説明

工作機械

【課題】工作物の変更による治具装置の段取り替えに要する時間を短縮することが可能な工作機械を提供することを目的とする。
【解決手段】工作機械1は、圧油を供給する油圧ポンプ30と、工作物Wを位置決めする治具プレート22と、治具プレート22を着脱可能に保持し、加工時において工具3に対して相対移動する治具ベース21と、治具ベース21に対する治具プレート22の着脱動作を行う油圧シリンダ31と、油圧ポンプ11の圧油を蓄圧し油圧シリンダ31に圧油を供給するアキュムレータ32と、外力によって切り換えられることにより、アキュムレータ32の圧油を油圧シリンダ31に供給し油圧シリンダ31による着脱動作を制御する手動バルブ33と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧により工作物を位置決めする治具装置を備える工作機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工作機械は、加工用の治具装置によりテーブルに対して固定された工作物を加工している。このような工作機械において、目標形状の異なる加工を行う場合に、工作物の変更に伴うワーククランプなどの治具装置の段取り換えが必要となり、多くの時間を要することがある。そこで、特許文献1には、ワーククランプを有する治具プレートをテーブルに固定された治具ベースにボルト締結する治具装置が記載されている。このような構成により、段取り替えを簡易化し、工作物の変更に要する時間の短縮を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−230942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、治具プレートを治具ベースにボルト締結する場合には、段取り替えの際に複数のボルトを緩めて治具プレートを交換し、再び締付ける時間が必要となる。また、手動によりボルト締結の作業を行う場合には、各ボルトにおける締付けトルクの不一致や繰り返し交換による精度低下などが懸念される。
【0005】
また、治具装置の段取り換えにおいて手作業による操作を必要とする場合には、一般に安全上の観点から設備が停止状態となる。そのため、油圧ポンプなどの動力源を使用できないため、治具装置は、上述したようにボルト締結を使用したものとなり、段取り換えに多くの時間を要する原因となっていた。
【0006】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、工作物の変更による治具装置の段取り替えに要する時間を短縮することが可能な工作機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の特徴は、
圧油を供給する油圧ポンプと、
工作物を位置決めする治具プレートと、
前記治具プレートを着脱可能に保持し、加工時において工具に対して相対移動する治具ベースと、
前記治具ベースに対する前記治具プレートの着脱動作を行う油圧シリンダと、
前記油圧ポンプの圧油を蓄圧し前記油圧シリンダに圧油を供給するアキュムレータと、
外力によって切り換えられることにより、前記アキュムレータの圧油を前記油圧シリンダに供給し前記油圧シリンダによる前記着脱動作を制御する手動バルブと、
を備えることである。
【0008】
請求項2に係る発明の特徴は、請求項1において、前記アキュムレータおよび前記手動バルブは、前記治具ベースにそれぞれ配置され、前記治具ベースの内部に形成された内部流路により連通していることである。
【0009】
請求項3に係る発明の特徴は、請求項1または2において、前記油圧シリンダの前記着脱動作は、前記油圧シリンダに圧油が供給された場合に前記治具ベースに対して前記治具プレートが取り外されるアンクランプ状態とし、前記油圧シリンダから圧油が排出された場合に前記治具ベースに対して前記治具プレートが取付けられるクランプ状態となるように動作することである。
【0010】
請求項4に係る発明の特徴は、請求項1または2において、前記油圧シリンダの前記着脱動作は、前記油圧シリンダに圧油が供給された場合に前記治具ベースに対して前記治具プレートが取付けられるクランプ状態とし、前記油圧シリンダから圧油が排出された場合に前記治具ベースに対して前記治具プレートが取り外されるアンクランプ状態となるように動作することである。
【0011】
請求項5に係る発明の特徴は、請求項1〜4の何れか一項において、前記アキュムレータの蓄圧状態を検知する検知手段と、前記検知手段により検知された前記蓄圧状態に基づいて前記油圧ポンプの稼働状態を制御するポンプ制御手段と、をさらに備えることである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によると、治具装置は、油圧シリンダによる着脱動作によって治具ベースに対して治具プレートを着脱する構成となっている。この油圧シリンダは、油圧ポンプから供給される圧油を蓄圧するアキュムレータから圧油を供給される。そして、手動バルブが油圧シリンダへ圧油を供給することで、油圧シリンダによる着脱動作を制御している。
【0013】
このように、工作物を固定するワーククランプなどの位置決め部材が予め配置された治具プレートを治具ベースに対して着脱するので、治具装置の段取り換えに要する時間を大幅に短縮することができる。また、油圧シリンダによる着脱動作で治具ベースに対して治具プレートが固定されるので、治具ベースにボルト締結により着脱する場合と比較して、段取り換えにおける作業負荷を軽減しつつ、段取り換え時間を短縮し確実に治具プレートを固定することができる。
【0014】
また、油圧シリンダはアキュムレータに蓄圧された圧油を供給される。これにより、油圧ポンプが稼働していない設備停止状態においても油圧シリンダによる着脱動作を手動バルブにより制御することができる。即ち、手動バルブの切換えにより、治具ベースに対する治具プレートの着脱の状態を切換えることができる。さらに、油圧シリンダによる着脱動作を制御するバルブは、外力により切り換え可能な手動バルブである。つまり、治具装置の段取り替えにおいて、作業者は直接手動バルブの操作レバーなどにより切り換え操作を行うことができる。
【0015】
請求項2に係る発明によると、アキュムレータおよび手動バルブは、治具ベースにそれぞれ配置される構成となっている。そして、両部材は、治具ベースに形成された内部流路により連通している。この内部流路は、アキュムレータから手動バルブを介し、さらに油圧シリンダまで連通させるものとしてもよい。ここで、例えば、治具ベースの外部に設けられる外部配管では、配管内の圧力が高圧になり配管が膨張変形することがある。この場合、配管内の容積が大きくなることから配管内の圧力が低下し、バルブより先に供給される圧油の圧力が低下することになる。これに対して、治具ベースの内部流路は、治具ベースに直接形成されるため、圧油の供給時において流路内の圧力が高圧になっても流路の断面形状がほとんど変化しない。これにより、治具ベースの外部に設けられる外部配管と比較して、バルブより先に供給される圧油の圧力が低下することを防止できる。
【0016】
請求項3に係る発明によると、油圧シリンダによる着脱動作は、油圧シリンダに圧油が供給された場合にアンクランプ状態とし、圧油が排出された場合にクランプ状態となるように動作する構成となっている。つまり、治具装置の段取り換えにおいて、油圧シリンダには、治具プレートを取り外す際に圧油が供給される。これにより、アキュムレータに蓄圧された圧油を有効に利用することができる。また、加工時におけるクランプ状態では、例えば、内蔵するバネなどを利用して確実に治具プレートを固定することができる。
【0017】
請求項4に係る発明によると、油圧シリンダによる着脱動作は、油圧シリンダに圧油が供給された場合にクランプ状態とし、圧油が排出された場合にアンクランプ状態となるように動作する構成となっている。つまり、治具装置の段取り換えにおいて、油圧シリンダには、治具プレートを取付ける際に圧油が供給される。これにより、加工時においては、少なくとも必要最小限のクランプ力により治具ベースに対して治具プレートをクランプさせることができる。よって、治具装置の種々の態様に適用し、治具プレートの着脱動作を行うことができる。
【0018】
請求項5に係る発明によると、工作機械は、ポンプ制御手段がアキュムレータの蓄圧状態に基づいて油圧ポンプの稼働状態を制御する構成となっている。治具装置の油圧シリンダは、アキュムレータにより圧油を供給されるため設備停止状態においても着脱動作を行うことができる。また、油圧シリンダによる着脱動作によってアキュムレータの圧力が低下した場合に、検知手段が蓄圧状態を検知し、設備稼働時にポンプ制御手段によりアキュムレータに所定圧力まで蓄圧するように油圧ポンプの稼働状態を制御することができる。これにより、次回以降の段取り換えにおいて、油圧シリンダによる着脱動作に備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】工作機械1の全体図である。
【図2】治具装置20の全体図である。
【図3】クランプ状態の油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の工作機械を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
<実施形態>
(工作機械1の構成)
本実施形態の工作機械1について、図1〜図3を参照して説明する。工作機械1は、圧油を供給するポンプユニット10と、治具装置20を備える。この治具装置20は、油圧ユニット30と、工作物Wを位置決めするワーククランプ40を有する。この工作機械1は、数値制御装置2からの制御信号により工具3とテーブルに位置決めされた工作物Wを相対移動させて工作物Wを加工する。この数値制御装置2は、主としてCPUとメモリから構成される。そして、数値制御装置2は、入力されたNCデータに基づいて、工作機械1の主軸および送り軸を含む駆動軸を制御するための制御信号を出力する。また、このNCデータは、CAD等によって作成された工作物Wの目標形状データをCAMにより変換されたデータである。つまり、NCデータには、工具の座標値、工具番号、回転速度、送り速度等の制御データが含まれている。
【0021】
ポンプユニット10は、図1,図3に示すように、油圧ポンプ11と、モータ12と、駆動回路13と、タンク14、供給管15を備える。油圧ポンプ11は、モータ12が回転駆動することにより圧油を供給するポンプである。また、モータ12は、その回転数などを駆動回路13により制御されている。駆動回路13は、数値制御装置2による制御信号または、後述する圧力計36からの出力信号などに基づいて、モータ12の回転数などの駆動状態を制御している。この駆動回路13は、本発明における「ポンプ制御手段」に相当するものである。このように、駆動回路13は、モータ12を制御することにより、油圧ポンプ11の稼働状態を制御している。
【0022】
また、ポンプユニット10は、油圧ポンプ11と連結されたタンク14に圧油を貯留している。供給管15は、給油管15aおよび排油管15bを有し、油圧ポンプ11と治具装置20の治具ベース21とを連結している。給油管15aは、治具ベース21の給油側の連結ポートに接続され、油圧ポンプ11による圧油を治具ベース21に供給している。排油管15bは、治具ベース21の排油側の連結ポートに接続され、治具ベース21から排される圧油をタンク14に戻している。
【0023】
治具装置20は、治具ベース21と、治具プレート22と、基準シート23と、プレートクランプ24と、油圧ユニット30と、ワーククランプ40を備える。この治具装置20は、ポンプユニット10により供給される圧油を利用して工作物Wを治具ベース21に対して位置決めするものである。治具ベース21は、治具プレート22を着脱可能に保持し、加工時において工作機械1の送り軸により工具3に対して相対移動する治具装置20の基準台である。この治具ベース21は、工作機械1のテーブルに直接もしくはパレットを介して取付けられる。そして、治具ベース21には、治具プレート22をクランプするための機構を構成するものとして、プレートクランプ24および油圧ユニット30が配置されている。
【0024】
治具プレート22は、その上面に載置された工作物Wをワーククランプ40により支持する板状部材である。また、工作物Wの変更およびそれに伴うワーククランプ40の変更を行う、いわゆる段取り換えの際に、治具プレート22は、ワーククランプ40とともに治具ベース21に対して着脱交換されるようになっている。基準シート23は、図2に示すように、治具ベース21の上面において複数箇所に設けられるシート状部材である。この基準シート23は、治具プレート22を治具ベース21にクランプする際に、治具プレート22の下面に設けられた基準面と当接する。これにより、治具プレート22は治具ベース21に対してそのZ軸方向(図1の上下方向)が位置決めされる。
【0025】
プレートクランプ24は、治具ベース21の上面に複数立設されるクランプ部材である。プレートクランプ24の上部は、治具プレート22の下面に設けられた筒状部に挿入される。これにより、治具プレート22は、治具ベース21にクランプされる際に、治具ベース21に対してそのX軸方向(図1の左右方向)およびY軸方向(図1の前後方向)が位置決めされる。そして、プレートクランプ24は、その治具プレート22の下面に設けられた筒状部に挿入された上部が、治具プレート22と係合し、油圧ユニット30によって引き込まれることにより、治具プレート22を治具ベース21に対してクランプする。このように、プレートクランプ24は、治具ベース21に対して工作物Wを間接的に位置決めする部材である。
【0026】
油圧ユニット30は、図3に示すように、油圧シリンダ31と、アキュムレータ32と、手動バルブ33と、逆止弁34と、安全弁35と、圧力計36から構成され、治具ベース21にそれぞれ配置されている。油圧ユニット30は、ポンプユニット10から供給される圧油を利用して、プレートクランプ24により治具ベース21と治具プレート22をクランプ/アンクランプするものである。
【0027】
ここで、治具ベース21には、圧油が流通可能な内部流路21aが形成されている。上述したように、治具ベース21は、供給管15により油圧ポンプ11と連結され、圧油が供給される。そこで、この内部流路21aにより、治具ベース21に配置された油圧シリンダ31、アキュムレータ32、および、手動バルブ33を連結している。具体的には、内部流路21aの供給側は、供給管15の給油管15aと連結する治具ベース21の連結ポートから油圧シリンダ31までをアキュムレータ32および手動バルブ33を介して連結している。内部流路21aの排油側は、油圧シリンダ31から供給管15の排油管15bと連結する治具ベース21の連結ポートまでを手動バルブ33を介して連結している。
【0028】
油圧シリンダ31は、治具ベース21に複数埋設され、何れも治具ベース21の内部流路21aにより圧油の給排が可能となっている。この油圧シリンダ31は、圧油を供給された場合に内蔵するバネの弾性力に抗して図示しないピストンを上昇させ、圧油を排出するとバネの弾性力によりピストンを下降させる単動シリンダである。また、複数の油圧シリンダ31のピストンは、治具ベース21に配置された複数のプレートクランプ24とそれぞれ連結されている。
【0029】
これにより、プレートクランプ24は、油圧シリンダ31から圧油が排出されてバネの弾性力によりピストンが降下することにより、治具プレート22をクランプする。また、プレートクランプ24は、油圧シリンダ31に圧油が供給されてピストンが上昇することにより、治具プレート22を僅かに押し上げてアンクランプする。このように、プレートクランプ24は、油圧シリンダ31の作動により治具プレート22をクランプ/アンクランプし、これにより治具ベース21に対して工作物Wを間接的に位置決めしている。
【0030】
アキュムレータ32は、油圧ポンプ11の圧油を蓄圧する蓄圧器である。このアキュムレータ32は、治具ベース21の内部流路21aの供給側により油圧シリンダ31と連結されている。これにより、アキュムレータ32は、油圧ポンプ11が停止状態にある場合においても油圧シリンダ31のピストンを上昇させる圧油の供給を可能としている。
【0031】
手動バルブ33は、油圧回路における治具ベース21の内部流路21a上に配置され、外力により切り替え可能な手動の切替弁である。つまり、この手動バルブ33は、操作レバーを作業者が手動で操作することにより、油圧シリンダ31における圧油の給排を切り換えることが可能となっている。手動バルブ33によりアキュムレータ32の圧油を油圧シリンダ31に供給された場合、油圧シリンダ31のピストンが上昇し治具プレート22がアンクランプされる。一方で、手動バルブ33により油圧シリンダ31の圧油が排出された場合、油圧シリンダ31のピストンがバネの弾性力により下降し治具プレート22がクランプされる。このように、手動バルブ33は、手動で操作レバーを操作されることにより、油圧シリンダ31による着脱動作を制御するものである。
【0032】
逆止弁34は、図3に示すように、油圧回路において、供給管15の給油管15aと連結する治具ベース21の連結ポートと、アキュムレータ32との間に設けられている。この逆止弁34は、ポンプユニット10側から油圧シリンダ31およびアキュムレータ32側へ圧油が自由に流れるように設定されている。また、逆止弁34は、油圧ポンプ11が停止状態となり圧油の供給がなくなった場合に、アキュムレータ32に蓄圧された圧油が給油管15aを逆流しないように圧油の流れを制限している。
【0033】
安全弁35は、アキュムレータ32と、供給管15の排油管15bと連結する治具ベース21の連結ポートとの間に設けられている。この安全弁35は、治具ベース21の内部流路21aが所定以上の圧力となった場合に、圧油を排するリリーフ弁である。これにより、油圧回路内の圧力が異常に高圧となることを防止し、油圧回路における各部材および流路を保護している。
【0034】
圧力計36は、アキュムレータ32と手動バルブ33の間に設けられ、治具ベース21の内部流路21aにおける圧油の圧力を検知するセンサである。この圧力計36は、アキュムレータ32の蓄圧状態を検知するものであり、本発明の「検知手段」に相当する。また、圧力計36は、検知した圧力に応じた信号をポンプユニット10の駆動回路13に出力する。これにより、稼働状態にあるポンプユニット10は、油圧ユニット30のアキュムレータ32が圧油の供給を必要としているかを判定する。また、ポンプユニット10の駆動回路13は、圧力計36の出力信号に基づいて、例えば、油圧ポンプ11の回転数を低減、または、油圧ポンプ11を運休状態に切り換えるなどの制御を行うことが可能となる。
【0035】
上述したように、治具装置20は、油圧ユニット30の作動により治具プレート22をプレートクランプ24によりクランプする。これにより、治具装置20は、工作物Wを治具ベース21に対して位置決めしている。また、治具ベース21に設けられたアキュムレータ32および手動バルブ33は、治具ベース21の内部に形成された内部流路21aにより連通しているものである。
ワーククランプ40は、工作物Wを治具プレート22に対して位置決め固定する公知のクランプ装置である。
【0036】
(工作機械1による効果)
上述した工作機械1によると、治具装置20は、油圧シリンダ31による着脱動作によって治具ベース21に対して治具プレート22を着脱する構成となっている。これにより、ボルト締結により治具ベース21に対して治具プレート22を着脱する場合と比較して、治具の交換が必要となる段取り換えに要する時間を大幅に短縮することができる。
【0037】
また、油圧シリンダ31は、アキュムレータ32に蓄圧された圧油を供給される。これにより、油圧ポンプ11が稼働していない設備停止状態において、油圧シリンダ31は治具プレート22のアンクランプに必要な圧油をアキュムレータ32から供給されて作動することができる。つまり、治具装置20における治具プレート22の着脱動作を手動バルブ33により制御し、設備停止状態においても治具装置20のクランプ/アンクランプの操作を行うことができる。
【0038】
さらに、治具装置20における油圧シリンダ31による着脱動作を制御するバルブは、外力により切り換え可能な手動バルブ33である。つまり、治具装置20の段取り替えにおいて、作業者は直接手動バルブ33の操作レバーにより切り換え操作を行うことができる。
【0039】
アキュムレータ32および手動バルブ33は、治具装置20の治具ベース21にそれぞれ配置される構成となっている。そして、両部材は、治具ベース21に形成された内部流路21aにより連通している。ここで、例えば、治具ベース21の外部に設けられる外部配管では、配管内の圧力が高圧になり配管が膨張変形することがある。この場合、配管内の容積が大きくなることから配管内の圧力が低下し、油圧シリンダに供給される圧油の圧力が低下することになる。
【0040】
これに対して、内部流路21aは、治具ベース21に直接形成されるため、圧油の供給時において流路内の圧力が高圧になっても流路の断面形状がほとんど変化しない。これにより、治具ベース21の外部に設けられる外部配管と比較して、手動バルブ33より先に位置する油圧シリンダ31に供給される圧油の圧力が低下することを防止できる。
【0041】
治具装置20は、工作物Wを支持する治具プレート22を治具ベース21にクランプすることにより、工作物Wを治具ベース21に対して間接的に位置決めしている。治具装置20は、油圧シリンダ31の着脱動作により治具プレート22をクランプ/アンクランプするものである。このように、アキュムレータ32に蓄圧された圧油により作動する油圧シリンダ31を備える油圧ユニット30を治具装置20に適用している。これにより、設備停止状態においても治具装置20を手動バルブ33により操作することができる。
【0042】
また、油圧シリンダ31による着脱動作は、油圧シリンダ31に圧油が供給された場合にクランプ状態とし、圧油が排出された場合にアンクランプ状態となるように動作する構成となっている。これにより、アキュムレータ32に蓄圧された圧油を有効に利用することができる。また、加工時におけるクランプ状態では、内蔵するバネの弾性力を利用して確実に治具プレート22を固定することができる。
【0043】
工作機械1は、ポンプ制御手段である駆動回路13がアキュムレータ32の蓄圧状態に基づいて油圧ポンプ11の稼働状態を制御する構成となっている。治具装置20の油圧シリンダ31は、アキュムレータ32により圧油を供給されるため設備停止状態においても着脱動作を行うことができる。また、油圧シリンダ31による着脱動作によってアキュムレータ32の圧力が低下した場合に、圧力計36が蓄圧状態を検知し、設備稼働時に駆動回路13によりアキュムレータ32に所定圧力まで蓄圧するように油圧ポンプ11の稼働状態を制御することができる。これにより、次回以降の段取り換えにおいて、油圧シリンダ31による着脱動作に備えることができる。
【0044】
<実施形態の変形態様>
上述した実施形態において、油圧シリンダ31の着脱動作は、圧油を供給された場合にアンクランプ状態とし、圧油を排出された場合にクランプ状態となるように動作するものとした。これに対して、油圧シリンダ31の着脱動作は、圧油を供給された場合に治具ベース21に対して治具プレート22が取付けられるクランプ状態とし、圧油が排出された場合に治具ベース21に対して治具プレート22が取り外されるアンクランプ状態となるように作動するものとしてもよい。
【0045】
このような構成では、例えば、単動シリンダである油圧シリンダ31は、圧油を供給された場合に内蔵するバネの弾性力に抗してピストンを下降させ、圧油を排出するとバネの弾性力によりピストンを上昇させるものである。このように、治具装置20の段取り換えにおいて、油圧シリンダ31には、治具プレート22を取付ける際に圧油が供給される。これにより、加工時においては、少なくとも必要最小限のクランプ力により治具ベースに対して治具プレートをクランプさせることができる。よって、治具装置の種々の態様に適用し、治具プレートの着脱動作を行うことができる。
【0046】
ここで、本態様の油圧シリンダ31の着脱動作では、段取り換えにおけるアンクランプ状態を維持する時間に対して、加工中におけるクランプ状態を維持する時間の方が長時間になる。つまり、本態様では、油圧シリンダ31がアキュムレータ33に蓄圧された圧油を長時間に亘り供給される状態となる。よって、このような圧油を供給する時間を勘案すると、段取り換えにおいてアキュムレータ33に蓄圧された圧油を油圧シリンダ31に供給してアンクランプ状態を維持し、長時間となる加工中はバネの弾性力によりクランプ状態を維持する構成とする方が好ましい。
【符号の説明】
【0047】
1:工作機械、 2:数値制御装置、 3:工具
10:ポンプユニット、 11:油圧ポンプ、 12:モータ
13:駆動回路(ポンプ制御手段)、 14:タンク
15:供給管、 15a:給油管、 15b:排油管
20:治具装置、 21:治具ベース、 21a:内部流路
22:治具プレート、 23:基準シート、 24:プレートクランプ
30:油圧ユニット、 31:油圧シリンダ、 32:アキュムレータ
33:手動バルブ、 34:逆止弁
35:安全弁、 36:圧力計(検知手段)
40:ワーククランプ
W:工作物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧油を供給する油圧ポンプと、
工作物を位置決めする治具プレートと、
前記治具プレートを着脱可能に保持し、加工時において工具に対して相対移動する治具ベースと、
前記治具ベースに対する前記治具プレートの着脱動作を行う油圧シリンダと、
前記油圧ポンプの圧油を蓄圧し前記油圧シリンダに圧油を供給するアキュムレータと、
外力によって切り換えられることにより、前記アキュムレータの圧油を前記油圧シリンダに供給し前記油圧シリンダによる前記着脱動作を制御する手動バルブと、
を備えることを特徴とする工作機械。
【請求項2】
請求項1において、
前記アキュムレータおよび前記手動バルブは、前記治具ベースにそれぞれ配置され、前記治具ベースの内部に形成された内部流路により連通していることを特徴とする工作機械。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記油圧シリンダの前記着脱動作は、前記油圧シリンダに圧油が供給された場合に前記治具ベースに対して前記治具プレートが取り外されるアンクランプ状態とし、前記油圧シリンダから圧油が排出された場合に前記治具ベースに対して前記治具プレートが取付けられるクランプ状態となるように動作することを特徴とする工作機械。
【請求項4】
請求項1または2において、
前記油圧シリンダの前記着脱動作は、前記油圧シリンダに圧油が供給された場合に前記治具ベースに対して前記治具プレートが取付けられるクランプ状態とし、前記油圧シリンダから圧油が排出された場合に前記治具ベースに対して前記治具プレートが取り外されるアンクランプ状態となるように動作することを特徴とする工作機械。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項において、
前記アキュムレータの蓄圧状態を検知する検知手段と、
前記検知手段により検知された前記蓄圧状態に基づいて前記油圧ポンプの稼働状態を制御するポンプ制御手段と、
をさらに備えることを特徴とする工作機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−140073(P2011−140073A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−341(P2010−341)
【出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】