説明

工作機械用トランスファーテーブル装置

【課題】汎用性と簡易な構成を確保した上で、簡易なワーク取扱い作業により工作機械に対する高精度の位置決め給排処理を含むワークハンドリングを可能とする工作機械用トランスファーテーブル装置を提供する。
【解決手段】トランスファーテーブル装置は、搬送パレット2、ガイドウエー3、ストレッチアーム4等を備えて構成され、上記ストレッチアーム4は、ガイドウエー3の側方に対して伸縮動作する伸縮アーム31と、この伸縮アーム31に一体固定されて搬送パレット2を受け入れ支持するパレット支持座32と、このパレット支持座32の進退位置と連動して係脱動作するフック部34c、34dを有するスライドフック34とを備えるとともに、このスライドフック34が係合して拘束固定するためのアンカーピン14を搬送パレット2の下面に突出形成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワーク投入作業用の作業台として機能するとともに目的の工作機械等に対して定位置にワークを供給するためのハンドリングマシンとして機能する工作機械用トランスファーテーブル装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械でワークを加工する際は、工作機械の加工工程に合わせたタイミングでその取込み位置にワークを配置し、また、取出すようにハンドリングするワーク給排機構を設けることにより能率良く加工処理することができる。特に、ワークを多工程加工するいわゆるNC機と略称される数値制御式工作機械によって加工処理する場合は、自動供給機構を設けることにより、ワークの供給から完成品の取出しまでの全工程を効率よく自動処理することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、ワークの供給は、工作機械に応じて所定の受け渡し位置に供給するとともに、工作機械の動作と協調してワーク給排動作をする必要があり、また、ワークの種類に応じたハンドリング動作が必要となる。したがって、そのための自動供給機構は工作機械とワークの種類に応じた専用機として構成し、または、ロボット装置とせざるを得ず、その多大なコスト負担により適用条件が限定されることから、多工程加工による数値制御式工作機械の特長を生かし切れないという問題を内包していた。
【0004】
本発明の目的は、工作機械に対する高精度の位置決め給排処理を含むマシン連動ハンドリングを可能とするとともに、簡易な取扱い作業によって多様な形態のワークに幅広く適用できる汎用性を確保することができる簡易な構成の工作機械用トランスファーテーブル装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1の発明は、移送するべきワークを位置決め可能に保持する複数の共通形状の搬送パレットと、この搬送パレットをその投入作業位置から順送り可能に案内支持するガイドウエーと、このガイドウエーと接続することにより搬送パレットを受け入れるとともに同ガイドウエーの側方の所定の外部位置まで伸縮動作することによって搬送パレットを移動させるストレッチアームとを備える工作機械用トランスファーテーブル装置において、上記ストレッチアームは、ガイドウエーの側方に対して伸縮動作可能に設けた伸縮アームと、この伸縮アームに一体固定されてガイドウエーから搬送パレットを受け入れ支持するパレット支持座と、このパレット支持座の進退位置と連動してスライド動作することにより係脱動作するフック部を有するスライドフックとを備えるとともに、このスライドフックが係合して拘束固定するためのアンカーピンを搬送パレットの下面に突出形成したことを特徴とする。
【0006】
上記ストレッチアームは、収縮時にはパレット支持座がガイドウエーと接続して搬送パレットを受け入れ支持し、また、パレット支持座の進退動作と連動してスライドフックがスライド動作することによりそのフック部がアンカーピンと係合して搬送パレットがパレット支持座に拘束固定される。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の構成において、前記ガイドウエーは、複数個の搬送パレットを連接配置が可能な連接行程部を複数連結して周回送り可能に構成し、各連接行程部の送り動作の基端位置に搬送パレットの隣接間距離を送り駆動する隣接移送部材を設け、この隣接移送部材は、その送り方向動作により搬送パレットに作用して隣接位置まで移動させる作用ロッドを備えるとともに、この作用ロッドの送り方向動作による作用を受けるための当接部を同搬送パレットの下面に形成したことを特徴とする。
上記隣接移送部材は、その送り方向動作により作用ロッドが搬送パレットの当接部に作用して連接行程部の基端位置から隣接位置まで同搬送パレットを移動させる。
【発明の効果】
【0008】
請求項1のトランスファーテーブル装置の搬送パレットは、ワークを取付けたままガイドウエーに沿って順送り可能に案内支持され、このガイドウエーに介設するストレッチアームの伸縮動作によって側方の所定位置との間を搬送され、この場合において、ストレッチアームの収縮時は搬送パレットを受け入れ支持し、また、パレット支持座の進退動作と連動して搬送パレットがスライドフックによってパレット支持座に拘束固定されることから、ワークを位置決め支持した搬送パレットを作業者がガイドウエー上に載せるだけでストレッチアームのパレット支持座に固定され、所定位置に搬送パレットが移動されるので、簡易な構成で汎用性に優れるトランスファーテーブル装置により、工作機械に対する作業者の介入を要することなく、高精度の位置決めを含むワークハンドリングが可能となる。
【0009】
請求項2のトランスファーテーブル装置の上記隣接移送部材は、その送り方向動作により作用ロッドが搬送パレットの当接部に作用して連接行程部の基端位置から隣接位置まで同搬送パレットを移動させることから、連接行程部の移動先端位置を空席として搬送パレットを連接して配列することにより、一連の搬送パレットがそれぞれの隣接位置まで順送りされてその押出移動行程の基端位置が空席となり、この空席位置を移動先端として接続する連接行程部について同様に送り動作を順次繰り返すことにより、各連接行程部によって周回構成されるガイドウエー上の全ての搬送パレットがその隣接位置まで送り動作される。
【0010】
したがって、上記トランスファーテーブル装置は、ガイドウエーに設けた隣接移送部材による簡易な送り駆動手段により、高度の送り制御処理を要することなく、空席センサー等による簡易な制御処理によって搬送パレットを確実に順次周回送りすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上記技術思想に基づいて具体的に構成された実施の形態について以下に図面を参照しつつ説明する。
図1はトランスファーテーブル装置(伸張時)の平面図、図2はその収縮時の縦断側面図である。
トランスファーテーブル装置1は、ワークWを搬送する複数の搬送パレット2…と、この搬送パレット2…をその投入作業位置から搬送先の目的位置を経て周回案内するべくテーブル状に構成したガイドウエー3と、このガイドウエー3に介設してその側方に搬送パレット2を移動させるべく大ストロークEの伸縮動作をするストレッチアーム4等により構成され、据付脚5…により高さ調節可能に支持する。
【0012】
上記搬送パレット2は、正方形等の所定の共通形状に形成し、上面にワークWの位置決め部材を固定するための平行逆T溝11を備え、下面にボールキャスター等の転動支持手段12…を備えて方向を問わずガイドウエー3に従って移動可能に構成するとともに、後述の当接部13a、13b、アンカーピン14…等を下面に備える。
【0013】
(ガイドウエー)
上記ガイドウエー3は、搬送パレット2の転動支持手段12…を受ける案内溝21を長手方向に形成した梁状のガイドビーム22を平行配置して搬送パレット2の案内路を構成し、この案内路は搬送パレット2を複数個連接配置しうる長さの連接行程部Lを単位とし、この連接行程部Lの行程端部でその側方から搬送パレット2が移行可能に連結して周回可能に構成する。各連接行程部Lの一方の行程端部を基端位置とし、この基端位置にそれぞれ搬送パレット2の隣接間距離Sを送り駆動する隣接移送部材23を設ける。
【0014】
隣接移送部材23は、ガイドウエー3の要部拡大縦断面図を図3に示すように、エアシリンダ等のアクチュエータによる進退駆動部23aによって進退可能に支持し、その送り方向動作により搬送パレット2に作用して隣接位置まで移動させる作用ロッド24を設ける。この作用ロッド24は、その先端部を前上がりに傾斜するとともに下降復帰可能に弾性支持することにより、後退動作行程で作用回避可能なラチェット式に構成する。
【0015】
この作用ロッド24の前進動作による作用を受けるために、搬送パレット2の下面に上記当接部13a、13bを突出して前後一組として係合当接可能に形成する。これら前後の当接部13a、13bは、作用ロッド24の2回の進退動作で順次係合当接して搬送パレット2を隣接位置まで移動させるために、全ての作用ロッド24の進退線について前後の位置に配置する。
【0016】
すなわち、前側の当接部13aは、搬送パレット2の略中央部で、搬送パレット2が連接行程部Lの基端位置にその側方から進入した際に作用ロッド24と干渉することのない関係位置に配置し、後側の当接部13bは、搬送パレット2の後縁寄りに所定距離を隔てて配置する。この所定距離は搬送パレット2の隣接位置までの半分に設定することにより、進退駆動部23aの2回の繰り返し進退動作によって搬送パレット2を隣接位置まで移動させることができる。
【0017】
このように隣接移送部材23を構成することにより、送り方向動作の際にその作用ロッド24が搬送パレットの当接部13a、13bに作用して連接行程部Lの基端位置から搬送パレット2を隣接位置まで移動させることから、連接行程部Lの先端位置を空席として搬送パレット2を連接して配列することにより、一連の搬送パレット2,2がそれぞれの隣接位置まで一体的に押出されてその基端位置が空席となり、この空席位置を移動先端として接続する連接行程部Lについて同様の送り動作を順次繰り返す簡易な動作制御により、各連接行程部Lによって周回構成されるガイドウエー3上の全ての搬送パレット2…がその隣接位置まで送り動作される。
【0018】
(ストレッチアーム)
上記ストレッチアーム4は、その要部拡大縦断面図を図4に示すように、エアシリンダ等の大ストロークの進退駆動部31aを備えてガイドウエー3の側方に対して伸縮動作可能に設けた伸縮アーム31と、この伸縮アーム31に一体固定されてガイドウエー3から受け入れた搬送パレット2を支持するパレット支持座32と、このパレット支持座32に対してスライド動作することにより搬送パレット2を拘束するスライドフック34を設ける。
【0019】
パレット支持座32は、ガイドウエー3を横断する位置で搬送パレット2の外形に合わせた大きさに構成し、かつ、ガイドウエー3と接続する案内溝32a,32aを備える。また、パレット支持座32には、スライドフック34を進退動作可能にスライド支持するスライド板36とガイドピン36a、36aを備える。
【0020】
スライドフック34は、略U字状断面に形成して底部34aをパレット支持座32のスライド板36上に摺接支持し、その前後の立上がり部34b、34bの上端にスライド動作によって係脱動作可能なフック部34c,34dを備える。また、前後の立上がり部34b、34bに伸縮アーム31の収縮検出に応じて突出動作する突張り棒等による検出ロッド37aと復帰用のリターンスプリング37bを設ける。
【0021】
このスライドフック34のスライド動作によってフック部34c,34dが係合当接するように搬送パレット2の下面から逆T字状の上記アンカーピン14,14を突設する。このアンカーピン14,14は、伸縮アーム31の伸縮方向に搬送パレット2の中心から等距離で、かつ、搬送パレット2の全ての案内方向について干渉しない位置に配置することにより、搬送パレット2の方向性に依ることなく、スライドフック34のスライド動作位置に応じてを搬送パレット2を拘束または解放することができる。
【0022】
上記構成のストレッチアーム4は、パレット支持座32がガイドウエー3と接続して搬送パレット2を受け入れ支持し、伸縮アーム31伸張時はパレット支持座32の進退動作と連動してスライドフック34がスライド動作することによりそのフック部34c,34dがアンカーピン14,14と係合して搬送パレット2がパレット支持座32に拘束固定される。また、伸縮アーム31の収縮時は、検出ロッド37aの突出動作によってスライドフック34を押出し、フック部34c,34dがアンカーピン14,14の拘束を解除して搬送パレット2がガイドウエー3に沿って移動可能となる。
【0023】
(作用効果)
上述のように構成されるトランスファーテーブル装置は、ガイドウエー3上に置いた搬送パレット2が隣接移送部材23によってガイドウエー3に沿って順送り可能に案内支持され、また、取り出すことができ、このガイドウエー3と接続するストレッチアーム4の伸縮動作によって同ガイドウエー3の側方の所定位置との間で移動され、この場合において、搬送パレット2がパレット支持座32の進退位置と連動してスライドフック34によって拘束固定される。
【0024】
したがって、NC工作機械のMコードによるユーザー定義指令等によってストレッチアーム4を伸縮制御することにより、作業者がワークWを保持した搬送パレット2を投入、取出しの操作をするだけで搬送パレットが搬送され、ストレッチアーム4が所定の外部位置で高精度の給排動作を行うことができるので、簡易な構成で汎用性に優れるトランスファーテーブル装置により、工作機械に対する作業者の直接介入を要することなく、高精度の位置決めを含むワークハンドリングが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】トランスファーテーブル装置(伸張時)の平面図である。
【図2】トランスファーテーブル装置(収縮時)の縦断側面図である
【図3】ガイドウエーの要部拡大縦断面図である。
【図4】ストレッチアームの要部拡大縦断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 トランスファーテーブル装置
2 搬送パレット
3 ガイドウエー
4 ストレッチアーム
12 転動支持手段
13a、13b 当接部
14 アンカーピン
21 案内溝
22 ガイドビーム
23 隣接移送部材
24 作用ロッド
31 伸縮アーム
32 パレット支持座
32a,32a 案内溝
34 スライドフック
34c,34d フック部
34b 立ち上がり部
37a 検出ロッド
37b リターンスプリング
E ストローク
L 連接行程部
S 隣接間距離
W ワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移送するべきワーク(W)を位置決め可能に保持する複数の共通形状の搬送パレット(2)と、この搬送パレット(2)をその投入作業位置から順送り可能に案内支持するガイドウエー(3)と、このガイドウエー(3)と接続することにより搬送パレット(2)を受け入れるとともに同ガイドウエー(3)の側方の所定の外部位置まで伸縮動作することによって搬送パレット(2)を移動させるストレッチアーム(4)とを備える工作機械用トランスファーテーブル装置において、
上記ストレッチアーム(4)は、ガイドウエー(3)の側方に対して伸縮動作可能に設けた伸縮アーム(31)と、この伸縮アーム(31)に一体固定されてガイドウエー(3)から搬送パレット(2)を受け入れ支持するパレット支持座(32)と、このパレット支持座(32)の進退位置と連動してスライド動作することにより係脱動作するフック部(34c、34d)を有するスライドフック(34)とを備えるとともに、このスライドフック(34)が係合して拘束固定するためのアンカーピン(14)を搬送パレット(2)の下面に突出形成したことを特徴とする工作機械用トランスファーテーブル装置。
【請求項2】
前記ガイドウエー(3)は、複数個の搬送パレット(2)を連接配置が可能な連接行程部(L)を複数連結して周回送り可能に構成し、各連接行程部(L)の送り動作の基端位置に搬送パレット(2)の隣接間距離(S)を送り駆動する隣接移送部材(34)を設け、この隣接移送部材(34)は、その送り方向動作により搬送パレット(2)に作用して隣接位置まで移動させる作用ロッド(24)を備えるとともに、この作用ロッド(24)の送り方向動作による作用を受けるための当接部(13a、13b)を同搬送パレット(2)の下面に形成したことを特徴とする請求項1記載の工作機械用トランスファーテーブル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−264932(P2008−264932A)
【公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111442(P2007−111442)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第3項適用申請有り 平成18年11月1日〜8日 社団法人 日本工作機械工業会、株式会社 東京ビッグサイト主催の「JIMTOF2006(第23回日本国際工作機械見本市)」に出品
【出願人】(505209625)株式会社キャプテン インダストリーズ (4)
【Fターム(参考)】