説明

工作機械の自動旋回型タレット装置

【課題】タレットノンリフト方式と同様に切粉などの噛み込みの問題を防止できると共に、従来のタレットリフト方式と同等の剛性を有して、空圧駆動(油圧レス)を実現しても旋削負荷に耐え得る強度をも有する画期的な工作機械の自動旋回型タレット装置を提供すること。
【解決手段】このタレット2の収納部内で一方側にスライドすることで割出し位置を係止固定したクラッチ状態となり、反対側にスライドすることでクラッチ状態が解除される係脱用スライド係止部4を設け、このクラッチ係脱用空圧スライド駆動機構7によるクラッチ装置3の係脱とは無関係にして、タレット2を回動クリアランス分だけ旋回位置からクランプ固定させる位置までスライドさせるタレット用空圧スライド駆動機構10とこのクランプ固定位置でクサビ係止してタレット2をクランプ固定するクサビ機構14とを備えた工作機械の自動旋回型タレット装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば立旋盤などの工作機械に用いられる自動旋回型タレット装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
旋回することで切替え使用する複数の工具をタレットに設け、このタレットを工具切替え時にタレット台に対して自動旋回する自動旋回型タレット装置は、一般に次のような構成である(本実施例の図面を参照しつつ本実施例と同等部に同一符号を付して説明する。)。
【0003】
複数の工具24(複数のホルダーに夫々交換自在に設けた複数の刃具)を設けたタレット2を、タレット台1に突設固定した旋回軸部15に旋回自在に被嵌し、このタレット2の基端部とタレット台1との間にタレット割出し位置を係脱自在に係止固定するクラッチ装置を設けて、このクラッチ装置による係止固定を解除してタレット2を旋回自在とし、旋回後割出し位置で再びクラッチ装置で旋回不能に係止固定する(クラッチ状態とする)ように構成している。
【0004】
例えば、タレット2をタレット台1に突設固定した旋回軸部15に旋回自在に被嵌し、このタレット2の基端部とタレット台1との間にタレット割出し位置を係脱自在に係止固定する前記クラッチ装置を設け、このクラッチ装置は、タレット2を基端部から先端部へスライドすることでこのクラッチ装置のクラッチ係止部をスライド係脱して係止固定を解除しタレット2を旋回自在とし、旋回後割出し位置で再びタレット2を戻りスライドさせてクラッチ係止部を係止させてタレット台1に対して旋回不能に係止固定する(クラッチ状態とする)ように構成している。
【0005】
具体的には、このタレット2に割出し旋回駆動装置により駆動される伝達歯車22に噛合する旋回歯車部23を設け、クラッチ装置としてタレット台1にクラッチ係合部を設けると共に、タレット2の基端部にクラッチ係合部に回り止め凹凸係合するクラッチ係止部を設け、タレット2を基端部から先端部へスライドした際クラッチ係合部とクラッチ係止部との係合が解除して旋回可能となり、割出し旋回駆動装置によりタレット2が旋回歯車部23と伝達歯車22との噛合によって割出しするように構成している。
【0006】
また、スライド駆動用の油供給装置からソレノイドバルブを介して油を流入することでタレット2を軸方向にスライドさせて前記クラッチ装置の係止固定を解除するクラッチ解除用圧力室と、このタレット2のクラッチ解除のためのスライドによって狭められるスライド用間隙であって、逆にソレノイドバルブで切り替えてこれに油を流入することでタレット2を戻りスライドさせてクラッチ装置により再び係止固定するクラッチ用圧力室とから成る油圧スライド駆動機構を設けている。
【0007】
このような工作機械においては、複数の工具を旋回切り替え自在に装備したタレットの自重のみならず、加工時特に切削時(旋削時)に大きな負荷がかかるため、大きなクランプ力が必要である。そのため、前述のように従来の自動旋回型タレット装置におけるタレットのスライド駆動においても油圧スライド機構を用い、タレット旋回終了後もこの大きなクランプ力が生じる油圧によって係止固定したクラッチ状態を押圧保持させる必要があった。
【0008】
また、一方このように大きなクランプ力が生じる油圧を用いて、タレットを戻りスライドさせてクラッチ装置を係止固定するが、このクラッチ装置をこの大きなクランプ力が生じる油圧によってタレットをスライドさせてこのクラッチ装置を解除させる構成のため、旋回のために(クラッチ解除のために)タレットをスライドさせる時には必要以上の大きなスライド駆動力が生じないように、油を流入させるクラッチ解除用圧力室をできるだけ小さく設計したり、またかなり小さく設計しても油圧によるスライド駆動力がまだまだ大きいために、このクラッチ解除のためのスライドによりスライド用間隙が狭められて消失し突き当り状態となった時、この油圧による押圧のためこの突き当り面で旋回時に大きな摺動摩擦抵抗が生じてしまう。
【0009】
即ち、油圧によってタレットを戻りスライドさせてクラッチ装置によるクラッチ状態を押圧保持するため、加工時の大きな負荷にも抗し得る反面、クラッチ解除のためにタレットをスライドさせた後このタレットを旋回させる際、油圧によるスライド押圧が大きいため旋回時に大きな摺動摩擦抵抗が生じてしまい、これにより摩耗も激しく耐久性にも劣り、旋回時にがじったりするおそれもあった。
【0010】
そのため、例えば実開昭57−149903号のように、クランプ解除用圧力室への油の流入が所定圧力以上となると、あるいは所定ストローク以上スライドすると、バイパス路が連通して隔絶していたクランプ解除用圧力室から反対のスライド用間隙(クラッチ用圧力室)へこのバイパス路を介して油が流れ込みスライド駆動力を減じさせる油圧低減機構などを設けなければならなかった。
【0011】
それ故、構造や制御が複雑となり、コスト高となったり量産性に劣るなどの問題や、またクラッチ解除(タレット旋回)のためのアンクランプ速度が遅いなどの問題も生じていた。
【0012】
そこで、油圧レスとして省資源化を図り、クラッチ解除時の割出し時に不必要に大きな摩擦抵抗が生じないようにすることなどを目的として、たとえエア供給装置による空圧(エア式)のスライド駆動機構によってもこのタレットを旋回不能にクラッチした状態を確固に係止固定保持できるようにし、大きな切削力(旋削力)に対して直接対抗できる駆動力は生じ得ない空圧のスライド駆動機構としてもスライドしたクラッチ位置をクサビ機構によってタレットの自重にもまた大きな切削力に対しても十分耐え、これによってタレット旋回や切削機能にも支障を与えずに油圧レス化が実現でき、省エネ,省資源化を図れる画期的な工作機械の自動旋回型タレット装置を開発した(特許第4383475号)。
【0013】
しかしながら、このタレット装置においても、タレットを旋回軸部に沿って往復スライドさせる構成、即ちタレットがリフト方式であることから、旋回時にゴミや切粉が噛み込むおそれも生じ易く、この対策・管理も必要となるなど構造が複雑となる。
【0014】
一方、タレットをリフト方式にせず、一つの駆動装置(アクチェータ)によってクラッチ装置によるタレットの係止固定と解除との切り替えが行えると共に、タレットや工具の自重や施削時の負荷などを直接受けずクサビ効果を生じさせることで負荷に直接対抗できる大きな駆動力がなくても済む構成を実現して、油圧レス化、即ちエアや更にエネルギー消費や設備が容易となるモータによる小さい駆動力でもタレットを確固に係止固定でき、しかもタレットをリフト式にしないことから前記ゴミや切粉の噛み込みの問題もなくその対策・管理も低減できる画期的な工作機械の自動旋回型タレット装置をも出願人は開発した(特願2009−188591号)。
【0015】
即ち、タレット台に旋回自在にタレットを設け、このタレットの割出し位置を係脱自在に係止固定するクラッチ装置を設けた工作機械の自動旋回型タレット装置であって、駆動装置により前記タレットの旋回軸方向と交差する方向に進退させる駆動体を設け、この駆動体の軸交差方向への進退によって旋回軸方向に進退する軸方向スライド体を設け、この軸方向スライド体の進退によって係脱作動する前記クラッチ装置を設け、前記駆動体の移動により押し広げ作用が生じてタレット台に対して前記軸方向スライド体を押動スライドさせるテーパ作用部を前記駆動体に設けた工作機械の自動旋回型タレット装置を開発した(特願2009−188591号)。
【0016】
従って、タレットをスライドさせてクラッチ装置を係脱するリフト方式とせず、いわばノンリフト方式としたもので、駆動装置により駆動体を駆動してこの駆動体に設けたテーパ作用部をスライドさせると、このテーパ作用部の形状若しくはこのテーパ作用部が介在する当接部の形状によって押し広げ作用が生じて、固定部であるタレット台に対して可動部である軸方向スライド体が旋回軸方向にスライドしてクラッチ装置が係脱作動する。
【0017】
例えば、旋回軸方向と直交する方向に駆動体によりテーパ作用部をスライドさせると、このテーパ作用部の押し広げ作用によって軸方向スライド体が旋回軸方向に沿って押動スライドしてクラッチ係止部がタレットのクラッチ係合部に係止してクラッチ装置がクラッチ状態となり、タレットの割出し位置が係止固定されるように構成している。
【0018】
即ち、このクラッチ状態は、この旋回軸方向と交差する横方向から駆動されるテーパ作用部による押し広げ作用によってなされるから、このテーパ作用部がクサビ効果を同時に果たし、たとえこのテーパ作用部をスライド駆動する駆動装置の駆動力が、旋削時にかかる大きな負荷に直接対抗できる大きな駆動力でなくても、これに対抗できる強度でタレットを係止固定保持できることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】実開昭57−149903号公報
【特許文献2】特許第4383475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
しかしながら、このようなノンリフト方式とした工作機械の自動旋回型タレット装置(特願2009−188591号)は構造の簡素化や切粉などの噛み込みの問題は低減できるが、剛性の低下は否めない。
【0021】
そこで、本発明は、このような問題をも解決すべく、タレットをスライドさせてクラッチ装置を係脱するリフト方式とはせず、タレットのスライドとは別にクラッチ装置の係脱機構を備えると共に、このタレットにはこの係脱機構とは別にタレット旋回させる旋回可能な位置から少しだけスライドさせてタレット全体をクランプ固定するタレットクランプ機構を備える構成とし、このタレットクランプ機構は、前記タレットをスライドさせるタレットクランプ用のスライド機構とこれによりスライドさせたタレットをクランプ位置でクサビ係止してタレット全体をクランプ固定するクサビ機構とを備えた構成として、タレットをノンリフト方式と同様に切粉などの噛み込みを防止できると共に、従来のリフト方式と同等の剛性を有して、空圧駆動(油圧レス)を実現しても旋削負荷に耐え得る強度をも有する画期的な工作機械の自動旋回型タレット装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0022】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0023】
タレット台1に旋回自在にタレット2を設け、このタレット2の割出し位置を係脱自在に係止固定するクラッチ装置3を設けた工作機械の自動旋回型タレット装置であって、一方側にスライドすることで前記タレット2の割出し位置を係止固定したクラッチ状態となり、反対側にスライドすることで係脱してこのクラッチ状態が解除される前記クラッチ装置3の係脱用スライド係止部4を前記タレット2に設け、エアを流入することで前記係脱用スライド係止部4をスライドさせるクラッチ係脱用圧力室5と、この係脱用スライド係止部4のスライドにより狭められるクラッチ係脱用スライド間隙6とから成るクラッチ係脱用空圧スライド駆動機構7を備え、前記タレット2を旋回軸方向に沿って、旋回自在とする位置からクランプ固定する位置までの間隙分だけスライド自在に設け、エアを流入することで前記旋回自在とする位置からクランプ固定する位置に前記タレット2をスライドさせるタレットスライド用圧力室8と、このタレット2のスライドにより狭められるタレット用スライド間隙9とからなるタレット用空圧スライド駆動機構10を備え、前記タレット2がスライドすることで移動若しくは拡口するクサビ係合部11と、このクサビ係合部11に係合するクサビ部12とを設けて、このクサビ部12をクサビ駆動装置13による駆動により若しくは付勢により移動させて前記クサビ係合部11に係合することで、前記タレット2をクランプ固定するクサビ機構14を備えたことを特徴とする工作機械の自動旋回型タレット装置に係るものである。
【0024】
また、前記タレット台1に旋回軸部15を設け、この旋回軸部15を軸にして前記タレット台1に対して前記タレット2を旋回自在に構成し、このタレット2内に前記係脱用スライド係止部4をスライド自在に設け、この係脱用スライド係止部4のスライドにより前記タレット台1又は前記タレット台1及び前記タレット2に係脱して、このタレット台1に対してタレット2を旋回可能な状態と割出し位置を係止固定する前記クラッチ状態とに切り替えるように前記クラッチ装置3を構成したことを特徴とする請求項1記載の工作機械の自動旋回型タレット装置に係るものである。
【0025】
また、前記クラッチ装置3の前記係脱用スライド係止部4を、前記タレット2の旋回軸方向にスライド自在にして、且つこのタレット2に回り止め係合してタレット2と共に旋回自在にタレット2内に設け、この係脱用スライド係止部4を収納する前記タレット2の収納部の一側内面と反対側内面との双方と前記係脱用スライド係止部4との間に、前記係脱用スライド係止部4のスライドにより広狭する互いに隔絶した間隙が形成されるように構成して、前記係脱用スライド係止部4を収納する収納部の一側内面と前記係脱用スライド係止部4の一側外面との前記一方の間隙を前記クラッチ係脱用圧力室5とし、前記収納部の反対側内面と前記係脱用スライド係止部4の反対側外面との前記反対側の間隙を前記クラッチ係脱用スライド間隙6とし、この係脱用スライド係止部4を収納する収納部に前記クラッチ係脱用空圧スライド機構7を設けたことを特徴とする請求項2記載の工作機械の自動旋回型タレット装置に係るものである。
【0026】
また、前記クラッチ装置3は、前記タレット台1若しくは前記タレット2に外環部16を設け、前記タレット2若しくは前記タレット台1に前記外環部16が囲む内環部17を設けて、前記タレット台1に対して前記タレット2を割出しする際、前記外環部16に対して前記内環部17が相対回動するように構成し、前記タレット2にスライド自在に設けた前記係脱用スライド係止部4の端部に、前記外環部16及び前記内環部17に係合して前記外環部16に対する前記内環部17の相対回動を係止阻止する回動阻止係止部18を設けて、前記タレット2に対して前記係脱用スライド係止部4を前記クラッチ係脱用空圧スライド機構7によりスライドさせることで、前記回動阻止係止部18を前記内環部17及び外環部16に係合して前記タレット2を割出し位置に係止固定してクラッチ状態とするように構成したことを特徴とする請求項3記載の工作機械の自動旋回型タレット装置に係るものである。
【0027】
また、前記タレット台1に旋回軸部15を設け、この旋回軸部15を軸にして前記タレット台1に対して前記タレット2を旋回自在に構成し、この旋回軸部15に張出部19を設け、この張出部19の一側外面と反対側外面との双方と前記タレット2の内面との間に、前記タレット2の旋回軸方向のスライドにより広狭する互いに隔絶した間隙が形成されるように構成して、前記タレット2の前記張出部19を囲む一側内面と張出部19の一側外面との前記一方の間隙を前記タレットスライド用圧力室8とし、前記タレット2の前記張出部19を囲む反対側内面と張出部19の反対側外面との前記反対側の間隙を前記タレット用スライド間隙9とし、前記タレット2が囲む前記張出部19に前記タレット用空圧スライド駆動機構10を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の工作機械の自動旋回型タレット装置に係るものである。
【0028】
また、前記タレット台1に旋回軸部15を設け、この旋回軸部15を軸にして前記タレット台1に対して前記タレット2を旋回自在に構成し、前記旋回軸部15を中空構造とし、この旋回軸部15内に前記タレット2のスライドと共にスライドするスライド軸部20を設け、このスライド軸部20の基端部に前記クサビ係合部11を設ける、又はこのスライド軸部20の基端部にクサビ係合部形成部11Aを設け、このクサビ係合部形成部11Aと前記タレット台1若しくは前記旋回軸部15の基端部とで前記クサビ係合部11を設けて、クサビ係合部11をタレット2と共にスライド自在若しくはタレット2のスライドにより広狭するように前記クサビ機構14を構成したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の工作機械の自動旋回型タレット装置に係るものである。
【0029】
また、前記クサビ駆動装置13をエアシリンダ装置で構成して、前記クラッチ装置3の係脱を行なう前記クラッチ係脱用空圧スライド機構7及び前記タレット2のスライド駆動を行う前記タレット用空圧スライド駆動機構10及び前記クサビ機構14の前記クサビ部12の駆動のいずれもエア供給装置から送り込まれるエアによる空圧駆動としたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の工作機械の自動旋回型タレット装置に係るものである。
【発明の効果】
【0030】
本発明は上述のように構成したから、タレットをスライドさせてクラッチ装置を係脱するリフト方式とはせず、タレットのスライドとは別にクラッチ装置の係脱機構を備えると共に、このタレットにはこの係脱機構とは別にタレット旋回させる旋回可能な位置から少しだけスライドさせてタレット全体をクランプ固定するタレットクランプ機構を備える構成とし、このタレットクランプ機構は、前記タレットをスライドさせるタレットクランプ用のスライド機構とこれによりスライドさせたタレットをクランプ位置でクサビ係止してタレット全体をクランプ固定するクサビ機構とを備えた構成として、タレットをノンリフト方式と同様に切粉などの噛み込みを防止できると共に、従来のリフト方式と同等の剛性を有して、空圧駆動(油圧レス)を実現しても旋削負荷に耐え得る強度をも有する画期的な工作機械の自動旋回型タレット装置となる。
【0031】
また、請求項2,3記載の発明においては、一層簡易な構成で本発明を容易に実現できる一層実用性に優れた工作機械の自動旋回型タレット装置となる。
【0032】
また、請求項4記載の発明においては、このクラッチ装置の係止固定も簡易な構成で実現でき、且つ強固となり、また耐久性にも優れる一層実用性に優れた工作機械の自動旋回型タレット装置となる。
【0033】
また、請求項5記載の発明においては、簡易な構成で旋回可能な位置からタレットクランプ位置までタレットをスライドさせるタレットクランプ用のスライド機構を容易に実現でき、また、請求項6記載の発明においては、このタレットクランプ位置でクサビ係止してタレット全体を強固にクランプ固定できるクサビ機構を前記クラッチ装置の係脱機構とは別に簡易な構成で容易に実現できる画期的な工作機械の自動旋回型タレット装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施例の説明正面図である。
【図2】本実施例のクランプ固定時の説明側断面図である。
【図3】本実施例のタレット旋回時の説明側断面図である。
【図4】本実施例のクランプ固定時(クサビロック時)のクサビ機構の説明背断面図である。
【図5】本実施例のクランプ固定時(クサビロック時)のクサビ機構の作動説明図である。
【図6】本実施例のタレット旋回時(クサビロック解除時)のクサビ機構の説明背断面である。
【図7】本実施例のタレット旋回時(クサビロック解除時)のクサビ機構の作動説明図である。
【図8】本実施例のクラッチ装置として採用したスリーピースカップリングを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0036】
タレット2の割出し位置をクラッチ装置3を作動させて係止固定しクラッチ状態とする場合は、クラッチ係脱用空圧スライド駆動機構7を作動させて係脱用スライド係止部4をスライドさせる。即ち、エア供給源からエア流路を介してクラッチ係脱用圧力室5にエアを流入させることで、反対側のクラッチ係脱用スライド間隙6を狭めつつ係脱用スライド係止部4をスライドさせ、この係脱用スライド係止部4をタレット台1又はタレット台1及びタレット2に設けた係合部に係合してタレット台1に対してタレット2を係止固定してクラッチ状態とする。
【0037】
逆にこのクラッチ状態を解除して旋回可能な状態にする場合には、前記クラッチ係脱用圧力室5へのエアの流入を停止させるかあるいは更に反対側のクラッチ係脱用スライド間隙6にエアを流入することで、係脱用スライド係止部4を戻りスライドさせてこの係脱用スライド係止部4を係合部から係脱させる。
【0038】
この旋回可能な状態で旋回駆動装置によりタレット2を割出し、割出し後再びクラッチ係脱用空圧スライド駆動機構7を作動させてクラッチ装置3を作動させ割出し位置を係止固定しクラッチ状態とするが、この場合、このクラッチ装置3(の係脱機構)とは別に設けたタレット用空圧スライド駆動機構10によりこのタレット2を僅かにスライドさせてクサビ機構14により係止してタレット2全体をクランプ固定する。
【0039】
即ち、タレット2を旋回する場合には回動クリアランスが確保される状態としたり、また例えば摩擦抵抗を低減させるドライベアリング25などを設けた旋回摺動面に強制的にスライド当接させたりするが、この旋回可能な位置からクランプ固定位置(例えばクサビ機構14によりクサビ係止を行う位置となる位置決めスライド限界位置)までの僅か分だけ、例えば回動クリアランス分だけタレット2をタレット用空圧スライド駆動機構10によりスライドさせてこの回動クリアランスが消失し位置決められるスライド限界位置へ突き当て押圧し、このクランプ固定位置でクサビ機構14によりクサビ係止してタレット2をクランプ固定する。
【0040】
従って、たとえこのクサビ機構14のクサビ係合部11にクサビ部12を係合させるクサビ駆動装置13やこれを戻り力する付勢力で係合させる場合はこの付勢力自体が、旋削負荷に抗し得る程大きな力でなくともクサビ作用により旋削負荷に耐え得るようにタレット2をクランプ固定でき、従って、このタレット2のクランプのためのスライド機構もクラッチ装置3の係脱機構も、タレット用空圧スライド駆動機構10とクラッチ係脱用空圧スライド駆動機構7とによっていずれも空圧で行え、またクサビ機構も空圧で行え、油圧レス化が図れると共に、強固にタレット2をクランプ固定でき、従来のタレットリフト方式と同等の剛性で強固にタレット2を保持でき、しかもタレット2をスライドさせてクラッチ装置3の係脱を行うタレットリフト方式ではなく、クラッチ装置3の係脱機構はタレット2のスライド機構とは別に設けてタレット2はノンリフト方式と同様にほとんどスライドせず、タレット2は旋回可能な位置からクランプ固定位置までの僅かな分だけのスライドで良い構成となるため、ゴミや切粉の噛み込みの問題もほとんど生じない画期的な工作機械の自動旋回型タレット装置となる。
【実施例】
【0041】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
本実施例は、図1に示すようにワーク21に対してコラム26,クロスレール27,タレット台1を介してXYZ方向に移動制御されることとなる五角形のタレット2の五面に夫々工具24(ホルダーに夫々交換自在に刃具)を設け、このタレット2を、本実施例では五角形であるからタレット台1に対して72度ずつ割出しして使用工具24(刃具)を切り替えする立旋盤などの工作機械の自動旋回形タレット装置に本発明を適用している(尚、例えば四角形タレットの場合は90度ずつ、六角形タレットの場合は60度ずつ割出しして切り替えることとなる。)。
【0042】
本実施例では、この刃具を交換自在に設けるホルダーを各面に設けたタレット2を、タレット台1に突設固定した旋回軸部2に旋回自在に被嵌した構成とし、このタレット2内に係脱用スライド係止部4をスライド自在に設け、この係脱用スライド係止部4のスライドによりタレット台1及び前記タレット2に係脱して、このタレット台1に対してタレット2を旋回可能な状態と割出し位置を係止固定する前記クラッチ状態とに切り替えるクラッチ装置3を設けた構成としている。
【0043】
即ち、本実施例は、一方側にスライドすることで前記タレット2の割出し位置を係止固定したクラッチ状態となり、反対側にスライドすることで係脱してこのクラッチ状態が解除される前記クラッチ装置3の係脱用スライド係止部4を前記タレット2内に設け、このタレット2の係脱用スライド係止部4を収納する収納部とこの係脱用スライド係止部4とで形成される一方の間隙を、この間隙にエアを流入することで前記係脱用スライド係止部4をスライドさせるクラッチ係脱用圧力室5として形成し、反対側の間隙を係脱用スライド係止部4のスライドにより狭められるが逆にこの間隙にエアを流入させると戻りスライドするクラッチ係脱用スライド間隙6として形成して、エア供給源から前記互いに隔絶したクラッチ係脱用圧力室5とクラッチ係脱用スライド間隙6とにエアを切り替え流入させることで係脱用スライド係止部4を正逆スライドさせるクラッチ係脱用空圧スライド駆動機構7を備えた構成としている。
【0044】
言い換えると、クラッチ装置3の前記係脱用スライド係止部4を、前記タレット2の旋回軸方向にスライド自在にして、且つこのタレット2に回り止め係合してタレット2と共に旋回自在にタレット2の収納部内に設け、この係脱用スライド係止部4を収納する収納部の一側内面と反対側内面との双方と前記係脱用スライド係止部4との間に、前記係脱用スライド係止部4のスライドにより広狭する互いに隔絶した間隙が形成されるように構成して、前記係脱用スライド係止部4を収納する収納部の一側内面と前記係脱用スライド係止部4の一側外面との前記一方の間隙を前記クラッチ係脱用圧力室5とし、前記収納部の反対側内面と前記係脱用スライド係止部4の反対側外面との前記反対側の間隙を前記クラッチ係脱用スライド間隙6とし、この係脱用スライド係止部4を収納する収納部に前記クラッチ係脱用空圧スライド機構7を設けた構成としている。
【0045】
また、本実施例の前記クラッチ装置3は、前記タレット台1に外環部16を設け、前記タレット2に前記外環部16が囲む内環部17を設けて、前記タレット台1に対して前記タレット2を割出しする際、前記外環部16に対して前記内環部17が相対回動するように構成し、前記タレット2内にスライド自在に設けた前記係脱用スライド係止部4の基端部に、この外環部16及び内環部17に係合して外環部16に対する内環部17の相対回動を係止阻止する回動阻止係止部18を設けて、このタレット2の収納部内での前記係脱用スライド係止部4をのスライドによって、前記回動阻止係止部18を内環部17及び外環部16に係合してクラッチ状態とするように構成している。
【0046】
即ち、本実施例のクラッチ装置3は、スリーピースカービックカップリングを採用したもので、タレット台1とタレット2のどちらでも良いが、本実施例では固定側となるタレット台1の立上部の内側内周に外環部16を設け、タレット2の垂下部にこの外環部16に内接する内環部17を設けて、係脱用スライド係止部4の基端部の回動阻止係止部18が、この外環部16及び内環部17に係合して外環部16に対する内環部17の回動を係止阻止することで、タレット2を割出し位置に係止固定してクラッチ状態とするように構成している。
【0047】
また、本実施例では、このタレット2に割出し旋回駆動装置により駆動される伝達歯車16に噛合する旋回歯車部23を設け、前記係脱用スライド係止部4を戻りスライドさせてクラッチ状態を解除した旋回可能な状態(クサビ機構14においてもクサビ係止を解除したクサビロック解除状態)として旋回駆動装置によりタレット2が旋回歯車部23と伝達歯車22との噛合によって割出しするように構成している。
【0048】
この旋回駆動は、タレット2が前述のように僅かにスライドしても噛合状態が維持されるように前記伝達歯車22の厚みを前記タレット2側の旋回歯車部23の厚みより大きく設計している。
【0049】
また、本実施例は、前述のようにタレット2を旋回軸方向に沿って、旋回可能な位置からクランプ固定する位置、即ち回動クリアランスが消失し位置決められるスライド限界位置までの僅かな回動クリアランス分だけスライド自在に設け、エアを流入することで回動クリアランス分だけ突き当たるまで前記タレット2をスライドさせるタレットスライド用圧力室8と、このタレット2のスライドにより狭められるタレット用スライド間隙9とからなるタレット用空圧スライド駆動機構10を備えている。
【0050】
また、前記タレット2がスライドすることで同様に僅かに移動若しくは拡口するクサビ係合部11と、このクサビ係合部11に係合するクサビ部12とを設けて、このクサビ部12をエアシリンダ装置を採用したクサビ駆動装置13による駆動により若しくはこれが抗する付勢により移動させて前記クサビ係合部11に係合することで、前記タレット2を前記回動クリアランスを消失させて位置決められるスライド限界位置(クランプ固定位置)でクランプ固定するクサビ機構14を備えた構成としている。
【0051】
更に具体的に説明すると、本実施例では、タレット台1に突設した旋回軸部15を軸にしてタレット台1に対してタレット2を旋回自在に構成し、この旋回軸部15の先端部に張出部19を設け、この張出部19を囲む(覆う)ようにタレット2を旋回軸部15に旋回自在に被嵌した構成とし、この張出部19の先端側外面と反対側の基端側外面との双方と前記タレット2の内面との間に、前記タレット2の旋回軸方向の前記僅かなスライドにより僅かに広狭する互いに隔絶した間隙が形成されるように構成して、タレット2の前記張出部19を囲む基端側内面と張出部19の基端側外面との前記一方の間隙をタレットスライド用圧力室8とし、タレット2の前記張出部19を囲む反対側内面と張出部19の先端側外面とで形成される前記反対側の間隙を前記タレット用スライド間隙9とし、このタレット2が囲む張出部19に前記タレット用空圧スライド駆動機構10を設けている。
【0052】
更に説明すると、本実施例は旋回軸部15に先端部に周囲に傘状に張り出す張出部19を設け、この旋回軸部15と共に固定部となる張出部15の基端側(タレット台側)と先端側(正面側)との双方にタレット2の前記僅かなスライドにより僅かに広狭する互いにOリングなどでシールして隔絶した間隙が形成されるようにタレット2を構成している。
【0053】
即ち、張出部19の外周面にOリングを介して気密状態にしてタレット2の内面一部をスライド自在に当接し、この張出部19の先端側も基端側もこの間隙を介して覆う形状にタレット2を構成し、このタレット2の内面と張出部19の基端側の段差面とで形成される一方の間隙を前記タレットスライド用圧力室8とし、このタレット2の内面と張出部19の先端側面とで形成される他方の間隙を前記タレット用スライド間隙9とし、旋回軸部15及び張出部19に設けたエア供給路を介してエア供給源により前記タレットスライド用圧力室8にエアを流入することでこのタレットスライド用圧力室8を押し広げて固定側である張出部19に対してタレット2を基端側へ前記張出部19の先端側外面にタレット2の内面が突当たり位置決めされるスライド限界位置までスライドするように構成している。
【0054】
逆に、タレット用スライド間隙9に逆にエアを流入することでこのタレット用スライド間隙9を押し広げてタレット2を先端側へ戻りスライドして、ドライベアリング25を設けた旋回摺動面に当接させてこのスライド分だけ回動クリアランスが確保された状態でこの旋回摺動面に摺動しつつ旋回自在となるように構成している。
【0055】
また、本実施例では前記旋回軸部15を中空構造とし、この旋回軸部15内に前記タレット2のスライドと共にスライドするスライド軸部20を設け、このスライド軸部20の基端部に前記クサビ係合部11を設ける、又はこのスライド軸部20の基端部にクサビ係合部形成部11Aを設け、このクサビ係合部形成部11Aと前記タレット台1若しくは前記旋回軸部15の基端部とで前記クサビ係合部11を設けて、クサビ係合部11をタレット2と共にスライド自在若しくはタレット2のスライドにより広狭するように前記クサビ機構14を構成している。
【0056】
具体的には、本実施例では中空構造とした旋回軸部15内に前記タレット2のスライドと共に移動するスライド軸部20を設ける。即ち、張出部19の先端側を覆うタレット2のキャップ30にスライド軸用ベアリング部31を介してスライド軸部20を張出部19及び旋回軸部15内に貫通配設し、このスライド軸部20の旋回軸部15から貫通した基端部に前記クサビ係合部11を設けている。
【0057】
また、本実施例ではこのクサビ係合部11は、旋回軸部15の基端面とスライド軸部20に設けたクサビ係合部形成部11Aとで構成している。即ち、スライド軸部20の基端部にクサビ係合部形成部11Aを設け、このクサビ係合部形成部11Aと前記旋回軸部15の基端部とで前記クサビ係合部11を設けて、このクサビ係合部11を、タレット2の前記僅かな軸方向スライドにより(スライド軸部20がスライドしてクサビ係合部形成部11Aがスライドすることで)僅かに広がるようにクサビ機構14を構成している。
【0058】
また、このように、このタレット2のクランプ位置へのスライドによりスライド軸部20がスライドすることによって、固定側である旋回軸部15の基端部に対してクサビ係合部形成部11Aが僅かに移動してクサビ係合部11が広まり、この広められたクサビ係合部11にクサビ部12を押し入れることで(本実施例では引動によってクサビ部12の幅広部を、クサビ係合部11の幅広部から幅狭部へ移動させてこの幅狭部へ喰い込ませることで)クサビロックできるように構成している。
【0059】
また、このクサビ係合部形成部11Aはスライド軸部20の基端部螺子部に螺着する構成とし、その位置を調整自在に構成し、固定用ナットによってその位置を固定できるように構成している。即ち、クサビ係合部11の位置を調整自在に構成しているが、本実施例では固定側に対しクサビ係合部形成部11Aを移動調整自在に構成してクサビ係合部11の係合口幅を微調整自在に構成している。
【0060】
また、本実施例のクサビ機構13は、このクサビ係合部11にクサビ部12をクサビ駆動装置13により進退駆動してクサビ係合するように構成している。即ち、本実施例は、弾性力を用いないで進退駆動する(エアシリンダ装置を採用した)クサビ駆動装置13とし、クサビ部11を進退双方とも空圧で駆動し、前述のようにタレット2のスライドによって広められた状態のクサビ係合部11に、引動することでクサビ部12を係合するように構成している。
【0061】
また、更に本実施例では、前述のようにこのタレット2の旋回時の摺動摩擦抵抗を低減する抵抗低減用部材としてドライベアリング25を設けている。即ち、タレット用スライド間隙9にエアを流入することで固定側である張出部19に対してタレット2を先端側へスライドしてタレットスライド用圧力室8が狭められていき突き当りタレット2の旋回時の摺動面となるタレットスライド用圧力室8の内面部に、前記抵抗低減用部材としてドライベアリング25(例えば板状のドライベアリング)を設けている。
【0062】
具体的には、このドライベアリング25はタレット2と旋回軸部15との間に介在して旋回軸部15に対してタレット2をスムーズに旋回及びスライドさせる筒状の軸受介在部と、前記タレットスライド用圧力室8内に配設された張出部19の基端面に突き当りタレット2のスライド駆動力を受けていてもスムーズにタレット2を旋回できるスライド駆動力受部とから成る。
【0063】
従って、本実施例ではクラッチ係脱用空圧スライド駆動機構7もタレット用空圧スライド駆動機構10もエア供給源を用いた空圧駆動とし、クサビ機構14のクサビ駆動装置13もエアシリンダ装置で構成して、油圧レス化を図っている。
【0064】
しかも、たとえ空圧では油圧と異なり大きな切削力に対抗できるクランプ力が得られなくてもタレット2全体を空圧で回動クリアランス分スライドさせ、これをクサビ機構14によりクサビ係止保持することで大きな切削力にも十分に耐えることができ、油圧レス化が実現できることとなる。
【0065】
しかも更に前述のように油圧を用いないことにより旋回のためのアンクランプ(クラッチ装置3の係止固定解除)に際しては油圧でなく空圧で駆動するため、油圧の場合のような複雑な油圧低減機構を要さず、また、ドライベアリング25などの抵抗低減用部材をタレットスライド用圧力室8の内面部の突き当り面(タレット2旋回時の摺動面)に設けるだけで常にスムーズに旋回できることとなる。
【0066】
そして更に、このようにタレット2全体を強固にクサビ係止を伴ってクランプ固定できると共に、ノンリフト方式と同様にこのタレット2内でタレット2のスライドと無関係にクラッチ装置3を係脱操作でき、切粉などの噛み込みの問題も低減できる。
【0067】
尚、本発明は、実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0068】
1 タレット台
2 タレット
3 クラッチ装置
4 係脱用スライド係止部
5 クラッチ係脱用圧力室
6 クラッチ係脱用スライド間隙
7 クラッチ係脱用空圧スライド駆動機構
8 タレットスライド用圧力室
9 タレット用スライド間隙
10 タレット用空圧スライド駆動機構
11 クサビ係合部
11A クサビ係合部形成部
12 クサビ部
13 クサビ駆動装置
14 クサビ機構
15 旋回軸部
16 外環部
17 内環部
18 回動阻止係止部
19 張出部
20 スライド軸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タレット台に旋回自在にタレットを設け、このタレットの割出し位置を係脱自在に係止固定するクラッチ装置を設けた工作機械の自動旋回型タレット装置であって、一方側にスライドすることで前記タレットの割出し位置を係止固定したクラッチ状態となり、反対側にスライドすることで係脱してこのクラッチ状態が解除される前記クラッチ装置の係脱用スライド係止部を前記タレットに設け、エアを流入することで前記係脱用スライド係止部をスライドさせるクラッチ係脱用圧力室と、この係脱用スライド係止部のスライドにより狭められるクラッチ係脱用スライド間隙とから成るクラッチ係脱用空圧スライド駆動機構を備え、前記タレットを旋回軸方向に沿って、旋回自在とする位置からクランプ固定する位置までの間隙分だけスライド自在に設け、エアを流入することで前記旋回自在とする位置からクランプ固定する位置に前記タレットをスライドさせるタレットスライド用圧力室と、このタレットのスライドにより狭められるタレット用スライド間隙とからなるタレット用空圧スライド駆動機構を備え、前記タレットがスライドすることで移動若しくは拡口するクサビ係合部と、このクサビ係合部に係合するクサビ部とを設けて、このクサビ部をクサビ駆動装置による駆動により若しくは付勢により移動させて前記クサビ係合部に係合することで、前記タレットをクランプ固定するクサビ機構を備えたことを特徴とする工作機械の自動旋回型タレット装置。
【請求項2】
前記タレット台に旋回軸部を設け、この旋回軸部を軸にして前記タレット台に対して前記タレットを旋回自在に構成し、このタレット内に前記係脱用スライド係止部をスライド自在に設け、この係脱用スライド係止部のスライドにより前記タレット台又は前記タレット台及び前記タレットに係脱して、このタレット台に対してタレットを旋回可能な状態と割出し位置を係止固定する前記クラッチ状態とに切り替えるように前記クラッチ装置を構成したことを特徴とする請求項1記載の工作機械の自動旋回型タレット装置。
【請求項3】
前記クラッチ装置の前記係脱用スライド係止部を、前記タレットの旋回軸方向にスライド自在にして、且つこのタレットに回り止め係合してタレットと共に旋回自在にタレット内に設け、この係脱用スライド係止部を収納する前記タレットの収納部の一側内面と反対側内面との双方と前記係脱用スライド係止部との間に、前記係脱用スライド係止部のスライドにより広狭する互いに隔絶した間隙が形成されるように構成して、前記係脱用スライド係止部を収納する収納部の一側内面と前記係脱用スライド係止部の一側外面との前記一方の間隙を前記クラッチ係脱用圧力室とし、前記収納部の反対側内面と前記係脱用スライド係止部の反対側外面との前記反対側の間隙を前記クラッチ係脱用スライド間隙とし、この係脱用スライド係止部を収納する収納部に前記クラッチ係脱用空圧スライド機構を設けたことを特徴とする請求項2記載の工作機械の自動旋回型タレット装置。
【請求項4】
前記クラッチ装置は、前記タレット台若しくは前記タレットに外環部を設け、前記タレット若しくは前記タレット台に前記外環部が囲む内環部を設けて、前記タレット台に対して前記タレットを割出しする際、前記外環部に対して前記内環部が相対回動するように構成し、前記タレットにスライド自在に設けた前記係脱用スライド係止部の端部に、前記外環部及び前記内環部に係合して前記外環部に対する前記内環部の相対回動を係止阻止する回動阻止係止部を設けて、前記タレットに対して前記係脱用スライド係止部を前記クラッチ係脱用空圧スライド機構によりスライドさせることで、前記回動阻止係止部を前記内環部及び外環部に係合して前記タレットを割出し位置に係止固定してクラッチ状態とするように構成したことを特徴とする請求項3記載の工作機械の自動旋回型タレット装置。
【請求項5】
前記タレット台に旋回軸部を設け、この旋回軸部を軸にして前記タレット台に対して前記タレットを旋回自在に構成し、この旋回軸部に張出部を設け、この張出部の一側外面と反対側外面との双方と前記タレットの内面との間に、前記タレットの旋回軸方向のスライドにより広狭する互いに隔絶した間隙が形成されるように構成して、前記タレットの前記張出部を囲む一側内面と張出部の一側外面との前記一方の間隙を前記タレットスライド用圧力室とし、前記タレットの前記張出部を囲む反対側内面と張出部の反対側外面との前記反対側の間隙を前記タレット用スライド間隙とし、前記タレットが囲む前記張出部に前記タレット用空圧スライド駆動機構を設けたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の工作機械の自動旋回型タレット装置。
【請求項6】
前記タレット台に旋回軸部を設け、この旋回軸部を軸にして前記タレット台に対して前記タレットを旋回自在に構成し、前記旋回軸部を中空構造とし、この旋回軸部内に前記タレットのスライドと共にスライドするスライド軸部を設け、このスライド軸部の基端部に前記クサビ係合部を設ける、又はこのスライド軸部の基端部にクサビ係合部形成部を設け、このクサビ係合部形成部と前記タレット台若しくは前記旋回軸部の基端部とで前記クサビ係合部を設けて、クサビ係合部をタレットと共にスライド自在若しくはタレットのスライドにより広狭するように前記クサビ機構を構成したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の工作機械の自動旋回型タレット装置。
【請求項7】
前記クサビ駆動装置をエアシリンダ装置で構成して、前記クラッチ装置の係脱を行なう前記クラッチ係脱用空圧スライド機構及び前記タレットのスライド駆動を行う前記タレット用空圧スライド駆動機構及び前記クサビ機構の前記クサビ部の駆動のいずれもエア供給装置から送り込まれるエアによる空圧駆動としたことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の工作機械の自動旋回型タレット装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−96324(P2012−96324A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−246353(P2010−246353)
【出願日】平成22年11月2日(2010.11.2)
【出願人】(391029819)株式会社オーエム製作所 (34)
【Fターム(参考)】