工作機械の主軸
【課題】 工作機械の主軸において、主軸の大きさに関わらず、主軸の回転方向のアンバランスが大きくても、主軸を削ることなくバランス修正することのできる工作機械の主軸を提供する。
【解決手段】 工具を回転駆動させるために備えられた工作機械の主軸13に、その軸方向両端部、及び略中央部に、回転バランスを修正するための第一バランサ18,第三バランサ20、及び第二バランサ19を固着すると共に、各バランサ18,19,20を樹脂とする。
【解決手段】 工具を回転駆動させるために備えられた工作機械の主軸13に、その軸方向両端部、及び略中央部に、回転バランスを修正するための第一バランサ18,第三バランサ20、及び第二バランサ19を固着すると共に、各バランサ18,19,20を樹脂とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具やワークを回転駆動させるために備えられた工作機械の主軸に関するもので、特に、回転バランスの修正を容易に行うことのできる工作機械の主軸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、工作機械では、工具やワークを回転駆動するための主軸が備えられており、この主軸は、製造上の寸法誤差などにより、回転方向のバランスがアンバランスとなっているので、バランス修正を行った後に、工作機械に組み付けることが一般に行われている。このバランスを修正する方法としては、直接主軸を削ることで、バランス修正するものや、所定の重りを取り付けることでバランス修正するものが知られている。
【0003】
或いは、図2に示すような、主軸100の端部に、周方向に所定間隔で、且つ、主軸100の軸方向に向けて複数の雌ネジ孔101を形成し、その雌ネジ孔101に雄ネジからなる修正用ネジ102を螺合した構成として、所定の修正用ネジ102を削って重量を変更させることで、バランスを修正するものも知られている。
【0004】
上記の背景技術は、一般的な事項であり、本願出願人は、出願時において、この背景技術を特定する記載がなされた文献を特に知見していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、直接主軸を削ってバランス修正するものの場合、主軸が削られるので、主軸の剛性が低下したり、表面の機能部が削られることで不具合が発生したりする恐れがあった。そのため、主軸を削る量には限界があり、アンバランスの度合いが大きいと、バランスを修正しきれない問題があった。
【0006】
また、修正用ネジを備えるものや、重りを取り付けるものの場合、主軸の軸方向端部に修正用ネジを螺合可能なスペースや、重りを取り付けるためのスペースを必要とするため、主軸の直径の寸法が小さくなる等すると、そのスペースを確保することが困難となり、修正用ネジ等を備えられず、バランス修正が困難となる問題があった。
【0007】
また、バランス修正の際に、一旦、修正用ネジを雌ネジ孔から外して削った上で、再度、雌ネジ孔に螺合させているので、主軸の雌ネジ孔に修正用ネジを螺合させることで主軸が微妙に変形して、最適な状態にバランス修正できない恐れがあった。
【0008】
更に、修正用ネジを備えるものの場合、主軸の軸方向両端部にしか備えるためのスペースが確保できないことが多いため、主軸の軸方向中央部がアンバランスだと、そのバランスを完全に修正することができなかった。
【0009】
ところで、主軸の軸方向端部に修正用ネジを備えるスペースが確保できない場合、主軸の外周面に雌ネジ孔を形成して修正用ネジを備えるようにすることが考えられるが、この場合、修正用ネジの軸方向が主軸の軸方向に対して直角方向となるため、振動などにより修正用ネジが緩むと、主軸の回転による遠心力により修正用ネジが外れる恐れがあり、それにより、主軸がアンバランスとなって不具合が発生する恐れがあった。
【0010】
そこで、本発明は、上記の実状を鑑みてなされたものであり、工作機械の主軸において、主軸の大きさに関わらず、主軸の回転方向のアンバランスが大きくても、主軸を削ることなくバランス修正することのできる工作機械の主軸の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明に係る工作機械の主軸は、「工具又はワークを回転駆動させるために備えられた工作機械の主軸において、回転バランスを修正するためのバランサが固着されている」構成とするものである。
【0012】
ここで、「バランサ」としては、特に限定するものではないが、主軸とは別部材のものであれば良く、金属、樹脂、或いは、金属と樹脂の混合物、等からなるものを例示することができる。なお、バランサは、周方向に連続したもの(環状)、周方向に所定間隔で分割されたもの、周方向の所定位置のみとしたもの、等とすることができる。また、「固着」とは、接着剤による固定、粘着剤による固定、金属蝋による固定、焼き嵌めのような収縮による固定、バランサの自硬による固定、主軸をバランサの成形型内にセットしバランサの成形による固定、等を言う。
【0013】
また、「主軸」とは、単一の部品のみで構成されるものに限らず、主軸本体に固定されたスリーブ等、主軸本体と一体回転するように複数の部品で構成されたものでも良い。
【0014】
本発明によると、工作機械の主軸に、バランサが固着されているので、主軸のバランス修正をする際に、そのバランサを削ることでバランスを修正することができるので、従来のように主軸を削る必要がなく、バランス修正により主軸の剛性の低下や不具合等が発生するのを防止することができる。
【0015】
また、バランサを主軸に固着するようにしているので、バランサを主軸のどこにでも備えさせることが可能となり、スペースの関係で従来の修正用ネジ等が備えられないような主軸でも、バランサを備えることができ、バランス修正することができるようになると共に、バランサの固着位置を自由に設定できるので、主軸の設計自由度を向上させることができる。
【0016】
更に、修正用ネジを用いることなくバランス修正することができるので、従来のように、修正用ネジの螺合による主軸の変形を回避することができるので、より最適な状態にバランス修正することができる。
【0017】
本発明に係る工作機械の主軸は、上記の構成に加えて、「前記バランサは、前記主軸の軸方向両端部、及び略中央部に固着されている」構成とすることもできる。
【0018】
本発明によると、バランサが、主軸の軸方向両端部と、略中央部に固着されているので、従来のように、両端部だけでなく、中央部もバランス修正することが可能となり、これにより、主軸全体のバランスが改善され、よりバランスの取れた最適な主軸とすることができる。
【0019】
本発明に係る工作機械の主軸は、上記の構成に加えて、「前記バランサは、樹脂からなる」構成とするものである。ここで、「樹脂」としては、特に限定するものではないが、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、等とすることができ、特に、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、等を例示することができる。なお、樹脂に、鉄粉、鉛粉等の金属粉を添加して用いても良い。
【0020】
本発明によると、バランサを樹脂としているので、削り易く、容易にバランス修正の作業を行うことができると共に、削り過ぎた場合でも、容易に盛り付けて補修することができるので、より作業性を向上させることができる。
【0021】
また、バランサを樹脂としているので、バランサの形成にかかる手間を簡単なものとすることができると共に、鉄粉や鉛粉等を添加することで、容易にバランサの重量を変更することができるので、アンバランスの大きさに合わせた重量のバランサを容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
上述の通り、本発明によると、工作機械の主軸において、主軸の大きさに関わらず、主軸の回転方向のアンバランスが大きくても、主軸を削ることなくバランス修正することのできる工作機械の主軸を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明に係る最良の実施形態である工作機械の主軸について、図1を基に詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態である工作機械の主軸をビルトインモータに適用した例を示す断面側面図である。
【0024】
図1に示すように、このビルトインモータ10は、図示しない工作機械の主軸台や砥石台等に一体的に内蔵されるタイプのモータであり、先端に工具を固定するための工具ホルダー11を装着するホルダー装着部12を有した主軸13と、主軸13を回転可能に支承する軸受14と、主軸13を回転駆動させる回転駆動手段15と、主軸13と共に軸受14及び回転駆動手段15を内包するハウジング16とを備えている。
【0025】
また、ビルトインモータ10には、図示は省略するが、主軸13の内部に備えられ、主軸13のホルダー装着部12に装着された工具ホルダー11をクランプしたりアンクランプしたりするクランプ機構と、主軸13のホルダー装着部12とは反対側に配置され、クランプ機構を駆動させるためのクランプ機構駆動手段17とを更に備えている。
【0026】
このビルトインモータ10は、その軸方向略中央から先端側の位置において、主軸13が複数の軸受14により、軸受保持部材21を介してハウジング16に回転可能に支承されていると共に、略中央から後端側の位置において、主軸13の外周面とハウジング16の内周面との間に形成された空間に回転駆動手段15が配置され、その後端部においても、主軸13が軸受14により回転可能に支承されている。
【0027】
主軸13は、図示するように、先端から後端に向かうに従って、その直径が段階的に縮小する段付軸とされており、ホルダー装着部12が形成された先端部(図中左側端部)の工具ホルダー11と干渉しない位置に配置された第一バランサ18と、主軸13の略中央部に配置された第二バランサ19と、主軸13の後端部近傍に配置された第三バランサ20とを備えている。
【0028】
これら第一バランサ18、第二バランサ19、及び第三バランサ20は、本例では、鉄粉や鉛粉等の金属粉が添加されたエポキシ樹脂とされており、予め環状に成形したものを接着剤により主軸13に固着されている。なお、これらバランサ18,19,20を主軸13に直接盛り付けて固着したり、主軸13をバランサの成形型内にセットしバランサの成形により固着させたりしても良い。
【0029】
回転駆動手段15は、スリーブ22を介して主軸13に固定されるモータロータ23と、モータロータ23外周側に配置されハウジング16の内面に固定されるステータ24とから構成されている。このモータロータ23は、金属板を軸方向に複数積層した形態のかご型回転子とされていると共に、ステータ24は、固定鉄心に被覆電線を巻回したコイルとされており、このステータ24のコイルに通電することで、モータロータ23と共に主軸13が回転駆動するようになっている。
【0030】
ハウジング16は、主軸13、軸受、及び回転駆動手段15等を収容可能な筒状の内面空間を有し、その軸方向両端の開口を閉鎖する蓋部材25を備えており、先端側において、その蓋部材25を貫通するように主軸13が外部へ延び出している。また、ハウジング16は、主軸13の第二バランサ19と対向する位置の外面に、所定の大きさで内面空間と連通する開口部26が設けられている。
【0031】
なお、図中符号27は、軸受14を位置決めするためのスリーブである。また、本例では、軸受14を転がり軸受としているが、流体軸受としても良い。また、図示は省略するが、ビルトインモータ10内には、軸受14に潤滑液を供給するための供給路が設けられている。
【0032】
次に、本実施形態のビルトインモータ10における主軸13のバランス修正について詳細に説明する。このビルトインモータ10では、主軸13を組み付ける前に、主軸13単体で回転方向のバランス修正を行うものであり、そのバランス修正は、公知のバランス修正装置を用いることで行うことができる。
【0033】
本例の主軸13には、予め第一バランサ18、第二バランサ19、及び第三バランサ20が備えられており、主軸13をバランス修正装置にセットした上で回転させることで、アンバランスとなっている箇所が判別され、そのアンバランスな箇所に近いバランサの所定位置を削ることでバランス修正される。そのバランス修正の一例として、図2に示すような状態でバランサの一部を削除するようにしてバランス修正することができる。なお、図2は、バランサとして第一バランサ18を例に示してある。
【0034】
なお、バランス修正する際に、バランサを削り過ぎた場合、その箇所にバランサと同じ材質の樹脂を盛り付け、樹脂が硬化した後に、再度バランサを削ることでバランス修正をやり直して、主軸13のバランスを取る。
【0035】
また、主軸13のアンバランスが大きすぎて、当初の各バランサ18,19,20では、バランス修正しきれない場合、それらバランサ18,19,20を更に重い金属粉の入った樹脂によるバランサと置き換えたり、盛り付けたりすることで、アンバランスに対応させる。
【0036】
そして、バランス修正された主軸13をビルトインモータ10に組み付けこととなるが、このビルトインモータ10では、主軸13にモータロータ23を焼き嵌めしているので、それにより、主軸13が変形しアンバランスとなる恐れがある。特に、モータロータ23を固定する主軸13の中央部付近でアンバランスが発生し易くなる。そこで、本例では、主軸13をビルトインモータ10に組み付けた後で、主軸13がアンバランスとなった場合、ハウジング16の開口部26を介して、第二バランサ19を削ることが可能となっているので、その第二バランサ19を削ってバランス修正する。この場合、削り屑を回収しながら第二バランサ19を削ると、削り屑がハウジング16内部に残ることなく除去される。
【0037】
このように、本実施形態によると、主軸13のバランス修正をする際に、各バランサ18,19,20を削ることでバランスを修正することができるので、従来のように主軸を削る必要がなく、バランス修正により主軸13の剛性の低下や不具合が発生するのを防止することができる。
【0038】
また、各バランサ19,18,20が、主軸13の軸方向両端部と、略中央部に固着されているので、従来のように、両端部だけでなく、中央部もバランス修正することが可能となり、これにより、主軸13全体のバランスが改善され、よりバランスの取れた最適な主軸13とすることができる。
【0039】
更に、各バランサ18,19,20を樹脂としているので、削り易く、容易にバランス修正の作業を行うことができると共に、削り過ぎた場合でも、容易に盛り付けて補修することができるので、より作業性を向上させることができる。
【0040】
また、各バランサ18,19,20を樹脂としているので、バランサの形成にかかる手間を簡単なものとすることができると共に、鉄粉や鉛粉等を添加することで、容易にバランサの重量を変更することができるので、アンバランスの大きさに合わせた重量のバランサを容易に形成することができる。
【0041】
以上、本発明を実施するための最良の実施の形態を挙げて説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0042】
すなわち、本実施形態では、主軸13のバランサ18,19,20として樹脂で形成されたものを示したが、これに限定するものではなく、金属製のバランサとすることもできる。これにより、樹脂製のものと比較して重量を重くすることができるので、アンバランスの大きなものに用いるのに好適である。なお、主軸に金属製のバランサを固着する方法としては、接着剤を用いても良いし、ハンダ付けや銀蝋付けなどの蝋付けを用いても良い。
【0043】
また、本実施形態では、工作機械の主軸として、工具を固定するビルトインモータ10の主軸13に適用したものを示したが、これに限定するものではなく、例えば、外付けモータの主軸、工具を固定しベルトなど伝達手段を介して駆動される主軸(工具軸)、ワークを回転させるための主軸、等に適用しても良く、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態である工作機械の主軸を、ビルトインモータに適用した例を示す断面側面図である。
【図2】図1に示す工作機械の主軸において、バランス修正した状態のバランサを拡大して示す斜視図である。
【図3】従来の主軸におけるバランス修正の方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
10 ビルトインモータ
13 主軸
18 第一バランサ
19 第二バランサ
20 第三バランサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具やワークを回転駆動させるために備えられた工作機械の主軸に関するもので、特に、回転バランスの修正を容易に行うことのできる工作機械の主軸に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、工作機械では、工具やワークを回転駆動するための主軸が備えられており、この主軸は、製造上の寸法誤差などにより、回転方向のバランスがアンバランスとなっているので、バランス修正を行った後に、工作機械に組み付けることが一般に行われている。このバランスを修正する方法としては、直接主軸を削ることで、バランス修正するものや、所定の重りを取り付けることでバランス修正するものが知られている。
【0003】
或いは、図2に示すような、主軸100の端部に、周方向に所定間隔で、且つ、主軸100の軸方向に向けて複数の雌ネジ孔101を形成し、その雌ネジ孔101に雄ネジからなる修正用ネジ102を螺合した構成として、所定の修正用ネジ102を削って重量を変更させることで、バランスを修正するものも知られている。
【0004】
上記の背景技術は、一般的な事項であり、本願出願人は、出願時において、この背景技術を特定する記載がなされた文献を特に知見していない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、直接主軸を削ってバランス修正するものの場合、主軸が削られるので、主軸の剛性が低下したり、表面の機能部が削られることで不具合が発生したりする恐れがあった。そのため、主軸を削る量には限界があり、アンバランスの度合いが大きいと、バランスを修正しきれない問題があった。
【0006】
また、修正用ネジを備えるものや、重りを取り付けるものの場合、主軸の軸方向端部に修正用ネジを螺合可能なスペースや、重りを取り付けるためのスペースを必要とするため、主軸の直径の寸法が小さくなる等すると、そのスペースを確保することが困難となり、修正用ネジ等を備えられず、バランス修正が困難となる問題があった。
【0007】
また、バランス修正の際に、一旦、修正用ネジを雌ネジ孔から外して削った上で、再度、雌ネジ孔に螺合させているので、主軸の雌ネジ孔に修正用ネジを螺合させることで主軸が微妙に変形して、最適な状態にバランス修正できない恐れがあった。
【0008】
更に、修正用ネジを備えるものの場合、主軸の軸方向両端部にしか備えるためのスペースが確保できないことが多いため、主軸の軸方向中央部がアンバランスだと、そのバランスを完全に修正することができなかった。
【0009】
ところで、主軸の軸方向端部に修正用ネジを備えるスペースが確保できない場合、主軸の外周面に雌ネジ孔を形成して修正用ネジを備えるようにすることが考えられるが、この場合、修正用ネジの軸方向が主軸の軸方向に対して直角方向となるため、振動などにより修正用ネジが緩むと、主軸の回転による遠心力により修正用ネジが外れる恐れがあり、それにより、主軸がアンバランスとなって不具合が発生する恐れがあった。
【0010】
そこで、本発明は、上記の実状を鑑みてなされたものであり、工作機械の主軸において、主軸の大きさに関わらず、主軸の回転方向のアンバランスが大きくても、主軸を削ることなくバランス修正することのできる工作機械の主軸の提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明に係る工作機械の主軸は、「工具又はワークを回転駆動させるために備えられた工作機械の主軸において、回転バランスを修正するためのバランサが固着されている」構成とするものである。
【0012】
ここで、「バランサ」としては、特に限定するものではないが、主軸とは別部材のものであれば良く、金属、樹脂、或いは、金属と樹脂の混合物、等からなるものを例示することができる。なお、バランサは、周方向に連続したもの(環状)、周方向に所定間隔で分割されたもの、周方向の所定位置のみとしたもの、等とすることができる。また、「固着」とは、接着剤による固定、粘着剤による固定、金属蝋による固定、焼き嵌めのような収縮による固定、バランサの自硬による固定、主軸をバランサの成形型内にセットしバランサの成形による固定、等を言う。
【0013】
また、「主軸」とは、単一の部品のみで構成されるものに限らず、主軸本体に固定されたスリーブ等、主軸本体と一体回転するように複数の部品で構成されたものでも良い。
【0014】
本発明によると、工作機械の主軸に、バランサが固着されているので、主軸のバランス修正をする際に、そのバランサを削ることでバランスを修正することができるので、従来のように主軸を削る必要がなく、バランス修正により主軸の剛性の低下や不具合等が発生するのを防止することができる。
【0015】
また、バランサを主軸に固着するようにしているので、バランサを主軸のどこにでも備えさせることが可能となり、スペースの関係で従来の修正用ネジ等が備えられないような主軸でも、バランサを備えることができ、バランス修正することができるようになると共に、バランサの固着位置を自由に設定できるので、主軸の設計自由度を向上させることができる。
【0016】
更に、修正用ネジを用いることなくバランス修正することができるので、従来のように、修正用ネジの螺合による主軸の変形を回避することができるので、より最適な状態にバランス修正することができる。
【0017】
本発明に係る工作機械の主軸は、上記の構成に加えて、「前記バランサは、前記主軸の軸方向両端部、及び略中央部に固着されている」構成とすることもできる。
【0018】
本発明によると、バランサが、主軸の軸方向両端部と、略中央部に固着されているので、従来のように、両端部だけでなく、中央部もバランス修正することが可能となり、これにより、主軸全体のバランスが改善され、よりバランスの取れた最適な主軸とすることができる。
【0019】
本発明に係る工作機械の主軸は、上記の構成に加えて、「前記バランサは、樹脂からなる」構成とするものである。ここで、「樹脂」としては、特に限定するものではないが、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、等とすることができ、特に、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、等を例示することができる。なお、樹脂に、鉄粉、鉛粉等の金属粉を添加して用いても良い。
【0020】
本発明によると、バランサを樹脂としているので、削り易く、容易にバランス修正の作業を行うことができると共に、削り過ぎた場合でも、容易に盛り付けて補修することができるので、より作業性を向上させることができる。
【0021】
また、バランサを樹脂としているので、バランサの形成にかかる手間を簡単なものとすることができると共に、鉄粉や鉛粉等を添加することで、容易にバランサの重量を変更することができるので、アンバランスの大きさに合わせた重量のバランサを容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0022】
上述の通り、本発明によると、工作機械の主軸において、主軸の大きさに関わらず、主軸の回転方向のアンバランスが大きくても、主軸を削ることなくバランス修正することのできる工作機械の主軸を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明に係る最良の実施形態である工作機械の主軸について、図1を基に詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態である工作機械の主軸をビルトインモータに適用した例を示す断面側面図である。
【0024】
図1に示すように、このビルトインモータ10は、図示しない工作機械の主軸台や砥石台等に一体的に内蔵されるタイプのモータであり、先端に工具を固定するための工具ホルダー11を装着するホルダー装着部12を有した主軸13と、主軸13を回転可能に支承する軸受14と、主軸13を回転駆動させる回転駆動手段15と、主軸13と共に軸受14及び回転駆動手段15を内包するハウジング16とを備えている。
【0025】
また、ビルトインモータ10には、図示は省略するが、主軸13の内部に備えられ、主軸13のホルダー装着部12に装着された工具ホルダー11をクランプしたりアンクランプしたりするクランプ機構と、主軸13のホルダー装着部12とは反対側に配置され、クランプ機構を駆動させるためのクランプ機構駆動手段17とを更に備えている。
【0026】
このビルトインモータ10は、その軸方向略中央から先端側の位置において、主軸13が複数の軸受14により、軸受保持部材21を介してハウジング16に回転可能に支承されていると共に、略中央から後端側の位置において、主軸13の外周面とハウジング16の内周面との間に形成された空間に回転駆動手段15が配置され、その後端部においても、主軸13が軸受14により回転可能に支承されている。
【0027】
主軸13は、図示するように、先端から後端に向かうに従って、その直径が段階的に縮小する段付軸とされており、ホルダー装着部12が形成された先端部(図中左側端部)の工具ホルダー11と干渉しない位置に配置された第一バランサ18と、主軸13の略中央部に配置された第二バランサ19と、主軸13の後端部近傍に配置された第三バランサ20とを備えている。
【0028】
これら第一バランサ18、第二バランサ19、及び第三バランサ20は、本例では、鉄粉や鉛粉等の金属粉が添加されたエポキシ樹脂とされており、予め環状に成形したものを接着剤により主軸13に固着されている。なお、これらバランサ18,19,20を主軸13に直接盛り付けて固着したり、主軸13をバランサの成形型内にセットしバランサの成形により固着させたりしても良い。
【0029】
回転駆動手段15は、スリーブ22を介して主軸13に固定されるモータロータ23と、モータロータ23外周側に配置されハウジング16の内面に固定されるステータ24とから構成されている。このモータロータ23は、金属板を軸方向に複数積層した形態のかご型回転子とされていると共に、ステータ24は、固定鉄心に被覆電線を巻回したコイルとされており、このステータ24のコイルに通電することで、モータロータ23と共に主軸13が回転駆動するようになっている。
【0030】
ハウジング16は、主軸13、軸受、及び回転駆動手段15等を収容可能な筒状の内面空間を有し、その軸方向両端の開口を閉鎖する蓋部材25を備えており、先端側において、その蓋部材25を貫通するように主軸13が外部へ延び出している。また、ハウジング16は、主軸13の第二バランサ19と対向する位置の外面に、所定の大きさで内面空間と連通する開口部26が設けられている。
【0031】
なお、図中符号27は、軸受14を位置決めするためのスリーブである。また、本例では、軸受14を転がり軸受としているが、流体軸受としても良い。また、図示は省略するが、ビルトインモータ10内には、軸受14に潤滑液を供給するための供給路が設けられている。
【0032】
次に、本実施形態のビルトインモータ10における主軸13のバランス修正について詳細に説明する。このビルトインモータ10では、主軸13を組み付ける前に、主軸13単体で回転方向のバランス修正を行うものであり、そのバランス修正は、公知のバランス修正装置を用いることで行うことができる。
【0033】
本例の主軸13には、予め第一バランサ18、第二バランサ19、及び第三バランサ20が備えられており、主軸13をバランス修正装置にセットした上で回転させることで、アンバランスとなっている箇所が判別され、そのアンバランスな箇所に近いバランサの所定位置を削ることでバランス修正される。そのバランス修正の一例として、図2に示すような状態でバランサの一部を削除するようにしてバランス修正することができる。なお、図2は、バランサとして第一バランサ18を例に示してある。
【0034】
なお、バランス修正する際に、バランサを削り過ぎた場合、その箇所にバランサと同じ材質の樹脂を盛り付け、樹脂が硬化した後に、再度バランサを削ることでバランス修正をやり直して、主軸13のバランスを取る。
【0035】
また、主軸13のアンバランスが大きすぎて、当初の各バランサ18,19,20では、バランス修正しきれない場合、それらバランサ18,19,20を更に重い金属粉の入った樹脂によるバランサと置き換えたり、盛り付けたりすることで、アンバランスに対応させる。
【0036】
そして、バランス修正された主軸13をビルトインモータ10に組み付けこととなるが、このビルトインモータ10では、主軸13にモータロータ23を焼き嵌めしているので、それにより、主軸13が変形しアンバランスとなる恐れがある。特に、モータロータ23を固定する主軸13の中央部付近でアンバランスが発生し易くなる。そこで、本例では、主軸13をビルトインモータ10に組み付けた後で、主軸13がアンバランスとなった場合、ハウジング16の開口部26を介して、第二バランサ19を削ることが可能となっているので、その第二バランサ19を削ってバランス修正する。この場合、削り屑を回収しながら第二バランサ19を削ると、削り屑がハウジング16内部に残ることなく除去される。
【0037】
このように、本実施形態によると、主軸13のバランス修正をする際に、各バランサ18,19,20を削ることでバランスを修正することができるので、従来のように主軸を削る必要がなく、バランス修正により主軸13の剛性の低下や不具合が発生するのを防止することができる。
【0038】
また、各バランサ19,18,20が、主軸13の軸方向両端部と、略中央部に固着されているので、従来のように、両端部だけでなく、中央部もバランス修正することが可能となり、これにより、主軸13全体のバランスが改善され、よりバランスの取れた最適な主軸13とすることができる。
【0039】
更に、各バランサ18,19,20を樹脂としているので、削り易く、容易にバランス修正の作業を行うことができると共に、削り過ぎた場合でも、容易に盛り付けて補修することができるので、より作業性を向上させることができる。
【0040】
また、各バランサ18,19,20を樹脂としているので、バランサの形成にかかる手間を簡単なものとすることができると共に、鉄粉や鉛粉等を添加することで、容易にバランサの重量を変更することができるので、アンバランスの大きさに合わせた重量のバランサを容易に形成することができる。
【0041】
以上、本発明を実施するための最良の実施の形態を挙げて説明したが、本発明はこの実施の形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0042】
すなわち、本実施形態では、主軸13のバランサ18,19,20として樹脂で形成されたものを示したが、これに限定するものではなく、金属製のバランサとすることもできる。これにより、樹脂製のものと比較して重量を重くすることができるので、アンバランスの大きなものに用いるのに好適である。なお、主軸に金属製のバランサを固着する方法としては、接着剤を用いても良いし、ハンダ付けや銀蝋付けなどの蝋付けを用いても良い。
【0043】
また、本実施形態では、工作機械の主軸として、工具を固定するビルトインモータ10の主軸13に適用したものを示したが、これに限定するものではなく、例えば、外付けモータの主軸、工具を固定しベルトなど伝達手段を介して駆動される主軸(工具軸)、ワークを回転させるための主軸、等に適用しても良く、上記と同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の一実施形態である工作機械の主軸を、ビルトインモータに適用した例を示す断面側面図である。
【図2】図1に示す工作機械の主軸において、バランス修正した状態のバランサを拡大して示す斜視図である。
【図3】従来の主軸におけるバランス修正の方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0045】
10 ビルトインモータ
13 主軸
18 第一バランサ
19 第二バランサ
20 第三バランサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具又はワークを回転駆動させるために備えられた工作機械の主軸において、
回転バランスを修正するためのバランサが固着されていることを特徴とする工作機械の主軸。
【請求項2】
前記バランサは、
前記主軸の軸方向両端部、及び略中央部に固着されていることを特徴とする請求項1に記載の工作機械の主軸。
【請求項3】
前記バランサは、
樹脂からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の工作機械の主軸。
【請求項1】
工具又はワークを回転駆動させるために備えられた工作機械の主軸において、
回転バランスを修正するためのバランサが固着されていることを特徴とする工作機械の主軸。
【請求項2】
前記バランサは、
前記主軸の軸方向両端部、及び略中央部に固着されていることを特徴とする請求項1に記載の工作機械の主軸。
【請求項3】
前記バランサは、
樹脂からなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の工作機械の主軸。
【図1】
【図2】
【図3】
【図2】
【図3】
【公開番号】特開2006−82165(P2006−82165A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−267860(P2004−267860)
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月15日(2004.9.15)
【出願人】(000003470)豊田工機株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
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