説明

岸壁クレーンの運転方法、及びその運転制御システム

【課題】コンテナ船内のコンテナの解放作業を行う作業員と、荷役作業を行うクレーンオペレータを有する情報を共有化し、安全性が高く、且つ、荷役効率の高い岸壁クレーンの運転方法、及びその運転制御システムを提供する。
【解決手段】海上輸送用のコンテナ5を、コンテナ船2から陸上に荷揚げする岸壁クレーン3の運転方法において、コンテナ船上のコンテナ5の固縛装置8を解除する解放作業ステップと、固縛装置8を解除したコンテナ5の情報を無線通信端末10に入力する入力ステップと、情報を無線でコンテナターミナル制御システム4に送信するデータ蓄積ステップと、コンテナ5の荷役を行う岸壁クレーン3が、コンテナターミナル制御システム4から情報を車載端末14で受信する受信ステップと、情報を基に、岸壁クレーン3でコンテナ5を荷役する荷役作業ステップを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンテナ船からコンテナを荷揚げする、岸壁クレーンの運転方法及びその運転制御システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
港湾や内陸地等のコンテナターミナル(コンテナヤードともいう)では、岸壁クレーンや門型クレーンによって、コンテナ船及びトレーラ間のコンテナの荷役を行っている。図3にコンテナターミナル1Xの概略を示す。
【0003】
以下に、コンテナターミナル1Xにおいて、コンテナ5を荷役する様子を説明する。このコンテナターミナル1Xでは、まず、コンテナ船2に積載したコンテナ5を、岸壁クレーン3で荷揚げし、トレーラ26に搭載する。そして、コンテナ5を搭載したトレーラ26は、コンテナ載置エリア27に移動する。その後、門型クレーン25は、トレーラ26からコンテナ5を吊り上げ、コンテナ載置エリア27に載置する。
【0004】
なお、コンテナ5には、ドライコンテナ5Dと呼ばれる通常のコンテナや、リーファーコンテナ5Rと呼ばれる保温機能を有したコンテナがある。このリーファーコンテナ5Rは、冷凍コンテナとも呼ばれており、冷凍食品や野菜等を運搬する際に利用し、外部電源により、内部の保温を行っている。
【0005】
また、コンテナ載置エリア27には、ドライコンテナ5Dを載置するドライエリア27Dや、リーファーコンテナ5Rを載置するリーファーエリア27Rがある。このリーファーエリア27Rには、リーファースタンド28を設置している。このリーファースタンド28は、リーファーコンテナ5Rに電気を供給するための電源を設置したものである。
【0006】
次に、岸壁クレーン3で、コンテナ船2からコンテナ5を荷揚げする荷役作業について説明する。図4に、コンテナ船2に、コンテナ5を積載している様子を示す。このコンテナ船2の上甲板のハッチカバー21上に、コンテナ5を並べて、固縛装置8で固定して積載している。固縛装置8は、具体的には、ターンバックルにより固縛するラッシングロッド8a、及びスタッキングコーン(上下連結金物)8b等がある。ラッシングロッド8aは、ラッシングブリッジ22を利用して、コンテナ5を固定する固縛装置8である。また、スタッキングコーン8bは、コンテナ同士を上下で連結して固定する固縛装置8である。
【0007】
荷役作業の際は、この固縛装置8を取外す解放作業が必要となる。また、コンテナ5が、特にリーファーコンテナ5Rである場合は、コンテナ船2の電源と接続している電源ケーブルを取外す解放作業が必要となる。これらの解放作業は、人力で行っている。なお、1台の岸壁クレーン3の荷役作業に対して、4〜5人程度の作業員が解放作業を行っている。
【0008】
また、図5Aにスタッキングコーン(上下連結金物)8bを示す。スタッキングコーン8bは、コンテナ5(リーファーコンテナ5R、ドライコンテナ5D等)の上面及び下面の4隅に設けた開口部に挿入し、コンテナ5同士を上下方向で互いに連結する金物である。このスタッキングコーン8bによる固縛は、図5Bの上段に示す様に楕円形状に形成したコンテナ5の開口部に、断面を楕円形状に形成した頭部24を挿入して行う。そして、図5Bの下段に示す様に、開口部に挿入した頭部24を、レバー23の操作により回転し、この回転により、頭部24が開口部29に係止される構造となっている。同様に、固縛状態であるスタッキングコーン8bのレバー23を操作すると、スタッキングコーン8bがコンテナ5から分離可能な状態となる。作業員は、このレバー23を操作しながら、固縛を解除し、スタッキングコーン8bを回収する作業を行っている。
【0009】
ところで、コンテナターミナルの運用を効率化する観点から、コンテナ船2の停泊時間は、最小限に抑えることが望ましい。そのため、解放作業は、岸壁クレーン3の荷役作業と平行して行っており、固縛装置8等を解放した直後に、コンテナ5が荷役されるような状況にある。
【0010】
また、リーファーコンテナ5Rには、冷凍食品等の厳格な温度管理が要求される貨物を納めている。そのため、コンテナ船上で電源ケーブルを外してから、リーファーエリア27Rで電源ケーブルを接続するまでの時間を、規定時間内に収める必要がある。この規定時間を守るため、コンテナ船上において、電源ケーブルを外すのは、荷役の直前となる。このように、岸壁クレーン3の荷役作業と、作業員による解放作業を、同時平行して行うことで、コンテナターミナルの運用を効率化している。
【0011】
しかしながら、荷役作業と解放作業を同時平行して行う場合、いくつかの問題点を有している。第1に、岸壁クレーン3が、ラッシング等の固縛装置8の解除が完了していないコンテナ5を荷役する事故が発生するという問題を有している。このような事故では、クレーン3は、複数のコンテナ5を一度に吊り上げるような状態となるため、クレーン構造物や機械装置に過負荷が作用して、損傷が発生してしまう。
【0012】
また、荷役対象となるコンテナ5がリーファーコンテナ5Rの場合は、電源ケーブルが切断してしまう事故となる。この電源ケーブルの切断事故は、リーファーコンテナ5Rの温度管理が不可能となり、内部の貨物に損傷を与え、貨物を破棄せざるを得ない状況となることが多い。
【0013】
第2に、岸壁クレーン3のオペレータが、解放作業を行う作業員を目視することは困難であるため、作業員の傍のコンテナ5を荷役し、作業員の負傷事故が発生するという問題を有している。特に、解放作業と荷役作業の時間的間隔を小さくして、効率化を図ると、この事故の発生する可能性が高くなってしまう。
【0014】
他方で、コンテナターミナルに設置した制御システムによって、効率を向上する方法が提案されている(例えば特許文献1及び2参照)。特許文献1には、岸壁クレーン3の運転の一部を自動化して、クレーンオペレータの作業負荷を低減し、その結果、荷役効率を向上する方法が記載されている。
【0015】
また、特許文献2には、制御システムにより、門型クレーン25のオペレータに、荷役すべきコンテナ5を指示する方法が記載されている。この指示に従ってコンテナ5を荷役することで、コンテナターミナル内におけるコンテナ5の荷役を、効率的に行うことができる。
【0016】
つまり、コンテナターミナルでは、例えば、あるコンテナ船から異なるコンテナ船へ、一部のコンテナの乗換えを行う場合があり、この乗換えを行うコンテナは、移動先のコンテナ船が到着する岸壁近くに載置する必要がある。また、トレーラによりコンテナターミナルの外部に運搬するコンテナは、コンテナターミナルの出口傍に載置する必要がある。このコンテナの載置する位置の指示を制御システムにより行い、荷役作業を行う領域を分散し、荷役効率の向上を実現している。
【0017】
図6に、従来技術の制御システムを採用した、コンテナターミナル1Xにおける岸壁ク
レーンの運転方法の概念を示す。コンテナターミナル1Xには、主に、コンテナ5を搭載しているコンテナ船2と、コンテナ5を荷役する岸壁クレーン3と、コンテナターミナル1Xの運行を制御するコンテナターミナル制御システム4がある。
【0018】
次に、コンテナターミナル1Xにおける岸壁クレーン3の運転方法に関して説明する。まず、コンテナ船2で、作業員9が、リーファーコンテナ5Rの電源ケーブル6や、コンテナ5の固縛装置8(ラッシングロッド8a、スタッキングコーン8b等)を外す解放作業Tを行う。この解放作業Tにより荷役可能状態となったコンテナ5、5D、5Rを、岸壁クレーン3で荷揚げする荷役作業Uを行う。
【0019】
岸壁クレーン3は、モニタ画面を有した車載端末(無線ターミナル)14を有している。この車載端末14に、コンテナターミナル制御システム4から、荷役作業Uの指示等をデータ通信L2するように構成している。なお、岸壁クレーン3は、クレーン制御装置15を有している。
【0020】
また、岸壁クレーン3に、荷役作業の指示を出すコンテナターミナル制御システム4は、いくつかの管理システムを組み合わせて構成している。例えば、ヤードプランコンピュータシステム(以下、YPCS)11に、ベッセルプランモジュール(VP)12及びヤードプランモジュール(以下、YP)13を組み合わせたものがある。
【0021】
以下に、各システムの働きを説明する。ヤードプランコンピュータシステム(YPCS)11は、オンライン且つリアルタイムに、コンテナ5に関する情報を管理し、コンテナヤード1X内におけるコンテナ5の在庫管理と、ハンドリングスケジュール(荷役作業の予定)の計画等を行う。このYPCS11は、コンテナターミナル制御システム4の中心となるシステムである。
【0022】
また、ベッセルプランモジュール(VP)12は、コンテナ船2におけるコンテナ情報(識別番号や行き先情報等)及び位置情報等を保持しており、この情報に基づいて、コンテナ5の荷役作業の予定を作成し、岸壁クレーン3に指示する。この指示に基づいて、クレーンオペレータは、荷揚げすべきコンテナ5を識別し、荷役作業Uを行う。
【0023】
また、ヤードプランモジュール(YP)13は、コンテナヤードにおけるコンテナ情報及び位置の情報を保持しており、この情報に基づいてコンテナ載置計画や、コンテナシフトプラン等を作成し、門型クレーン25等に指示する。
【0024】
しかしながら、上記のコンテナターミナル制御システム4を利用した場合であっても、固縛装置8の固定の状況や、リーファーコンテナ5Rの電源プラグの着脱情報を保持することは困難であるため、解放作業と荷役作業を同時進行で行う際に、前述の問題が発生する。つまり、岸壁クレーンで、解放作業の完了していないコンテナを荷役したり、解放作業を行う作業員が負傷する事故が発生したりする問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特表2004−520250号公報
【特許文献2】特開2004−189462号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
本発明は、上記の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、コンテナ船内のコンテナの解放作業を行う作業員と、荷役作業を行うクレーンオペレータが有する情報を共有
化し、安全性が高く、且つ、荷役効率の高い岸壁クレーンの運転方法、及びその運転制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0027】
上記の目的を達成するための本発明に係る岸壁クレーンの運転方法は、海上輸送用のコンテナを、コンテナ船から陸上に荷揚げする岸壁クレーンの運転方法において、前記コンテナ船上の前記コンテナの固縛装置を解除する解放作業ステップと、前記固縛装置を解除したコンテナの情報を無線通信端末に入力する入力ステップと、前記情報を無線でコンテナターミナル制御システムに送信するデータ蓄積ステップと、前記コンテナの荷役を行う岸壁クレーンが、前記コンテナターミナル制御システムから前記情報を車載端末で受信する受信ステップと、前記情報を基に、前記岸壁クレーンでコンテナを荷役する荷役作業ステップを有したことを特徴とする。
【0028】
この構成により、固縛装置の解除状況を、岸壁クレーンのオペレータは、リアルタイムで知ることができるため、固縛装置を解除していないコンテナを荷役してしまう事故を防止することができる。なお、コンテナの固縛装置を解除する解放作業ステップは、作業員による人力で行ってもよく、コンテナ船、岸壁クレーン、又はコンテナターミナル制御システムからの制御信号により自動的に行うようにしてもよい。
【0029】
上記の目的を達成するための本発明に係る岸壁クレーンの運転方法は、海上輸送用のコンテナを、コンテナ船から陸上に荷揚げする岸壁クレーンの運転方法において、前記コンテナ船上のリーファーコンテナの電源ケーブルの連結を解除する解放作業ステップと、前記電源ケーブルの連結を解除したコンテナの情報を無線通信端末に入力する入力ステップと、前記情報を無線でコンテナターミナル制御システムに送信するデータ蓄積ステップと、前記コンテナの荷役を行う岸壁クレーンが、前記コンテナターミナル制御システムから前記情報を車載端末で受信する受信ステップと、前記情報を基に、前記岸壁クレーンでコンテナを荷役する荷役作業ステップを有したことを特徴とする。
【0030】
この構成により、岸壁クレーンのオペレータは、電源ケーブルの解除状況をリアルタイムで知ることができるため、電源ケーブルを解除していないコンテナを荷役してしまう事故を防止することができる。なお、リーファーコンテナの電源ケーブルの連結を解除する解放作業ステップは、作業員による人力で行ってもよく、コンテナ船、岸壁クレーン、又はコンテナターミナル制御システムからの制御信号により自動的に行うようにしてもよい。
【0031】
上記の岸壁クレーンの運転方法において、前記岸壁クレーンが、コンテナを荷役する際に、荷役対象となるコンテナの固縛装置を解除する作業、又はリーファーコンテナの電源ケーブルの連結を解除する作業の内、いずれか一方又は両方の解放作業が完了し、荷役可能な状態であるかを判断する判断ステップと、前記判断ステップで荷役不可能と判断した場合、前記岸壁クレーンのクレーン制御装置に荷役禁止信号を送信し、前記クレーンの荷役動作を停止する禁止制御ステップを有したことを特徴とする。
【0032】
この構成により、岸壁クレーンは、固縛装置又は電源ケーブルの解除が完了していないコンテナを荷役することが不可能となるため、固縛装置又は電源ケーブルを解除していないコンテナの荷役による事故を防止することができる。
【0033】
なお、具体的には、例えば、荷役禁止信号を、岸壁クレーンに搭載したクレーン制御装置に送り、コンテナと、クレーンのスプレッダ(吊り具)を連結する連結金物(ツイストロック)の回転を禁止する制御を行い、コンテナの荷役を禁止することができる。また、スプレッダの巻上げを禁止する制御を行ってもよい。
【0034】
上記の目的を達成するための本発明に係る岸壁クレーンの運転制御システムは、海上輸送用のコンテナを、コンテナ船から陸上に荷揚げする岸壁クレーンの運転制御システムにおいて、前記コンテナ船上の前記コンテナの固縛装置を解除し、前記固縛装置を解除したコンテナの情報を入力する、又はリーファーコンテナの電源ケーブルの連結を解除し、前記電源ケーブルの連結を解除したコンテナの情報を入力する無線通信端末と、前記無線通信端末からの前記情報を受けるコンテナターミナル制御システムと、前記岸壁クレーンが、前記コンテナターミナル制御システムから前記情報を受信する車載端末と、前記車載端末の前記情報に基づき、前記岸壁クレーンを制御するクレーン制御装置を有したことを特徴とする。この構成により、上記の岸壁クレーンの運転方法と同様の作用効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る岸壁クレーンの運転方法、及びその運転制御システムによれば、コンテナ船内のコンテナの解放作業を行う又はコンテナ情報を入力する作業員と、荷役作業を行うクレーンオペレータが有する情報を共有化でき、安全性が高く、且つ、荷役効率の高い岸壁クレーンの運転方法、及びその運転制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る実施の形態の岸壁クレーンの運転方法の概念を示した図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の岸壁クレーンの制御フローを示した図である。
【図3】コンテナターミナルの概略を示した図である。
【図4】コンテナ船にコンテナを積載した様子を示した図である。
【図5】コンテナを上下方向で連結する金物(スタッキングコーン)の使用状況を示した図である。
【図6】従来のコンテナターミナルにおける岸壁クレーンの運転方法の概念を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明に係る実施の形態の岸壁クレーンの運転方法、及びその運転制御システムについて、図面を参照しながら説明する。図1に、本発明に係る実施の形態の岸壁クレーンの運転方法の概念を示す。
【0038】
コンテナターミナル1には、主に、コンテナ5を搭載しているコンテナ船2と、コンテナ5を荷役する岸壁クレーン3と、コンテナターミナル1の運行を制御するコンテナターミナル制御システム4がある。
【0039】
次に、コンテナターミナル1における岸壁クレーン3の運転方法に関して説明する。まず、コンテナ船2で、作業員9が、リーファーコンテナ5Rの電源ケーブル6や、コンテナ5の固縛装置8(ラッシングロッド8a、スタッキングコーン8b等)を外す解放作業Tを行う(解放作業ステップ)。次に、作業員9が、この解放作業Tにより荷役可能となったコンテナ5、5D、5Rの識別番号や位置等の情報を、手持ちの無線端末(ハンディーターミナル)10にデータ入力Kする(入力ステップ)。
【0040】
次に、コンテナ5の情報を、ハンディーターミナル10から、コンテナターミナル制御システム4を構成するベッセルプランモジュール(VP)12とデータ通信Lを行う(データ蓄積ステップ)。次に、VP12の保持するコンテナ5の情報を、岸壁クレーン3の車載端末(モニタ画面付き無線ターミナル)14で受信する(受信ステップ)。次に、このモニタ画面付き無線ターミナル14の指示に従い、クレーンオペレータは、コンテナ5を荷揚げする荷役作業Uを行う(荷役作業ステップ)。なお、データ通信Lは、無線通信や無線LANを利用することができ、これらのデータ通信は、双方向に常時行うことが望ましい。
【0041】
また、この岸壁クレーン3による荷役作業Uにおいて、荷役の対象となるコンテナ5が、荷役可能な状態であるかを判断する(判断ステップ)。コンテナ5が荷役不可能な状態である場合は、岸壁クレーン3に荷役禁止信号を送信し、クレーンの荷役動作を停止する制御を行う(禁止制御ステップ)。
【0042】
ここで、荷役可能な状態とは、解放作業Tが完了しているコンテナ5の状態を示し、固縛装置8の除去や電源ケーブル6の接続解除が完了していることを示す。そして、この判断は、VP12の情報と、クレーン制御装置15から得られるクレーンのスプレッダ(吊り具)の位置情報の比較から行い、この判断は、モニタ画面付き無線ターミナル(車載端末)14、コンテナターミナル制御システム4、又は、クレーン制御装置15等のいずれかで行うように構成している。この判断の結果、荷役不可能と判断した場合は、この荷役禁止信号をクレーン制御装置15に送るように構成している。
【0043】
なお、クレーン制御装置15は、岸壁クレーン3の動作のすべてを制御しており、このクレーン制御装置15から、スプレッダの巻上げ動作や、スプレッダに設置しているツイストロック(連結金具)の回転動作を制御することができる。つまり、クレーンオペレータがコンテナ5の荷役を行うための操作を行っても、クレーン制御装置15により、この操作を遮断することができる。そのため、解放作業Tの終了していないコンテナ5を、クレーンオペレータの操作に関わらず荷役できないように制御することができる。
【0044】
上記の岸壁クレーン3の運転方法により、岸壁クレーン3のオペレータは、解放作業Tの完了しているコンテナ5を、リアルタイムで認識することができる。そのため、解放作業Tと荷役作業Uを同時平行的に行うことができるようになり、コンテナターミナル1における荷役効率の大幅な向上を実現することができる。特に、リーファーコンテナ5Rの保温機能が停止する時間を短縮できるため、貨物の品質維持の精度を向上することが可能となる。
【0045】
また、クレーンオペレータが、作業員9による解放作業Tの進行状況を把握できるため、吊り上げるコンテナ5と作業員9が、接触する事故等を防止することができる。
【0046】
更に、クレーンオペレータが、モニタ画面付き無線ターミナル14の指示を、誤って理解してしまい、解放作業Tの完了していないコンテナ5を荷役しようとした場合であっても、クレーン制御装置15の制御により、強制的に荷役を禁止することができる。そのため、荷役作業Uに伴う事故の発生等を高いレベルで抑制することができる。
【0047】
図2に、岸壁クレーン3の運転方法における制御フローを示す。まず、作業員9が、解放作業Tを行い(固縛装置解放ステップ、電源ケーブル解放ステップ)、解放したコンテナ5の識別番号や位置の情報をハンディーターミナル10に入力する(入力ステップ)。
【0048】
次に、コンテナターミナル1の中央管理室等に設置したコンテナターミナル制御システム4に、ハンディーターミナル10から情報を送信する(データ蓄積ステップ)。
【0049】
次に、岸壁クレーン3の車載端末14が、コンテナターミナル制御システム4からコンテナ5の情報を受信する(受信ステップ)。受信した情報から、現在、荷役しようとしているコンテナ5が、荷役可能な状態であるかを判断する(判断ステップ)。荷役対象のコンテナ5が、荷役不可能の状態であれば、クレーン3は、他の可能なコンテナ5を荷役す
る、又は、荷役可能な状態となるまで待機する。荷役対象のコンテナ5が、荷役可能な状態であれば、荷役作業Uを行い、完了後に次の荷役対象となるコンテナ5が荷役可能な状態であるかの判断を行う。
【符号の説明】
【0050】
1 コンテナターミナル(コンテナヤード)
2 コンテナ船
3 岸壁クレーン
4 コンテナターミナル制御システム
5 コンテナ
5R リーファーコンテナ
5D ドライコンテナ
6 電源ケーブル
8 固縛装置
8a ラッシングロッド
8b スタッキングコーン
9 作業員
10 無線通信端末(ハンディーターミナル)
11 ヤードプランコンピュータシステム(YPCS)
12 ベッセルプランモジュール(VP)
13 ヤードプランモジュール(YP)
14 車載端末(モニタ画面付き無線ターミナル)
15 クレーン制御装置
T 解放作業
U 荷役作業

【特許請求の範囲】
【請求項1】
海上輸送用のコンテナを、コンテナ船から陸上に荷揚げする岸壁クレーンの運転方法において、
前記コンテナ船上の前記コンテナの固縛装置を解除する解放作業ステップと、
前記固縛装置を解除したコンテナの情報を無線通信端末に入力する入力ステップと、
前記情報を無線でコンテナターミナル制御システムに送信するデータ蓄積ステップと、
前記コンテナの荷役を行う岸壁クレーンが、前記コンテナターミナル制御システムから前記情報を車載端末で受信する受信ステップと、
前記情報を基に、前記岸壁クレーンでコンテナを荷役する荷役作業ステップを有したことを特徴とする岸壁クレーンの運転方法。
【請求項2】
海上輸送用のコンテナを、コンテナ船から陸上に荷揚げする岸壁クレーンの運転方法において、
前記コンテナ船上のリーファーコンテナの電源ケーブルの連結を解除する解放作業ステップと、
前記電源ケーブルの連結を解除したコンテナの情報を無線通信端末に入力する入力ステップと、
前記情報を無線でコンテナターミナル制御システムに送信するデータ蓄積ステップと、
前記コンテナの荷役を行う岸壁クレーンが、前記コンテナターミナル制御システムから前記情報を車載端末で受信する受信ステップと、
前記情報を基に、前記岸壁クレーンでコンテナを荷役する荷役作業ステップを有したことを特徴とする岸壁クレーンの運転方法。
【請求項3】
前記岸壁クレーンが、コンテナを荷役する際に、荷役対象となるコンテナの固縛装置を解除する作業、又はリーファーコンテナの電源ケーブルの連結を解除する作業の内、いずれか一方又は両方の解放作業が完了し、荷役可能な状態であるかを判断する判断ステップと、
前記判断ステップで荷役不可能と判断した場合、前記岸壁クレーンのクレーン制御装置に荷役禁止信号を送信し、前記クレーンの荷役動作を停止する禁止制御ステップを有したことを特徴とする請求項1又は2に記載の岸壁クレーンの運転方法。
【請求項4】
海上輸送用のコンテナを、コンテナ船から陸上に荷揚げする岸壁クレーンの運転制御システムにおいて、
前記コンテナ船上の前記コンテナの固縛装置を解除し、前記固縛装置を解除したコンテナの情報を入力する、又はリーファーコンテナの電源ケーブルの連結を解除し、前記電源ケーブルの連結を解除したコンテナの情報を入力する無線通信端末と、
前記無線通信端末からの前記情報を受けるコンテナターミナル制御システムと、
前記岸壁クレーンが、前記コンテナターミナル制御システムから前記情報を受信する車載端末と、
前記車載端末の前記情報に基づき、前記岸壁クレーンを制御するクレーン制御装置を有したことを特徴とする岸壁クレーンの運転制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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