説明

嵌合装置及び同嵌合装置を備える排泄物収容装具

【課題】使用者や介助者間の嵌合操作ミスを低減し、収容した排泄物の漏れや、嵌合の外れが無い確実な嵌合操作が可能で、かつ嵌合の確認を容易に行うことが可能な嵌合装置及び同嵌合装置を備える排泄物収容装具を提供する。
【解決手段】接皮部材1に固定したリング状の第1のフランジ10と、この第1のフランジと嵌合可能なリング状の第2のフランジ20とを備え、第1のフランジ又は第2のフランジのいずれか一方は、リング状突起11を有し、他方はリング状突起に嵌合可能なリング状溝付き突起21を有し、第1のフランジの下側表面18と接皮部材1の非接皮側表面とは部分的に分離されて前記両表面の間に指が挿入可能に構成され、第1のフランジ10と第2のフランジ20とを指で押圧して嵌合する際に、指で押圧する位置を認識するための目安部40を、第1のフランジの下側表面に、少なくとも1個設けるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の表面に形成された開孔や傷の周囲に固定し、生体内、または生体表面からの排泄物、排泄液、ガス、滲出液等(以下排泄物と称する)の捕集や、生体へ液剤を導入するために用いる嵌合装置、ならびに同嵌合装置を備える生体からの排泄物を一時的に収容する排泄物収容装具に関する。
【背景技術】
【0002】
便、尿の失禁者、消化器系、泌尿器系器官の疾患のため外科的手術を行い腸管や尿管を体表まで導き体表面にストーマを造設した人、或いはその他の疾患で体表面に開孔や傷を有する人は、それらの開孔から排出される排泄物を処理するため、排泄物を一時的に貯留できる排泄物収容装具を開孔に装着する。この排泄物収容装具は一般に体表面に貼付するための粘着層を備えた接皮部材と排泄物を受容するための袋体とから構成され、接皮部材と袋体が一体となっている一品系装具および接皮部材と袋体とが嵌合などの結合手段で結合される二品系装具が知られている。二品系装具は、接皮部材を人体に貼付したまま、袋のみを人体から取りはずし、排泄物の廃棄や、袋や開孔周囲の掃除が簡単にできるという特徴がある。そのため、一品系装具に比較すると、接皮部材を人体から剥がす回数が少なくて済むので、接皮部材剥離による皮膚への負担を軽減することができ、長期間同じ装具を装着する場合でも衛生的に使用できる。
【0003】
二品系装具の結合方法としては、袋体にリング状の粘着板を設置し、その粘着板を接皮部材の非接皮側に貼着する粘着方式と、プラスチック樹脂から成形されたリング状のフランジを、接皮部材と袋体の夫々に設置し嵌合構造により結合する嵌合方式とが知られている。上記二品系装具は、使用上多くの便利な点を有するが、接皮部材と袋体との結合が不十分な場合、その結合部分から排泄物が漏れ、衣類を汚してしまうという問題がある。結合方法が粘着方式の場合には、嵌合方式に比べ装着時の違和感が少ないという利点があるが、結合操作時に粘着結合部分にシワや気泡が入り易く、又、装着中に排泄物が粘着結合部分の界面に侵入し粘着力低下が生じ、粘着板の剥がれや排泄物の漏れが起こり易い問題がある。
【0004】
一方、嵌合方式の場合には、接皮部材側と袋体側のフランジがきっちりと嵌合していれば、長時間使用したとしてもその結合部分から漏れが起こることはなく、漏れに対する高い信頼性が得られる。しかしながら、装着者の状態や、装着環境によっては、このような2つのリング状のフランジをきっちりと嵌め合わせることは必ずしも容易ではない。嵌合が不十分な場合には、嵌合部分から漏れが生じる可能性がある。通常、嵌合の結合操作は便所の中で行うが、便所は狭くて暗い場所があり、又、スト−マは下腹部に造設されるので、そのような位置で細かな嵌合操作をするのは難しい。その上、こうしたストーマを造設して装具を使用する人は一般に高齢者が多いので、視力が低下し、手先の器用さも劣って来ていることもあって困難さが増大する。
【0005】
上記のような嵌合操作において、嵌合が確実に成されていることを装着者自身が確認する目安として、2つのリングが嵌め合わされる際に、音がなるようにした嵌合装置が知られている(例えば、特許文献1〜3参照)。しかしながら、嵌合の仕方は人によって差があり、装着者によっては嵌合音がならずに、嵌合が成されているか否かをしっかりと確認できない場合がある。また、装着者自身が耳遠い場合や、周りの騒音で嵌合音を十分に聞き取れない場合もある。
【0006】
【特許文献1】実願昭59−45849号(実開昭60−158822号)のマイクロフィルム
【特許文献2】特開平1−190354号公報
【特許文献3】特開2003−276056号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明は、上記のような点に鑑みてなされたもので、本発明の課題は、第1のフランジと第2のフランジとを、突起と溝との嵌合により連結する嵌合装置において、使用者や介助者間の嵌合操作の違いから生じる嵌合の結合状態の差を低減し、収容した排泄物の漏れや、嵌合の外れが無い確実な嵌合操作が可能であって、かつ嵌合の確認を容易に行うことが可能な嵌合装置及び同嵌合装置を備える排泄物収容装具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、本発明の嵌合装置においては、生体の開孔または傷の周囲に固定する接皮部材と、接皮部材の非接皮側に固定したリング状の第1のフランジと、この第1のフランジと嵌合可能なリング状の第2のフランジとを備え、前記接皮部材は生体の開孔または傷に対応する開口を有し、前記第1のフランジ又は第2のフランジのいずれか一方は、リング状突起を有し、他方は前記リング状突起に嵌合可能なリング状溝付き突起を有し、前記第1のフランジの下側表面と接皮部材の非接皮側表面とは部分的に分離されて前記両表面の間に指が挿入可能に構成され、前記第1のフランジと第2のフランジとを指で押圧して嵌合する際に、指で押圧する位置を認識するための目安部を、前記第1のフランジの下側表面に、少なくとも1個設けることを特徴とする(請求項1)。
【0009】
前記請求項1の構成によれば、嵌合する際に、指で押圧する位置を認識するための目安部の存在により、少なくとも1箇所、確実に嵌合された場所が操作上認識できるので、両フランジの位置が固定され、その後の嵌合されていない部分の嵌合操作をスムーズかつ確実に行うことが容易となる。勿論、前記目安部は、後述する実施態様のように、複数個設ける方が、嵌合操作が一層スムーズかつ確実となるが、1箇所であっても、使用者や介助者間の嵌合操作の相違の問題を解消し、嵌合操作の安定化を図る上で有効である。
【0010】
前記請求項1の発明の実施態様としては、下記請求項2ないし5の発明が好ましい。即ち、前記請求項1に記載の嵌合装置において、前記第1のフランジにリング状テーパー部を設け、前記第1のフランジの下側表面と接皮部材の非接皮側表面との間に空隙を形成することで、前記両表面を部分的に分離させ、前記空隙に指を挿入可能にする(請求項2)。これにより、嵌合時に第1のフランジと接皮部材との間に指を挿入し嵌合部を指で挟むように嵌合することができるので、嵌合操作が容易になり、嵌合を確実に行うことが可能となる。また、第1のフランジと接皮部材との間に空間が形成されるため、第1のフランジの接皮部材への接触が少なくなり装着時の違和感や接皮部材の変形を抑えることができる。
【0011】
また、前記請求項1または2に記載の嵌合装置において、前記目安部を第1のフランジの下側表面の円周方向に複数個設け、その間隔は、1.0〜4.0cmの範囲とする(請求項3)。これにより、嵌合操作が確実となり、かつこの間隔で指で押圧していくことにより、嵌合音が発生し易く、嵌合されていることを簡単に確認することができる。なお、複数個の目安部は等間隔に設置することがより好ましいが、前記範囲内の間隔であれば、かならずしも等間隔に設置する必要はなく、任意の間隔を混ぜたパターン(例えば、2cm、2.5cmの交互の間隔)で設置しても良い。
【0012】
さらに、前記請求項1ないし3のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記目安部は、前記第1のフランジの下側表面におけるリング状突起もしくはリング状溝付き突起の直下に設ける(請求項4)。これにより、嵌合操作の容易性および確実性がさらに向上する。さらにまた、前記請求項1ないし4のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記目安部は、前記第1のフランジの径方向に伸延する形状を備えるものとする(請求項5)。例えば、長方形や楕円のような、その長辺や長軸がリング状フランジの径方向と平行になるような細長い形状が好適であり、このように細長い形状にすることで、細長い指先の形状に目安部の形状が沿い、指と目安部がフィットし易くなり、嵌合時の操作性が向上する。
【0013】
また、本発明の課題は、下記請求項6の発明によっても解決できる。即ち、前記請求項3に記載の嵌合装置において、前記第1のフランジの下側表面の円周方向に複数個に設ける目安部に代えて、前記リング状溝付き突起の外周表面の円周方向に複数個設ける目安部とし、その間隔は、1.0〜4.0cmの範囲とすることを特徴とする(請求項6)。
さらに、請求項1とは異なる態様の嵌合装置によっても達成できる。即ち、生体の開孔または傷の周囲に固定する接皮部材と、接皮部材の非接皮側に固定したリング状の第1のフランジと、この第1のフランジと嵌合可能なリング状の第2のフランジとを備え、前記接皮部材は生体の開孔または傷に対応する開口を有し、前記第1のフランジ又は第2のフランジのいずれか一方は、リング状突起を有し、他方は前記リング状突起に嵌合可能なリング状溝付き突起を有し、前記第1のフランジと第2のフランジとを指で押圧して嵌合する際に、指で押圧する位置を認識するための目安部を、前記リング状溝付き突起の外周表面の円周方向に複数個設け、その間隔は、1.0〜4.0cmの範囲とすることを特徴とする(請求項7)。上記態様の嵌合装置の詳細については後述する。
【0014】
また、前記目安部の実施態様として、下記請求項8ないし12の発明が好ましい。即ち、前記請求項1、6もしくは7のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記目安部は、触覚で位置の認識が可能なものとする(請求項8)。また、前記請求項8に記載の嵌合装置において、前記触覚で位置の認識が可能な目安部は、突起および/または窪みにより形成したものとする(請求項9)。さらに、前記請求項1、6もしくは7のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記目安部は、視覚で位置の認識が可能なものとする(請求項10)。さらにまた、前記請求項1、6もしくは7のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記目安部は、第1のフランジ又は第2のフランジと、樹脂成形により一体化してなるものとする(請求項11)。また、前記請求項1、6もしくは7のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記目安部の位置で、前記第1のフランジと第2のフランジとを指で押圧して嵌合する際に、嵌合音が発生する構成とする(請求項12)。詳細は後述する。
【0015】
さらに、排泄物収容装具の発明としては、前記請求項1ないし12のいずれか1項に記載の嵌合装置を備え、かつ前記第2のフランジは、生体の開孔または傷から排出される排泄物を収容するための袋体を備えるものとする(請求項13)。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、目安部の位置で嵌合操作を行なって嵌合を音により確認できるので、確実な嵌合操作を容易に行うことができ、不十分な嵌合を防ぐことができる。これにより、収容した排泄物の漏れや嵌合の外れがなくなり、また装着時の安心感が得られる。さらに、医療従事者等が嵌合装置の使用者に対し嵌合の操作方法を指導する際に、嵌合操作を標準化することができ、指導する側と、操作方法を習得する側の双方の負担を軽減することができ、使用者や介助者間の嵌合操作の違いから生じる嵌合の結合状態の差を低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1〜5に基づき、本発明の実施形態について以下に述べる。
【0018】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の嵌合装置及び排泄物収容装具に係る第1の実施形態の構成図を示し、a)図は第1のフランジを設置した接皮部材の正面図、b)図は第2のフランジを設置した袋体の背面図、c)図はa)図およびb)図の、それぞれc-c線に沿う断面図、d)図は第1のフランジのみの背面図である。図2は、図1の実施形態における嵌合部周辺部の拡大断面図を示し、a)図は嵌合前、b)図は嵌合後の状態を示す。
【0019】
図1および図2において、1は接皮部材、2は開口、3は粘着層、4は基材、5は接皮部材の表面、6は袋体、10は第1のフランジ、11はリング状突起、12は結合部、13はリング状テーパー部、14はリング状つば部、15は第1のフランジの最外周縁、16は切込み、17は第1のリング状段付き係合部、18は第1のフランジの下側表面、20は第2のフランジ、21はリング状溝付き突起、22は第2のリング状段付き係合部、23は溝、24はつまみ片、30は嵌合部、40は目安部である。
【0020】
図1および図2に示す嵌合装置は、生体の開孔等の周囲に粘着固定する接皮部材1と、接皮部材1の非接皮側に固定した第1のフランジ10と、この第1のフランジ10と嵌合可能な第2のフランジ20とを備え、接皮部材1は生体の開孔等に対応する開口2を有し、第1のフランジ10は、樹脂材料からなるリング状突起11を有し、第2のフランジ20は、前記リング状突起11に嵌合可能な樹脂材料からなるリング状溝付き突起21を有する。前記第1のフランジ10は、結合部12により接皮部材表面5に結合されており、リング状テーパー部13により、第1のフランジ10の下側表面18と接皮部材表面5との間には指が挿入可能な空隙が形成され、下側表面18と接皮部材表面5とは部分的に分離されている。また、前記第1のフランジ10は、前記リング状突起11の径方向外側に延びるリング状つば部14を有しており、リング状突起11の直下の第1のフランジの下側表面18に目安部40を有している。尚、径方向とは、リング状フランジの直径方向に平行な方向で図1c)のrで示した方向である。この目安部40は、第1のフランジ10と第2のフランジ20とを嵌合する際に、指で押圧する位置の目安となるものである。
【0021】
第1の実施形態において、目安部40は、略直方体の突起として第1のフランジと一体的に成形されており、直方体の長辺がリング状フランジの径方向と同じ向き(平行)になるように第1のフランジの下側表面18に設置されている。この実施形態では、長さ5.0mm、幅2.0mm、厚さ0.5mmの8個の目安部40が直方体の中心から20mmの間隔をおいて設置されている。嵌合操作の際は、次のような手順で行う。まず、第1のフランジ10を有する接皮部材1を、その開口2が生体の開孔等と一致するように粘着層3を介して生体表面に貼り付け、切込み16(図1a)参照)を位置関係の目安にして第2のフランジ20のリング状の溝付き突起21を第1のフランジ10のリング状突起11に対向させる。次に、第1のフランジ10のリング状つば部14の下側(接皮部材側)から指を差込んで、第1のフランジ10を支えるように、8個のうちの1個の目安部40に指を当てる。それから、第2のフランジ20の上側からも指を当て両フランジを挟むように押圧力を加えることにより、第2のリング状段付き係合部22がリング状突起11のリング状段付き係合部17と係合し、当該目安部分の嵌合が完了する。この際「パチッ」という嵌合音を発し、指で押圧した部分のリング状突起11とリング状の溝付き突起21とが嵌合したことを確認することができ、これにより、不完全な嵌合が防止できる。その後、同様な操作で、隣に位置する目安部40を順次指で押圧していき、リング状フランジを1周することにより、嵌合操作を完了する。これにより、フランジの押し忘れによる嵌合仕損部の発生を防ぐことができ、排泄物の漏れを確実に防ぐことができる。
【0022】
(第2の実施形態)
図3は、本発明の嵌合装置に係る第2の実施形態の構成図を示し、a)図は第1のフランジのみの背面図、b)図はa)のb-b線に沿う拡大断面図に嵌合部周辺部の図を付加した図、c)図はa)のc-c線に沿う拡大断面図に嵌合部周辺部の図を付加した図である。図3において、第1の実施形態(図1又は図2)における各部材と同一機能を有する部材には同一番号を付して示す。図3の実施形態が第1の実施形態と異なる主な点は、第1のフランジ10のリング状突起11の構成、第2のフランジ20のリング状の溝付き突起21の構成、及び目安部40の構成に関してである。即ち、図3における嵌合部は、第1のフランジ10に設けた2つのリング状突起11と、それに対応する第2のフランジ20に設けた2つのリング状の溝23との間で嵌合するように構成されている。又、目安部40は、第1のフランジの下側表面18に、窪み41を第1のフランジの円周方向に沿って部分的に設けることで、窪み41のない残りの部分が突起状の目安部40として形成されている。この目安部40は、略直方体の突起として第1のフランジと一体的に成形されており、直方体の長辺がリング状フランジの径方向とほぼ同じ向きになるように設置されている。この実施形態では、長さ8.4mm、幅2.5mm、厚さ0.5mmの12個の目安部40が直方体の中心から20mmの間隔をおいて設置されている。
【0023】
(第3の実施形態)
図4は、本発明の嵌合装置に係る第3の実施形態の構成図を示し、a)図は第1のフランジのみの背面図、b)図はa)のb-b線に沿う拡大断面図に嵌合部周辺部の図を付加した図、c)図はa)のc-c線に沿う拡大断面図に嵌合部周辺部の図を付加した図である。図4において、第2の実施形態(図3)における各部材と同一機能を有する部材には同一番号を付して示す。図4の実施形態が第2の実施形態と異なる主な点は、目安部40の構成に関してである。即ち、図4における実施形態では、第1のフランジの下側表面18に第1のフランジよりも粘性の高い樹脂を塗工した部分を目安部40として形成しており、目安部40とそれ以外のフランジ部分とでは、接触時の感触が異なるように構成している点が特徴である。前述のような塗工処理により、滑りにくい目安部40が形成され、これにより、嵌合の操作性が一層向上する。
【0024】
なお、目安部40とそれ以外のフランジ部分とで、接触時の感触を変化させることができれば、上記塗工方法以外の方法も利用でき、例えば、目安部40、又はそれ以外のフランジ部分に、樹脂、繊維、粒体等の材料を接着、融着等することにより接触時の感触を変化させることができる。また、ブラスト加工、金属ブラシ、有機溶剤等による粗面処理を施して、接触時の感触を変化させるようにしても良い。このような目安部の実施形態によれば、第1又は第2の実施形態のようにフランジの表面に突起や窪みのような凹凸や起伏を設けることなく、目安部を容易に認識できるものとすることができる。又、図4の実施形態においては、目安部40に使用した樹脂に顔料を添加することが好ましい。これにより、目安部40は、視覚によっても目安部分が認識可能となる。視覚での認識は、確実に嵌合すべきであるという意識づけには非常に効果があり、特に介助者が操作を行う場合に有効である。
【0025】
(第4の実施形態)
図5は、本発明の嵌合装置に係る第4の実施形態の構成図を示し、a)図は第2のフランジの背面図、b)図はa)図のb-b線に沿う拡大断面図に嵌合部周辺部の図を付加した図である。図5において、第1の実施形態(図1又は図2)における各部材と同一機能を有する部材には同一番号を付して、その詳細説明を省略する。図5の実施形態が第1の実施形態と異なる主な点は、第1のフランジ10のリング状突起11の構成、第2のフランジ20のリング状の溝付き突起21の構成、及び目安部40の構成に関してである。図5における嵌合構成は、第1のフランジ10と第2のフランジ20との嵌合の際に、リング状突起11に設けたシール片19と、リング状溝付き突起21との間に、押圧力を作用させてシールする構成としている。又、目安部40は、半球状の突起とし、第2のフランジ20の径方向の外周縁表面に円周方向に沿って部分的に設けたものである。この目安部40は、第2のフランジ20とは異なる樹脂材料から形成している。
【0026】
目安部40の設置方法としては、予め半球状に形成した目安部40を接着、粘着、融着により第2のフランジへ取り付けても良いし、二色成形、インサート成形等の樹脂成形により第2のフランジと一体的に形成しても良い。この実施形態では、直径4.0mmの半球状の目安部40が半球中心から25mmの間隔をおいて8箇所設置されている。図5の実施形態の嵌合操作は、基本的には第1の実施形態と同様であり、第2のフランジの径方向の外周縁から目安部40に指を添え、フランジの径方向から目安部分を順次確認して嵌め合わせを行う。尚、図5の実施形態のように、第2のフランジに目安部40を設置する場合は、径方向の外周縁表面に設けることが好ましい。その理由は、排泄物収容装具として利用する場合に、目安部40は、溝23の上側の表面に設置することもできるが、この上側表面は平滑状態で袋体との結合面として使用する方が製造上効率的で、又、袋体を介して目安部40に触れても認識し難い場合があるからである。
【0027】
次に、前記各実施形態における各部材の好適な構成材料とその特性等について述べる。まず、接皮部材1の基材4には、不織布、編布、織布等の布帛、フィルム、発泡シート等が使用できる。基材4として使用する布帛の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;アクリル;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン;等をあげることができる。これらの材料は、単一で使用してもよく、二種類以上を混合して使用してもよい。
【0028】
基材4として使用するフィルムの材料としては、例えば、ポリウレタン;ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA) 、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン・メタクリル酸重合体(EMAA) 、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)等のオレフィン系共重合体;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル;ポリビニルアルコール;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン;ポリアクリルニトリル;シリコーン;等をあげることができる。これらの材料は、単一で使用してもよく、二種類以上を混合して使用してもよい。基材4として使用する発泡シートの材料としては、ポリウレタン、ポリオレフィン、アクリル、クロロプレンゴム、シリコーン等をあげることができる。
【0029】
接皮部材1の粘着層3には水を吸着又は吸収する親水性物質を含有させた公知のハイドロコロイド粘着剤を使用することができる。また、袋体6は、2枚のフィルムの外周縁を溶着等により一体化することで形成することができ、その材料としては、前記接皮部材の基材に使用できるフィルム材料と同様のものを選択することができる。袋体のフィルム材料としては、特にポリオレフィンまたはそれらの塩素化物、オレフィン系共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンを材料とするものが好ましく、フィルムは単層で使用しても、複数枚を積層させた複合フィルムを使用しても良い。
【0030】
第1のフランジ10と第2のフランジ20を構成する材料としては、エチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン・エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン・メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン・メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン・メタクリル酸重合体(EMAA)、エチレン・アクリル酸共重合体(EAA)等のオレフィン系共重合体; ポリエチレン、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン; ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン; 等を用いることが好ましく、これらの材料は単一または二種類以上を混合して使用することができる。特に、酢酸ビニル基の含有量により硬さを容易に調整できるエチレン・酢酸ビニル共重合体(EVA)が好ましい。リング状突起11またはリング状溝付き突起21は、JIS K7215に記載のタイプAのデュロメーターを使用して測定したデュロメーター硬さが90〜100の範囲が好ましく、この範囲であれば、確実な気密結合が実現され、排泄物の漏れや嵌合の外れが防止され、嵌合時に音が発生し易くなる。硬さ測定に使用するタイプAのデュロメーターとしては、ゴム硬度計A型(高分子計器株式会社製)が使用できる。
【0031】
目安部40としては、触覚で認識可能なものや、視覚で認識可能なものが利用できる。触覚で認識可能なものとしては、突起や窪みのような凹凸や起伏による認識や、目安部40とそれ以外のフランジ部分で異なる材料を使用し接触時の感触の違いにより認識する方法が挙げられる。又、視覚で認識可能なものとしては、目安部に着色する方法、目安部に他の部分とは異なる色調の材料を使用する方法等が挙げられる。
目安部の40の材料としては、第1のフランジ10と第2のフランジ20を構成する材料と同様の材料で形成することが好ましい。目安部の設置方法としては、第1及び第2の実施形態のように、フランジと同一の材料を使用し、射出成形などによりフランジと目安部を同時に成形する方法や、第3及び第4の実施形態のように、フランジとは異なる材料を使用し、フランジに塗工、噴射、接着、融着等を利用して設置する方法が利用できる。特に、フランジと同一の材料を使用し、射出成形により設置する方法が、製造効率が良いため好ましい。
【0032】
目安部の形状としては特に限定されないが、円形、多角形、これらの形状を組み合わせた幾何学的模様や、点、線等を複数集合させた形状が利用でき、第1、第2、及び第4の実施形態のように、フランジの表面に突起や窪みのような凹凸を設ける場合には、ブロック状、シ−ト状、糸状、粒状、粉状等の立体的な形状にすれば良い。これらの形状のうち、リング状フランジの径方向に伸延する形状を備えるものが好ましく、例えば、長方形や楕円のような、その長辺や長軸がリング状フランジの径方向と平行になるような細長い形状が好適である。このように細長い形状にすることで、細長い指先の形状に目安部の形状が沿い、指と目安部がフィットし易くなり、嵌合時の操作性が向上する。
【0033】
目安部40は、前述のように第1のフランジまたは第2のフランジの円周方向表面に複数個設けることが好ましく、フランジの全周に亘って設けることがさらに好ましい。目安部が1つであっても、目安部により1箇所確実に嵌合された場所ができれば、両フランジの位置が固定されるため、その後の嵌合されていない部分の指圧操作をスムーズに行うことができる。少なくとも2箇所の部分で嵌合がなされれば、指圧操作は一層スムーズに行うことができ、そのような場合、目安部は、前記第1のフランジまたは前記第2のフランジの円周方向表面に1.0〜4.0cmの範囲の間隔で設けることが好ましく、特にフランジの全周に亘って設けることが好ましい。このような間隔で2つのリング同士を指で押圧することで嵌合が確実に行われ、かつこの間隔で押圧していくことにより嵌合時に音が発生し易く、嵌合されていることを簡単に確認することができる。前記範囲内の間隔であれば、目安部の設置パターンは特に限定されないが、等間隔に設置することが好ましく、任意の間隔を混ぜたパターン(例えば、2cm、2.5cmの交互の間隔)で設置しても良い。前期範囲の中でも、1.5〜2.5cmの範囲の間隔が特に好ましい。尚、ここでいう間隔とは、2つの目安部の形状の中心間の距離をいう。又、目安部を立体的な形状にする場合は、最も厚い部分の厚みが0.3mm〜2.0mmの範囲であることが好ましい。又、目安部の表面積は2.0〜150mm2の範囲が好ましい。
【実施例】
【0034】
次に、本発明の実施例について、比較例と共に、以下に述べる。
第1のフランジと目安部とが同時に成形されるようにエチレン・酢酸ビニル共重合体(商品名エバフレックス1407 三井デュポン株式会社製)を射出成形し、第1のフランジと目安部を一体化した前記第2の実施形態(図3)に示す形状の第1のフランジを成形した。この第1のフランジに設けたリング状突起のデュロメーター硬さは、95.3であった。また、エチレン・酢酸ビニル共重合体(商品名エバフレックス1207三井デュポン株式会社製)を射出成形することで、前記第2の実施形態(図3)に示す形状の第2のフランジを成形した。この第2のフランジに設けたリング状溝付き突起のデュロメーター硬さは、96.0であった。また、目安部を設けない点以外は、この実施例と同様の構成を有する嵌合装置を作成し、この嵌合装置を比較例とした。
【0035】
上記実施例は、嵌合する際に指で押圧する位置が簡単に認識でき、しかも突起部分が指にしっかりとフィットして滑りにくいためしっかりと力を入れてフランジを押圧することができ、一連の押圧操作により簡単に嵌合操作を終えることができた。又、押圧する際に、「パチッ」というはっきりとした嵌合音が聞こえ、嵌合されたことの確認に伴い安心感が得られた。
一方、比較例では、何回か嵌合操作を繰り返した場合に、嵌合操作にバラ付きが生じ、上手く嵌合できる場合もあるが、確認のために何度もフランジを指で押圧し直すことがあり、又、音が生じない場合もあった。
以上から、実施例では、比較例に比べ嵌合操作を標準化し易く、嵌合操作を指導する側と、操作方法を習得する側の双方の負担を軽減でき、嵌合操作の確実性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の嵌合装置及び排泄物収容装具に係る第1の実施形態の構成図。
【図2】図1の実施形態における嵌合部周辺部の拡大断面図。
【図3】本発明の第2の実施形態に関わる嵌合部周辺部の拡大断面図。
【図4】本発明の第3の実施形態に関わる嵌合部周辺部の拡大断面図。
【図5】本発明の第4の実施形態に関わる嵌合部周辺部の拡大断面図。
【符号の説明】
【0037】
1 接皮部材
2 開口
3 粘着層
4 基材
5 接皮部材の表面
6 袋体
10 第1のフランジ
11 リング状突起
12 結合部
13 リング状テーパー部
14 リング状つば部
15 第1のフランジの最外周縁
16 切込み
17 第1のリング状段付き係合部
18 第1のフランジの下側表面
19 シール片
20 第2のフランジ
21 リング状溝付き突起
22 第2のリング状段付き係合部
23 溝
24 つまみ片
30 嵌合部
40 目安部
41 窪み
r 径方向


【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体の開孔または傷の周囲に固定する接皮部材と、接皮部材の非接皮側に固定したリング状の第1のフランジと、この第1のフランジと嵌合可能なリング状の第2のフランジとを備え、前記接皮部材は生体の開孔または傷に対応する開口を有し、前記第1のフランジ又は第2のフランジのいずれか一方は、リング状突起を有し、他方は前記リング状突起に嵌合可能なリング状溝付き突起を有し、前記第1のフランジの下側表面と接皮部材の非接皮側表面とは部分的に分離されて前記両表面の間に指が挿入可能に構成され、前記第1のフランジと第2のフランジとを指で押圧して嵌合する際に、指で押圧する位置を認識するための目安部を、前記第1のフランジの下側表面に、少なくとも1個設けることを特徴とする嵌合装置。
【請求項2】
請求項1に記載の嵌合装置において、前記第1のフランジにリング状テーパー部を設け、前記第1のフランジの下側表面と接皮部材の非接皮側表面との間に空隙を形成することで、前記両表面を部分的に分離させ、前記空隙に指を挿入可能にしたことを特徴とする嵌合装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の嵌合装置において、前記目安部を第1のフランジの下側表面の円周方向に複数個設け、その間隔は、1.0〜4.0cmの範囲とすることを特徴とする嵌合装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記目安部は、前記第1のフランジの下側表面におけるリング状突起もしくはリング状溝付き突起の直下に設けることを特徴とする嵌合装置。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記目安部は、前記第1のフランジの径方向に伸延する形状を備えることを特徴とする嵌合装置。
【請求項6】
請求項3に記載の嵌合装置において、前記第1のフランジの下側表面の円周方向に複数個に設ける目安部に代えて、前記リング状溝付き突起の外周表面の円周方向に複数個設ける目安部とし、その間隔は、1.0〜4.0cmの範囲とすることを特徴とする嵌合装置。
【請求項7】
生体の開孔または傷の周囲に固定する接皮部材と、接皮部材の非接皮側に固定したリング状の第1のフランジと、この第1のフランジと嵌合可能なリング状の第2のフランジとを備え、前記接皮部材は生体の開孔または傷に対応する開口を有し、前記第1のフランジ又は第2のフランジのいずれか一方は、リング状突起を有し、他方は前記リング状突起に嵌合可能なリング状溝付き突起を有し、前記第1のフランジと第2のフランジとを指で押圧して嵌合する際に、指で押圧する位置を認識するための目安部を、前記リング状溝付き突起の外周表面の円周方向に複数個設け、その間隔は、1.0〜4.0cmの範囲とすることを特徴とする嵌合装置。
【請求項8】
請求項1、6もしくは7のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記目安部は、触覚で位置の認識が可能なものとすることを特徴とする嵌合装置。
【請求項9】
請求項8に記載の嵌合装置において、前記触覚で位置の認識が可能な目安部は、突起および/または窪みにより形成したものとすることを特徴とする嵌合装置。
【請求項10】
請求項1、6もしくは7のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記目安部は、視覚で位置の認識が可能なものとすることを特徴とする嵌合装置。
【請求項11】
請求項1、6もしくは7のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記目安部は、第1のフランジ又は第2のフランジと、樹脂成形により一体化してなるものとすることを特徴とする嵌合装置。
【請求項12】
請求項1、6もしくは7のいずれか1項に記載の嵌合装置において、前記目安部の位置で、前記第1のフランジと第2のフランジとを指で押圧して嵌合する際に、嵌合音が発生する構成とすることを特徴とする嵌合装置。
【請求項13】
請求項1ないし12のいずれか1項に記載の嵌合装置を備え、かつ前記第2のフランジは、生体の開孔または傷から排出される排泄物を収容するための袋体を備えることを特徴とする排泄物収容装具。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−192026(P2006−192026A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5457(P2005−5457)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000151380)アルケア株式会社 (88)
【Fターム(参考)】