説明

工作機械

好適には充電式のドライバとして構成された、工作機械、特に手持ち式工作機械(1)において、回転モーメント制限ユニット(5)が設けられており、作動モーメントは、係止支持部(6)を介して調節可能であり、係止支持部(6)は、係止ボディ(10)用のばね支持部(13,14)を備えていて、係止ボディ(10)は、軸方向に、最後の伝動装置段(7)としての遊星歯車機構(48)の一部、特に内歯車(8)または遊星キャリヤ(40)に当接し、ばね支持部(13,14)のばねエレメント(16,17)と係止ボディ(10)とは、相互に半径方向に変位して位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械、特に請求項1の上位概念に記載の工作機械、特に手持ち式工作機械に関する。
【0002】
先行技術
充電式ドライバとして構成された手持ち式機械としてのそのような工作機械は、ドイツ連邦共和国特許出願公開第102004058809号明細書において公知である。そこでは多段式の遊星歯車機構を介して工具収容部が駆動される。工具収容部への移行部に、回転モーメント制限ユニットが設けられており、伝達される回転モーメントが設定された調節値を超えると、回転モーメント制限ユニットを介して、モータと工具収容部との間の力の流れが中断される。回転モーメント制限ユニットは、ばね支持部を用いてロックするように作動し、ばね支持部は、遊星歯車機構の遊星キャリヤを通常運転時にハウジングに対する1つの回動位置で固定する。工具収容部に伝達される回転モーメントが調節された制限値を超えると、遊星歯車機構が解放され、工具収容部への力の流れが中断される。
【0003】
公知の構成では、係止支持部が遊星歯車機構に対して包囲するように延びており、ばね支持がコイルばねにより行われ、コイルばね自体はハウジングに対して定位置に支持されていて、遊星キャリヤの、半径方向に突出する縁部への移行部において、相互に接続する係止ディスクに軸方向に荷重を掛け、係止ディスクは、相互に係止され、回転モーメントに関して最大値として設定された制限値を超えない場合に、定位置に固定されている。制限値を超えると、係止ディスクの間の係止による結合は、係止ディスクの軸方向の変位により解消され、工具収容部への回転モーメント伝達が中断される。総じて、遊星歯車機構を軸方向に重畳しつつ遊星歯車機構を包囲する配置構造を有する係止収容部のこのような構成により、回転モーメント制限ユニットの閉じた構造が形成されるが、多様性を制限する工作機械の構造が形成される。
【0004】
公知の別の構成では、回転モーメント制限ユニットは、遊星歯車機構の内歯車に対して軸方向に位置するばね支持部で作動し、ばね支持部を介して、係止ボディが、内歯車の端面に係止するように押圧される。
【0005】
発明の開示
先行技術から出発して、本発明の課題は、特に回転モーメント制限ユニットの短縮により、比較的小さな構造長さを有する工作機械を実現することである。
【0006】
本発明によれば、この課題は、請求項1の特徴部に記載した構成を有する工作機械によって解決される。従属請求項から、好適な別の構成が明らかである。
【0007】
本発明による態様によれば、係止ボディとばね支持部とが相互に変位して配置されており、つまり半径方向に相並んで位置しており、その際好適には、係止ボディは、遊星歯車機構の一部、特に内歯車または遊星キャリヤに支持されている。これにより少なくとも1つのばねエレメントを備えたばね支持部を用いることができ、ばねエレメントは、ブリッジ部材を介して、係止ボディに向かって係止ボディに対して半径方向に変位して支持されており、好適な端面側の支持では、内歯車のリング壁または遊星キャリヤに支持されている。軸方向に短い構造の遊星歯車装置は、軸方向に短く形成された係止支持部と組み合わされ、係止支持部は、ばね支持部に対する係止ボディの半径方向の位置に基づいて、比較的長いばねエレメントの使用を実現し、同様に、回転モーメント制限ユニットのスリムな構造が得られるばねエレメントの配置構造も実現する。リングばね、リングばねセット、特にコイルばねとして用いられるばねの長さは、好適にはハウジング側のねじ山に沿って変位可能な支持部材の押圧面と、係止ボディの側に設けられた押圧面との間の間隔よりも長い。さらに特に押圧ナットとして形成された支持部材用の、ハウジング側のねじ山は、軸方向に係止ボディに整合して、特にほぼその中心円に対して整合して設けられている。これにより全体として回転モーメント制限ユニットの短い構造長さが実現され、特に係止部と支持部材とを含む回転モーメント制限ユニットの結合部分の短い構造長さが実現される。さらにプロセスの確実なロック機能を維持しつつ、小さな製造許容誤差および安定した幾何学形状が達成される。このことは、ばねエレメント、特にコイルばねをガイドするために伝動装置ハウジングが用いられる場合に、構成部材の周の長さを小さくしながら達成され、長いコイルばねでもガイドに関する大きな手間を掛けずにばねの屈曲が防止される。
【0008】
半径方向外向きならびに半径方向内向きに変位して配置されたばね支持部において、ばね支持部は、好適には係止ボディと同心的に配置されており、その際、半径方向の変位部分は、ブリッジ部材を介してブリッジされ、ブリッジ部材は、リングとして、ばねエレメントと係止ボディとの間に延在する脚部を備えているので、介在するハウジング部分が存在するにもかかわらず、半径方向のブリッジが実現され、したがって内歯車のリング壁または遊星キャリヤの端面に対する、係止球または係止ピンとして形成された係止ボディの軸方向の支持が実現され、それも、ばね支持部が部分的に内歯車に重畳して延在する場合でも実現される。
【0009】
特に工作機械の、工具収容部まで延びる端部のスリムな構成に関して好適には、ばね支持部が、係止ボディに対して半径方向内向きに変位して配置されており、そのような構成に関して、軸方向に短いばねエレメント、特にリングばねまたはリングばねのセットが用いられると、特に好適である。さらにそのような極めて短い構成により、ばねのガイドおよびブリッジ部材を特に簡単に形成することができる。
【0010】
さらに本発明は、工作機械など用の回転モーメント制限ユニットに関していて、極めてコンパクトで構造的ならびに製造技術的に良好に制御可能な、回転モーメントの構造が実現される。
【0011】
別の利点および好適な態様は、特許請求の範囲、図面に関する説明および図面から理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】駆動モータと伝動装置と工具収容部に通じるスピンドルとから成る駆動トレーンを備えた手持ち式工作機械を示す概略図である。
【図2】伝動装置部分に配置された回転モーメント制限ユニットと共に、工具収容部に通じるスピンドルまで延びる伝動装置部分を示す部分概略図である。
【図3】伝動装置部分に配置された回転モーメント制限ユニットと共に、工具収容部に通じるスピンドルまで延びる伝動装置部分を示す部分概略図である。
【図4】工具収容部まで延びる伝動装置の前方部分の概略縦断面図である。
【図5】図4に示す伝動装置部分の斜視図であり、図4と同様に、包囲する機械ハウジングは図示していない。
【図6】図4に対応する図であり、別の実施の形態を示す。
【図7】図6の部分図である。
【図8】図2および図3に対応する概略図であり、遊星歯車機構の、係止ボディにより荷重を掛けられる部分として、遊星キャリヤが設けられており、図面の左半部には、図2と同様に係止ボディに対して半径方向外向きに変位した位置でばね支持部を示し、右半部には、図3と同様に半径方向内向きに変位した位置でばね支持部を示す。
【0013】
図1には、たとえば充電式ドリルまたは充填式ドライバとして利用される、電動の手持ち式工作機械としての工作機械1の基本構造を概略的に示す。工作機械1の主要構成要素は、駆動モータ2、伝動装置3ならびに伝動装置3を介して駆動されるスピンドル4であり、スピンドル4を介して、図示していない工具が駆動される。工具は、一般的にスピンドル側のチャックに収容されている。伝動装置3を介して、駆動モータ2の回転数が、実際の運転において頻繁に要求される比較的低い工具の駆動回転数にされて伝達される。伝動装置3は、特に遊星歯車機構48として構成されており(図4および図6参照)、好適には多段式で切換可能に構成されていて、スピンドル4に向かう移行部で回転モーメント制限ユニット5まで延びている。回転モーメント制限ユニット5は、特に係止支持部6に関して、概略的に示す部分図である図2および図3から、ならびにこれに対応する図8から看取される。
【0014】
図4および図6において、遊星歯車機構48として構成された伝動装置3の多段式の構造が看取される。伝動装置3については、回転モーメント制限ユニット5に向かう入口側に位置する最後の伝動装置段7に関して後述する。伝動装置段7は、図4および図6に示すように、内歯車8に関して、係止支持部6の一部を成している。
【0015】
図2および図3には、最後の伝動装置段7のうち、係止支持部6の一部として内歯車8を示しており、内歯車8のリング壁9は、端面側で係止カム52を備えており、係止カム52は、係止ボディ10と協働する。係止ボディ10として、図2では係止ピン11が設けられており、図3では係止球12が設けられている。これらは、それぞれ図2に示すばね支持部13および図3に示すばね支持部14を介して、軸方向に、ここでは伝動装置軸線15に対して平行に、内歯車8のリング壁9の端面に押し付けられている。
【0016】
ばね支持部13,14は、それぞればねエレメント16,17を備えており、ばねエレメント16,17は、本実施の形態では、コイルばねとして、内歯車8の周にわたって相互に間隔を有して分配配置されている。ばねエレメント16,17は、別の構成において単個のばねまたはばねの対偶により形成してもよく、周にわたって分配配置された複数のばねエレメント16,17の代わりに、リングばねを用いてよく、場合によってはリングばねのセットを用いてもよい。
【0017】
図2および図3に示すトルク制限ユニット5の本発明による構成の共通点は、係止ピン11または係止球12として構成された係止ボディ10に対してばねエレメント16,17で半径方向に変位したばね支持部13,14の配置構造である。図2では、ばね支持部13の各ばねエレメント16は、係止ピン11により形成された係止ボディ10に対して外向きに変位して配置されていて、その変位は、図2において矢印18で示す。図3には、原則として図2に相当する構造を示しているが、係止球12により形成された係止ボディ10に対してばねエレメント17で半径方向内向きにばね支持部14が変位しており、この変位は矢印19で示す。
【0018】
図2に看取されるように、係止ボディ10に対して半径方向外側に変位したばね支持部13を有する構造において、ばねエレメント16は、ばね保持体20上に配置されており、ばね保持体20は、係止ボディ10をリング状に包囲するように延在していて、係止ボディ10との半径方向重畳部分で軸線方向15に延びるばね支持部21を備えており、ばね支持部21の脚部側に半径方向内向きに突出する支持脚部22が設けられており、支持脚部22に、係止ボディ10が、内歯車8のリング壁9の端面とは反対側で当接している。ばね支持部21と支持脚部22とは、角度を成して延びるブリッジ部材31を形成しており、ブリッジ部材31は、周方向にリング状に結合されている。
【0019】
ばね支持部21に保持され、頭部側で支持されたばねエレメント16は、脚部側で、ばね保持体20を越えて図面では下向きに、つまり内歯車8とは反対向きに突出する部分において、リング状のばねガイド23に支持され、ばねガイド23自体は、軸方向に変位可能であり、押圧ナットの機能を担う支持部材24に保持されている。支持部材24は、内歯車8を包囲するように設けられた伝動装置ハウジング26のハウジング部分25に配置されていて、ねじ山結合部27を介して、軸線15の方向にハウジング26に対して軸方向に変位可能である。これによりリング状のばねガイド23とばね保持体20との間の軸方向間隔が可変であり、反対側では、ばね保持体20のばね支持部21にばねエレメント16が支持されている。これによりばね支持部13に対する、ばねガイド23と共に支持部材24の軸方向の変位により、係止ボディ10を内歯車8の端面に当接する軸方向の予荷重が規定され、内歯車8は、軸方向にみて係止ボディ10とは反対側で伝動装置ハウジング26に支持されており、これについては図示の実施の形態では、ハウジング26のリング溝に係合する緊締リング28に基づいて看取される。伝動装置ハウジング26内で、図2においてハウジング部分25に対向して、スピンドル4が支承されており、スピンドル4は、工具収容部を備えているか、または工具収容部と結合されており、工具収容部は、ハウジング部分25に対向して、支承部30、特に滑り軸受けを介して支持されている。
【0020】
図2から看取されるように、支持部材24の軸方向変位により、係止支持部6の予荷重が調節可能であるだけでなく、最終的にロックすることもでき、それも、支持部材24が支持脚部22に当設して、したがって支持部材24の直接の支持が係止ボディ10を介して内歯車8に所与されていて、係止ボディ10を介して内歯車8がロックされている場合にロックすることもできる。
【0021】
さらに図2から看取されるように、ばねガイド23は、軸方向に移動可能であるが、伝動装置ハウジング26に対して相対回動不能に固定されており、このような構成は、ばね支持体20に関して、図5に示すように、とりわけばね支持部21を介して保持されるばね16が、伝動装置ハウジング26のガイド凹部43に位置することにより、かつ/またはハウジング26において係止ボディ10用の適切な軸方向ガイド(図示していない)が設けられていることにより達成される。
【0022】
機能的に図2の構成にほぼ相当する構成を図3に示しており、図3の構成は、ばねエレメント17を備えたばね支持部14が、係止ボディ10に対して、図2における半径方向外向きに変位した構成に対して、半径方向内向きに変位している点で異なっている。
【0023】
図2に示す実施の形態では、ばね支持部13は、ブリッジ部材31として構成された軸方向に延在するばね支持部21と半径方向に延在する支持脚部22とにより形成されており、図3に示す実施の形態では、ばね支持部14は、ブリッジ部材33としてのリング状のばね保持体32により形成されており、ブリッジ部材33は、半径方向内向きに突出する、ばねエレメント17に下側で係合する支持脚部34と半径方向外向きに突出するカラー脚部35とを備えており、支持脚部34とカラー脚部35とは、軸方向に相互に変位していて、リング状のカラー脚部35は、保持リング36に支持されており、保持リング36は、ハウジング26に対して回動不能に固定されており、保持リング36に、カラー脚部35とは反対側で、係止ボディ10が支持されている。保持リング36に、カラー脚部35に対して半径方向内向きに変位して各ばねエレメント17が支持されており、各ばねエレメント17は、保持リング36と支持脚部34との間に軸方向に緊締されている。カラー脚部35に、軸方向に支持部材24が支持されており、支持部材24は、図2と同様に、ハウジング部分25に沿ってねじ結合部27を介して軸方向に変位可能に配置されており、支持部材24は、好適には押圧ナットにより形成されている。
【0024】
図3は、回転モーメント制限ユニット5がロックするまで移動し、したがって非機能化された状態を示す。ここでは支持部材24と、介在して位置するカラー脚部35と、保持リング36とを介して、係止ボディ10は、内歯車8の端面に押し付けながら係止されており、相対回動不能な結合が形成されている。支持部材24が図3の位置から下方に移動すると、このために調節リング46(図4および図6参照)が用いられ、係止ボディ10は、専らばねエレメント17の力により規定される緊締力で荷重を掛けられるので、支持部材24の軸方向位置を介して、回転モーメント制限ユニット5のその都度の制限値を調節することができる。これについては図2から看取される。
【0025】
図3に示す実施の形態では、ブリッジ部材33は、半径方向内向きに突出する支持脚部34と、軸方向に延在するウェブ37を介して支持脚部34と結合されたカラー脚部35とを備えた、断面でZ字形の基本形状を有しており、その際、支持脚部34は、ばねエレメント17に対して重畳するように設けられている。
【0026】
対応する回転モーメント制限ユニット5と共に、伝動装置3の、工具収容部まで延びる前方部分の、図2および図3に対応する構成であって、図4および図5には図2に対応する構成を、図6および図7には図3に対応する構成を示す。これらの図面にはそれぞれ同一の符号を用いたので、図2および図3における符号および機能に関する記述に基づいて、対応する構成を理解することができる。
【0027】
図4〜図7には、内歯車8と共に回転モーメント制限ユニット5に付属する伝動装置段の構成を補足的に示す。伝動装置段の中央の太陽歯車38は、遊星キャリヤ40の遊星歯車39に噛み合い、遊星キャリヤ40は、星形の出力部材41と相対回動不能に結合されていて、出力部材41を介してスピンドル4と相対回動不能に結合されている。
【0028】
さらに図5から、ハウジング状の収容部42にばねエレメント16の対偶が配置されたばね支持部13の好適な態様が看取され、収容部42は、少なくとも実質的にばねエレメント16の側方ガイドとして作用し、したがってばねエレメント16の屈曲が防止される。少なくとも伝動装置ハウジング26に関して、ガイドは、伝動装置ハウジング26自体から形成してもよく、伝動装置ハウジング26は、このために好適には適切なガイド凹部43、特に溝状のガイド凹部43を備えており、これにより周方向にみて、ばね支持部13と伝動装置ハウジング26との間に支持部が形成される。さらに図5から看取されるように、リング状のばねガイド23は、軸方向にばね支持体20に当接して、係止フック44を介してばね支持体20に係止可能であり、これによりばねエレメント16を緊締しながら包囲するユニットが形成される。係止フック44は、ばねガイド23に下側で係合して位置するディスク47に配置されている。
【0029】
図6および図7から、図3に対して補足的に、特にZ字形のブリッジ部材33の構成が看取され、ブリッジ部材33は、保持リング36に当着されるリング状のカラー脚部35と、リング状のカラー脚部35から出発して軸方向に延在するウェブ37と、半径方向内向きに突出する支持脚部34とを備えており、これらにばね17(図7には示していない)が支持されている。支持部材24のために、下位のハウジング部分25は、ウェブ37への移行部分にねじ山45を備えている。
【0030】
図8に略示した実施の形態では、この実施の形態を説明するために、既に用いた符号が用いられる。係止球12として形成された係止ボディ10は、最後の伝動装置段7と共に図示された遊星歯車機構48の側から、図2〜図7に基づいて図示するように、内歯車8に支持されるのではなく、遊星歯車機構48の遊星キャリヤ40に支持されている。遊星キャリヤ40は、図8において、半径方向に内歯車8を越えて突出していて、伝動装置ハウジング26の周壁49の傍まで延びており、周壁49に、遊星キャリヤ40が、軸方向に係止ボディ10とは反対側で支持されている。支持部は、支持スリーブ50において看取され、支持スリーブ50は、軸方向に固定リング51を介して周壁49に対して固定されている。
【0031】
遊星キャリヤ40は、太陽歯車38を介してスピンドル4を駆動し、スピンドル4は、支承部30を介して、図示していない工具収容部まで延在するハウジング部分25に支承されている。ハウジング部分25に沿って、支持部材24は変位可能であり、支持部材24を介して、各ばね支持部13もしくはばね支持部14のばねエレメント16もしくはばねエレメント17は、支持力に関して調節可能である。支持力により、係止ボディ10は、係止カム52を備えた遊星キャリヤ40に支持されている。
【0032】
図2および図3と同様に、図8の左側では、ばね支持部13は、半径方向外向きに係止ボディ10に対して変位しており、これに対して右側では、係止ボディ10に対してばね支持部14の半径方向内向きに変位した支承部が看取される。
【0033】
左側に示す、半径方向外向きに変位した支持部13に関して、ばねエレメント16は、支持部材24に載設するリング状のばねガイド23と概略的に示すブリッジ部材31との間で緊締されており、ブリッジ部材31は、係止ボディ10に下側で係合する支持脚部22と、支持脚部22に対して軸方向に変位して、ハウジング26の周壁49に対する係合部分に位置する、半径方向外向きに突出する保持脚部53とを備えているので、支持部材24と保持脚部53との間に位置して軸方向に延在するウェブ部分54と相俟って、リング状のブリッジ部材31の断面でZ字形の成形部が形成される。そのような構成により、既に図2に基づいて説明したように、長いばね行程が実現され、ばねエレメントの必要なガイドは、図示していない方法で、ブリッジ部材31に対応して配置することができ、ブリッジ部材31は、ウェブ部分54で、軸方向に図示の伝動装置段に対して重畳して延在することができる。
【0034】
図8の右側では、図3と同様の基本構造で、係止ボディ10に対して半径方向内向きに変位した、ばね支持部14の支承部を示しており、そこでもブリッジ部材33は、Z字形断面を有するリングボディとして形成されている。リングボディは、係止ボディ10への移行部に半径方向外向きに突出するカラー脚部35を備え、半径方向内向きに突出する保持脚部34を備えており、保持脚部34は、カラー脚部35に対して、係止ボディ10とは反対側で軸方向にみて段状に設けられているので、係止ボディ10に対して半径方向内向きに変位して、カラー脚部35と支持脚部34とを結合するウェブ37に沿って、単数または複数のばねエレメント17用の保護された収容室(収容室にばねエレメントが配置される)が形成される。好適には、係止ボディ10とカラー脚部35との間に保持リング36が配置されており、これによりリング状のブリッジ部材33の少なくともカラー脚部35を部分的に、つまりセグメント状に形成することができる。総じて、このような構成により、特にリング状のばねエレメント17にも適した格別にコンパクトな構造が実現される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工作機械、特に手持ち式工作機械であって、
工具スピンドル(4)の駆動機構に位置する、ハウジング部分(25)に収容された回転モーメント制限ユニット(5)が設けられており、該回転モーメント制限ユニット(5)の作動モーメントは、軸方向の係止支持部(6)を介して調節可能であり、該係止支持部(6)は、係止ボディ(10)に荷重を掛ける少なくとも1つのばね支持部(13,14)を備えていて、軸方向に調節可能な支持部材(24)を介してハウジング側に支持されているものにおいて、
係止ボディ(10)とばね支持部(13,14)とは、相互に半径方向に変位して位置していることを特徴とする、工作機械。
【請求項2】
ばね支持部(13,14)は、少なくとも1つのばねエレメント(16,17)を備えており、該ばねエレメント(16,17)は、ブリッジ部材(31,33)を介して、半径方向に変位して位置する係止ボディ(10)に支持されている、請求項1記載の工作機械。
【請求項3】
回転モーメント制限ユニット(5)は、遊星歯車機構(48)を備えており、係止ボディ(10)は、遊星歯車機構(48)の一部、特に該遊星歯車機構(48)の内歯車(8)または遊星キャリヤ(40)に支持されている、請求項1または2記載の工作機械。
【請求項4】
係止ボディ(10)に対して半径方向外向きに変位して配置されたばね支持部(13,14)のばね保持体(20)が、特に係止ボディ(10)の周りに円周に沿って位置しており、ブリッジ部材(31)が、ばね保持体(20)から半径方向内向きに突出する、係止ボディ(10)に対する支持部に位置する少なくとも1つの支持脚部(22)を備えていて、少なくとも1つのばねエレメント(16)を介して、脚部側で支持部材(24)に対して支持されたばねガイド(23)に対して支持されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項5】
ばね保持体(20)は、遊星歯車機構(48)を包囲するハウジング部分(25)に対して外側に配置されている、請求項4記載の工作機械。
【請求項6】
ばね支持部(14)は、係止ボディ(10)に対して半径方向内向きに変位して配置されており、該係止ボディ(10)は、特にばね支持部(14)と同軸の円周上に位置しており、ブリッジ部材(33)は、半径方向内向きに突出する支持脚部(34)を有するリング状のばね保持体(32)を備えており、支持脚部(34)に、係止ボディ(10)に対して支持された少なくとも1つのばねエレメント(17)が載設されている、請求項1から3までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項7】
ブリッジ部材(33)は、断面でZ字形の基本形状を有し、ばねエレメント(17)のための支持脚部(34)とは反対側で、半径方向外向きに突出する、支持部材(24)に支持されたカラー脚部(35)を備えており、一方ではばねエレメント(17)およびカラー脚部(35)が、他方では係止ボディ(10)が、ばねエレメント(17)およびカラー脚部(35)と係止ボディ(10)との間に位置する保持リング(36)に支持されている、請求項6記載の工作機械。
【請求項8】
ばねエレメント(16,17)として、少なくとも1つのリングばねまたはコイルばねが設けられており、ばねエレメント(16,17)のばね長さは、組付状態で、係止ボディ(10)の、遊星歯車機構に設けられた押圧面に対する支持部材(24)の押圧面の間隔よりも大きくなっている、請求項1から7までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項9】
支持部材(25)が押圧ナットとして構成されており、該押圧ナットの、ハウジング(25)に対するねじ山結合部(27)が、軸方向に、係止ボディ(10)と整合していて、特にほぼ係止ボディ(10)の中心円周上に位置している、請求項1から8までのいずれか1項記載の工作機械。
【請求項10】
特に請求項1から9までのいずれか1項記載の工作機械(1)、特に手持ち式工作機械用の回転モーメント制限ユニットにおいて、
遊星歯車機構(48)が設けられており、回転モーメント制限ユニットの、遊星歯車機構(48)の一部、特に該遊星歯車機構の内歯車(8)または遊星キャリヤ(40)に対する作動エレメントは、係止支持部(6)により調節可能であり、係止支持部(6)は、遊星歯車機構(48)に対して軸平行な配置で、係止ボディ(10)用の少なくとも1つのばね支持部(13,14)を備えていて、軸方向に遊星歯車機構(48)に対して調節可能な支持部材(24)を介してハウジング側で支持されており、係止ボディ(10)とばね支持部(13,14)とは、相互に半径方向に変位して位置していることを特徴とする、回転モーメント制限ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−515091(P2012−515091A)
【公表日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545658(P2011−545658)
【出願日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067400
【国際公開番号】WO2010/081609
【国際公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【出願人】(390023711)ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング (2,908)
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
【Fターム(参考)】