説明

工事現場囲包用防音シート

【課題】
夏季日照における過度の気温上昇を抑制し、工事現場内における日照ムラを生じず、しかも取り扱い性が容易で、さらには必要に応じて工事現場内の吸気と排気も可能な工事現場囲包用防音シートの提供。
【解決手段】
本発明の工事現場囲包用防音シートは、繊維布帛の両面に難燃樹脂被覆層を設けて、特定の面密度0.5〜2.5kg/mとする可撓性シートにおいて、全光線透過率0〜5%の防音領域Aと、全光線透過率10〜60%の防音領域Bを設けて構成し、特に防音領域Bを1〜6個の領域に分散して防音領域Aに取り囲まれるように配置して、さらに防音領域Aにおける繊維布帛の空隙率a、防音領域Bにおける繊維布帛の空隙率b(空隙率b>空隙率a)を有し、空隙率差10〜60とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は防音シートに関するものであり、更に詳しく述べるならば、本発明は構築物の建設や解体の工事現場周囲に張囲される防炎性を有する安全シートに関するもので、特に採光性と防音性に優れた安全シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビルやマンションなどの鉄筋コンクリート構築物の建設や解体時には、杭打機、打鋲機、削岩機、溶接機、コンプレッサー、エンジン発電機など多様な機械類を使用しての騒音作業を伴うことで、粉塵や機械音が近隣に撒散しない様、構築物の周囲には防音用シートやパネル張囲によるシールドの配慮を必要とする。この張囲いは多数のシートの連結、または多数のパネルの連結によって構成されている。特に防音シートとしては、繊維織物を芯材として、これに塩化ビニル樹脂などに硫酸バリウム、鉄粉、酸化鉄、鉛粉、鉛化合物などの高比重の粉体を充填して面密度を高めた繊維複合シートが知られているが、これらの防音シートでは粉体の高充填によって遮光隠蔽性となって採光性を悪くすることで、日中でも作業現場環境を暗くすることで、作業の安全性確保にためは自家発電照明などを必要としていた。
【0003】
特許文献1では、工事現場の周囲に張設する防護シート(この防護シートは防音シートではない)において、作業環境に採光性を得る手段として、不透明な防護シートに、透明な塩化ビニールシートやアクリルシートなどの透明シートからなる採光窓を設けて工事現場に採光する提案がなされている。この方法によると採光窓を大きくするほど採光を得ることができるが、塩化ビニールシートやアクリルシートでは工事現場用途で破損し易いため、採光窓を大きくするほど工事現場での安全性が損なわれる問題を有しており、JIS−A8952規定の建築工事用シートの性能(引張強さ×伸び、引張強さ、はとめ部強度、鋼管落下による耐貫通試験)を満足できるものではなく、また消防法施工規則第4条(JIS−L1091A法)の防炎性能を満たすことは困難である。
【0004】
本出願人は、採光性を考慮した工事現場張設用防音シートとして、粗目織物を用いて、これに高比重無機系充填剤とを含む高比重樹脂層で被覆したメッシュシートを基材として、この表面に可撓性高分子材料(好ましくは難燃剤を含む)による透明性樹脂層を形成し、面密度を0.8〜3.5kg/m とするシートを提案した。(特許文献2)このシートは樹脂加工した粗目織物を基布とすることで、JIS−A8952規定の建築工事用シートの性能を満足しながら良好な採光性を兼備するものであるが、夏季日照によっては張囲現場内の気温が上昇して熱中症の原因となる懸念を有していた。この問題は特許文献2の採光防音シートと従来の防音シートを組み合わせ併用することで解消し得るが、今度は場所によって薄暗いエリアを生じさせること、採光部と遮光部との配置設計の煩わしさがあった。このため、夏季日照における気温上昇を抑制し、工事現場内における日照ムラを生じず、しかも取り扱い性の容易な防音シートが望まれていて、さらには工事現場内の吸気と排気が容易な防音シートが望まれていたのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平7−19512号公報
【特許文献2】特開2003−221888号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は夏季日照における過度の気温上昇を抑制し、工事現場内における日照ムラを生じず、しかも取り扱い性が容易で、さらには必要に応じて工事現場内の吸気と排気も可能な工事現場囲包用防音シートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、繊維布帛の両面に難燃樹脂被覆層を設けて、特定の面密度とした可撓性シートにおいて、全光線透過率0〜5%の防音領域Aと、全光線透過率10〜60%の防音領域Bを設け、防音領域Bが防音領域Aに取り囲まれて構成されるようにして、さらに防音領域Aにおける繊維布帛の空隙率a、防音領域Bにおける繊維布帛の空隙率b(空隙率b>空隙率a)を有し、特定の空隙率差を有することによって、採光性と防音性とを兼備する工事現場囲包用シートが得られることを見出して本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明の工事現場囲包用防音シートは、繊維布帛の両面に難燃樹脂被覆層が設けられた、面密度0.5〜2.5kg/mの可撓性シートであって、前記可撓性シートが、全光線透過率(JIS−K7105)0〜5%の防音領域Aと、全光線透過率(JIS−K7105)10〜60%の防音領域Bとによって構成され、前記防音領域Bは1〜6個の領域に分散して前記防音領域Aに取り囲まれて配置され、さらに前記防音領域Aには空隙率aの繊維布帛を含み、前記防音領域Bには空隙率bの繊維布帛を含んでいて、前記空隙率bは前記空隙率aよりも大きく、その空隙率差が10〜60であることが好ましい。本発明の工事現場囲包用防音シートは、前記防音領域Aの前記難燃樹脂被覆層が無機化合物粒子を含有し、前記防音領域Bの前記難燃樹脂被覆層には無機化合物粒子を含有しないことが好ましい。本発明の工事現場囲包用防音シートは、前記防音領域Bに含む前記空隙率bの前記繊維布帛が、無機化合物粒子を含有する難燃樹脂によって含浸被覆されていることが好ましい。本発明の工事現場囲包用防音シートは、前記無機化合物粒子が、酸化鉛、三酸化アンチモン、チタン酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸バリウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、アルミナ、チタン酸カリウム、酸化マグネシウム、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムから選ばれた1種以上を含むことが好ましい。本発明の工事現場囲包用防音シートは、前記難燃樹脂被覆層が、ハロゲン含有化合物、リン原子含有化合物、窒素原子含有化合物、及び無機化合物から選ばれた1種以上の難燃剤を含むことが好ましい。本発明の工事現場囲包用防音シートは、前記可撓性シートにおける、前記防音領域Aと前記防音領域Bとの面積比が、1:0.2〜1:2であることが好ましい。本発明の工事現場囲包用防音シートは、前記可撓性シートの面積が、3〜10mであり、この面積に占める前記防音領域Bの面積が、0.5〜6.6mであることが好ましい。本発明の工事現場囲包用防音シートは、前記防音領域Bが、雌雄面ファスナーの会合・剥離によって開閉可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、従来の防音シートと同等の防音性を有しながら、適度な採光性をムラ無く有することで、夏季日照における過度の気温上昇を抑制することを可能とする。従って本発明の工事現場囲包用防音シートの使用によって工事現場内に適度な日照を取り入れて現場環境を明るくすることができ、より作業の安全性を確保できるようになると同時に、従来は日中にも必要であったエンジン発電照明の稼動時間や騒音を半減させることもでき、さらに必要に応じて工事現場内の換気も可能であり、また外界作業の目視確認も容易になるなど、工事現場内の作業環境が著しく改善された。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の工事現場囲包用防音シートの一例を示す図
【図2】本発明の工事現場囲包用防音シートにおける防音領域Aの一例を示す図
【図3】本発明の工事現場囲包用防音シートにおける防音領域Bの一例を示す図
【図4】本発明の工事現場囲包用防音シートにおける防音領域Bの一例を示す図
【図5】本発明の工事現場囲包用防音シートの一例を示す図
【図6】本発明の工事現場囲包用防音シートの一例を示す図
【図7】本発明の工事現場囲包用防音シートの一例を示す図
【図8】本発明の工事現場囲包用防音シートの一例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の工事現場囲包用防音シートは、繊維布帛の両面に難燃樹脂被覆層が設けられた、面密度0.5〜2.5kg/mの可撓性シートであって、前記可撓性シートが、全光線透過率(JIS−K7105)0〜5%の防音領域Aと、全光線透過率(JIS−K7105)10〜60%の防音領域Bとによって構成され、前記防音領域Bは1〜6個の領域に分散して前記防音領域Aに取り囲まれて配置され、さらに前記防音領域Aには空隙率aの繊維布帛を含み、前記防音領域Bには空隙率bの繊維布帛を含んでいて、前記空隙率bは前記空隙率aよりも大きく、その空隙率差を10〜60とする膜材である。
【0012】
本発明の工事現場囲包用防音シートは、全光線透過率(JIS−K7105)0〜5%の防音領域Aと、全光線透過率(JIS−K7105)10〜60%の防音領域Bとによって構成され、防音領域Aと防音領域Bに含む繊維布帛の編織組織を互いに異として、防音領域Aにおいて空隙率a、防音領域Bにおいて空隙率b(空隙率b>空隙率a)であり、その空隙率差を10〜60とする。本発明の防音シートにおいて、防音領域Aと防音領域Bとに用いる繊維布帛は、織布、編布のいずれでもよく、織布としては平織、綾織、繻子織などが挙げられるが、特に平織織布が得られる防音シートの経・緯物性バランスに優れ好ましい。繊維布帛の経糸・緯糸の糸条は合成繊維、天然繊維、半合成繊維、無機繊維またはこれらの2種以上から成る混用繊維のいずれによっても良いが、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維(PET、PBT、PENなど)、芳香族ポリエステル繊維、ナイロン繊維、芳香族ポリアミド繊維などの合成繊維糸条が好ましい。これらの糸条は、マルチフィラメント、短繊維紡績、モノフィラメント、スプリットヤーン、テープヤーンなどのいずれの形状でも使用できるがマルチフィラメントが好ましい。また無機繊維ではガラス繊維、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭素繊維などのマルチフィラメント糸条を使用することもできる。
【0013】
防音領域Aに含む繊維布帛の編織組織としては、500(555dtex)〜2000(2222dtex)デニール、特に750(834dtex)〜1500(1666dtex)デニールの太径が好ましく、経糸及び緯糸の打込み本数はこれらのマルチフィラメント糸条を、経糸・緯糸1インチ(2.54cm)当たり10〜30本打込んで得られる平織布帛が例示でき、これらの平織布帛の空隙率a(目抜け度合)は、0〜12%、好ましくは3〜8%のものが適している。防音領域Aに含む繊維布帛の編織組織の空隙率aが12%を越えると繊維布帛による吸音効果が低下することがある。空隙率aは繊維布帛の単位面積中(例えばタテ1インチ×ヨコ1インチの正方形)に占める糸条の総和面積を百分率として求め、100から差し引いた値(×100%)として求めることができる。また、これらの繊維布帛には、必要に応じて接着剤塗布、樹脂含浸加工、吸水防止処理、難燃処理など公知の下処理を施すことができる。
【0014】
防音領域Bに含む繊維布帛の編織組織としては、500(555dtex)〜2000(2222dtex)デニール、特に750(834dtex)〜1500(1666dtex)デニールの太径が好ましく、経糸及び緯糸の打込み本数はこれらのマルチフィラメント糸条を、経糸・緯糸1インチ(2.54cm)当たり10〜20本打込んで得られる平織布帛が例示でき、これらの平織布帛の空隙率b(目抜け度合)は、16〜40%、好ましくは20〜36%のものが適している。空隙率bが16%未満だと糸密度が込みすぎて得られるシートの採光性に劣り、防音領域Bに含む繊維布帛の編織組織の空隙率が40%を越えると繊維布帛による吸音効果が低下することがある。空隙率bは繊維布帛の単位面積中(例えばタテ1インチ×ヨコ1インチの正方形)に占める糸条の総和面積を百分率として求め、100から差し引いた値(×100%)として求めることができる。防音領域Aにおける空隙率aと、防音領域Bにおける空隙率bとの関係は「空隙率b>空隙率a」であり、その空隙率差が10〜60、特に20〜55であることが好ましい。また、これらの繊維布帛には、必要に応じて接着剤塗布、樹脂含浸加工、吸水防止処理、難燃処理など公知の下処理を施すことができる。
【0015】
本発明において繊維布帛は、無機化合物粒子を含有する難燃樹脂で含浸被覆されていることが好ましい。難燃樹脂は熱可塑性樹脂に難燃剤を含んで構成される液状難燃組成物であり、この液状組成物に無機化合物粒子を分散させた溶液を用いて、この溶液を繊維布帛に含浸させ、乾燥工程を経て繊維布帛を構成する糸条表面を被覆する。本発明において繊維布帛の難燃樹脂含浸被覆は、特に防音領域Bに含む繊維布帛に対して施されることが必要である。この液状難燃組成物は例えば、有機溶剤に溶解させた樹脂、樹脂エマルジョン(ラテックス)、ポリ塩化ビニル樹脂微粉末と可塑剤との併用によるペーストゾルなどに、難燃剤を配合したものの何れを用いることもできる。無機化合物粒子含有難燃樹脂による繊維布帛の含浸被覆は、公知の塗工方法、例えばディッピング(布帛への両面加工)、コーティング(布帛への片面加工、または両面加工)などの塗工、及び含浸塗工が例示できる。防音領域Bに含む繊維布帛の単位質量(g/m)を100とした場合の、無機化合物粒子含有難燃樹脂含浸被覆量(乾燥質量)は繊維布帛に対して100〜300%、好ましくは150〜250%である。
【0016】
本発明の工事現場囲包用防音シートにおいて、防音領域Aに設けられた難燃樹脂被覆層には無機化合物粒子を含有し、防音領域Bに設けられた難燃樹脂被覆層には無機化合物粒子を含有してない。防音領域Aに設けられる難燃樹脂被覆層は、熱可塑性樹脂に難燃剤を含んで構成される難燃組成物であり、この難燃組成物に無機化合物粒子を分散させた組成物を用いてカレンダー成型やTダイス押出法などで成形した、厚さ0.01〜0.3mmのフィルム、または厚さ0.05〜0.3mmのシートを、繊維布帛の片面以上、好ましくは両面に積層して繊維布帛を完全に被覆する。防音領域Aに含む繊維布帛の単位質量(g/m)を100とした場合の、無機化合物粒子含有難燃樹脂被覆層は、繊維布帛に対して100〜400%、好ましくは150〜300%である。このとき難燃樹脂被覆層は繊維布帛の空隙部にも侵入して充填されている。また防音領域Bに設けられる難燃樹脂被覆層は、熱可塑性樹脂に液状難燃剤を含んで構成される難燃組成物であり、この難燃組成物を用いてカレンダー成型やTダイス押出法などで成形した、厚さ0.01〜0.3mmのフィルム、または厚さ0.05〜0.3mmのシートを繊維布帛の片面以上、好ましくは両面に積層して繊維布帛を完全に被覆する。防音領域Bに含む繊維布帛の単位質量(g/m)を100とした場合の、無機化合物粒子非含有難燃樹脂被覆層は、繊維布帛に対して100〜300%、好ましくは150〜250%である。このとき難燃樹脂被覆層は繊維布帛の空隙部にも侵入して充填されている。
【0017】
本発明において、繊維布帛に対して難燃樹脂含浸被覆するために用いる熱可塑性樹脂(段落0015)、及び本発明において防音領域Aに設けられる難燃樹脂被覆層に用いる熱可塑性樹脂(段落0016)、防音領域Bに設けられる難燃樹脂被覆層に用いる熱可塑性樹脂(段落0016)としては、例えば、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル系共重合体樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、オレフィン樹脂(PE,PPなど)、オレフィン系共重合体樹脂、ウレタン樹脂、ウレタン系共重合体樹脂、アクリル樹脂、アクリル系共重合体樹脂、酢酸ビニル樹脂、酢酸ビニル系共重合体樹脂、スチレン樹脂、スチレン系共重合体樹脂、ポリエステル樹脂(PET,PEN,PBTなど)、ポリエステル系共重合体樹脂、フッ素含有共重合体樹脂、シリコーン樹脂、ポリカーボネート、ポリアミドなどの熱可塑性樹脂などであり、これらにはウレタンゴム、アクリルゴム、ブタジエンゴム、クロルスルホン化ポリエチレン、SBR、EPDM、EPMなどの熱可塑性ゴムをブレンドして補助成分として含んでいてもよい。これらの熱可塑性樹脂の中では特に比重1.4の塩化ビニル樹脂、比重1.49〜1.56の塩素化塩化ビニル樹脂を用い、塩化ビニル樹脂100質量部に対して、に公知の可塑剤を30〜150質量部配合した軟質塩化ビニル樹脂組成物が好ましい。
【0018】
本発明において防音領域Aに設けられる難燃樹脂被覆層に用いる熱可塑性樹脂(段落0016)、防音領域Bに設けられる難燃樹脂被覆層に用いる熱可塑性樹脂(段落0016)としては特に軟質塩化ビニル樹脂組成物が好ましい。軟質塩化ビニル樹脂組成物に用いる可塑剤としてはアジピン酸エステル系化合物、セバシン酸エステル系化合物、フタル酸エステル系化合物、トリメリット酸エステル系化合物、ピロメリット酸エステル系化合物、リン酸エステル系化合物、ポリエステル系化合物、塩素化パラフィン系化合物、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素三元共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−一酸化炭素三元共重合体など公知の可塑剤が使用できる。特に防音領域Bに設けられる難燃樹脂被覆層に用いる軟質塩化ビニル樹脂組成物には、可塑剤成分の一部として、トリクレジルフォスフェートなどのリン酸エステル系化合物、塩素化パラフィン系化合物を用いることによって、難燃性を有しながら透明性や透光性を兼備する難燃樹脂被覆層を得ることができる。また軟質塩化ビニル樹脂組成物には、安定剤、フィラー、着色剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防黴剤、帯電防止剤、架橋剤など、公知の添加剤を必要に応じて用いることができる。
【0019】
本発明において繊維布帛に対して難燃樹脂含浸被覆するために用いる難燃剤(段落0015)、及び本発明において防音領域Aに設けられる難燃樹脂被覆層に用いる難燃剤(段落0016)、防音領域Bに設けられる難燃樹脂被覆層に用いる難燃剤(段落0016)としては、a).金属リン酸塩、金属有機リン酸塩、リン酸誘導体、ポリリン酸アンモニウム、及びポリリン酸アンモニウム誘導体化合物などのリン原子含有化合物、b).(イソ)シアヌレート系化合物、(イソ)シアヌル酸系化合物、グアニジン系化合物、尿素系化合物、及び、これらの誘導体化合物などの窒素原子含有化合物、c).ケイ素化合物、金属水酸化物、金属酸化物、金属炭酸塩化合物、金属硫酸塩化合物、ホウ酸化合物、及び無機系化合物複合体などの無機系化合物、d).有機ハロゲン化合物などが挙げられ、熱可塑性樹脂100質量部に対しての配合量は、10〜150質量部、好ましくは30〜100質量部である。
【0020】
本発明に用いる難燃剤は有機ハロゲン化合物が好ましく、特に、デカブロモジフェニル、デカブロモジフェニルオキサイド、ヘキサブロモジフェニルオキサイド、ペンタブロモシクロヘキサン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、ヘキサブロモベンゼン、ヘキサブロモシクロドデカン、テトラブロモビスフェノールA、テトラブロモフタルイミド、エチレンビステトラブロモフタルイミド、及びエチレンビスペンタブロモフタルイミドなどのフタル酸誘導体、その他、臭素化ポリスチレン、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリウレタンなどの臭素化高分子化合物、さらに塩素含有率25〜45重量%の低塩素化ポリエチレンまたは低塩素化ポリプロピレン、塩素含有率60重量%以上の高塩素化ポリエチレンまたは高塩素化ポリプロピレンなどの塩素化高分子化合物が挙げられる。これらの難燃剤の平均粒子径は3.0μm以下が好ましい。平均粒子径が3.0μmを越えると難燃剤が熱可塑性樹脂に接触する表面積効率が悪くなり難燃性が不十分となることがある。
【0021】
本発明に用いる難燃剤は窒素原子含有化合物が好ましく、特に、(NH4 PO3n で示される重合度n30〜1200のポリリン酸アンモニウム、及びメラミン樹脂、尿素樹脂、トリアジン樹脂などで表面被覆耐水化したポリリン酸アンモニウム、メラミン変性ポリリン酸アンモニウム、ポリリン酸メラミン、(ポリ)リン酸とメラミン系化合物の複合塩、(ポリ)リン酸とメラミン系化合物の2〜3量体との複合塩、ホスホン酸とメラミン系化合物の複合塩、ホスホン酸とメラミン系化合物の2〜3量体との複合塩、ホスフィン酸とメラミンの複合塩、ホスフィン酸とメラミン系化合物の2〜3量体との複合塩、メラミンシアヌレート、トリエチルイソシアヌレート、メラミン(シアヌル酸アミド)、グアナミン、ベンゾグアナミン、硫酸メラミン、トリメチロールメラミン、シアヌル酸トリエチルエステル、1,3,5−トリアジン、ジシアナミドの3量体(メロン)、ジシアンジアミド、グアニジン、ジメチロール尿素などが挙げられる。これらの難燃剤の平均粒子径は3.0μm以下が好ましい。平均粒子径が3.0μmを越えると難燃剤が熱可塑性樹脂に接触する表面積効率が悪くなり難燃性が不十分となることがある。
【0022】
本発明に用いる難燃剤には無機系化合物が使用でき、特に、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ヒドロキシスズ酸亜鉛、酸化スズ水和物などの金属水酸化物、酸化ジルコニウム、酸化モリブデン、酸化アンチモン、ジルコニウム−アンチモン複合酸化物などの金属酸化物、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ酸アルミニウムなどのホウ酸化合物、その他、アルミナ水和物、ゼオライト、ハイドロタルサイト、ヒドロキシアパタイトなどが挙げられる。これらの難燃剤の平均粒子径は3.0μm以下が好ましい。平均粒子径が3.0μmを越えると難燃剤が熱可塑性樹脂に接触する表面積効率が悪くなり難燃性が不十分となることがある。
【0023】
本発明において、繊維布帛を、無機化合物粒子を含有する難燃樹脂で含浸被覆するにおいて用いる無機化合物粒子(段落0015)、及び本発明において防音領域Aに設けられる難燃樹脂被覆層に用いる無機化合物粒子(段落0016)としては、酸化鉛(PbO比重9.35)、三酸化アンチモン(Sb23比重5.7)、チタン酸バリウム(BaTiO2比重5.6)、酸化ジルコニウム(ZrO2比重5.5)、酸化亜鉛(ZrO2比重5.4)、酸化鉄(Fe23比重5.2)、炭酸バリウム(BaCO3比重4.4)、硫酸バリウム(BaSO4比重4.4)、二酸化チタン(TiO2比重4.0)、アルミナ(Al23比重3.8)、チタン酸カリウム(K2O・TiO2比重3.3)、酸化マグネシウム(MgO比重3.3)、マイカ(比重3.0)、タルク(比重2.8)、炭酸カルシウム(CaCO3比重2.6)、水酸化アルミニウム(Al23・3H2O比重2.4)及び水酸化マグネシウム(Mg(OH)2比重2.4)など、比重が2.0以上の無機化合物粒子が挙げられ、これらは2種以上を併用することもできる。これらの無機化合物粒子の配合量は熱可塑性樹脂100質量部に対しての配合量は、50〜350質量部、特に100〜250質量部が好ましい。無機化合物粒子の配合量が50質量部未満だと、防音領域Aと防音領域Bにおける防音効果が不十分となることがあり、また無機化合物粒子の配合量が350質量部を越えると得られるシートの防音性はより向上するが難燃樹脂被覆層が脆くなってシートの耐久性を著しく損なうことがある。本発明によって得られるシートの面密度は0.5〜2.5kg/m、特に0.8〜2.0kg/mが防音性と取り扱い性に優れ好ましい。面密度が0.5kg/m2 未満だと十分な防音効果が得られないことがあり、また面密度が2.5kg/mを越えると、得られるシートの防音性はより向上するが防音シートが重くなり過ぎてシート張設時の運搬や取り扱い性を悪くすることがある。
【0024】
本発明の工事現場囲包用防音シートは、繊維布帛の両面に難燃樹脂被覆層が設けられた可撓性シートで、全光線透過率(JIS−K7105)0〜5%の防音領域Aと、全光線透過率(JIS−K7105)10〜60%の防音領域Bとによって構成され、防音領域Bは1〜6個の領域に分散して防音領域Aに取り囲まれて配置され、好ましくは防音領域Aと防音領域Bとの面積比が1:0.2〜1:2、特に好ましくは1:0.25〜1:1の範囲となるように形成するものである。防音領域Aの全光線透過率0〜5%は、防音領域Aに含む繊維布帛の空隙率aが0〜10%であること、及び防音領域Aに設けられる難燃樹脂被覆層に用いる熱可塑性樹脂組成物が、無機化合物粒子と難燃剤とを含んで有していることにより得られるもので、また、防音領域Bの全光線透過率10〜60%は、防音領域Bに含む繊維布帛の空隙率aが20〜70%であること、及び防音領域Bに設けられる難燃樹脂被覆層に用いる熱可塑性樹脂組成物が無機化合物粒子を含まないことによって得られるものである。
【0025】
本発明の工事現場囲包用防音シートは、1単位が幅方向1.5〜2.4m×長手方向3〜6mの長方形が好ましく、特に幅方向1.5〜2.1m×長手方向3.4〜5.1mの長方形が取り扱い性に優れ好ましい。また本発明の工事現場囲包用防音シートは幅繋用に0.3m、0.6m、0.9m、1.2mなど任意の幅で使用することができる。この1単位面積内に、防音領域Aと防音領域Bが、面積比1:0.2〜1:2を保つ範囲、特に1:0.25〜1:1で形成することが好ましく、防音領域Bは防音領域Aに取り囲まれて配置されていること、すなわち防音領域Aを海として、防音領域Bを島とする海島配置であることが好ましい。このとき防音領域Aと防音領域Bが、特に好ましい面積比である1:0.25〜1:1を保つ範囲であれば、防音領域Bは最大6個の領域で構成することもできる。防音シート1単位に対して、防音領域Bが7個以上の領域構成とすることは製造工程が煩雑となる割りに得られる効果に乏しくなる。すなわち防音シートは数十〜数百単位を連結して工事現場を囲包する使用形態であるから、工事現場全体的な採光効果としては最大6個の領域があれば十分である。防音領域Bが2領域以上で構成される場合には個々が同一形状、または同一面積である必要はない。本発明の工事現場囲包用防音シートにおいては、1単位の面積が、3〜10mであり、この面積に占める防音領域Bの面積が、0.5〜6.6m、特に1単位の面積が5〜8mで、この面積に占める防音領域Bの面積が、2.5〜4mの1領域(長方形または正方形)であるものが好ましい。防音領域Bを1領域とする場合、防音領域B(ヨコ長の長方形)の位置は防音シート1単位の中央(図1)、また防音領域Bを2領域とする場合、防音領域B(ヨコ長の長方形)の位置は防音シート1単位の中上部及び下部(図7)、また防音領域Bを1領域とする場合、防音領域B(タテ長の長方形)の位置は防音シート1単位の中央(図8)とすることができる。
【0026】
本発明の工事現場囲包用防音シートは、幅方向1.5〜2.4m×長手方向3〜6mの1単位全域を防音領域Aで構成し、防音領域Bを設ける部分の防音領域Aを防音領域Bの形状に合わせてくり抜き、くり抜き部分に防音領域Bを接合することによって得ることができる。また別の方法として、防音領域Aと防音領域Bを、A(上位置)−B(中位置)―A(下位置)のように配置して、このA−B−Aに跨る左右側部に細長の防音領域Aを配置してこれらを接合することによって得ることができる。これら各々の防音領域の良好な接合のために、防音領域のパーツ周縁に余剰のりしろを任意幅で設けることが好ましく、こののりしろ部において、高周波ウエルダー溶着、ライスター式熱風溶着、超音波溶着、接着剤による接着など公知の熱可塑性樹脂の接着方法によって防音領域A内に防音領域Bを形成配置することが好ましい。
【0027】
このような防音領域Aを海、防音領域Bを島とする海島配置において、防音領域Bは開閉可能な窓であると、工事現場内の排気や吸気を容易とする、外界作業の目視確認を可能とする、緊急避難口とする、強風時に受ける風圧を逃がす、などの効果を得ることができる。防音領域Bを開閉可能な窓とするためには、防音領域Bを雌雄面ファスナーの会合・剥離によって開閉自在とすることが好ましく、防音領域Bのパーツ周縁に設けた余剰のりしろと、対応する防音領域Aののりしろ部分において、雌雄の面ファスナーが接着されて設けれていることが好ましい。面ファスナーは雌側が多数のループ状ラッチ、雄側が多数の鉤状フックとするもので、防音領域A側にループ状ラッチ、防音領域B側に鉤状フックの装着、または防音領域A側に鉤状フック、防音領域B側にループ状ラッチの装着のいずれであってもよく、あるいは防音領域A側とB側に突起先端がキノコ型である多数のフックを有する面ファスナーを装着してもよい。これらの面ファスナーのは粘着剤、接着剤による接着、熱融着による接着、またはミシン縫製による接着のいずれの方法も利用できる。特に本発明において、防音領域Bによる開閉窓は、部分的に接着固定され、残り部分を面ファスナーで固定することによって、例えば、防音領域Bが四角窓の場合、底辺のみ接着固定し、他を面ファスナーで固定することによって、面ファスナーから開放した防音領域Bを底辺固定で垂らし、これによって排気口や吸気口として一時的に利用することができ、換気後に再び面ファスナーで固定することによって防音シートとして使用することができる。このような開閉自在の窓付きの防音シートは、建築作業現場を囲包して使用する全シート枚数に対して1〜2割程度の枚数での使用、例えばタテ・ヨコともに非開閉窓付き防音シート4〜9枚置きに開閉自在の窓付き防音シートを配置して用いることが好ましい。
【0028】
本発明の工事現場囲包用防音シートは、工事現場に舞う煤塵汚付着による透光性の低下を防止するために、防音シートの表面に防汚層が設けていてもよい。この防汚層はシートの採光性と防炎性を損なわない範囲であれば、その形成方法及び素材に特に限定はなく、例えば、アクリル系樹脂、またはフッ素系共重合体樹脂などの樹脂溶液を塗布・乾燥して形成した塗膜、これらにシリカ微粒子、またはコロイダルシリカを含む塗膜、オルガノシリケート及び/又はその縮合体を含む塗膜、光触媒性無機材料(例えば光触媒性酸化チタン)と結着剤とを含む塗膜、最外表面がフッ素系樹脂により形成された多層フィルムを接着剤もしくは熱溶融加工により積層したものなどから適宜選んで用いることができる。
【0029】
図1〜4を例として本発明の工事現場囲包用防音シートを説明する。図1は本発明の工事現場囲包用防音シートである可撓性シート(1)が、防音領域A(2)と防音領域B(3)により構成され、防音領域B(3)は防音領域A(2)に取り囲まれて配置されていることを示すものである。さらに可撓性シート(1)を構成する防音領域A(2)と防音領域B(3)は、図2〜4において、それぞれ繊維布帛の両面に難燃樹脂被覆層が設けられていることを示し、図2は、防音領域A(2)は、空隙率aを有する繊維布帛(4)の両面に、無機化合物粒子を含有する難燃樹脂被覆層(5)が設けられていること、図3は、防音領域B(3)は、空隙率bを有する繊維布帛(6−1)の両面に無機化合物粒子非含有の難燃樹脂被覆層(7)が設けられていること、また図4には防音領域B(3)のもう1つの態様として、無機化合物粒子を含有する難燃樹脂で含浸被覆されてなる空隙率bの繊維布帛(6−2)の両面に無機化合物粒子非含有の難燃樹脂被覆層(7)が設けられていることを示している。
【0030】
図5は本発明の工事現場囲包用防音シートの一例を示すもので、可撓性シート(1)は、防音領域A(2)と防音領域B(3)で構成され、防音領域B(3)は横長の長方形を成して可撓性シート(1)の中央部に配置され、防音領域A(2)に取り囲まれた状態に配置されており、防音領域B(3)の横長の長方形の底辺のみが防音領域A(2)と接合されて、他の3辺及び防音領域A(2)には面ファスナー(8)が装着されて、面ファスナー同士の会合または解離によって防音領域B(3)が窓部として開閉自在であることを示している。
【実施例】
【0031】
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
本発明を下記実施例及び比較例によりさらに説明する。
本発明の実施例及び比較例に用いた試験方法は下記の通りである。
(1)面密度(質量)
単位面積(m2 )当たりの質量(kg)を測定し、その値を面密度(kg/m)とした。
(2)全光線透過率
全光線透過率は日本工業規格JIS−K7105に従い測定した。
(3)防音性(音響透過損失)
シートの防音性は、日本工業規格JIS−A
1416「実験室における音響透過損失測定法」による、中心周波数125,500,1000,4000Hzの音響透過損失により評価し、その効果を従来の防音シートと優劣比較した。従来の防音シート(比較例1)の音響透過損失は、中心周波数 音響透過損失
125Hz 9dB 500Hz 16dB 1000Hz 20dB 4000Hz 30dBである。(面密度1.32kg/m2
(4)遮熱性
鉄パイプで組んだ、高さ3.4m、幅3.6m、奥行1.8mの6面フレームに、幅1.8m×長さ3.4mのシート8枚を正面・背後・左側・右側・天井・底床の6面に展張固定し、外気との遮蔽空間を構成し、内部中央(底床部から1.7mの高さ)にデジタル温度計を設置して、気温30℃の屋外環境に静置して、1時間後の温度を測定した。
【0033】
[実施例1]
防音領域A
防音領域Aに用いる繊維布帛に、1111dtexのポリエステルマルチフィラメント糸条を経糸及び緯糸とする経緯1インチ当たりの糸打込本数が、経16本・緯18本の平織物(空隙率a=8%)を用い、この繊維布帛の両面に下記軟質塩化ビニル樹脂組成物(1)からなる厚さ0.42mmの難燃樹脂被覆層用カレンダーシートを熱ラミネート法によって設け、総厚1.0mm、幅2mの防音領域Aシートを得た。

〈軟質塩化ビニル樹脂組成物1〉
ストレート塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 35質量部
トリクレジルフォスフェート(リン系防炎可塑剤) 25質量部
三酸化アンチモン(難燃剤:比重5.7) 15質量部
バリウム−亜鉛系複合安定剤 4質量部
硫酸バリウム(比重4.4) 85質量部
二酸化チタン(白色顔料:比重4.0) 4質量部
カーボンブラック(黒色顔料) 0.5質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.2質量部
【0034】
防音領域B
防音領域Bに用いる繊維布帛に、1111dtexのポリエステルマルチフィラメント糸条を経糸及び緯糸とする経緯1インチ当たりの糸打込本数が、経7本・緯7本の平織物(空隙率b=30%)を用い、この繊維布帛の両面に下記軟質塩化ビニル樹脂組成物(2)からなる厚さ0.42mmの難燃樹脂被覆層用カレンダーシートを熱ラミネート法によって設け、総厚1.0mm、幅2mの防音領域Bシートを得た。

〈軟質塩化ビニル樹脂組成物2〉
ストレート塩化ビニル樹脂(重合度1300) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 30質量部
トリクレジルフォスフェート(リン系防炎可塑剤) 25質量部
バリウム−亜鉛系複合PVC安定剤 4質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.2質量部
【0035】
得られた防音領域Aシートから、防音シート1枚のサイズとして、幅1.9m、長さ3.5mを裁断し、シート4辺の縁に沿い5cm幅に2ツ折してミシン縫製にて補強、この補強部には30cm間隔で直径23mm、内径12mmのハトメ打ちを施して幅1.8m、長さ3.4mの規格シートを得た。この規格シートの長さ方向、上から1.2mの位置、下から1.2mの中央位置から、幅1.7m×長さ1.0mのヨコ長の長方形を切り抜いた。次に防音領域Bシートから、幅1.73m×長さ1.03mのヨコ長の長方形を切り抜き、これを防音領域Aシートの切り抜き部に同形で重ね、4辺ののりしろ0.03mにて防音領域A内に防音領域Bを、ライスター式熱風溶着で積重熱融着して一体化して本発明の防音シートを得た。このシートの面密度は防音領域Aが1.32kg/m、防音領域Bが1.03kg/mであり、防音領域Aの全光線透過率は0%、防音領域Bの全光線透過率は19%、防音領域Aと防音領域Bとの面積比は1:0.38、空隙率aと空隙率bとの差は22、屋外遮熱試験30℃での空間内温度は30.8℃、音響透過損失は中心周波数 音響透過損失 125Hz 6dB 500Hz 13dB 1000Hz 18dB 4000Hz 28dBであった。またこのシートはJIS−L1091A法による防炎試験に適合するものであった。(図1)
【0036】
[実施例2]
実施例1で防音領域Bに用いた繊維布帛を変更した。変更した繊維布帛は、1111dtexのポリエステルマルチフィラメント糸条を経糸及び緯糸とする経緯1インチ当たりの糸打込本数が、経7本・緯7本の平織物(空隙率b=30%)で、下記軟質塩化ビニル樹脂組成物(3)により含浸・被覆された布帛(空隙率b=25%)を用いた。この含浸・被覆布帛の両面に、実施例1と同じ軟質塩化ビニル樹脂組成物(2)からなる厚さ0.42mmの難燃樹脂被覆層用カレンダーシートを熱ラミネート法によって設け、総厚1.0mm、幅2mの防音領域Bシートを得た以外は、実施例1と同様にして本発明の防音シートを得た。このシートの面密度は防音領域Aが1.32kg/m、防音領域Bが1.23kg/mであり、防音領域Aの全光線透過率は0%、防音領域Bの全光線透過率は14%、防音領域Aと防音領域Bとの面積比は1:0.38、空隙率aと空隙率bとの差は17、屋外遮熱試験30℃での空間内温度は30.5℃、音響透過損失は中心周波数 音響透過損失 125Hz 6dB 500Hz 13dB 1000Hz 18dB 4000Hz 28dBであった。またこのシートはJIS−L1091A法による防炎試験に適合するものであった。(図1)

〈軟質塩化ビニル樹脂組成物3〉
ペースト塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(可塑剤) 60質量部
トリクレジルフォスフェート(リン系防炎可塑剤) 25質量部
三酸化アンチモン(難燃剤:比重5.7) 15質量部
バリウム−亜鉛系複合安定剤 4質量部
硫酸バリウム(比重4.4) 120質量部
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤 0.2質量部
【0037】
[実施例3]
実施例1で防音領域Bに用いた繊維布帛を変更した。変更した繊維布帛は、1111dtexのポリエステルマルチフィラメント糸条を経糸及び緯糸とする経緯1インチ当たりの糸打込本数が、経3本・緯3本の平織物(空隙率b=62%)で、実施例2の軟質塩化ビニル樹脂組成物(3)により含浸・被覆された布帛(空隙率b=59%)を用いた。この含浸・被覆布帛の両面に、実施例1と同じ軟質塩化ビニル樹脂組成物(2)からなる厚さ0.42mmの難燃樹脂被覆層用カレンダーシートを熱ラミネート法によって設け、総厚1.0mm、幅2mの防音領域Bシートを得た以外は、実施例1と同様にして本発明の防音シートを得た。このシートの面密度は防音領域Aが1.32kg/m、防音領域Bが1.16kg/mであり、防音領域Aの全光線透過率は0%、防音領域Bの全光線透過率は33%、防音領域Aと防音領域Bとの面積比は1:0.38、空隙率aと空隙率bとの差は51、屋外遮熱試験30℃での空間内温度は31.0℃、音響透過損失は中心周波数 音響透過損失 125Hz 6dB 500Hz 13dB 1000Hz 18dB 4000Hz 28dBであった。またこのシートはJIS−L1091A法による防炎試験に適合するものであった。(図1)
【0038】
[実施例4]
実施例2と同じ防音領域A及び防音領域Bとを用いて本発明の防音シートを得た。但し、防音シートの作成は次のように行った。まず防音領域Aシートから、幅0.65m、長さ3.4mの防音領域Aの短冊を2枚裁断した。次に防音領域Bシートから、幅0.66m×長さ3.4mの防音領域Bの短冊を1枚裁断し、防音領域Bの短冊の左右に防音領域Aの短冊を配置し、互いの側部を0.03m重ね合わせ、防音領域Aと防音領域Bを熱融着一体化した。次にこのA−B−A接合体の、A−B−Aに跨る天側部と底側部に、防音領域Aシートから採寸した長さ5cm、幅1.8mの帯を積重熱融着し、実施例1と同様に補強部を設けてハトメ打ちを施した。これによって防音領域A内に防音領域Bを有する本発明の防音シートを得た。このシートの面密度は防音領域Aが1.32kg/m、防音領域Bが1.23kg/mであり、防音領域Aの全光線透過率は0%、防音領域Bの全光線透過率は14%、防音領域Aと防音領域Bとの面積比は1:0.43、空隙率aと空隙率bとの差は17、屋外遮熱試験30℃での空間内温度は31.3℃、音響透過損失は中心周波数 音響透過損失 125Hz 6dB 500Hz 13dB 1000Hz 18dB 4000Hz 28dBであった。またこのシートはJIS−L1091A法による防炎試験に適合するものであった。(図8)
【0039】
[実施例5]
実施例2と同じ防音領域A及び防音領域Bとを用いて本発明の防音シートを得た。但し、防音シートの作成は次のように行った。防音領域Aシートから、防音シート1枚のサイズとして、幅1.9m、長さ3.5mを裁断し、シート4辺の縁に沿い5cm幅に2ツ折してミシン縫製にて補強、この補強部には30cm間隔で直径23mm、内径12mmのハトメ打ちを施して幅1.8m、長さ3.4mの規格シートを得た。この規格シートの長さ方向、上から1.2mの位置、下から1.2mの中央位置から、幅1.7m×長さ1.0mのヨコ長の長方形を切り抜いて長方形穴部を設け、この長方形穴の底辺部を除く3辺全域に面ファスナー(雌)をミシン接合した。次に防音領域Bシートから、幅1.73m×長さ1.03mのヨコ長の長方形を切り抜き、この長方形の底辺部を除く3辺ののりしろ3cmに面ファスナー(雄)をミシン接合した。この防音領域Bを防音領域Aシートの切り抜き穴に同形で重ね、長方形穴の底辺部と防音領域Bとの底辺部とを積重熱融着して本発明の防音シートを得た。このシートの面密度は防音領域Aが1.32kg/m、防音領域Bが1.23kg/mであり、防音領域Aの全光線透過率は0%、防音領域Bの全光線透過率は14%、防音領域Aと防音領域Bとの面積比は1:0.38、空隙率aと空隙率bとの差は17であった。これによって防音シートの防音領域Bは、雌雄面ファスナーの会合により防音領域A内に固定され、雌雄面ファスナーの剥離によって、防音領域Bを開閉自在な窓とした。屋外遮熱試験30℃での空間内温度は30.5℃であったが、防音領域Bを開放することで温度は30℃になった。またこのシートはJIS−L1091A法による防炎試験に適合するものであり、音響透過損失は中心周波数 音響透過損失 125Hz 6dB 500Hz 13dB 1000Hz 18dB 4000Hz 28dBであった。(図5)
【0040】
[実施例6]
実施例2と同じ防音領域A及び防音領域Bとを用いて本発明の防音シートを得た。但し、防音シートの作成は次のように行った。まず防音領域Aシートから、防音シート1枚のサイズとして、幅1.9m、長さ3.5mを裁断し、シート4辺の縁に沿い5cm幅に2ツ折してミシン縫製にて補強、この補強部には30cm間隔で直径23mm、内径12mmのハトメ打ちを施して幅1.8m、長さ3.4mの規格シートを得た。この規格シートの長さ方向、上から0.5mの位置と、下から0.5mの位置に、幅1.7m×長さ0.8mのヨコ長の長方形を2ヶ所切り抜いた。次に防音領域Bシートから、幅1.73m×長さ0.83mのヨコ長の長方形を2枚切り抜き、2枚をそれぞれ防音領域Aシートの切り抜き部に同形で重ね、4辺ののりしろ0.03mにて防音領域A内に防音領域B2単位を積重熱融着して一体化して、防音領域A内に防音領域Bを2単位含み、防音領域Bと防音領域Bとの間隔0.8mを有する本発明の防音シートを得た。このシートの面密度は防音領域Aが1.32kg/m、防音領域Bが1.23kg/mであり、防音領域Aの全光線透過率は0%、防音領域Bの全光線透過率は14%、防音領域Aと防音領域Bとの面積比は1:0.8、空隙率aと空隙率bとの差は17、屋外遮熱試験30℃での空間内温度は31.8℃、音響透過損失は中心周波数 音響透過損失 125Hz 6dB 500Hz 13dB 1000Hz 18dB 4000Hz 28dBであった。またこのシートはJIS−L1091A法による防炎試験に適合するものであった。(図7)
【0041】
[比較例1]
実施例1の防音領域A単体のみで防音シート1枚のサイズ、幅1.8m、長さ3.4mの縁取補強品を構成した。このシートの面密度は1.32kg/m、全光線透過率0%、音響透過損失は、中心周波数 音響透過損失 125Hz 9dB 500Hz 16dB 1000Hz 20dB 4000Hz 30dBであった。屋外遮熱試験30℃での空間内温度は28.6℃であった。またこのシートはJIS−L1091A法による防炎試験に適合するものであった。
【0042】
[比較例2]
実施例1の防音領域B単体のみで防音シート1枚のサイズ、幅1.8m、長さ3.4mの縁取補強品を構成した。このシートの面密度は1.03kg/m、全光線透過率19%、音響透過損失は、中心周波数 音響透過損失 125Hz 6dB 500Hz 13dB 1000Hz 16dB 4000Hz 26dBであった。屋外遮熱試験30℃での空間内温度は34.6℃であった。またこのシートはJIS−L1091A法による防炎試験に適合するものであった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の工事現場囲包用防音シートは、従来の防音シートと同等の防音性を有しながら、適度な採光性をムラ無く有することで、夏季日照における過度の気温上昇を抑制することを可能とする。従って本発明の工事現場囲包用防音シートを使用すれば、工事現場内に防炎性の安全を保ちながら適度な日照を取り入れて現場環境を明るくし、より作業の安全性を確保できるようになり、また、従来は日中にも必要であったエンジン発電照明の稼動時間や騒音を半減させることもでき、さらに必要に応じて工事現場内の換気も可能であり、また外界作業の目視確認も容易なので、工事現場内外の作業環境改善に寄与することができる。
【符号の説明】
【0044】
1:工事現場囲包用防音シート
2:防音領域A
3:防音領域B
4:防音領域Aの繊維布帛(空隙率a)
5:難燃樹脂被覆層(無機化合物粒子含有)
6−1:防音領域Bの繊維布帛(空隙率b)
6−2:防音領域Bの繊維布帛(無機化合物粒子含有難燃樹脂で含浸被覆:空隙率b)
7:難燃樹脂被覆層(無機化合物粒子非含有)
8−1:面ファスナー(雌)
8−2:面ファスナー(雄)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維布帛の両面に難燃樹脂被覆層が設けられた、面密度0.5〜2.5kg/mの可撓性シートであって、前記可撓性シートが、全光線透過率(JIS−K7105)0〜5%の防音領域Aと、全光線透過率(JIS−K7105)10〜60%の防音領域Bとによって構成され、前記防音領域Bは1〜6個の領域に分散して前記防音領域Aに取り囲まれて配置され、さらに前記防音領域Aには空隙率aの繊維布帛を含み、前記防音領域Bには空隙率bの繊維布帛を含んでいて、前記空隙率bは前記空隙率aよりも大きく、その空隙率差が10〜60であることを特徴とする工事現場囲包用防音シート。
【請求項2】
前記防音領域Aの前記難燃樹脂被覆層が無機化合物粒子を含有し、前記防音領域Bの前記難燃樹脂被覆層には無機化合物粒子を含有しない、請求項1に記載の工事現場囲包用防音シート。
【請求項3】
前記防音領域Bに含む前記空隙率bの前記繊維布帛が、無機化合物粒子を含有する難燃樹脂によって含浸被覆されている、請求項1または2に記載の工事現場囲包用防音シート。
【請求項4】
前記無機化合物粒子が、酸化鉛、三酸化アンチモン、チタン酸バリウム、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄、炭酸バリウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、アルミナ、チタン酸カリウム、酸化マグネシウム、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウムから選ばれた1種以上を含む、請求項2または3に記載の工事現場囲包用防音シート。
【請求項5】
前記難燃樹脂被覆層が、ハロゲン含有化合物、リン原子含有化合物、窒素原子含有化合物、及び無機化合物から選ばれた1種以上の難燃剤を含む、請求項1〜4の何れか1項に記載の工事現場囲包用防音シート。
【請求項6】
前記可撓性シートにおける、前記防音領域Aと前記防音領域Bとの面積比が、1:0.2〜1:2である、請求項1〜5の何れか1項に記載の工事現場囲包用防音シート。
【請求項7】
前記可撓性シートの面積が、3〜10mであり、この面積に占める前記防音領域Bの面積が、0.5〜6.6mである、請求項1〜6の何れか1項に記載の工事現場囲包用防音シート。
【請求項8】
前記防音領域Bが、雌雄面ファスナーの会合と剥離によって開閉可能である、請求項7に記載の工事現場囲包用防音シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−196157(P2011−196157A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67180(P2010−67180)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【特許番号】特許第4777464号(P4777464)
【特許公報発行日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000239862)平岡織染株式会社 (81)