説明

工作機械の自動旋回型タレット装置

【課題】タレットをリフト方式にせず、一つの駆動装置(アクチェータ)によってクラッチ装置によるタレットの係止固定が行え、且つクサビ効果を生じさせることで切削時の負荷に直接対抗できる大きな駆動力がなくても済む構成として、エアでもモータによる小さい駆動力でもタレットを係止固定でき油圧レス化にできる工作機械の自動旋回型タレット装置を提供すること。
【解決手段】駆動装置5により前記タレット3の旋回軸方向と直交する方向に駆動体6を進退させることで、旋回軸方向に進退する軸方向スライド体7を設け、タレット3をノンリフト式にしてこの軸方向スライド体7の進退によって係脱作動するクラッチ装置4を設け、前記駆動体6の移動により押し広げ作用が生じてタレット台1に対して前記軸方向スライド体7を押動スライドさせるテーパ作用部8を前記駆動体6に設けた工作機械の自動旋回型タレット装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば立旋盤等の工作機械に用いられる自動旋回型タレット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
旋回することで切替え使用する複数の工具をタレットに設け、このタレットを工具切替え時にタレット台に対して自動旋回する自動旋回型タレット装置は、一般に次のような構成である(本実施例の図面を参照しつつ本実施例と同等部に同一符号を付して説明する。)。
【0003】
複数の工具(複数のホルダー20に夫々交換自在に設けた複数の刃具21)を設けたタレット3を、タレット台1に突設固定した旋回軸部2に旋回自在に被嵌すると共に、この旋回軸部2に沿って往復スライド自在に設け、このタレット3の旋回軸方向のスライドによってタレット割出し位置を係脱自在に係止固定するクラッチ装置4を設けて、タレット3を基端部から先端部へスライドすることでクラッチ装置4の係止固定を解除してタレット3を旋回自在とし、旋回後割出し位置で再びタレット3を戻りスライドさせてクラッチ装置4で旋回不能に係止固定(クラッチ)するように構成している。
【0004】
具体的には、このタレット3に割出し旋回駆動装置により駆動される伝達歯車に噛合する旋回歯車部を設け、クラッチ装置4としてタレット台1にクラッチ係止部を設けると共に、タレット3の基端部にクラッチ係止部に回り止め凹凸係合するクラッチ係合部を設け、タレット3を基端部から先端部へスライドした際クラッチ係止部とクラッチ係合部との係合が解除して旋回可能となり、割出し旋回駆動装置によりタレット3が旋回歯車部と伝達歯車との噛合によって割出しするように構成している。
【0005】
また、スライド駆動用の油供給装置と、この油供給装置からソレノイドバルブを介して油を流入することでタレット3を軸方向にスライドさせてクラッチ装置4の係止固定を解除するクラッチ解除用圧力室と、このタレット3のクラッチ解除のためのスライドによって狭められるスライド用間隙であって、逆にソレノイドバルブで切り替えてこれに油を流入することでタレット3を戻りスライドさせてクラッチ装置4により再び係止固定するクラッチ用圧力室とから成る油圧スライド駆動機構を設けている。
【0006】
このような工作機械においては、複数の工具を旋回切り替え自在に装備したタレットの自重のみならず、加工時特に旋削時に大きな負荷がかかるため、大きなクランプ力が必要である。そのため、前述のように従来の自動旋回型タレット装置におけるタレットのスライド駆動においても油圧スライド機構を用い、タレット旋回終了後もこの大きなクランプ力が生じる油圧によって係止固定したクラッチ状態を押圧保持させる必要があった。
【0007】
また、一方このように大きなクランプ力(タレットの戻りスライド駆動力)が生じる油圧を用いて、タレットを戻りスライドさせてクラッチ装置を係止固定するが、このクラッチ装置をこの大きなクランプ力が生じる油圧によってタレットをスライドさせてこのクラッチ装置を解除させる構成のため、旋回のために(クラッチ解除のために)タレットをスライドさせる時には必要以上の大きなスライド駆動力が生じないように、油を流入させるクラッチ解除用圧力室をできるだけ小さく設計したり、またかなり小さく設計しても油圧によるスライド駆動力がまだまだ大きいために、このクラッチ解除のためのスライドによりスライド用間隙が狭められて消失し突き当り状態となった時、この油圧による押圧のためこの突き当り面でクランプ旋回時に大きな摺動摩擦抵抗が生じてしまう。
【0008】
即ち、油圧によってタレットを戻りスライドさせてクラッチ装置によるクラッチ状態を押圧保持するため、加工時の大きな負荷にも抗し得る反面、クラッチ解除のためにタレットをスライドさせた後このタレットを旋回させる際、油圧によるスライド押圧が大きいため旋回時に大きな摺動摩擦抵抗が生じてしまい、これにより摩耗も激しく耐久性にも劣り、旋回時にがじったりするおそれもあった。
【0009】
そのため従来、このような問題を解決すべく、例えば実開昭57−149903号のように、クランプ解除用圧力室への油の流入が所定圧力以上となると、あるいは所定ストローク以上スライドすると、バイパス路が連通して隔絶していたクランプ解除用圧力室から反対のスライド用間隙(クラッチ用圧力室)へこのバイパス路を介して油が流れ込みスライド駆動力を減じさせる油圧低減機構等を設けなければならなかった。
【0010】
それ故、構造や制御が複雑となり、コスト高となったり量産性に劣る等の問題や、またクラッチ解除(タレット旋回)のためのアンクランプ速度が遅い等の問題も生じていた。
【0011】
そこで、油圧レスとして省資源化を図り、クラッチ解除時の割出し時に不必要に大きな摩擦抵抗が生じないようにすることなどを目的として、たとえエア供給装置による空圧(エア式)のスライド駆動機構によってもこのタレットを旋回不能にクラッチした状態を確固に係止固定保持できるようにし、大きな切削力(旋削力)に対して直接対抗できる駆動力は生じ得ないエア式のスライド駆動機構としてもスライドしたクラッチ位置をクサビ機構によってタレットの自重にもまた大きな切削力に対しても十分耐え、これによってタレット旋回や切削機能にも支障を与えずに油圧レス化が実現でき、省エネ,省資源化を図れる画期的な工作機械の自動旋回型タレット装置を開発した(特開2009−083070号)。
【0012】
しかしながら、このタレット装置においても、タレットを旋回軸部に沿って往復スライドさせる構成のため、これをクラッチ装置によりクラッチした係止固定位置とクラッチを係脱して旋回可能とする位置とにタレットを切り替えスライドさせる駆動装置と、クラッチ状態でクサビ部をクサビ係合部に係合させるためのクサビ部進退用の駆動装置とが必要な構成で、構造がまだ複雑であり、またこのようにタレットがリフト方式であることから、旋回時の摩擦抵抗の増大やゴミや切粉の噛み込みのおそれも生じ易く、この対策・管理も必要となるなど構造が複雑となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実開昭57−149903号公報
【特許文献2】特開2009−083070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、このような問題をも解決するもので、更に発想の転換を図ってタレットをリフト方式にせず、一つの駆動装置(アクチェータ)によってクラッチ装置によるタレットの係止固定と解除との切り替えが行えると共に、タレットや工具の自重や切削時の負荷などを直接受けずクサビ効果を生じさせることで負荷に直接対抗できる大きな駆動力がなくても済む構成となるため、油圧レス化、即ちエアや更にエネルギー消費や設備が容易となるモータによる小さい駆動力でもタレットを確固に係止固定でき、しかもタレットをリフト式にしないことから一層簡易な構成で実現できる画期的な工作機械の自動旋回型タレット装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0016】
タレット台1に旋回自在にタレット3を設け、このタレット3の割出し位置を係脱自在に係止固定するクラッチ装置4を設けた工作機械の自動旋回型タレット装置であって、駆動装置5により前記タレット3の旋回軸方向と交差する方向に進退させる駆動体6を設け、この駆動体6の軸交差方向への進退によって旋回軸方向に進退する軸方向スライド体7を設け、この軸方向スライド体7の進退によって係脱作動する前記クラッチ装置4を設け、前記駆動体6の移動により押し広げ作用が生じてタレット台1に対して前記軸方向スライド体7を押動スライドさせるテーパ作用部8を前記駆動体6に設けたことを特徴とする工作機械の自動旋回型タレット装置に係るものである。
【0017】
また、前記タレット台1に設けた支承部9と前記軸方向スライド体7に設けた対向支承部10との間で進退するように前記駆動体6の前記テーパ作用部8を構成して、このテーパ作用部8の旋回軸方向と交差する方向への移動により、固定側の前記支承部9に対して前記対向支承部10が離反方向に押圧されこの対向支承部10を設けた前記軸方向スライド体7が旋回軸方向に押動スライドするように構成したことを特徴とする請求項1記載の工作機械の自動旋回型タレット装置に係るものである。
【0018】
また、前記タレット台1の前記支承部9と前記軸方向スライド体7の前記対向支承部10との間で進退する前記テーパ作用部8は、少なくともこのテーパ作用部8の形状を進退方向の一方向に沿って幅が除々に広がるテーパ外面を有するクサビ形状に形成して、この支承部9とテーパ作用部8との間での幅が除々に広がることになる方向に移動することで前記軸方向スライド体7を旋回軸方向に押動スライドさせ、逆に幅が除々に狭まることになる方向に戻り移動することで前記軸方向スライド体7が戻りスライドするように構成したことを特徴とする請求項2記載の工作機械の自動旋回型タレット装置に係るものである。
【0019】
また、前記テーパ作用部8は、前記支承部9と前記対向支承部10に設けた支承係合部11に夫々スライド自在に係合し一体に往復スライドする一対の直動案内部12で構成し、この直動案内部12を非平行に並設して少なくとも一方を並設間隔が他方に対して除々に広がるように傾斜状態に構成して少なくとも前記一方の直動案内部12で形成した前記テーパ外面を有するクサビ形状に形成し、前記駆動体6を駆動することで前記各支承係合部11に前記非平行な一対の直動案内部12で構成した前記テーパ作用部8がスライドすることで前記押し広げ作用が生じて前記タレット台1に対して前記軸方向スライド体7が旋回軸方向に押動スライドするように構成したことを特徴とする請求項3記載の工作機械の自動旋回型タレット装置に係るものである。
【0020】
また、前記タレット台1に旋回軸部2を設け、この旋回軸部2を軸にして前記タレット台1に対して前記タレット3を旋回自在に構成し、この旋回軸部2に前記軸方向スライド体7をスライド自在に設け、この軸方向スライド体7とタレット3との間に前記軸方向スライド体7のスライドにより係脱作動してタレット3を旋回可能な状態と割出し位置を係止固定するクラッチ状態とに切り替える前記クラッチ装置4を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の工作機械の自動旋回型タレット装置に係るものである。
【0021】
また、前記クラッチ装置4は、前記タレット台1若しくは前記タレット3に外環部13を設け、前記タレット3若しくは前記タレット台1に前記外環部13が囲む内環部14を設けて、前記タレット台1に対して前記タレット3を旋回して割出しする際、前記外環部13に対して前記内環部14が相対回動するように構成し、前記軸方向スライド体7にこの外環部13及び内環部14に係合して前記外環部13に対する前記内環部14の相対回動を係止阻止する係止部15を設けて、前記駆動装置5の駆動により前記テーパ作用部8を駆動して前記軸方向スライド体7を旋回軸方向に押動スライドさせることで前記係止部15を前記外環部13及び前記内環部14に係合して前記タレット3を割出し位置に係止固定してクラッチ状態とするように構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の工作機械の自動旋回型タレット装置に係るものである。
【発明の効果】
【0022】
本発明は上述のように構成したから、タレットをリフト方式にせず、一つの駆動装置(アクチェータ)によってクラッチ装置によるタレットの係止固定と解除との切り替えが行えると共に、タレットや工具の自重や切削時の負荷などを直接受けずクサビ効果を生じさせることで負荷に直接対抗できる大きな駆動力がなくても済む構成となるため、油圧レス化、即ちエアや更にエネルギー消費や設備が容易となるモータによる小さい駆動力でもタレットを確固に係止固定でき、しかもタレットをリフト式にしないことから一層簡易な構成で実現できる画期的な工作機械の自動旋回型タレット装置となる。
【0023】
即ち、一つの駆動装置でクラッチ装置を係脱作動できると共に、切削時の大きな負荷に対して直接対抗できる大きな駆動力でないエアシリンダ装置や電動モータ等で駆動装置を構成しても、クサビ効果が生じてタレットを割出し位置に確固に係止固定でき、またこれを解除できる画期的な工作機械の自動旋回型タレット装置となる。
【0024】
また、請求項2,3,4記載の発明においては、このようなクサビ効果が生じると共に、この進退によって駆動体を押動スライドさせてクラッチ装置を作動させるテーパ作用部を一層簡単な構成で実現でき、特に請求項4記載の発明においては、このテーパ作用部は一層簡易な構成で実現でき、且つこの進退動作もスムーズに行える極めて画期的な工作機械の自動旋回型タレット装置となる。
【0025】
また、請求項5,6記載の発明においては、クラッチ装置も一層簡単な構成で実現でき、特に請求項6記載の発明においては、このクラッチ装置による係止固定も簡易な構成で確固となり、また耐久性にも優れ、一層実用性に優れた工作機械の自動旋回型タレット装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本実施例の説明正面図である。
【図2】本実施例の説明側断面図である。
【図3】本実施例のクラッチ装置を解除してタレット旋回可能なクラッチ解除状態の説明側断面図である。
【図4】本実施例の図3のA−A断面図である。
【図5】本実施例のクラッチ状態の説明断面図である。
【図6】本実施例の図5のB−B断面図である。
【図7】本実施例のクラッチ解除状態の説明平断面図である。
【図8】本実施例のクラッチ状態の説明平断面図である。
【図9】本実施例のクラッチ装置として採用したカービックカップリングの説明図である。
【図10】本実施例のタレットの旋回伝達機構を示す説明正断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0028】
駆動装置5により駆動体6を駆動してこの駆動体6に設けたテーパ作用部8をスライドさせると、このテーパ作用部8の形状若しくはこのテーパ作用部8が介在する当接部の形状によって押し広げ作用が生じて、固定部であるタレット台1に対して可動部である軸方向スライド体7が旋回軸方向にスライドしてクラッチ装置4が係脱作動する。
【0029】
例えば、旋回軸方向と直交する方向に駆動体6によりテーパ作用部8をスライドさせると、このテーパ作用部8によって生じる押し広げ作用によって軸方向スライド体7が旋回軸方向に沿って押動スライドし、係止部15がタレット3に係止してクラッチ装置4がクラッチ状態となり、タレット3の割出し位置が係止固定される。
【0030】
逆にテーパ作用部8を戻りスライドさせると軸方向スライド体7は戻りスライドしてクラッチ装置4の係止が外れてタレット3は旋回可能な状態に切り替わる。
【0031】
そして、割出し後再びテーパ作用部8を駆動装置5によりスライドさせ軸方向スライド体7による押し広げ作用により軸方向スライド体7を押動スライドさせて係止部15をタレット3に係止してタレット3を割出し位置で係止固定される(クラッチ状態となる)。
【0032】
即ち、軸方向スライド体7を旋回軸方向に押動スライドしてクラッチ装置4によりタレット3を係止固定したクラッチ状態は、この旋回軸方向と交差する横方向から駆動装置5に駆動されるテーパ作用部8による押し広げ作用によってなされるから、このテーパ作用部8がクサビ効果を同時に果たし、たとえこのテーパ作用部8をスライド駆動する駆動装置5の駆動力が、切削時にかかる大きな負荷に直接対抗できる大きな駆動力でなくても、これに対抗できる強度でタレット3を係止固定保持できることとなる。
【0033】
従って、本発明は、タレット3をリフト方式にしないからタレット3の摩擦抵抗が増大したりゴミや切粉などの噛み込みのおそれもこれを防止する対策や管理の必要性も少なく、また一つの駆動装置でクラッチ装置の掛け外しロックが行えると共に、クサビ効果をも生じさせて小さな駆動力の駆動装置で良く、例えばこの一つの駆動装置をエアシリンダ装置やボールネジに設けたナットを駆動体6としてこのボールネジを回転させて駆動体6を駆動する電動モータで構成し、エネルギー消費も少なく設備も簡単で済む構成にできるなど画期的な工作機械の自動旋回型タレット装置となる。
【実施例】
【0034】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0035】
本実施例は、タレット台1に旋回軸部2を設け、この旋回軸部2を軸にしてタレット台1に対してタレット3を旋回自在に構成し、この旋回軸部2に軸方向スライド体7をスライド自在に設け、この軸方向スライド体7とタレット3との間に軸方向スライド体7のスライドにより係脱作動してタレット3を旋回可能な状態と割出し位置を係止固定するクラッチ状態とに切り替えるクラッチ装置4を設けた構成としている。
【0036】
また、本実施例は、駆動装置5により前記タレット3の旋回軸方向と直交する方向に進退させる駆動体6を設け、この駆動体6の軸直交方向への進退によって押し広げ作用が生じてタレット台1に対して前記軸方向スライド体7を旋回軸方向に押動スライドさせるテーパ作用部8を前記駆動体6に設け、このテーパ作用部8の軸直交方向のスライドによって軸方向スライド体7を旋回軸方向にスライドさせて前記クラッチ装置4を係脱するように構成している。
【0037】
具体的には、タレット台1に設けた支承部9と軸方向スライド体7に設けた対向支承部10との間で進退するように前記駆動体6の前記テーパ作用部8を構成して、このテーパ作用部8のこの間での移動により固定側の前記支承部9に対して前記対向支承部10が離反方向に押圧され前記軸方向スライド体7が押動スライドするように構成している。
【0038】
即ち、タレット台1の前記支承部9と軸方向スライド体7の前記対向支承部10との間で進退する前記テーパ作用部8は、支承部9の形状をテーパ作用を果たす形状としても良いが、本実施例では、このテーパ作用部8の形状を進退方向の一方向に沿って幅が除々に広がるテーパ外面を有するクサビ形状に形成して、この支承部9と対向支承部10との間に介在していく部分の幅が除々に広がることになる方向にスライドすることで軸方向スライド体7を押動スライドさせてクラッチ状態となり、逆に幅が除々に狭まることになる方向に戻りスライドすることで前記軸方向スライド体7が戻りスライドしてクラッチ解除するように構成している。
【0039】
このテーパ作用部8は、支承部9と対向支承部10との間に介在圧入スライドするクサビブロックとしても良いが、本実施例では、前記支承部9と前記対向支承部10に設けた各支承係合部11に夫々スライド自在に係合する一対の直動案内部12で構成し、この直動案内部12を一体連結して駆動体6の進退によって一体にスライドするように構成し、この一対の直動案内部12を非平行に並設して少なくとも一方を並設間隔が他方に対して除々に広がるように傾斜状態に構成して少なくとも前記一方の直動案内部12で形成した前記テーパ外面を有するクサビ形状に形成し、前記駆動体6を駆動することで前記各支承係合部11に前記非平行な一対の直動案内部12で構成した前記テーパ作用部8がスライドすることで前記押し広げ作用が生じて前記タレット台1に対して前記軸方向スライド体7が押動スライドするように構成している。
【0040】
更に本実施例を詳述すると、旋回軸部2に割出し駆動装置16により回動する回動軸17を内装し、この回動軸17の先端部に先端歯車18を設け、この先端歯車18に歯合する中間伝達歯車19をこれを挟んで一対対向状態に設け、この各中間伝達歯車19に歯合する環状歯車22を内歯としてタレット3の先端カバー部23に内設して、駆動装置16により回動軸17を回動し、先端歯車18,中間伝達歯車19,環状歯車22を介してタレット3を、前記回動軸17を内装した旋回軸部2を軸に割出しするように構成している。
【0041】
タレット3は、この旋回軸部2に回動自在に被嵌し、旋回軸方向にはスライドせずノンリフト方式としている。
【0042】
このタレット3の基端側に旋回軸部2に沿ってスライド自在に軸方向スライド体7を設けている。
【0043】
この軸方向スライド体7とタレット3との間で旋回可能なクラッチ解除状態と、割出し位置を係止固定するクラッチ状態とに軸方向スライド体7をスライドすることで切り替えるクラッチ装置4を設けている。
【0044】
このクラッチ装置4は、カービックカップリングを採用している。即ち、タレット台1とタレット3のどちらでも良いが、本実施例では固定側となるタレット台1の立上部の内側内周に外環部13を設け、タレット3の垂下部に前記外環部13に内接する内環部14を設けて、前記タレット台1に対して前記タレット3を旋回して割出しする際、この外環部13に対して内環部14が回動するように構成し、前記軸方向スライド体7にこの外環部13及び内環部14に係合して外環部13に対する内環部14の回動を係止阻止する係止部15を設けて、前記駆動装置5の駆動により前記テーパ作用部8を駆動して前記軸方向スライド体7を旋回軸方向に押動スライドさせることで前記係止部15を外環部13及び内環部14に係合してタレット3を割出し位置に係止固定してクラッチ状態とするように構成している。
【0045】
本実施例のこのクラッチ装置4を作動させてクラッチ状態とする軸方向スライド体7を押動スライドさせ、且つクサビ効果を果たすクラッチ掛け外しクサビ機構について更に詳述する。
【0046】
駆動装置5は一つで良く、大きなクランプ力を生じる油圧装置でなくてもエアシリンダ装置で構成できるが、本実施例では、更にエネルギー消費が少なく設備投資や管理が容易な電動モータを採用し、この電動モータでボールネジ24を回転することでこれに螺着した駆動体6を進退するように構成し、この駆動体6に前述したテーパ作用部8を設けている。
【0047】
このテーパ作用部8は、クサビ部となるもので、固定側となるタレット台1と駆動側となる軸方向スライド体7との間に割り込んで軸方向スライド体7を押し上げ駆動するものであるが、前述のように本実施例ではタレット台1の支承部9と軸方向スライド体7の対向支承部10とを単なる摺動当接面とするのでなく、この支承部9及び対向支承部10として支承係合部11を夫々に設け、この支承係合部11にスライド自在に係合する一対の直動案内部12を設け、この一対の直動案内部12でテーパ作用部8を構成し、この直動案内部12の形状によりテーパ作用(押し拡げ作用)が生じてクサビ効果が果たされるように構成している。
【0048】
即ち、既存のLMガイドを改良し、この直動のガイドレールにスライド自在に係合するスライダー側を前記支承係合部11として夫々に固定し、このスライド側(支承係合部11)に対してスライドするガイドレールを直動案内部12とし、これを駆動装置5の駆動によってスライドさせる構成としている。
【0049】
そして、この一対の直動案内部12の一方を非平行となるように傾斜し、本実施例では先端側ほど除々に並設間隔がわずかに狭まって行くように構成している。
【0050】
即ち、本実施例では、固定側となるタレット台1に支承部9を設ける端面を設け、これと対向する軸方向スライド体7に端面を傾斜端面とし、この端面と傾斜端面とに夫々前記支承係合部11を設けて、タレット台1に支承部9を設けると共に、軸方向スライド体7に対向支承部10を設け、この各支承係合部11に直動案内部12をスライド自在に係合するが、軸方向スライド体7の傾斜端面に対向支承部10として設けた支承係合部11に一方に対して非平行で傾斜端面に沿う他方の直動案内部12をスライド自在に係合し、この直動案内部12をテーパ面として先端側へ直動案内部12をスライドすることで、軸方向スライド体7をこれと直交する方向に押動スライドする構成としている。
【0051】
従って、スムーズにスライド進退できると共に、係止部15を係止させてクラッチ装置4をクラッチ状態とするだけのわずかなストロークだけ軸方向スライド体7を押動スライドし、駆動装置5による駆動体6及びテーパ作用部8の駆動方向と軸方向スライド体7の押動スライド方向とは直交するため、十分なクサビ効果も果たされる。
【0052】
本実施例では、前述のように一対の直動案内部12は、固定側となるタレット台1に設けた支承部9の支承係合部11にスライド自在に係合する直動案内部12に対して、可動側となる軸方向スライド体7に設けた対向支承部10の支承係合部11にスライド自在に係合する直動案内部12をやや非平行にし、この非平行とした直動案内部12をテーパ部としてテーパ作用部8を構成している。
【0053】
更に具体的に説明すると、この一対の直動案内部12は連結部25で補強連結していて、この直動案内部12は連結部25と共に駆動体6に一体に設けられている。
【0054】
また、この一対の直動案内部12は旋回軸部2を挟んで対称に一対設けられていて、合計四体の直動案内部12が駆動体6に突設されている。
【0055】
即ち、駆動装置5により旋回軸方向と直交する方向に進退する駆動体6に二股に分かれて旋回軸部2を避けて直線側であって固定側のタレット台1の支承部9の支承係合部11にスライド自在に係合する直動案内部12を二体設け、この各直線側となる直動案内部12に対して旋回軸方向に非平行にして夫々軸方向スライド体7の傾斜端面に設けた対向支承部10としての支承係合部11にスライド自在に係合する傾斜側の直動案内部12を連結部25で固定側にスライド自在に係合する直動案内部12と連結して構成している。
【0056】
即ち、旋回軸部2を挟んでその両側に夫々一対の直動案内部12(合計四体の直動案内部12)を設け、この各非平行とした直動案内部12は先端側へ行くほど少しだけその並設間隔が狭まるように構成してテーパ部を片側に形成したテーパ作用部8を構成し、この駆動体6に設けたテーパ作用部8が先端側(旋回軸方向と直交する一方向)にスライドすると一対の直動案内部12の並設間隔が支承部9と対向支承部10との間で除々に大きくなるため、タレット3に対して軸方向スライド体7を押し上げるテーパ作用が生じ、このテーパ作用によって軸方向スライド体7を押動スライドさせるように構成している。
【0057】
従って、軸方向スライド体7の押動スライドによってクラッチ装置4がクラッチ状態となりタレット3を割出し位置に係止固定でき、この軸方向スライド体7の駆動を、これと直交する方向から介在圧入するテーパ作用部8によって行うからクサビ効果を生じ、直接切削負荷に対抗できない小さなクランプ力でも係止固定でき、またその解除も小さな力で済むためエアシリンダ装置や電動モータでもこのクラッチ装置の掛け外し・ロックを行うことができ、しかも再び旋回可能なクラッチ解除状態とする場合も、LMガイドの直動案内部12の進退で行うからスムーズに解除作動でき、非常にこの切り替え作動もスムーズにして確実に係脱作動させることができる極めて画期的な工作機械の自動旋回型タレット装置となる。
【0058】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0059】
1 タレット台
2 旋回軸部
3 タレット
4 クラッチ装置
5 駆動装置
6 駆動体
7 軸方向スライド体
8 テーパ作用部
9 支承部
10 対向支承部
11 支承係合部
12 直動案内部
13 外環部
14 内環部
15 係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タレット台に旋回自在にタレットを設け、このタレットの割出し位置を係脱自在に係止固定するクラッチ装置を設けた工作機械の自動旋回型タレット装置であって、駆動装置により前記タレットの旋回軸方向と交差する方向に進退させる駆動体を設け、この駆動体の軸交差方向への進退によって旋回軸方向に進退する軸方向スライド体を設け、この軸方向スライド体の進退によって係脱作動する前記クラッチ装置を設け、前記駆動体の移動により押し広げ作用が生じてタレット台に対して前記軸方向スライド体を押動スライドさせるテーパ作用部を前記駆動体に設けたことを特徴とする工作機械の自動旋回型タレット装置。
【請求項2】
前記タレット台に設けた支承部と前記軸方向スライド体に設けた対向支承部との間で進退するように前記駆動体の前記テーパ作用部を構成して、このテーパ作用部の旋回軸方向と交差する方向への移動により、固定側の前記支承部に対して前記対向支承部が離反方向に押圧されこの対向支承部を設けた前記軸方向スライド体が旋回軸方向に押動スライドするように構成したことを特徴とする請求項1記載の工作機械の自動旋回型タレット装置。
【請求項3】
前記タレット台の前記支承部と前記軸方向スライド体の前記対向支承部との間で進退する前記テーパ作用部は、少なくともこのテーパ作用部の形状を進退方向の一方向に沿って幅が除々に広がるテーパ外面を有するクサビ形状に形成して、この支承部とテーパ作用部との間での幅が除々に広がることになる方向に移動することで前記軸方向スライド体を旋回軸方向に押動スライドさせ、逆に幅が除々に狭まることになる方向に戻り移動することで前記軸方向スライド体が戻りスライドするように構成したことを特徴とする請求項2記載の工作機械の自動旋回型タレット装置。
【請求項4】
前記テーパ作用部は、前記支承部と前記対向支承部に設けた支承係合部に夫々スライド自在に係合し一体に往復スライドする一対の直動案内部で構成し、この直動案内部を非平行に並設して少なくとも一方を並設間隔が他方に対して除々に広がるように傾斜状態に構成して少なくとも前記一方の直動案内部で形成した前記テーパ外面を有するクサビ形状に形成し、前記駆動体を駆動することで前記各支承係合部に前記非平行な一対の直動案内部で構成した前記テーパ作用部がスライドすることで前記押し広げ作用が生じて前記タレット台に対して前記軸方向スライド体が旋回軸方向に押動スライドするように構成したことを特徴とする請求項3記載の工作機械の自動旋回型タレット装置。
【請求項5】
前記タレット台に旋回軸部を設け、この旋回軸部を軸にして前記タレット台に対して前記タレットを旋回自在に構成し、この旋回軸部に前記軸方向スライド体をスライド自在に設け、この軸方向スライド体とタレットとの間に前記軸方向スライド体のスライドにより係脱作動してタレットを旋回可能な状態と割出し位置を係止固定するクラッチ状態とに切り替える前記クラッチ装置を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の工作機械の自動旋回型タレット装置。
【請求項6】
前記クラッチ装置は、前記タレット台若しくは前記タレットに外環部を設け、前記タレット若しくは前記タレット台に前記外環部が囲む内環部を設けて、前記タレット台に対して前記タレットを旋回して割出しする際、前記外環部に対して前記内環部が相対回動するように構成し、前記軸方向スライド体にこの外環部及び内環部に係合して前記外環部に対する前記内環部の相対回動を係止阻止する係止部を設けて、前記駆動装置の駆動により前記テーパ作用部を駆動して前記軸方向スライド体を旋回軸方向に押動スライドさせることで前記係止部を前記外環部及び前記内環部に係合して前記タレットを割出し位置に係止固定してクラッチ状態とするように構成したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項
に記載の工作機械の自動旋回型タレット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−36970(P2011−36970A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−188591(P2009−188591)
【出願日】平成21年8月17日(2009.8.17)
【出願人】(391029819)株式会社オーエム製作所 (34)
【Fターム(参考)】