説明

工作機械のパレット交換装置

【課題】工作機械のパレット交換装置のパレット交換時間を短縮すること。
【解決手段】工作機械13と、複数の段取り台39、41との間でパレットを搬送するパレット搬送装置が、パレットP1、P2の搬送方向に沿ってパレットP1、P2に設けられたラックと、工作機械13のテーブル31及び段取り台39、41の各々に設けられ、ラックと係合するピニオンと、ピニオンを回転させる駆動モータMT、M1、M2とを有しパレットP1、P2を搬送する駆動手段と、該駆動手段の駆動モータを同期制御する制御手段37とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械のパレット交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の分野では、ワークをパレットに固定した状態でそのパレットを工作機械のテーブルに着脱可能に取付けて、該ワークを加工することが行われている。こうした工作機械では、未加工ワークと加工済ワークとをパレットごと交換するためのパレット交換装置が用いられる。
【0003】
例えば、特許文献1には、工作機械のテーブルの鉛直に形成されたパレット取付面から、パレット交換装置の鉛直に形成されたパレット支持部材のパレット取付面へ、パレットを鉛直に保持した状態で移載し、旋回ベースを鉛直軸線まわりに180°旋回割出し後、パレットをパレット支持部材からテーブルへ移載するようにしたパレット交換装置が記載されている。
【0004】
また、特許文献2には、工作機械の機械テーブル側に補助テーブルを設け、架台上に設けた旋回ユニットに段取り部を形成したパレット搬送装置が記載されている。旋回ユニット上において、補助テーブルの延長線上に第1の段取りテーブルが設けられ、第2の段取テーブルが、第1の段取りテーブルに平行に設けられている。機械テーブルには油圧モータが取付けられており、該油圧モータの回転軸には、パレットのラックに係合可能にピニオンが取付けられている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−161492号公報
【特許文献2】特開平9−225774号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術によるパレット交換装置では、先ず、加工済みワークを取付けたパレットを工作機械のテーブルから排送し、次いで、未加工ワークを取付けたパレットを工作機械のテーブルへ給送することによってパレット交換が実行される。つまり、旧パレットの排送と、新パレットの給送とを順次的に実行しなければならない。従って、パレット交換時間が長くなるとの問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、こうした従来技術の問題点を解決することを技術課題としており、パレット交換時間の短縮を図った工作機械のパレット交換装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、本発明によれば、工作機械のテーブルと、複数の段取り台との間でパレットを交換するパレット交換装置において、前記パレットの搬送方向に沿って前記パレットに設けられたチェーン又はラックと、前記テーブル及び前記複数の段取り台の各々に設けられ、前記チェーン又はラックと係合する複数のスプロケット又はピニオンと、前記複数のスプロケット又はピニオンを回転させる複数の駆動モータとを有し前記パレットを搬送する駆動手段と、前記駆動手段の複数の駆動モータを同期制御する制御手段とを具備するパレット交換装置が提供される。
【0009】
また、本発明によれば、パレットを固定するテーブルと、前記テーブルに対面させて回転可能に支持され先端部に工具を装着する主軸と、前記主軸とテーブルとを直交3軸方向に相対移動させる送り手段とを有した工作機械のパレット交換装置において、前記工作機械のテーブルの両側部に配置された第1と第2の段取りステーションと、前記第1と第2の段取りステーションの各々から前記工作機械のテーブルへパレットを給送し、前記第1と第2の段取りステーションの各々へ前記工作機械のテーブルからパレットを排送するパレット搬送手段と、前記第1の段取りステーションから前記テーブルへのパレットの給送と前記テーブルから前記第2の段取りステーションへのパレットの排送、又は前記第2の段取りステーションから前記テーブルへのパレットの給送と前記テーブルから前記第1の段取りステーションへのパレットの排送を同時に行うべく前記パレット搬送手段を同期制御する制御手段とを具備するパレット交換装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数のパレットを同時に同期させて搬送、交換するようにしたので、パレット交換時間が著しく短縮した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。
本発明の実施の形態による工作機械設備11は、スプラッシュガード15により包囲されたマシニングセンタのような工作機械13と、該工作機械13の両側部に設けられた段取りステーション17、19と、工作機械13、段取りステーション17、19を制御する制御装置を具備している。本実施の形態では、前記制御装置は、工作機械13の起動、停止を制御したり、NCプログラムを読取、解釈しNC装置(図示せず)に移動指令を送出したり、工作機械13の工具交換装置(図示せず)の動作を制御したりする機械制御装置37によって形成されている。
【0012】
また、スプラッシュガード15には、段取りステーション17、19と工作機械13との間でのパレットの授受に際して、パレットを通過させる開口部と、該開口部を開閉するためのドア15a、15bと、該ドア15a、15bの開閉用駆動モータMD1、MD2が設けられており、駆動モータMD1、MD2は機械制御装置37によって制御される。
【0013】
本実施の形態では、工作機械13は、第1と第2のベッド21、29、第1のベッド21上に設けられたコラム23、コラム23に設けられ主軸27を回転可能に支持する主軸頭25、第2のベッド29上に設けられたテーブル31を主要な構成要素として具備している。第1のベッド21の上面には、Z軸案内レール21a、21bが主軸27の回転軸線Oに平行に延設されており、コラム23はZ軸案内レール21a、21b上を往復動可能に設けられている。工作機械13は、Z軸送り手段として、第1のベッド21内にZ軸方向に延設されたねじ軸(図示せず)、該ねじ軸の一端に連結されたサーボモータ(図示せず)、コラム23の下端部に設けられ前記ねじ軸に係合するナット(図示せず)を具備している。
【0014】
主軸27は、主軸頭25により水平な回転軸線Oを中心として回転可能に、かつコラム23の前面からZ軸方向に突出するように支持されている。主軸21の先端部には、工具Tが、工具ホルダ(図示せず)、ドローバー(図示せず)等の周知の工具装着手段を介して装着される。コラム23には、平行な一対のY軸案内レール(図示せず)が鉛直方向(Y軸方向)に延設されており、主軸頭25はY軸案内レールに沿って往復動可能にコラム23に取付けられている。また、工作機械13は、Y軸送り手段として、コラム23内にY軸方向に延設されたねじ軸(図示せず)、該ねじ軸の一端に連結されたサーボモータ(図示せず)、主軸頭25に設けられ前記ねじ軸に係合するナット(図示せず)を具備している。
【0015】
本実施の形態において第2のベッド29は、第1のベッド21とは別部材をなし、第1のベッド21に対して前方、すなわち主軸21の先端側に離間配置されている。第2のベッド29の上面には、平行に設けられた一対のX軸案内レール29a、29bがY軸及びZ軸に垂直なX軸方向に延設されており、テーブル31は、X軸案内レール29a、29b上を往復動可能に設けられている。また、テーブル31において、パレットP1、P2を取付けるパレット取付面31aには、パレットをX軸方向に案内し、該パレットをX軸上の所定位置に固定するための、パレット案内、固定装置35a、35bが設けられている。パレット案内、固定装置35a、35bは、特許文献1に記載されているような、パレット案内レールとクランプ装置とにより形成することができる。
【0016】
また、工作機械13は、X軸送り手段として、第2のベッド29内にX軸方向に延設されたねじ軸(図示せず)、該ねじ軸の一端に連結されたサーボモータ(図示せず)、テーブル31に設けられ前記ねじ軸に係合するナット(図示せず)を具備している。こうして、工作機械13は、X軸、Y軸、Z軸送り手段により、テーブル31に取付けられたパレットP1、P2上のワークW1、W2と工具Tとを直交3軸方向に相対移動しながらワークを加工する。上述したX軸、Y軸、Z軸送り手段は、主軸27及び該主軸27に装着された工具Tと、テーブル31及び該テーブルに固定されたパレットP1、P2並びにパレットP1、P2に固定されているワークW1、W2とを直交3軸方向へ相対移動させる送り手段を構成している。
【0017】
本実施の形態では、工作機械13の両側部に配設された段取りステーション17、19は、テーブル31のパレット取付面31と同様のパレット取付面と、案内、固定装置35a、35bと同様のパレット案内、固定装置とを有した段取り台39、41を具備している。また、段取り台39、41の各々の頂部には、パレットを工作機械に給送し、また工作機械13から排送されるパレットを引込むための駆動モータM1、M2が配設されており、該駆動モータM1、M2の各々の回転軸43にはピニオン45が取付けられている。パレットP1、P2の上縁部には、ピニオン45と係合するラック47が取付けられている。該ラック47は、パレットP1、P2の搬送方向、すなわち本実施の形態では、パレットP1、P2が第1と第2の段取りステーション17、19の段取り台39、41又は工作機械13のテーブル31に取付けられたときのX軸方向に延設されている。
【0018】
上述の実施の形態では、パレット搬送装置として、駆動モータM1、M2、MTに取付けられたピニオン45、パレットP1、P2に取付けられたラック47を具備していたが、ピニオン45とラック47は、スプロケット(図示せず)とチェーン(図示せず)としてもよい。
【0019】
以下、図4、5を参照して本実施の形態の作用を説明する。図4、5は、駆動モータMT、M1、M2の動作を示すタイムチャートを示しており、横軸は時刻tとなっている。また、図4、5において、ピニオン45がラック47と係合している状態はハッチングを付して示され、ピニオン45がラック47と係合せず、ピニオン45及び駆動モータMT、M1、M2が空転している状態は白抜きで示されている。
【0020】
図4は、図1に示すように、第1の段取りステーション17にはパレットが存在せずに、第2の段取りステーション19に新たなワークW2を取付けたパレットP2が存在し、該パレットP2を工作機械13へ向けて給送する準備が整った状態から、パレット交換動作が開始した場合を示している。
【0021】
時刻t=0において、パレット交換動作が開始されると、機械制御装置37からパレット搬送用駆動モータMT、M1、M2及びドア15a、15b開閉用駆動モータMD1、MD2へ駆動電流が供給され、ドア15a、15bが開くと共に、駆動モータMT、M1、M2が同じ方向、この場合、パレットP1、P2を図1において左方向へ移動させる方向に回転する。このとき、機械制御装置37は、パレット搬送用駆動モータMT、M1、M2を同期制御する。また、パレット搬送用駆動モータMT、M1、M2の位置に基づいて、開閉用駆動モータMD1、MD2を制御し、パレットP1、P2とドア15a、15bとが干渉しないように該ドア15a、15bを開閉する。
【0022】
パレット交換動作の開始に際して第1の段取りステーション17にはパレットが存在しないので、該第1の段取りステーション17の駆動モータM1に取付けたピニオン45は当初ラック47と係合せず、従って、該駆動モータM1及びピニオン45は空転している。一方、工作機械13のテーブル31には加工済みワーク(旧ワーク)W1を取付けたパレットP1が取付けられ、第2の段取りステーション19の段取り台41には、未加工ワーク(新ワーク)W2を取付けたパレットP2が取付けられており、パレットP1、P2のラック47はピニオン45と係合しているので、駆動モータMT、M2が回転すると、パレットP1、P2は、同時にX軸沿いに左方向へ移動する。
【0023】
時刻t=t1になると、パレットP1のラック47の先端部(図1において左端)が、駆動モータM1のピニオン45に係合し、時刻t=t1以後、パレットP1は駆動モータM1、MTによって駆動される。時刻t=t2となると、パレットP1のラック47の後端部が駆動モータMTのピニオン45から離脱し、時刻t=t2からパレット交換が終了するt=t5まで、パレットP1は駆動モータM1によってのみ駆動される。
【0024】
一方、時刻t=t3になると、第2の段取りステーション19から給送されてきたパレットP2のラック47の先端部が、駆動モータMTのピニオン45に係合し、パレットP2は駆動モータMT、M2によって駆動される。時刻t=t4となると、パレットP2のラック47の後端部が駆動モータM2のピニオン45から離脱し、時刻t=t4からパレット交換が終了するt=t5まで、パレットP2は駆動モータM2によってのみ駆動される。
【0025】
第1の段取りステーション17から工作機械13へパレットP1を給送し、工作機械13から第2の段取りステーション19へパレットP2を排送する場合は、図5に示すように、駆動モータM1、M2を入替えた点を除いて、上述した工程と同様の工程を経ることとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の好ましい実施の形態によるパレット交換装置を備えた工作機械設備の概略平面図である。
【図2】工作機械の側面図である。
【図3】パレットの正面図である。
【図4】パレット交換動作を示すタイムチャートである。
【図5】パレット交換動作を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
【0027】
11 工作機械設備
13 工作機械
15 スプラッシュガード
17 第1の段取りステーション
19 第2の段取りステーション
21 第1のベッド
23 コラム
25 主軸頭
27 主軸
29 第2のベッド
31 テーブル
29 第2のベッド
39、41 段取り台
45 ピニオン
47 ラック
1、MT、M2 駆動モータ
1、P2 パレット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械のテーブルと、複数の段取り台との間でパレットを交換するパレット交換装置において、
前記パレットの搬送方向に沿って前記パレットに設けられたチェーン又はラックと、
前記テーブル及び前記複数の段取り台の各々に設けられ、前記チェーン又はラックと係合する複数のスプロケット又はピニオンと、前記複数のスプロケット又はピニオンを回転させる複数の駆動モータとを有し前記パレットを搬送する駆動手段と、
前記駆動手段の複数の駆動モータを同期制御する制御手段と、
を具備することを特徴としたパレット交換装置。
【請求項2】
パレットを固定するテーブルと、前記テーブルに対面させて回転可能に支持され先端部に工具を装着する主軸と、前記主軸とテーブルとを直交3軸方向に相対移動させる送り手段とを有した工作機械のパレット交換装置において、
前記工作機械のテーブルの両側部に配置された第1と第2の段取りステーションと、
前記第1と第2の段取りステーションの各々から前記工作機械のテーブルへパレットを給送し、前記第1と第2の段取りステーションの各々へ前記工作機械のテーブルからパレットを排送するパレット搬送手段と、
前記第1の段取りステーションから前記テーブルへのパレットの給送と前記テーブルから前記第2の段取りステーションへのパレットの排送、又は前記第2の段取りステーションから前記テーブルへのパレットの給送と前記テーブルから前記第1の段取りステーションへのパレットの排送を同時に行うべく前記パレット搬送手段を同期制御する制御手段と、
を具備することを特徴としたパレット交換装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−262261(P2009−262261A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−112993(P2008−112993)
【出願日】平成20年4月23日(2008.4.23)
【出願人】(000154990)株式会社牧野フライス製作所 (116)
【Fターム(参考)】