説明

工具袋

【課題】工具等のサイズに応じて効率的且つ速やかに分割収納することができる工具袋を提供する。
【解決手段】上記目的は、円筒状の側壁12aと底部12cを有する袋状の工具袋本体12と、底部12cに下縁が底部12c縁部の所定位置P2から中央位置P1まで固着されるとともに側縁が側壁12a内面にスライドファスナーによって着脱自在に接合可能な矩形シート状の間仕切り14と、を有する工具袋10により達成される。これにより、スライドファスナーの上下動により工具袋10内の収納スペースの分割を迅速且つ容易に行うことができ、分割を解除して工具袋10内全体を一つの収納スペースとして使用することも可能である。更に、間仕切り14の自由端となっている側縁を側壁12a内面の少なくとも2カ所以上の位置で選択的に接合させることで、簡単な動作で速やかに工具袋10内の収納スペースの分割領域を変更させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として送電線、配電線、電話線、屋内電気工事等の敷設、点検、修理等のために、鉄塔や電柱等の高所における作業時に使用する工具袋に関する。
【背景技術】
【0002】
送電線鉄塔上等の高所で作業を行う場合、作業に用いる工具や資材(以下、工具等という)は工具袋に入れ、地上から作業場である送電線鉄塔上まで運搬し、そこでそれら工具等を取り出して作業を行う。
【0003】
従来、この工具等を収容する工具袋は、円筒状の側壁と底部を有する袋体として構成されており、その開口部近傍に工具袋を吊り下げるための吊りロープを取付けた簡単な構造であった。しかし、この構造では、工具袋内部で大小様々な工具等が乱雑に収容されてしまい、作業現場において必要な工具等が他の工具等に紛れて取り出しづらく、更に作業現場は高所であり、例えば、ワイヤ等の巻回資材を取り出す際に、この資材に引っ掛かった工具等が工具袋から地上へ向けて落下するおそれがあった。
【0004】
そこで、特許文献1には、側壁内面に工具収納ポケットを取り付けた工具袋50が開示されている。図5は、従来の工具収納ポケットを取り付けた工具袋50を示す図である。図示のように、工具袋50には、その側壁内面に沿って区画された収納ポケット52、54及び56が設けられており、これによりボルト、ナット、ペンチ等の工具等をそれぞれ別々に収納可能となっており、工具等の取り出し性が向上している。従って、工具袋50の中央部にはこれらボルト等とは別にワイヤ等の巻回資材のみを収容することができるので、ワイヤ等の取り出しの際にこれらボルト等が引っ掛かり、ボルト等が工具袋50から落下するというおそれが低減し、安全性も向上している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−36790
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に係る工具袋によれば、小さい工具の個別収納は可能であるが、比較的サイズの大きい金車、台付きワイヤ、がいし等の工具等は工具収納ポケット内に収納することができないので、これらをワイヤ等の巻回資材と一緒に工具袋50の中央部に収納する結果、これらがワイヤ等の巻回資材を取り出す時に引っ掛かり、工具袋から落下するおそれがあった。
【0007】
しかし、工具収納ポケットは固定されていてその大きさは変更できないので、大きい工具等を収納する場合はその工具等の大きさに応じた大きさの工具収納ポケットを有する工具袋を別途準備する必要があるが、工具袋としてはその様な様々なポケットサイズのものが存在しているわけではない。
【0008】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は工具等のサイズに応じて効率的且つ速やかに分割収納することができる工具袋を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を解決するための請求項1に記載の工具袋は、筒状の側壁と底部を有する袋体として構成された工具袋本体と、該工具袋本体の内部を区画する矩形シート状の間仕切りと、を有し、該間仕切りの下縁が、前記底部に該底部縁部の所定の位置から中央近傍まで固着され、前記間仕切りの一方の側縁が、前記工具袋本体の側壁内面と、前記底部縁部の所定の位置から前記工具袋本体における側壁内面の高さ方向に亘って着脱自在に接合可能とされ、前記間仕切りにおける他方の側縁が、前記底部縁部の所定の位置とは異なる少なくとも2カ所以上の前記底部縁部の位置で選択的に前記側壁内面と該工具袋本体の高さ方向に亘って着脱自在に接合可能とされたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、間仕切りの一方の側縁と他方の側縁が工具袋本体の側壁内面と高さ方向に亘って着脱自在に接合可能であるので、それら間仕切りの側縁と内側壁の接合という簡単な動作により速やかに工具袋の収納スペースを分割することができる。更に、間仕切りの下縁が工具袋本体の底部にその底部縁部から中央近傍まで固着されているので、上記間仕切りの各側縁の接合を解除して工具袋の収納スペース全体を一つの空間とした際にも、間仕切りが工具袋本体から分離することがないので紛失するおそれもない。更に、上述のように、間仕切りの下縁は工具袋本体の底部縁部から中央近傍までが固着されているので、間仕切りの他方の側縁側は自由端となっており、この他方の側縁を少なくとも側壁内面の2カ所以上の位置で選択的に接合させるという簡単な動作で、工具袋内の収納スペースの分割領域を速やかに変更することができる。従って、一つの工具袋によって収納される工具等の種類や大きさに応じた適切な収納スペースの分割が可能となる。
【0011】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の工具袋において、前記間仕切りの前記一方の側縁及び前記他方の側縁の前記接合は、各々の接合箇所に設けられたスライドファスナーによって行われることを特徴とする。この構成によれば、間仕切りの側縁と側壁内面の接合および接合の解除を、スライドファスナーの上下動というさらに簡単な動作で行うことができ、従って、収納スペースの分割領域の変更も容易である。そして、間仕切りの側縁と側壁内面はスライドファスナーにより強固に接合されるので、重量のある工具を多数収納する際にもその重みにより接合が解除されるおそれが少ない。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の工具袋において、前記間仕切りの前記一方の側縁及び前記他方の側縁の前記接合は、前記間仕切りの前記一方の側縁及び前記他方の側縁に設けられた側縁面ファスナーと、前記工具袋本体の側壁内面に設けられた側壁内面面ファスナーとの係着によって行われ、前記側壁内面面ファスナーは、前記底部端部の所定の位置から半周に亘って設けられていることを特徴とする。
【0013】
この構成によれば、間仕切りの他方の側縁と、工具袋本体の側壁内面との接合位置を、その内側壁の半周に亘って自由に選択することができる。従って、収納する内容物の大きさ及び数に応じ、より適切に、より自由に工具袋の収納スペースの分割割合を調節することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、間仕切りの側縁と工具袋本体の側壁内面の接合という簡単な動作により速やかに工具袋の収納スペースを分割することができる。また、他方の側縁の接合が2カ所以上の位置で選択可能であり、工具袋内の収納スペースの分割領域を速やかに変更することができる。更に、間仕切りの下縁の底部への固着により、接合解除時の紛失を防止することができる。これにより、一つの工具袋を様々に区分することで、工具等のサイズに応じた様々な収納スペースに対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】(A)本発明の実施の形態に係る工具袋10を説明するための図である。(B)図1(A)の工具袋10の収納スペースの大きさを変更した状態を説明するための図である。
【図2】図1(A)に記載の工具袋10の、間仕切り14と工具袋本体12の側壁12a内面との接合を解除した状態を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る工具袋10の他の実施の形態を、開口部12c側から見た図である。
【図4】(A)本発明の実施の形態に係る工具袋40の他の実施の形態を示す図である。(B)図4(A)に記載の工具袋40の間仕切り14を説明するための図である。
【図5】従来の工具収納ポケットを取り付けた工具袋50を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。図1(A)及び(B)は、本発明の実施の形態に係る工具袋10を説明するための図である。同図(A)に示した工具袋10は、略円筒状の側壁12aと、略円形の底部12bとを有する工具袋本体12を備え、上部に工具等が出し入れされる略円形の開口部12cが形成されている。この開口部12c近傍には、ハトメ孔16−1、16−2が対向する位置に設けられており、工具袋10を吊り下げるための吊りロープ18がハトメ孔16−1、16−2を挿通して取り付けられている。工具袋本体12は、金車、がいし等の工具を収納しても破損すること無きよう、帆布等の頑丈な布地が用いられている。
【0017】
本願発明の特徴的な事項は、間仕切り14が工具袋本体12内に設けられていることである。この工具袋本体12の内部空間を分割するための間仕切り14のサイズは、本実施の形態では、横幅は底部12bの直径と略同幅であり、高さは底部12bから側壁12aの高さの9分目程度に設定されている。間仕切り14は、その下縁の一方の端部から下縁中心P1までの長さ領域Eが、工具袋本体12の底部12bの縁部の所定位置P2から底部12bの中心P1までの箇所と縫合されて固着されている。そして、この間仕切り14の一方の側縁、すなわち、底部12bの上記所定位置P2の上方に位置する側縁14aには、その全長に亘ってスライドファスナーを構成する務歯15が設けられている。また、間仕切り14の他方の側縁14bにも同様に全長に亘って務歯17が設けられている。
【0018】
一方、工具袋本体12における側壁12a内面の底部12bの縁部の所定位置P2から側壁12aの9分目程度の高さ位置、すなわち、間仕切り14の上縁の高さ位置まで、務歯15と噛合可能な務歯19が設けられ、噛合された状態が図示されている。さらに、工具袋本体12の側壁12a内面には、務歯19が取付けられた位置から、底部12bの中心P1を軸として逆時計回りに45度、90度、及び180度移動する毎に務歯21、務歯23及び務歯25がそれぞれ設けられている。これらは務歯17と噛合可能であり、従って、務歯17は務歯21、務歯23及び務歯25から選択される任意の務歯と噛合させることができる。
【0019】
この構成によれば、例えば、図1(A)では、上述のように間仕切り14の務歯15及び17が、側壁12a内面に設けられた務歯19及び23とそれぞれ噛合されており、工具袋10内の収納スペースを約1:3の割合で分割することができる。この分割は、スライドファスナーのスライダー22の上下動という簡単な動作により速やかに行うことができる。
【0020】
ここで、図1(A)の状態において、収納される2つ工具、例えば、巻回されたワイヤ及びがいしのうちのいずれも小さい方の収納スペースに入らない大きさである場合には、そのままの状態でこれらを分割収納することができない。この場合、図1(B)に示すように、間仕切り14による工具袋10内の収納スペースの分割割合を約1:1に変更させることにより、両者の分割収納を可能とすることができる。この分割割合の変更は、スライドファスナーのスライダー22の上下動により、間仕切り14の務歯17と側壁12a内面に設けられた務歯23との噛合を解除し、務歯17を務歯25と噛合させるという簡単な動作により速やかに行うことができる。
【0021】
図2は、図1(A)に記載の工具袋10の、間仕切り14と工具袋本体12の側壁12a内面との接合を解除した状態を説明するための図である。図示のように、間仕切り14に設けられた務歯と工具袋本体12の側壁12a内面に設けられた務歯との噛合を全て解除すれば、工具袋10内部全体を一つの収納スペースとして使用することができるので、特に大きい工具等を収納する際に有効である。この解除動作も、側壁12a内面と間仕切り14の側縁に設けられたスライドファスナーのスライダー22を下動するという簡単な動作により速やかに実施することができる。この状況で、間仕切り14の下縁の領域Eが、底部12bに縫合されて固着されているので、工具袋10内部全体を一つの収納スペースとして使用している状況においても間仕切り14と工具袋本体12とは結合された状態が保たれており、間仕切り14を紛失するこということも防止される。
【0022】
工具袋10内の収納スペースの分割割合の変更は、上述の務歯17と工具袋本体12の側壁12a内面に設けられた3カ所の務歯(務歯21、23、及び25)との噛合位置の選択により、約1:7〜1:1まで可能である。
【0023】
図3は、本発明の実施の形態に係る工具袋10の他の実施の形態を、開口部12c側から見た図である。図示のように、工具袋本体12に設けられた3カ所の務歯(務歯21、23、及び25)に加えて、更に務歯27を設けることにより、工具袋10内の収納スペースの分割割合の変更をさらに細かく行うことができ、分割収納する工具等の大きさ、数等に応じてさらに効率的な収納スペースの活用が可能となる。この側壁12aに設ける務歯の数及び位置は、要求に応じ適宜変更することができる。
【0024】
本実施の形態では、間仕切り14と、工具袋本体10の側壁12a内面との接合を、双方に設けられた務歯からなるスライドファスナーの噛合による構成として例示したが、これに限定されるものではなく、種々の変形の適用が可能である。
【0025】
以下に他の実施の形態を図4に基づいて説明する。同図において上述の図1に示した実施例と同様の要素には、同一の符号を付しその説明を省略する。同図(A)は本発明の他の実施の形態に係る工具袋40を示す図であり、同図(B)は同図(A)に記載の工具袋40の間仕切り14を説明するための図である。図示のように、底部12b縁部の所定位置P2の上方に位置する、間仕切り14の側縁14aには、フック状の雄材を有する幅1.5cm程の側縁面ファスナー29がその側縁全長に亘って設けられ、他方の側縁14bにも同様にその全長に亘って側縁面ファスナー31が設けられている。一方、工具袋本体12の側壁12a内面には、底部12b縁部の所定位置P2から側壁12a内面の9分目程度の高さ位置、すなわち、間仕切り14の上縁の高さ位置まで、ループ状の雌材を有するループ面が設けられている。このループ面は、底部12b縁部の所定位置P2から半周に亘って設けられ、側壁内面面ファスナー33を構成している。側縁面ファスナー29及び31と側壁内面面ファスナー33とは、それぞれに設けられたフック状の雄材とループ状の雌材により係着可能であり、着脱自在である。
【0026】
この構成によると、底部12b縁部の所定位置P2の上方に位置する側壁内面面ファスナー33の面を、間仕切り14の側縁面ファスナー29と係着させた状態で、側縁面ファスナー31を側壁内面面ファスナー33の何れかの部位と面的に係着させることにより、工具袋本体12内の収納スペースの分割割合を変更することができる。従って、より収納スペースの分割割合の変更の自由度の高い工具袋10を提供することができる。そして、この収納スペースの分割割合の変更は、間仕切り14に設けられた側縁面ファスナー31と側壁12a内面に設けられた側壁内面面ファスナー33との係着状態を解除し、側縁面ファスナー31を内側壁面ファスナー33の最初に係着された面とは異なる面で再度係着させるという簡単な動作により速やか行うことができる。なお、符号24は工具袋本体12の側壁12a外面にボルトやナット等の小物資材を収容するために設けたポケットである。
【0027】
本発明は上記実施の形態に限定されることはなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、間仕切り14の側縁(14a及び14b)と側壁12a内面との接合は、着脱自在に接合可能な形態であればどのような形態のものでもよく、例えば、間仕切り14の側縁(14a及び14b)と側壁12a内面に接合部として相互に対応するスナップボタン(図示せず)が連続して設けられていても良い。
【符号の説明】
【0028】
10、40 工具袋
12 工具袋本体
12a 側壁
14 間仕切り
15、17 (間仕切り14に設けられた)務歯(スライドファスナー)
19、21、23、25、27 (側壁12a内面に設けられた)務歯(スライドファスナー)
29、31 側縁面ファスナー
33 側壁内面面ファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の側壁と底部を有する袋体として構成された工具袋本体と、
該工具袋本体の内部を区画する矩形シート状の間仕切りと、を有し、
該間仕切りの下縁が、前記底部に該底部縁部の所定の位置から中央近傍まで固着され、
前記間仕切りの一方の側縁が、前記工具袋本体の側壁内面と、前記底部縁部の所定の位置から前記工具袋本体における側壁内面の高さ方向に亘って着脱自在に接合可能とされ、
前記間仕切りにおける他方の側縁が、前記底部縁部の所定の位置とは異なる少なくとも2カ所以上の前記底部縁部の位置で選択的に前記側壁内面と該工具袋本体の高さ方向に亘って着脱自在に接合可能とされたことを特徴とする工具袋。
【請求項2】
前記間仕切りの前記一方の側縁及び前記他方の側縁の前記接合は、各々の接合箇所に設けられたスライドファスナーによって行われることを特徴とする請求項1に記載の工具袋。
【請求項3】
前記間仕切りの前記一方の側縁及び前記他方の側縁の前記接合は、
前記間仕切りの前記一方の側縁及び前記他方の側縁に設けられた側縁面ファスナーと、
前記工具袋本体の側壁内面に設けられた側壁内面面ファスナーとの係着によって行われ、
前記側壁内面面ファスナーは、前記底部縁部の所定の位置から半周に亘って設けられていることを特徴とする請求項1に記載の工具袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−76182(P2012−76182A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−223408(P2010−223408)
【出願日】平成22年10月1日(2010.10.1)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】