説明

工事記録用黒板装置

【課題】鉄塔上の作業における工事記録写真を1人の作業員で撮影することを実現した工事記録用黒板装置を提供する。
【解決手段】工事記録用黒板装置1は、鉄塔100上において行われ、送電線110にジャンパスリーブ140を取り付ける工事の内容を記入する黒板10と、黒板10に設けられ、ジャンパスリーブ140を固定するスリーブ固定部12と、スリーブ固定部12にジャンパスリーブ140を固定した場合に、ジャンパスリーブ140の長さ方向に沿うように黒板10に配置されるメジャー14と、黒板10をつり下げるように、鉄塔100における所定位置に取り付ける取付部16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄塔関連の工事記録写真撮影に用いる工事記録用黒板装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工事記録を写真で残すために、工事記録写真の撮影を行っている。特に、公共工事においては、関係工事業者に工事記録写真の提出を義務付けている自治体もある。このような自治体においては、自治体毎に工事記録写真撮影基準が設けられており、作業者は、この基準に基づいて工事記録写真を撮影する必要がある。
【0003】
ところで、鉄塔上における作業、例えば、ジャンパスリーブ圧縮作業や補修スリーブ圧縮作業等も、工事記録写真を撮影する必要がある。ジャンパスリーブ圧縮作業は、碍子を介して鉄塔に取り付けられた一対の送電線から分岐したジャンパ線同士をジャンパスリーブに挿入し、ジャンパスリーブを圧縮することで両者を接続する作業である。補修スリーブ圧縮作業は、電線において傷みのある部分に補修スリーブを取り付けて補修スリーブを圧縮する作業である。工事記録写真の撮影の際には、このような圧縮作業を行った後に、スリーブの近傍に、工事件名や工事の種別等の各種項目を記入した黒板、及びスリーブの長さの目安となるメジャーを配置してから、作業者が工事記録写真の撮影を行う。
【0004】
また、従来におけるこの種の技術としては、特許文献1及び2に記載された技術がある。特許文献1には、工事用黒板の裏面にフックを設け、足場パイプや鉄筋等に掛けて使用することが示されている。特許文献2には、黒板に寸法測定用のメジャー及びカーソルを装着することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−54188号公報
【特許文献2】実用新案登録第3113327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、鉄塔上でのジャンパースリープ圧縮作業や補修スリーブ圧縮作業等の作業時の工事記録写真の撮影は、作業員1名が黒板、スケール及びスリーブ等を両手で持って、黒板の位置調整をしながら、もう1人の作業員がカメラを操作することによって行われる。
【0007】
このため、工事記録写真撮影は、必ず2人いなければできない作業であり、また、鉄塔上という、限られた作業スペースであることから、1人の作業員の作業スペースはさらに限られ、作業が行いにくくなる。さらに、黒板を持つ作業員は両手ともふさがっているため、黒板に文字を記入する際には、黒板を持つ作業員が黒板をいったん持ち上げて、もう1人の作業員が文字を書きやすい位置に黒板を支持し、もう1人の作業員が文字を書く等、黒板に文字を記入する作業に手間がかかっている。
【0008】
また、特許文献1の技術によれば、工事用黒板を足場パイプや鉄筋等に掛けて使用できるため、黒板を持つ手間は省略できる。また、特許文献2の技術によれば、メジャーを持つための作業員が必要なくなる。しかしながら、スリーブを黒板近傍に位置付けるための作業員が必要となるため、結局、2人の作業員が必要となり、その分、人件費が高くなる。
【0009】
本発明は、このような問題点を解決し、鉄塔上の作業における工事記録写真を1人の作業員で撮影することを実現した工事記録用黒板装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記目的を達成するため、次に記載する構成を備えている。
【0011】
(1) 鉄塔上において行われ、電線にスリーブを取り付ける工事の内容を記入する黒板と、当該黒板に設けられ、前記スリーブを固定するスリーブ固定部と、当該スリーブ固定部に前記スリーブを固定した場合に、前記スリーブの長さ方向に沿うように前記黒板に配置されるメジャーと、前記黒板をつり下げるように、鉄塔における所定位置に取り付ける取付部とを備えたことを特徴とする工事記録用黒板装置。
【0012】
(1)によれば、工事の内容を記入した黒板にスリーブを固定し、さらに、所定位置に黒板を取り付けることによって、スリーブの周囲に黒板とメジャーとを配置した構図ができあがる。これにより、黒板を持つための人員を削減できるために、1人の作業員で工事記録写真撮影を行うことが可能になる。
【0013】
(2) (1)において、前記スリーブ固定部は、前記スリーブを把持する把持部と、前記スリーブの太さに応じて前記把持部の幅を可変する可変部とを有することを特徴とする工事記録用黒板装置。
【0014】
(2)によれば、スリーブの太さに応じて把持部の幅を可変することにより、黒板にスリーブを確実に固定することが可能になる。これにより、作業員がスリーブを持つ必要がなくなり、工事記録写真撮影における人員を削減することが可能になる。
【0015】
(3) (1)、(2)において、前記取付部は、前記黒板の上下位置を調整する伸縮部と、前記黒板の角度を調整する回転部とを備えたことを特徴とする工事記録用黒板装置。
【0016】
(3)によれば、黒板が所望の高さになるように、黒板の上下位置を調整することができる。さらに、太陽光によって黒板面が光らないように角度調整ができる。このため、工事記録写真を撮影する際の被写体の構図を調整することが可能になり、黒板の記入内容やメジャーが確実に映し出されている工事記録写真を撮影することが可能になる。
【0017】
(4) (1)〜(3)において、前記取付部は、鉄塔の骨組み又は電線に取り付けられることを特徴とする工事記録用黒板装置。
【0018】
(4)によれば、スリーブをスリーブ固定部に固定し、さらに取付部を鉄塔の骨組み又は電線に取り付けることにより、作業者が黒板から手を離しても、鉄塔の骨組み又は電線に黒板がつり下げた状態で維持することが可能になる。これにより、1人の作業者によって、黒板への書き込みが容易に可能となり、鉄塔上における工事記録写真の撮影作業を行うことが可能になる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、工事記録写真撮影を1人の作業員で行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態における工事記録用黒板装置の概略構成を示す説明図である。
【図2】黒板及びその周辺の概略構成を示す説明図である。
【図3】スリーブ固定部の構成を示す図である。
【図4】鉄塔の骨組みに取り付ける取付金具の構成を示す図である。
【図5】電線に取り付ける取付金具の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0022】
図1は、本発明の一実施形態における工事記録用黒板装置の概略構成を示す説明図である。工事記録用黒板装置1は、矩形の黒板10と、スリーブ固定部12と、メジャー14と、取付部16とを備えている。
【0023】
黒板10は、木製の板材の板面に、黒色あるいは緑色の塗料が塗布されたものであり、板面に、チョークによって文字を書くことができる。また、布等によって表面を拭き取ることによって、チョークによって書かれた文字を消したりすることが可能である。また、黒板10には、例えば、白色塗料によって、工事の内容に関する記入項目のフォーマットが描かれている。また、黒板10の板面における下部には、スリーブ固定部12が配設されており、スリーブ固定部12の下部近傍にメジャー14が配設されている。また、黒板10の両側部には、取付部16が設けられている。
【0024】
スリーブ固定部12は、工事によって電線に取り付けられたスリーブを着脱自在に固定するものであり、黒板10の下部に2つ設けられている。図1に示すスリーブ固定部12、12は、ジャンパスリーブ圧縮作業によってジャンパ線130同士を接続したジャンパスリーブ140の両端部を固定している。
【0025】
ここで、ジャンパスリーブ圧縮作業について説明する。図1において、鉄塔100には、一端が、鉄塔100の両側に隣り合う2つの鉄塔(図示しない)に接続された各送電線110の他端が、碍子120を介して互いに対向するように取り付けられている。また、各送電線110の他端部からは、ジャンパ線130が分岐している。そして、作業員は、鉄塔100上において、ジャンパスリーブ圧縮作業を行い、鉄塔100に接続されている2つの送電線110の他端部から分岐したジャンパ線130同士をジャンパスリーブ140によって接続する。これにより、鉄塔100に架設されている送電線110同士が、ジャンパ線130によって電気的に接続される。
【0026】
また、図1において、メジャー14は、黒板10におけるスリーブ固定部12、12の下方の近傍に配置されており、この時のメジャー14の長手方向は、スリーブ固定部12、12にジャンパスリーブ140を固定した場合に、ジャンパスリーブ140の長さ方向に沿っている。
【0027】
図2は、黒板及びその周辺の概略構成を示す説明図であり、図2(a)は正面図、図2(b)は側面図である。
【0028】
取付部16は、回転部に相当する固定部材20と、取付部に相当する取付金具22と、伸縮部に相当する伸縮部材24とを備えている。固定部材20は、黒板10に固定され、伸縮部材24と黒板10とを連結するものである。取付金具22は、鉄塔100あるいは電線に着脱自在に取り付けられる金具である。伸縮部材24は、一端部を固定部材20に連結し、他端部を取付金具22に連結するものである。そして、ジャンパスリーブ140をスリーブ固定部12に固定し、取付金具22を鉄塔100の骨組みあるいは鉄塔100に支持されている電線に取り付けることにより、黒板10は、ジャンパスリーブ140及びメジャー14を支持しかつ鉄塔100の骨組みあるいは電線につり下げられた状態となる。なお、図1は、鉄塔100に黒板10がつり下げられた状態を示すものである。
【0029】
図2に示すように、黒板10には、各種の記入項目を有するフォーマットが予め描かれている。具体的な項目としては、工事件名、種別、場所、圧縮前のスリーブの長さ、圧縮後のスリーブの長さ、工事の年月日、施工者及び天候といった記入項目がある。
【0030】
また、伸縮部材24は、複数のアルミ製のレール24aと、締結部品28とによって構成されている。レール24aには、中央部に長手方向に沿った長穴24bが形成されている。また、締結部品28は、ワッシャ付きのボルトと、このボルトに螺合する蝶ナットとからなる。そして、複数のレール24aを、隣り合うレール24aの一端部と他端部とを交互に重ね合わせて、長手方向に延びるように一列に配列し、さらに、隣り合うレール24a、24aにおいて重なっている長穴24bの一方側からボルトを遊嵌し、他方側からボルトに蝶ナットを螺合することによって、隣り合うレール24aの一端部と他端部とが、締結部品28によって連結される。他の隣り合うレール24aの一端部と他端部とが重なっている部分も同様に、締結部品28を用いて連結される。
【0031】
ここで、伸縮部材24の長さ、あるいは部分的に角度を変える場合には、締結部品28の蝶ナットを緩め、レール24aをスライドさせたり回動させることによって、伸縮部材24の長さや角度を調節してから蝶ナットを締める。これによって、伸縮部材24の長さや部分的に角度をよって変えることが可能である。
【0032】
このように構成された伸縮部材24の一端部には、固定部材20が連結され、他端部には、取付金具22(図3、4参照)が連結される。
【0033】
固定部材20は、中央にボルト(図示せず)が立設しており、この固定部材20は、黒板の両側部にボルト(図示せず)の中心軸が一致するように固定される。このとき、ボルト(図示せず)は、黒板10の両側部から外側に向けて、黒板10の横方向に平行に延在している。そして、このボルト(図示せず)に、伸縮部材24の一端部となるレール24aの長穴24bを遊嵌させ、締結部品26(例えば、蝶ナット)によって締結することによって、伸縮部材24の一端部が固定部材20を介して黒板10に取り付けられる。
【0034】
ここで、黒板1の角度を調整する場合には、締結部品26を緩め、黒板10を所望の角度に変えてから締結部品26を締めることによって、黒板10の角度を調整することが可能となる。
【0035】
図3は、スリーブ固定部の構成を示す図であり、図3(a)は斜視図であり、図3(b)は側面図である。
【0036】
スリーブ固定部12は、フレーム40と、作動ねじ50と、把持板52と、つまみ54とを備えている。
【0037】
フレーム40は、長手方向に延びる平面部42と、平面部42の長手方向の両側部から直角に延出する側面部44、46とからなるコ字状の部材である。側面部44の中央部には、ねじ穴44aが設けられている。また、側面部46における側面部44との対向面には、凹部46aが形成されており、この凹部46aは、平面部42の短手方向に平行に形成されている。
【0038】
作動ねじ50は、ねじ穴44aに螺合する長尺のねじである。作動ねじ50において側面部46に対向する一端部には把持板52が取り付けられている。ここで、作動ねじ50は、把持板52に対して独立して回転するように取り付けられている。また、作動ねじ50において側面部44から外側に延出する他端部にはつまみ54が固定されている。
【0039】
把持板52における凹部46aとの対向面には、凹部52aが形成されており、把持板52が作動ねじ50の一端部に取り付けられた状態において、側面部46の凹部46aと把持板52の凹部52aとが対向する。ここで、凹部46a及び凹部52aは、図3(b)に示すように、スリーブ固定部12を側面視した場合に、凹部46a及び凹部52aの両側面が、底面から開口側に向かって拡がるように形成されている。
【0040】
また、フレーム40の平面部42の中央部には、平面部42の長手方向に沿って立設した凸部42aが形成されている。また、把持板52の側部には、切欠52bが形成されており、把持板52が作動ねじ50の一端部に固定された状態において、切欠52bが凸部42aに遊嵌する。
【0041】
図3(a)に示すように構成されたスリーブ固定部12は、図3(b)に示すように、フレーム40の平面部42における凸部42aが形成された面の反対面と黒板10とが密着させた状態で固定されている。具体的には、また、フレーム40の平面部42における、凸部42aが形成された面の反対面には、ボルト48、48が立設している。さらに、黒板10には、スリーブ固定部12の取り付け位置に、ボルト48、48を挿通するための孔部が設けられている。この孔部にボルト48、48を挿通して、ボルト48、48に蝶ナット49、49を螺合させることにより、黒板10にスリーブ固定部12が固定される。
【0042】
そして、スリーブ固定部12にジャンパスリーブ140を固定する際には、凹部46aにジャンパスリーブ140を載置し、つまみ54を操作して作動ねじ50を回転させ、作動ねじ50とともに把持板52をジャンパスリーブ140側に移動させる。これにより、側面部46と把持板52との幅が狭くなり、ジャンパスリーブ140は、フレーム40の側面部46と把持板52との間に把持され、黒板10にジャンパスリーブ140が固定される。このように、作動ねじ50は可変部に相当し、側面部46及び把持板52は把持部に相当する。
【0043】
なお、スリーブ固定部12に固定するスリーブの径が若干異なっているとしても、把持板52と側面部46との幅が可変自在であるため、スリーブ固定部12に固定することが可能である。
【0044】
図4は、鉄塔の骨組みに取り付ける取付金具の構成を示す図であり、図4(a)は斜視図であり、図4(b)は側面図である。
【0045】
図4に示す取付金具22は、長尺のボルト60と、垂直フック62と、水平フック64と、ナット66、68とを備えたL字型の金具である。なお、図示していないが、ボルト60の他端部に、伸縮部材24の他端部が連結される。
【0046】
垂直フック62は、ボルト60に螺合するねじ穴62aが形成されている本体部62bと、本体部62bの一端部から他端部に向かってJ字状に延出するフック部62cとを備えている。
【0047】
水平フック64は、板状の直線部64aと、この直線部64aの片方の端部に形成されたフック部64bとを備えたJ字状の部材である。直線部64aの中央部には、ボルト60が遊嵌可能な長穴64cが形成されている。
【0048】
ボルト60には、下からナット68、水平フック64、垂直フック62、そしてナット66の順で取り付けられる。
【0049】
まず、ボルト60の一端部からナット68を螺合させ、回転させることによって下方に移動させる。次に、水平フック64のフック部64bが上側に位置するように長穴64cを遊嵌させて、ボルト60に水平フック64を取り付ける。次に、垂直フック62を、本体部62bの他端側からねじ穴62aにボルト60を螺合させることによって、ボルト60に取り付ける。そして、本体部62bの他端側から突出したボルト60の端部にナット66を取り付けることにより、取付金具22が構成される。
【0050】
そして、L字型の取付金具22は、図4(b)に示すように、L字型の鉄塔100の骨組みにおいて、上下方向の部分には、垂直フック62のフック部62cを係合させ、水平方向の部分には、水平フック64を上下左右に移動させてフック部64bを係合させる。そして、ナット66によって水平フック64を締結することによって、取付金具22が鉄塔100の骨組みに固定される。なお、取付金具22を鉄塔100の骨組みから取り外す場合には、ナット66を緩めることによって取付金具22の取り外しが可能になる。
【0051】
図5は、送電線に取り付ける取付金具の構成及び取り付け状態を示す図であり、図5(a)は電線に取り付けた状態を示し、図5(b)は電線に着脱する際の状態を示す。
【0052】
図5に示す送電線に取り付ける取付金具22は、2つの半円環部材70、72と、ボルト76と、蝶ナット78とを備えている。なお、図示していないが、半円環部材72に、伸縮部材24の他端部が連結される。
【0053】
半円環部材70の中央部には、中央部に半円柱状の凹部70aが形成されており、半円環部材70の中央部には、半円柱状の凹部72aが形成されている。半円環部材70の一端部と半円環部材72の一端部とは回動軸74によって互いに回動可能に連結されている。そして、半円環部材70の他端部と半円環部材72の他端部とが当接している場合には、図5(a)に示すように、凹部70aと凹部72aとによって円柱状の空間が形成され、この空間内に、鉄塔100に取り付けられている電線150が配置される。
【0054】
半円環部材72の他端部には、ボルト76の他端部が回動軸80を軸として回動可能に取り付けられている。ここで、回動軸74と回動軸80とは互いに平行である。また、図示していないが半円環部材70の他端部には、ボルト76が係合する切欠(図示せず)が形成されている。また、ボルト76には蝶ナット78が螺合されている。また、半円環部材72の外周には、伸縮部材24の他端部と連結する連結部82が設けられている。
【0055】
このように構成された取付金具22を電線150に取り付ける場合には、図5(b)に示すように、ボルト76を回動させて、半円環部材70の他端部に形成された切欠(図示せず)との係合状態を解除し、半円環部材72に対して半円環部材70を開いた状態にする。次に、電線150を凹部72aに載置してから、半円環部材70を閉じて、半円環部材70の他端部と半円環部材72の他端部とを当接させる。さらに、ボルト76を回動させて、半円環部材70の他端部に形成された切欠(図示せず)に係合させ、蝶ナット78を締結することによって、半円環部材70の他端部と半円環部材72の他端部とを連結させる。これにより、取付金具22が電線150に固定される。なお、取付金具22を電線150から取り外す場合には、ねじ76を緩めることによって取付金具22の取り外しが可能になる。
【0056】
次に、工事記録写真撮影を行うまでの手順について説明する。本実施形態においては、ジャンパスリーブ圧縮作業における工事記録写真撮影を例として説明する。まず、電線へのスリーブの取り付け作業を行う前に、黒板10における、「圧縮後」の項目を除く各項目に、文字やマルを記入する。ここでは、種別の「ジャンパ」にマルを記入する。なお、電線150の接続に使用する直線スリーブの圧縮作業の場合には、種別の「直線」にマルをつける。送電線110における傷みのある部分の部分的補修に使用する補修スリーブの圧縮作業の場合には、種別の「補修」にマルをつける。
【0057】
その後、作業者は、ジャンパスリーブ圧縮作業を行い、ジャンパスリーブ140の取り付け作業を終了した後に、ジャンパスリーブ140をスリーブ固定部12に固定する。次に、取付金具22を、例えば、鉄塔100の骨組みに固定する作業を行い、黒板10を、例えば鉄塔100の骨組みにつり下げる。なお、取付金具22を鉄塔100の骨組みに固定してから、黒板10のスリーブ固定部12にジャンパスリーブ140を固定してもよい。そして、作業者は、「圧縮後」の項目にジャンパスリーブ140の長さを記入したのち、黒板10の角度や上下位置を調整して、黒板10の内容が見易い状態となるように構図を決定する。構図が決定した後、作業者は、カメラを持って工事記録写真撮影を行う。
【0058】
以上、説明したように、本実施形態によれば、工事の内容を記入した黒板10にジャンパスリーブ140を固定し、さらに、鉄塔100の骨組みあるいは電線150に取付部16を介して黒板10を取り付けることによって、ジャンパスリーブ140の周囲に黒板10とメジャー14とを配置した構図ができあがる。これにより、黒板10を持つための人員を削減できるために、1人の作業員で工事記録写真撮影を行うことが可能になる。また、スリーブ固定部12やメジャー14が黒板10に固定されているため、例えば、スリーブの固定作業において、スリーブ固定部12やメジャー14を落下させてしまうことが防止できる。
【0059】
また本実施形態によれば、スリーブ固定部12の固定するスリーブの太さに応じて、側面部46と把持板52との幅を可変することにより、黒板10にスリーブを確実に固定することが可能になる。これにより、作業員がスリーブを持つ必要がなくなり、工事記録写真撮影における人員を削減することが可能になる。
【0060】
また本実施形態によれば、取付部16は、黒板10の上下位置を調整する伸縮部材24と、黒板10の角度を調整する固定部材20とを備えたことにより、黒板10が所望の高さになるように、黒板10の上下位置を調整することができる。さらに、太陽光によって黒板10の面が光らないように角度調整ができる。このため、工事記録写真を撮影する際の被写体の構図を調整することが可能になり、黒板10の記入内容やメジャー14が確実に映し出されている工事記録写真を撮影することが可能になる。
【0061】
なお、黒板10として、本実施形態によれば、板に黒色や緑色の塗料を塗布して、チョークによって文字を書いたり消したりすることを可能にした板を用いているが、本発明はそれに限るものではなく、本発明の黒板は、他にも、水性マーカによって文字を書いたり消したりすることが可能なように、表面が滑らかになるようにコーティングしてなる板(例えば、ホワイトボード)も含むものとする。
【符号の説明】
【0062】
1 工事記録用黒板装置
10 黒板
12 スリーブ固定部
14 メジャー
16 取付部
20 固定部材
22 取付金具
24 伸縮部材
24a レール
24b 長穴
26、28 締結部品
100 鉄塔
110 送電線
120 碍子
130 ジャンパ線
140 ジャンパスリーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄塔上において行われ、電線にスリーブを取り付ける工事の内容を記入する黒板と、
当該黒板に設けられ、前記スリーブを固定するスリーブ固定部と、
当該スリーブ固定部に前記スリーブを固定した場合に、前記スリーブの長さ方向に沿うように前記黒板に配置されるメジャーと、
前記黒板をつり下げるように、鉄塔における所定位置に取り付ける取付部とを備えたことを特徴とする工事記録用黒板装置。
【請求項2】
前記スリーブ固定部は、前記スリーブを把持する把持部と、前記スリーブの太さに応じて前記把持部の幅を可変する可変部とを有することを特徴とする請求項1記載の工事記録用黒板装置。
【請求項3】
前記取付部は、前記黒板の上下位置を調整する伸縮部と、前記黒板の角度を調整する回転部とを備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の工事記録用黒板装置。
【請求項4】
前記取付部は、鉄塔の骨組み又は電線に取り付けられることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の工事記録用黒板装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−16891(P2012−16891A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−155812(P2010−155812)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】