説明

崩壊可能/拡張可能な人工心臓弁を移植するための装置及び方法

従来的な開胸開心術よりも侵襲的でない手段によって人工心臓弁を患者内に送り込むための装置。人工弁は、供給装置内にある間は崩壊され得る。弁が患者内の所望の移植場所に達すると、弁は供給装置から解放されることができ、それは弁が心臓弁として機能し得る構造に再拡張することを可能にする。例えば、供給装置は、患者の心臓の尖を介して患者内への人工弁の供給を容易化するよう構成され得る。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2007年6月26日に出願された米国仮出願第60/937,361号の利益を主張し、その全文を参照としてここに引用する。
【背景技術】
【0002】
この発明は、例えば、患者の心尖で患者の肋骨の肋間腔を通じて、最小侵襲的な(或いは少なくとも減少侵襲的な)ポートアクセスを介して崩壊可能な人工心臓弁を収容し、保持し、維持し、輸送し、展開し、固定を助け、且つ、解放し得る、崩壊可能/拡張可能な人工心臓弁供給システムに関する。
【0003】
崩壊可能/拡張可能な人工心臓弁の分野は比較的新しい。一般的な着想は、(典型的には、比較的小さい直径の管を介して)患者の体に対する減少侵襲性を伴う患者内への供給のために、比較的小さい大きさ(直径)に崩壊され得る人工心臓弁を提供することである。弁が患者内の所望の移植場所に達すると、弁は供給装置から解放され、その完全動作サイズに拡張される。これは弁を移植場所で患者の組織に固定することも含む。
【0004】
患者の動脈系又は静脈系を使用してそのような崩壊可能/拡張可能な人工心臓弁を送り出し且つ展開する幾つかの方法がある。しかしながら、これらのアプローチは、それらが疾患したより小さい血管内で使用され且つ塞栓の危険性を最小限化するように使用され得るよう、より小さい供給系プロファイル(横断面)を必要とするような、特定の制約を課し得る。これは、より小さい供給系プロファイルを通じた弁の供給の要求に適合するために、弁設計及び性能における望ましくないトレードオフを招き得る。
【0005】
理想的には、供給システムは、耐久性があり且つ効率的な弁設計に関して設計されるべきであり、よって、弁の長期の移植性能要求のいずれをも妥協しない。そのようにすることで、弁設計は、その意図される性能及び長期耐久性機能のために十分であるべきである。これは人間の動脈又は静脈供給アプローチにとって適切であるよりも幾分大きい崩壊状態における弁プロファイルをもたらし得ることによって、弁をその意図される移植場所に送り出す代替的なルートを要求する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
経中隔(心臓の中隔を通じる)順行(固有血流と同じ方向への供給)アプローチは、試みられた1つのアプローチである。経中隔アプローチにおいて、アクセスは右心房に至る静脈循環系を通じて得られる。穿刺が左心房と右心房とを分離する中隔壁を通じて行われる(故に、経中隔という用語)。次に、カテーテルが僧帽弁を通じて左心室内に進められ、輪を作って戻り、大動脈弁で終了する。しかしながら、このアプローチは、幾つかの不利点を有し得る。例えば、大動脈弁へのアクセスを得ようとするときに、それは僧帽弁及び関連する腱への損傷を招き得る。対照的に、経尖端(心臓の尖を通じる)順行アプローチは、大動脈弁及び僧帽弁への直接的なアクセスのために左心室(「LV」)に進入するための、より良好でより安全な代替をもたらし得る。(例えば、オンラインで入手可能な、P.Tozzi et al.の“Endoscopic off−pump aortic valve replacement: does the pericardial cuff improve the sutureless closure of left ventricular access?”,European Journal of Cardiothoracic Surgery 31 (2007) 22−25 2006年9月6日を参照)。心臓の尖(下方端部)にある小さいポートを通じてLVにアクセスすることは新しくはない。何故ならば、これは小児科におけるバイパスシャントを配置する数十年に亘る慣行であるからである。このアクセスアプローチには、それを安全で効果的にする良好な長期の臨床的な経験がある。最適な供給システム設計を用いるならば、欠陥のある生来の弁の修復及び/又は交換の目的のために、大動脈弁又は僧帽弁へのより安全でより効率的な直接的なアクセスを達成し得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の供給システムは、崩壊可能/拡張可能な人工心臓弁の供給及び展開のために必要とされる様々な機能を容易化するよう共に働く幾つかの構成部品を含み得る。供給システムは、人間工学的ハンドルに取り付けられる細長いシャフトを含み得る。ハンドルは、装置内に幾つかの機能的な特徴のための幾つかの制御装置を組み込み得る。これらの制御装置の1つは、展開及び最終解放に先立ち弁を前進/後退するよう機能する回転歯車であり得る。他の制御装置は外部シャフトであり、それは弁崩壊/拡張機構として機能するポリマシースを含み得る。外部シャフト内側並びにシース内には、供給システムの遠位端部で供給装置先端部に接続される内部移動可能なシャフトがあり得る。いずれか(前進又は後退)の方向に回転されるときに、歯を備える歯車がシャフトと係合し、シャフトを軸方向に移動し得るよう、シャフトはノッチ付きであり得る。人工心臓弁は、先端部と基部との間でこのシャフトの上に取り付けられ得る。基部プラットフォームは、弁保持及び規制機構として機能し得る。弁はこの基部の上に位置し、様々な機構を使用して所定位置に固定され得る。例えば、基部は、近位端部上のハンドルで装置の外側に走る縫合糸を使用して弁の近位ストラットが固定的に締め付けられるのを許容する機能又は貫通孔を有し得る。操作者が弁の位置及び向きに満足であるとき、弁はこの縫合糸を切断し且つ引っ張ることによって解放され得る。代替的に、最終解放まで弁を所定位置に固定するために、他の機構も利用され得る。
【0008】
内部移動可能なシャフトは、装置の近位端部にあるマニフォルドポートを遠位端部(先端部)にある或いはその付近にある1つ又はそれよりも多くの開口に接続する多管腔を含み得る。これらの管腔は、流体(生理食塩水、造影剤等)の供給、及び、塞栓保護装置、弁形成用バルーン等の展開のような、様々な機能のために利用され得る。
【0009】
外部シャフトの外側には、バネによって駆動される緩い圧力によって心臓の尖又は進入地点での他のアクセスを封止するのを助けるために、バネ荷重ドーナッツ形状の構成部品を含め得る。
【0010】
この装置は恒久的な移植片ではないので、供給システムは短期の人間相互作用のために生物学的に適合性のあるとして既知の材料から製造され得る。しかしながら、材料選択は、この装置が恒久的な移植片と接触するようになるという事実を考慮すべきである。
【0011】
装置ハンドルは、生体適合性を有するポリマ材料から射出成形され得る。細長いシャフトは重合体であり得るし、或いは、レーザ切断/機械加工される外科等級ステンレス鋼であり得る。内部作動構成部品は、各構成部品の機能の及び性能要求に依存して、重合体起源、ステンレス鋼、形状記憶ニチノール(ニッケル/チタン合金)材料等のいずれかからであり得る。マニフォルドは、射出形成ポリカーボネイトであり得る。封止ドーナッツは、様々なデュロメータのシリコンから作成され得る。装置構成部品は、継目のない作動システムを容易化するために、干渉嵌め、タブ、スロット、接着剤、ポリマ熱接着、及び/又は、係止機構の様々な手段を使用して、一体に適合し得る。
【0012】
本発明の様々な有利な機能が、以下の幾つかの段落において(ある程度まで前述のことを要約しながら)特定される。
【0013】
本発明の特定の特徴は、崩壊可能/拡張可能な人工心臓弁のための人間工学的な手持ち式の使用が容易な供給システムに関する。そのような供給システムは、ハンドルと、弁を収容する細長いシャフトとを含み得る。ハンドルは、装置内に特定の機能のための制御装置を組み込み得る。
【0014】
供給システムは、弁解放(release)、回収(retrieve)、及び/又は、再位置決め(reposition)機構を含み得る。
【0015】
装置は、全ポリマ構造の場合に蛍光透視の下での供給システム(特に遠位端部)の案内及び視覚化のために(例えば、遠位先端部にある或いはその付近にある)1つ又はそれよりも多くの放射線不透過性マーカバンド(marker band)を含み得る。
【0016】
装置は、精密な弁位置決めのために精密な車輪駆動の前進/後退能力を含み得る。代替的な機構(例えば、摺動レバー)も可能である。
【0017】
装置は、回収が望ましいときには、それを解放せずに弁を完全に展開するための能力を含み得る。
【0018】
装置は、案内ワイヤ、バルーンカテーテル、塞栓保護装置、流体供給(洗浄又は視覚化)等のような付随的装置を使用した手続的支持のために、シャフト内に多管腔能力を含み得る。
【0019】
弁は異なる構造を使用して供給システムの内部機能に固定され得る。1つの方法は、(例えば、縫合糸、機械的干渉嵌め機能等を使用して)弁の近位端部をホルダ基部に固定することである。他の方法は、装置の近位端部(ハンドル)から弁内の特別に設計される構造を通じて走る縫合糸(ポリマ被覆薄層ワイヤ又はこれに類似するあらゆる他の適切な手段)を利用することである。次に、このストランドは、装置先端部内の特別に設計される通路を通じて走り、中央管腔(又は他の特別な管腔)に戻り、ハンドルの傍で装置の外側で終了し得る。その場所で、操作者はそれを制御し得る。このワイヤ/縫合糸を緊張し或いは緩めることは、弁を展開させ或いは再崩壊させる。これは弁を部分的に展開し且つ所望の再位置決め又は回収のために再捕捉するために使用され得る。
【0020】
ハンドルに独立制御装置を備える移動可能なシースは、弁の上にシースを前進/後退させることによって、弁崩壊/拡張機構として機能し得る。シースは、崩壊状態にある弁を維持し且つ保護し得る。シースは、例えば、装置の操作者が患者内の弁の適切な位置付けを確認し得るよう、弁の部分的な展開及び拡張も容易化する。
【0021】
弁が、例えば、固有弁の交連(commissure)に対して人工弁の交連を所望に整列するために、その長手軸についての正しい角向きを備えて展開され得るよう、装置は、供給システム内の弁向きを制御する先端部及び弁ホルダ基部内の機能を含み得る。これらの機能は、例えば、人工弁の上の機能に対応するアンダーカット又は陥凹であり得る。
【0022】
従来的な巾着縫合と共に、バネ荷重、シリコン、成形、ドーナッツ形状構成部品が、心臓の尖又は患者の循環系内への他のアクセスにある入口を封止することを助け得る。
【0023】
装置は、後部マニフォルドコネクタにある管腔ポートのいずれかへのアクセスを開放し且つ閉塞する能力を含み得る。
【0024】
装置先端部は、弁遠位端部が、(例えば、最小侵襲的供給のための弁の崩壊の間にステント及び弁小葉への損傷を防止するために)弁の崩壊直径を制御する方法で位置することを可能にする機能を含み得る。
【0025】
供給システムは、弁展開及び解放に備えて、開放の石炭化された固有の心臓弁小葉を(例えば、ヴァルサルヴァ洞内に)押し込むために、遠位端部付近で突出しシャフトの外側に延びるフォーク状構造を含み得る。そのような目的のための実施態様の他の実施例は、傘のような構造を展開することである。そのような傘設計は、以下の2つの機能を果たし得る。(1)石炭化された小葉後退、新しい弁展開に備えて、そのような固有小葉構造を押し出すこと。(2)傘の展開リブ内に精細メッシュを組み込み、よって、処置からの如何なる塞栓をも捕捉することによって達成され得る、塞栓保護。処置が完了するや否や、この傘は崩壊され且つシャフト内に後退され、それによって、患者から全ての塞栓及び如何なる石炭化される破片をも安全に取り除き得る。所望のときに傘を崩壊するために使用され得る構造の実施例は、傘リブのそれぞれに取り付けられる薄いストランド(例えば、ワイヤ又は縫合糸)を含む。これらのストランドは、主要中心管腔内に延びる。これらのストランドを近位端部から引っ張ることは、傘のリブを崩壊させる。
【0026】
供給システム歯車は、ハンドルの両側からの回転アクセスのために、ハンドル内で中心に位置付けられ得るし、或いは、それは装置ハンドルの1つの側のみから突出するよう偏心され得る。
【0027】
装置は、好ましくは、血液が様々な通路を通じて心臓の外側に滲み出すことを防止するために、様々な地域にシール(封止)を含む。
【0028】
本発明のさらなる機能、その本質、及び、様々な利点は、付属の図面及び以下の詳細な記載からより明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に従った装置の例証的な実施態様を簡略に示す正面図である。
【図2】図1の実施態様を簡略に示す等角図又は斜視図である。
【図3】図1の実施態様を(内部の幾らかを顕わにするために部分が取り外された状態で)簡略に示す他の正面図である。
【図4】本発明に従った装置の他の例証的な実施態様を簡略に示す等角図又は斜視図である。
【図5】図4の実施態様を(内部の幾らかを顕わにするために部分が取り外された状態で)簡略に示す一部正面図又は斜視図である。
【図6】上述された実施態様の部分を簡略に示す正面図又は斜視図である。
【図7】図4の実施態様の部分を簡略に示す正面図又は斜視図である。
【図8】図4の実施態様と類似し得る装置の例証的な実施態様を(一部の部分が取り外された状態で)簡略に示す正面図であり、本発明に従った可能な追加的な構成を備える。
【図9】図8に概ね類似する他の正面図であるが、本発明に従った装置の使用における後の段階に関する。
【図10】図4の装置の部分を簡略に示す等角図又は斜視図である。
【図11】図8の部分を簡略に示す等角図又は斜視図である。
【図12】図4の部分を簡略に示す等角図又は斜視図である。
【図13】本発明に従った装置の動作の後の段階を示す図12に類似する等角図又は斜視図である。
【図14】本発明に従った装置の動作におけるさらに後の段階を示す図13に類似する他の等角図又は斜視図である。
【図15】本発明に従った装置の動作におけるさらに後の段階を示す図14に類似するさらに他の等角図又は斜視図である。
【図16】本発明に従った装置の動作におけるさらに後の段階を示す図15に類似するさらに他の等角図又は斜視図である。
【図17】本発明に従った図16の装置の動作における一層後の段階を簡略に示す正面図である。
【図18】図17中に示されるものを簡略に示す等角図又は斜視図である。
【図19】本発明に従った装置の動作におけるさらに後の段階を示す図18に類似する他の等角図又は斜視図である。
【図20】図19に示されるものを簡略に示す正面図である。
【図21】幾つかのより前の図面からの1つの構成部品の例証的な実施態様を簡略に示す正面図である。
【図22】図21に示されるものを簡略に示す等角図又は斜視図である。
【図23】ある側面において図4に類似する、本発明に従った可能な追加的な構成部品の例証的な実施態様を示す等角図又は斜視図である。
【図24】図23に示されるものの一部を簡略に示す等角図又は斜視図である。
【図25】図24に示されるものを簡略に示す正面図である。
【図26】図23乃至25に示されるものの一部を簡略に示す等角図又は斜視図である。
【図27】本発明に従った可能な機能の例証的な実施態様を部分的に断面で簡略に示す一部正面図である。
【図28】本発明に従った他の可能な機能の例証的な実施態様を簡略に示す断面図である。
【図29】本発明に従った他の可能な機能の例証的な実施態様を部分的に断面で簡略に示す一部正面図である。
【図30】本発明に従った装置内で使用され得る構造の例証的な実施態様を簡略に示す斜視図又は等角図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明に従った人工心臓弁供給装置10の例証的な実施態様が図1に示されている。図1及び幾つかの後続の図面は、人工弁の全ての描写を省略しているが、幾つかのさらに後の図面は、そのような弁の実施例を示している。図1において見ることのできる装置10の構成部品は、ハンドル20、制御歯車30、外部シャフト40、内部シャフト50、遠位先端部60、及び、近位(後方)マニフォルドコネクタ70を含む。素子40及び70は、両方ともハンドル20に固定されている。制御歯車30は、制御歯車の回転の方向に依存して、シャフト50(及び遠位先端部60)をシャフト40に対して前進或いは後退させるよう、軸について回転可能である。遠位先端部60は、シャフト50の遠位端部に固定されている。コネクタ70は、装置の他の構成部品を通じて1つ又はそれよりも多くの管腔(lumen)と連絡する1つ又はそれよりも多くの管腔を含み得る。
【0031】
素子20、30、及び、70は、常時、患者の外側に留まる。素子40、50、及び、60は、人工心臓弁を患者内に送り込み且つその人工心臓弁を患者内に展開(移植)するために、非侵襲的な方法で患者の体内へ挿入されるよう設計されている。より具体的には、人工心臓弁は、装置10の遠位部分内に(崩壊状態で)初期的に収容される(即ち、シャフト50の周りで同軸に、シャフト40の内側に、そして、遠位先端部60と当接する)。装置のこの状態において、シャフト40は、弁を崩壊状態に維持するのを助け得るし、(近位に後退されている)遠位先端部60は、弁をシャフト40の内側に維持するのを助け得る。装置の遠位部分が、患者内の弁のための所望の移植場所に達すると、歯車30は、シャフト40の遠位端部から遠位先端部60、シャフト50の遠位部分、及び、人工心臓弁を延出するよう回転され得る。これは人工心臓弁がその完全動作サイズにシャフト50から径方向外側に拡張することを可能にし、それは弁が患者の周囲の固有組織と係合させ、それによって、患者内に移植させる。次に、装置は患者から(近位に)引き出され得る。具体的には、遠位先端部60は、今や拡張された弁の中心を通じて外へ出る。
【0032】
前記に関するさらなる詳細は、この明細書の後に提供される。
【0033】
図1の実施態様において、シャフト40は、ハンドル20に対して偏心している(即ち、シャフト40は、ハンドル20の頂部から底部の中央の幾分下にある)ことが付記されるべきである。他方、歯車30は、ハンドル20の中心に配置され、ハンドルの上又は下のいずれかからの動作のために露出されている。
【0034】
図2及び3は、装置10の他の図面を示している。図3は、ハンドル20の半分が取り外された状態の装置を示している。これは歯車30とシャフト50との間の接続を顕わにしている。具体的には、それは歯車30の回転軸と同軸で歯車30上に平歯車32があることを示している。この平歯車は、シャフト50上のラック52と係合する。これらの機能は、シャフト50の長手軸に沿うシャフトの平行移動を引き起こす歯車30の回転を可能にする。(この種類の機能は、図5にある他の実施態様に関して、より明瞭に見られ得る。)
【0035】
装置10の代替的な実施態様が、図4に示されている。図4の実施態様は、図1乃至3の実施態様と幾分異なるが、概ね類似の素子のために同じ参照番号が使用され続けている。よって、それらの素子の前の記載から、そのような素子のための追加的な情報を拾い集めることができ、異なる実施態様において(少なくとも概ね類似の形態で)再び使用される素子のために前述されたことを反復する必要はない。
【0036】
図4においては、シャフト40は、ハンドル20上で(頂部から底部までの)中央に配置されている点で、図4の実施態様は、図1乃至3の実施態様と異なる。他の相違点は、図4において、制御歯車30が、ハンドル20の頂部からのみ動作可能であることである。
【0037】
図4は、シャフト40の長さの中間部分の周りに同軸に配置されたトロイダル又はドーナッツ形状の封止リング80の可能な追加である。リング80は、シャフト40の周りに比較的密接して適合するが、リング80は、シャフト40に沿って軸方向に摺動可能でもある。もしリング80が図4に示される近似の開始位置から近位方向に移動されるならば、(同様にシャフト90の周りに同軸に配置される)コイルバネ90が、それを弾性的に付勢して開始位置に向かって戻すよう作用する。リング80は、シャフト40の遠位部分が患者の心臓の尖にある開口(孔)又は患者の循環系への他のアクセスを通じて押されるときに、リング80は、孔の周りの組織の外表面を支持し、孔を介した循環系からの血液の漏れを減少するのに役立つ。バネ90は、この目的のために、リング80を組織の外側に弾性的に押し付けられた状態に維持する。リング80は、装置10の他の構成部品よりも柔らかい材料から成り得る。例えば、リング80は、シリコンから成り得る。
【0038】
図5は、ハンドル20が取り外された状態で、図4の実施態様の一部の拡大図を示している。よって、図5は、図3に関して前述されたように、シャフト50上のラック52と係合する歯車30上の平歯車32を示している。図5は、コネクタ70から装置の遠位部分に延び得る管100も示している。例えば、管100は、患者内に蛍光透視的に認識できる造影をもたらすという目的のために、コネクタ70を介して導入される流体が先端部60の遠位端部から患者内に解放されるのを許容するよう、先端部60の遠位端部内の開口62に延び得る。1つよりも多くのそのような管100があり得る。それらは装置内の異なる目的地に行き得るし、それは異なる目的のためであり得る。シャフト50が、管100に対して軸方向に(即ち、長さ方向に)平行移動可能であることに留意のこと。
【0039】
図6は、素子40及び50の一部並びに素子60をより大きな尺度で示している。図7は、素子20の一部及び70に関して同様のことを行っている。図7は、素子70が、その素子を通じる管腔を選択的に閉塞するための弁72を含み得ることも示している。具体的には、弁72は、コネクタ70を通じる管腔を閉塞するために、例えば、血液がその管腔を介して患者から漏れ出すことを防止するために、操作者によって制御され得る。望ましいときには、操作者は、例えば、流体又はある他の補助材料又は装置が関連する管腔を介して患者内に導入されるのを可能にするために、弁72を開放し得る。描写される弁72は、所望であれば、他の管腔のために反復され得る。
【0040】
図8は、前に示されたものに対する可能な追加の例証的な実施態様を示している。具体的には、図8は、(装置10によって送り込まれる人工心臓弁によって置換されようとしている)患者の固有の心臓弁の固有の小葉を押し戻すために、)複数の指部110が、(遠位先端部60がシャフトの遠位シャフト端部から移動されて幾分離れるときに)シャフト40の遠位端部から選択的に展開され得ることを示している。指部110は、シャフト40の遠位部分の内側の環状配列内に初期的に閉じ込められ得る。それらを展開することが望ましいとき(典型的には、装置の遠位部分が、置換されるべき固有の弁に対して適切に位置付けられるとき)、指部110は、シャフト40の遠位端部から押されて部分的に離れ得る。次に、それらは、依然として図8に示されるような環状配列内にあるが、中心シャフト50からより遠くに径方向に弾性的に延出する。この状態において、指部110は、固有弁内での人工弁の展開のために適切な余地を作るのを助けるために、固有の弁の小葉を(例えば、患者の固有のヴァルサルヴァ洞内に)押し戻す。図30に示されるように、指部110は、シャフト40の内側でハンドル20内に長手に走るシャフト112に取り付けられ得る。指部110及びそれらのシャフト112は、ハンドル20の外側にある摺動制御装置、レバー、又は、類似物を介して、シャフト40に対して前進され或いは後退され得る。例えば、図30は、シャフト112の近位端部に取り付けられた制御部材114を示している。制御部材114は、ハンドル20の側部にあるスロットから突出することができ、そこで、制御部材は、指部110を前進し或いは後退するために、装置の使用者によって操作され得る。代替的に、制御部材114は、先行文章中で述べられたのと同じ目的のために、ハンドル20上の他のアクチュエータ素子に接続し得る。
【0041】
図9は、図8に示されるものと類似する構造を示しており、装置の遠位端部付近から今や展開される人工弁200を追加的に備える。後続図面は、より大きな尺度でより詳細に、弁200及びその展開を示しており、よって、弁のより詳細な議論が、他の図面との関連で後に提供される。ここでは、弁200の主要構成部品が、(例えば、金属の)環状枠組み210と、その枠組み内に配置され且つその枠組み上に取り付けられる複数の可撓な弁小葉2210とで構成されることが予備的に付記される。枠組み210及び小葉220は、シャフト40の内側に適合し得る円周サイズに径方向に崩壊可能である。しかしながら、図9に示されるように、シャフト40の遠位端部を超えて移動されるとき、枠組み210は、(図9に示されるように)弾性的に拡張することができ、小葉(leaflet)220を枠組みで支持し、それらの小葉が(置換される固有の心臓弁のように)一方向血流逆止弁として動作し得るよう、それらの小葉を互いに対して位置付ける。
【0042】
図10は、素子80及び90(並びに隣接する素子の部分)をさらにより大きな尺度で示している。図11は、素子110及び隣接する素子の部分に関して同様のことを行っている。先端部60の遠位端部内の開口62に留意のこと。その開口は、上述された管100を通じて管腔と連絡し得る。
【0043】
図12乃至20は、弁200がどのように展開され得るかを示している。これらの図面は、弁200及び供給装置10の遠位部分に焦点を合わせている。図12は、装置のこの部分が(例えば、患者の心臓の尖内の孔を介して)患者内に導入されるときに、装置のこの部分が有する状態における、装置のこの部分を示している。先端部60は、装置のこの部分に滑らかな外表面をもたらすよう、シャフト40の遠位端部に対していることに留意のこと。
【0044】
装置10の遠位部分が、患者内の所望の場所(例えば、人工心臓弁を移植するための所望の場所)に達するとき、遠位先端部60及び一部の関連する構造は、図13に示されるように、シャフト40の遠位端部から遠位に移動され得る。前の図面中に示されたものに加えて、図13は、装置が、崩壊弁200の外側の周りであるが、崩壊指部110の内側に、スリーブ120を含み得る。このスリーブは、指部110から弁200を保護するのに役立ち得るし、それは弁200の段階的展開も促進し得る。図13が示すように、スリーブ120は、先端部60及びスリーブ120内部の他の素子と共に、遠位方向に初期的に移動する。
【0045】
次のステップは、図14に示されている。このステップでは、指部110のこれらの遠位端部が径方向に外向きに広がり、それによって、患者の固有の心臓弁の小葉を押し戻し得るよう、指部110は、シャフト40の遠位端部から部分的に押し出される。問題がここで以下の通り述べられなければならない。図14及び後続図面は、実際にそうであるべきよりも指部110に対してより遠位にある場所にある内側展開指部110である装置を示し得る。例えば、素子120及び60は、図14(及び後続図面)に示されるほど、それらの指部の展開後の指部110から遠く遠位になくてもよい。代わりに、弁200は、図面だけが示唆し得るよりも展開される指部110に近く展開され得る。様々な部分がより明瞭に(即ち、重ね合うことによって、互いに覆い隠さずに)見られ得るよう、図面はこの点に関して実務であり得るものから逸脱している。
【0046】
次のステップは、図15によって例証されている。このステップでは、スリーブ120は、人工心臓弁200を露出し始めるよう近位に引き戻される。図面を過剰に複雑化しないよう図15には十分に詳細に示されていないが、心臓弁200の遠位端部は、典型的には、それがスリーブ120内の制約から解放されると、展開(即ち、矢印202によって指し示されるように径方向に外向きに拡張)し始める。よって、図15中の弁200の実際の状況は、典型的には、図29に示されるものにより類似している(即ち、径方向に拡張して広げられた(スリーブ120を超える)弁の遠位部分、(依然としてスリーブ120内の)弁の近位部分は、スリーブによって、径方向に拡張して広がることが依然として防止されている)。
【0047】
図16は、弁200が今や完全に露出されるよう一層さらに遠くに近位に引き戻されたスリーブ120を示している。再度、過剰に複雑化する図面を避けるために、図16は、この段階で、心臓弁200が、典型的には、図16中に矢印202及び204によって指し示され且つ図17中に実際に表示されるように、その全長に沿って径方向に外向きに拡張されるという事実を省略している。しかしながら、図16は、弁200の展開に先立ち(即ち、その径方向に外向きの拡張に先立ち)、遠位先端部60とシャフトより近位の鍔140との間に弁を位置付けることによって、崩壊弁の軸方向位置が装置内で維持される点を例証する働きをしている。
【0048】
図17及び18は、本発明に従って含め得る追加的な構成を示している。これは可撓ストランド130のシステムであり、患者内で弁を再位置決めし、或いは、弁が患者内で部分的に或いは完全に径方向に外向きに拡張した後に、患者から弁を完全に取り外すことが望ましい或いは必要であることが判明した場合に、弁200を(部分的に或いは完全に)再崩壊するよう、(スリーブ120の遠位再前進と共に)それを使用し得る。図17及び18は、この実施態様におけるストランド130の経路指定(routing)を示している。典型的なストランド130は、シャフト50とスリーブ120との間の装置の近位部分から来る。ストランド130は、鍔140内の孔を通過し、次に、弁200の外側に沿って遠位先端部60内の孔に達している。ストランドは、先端部60の内部を通過し、次に、シャフト50の中央管腔を通過し、ハンドルに至るまで近位に延び、そこで、ストランド端部は、装置の操作者によって制御され得る。装置及び弁200の周りの円周方向に離間するあらゆる数の類似の経路指定されるストランド130があり得る。ストランド130は、図17及び18中に比較的緩い或いは弛緩した状態で示されている。しかしながら、それらはそれらの近位部分を引っ張ることによって締め付けられ得る。
【0049】
ストランド130をどのように使用し得るかの実施例は、以下の通りである。(より前の段落において記載された)スリーブ120の漸進的な近位後退は、心臓弁200が漸進的に径方向に外向きに展開されることを可能にする。ストランド130は、この時には弛緩され或いは緩められている。弁200の漸進的展開は、(例えば、X線、蛍光透視、又は、類似手段を介して)装置の操作者によって観察され得る。もし弁が所望に入らないならば、弁の拡張は、スリーブ120の近位後退を停止することによって停止され得る。次に、ストランド130は、それらの近位部分を近位に引っ張ることによって締め付けられ得る。同時に、スリーブ120は遠位方向に押され得る。このストランド130を締め付けること及びスリーブ120を遠位に押すことの組み合わせは、弁200を崩壊してスリーブ内に戻し得る。次に、装置は、患者内で弁200を再位置決めするために再位置決めされ得るし(然る後、弁は再び展開され得る)、或いは、代替的に、弁は全ての周囲計装と共に患者から完全に取り外され得る。弁が患者内に留まると推測すると、装置の操作者がその展開位置及び状態に満足するとき、ストランド130は、ストランドの他端部が弁200を2回通る(1回は遠位方向に行き、次に、近位方向に行く)まで、各ストランドの1つの近位部分を引っ張ることによって取り外され(或いは効果的に取り外され)得る。図19及び20は、ストランド130がそのように取り外された(或いは効果的に取り外された)後の装置の状態を示している。
【0050】
ストランド130は、如何なる適切な引張強いが横方向(横断方向)に可撓な材料から成り得る。実施例は、縫合材料、金属ワイヤ、又は、類似物を含む。
【0051】
図19及び20は、ストランド130が取り外された後の完全に展開された状態で弁200を示しているので、これらの図面は弁200の最も明瞭な図面を提供し、従って、弁の後続のさらなる記載のための最良の参照をもたらす。この記載は図19及び20と関連して提供されるが、弁はここでより前に議論された図面の全てにおいて同じであることが理解されよう。他方、人工心臓弁のこの具体的な構成は一例であるに過ぎないこと、並びに、多くの変更、変形、及び、代替も弁のために可能であることも理解されよう。
【0052】
この明細書においてより前に述べられたように、弁200の主要構成部品は、(例えば、ニチノールのような高弾性金属の)フレーム210と、効果的に不活性にされ且つ他の方法で患者の体内での長期の非反応的な使用に適するようにされた組織のような可撓性材料の複数の小葉(例えば、3つの小葉)220とを含む。小葉220は、小葉が(血液が弁を通じて図19及び20において見られるときに左から右に流れるのを可能にするよう)開放し且つ(血液が弁を通じてこれらの図面において見られるときに右から左に流れるのを防止するよう)閉塞し得るような方法でフレーム210に固定される。
【0053】
ここで図面中に示される弁200の例証的な構造は、人工大動脈弁としての使用のために特に適合される。従って、弁200の詳細は、その脈絡において記載される。しかしながら、これは一例に過ぎないこと、並びに、人工弁は、心臓又は循環系内の他の弁のための置換としての使用のためにそれを適合する一部の観点において代替的に異なって構成され得ることが理解されよう。
【0054】
フレーム210は、好ましくは、(例えば、管から(レーザを使用して)切断され、次に、所望の形状を達成するようさらに処理された)連続的な一体構成の環状(リング状)構成である。フレーム210は、「下方」(上流又は血液流入)部分212を有し、それは弁の周りに亘って蛇状(波動状或いはジグザグ状)に延びる。フレーム210のこの部分は、患者の固有の弁輪内へ或いはその付近への移植のために設計され得る。フレーム210は、「上方」(下流又は血液流出)部分216も含み、それも弁の周りに亘って蛇状(波動状或いはジグザグ状)に延びる。フレーム210のこの部分は、患者のヴァルサルヴァ洞から下流の患者の大動脈下流内への移植のために設計され得る。フレーム部分212及び216は、弁の周りで互いに罹患する場所でそれらの他のフレーム部分の間に延びる複数のリンク又はストラットによって互いに接続される。ストラット214は、ヴァルサルヴァ洞の葉(lobe)の内表面に倣うよう(図示されるように)径方向に外向きに反り或いは出っ張る。
【0055】
フレーム210は、(患者の固有の心臓弁の交連と類似して)弁の周りの適切な場所で下方部分212から上に延びる交連柱部材218を含み得る。これらの柱218は、小葉220が取り付けられるフレーム構造の重要な部分を形成し得る。
【0056】
フレーム210は、上に延び且つ患者の固有の弁小葉を制御するのを助ける他の構成219も含み得る。固有の弁小葉は(患者内に残されたままである限り)もはや機能していない。
【0057】
フレーム210は、患者内で展開される場所に弁を保持するのを助けるよう患者の固有の組織と係合(し、且つ、場合によっては、貫入)する様々な場所に逆目(例えば、211)も含み得る。
【0058】
環状フレーム部分212及び216を蛇状にする目的は、弁の環状(円周方向、径方向)崩壊、及び、後続の再拡張を促進することである。そのような崩壊は、好ましくは、弾性的であり、後続の再拡張は、好ましくは、弾力的である。
【0059】
ここには示されていないが、弁200は、弁の様々な部分の上の1つ又はそれよりも多くの織物及び/又は繊維の層のような他の構成部品も含み得る。そのような追加的な層は、組織内成長を促進する、フレーム210と周囲の固有の組織との間の接触の量を減少する、小葉220の移動部分がフレーム210と接触することを防止する等のような目的のためであり得る。
【0060】
鍔140に関する例証的な詳細が、図21及び22に示されている。これらの機能は、遠位に延びる径方向に外側の縁部142を含み得る。弁が崩壊状態にあるとき、弁200の近位部分が縁部内に収容され得る。この構成142は、弁200が、展開前に、その崩壊状態に制約された状態に維持するのを助け得る。
【0061】
鍔140の他の機能は、凹部又はソケット144を含み得る。弁200が崩壊状態にあるとき、フレーム210の極近位部分(例えば、211)が凹部又はソケット内に延び得る。フレーム210と鍔140との間のそのような係合は、弁200が装置の長手軸についての既知の回転(角)向きを常に維持するのを保証するのに役立ち得る。これはその長手軸についての装置10の回転が、その軸についての弁200の全く同じ回転をもたらすことを保証するのに有用であり得る。これは、例えば、装置の操作者が患者の固有の弁交連に対する所望の回転又は角位置において交連柱218を用いた展開のために弁を位置付けるのを助けるのに重要であり得る。具体的な実施例として、各交連柱218が患者の固有の弁交連のそれぞれ1つとその内側で整列されるのが望ましくあり得る。これはその長手軸についての装置10の回転を必要とし得るし、144のような機能(それらの機能144内に収容される特定の弁フレーム機能を伴う)は、弁200が装置10に対する既知の角関係を有すること、並びに、弁が装置から展開されるまで、この角関係が常に維持されることを保証するのに役立ち得る。鍔140とシャフト50との間の滑り係合も、この実施態様における本発明のこの特徴の一部である。
【0062】
鍔140のさらに他の可能な機能は、鍔を通じる上記されたストランド130の通過のための孔146である。
【0063】
図23乃至26は、装置の他の可能な機能を例証している。これは塞栓保護構造300であり、それは人工弁によって置換されるべき固有の心臓弁の小葉を押し返すための機能も含み得る。構造300が今や記載される。
【0064】
装置300の目的は、人工弁200の展開及び/又はフォーク指部110の拡張中に患者の内側から取り除かれ得る如何なる破片(例えば、塞栓)をも捕捉することである。よって、塞栓保護装置300は、典型的には、処置の初期に、弁200が展開される場所から下流で、患者内に展開される。例えば、弁200が患者の固有の大動脈弁の置換であると推定すると、装置300は、人工弁が展開される場所から下流で、患者の大動脈内に展開され得る。装置300は、血液フィルタのように作用する。それは血液が貫流するのを可能にするが、それは患者の血液流内に留まることが許容されるべきでない如何なる粒子又は類似物をも捕捉する。人工弁200が移植された後、装置300は崩壊され(それが捕捉した如何なる破片をも依然として保持する)、それが導入されたのと反対の方向において患者から取り外される。
【0065】
この実施態様において、装置300は、幾分、傘のような構造である。具体的には、構造300は、中心シャフト310と、シャフト310の遠位部分に取り付けられ且つシャフト310に対して(平行に)内向きに崩壊するか或いはシャフト310から径方向に外向きに傾斜し得る複数のリブ又はスポーク320とを有する。構造300の他の素子は、リブ320に取り付けられる可撓な塞栓捕獲ウェブ又はメッシュ(血液フィルタ)330である。構造300のさらに他の構成部品は、(他の図面を過剰に複雑化することを避けるために図26中にのみ示されている)繋ぎ鎖340である。繋ぎ鎖340は、シャフト310の近位部分の内側を走り、リブ320に隣接する場所でシャフト310の側壁内の孔から出る。各繋ぎ鎖340は、リブ320のそれぞれ1つに取り付けられる。
【0066】
弁200を展開する前に、装置300は、近位コネクタ70、管腔貫通管100、及び、遠位先端部孔62を介して、崩壊状態で患者内に導入され得る。装置300が、弁200が移植されるべき場所から下流で、患者の循環系内の所望の場所にあるとき、ストランド340の近位部分に対して近位に方向付けられる張力は解放され得る。これは、リブ320が弾性的に外向きに撓み、開いた傘のリブ又はスポークのような配列になることを可能にする。リブ320は、それらと一緒に、よって、開いた血液フィルタウェブ330とも一緒に運び出る。これらの構造(即ち、320及び330)は、好ましくは、弁200が患者内に移植される場所の下流で、血管(例えば、大動脈)の内表面の環状部分を支持する。
【0067】
弁200が展開された後、塞栓保護装置300は、繋ぎ鎖340を近位に引っ張ることによって再び崩壊され得る。これはリブ320を中心シャフト310と平行に且つ中心シャフト310に対して平行にする。それによって、(あらゆる捕捉された破片を伴う)血液フィルタ330も、中心シャフト310に対して崩壊される。これは装置300が遠位先端部60内の孔62を介して装置10内に引き戻されることを可能にする。
【0068】
装置300は、血液フィルタ330自体から戻って近位に延びるリブ320を含み得ることに留意のこと。これらのリブ延長は、人工弁200の展開に先立ち、患者の固有の心臓弁の小葉を(径方向に外向きに)押し戻すという追加的な機能に役立ち得る。
【0069】
(上述の選択的な近位のリブ延長を備える)装置300が展開された後、装置10の遠位部分は、装置300に遠位により近接して移動され得る。次に、装置の遠位部分10は開放され、弁200は図23乃至25に示されるように展開され得る。この実施態様において、弁200の展開後、展開された弁200は、リブ320の近位延長部と幾分軸方向に重なり合うので、装置300は、装置300が移植される弁200を妨害せずに再閉塞され得るよう、この重なり合いを解消するために遠位方向に先ず押され得る。(装置300を備える或いは備えないいずれかの実施例においても)弁200が展開された後、シャフト40が遠位先端部60に対して再び近接するよう、移植される弁を通じて遠位に押され得ることを述べるのも便利な点である。これは装置10への滑らかな外表面を回復し、それは移植された弁を通じた装置10の近位取出しを容易化し、弁を妨害しない。もし装置300が利用されるならば、それは好ましくは崩壊され、移植される弁を通じる装置10の完全な取出しに先立ち、装置の内部に戻される(或いは装置10を介して完全に取り外される)。
【0070】
図27は、素子70,100,60,62を通じる管腔が、装置を通じる案内ワイヤ400の通路のために使用され得ることを示している。よって、案内ワイヤ400は、先ず、患者内に配置され、然る後、装置10は、この案内ワイヤに沿って従うことによって、患者内に導入され得る。装置を通じるこの案内ワイヤ管腔及び/又は他の類似の管腔は、代替的に或いは追加的に、他の付随的装置(例えば、塞栓保護装置300)の洗浄(flushing)、導入及び/又は取出し等のような他の目的のために使用され得る。
【0071】
図28は、弁展開及び回収の他の可能な側面を示している。図28は、鍔140上の軸受及びシース120の内側の弁200の上流端部を示している。縫合糸又はワイヤストランド500が鍔140を通過し、弁フレーム210の上流部分212を通じて輪にされている。ストランド500は、鍔140に対して弁200の近位(上流)端部を保持するために近位方向に引っ張られ得る。これも(シース120が近位に後退されているときでさえ)弁200の近位端部が径方向に外向きに拡張することを防止する。しかしながら、シース120は、弁200の近位端部を越えて近位に後退され且つストランド500に対する張力が緩和されるとき、弁200の近位端部は、弾力的に外向きに拡張し得る。(図29は、(それは図面を過剰に複雑化しないようストランド500の描写を省略しているが、)弁200の遠位(下流)部分がシース120から解放され且つ弾力的に外向きに拡張されているが、弁の近位部分が未だ解放されていない状態で、この構造を再び示している。)
【0072】
図28及び29は、シース120の遠位端部が122で示されるように径方向に外向きに広がり得ることを示している。この機能及びストランド500は、もし何らかの理由で弁を患者内に再位置決めし或いは弁を患者から取り外すことが望ましいならば、装置10からのその最終的な解放に先立ち、弁200を再崩壊するために使用され得る。ストランド500を近位に引っ張ること及びシースを遠位に押すことの組み合わせは、弁の近位端部が鍔140に位置した状態で、弁200を崩壊してシース120内に下げ戻すために使用され得る。次に、弁は、患者内で異なる位置に位置決めされ得るし、或いは、弁は装置10を用いて患者から完全に取り外され得る。弁200が患者内に移植されようとしていると想定すると、装置の操作者が患者内への弁の配置に満足しているときには、弁の下流端部が展開し且つ大動脈壁に固着することを許容し、次に、上流弁端部を展開することによって、弁は装置10から最終的に解放される。最終的に、各ストランド輪の一端部を解放することによって、並びに、ストランドが装置10からの弁の解放をもはや阻止しないよう、解放端部を十分に引っ張るために、その輪の他端部を使用することによって、ストランド500が取り外される。
【0073】
前述のことは本発明の原理の例証に過ぎないこと、並びに、本発明の範囲及び精神から逸脱せずに、様々の変更が当業者によって行われ得ることが理解されよう。例えば、様々な構成部品の形状及び大きさは、ここに示される例証的な実施態様の形状及び大きさと異なり得る。他の例としては、シャフト40及び/又はシャフト40内の他の長手素子の横方向剛性は、装置を異なる可能な使用及び/又は好みに適させるよう選択され得る。よって、一部の実施態様では、装置のシャフト部分は比較的堅いことが望ましく、或いは、剛的又は実質的に剛的(即ち、その長手軸の横断方向に或いは横方向に可撓又は屈曲可能でない)であることさえ望ましくあり得る。他方、他の実施態様では、装置のシャフト部分(或いはシャフト部分の特定部分)がより横方向に可撓であることが望ましくあり得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者内に人工心臓弁を送り込むための装置であって、
当該装置の近位部分から当該装置の遠位部分に延びる中空の管状の長手の外部シャフトを含み、
該外部シャフトの内側に配置され且つ前記外部シャフトと実質的に長手に整列される長手の内部シャフトを含み、該内部シャフトは、前記外部シャフトに対して長手に移動可能であり、
前記内部シャフトが前記外部シャフトに対して近位に引き戻されるときに、前記外部シャフトの遠位端部を実質的に閉塞するために、前記内部シャフトの遠位部分に取り付けられる先端部構造を含み、
前記先端部構造と近位で前記内部シャフトの周りに配置され且つ前記外部シャフトの遠位部分の内側に配置される人工心臓弁を含み、
該人工心臓弁は、前記遠位先端部が前記外部シャフトの前記遠位端部から遠位に離れる方向に移動され且つ前記人工心臓弁が前記外部シャフトの前記遠位端部を超えて遠位に移動されるときに、当該装置から解放可能である、
装置。
【請求項2】
前記外部シャフトに取り付けられるハンドル構造をさらに含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ハンドル構造の遠位に前記外部シャフトの周りに同心状に配置されるトロイダル構造をさらに含み、該トロイダル構造は、前記外部シャフトの長さに沿って移動可能であり、
前記シャフトに沿って遠位方向に移動するよう前記トロイダル構造を弾性的に付勢するための弾性構造をさらに含む、
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記トロイダル構造は、前記外部シャフトの外表面と血液封止係合を有する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記人工心臓弁は、前記外部シャフト内に適合する崩壊サイズへの制約から解放されるときに、径方向に外向きに拡張するよう弾性的に付勢される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記先端部構造が前記外部シャフトの前記遠位端部から遠位に離れる方向に移動するときに前記外部シャフトの遠位端部から展開可能な固有小葉変位構造をさらに含み、
該固有小葉変位構造は、前記外部シャフトの前記遠位端部から展開されるときに径方向に外向きに拡大するよう弾性的に付勢される、
請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記内部シャフトを前記外部シャフトに対して長手に移動するために前記ハンドル構造内に取り付けられるアクチュエータ構造をさらに含む、
請求項2に記載の装置。
【請求項8】
前記ハンドル構造に取り付けられるコネクタ構造をさらに含み、
該コネクタ構造は、前記内部シャフト及び前記先端部構造を通じる管腔構造に接続する管腔を含む、
請求項2に記載の装置。
【請求項9】
前記先端部構造から近位方向に離間する、前記内部シャフトの周りの鍔構造をさらに含み、前記人工心臓弁は、前記鍔構造と前記先端部構造との間に位置付けられる、
請求項1に記載の装置。
【請求項10】
前記人工心臓弁の近位端部は、前記鍔構造を圧迫する、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記人工心臓弁を前記鍔構造に解放可能に固定するための複数のストランドをさらに含む、
請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記ストランドのそれぞれは、前記人工心臓弁の近位部分を通じて輪を作り、次に、前記人工心臓弁から前記外部シャフトの内側に近位に延びる、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記ストランドのそれぞれは、前記鍔構造を通じて延び、前記人工心臓弁を周り、前記先端部構造に至る、請求項11に記載の装置。
【請求項14】
前記ストランドのそれぞれは、前記先端部構造を通じて輪を作り、当該装置の近位部分に戻る、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記外部シャフトの内側の前記人工心臓弁の周りのシース構造をさらに含み、該シース構造は、前記外部シャフトに対して長手に移動可能である、
請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記シース構造は、前記内部シャフトに対して追加的に長手に移動可能である、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記シース構造は、患者内での展開のために前記人工心臓弁を露出するよう追加的に長手に移動可能である、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記シース構造が前記人工心臓弁を露出するために移動された後、前記シース構造は前記人工心臓弁を再び取り囲むようさらに移動可能である、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記先端部構造を遠位に超えて前記管腔構造を通じて選択的に展開可能な塞栓保護構造をさらに含む、
請求項8に記載の装置。
【請求項20】
前記塞栓保護構造は、前記先端部構造を遠位に超えて展開されるときに、径方向に外向きに拡張するよう弾性的に付勢される、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記塞栓保護構造は、血液フィルタを形成するよう展開される、請求項19に記載の装置。
【請求項22】
前記塞栓保護構造は、前記管腔構造に再進入するよう崩壊可能である、請求項20に記載の装置。
【請求項23】
前記塞栓保護構造は、患者の固有心臓弁の小葉を径方向に外向きに押すための素子を含む、請求項19に記載の装置。
【請求項24】
当該装置は、患者の心臓の尖を介した前記人工心臓弁の供給のために構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項25】
前記シャフトの少なくとも1つは、実質的に横方向に剛的である、請求項1に記載の装置。
【請求項26】
前記シャフトの両方は、それらの長さの少なくとも一部に沿って横方向に可撓である、請求項1に記載の装置。
【請求項27】
前記塞栓保護構造は、前記先端部構造から遠位に選択的に展開可能である、請求項1に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2010−531709(P2010−531709A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514827(P2010−514827)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/008022
【国際公開番号】WO2009/002548
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(500232466)セント ジュード メディカル インコーポレイテッド (23)
【Fターム(参考)】