の上側に固定される屋根本体4とを備えて構成されている。2本の支柱2のうち、車両が出入りする一方である前方側(図2の左側)の支柱2が他方である後方側(図2の右側)の支柱2よりも長く形成され、すなわち前方側の支持梁3が後方側の支持梁3よりも高い位置に設けられ、屋根本体4が前方から後方に向かって下がり勾配となる傾斜を有して設置されている。屋根本体4は、前方側の前枠5と、後方側の後枠6と、前枠5と後枠6とを連結する左右一対の側枠7と、前枠5と後枠6との間に架け渡される複数の主垂木8(後述する図3〜図6参照)と、前枠5、後枠6および側枠7を四周枠組みした内部かつ主垂木8の上側に支持された屋根面状体10とを備えて構成されている。そして、屋根本体4における前方側(前枠5側)が水上側とされ、後方側(後枠6側)が水下側とされ、水下側の端部に位置する後枠6には、屋根面状体10上に降った雨水等を集水して排水するための雨樋6A(図3参照)が設けられている。
【0013】
次に、図3〜図6に基づき、屋根本体4の構造について説明する。ここで、図3および図4は、それぞれ屋根本体4を示す縦断面図である。図5および図6は、それぞれ屋根本体4を簡略化して示す分解斜視図である。
屋根本体4において、前枠5、後枠6および側枠7は、それぞれ略同一高さ寸法を有したアルミ形材製の長尺部材であり、前枠5および側枠7は、中空断面を有して形成され、後枠6は、上方に開口した略コ字形断面を有して形成されている。そして、後枠6のコ字形溝部によって雨樋6Aが構成されている。また、側枠7は、図4に示すように、上部の断面寸法が小さくかつ下部の断面寸法が大きな全体段付き角筒状断面に形成されており、その下部の幅広断面部分の上側に屋根面状体10が支持されるようになっている。また、主垂木8は、アルミ形材製の長尺部材であり、前枠5、後枠6および側枠7と下端面が揃えられるとともに側枠7の幅広断面部分と上端面が揃えられた角筒状断面を有して形成され、この主垂木8の上側に屋根面状体10が支持されるようになっている。
【0014】
屋根面状体10は、屋根本体4全体のうち、水上側の略半分の範囲に設置される水上側屋根面状体10Aと、水下側の略半分の範囲に設置される水下側屋根面状体10Bと、水上側屋根面状体10Aと水下側屋根面状体10Bとの間に設置され水上側から水下側に向かう方向と交差して延びる交差支持部材としての中母屋11とを備えて構成されている。水上側屋根面状体10Aと水下側屋根面状体10Bとは、水上側屋根面状体10Aよりも下方に水下側屋根面状体10Bが位置するような段差を有して設置されている。すなわち、側枠7の幅広断面部分上面および主垂木8の上面には、一対の側枠7間に渡って水上側母屋12が適宜な間隔で複数本架設されており、水上側屋根面状体10Aは、水上側母屋12の上側に支持され、水下側屋根面状体10Bは、側枠7の幅広断面部分および主垂木8の上面位置に支持されている。また、水下側屋根面状体10Bの下側において、側枠7と主垂木8との間および主垂木8同士の間には、水下側母屋13が適宜な間隔で複数本架設されている。これらの水上側母屋12および水下側母屋13は、それぞれ後述するパネル14の下面に当接することで、パネル14の撓みを防止できるようになっている。
【0015】
水上側屋根面状体10Aおよび水下側屋根面状体10Bは、ぞれぞれ複数(例えば、図1に示すように4枚)の屋根ふき材であるパネル14(水上側面材としての水上側パネル14Aおよび水下側面材としての水下側パネル14B)と、両端側のパネル14の側端縁を挟持して支持する側方支持部材15と、互いに隣接したパネル14の側端縁を支持する中間支持部材16とを有して構成されている。パネル14は、透明または半透明の樹脂製板材であり、水上側から水下側に向かって長い長方形状に形成されている。なお、パネル14は、樹脂製に限らず、アルミ等の金属製であってもよいし、アルミと樹脂との複合材であってもよく、また透明や半透明ではなく不透明な板材であってもよい。そして、図3に示すように、水上側屋根面状体10Aにおいて、水上側パネル14Aの水上側端縁は、前枠5のパネル保持部5A,5Bに上下から把持されて支持され、水上側パネル14Aの水下側端縁は、中母屋11の第1支持部11A(後述)に上下から把持されて支持されている。一方、水下側屋根面状体10Bにおいて、水下側パネル14Bの水上側端縁は、中母屋11の第2支持部11B(後述)に上下から把持されて支持され、水下側パネル14Bの水下側端縁は、後枠6のパネル保持部6B,6Cに上下から把持されて支持されている。
【0016】
また、図4に示すように、パネル14の側端縁を支持する側方支持部材15は、パネル14の下面に止水材を介して当接する第1側方支持部材15A(垂木)と、パネル14の上面に止水材を介して当接する第2側方支持部材15B(屋根ふき材押え)とを有して構成され、第1側方支持部材15Aに第2側方支持部材15Bがビス止め固定されることで、パネル14を挟持して支持するようになっている。そして、水上側屋根面状体10Aにおいて、側方支持部材15の第1側方支持部材15Aは、その水上側端部が前枠5に固定され、その中間位置が水上側母屋12の上側に固定されるとともに、その水下側端部が中母屋11に支持されており、第2側方支持部材15Bは、その側端縁に取り付けられた止水材を側枠7の内側面上部の突起に当接させた状態で第1側方支持部材15Aに固定されている。また、水下側屋根面状体10Bにおいて、側方支持部材15の第1側方支持部材15Aは、側枠7の幅広断面部分上面に固定されており、第2側方支持部材15Bは、その水上側端縁を中母屋11のパッキン17(後述)に当接させるとともに、その側端縁に取り付けた止水材を側枠7の内側面下部の突起に当接させた状態で第1側方支持部材15Aに固定されている。すなわち、側枠7上部の内側面には、上下2列の突起が形成されており、上側の突起が水上側屋根面状体10Aにおける第2側方支持部材15Bの側方に位置し、下側の突起が水下側屋根面状体10Bにおける第2側方支持部材15Bの側方に位置するように設けられている。
【0017】
一方、隣接したパネル14の各側端縁を支持する中間支持部材16は、パネル14の下面に止水材を介して当接する第1中間支持部材16A(垂木)と、パネル14の上面に止水材を介して当接する第2中間支持部材16B(屋根ふき材押え)とを有して構成され、第1中間支持部材16Aに第2中間支持部材16Bがビス止め固定されることで、両側のパネル14を挟持して支持するようになっている。そして、水上側屋根面状体10Aにおいて、中間支持部材16の第1中間支持部材16Aは、その水上側端部が前枠5に固定され、その中間位置が水上側母屋12の上側に固定されるとともに、その水下側端部が中母屋11に支持されている。また、水下側屋根面状体10Bにおいて、中間支持部材16の第1中間支持部材16Aは、主垂木8の上面に固定されており、第2側方支持部材15Bは、その水上側端縁を中母屋11の弾性シール材25A(後述)に当接させた状態で第1中間支持部材16Aに固定されている。
【0018】
次に、図7〜図10に基づいて、交差支持部材としての中母屋11の構造と、中母屋11によるパネル14、側方支持部材15および中間支持部材16の支持構造について説明する。
図7(A),(B)は、それぞれ中母屋11部分を拡大して示す縦断面図であり、図7(A)は、側方支持部材15位置での断面図、図7(B)は、中間支持部材16位置での断面図である。図8は、中母屋11をさらに拡大して示す縦断面図である。図9および図10は、それぞれ中母屋11の一部を拡大して示す斜視図であり、図9は、側方支持部材15位置での斜視図、図10は、中間支持部材16位置での斜視図である。
【0019】
中母屋11は、アルミ形材製の一体部材であり、図8に示すように、水上側パネル14Aの下側に位置する中空状の支持部材本体20を有して構成されている。そして、支持部材本体20の上面には、水上側パネル14Aの下面に当接する止水材である弾性シール材20Aが取り付けられている。また、支持部材本体20の上面かつ水上側(図8の左側)には、上方に突出して水上側パネル14Aの下面に当接する第1当接部としての当接片21が形成されている。さらに、支持部材本体20の水下側(図8の右側)には、水下側に延びる略フラットな延出片22と、この延出片22の先端から上方に延びて水上側パネル14Aの水下側端縁に沿って立ち上がる立上片部としての立上片23と、この立上片23の上端縁から水上側に折れ曲がって延び水上側パネル14Aの上面に当接する第2当接部としての係止片24とが形成されている。これらの当接片21、立上片23および係止片24により、水上側パネル14Aの水下側端縁を支持する第1支持部11Aが構成されている。そして、係止片24は、その水上側の先端に向かって厚さ寸法が徐々に小さくなる板状に形成され、その下面が水上側パネル14Aの上面に密接して下方に付勢し、水上側パネル14Aの下面を立上片23および弾性シール材20Aに押圧させた状態で、水上側パネル14A水下側端縁を係止できるようになっている。
【0020】
また、中母屋11における延出片22の下面かつ水下側先端部には、止水材保持部25が形成され、この止水材保持部25には、止水材である弾性シール材25Aが取り付けられている。さらに、支持部材本体20の下面かつ水下側には、弾性シール材25Aよりもさらに水下側に延びる第2延出片26と、この第2延出片26の水下側先端部に止水材保持部27とが形成され、この止水材保持部27には、止水材である弾性シール材27Aが取り付けられている。これらの弾性シール材25A,27Aは、それぞれ水下側パネル14Bの上面および下面に当接し、水下側パネル14Bを把持するように構成されている。すなわち、止水材保持部25,27および弾性シール材25A,27Aにより、前記第1支持部11Aよりも下方に形成されて水下側パネル14Bの水上側端縁を支持する第2支持部11Bが構成されている。また、支持部材本体20の下面かつ水上側には、水上側に延びる固定片28が形成され、この固定片28と第2延出片26とをビス止めすることで、中母屋11が主垂木8の上面および側枠7の幅広断面部分上面に固定されるようになっている。
【0021】
以上の中母屋11における両側端部つまり側枠7の幅広断面部分上方かつ側方支持部材15下方位置には、図7(A)および図9に示すように、止水部材であるブロック状のパッキン17が設けられている。このパッキン17は、中母屋11の延出片22上面に設置され、側方支持部材15の第1側方支持部材15A下面に密接するとともに、前記弾性シール材20Aの端部に連続することで、中母屋11と側方支持部材15との間をシールできるように構成されている。なお、側方支持部材15位置において、前記当接片21は切り欠かれ、弾性シール材20Aの端部は、側方支持部材15により押しつぶされて第1側方支持部材15A下面に密接するようになっている。さらに、中母屋11の両端部側面には、パッキン17に連続するとともに、側枠7上部の内側面に当接する端部シール18(図9参照)が、中母屋11の端部側面略全体を覆って取り付けられている。また、中母屋11における両側端部において、前記立上片23および係止片24は切り欠かれ、図9に示すように、側方支持部材15を水下側に貫通させる切欠き23Aが形成されている。この切欠き23Aにおいて、立上片23は、係止片24よりも大きく切り欠かれ、立上片23の端縁は側方支持部材15と隙間を介して設けられ、一方、係止片24の端縁は側方支持部材15に略当接する位置まで延びて設けられている。
【0022】
一方、図7(B)および図10に示すように、中母屋11による中間支持部材16の支持位置において、第1中間支持部材16Aの水下側端部は、支持部材本体20の上面にビス止め固定されて支持されるとともに、弾性シール材20Aよりも水下側かつ立上片23よりも水上側に位置して設けられている。一方、第2中間支持部材16Bの水下側端部は、中母屋11の係止片24上面に沿って立上片23と略同一位置まで延びて設けられている。なお、中間支持部材16位置において、前記当接片21は切り欠かれ、弾性シール材20Aは、中間支持部材16により押しつぶされて第1中間支持部材16A下面に密接するようになっている。また、立上片23には、図7(B)、図8および図10に示すように、当該立上片23を切り欠いた水抜き孔23Bが形成されており、この水抜き孔23Bは、中間支持部材16同士のスパン中間位置や、側方支持部材15と中間支持部材16とのスパン中間位置、あるいは第1中間支持部材16Aの水下側端部と対向する位置に設けられている。
【0023】
以上のような屋根面状体10における雨水の流れおよび止水構造について以下説明する。
水上側屋根面状体10Aにおいて、水上側パネル14Aの上面の雨水は、水下側に流れて中母屋11の係止片24を乗り越え、水下側パネル14Bの上面に落下した後に、前記雨樋6Aに流れ落ちて排水される。また、水上側パネル14Aの上面の雨水が、第2側方支持部材15Bとの間から側方支持部材15内部に浸入したとしても、この雨水は、第1側方支持部材15A上を流れて、図9に示すように開放された側方支持部材15の水下側先端から落下し、水下側屋根面状体10B側の側方支持部材15上面および水下側パネル14Bの上面に排水される。一方、水上側パネル14Aの上面の雨水が、第2中間支持部材16Bとの間から中間支持部材16内部に浸入したとしても、この雨水は、第1中間支持部材16A上を流れて、図8に示すように中母屋11の延出片22に落下し、水抜き孔23Bから水下側屋根面状体10B側の中間支持部材16上面および水下側パネル14Bの上面に排水される。また、中母屋11の延出片22に落下した雨水が水抜き孔23Bから排水されずに、中母屋11に沿って側方に流れたとしても、この雨水は、中母屋11の両側端部に設けた切欠き23Aから排水される。そして、中母屋11の延出片22を流れた雨水は、パッキン17に阻止されて側枠7側に浸入することが防止され、また弾性シール材20Aに阻止されて水上側パネル14Aの下面を水上側に逆流することが防止されるようになっている。
【0024】
さらに、水下側屋根面状体10Bにおいても水上側屋根面状体10Aと略同様に、側方支持部材15および中間支持部材16の内部に浸入した雨水は、それぞれ第1側方支持部材15A上および第1中間支持部材16A上を流れて雨樋6Aに排水されるようになっている。また、水下側パネル14B上面の雨水が風などにより水上側に流れたとしても、この雨水は、中母屋11の弾性シール材25Aに阻止されて中母屋11内部(第2延出片26上面側)への逆流が防止されるようになっている。さらに、中母屋11の第2延出片26上面に雨水が浸入したとしても、この雨水は、端部シール18に阻止されて側枠7側に浸入することが防止されるようになっている。
【0025】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)すなわち、屋根本体4を構成する屋根面状体10の水上側屋根面状体10Aと水下側屋根面状体10Bとの間に、中母屋11位置で水下側に下がる段差が形成されているので、この段差によって水上側屋根面状体10A上の雨水が水下側屋根面状体10B側に流れやすくできる。特に、水上側屋根面状体10Aにおける水上側パネル14Aの水下側端縁が中母屋11の係止片24で係止され、この係止片24が板状に形成されているので、水上側パネル14Aから上方への突出寸法が最小化でき、水上側パネル14A上面に水が溜まることを防止することができる。従って、水上側屋根面状体10Aを流れる雨水等を水下側に円滑に流すことができ、埃等がパネル14に付着することを防止して屋根1の美観が維持できる。
【0026】
(2)さらに、カーポート等の奥行き寸法(前枠5から後枠6へ至る長さ寸法)が大きい屋根1において、屋根面状体10を水上側屋根面状体10Aと水下側屋根面状体10Bとに分割したことで、これらを構成するパネル14や側方支持部材15、中間支持部材16等の各部材の長さ寸法を小さくすることができる。従って、各部材を作業者が扱いやすくなり、例えば一人の作業者によって屋根1の組立作業を実施することも可能になり、施工性を向上させることができる。
【0027】
(3)また、中母屋11における両端部の立上片23および係止片24が切り欠かれ、この切欠き23Aを貫通して側方支持部材15が水下側に突出して設けられるので、側方支持部材15内部に浸入した雨水を水下側屋根面状体10B側に落下させて排水することができる。また、側方支持部材15と中母屋11の延出片22とがパッキン17を介して接続されているので、延出片22上の雨水が水上側や側枠7側へ逆流することが防止できる。
【0028】
(4)また、水上側屋根面状体10Aにおける中間支持部材16の第1中間支持部材16Aが、中母屋11の立上片23よりも水上側に位置し、これに対応した立上片23に水抜き孔23Bが形成されているので、中間支持部材16内部に浸入した雨水を水抜き孔23Bを介して水下側屋根面状体10B側に落下させて排水することができる。
【0029】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態においては、カーポート等に設置される屋根1について説明したが、本発明の屋根としては、カーポート等に限らず、任意の場所に設置されるものでよく、また支柱2や支持梁3に支持されたものに限らず、建物の外壁面等から片持ち状に突出した庇等に用いられる屋根であってもよく、さらには適宜な支持材によって吊り下げ支持された屋根であってもよい。
また、前記実施形態では、屋根面状体10が水上側屋根面状体10Aと水下側屋根面状体10Bとで構成され、一段の段差が設けられていたが、これに限らず、2段以上の複数の段差が設けられていてもよい。
【0030】
さらに、前記実施形態では、水上側屋根面状体10Aおよび水下側屋根面状体10Bが、それぞれ複数のパネル14、側方支持部材15および中間支持部材16を有して構成されていたが、側方支持部材15や中間支持部材16は、必須ではなく適宜省略されてもよい。すなわち、水上側屋根面状体10Aおよび水下側屋根面状体10Bを、それぞれ単一のパネル14で構成してもよく、この場合には、中間支持部材16が省略可能であり、またパネル14の側端縁を側枠7で直接支持するようにすれば、側方支持部材15が省略可能である。
また、前記実施形態では、水上側屋根面状体10Aの下側に水上側母屋12を設置し、この水上側母屋12に水上側屋根面状体10Aが支持される構成を採用したが、水上側屋根面状体10Aの支持構造としては、水上側母屋12を用いたものに限らず、任意の支持構造が利用できる。
【0031】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、かつ説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。
従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施形態に係る屋根を示す斜視図である。
【図2】前記屋根を示す側面図である。
【図3】前記屋根の屋根本体を示す縦断面図である。
【図4】前記屋根本体を示す図3と交差した方向の縦断面図である。
【図5】前記屋根本体を簡略化して示す分解斜視図である。
【図6】前記屋根本体を簡略化して示す分解斜視図である。
【図7】(A),(B)は、屋根本体の要部を示す縦断面図である。
【図8】前記屋根本体における交差支持部材を示す縦断面図である。
【図9】前記交差支持部材の一部を拡大して示す斜視図である。
【図10】前記交差支持部材の一部を拡大して示す斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1…屋根、10…屋根面状体、10A…水上側屋根面状体、10B…水下側屋根面状体、11…中母屋(交差支持部材)、11A…第1支持部、11B…第2支持部、14…パネル(面材)、14A…水上側パネル(水上側面材)、14B…水下側パネル(水下側面材)、15…側方支持部材、15A…第1側方支持部材、15B…第2側方支持部材、16…中間支持部材、16A…第1中間支持部材、16B…第2中間支持部材、17…パッキン(止水部材)、20…支持部材本体、21…当接片(第1当接部)、23…立上片(立上片部)、23A…切欠き、23B…水抜き孔、24…係止片(第2当接部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水上側に設置される水上側面材と、この水上側面材よりも水下側に設置される水下側面材と、前記水上側面材と前記水下側面材との間に設置されて水上側から水下側に向かう方向と交差して延びる交差支持部材とを少なくとも備えた屋根であって、
前記交差支持部材は、前記水上側面材の下側に位置する支持部材本体と、この支持部材本体の上面側に設けられて前記水上側面材の水下側端縁を支持する第1支持部と、前記支持部材本体の水下側に設けられて前記水下側面材の水上側端縁を支持する第2支持部とを有し、前記第2支持部が前記第1支持部よりも下方に形成されて前記水上側面材と前記水下側面材とが段差を有して設置されている屋根。
【請求項2】
前記第1支持部は、前記支持部材本体から上方に延びて前記水上側面材の下面に当接する第1当接部と、前記支持部材本体の水下側から前記水上側面材の水下側端縁に沿って上方に延びる立上片部と、この立上片部の上端縁から水上側に延びて前記水上側面材の上面に当接する第2当接部とを有して構成され、
前記第2当接部が前記水上側面材の上面に沿った板状に形成されている請求項1に記載の屋根。
【請求項3】
前記水上側面材における水上側から水下側に向かう方向に沿った側端縁は、当該水上側面材を上下から挟持する側方支持部材で支持されており、
前記交差支持部材の立上片部には、前記側方支持部材を水下側に貫通させる切欠きが形成されている請求項2に記載の屋根。
【請求項4】
前記側方支持部材の水下側端部は、前記交差支持部材の上面に止水部材を介して支持されている請求項3に記載の屋根。
【請求項5】
前記水上側面材は、水上側から水下側に向かう方向と交差して並べて設置される複数の水上側面材から構成され、これら複数の水上側面材同士の隣接する側端縁は、当該水上側面材を上下から挟持する中間支持部材で支持されており、
前記中間支持部材は、前記水上側面材の下面に当接する第1中間支持部材と、当該水上側面材の上面に当接する第2中間支持部材とを有して構成され、前記第1中間支持部材の水下側端部は、前記交差支持部材の支持部材本体上面に支持されるとともに、当該交差支持部材の立上片部よりも水上側に位置して設けられ、
前記立上片部には、水抜き孔が形成されている請求項2から請求項4のいずれかに記載の屋根。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−297770(P2008−297770A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−143867(P2007−143867)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【出願人】(390005267)YKK AP株式会社 (776)