説明

工業電解プロセスにおける酸素発生用電極

本発明は、電気化学プロセスにおける酸素発生アノードに適切な触媒コーティングに関する。触媒コーティングは、5重量%を超えない量の酸化チタンで改質されたイリジウムとタンタルの酸化物をベースにした組成物を有する最外層を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学セルでアノードとして機能するのに適切な電極、例えば電気冶金プロセス用の電解セルで酸素発生アノードとして機能するのに適切な電極に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、工業電解プロセスで、例えば酸素発生アノード反応が関与する電解用途に使用するのに適切な電極に関する。酸素発生アノードは、いくつかの電気化学用途に広く使用されている。その多くは電気冶金(electrometallurgy)の分野に属し、印加電流密度に関して広範囲をカバーしている。すなわち、非常に低いことも(例えば電解採取(electrowinning)プロセスの場合のように数百A/m)、反対に非常に高いこともある(例えば高速メッキ、アノード表面に対し10kA/mを超えることもある)。酸素発生アノードの別の応用分野は、外部電源カソード防食(impressed current cathodic protection)によって与えられる。アノード酸素発生に適切な電極は、バルブ金属の基材、例えばチタン及びその合金から出発し、それを遷移金属又はその合金に基づく触媒組成物で被覆して得ることができ、高すぎると触媒系なしに工業プロセスを実行させることができない酸素放出アノード過電圧を下げる能力を特徴とする。アノード酸素発生を触媒するのに適切な組成物は、例えば、イリジウムとタンタルの酸化物の混合物からなり、イリジウムは触媒活性種を構成し、タンタルはバルブ金属基材を腐食現象(特に攻撃的な電解質と共に運転する場合)から保護することができる緻密コーティング(compact coating)の形成に寄与する。多くの工業電気化学プロセスにおいてアノード酸素発生に適切なアノード配合物(anode formulation)は、チタン基材と、金属を基準にしてIr65%及びTa35%のモル組成を有するイリジウムとタンタルの酸化物からなる触媒コーティングとを含む。場合によっては、非常に酸性の又はそうでなければ攻撃的な電解質との運転を可能にするために、チタン基材と触媒コーティングの間に、例えば金属を基準にしてTi80%及びTa20%のモル組成を有するチタンとタンタルの酸化物からなる保護中間層を間置するのが好都合なこともある。この種の電極は、いくつかの方法、例えば前駆体溶液を高温、例えば400〜600℃で熱分解することによって製造できる。上記組成を有する電極は、合理的な運転寿命を持ちながら低又は高電流密度の両方で多くの工業用途のニーズを満たすことができる。それでもなお、一部の生産プロセス、特に冶金分野(例えば、プリント回路及び銅箔を製造するためのメッキ(galvanic)プロセスでの銅堆積)における生産プロセスの経済は、電極がより長い寿命と高電流密度でも適切に低減された酸素発生電位を備えていることを求めている。酸素発生電位は、実際、プロセスの運転電圧、従って総エネルギー消費を決定する主要因の一つである。さらに、バルブ金属基材上の貴金属又はその酸化物を基にしたアノードの運転寿命は、アノード表面の腐食又は汚染(fouling)現象の促進を確立できる特に攻撃的な汚染物質の存在下では著しく低下する。前者のタイプの例は、フッ化物イオンによって与えられる。これは、チタンなどのバルブ金属への特異的攻撃を決定し、電極を非常に急速に不活性化する。一部の工業環境では、フッ化物濃度を極めて低レベルに削減するために驚くほどのコストに直面しなければならない。フッ化物イオン含有量が0.2ppmより高いだけでも既にアノード寿命に感知可能な影響を示すことができるからである。後者のタイプの例は、反対にマンガンイオンによって与えられる。これは、いくつかの工業電解質中に2〜30g/lの典型量で存在し、1g/lほどの低さの濃度以上でアノード表面にその触媒活性を遮りやすく損傷を起こさずに除去することが困難なMnO層の膜を張る傾向を有する。
【発明の概要】
【0003】
そこで、特に危機的なプロセス条件、例えば高電流密度又は例えば汚染物質種の存在による特に攻撃的な電解質の存在下でも高い運転寿命を特徴とする酸素発生用アノードを提供する必要性は明白である。
【0004】
本発明の様々な側面は添付の特許請求の範囲に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0005】
一態様において、本発明は、電解プロセスでアノードとして機能するのに適切な電極に関する。該電極は、チタン又はその他のバルブ金属の基材と、一つ又は複数の層からなる触媒コーティングとを含む。電解質と接触して働くのに適切なその最外層は、金属を基準にしてIr76〜84%、Ta15〜23%、Ti0.2〜1.3%のモル組成を有するイリジウム、タンタル及びチタンの酸化物からなる。発明者らは、驚くべきことに、非常にイリジウム豊富な触媒組成物に少量のチタンを加えると、アノード酸素発生のために使用される電極の寿命を著しく増大でき、かつ汚染物質種の存在に対するその耐性も改良できることを見出した。一態様において、多層からなる触媒コーティングは、金属を基準にしてIr60〜70%及びTa30〜40%のモル組成を有するイリジウムとタンタルの酸化物からなる内層と、金属を基準にしてIr76〜84%、Ta15〜23%、Ti0.2〜1.3%のモル組成を有するイリジウム、タンタル及びチタンの酸化物からなる外層とを含む。これは、電極の飛び抜けて高価な成分であるイリジウムを、所定の総装填量(overall loading)に対してその効果を最大にするためによりよく分配させるという利点も有しうる。触媒コーティング中のイリジウムの最適総装填量は、電極が予定されている特定タイプの用途、及びそのような用途でアノードに求められる最小運転寿命による。一態様において、触媒コーティング中のイリジウムの総特定装填量は20〜50g/mで、所望により、全装填量の15〜25%を含有する内層と、その残りを含有する外層に細分割される。
【0006】
一態様において、例えばチタン及び/又はタンタルの酸化物に基づく保護中間層が、基材と触媒層の間に間置される。一態様において、中間層は、金属を基準にしてTi75〜85%、Ta15〜25%の組成を有するチタンとタンタルの酸化物の混合物からなる。別の態様において、保護中間層は、チタン基材の熱酸化のプロセスによって形成された酸化チタンからなる。これらの態様は、電極のコストの過度な負担なしに、電解質の腐食攻撃に対する適切な形態の保護を基材に提供するという利点を有しうる。それでも、当業者であれば、他のタイプの保護中間層も確認できるであろう。例えば、火炎又はプラズマスプレーによって、メッキ的に(galvanically)、又は化学もしくは物理気相成長法の異なる技術の手段によって、特定の要件に応じて所望により真空下で(CVD、PVD、IBAD、スパッタリング)適用されたチタン及び/又はタンタルの酸化物などの保護中間層である。
【0007】
発明者らが得た最も重要な結果の一部を以下の実施例において提供するが、それらは本発明の範囲の制限を意図したものではない。
【実施例】
【0008】
実施例1
200×200×3mmサイズのチタンシート・グレード1を脱脂し、まず鉄グリットで表面粗さR値70〜100μmが得られるまでサンドブラストした後、20重量%のHCl中、90〜100℃の温度で20分間エッチングした。
【0009】
乾燥後、重量比80:20のチタンとタンタルの酸化物に基づく保護層をシートに適用した。総装填量は金属を基準にして0.6g/mであった(酸化物を基準にすると0.87g/mに相当)。保護層の適用は、前駆体溶液(HClで酸性化されたTaCl水溶液をTiCl水溶液に加えることによって得た)を三層に塗装し、その後500℃で熱分解することによって実施した。
【0010】
次に、重量比78:20:2(モル比約80.1:19.4:0.5に相当)のイリジウム、タンタル及びチタンの酸化物に基づく触媒コーティングを、イリジウムの総装填量45g/mで保護層上に適用した。触媒コーティングの適用は、前駆体溶液(HClで酸性化されたTaCl水溶液をTiCl水溶液に加え、次いでHIrClをIr濃度が195g/lに達するまで加えることによって得た)を22層に塗装し、その後480℃で熱分解することによって実施した。
【0011】
このようにして得られた電極から10cm表面のサンプル3個を切り取り、アノード酸素発生下で促進寿命試験に付し、150g/lのHSO中、温度60℃及び電流密度30kA/mで失活時間(1Vの電位増加を観察するのに要した運転時間と定義される)を測定した。
【0012】
3個のサンプルの平均失活時間は5245時間であった。
同様の3個組のサンプルを1mg/l及び5mg/lのフッ化物イオンの存在下で同じ試験に付した。そのような試験後、それぞれ3715及び980時間の平均失活時間が検出された。
【0013】
同様の3個組のサンプルを20g/lのマンガンイオンの存在下で試験に付した。そのような試験後、3900時間の平均失活時間が検出された。
実施例2
200×200×3mmサイズのチタンシート・グレード1を脱脂し、まず鉄グリットで表面粗さR値70〜100μmが得られるまでサンドブラストした後、20重量%のHCl中、90〜100℃の温度で20分間エッチングした。
【0014】
乾燥後、重量比80:20のチタンとタンタルの酸化物に基づく保護層をシートに適用した。総装填量は金属を基準にして0.6g/mであった(酸化物を基準にすると0.87g/mに相当)。保護層の適用は、前駆体溶液(HClで酸性化されたTaCl水溶液をTiCl水溶液に加えることによって得た)を三層に塗装し、その後500℃で熱分解することによって実施した。
【0015】
次に、二つの異なる層からなる触媒コーティングを保護層上に適用した。第一(内)層は、重量比65:35(モル比約66.3:36.7に相当)のイリジウムとタンタルの酸化物に基づき、イリジウムの総装填量10g/mであり、第二(外)層は、重量比78:20:2(モル比約80.1:19.4:0.5に相当)のイリジウム、タンタル及びチタンの酸化物に基づき、イリジウムの総装填量35g/mであった。
【0016】
内触媒層の適用は、前駆体溶液(HIrClをTaCl水溶液にIr濃度が76g/lに達するまで加えることによって得た)を8層に塗装し、その後520℃で熱分解することによって実施した。
【0017】
外触媒層の適用は、前駆体溶液(HClで酸性化されたTaCl水溶液をTiCl水溶液に加え、次いでHIrClをIr濃度が195g/lに達するまで加えることによって得た)を14層に塗装し、その後480℃で熱分解することによって実施した。
【0018】
このようにして得られた電極から10cm表面のサンプル3個を切り取り、アノード酸素発生下で促進寿命試験に付し、150g/lのHSO中、温度60℃及び電流密度30kA/mで失活時間(1Vの電位増加を観察するのに要した運転時間と定義される)を測定した。
【0019】
3個のサンプルの平均失活時間は6270時間であった。
同様の3個組のサンプルを1mg/l及び5mg/lのフッ化物イオンの存在下で同じ試験に付した。そのような試験後、それぞれ4080及び1360時間の平均失活時間が検出された。
【0020】
同様の3個組のサンプルを20g/lのマンガンイオンの存在下で試験に付した。そのような試験後、4420時間の平均失活時間が検出された。
実施例3
200×200×3mmサイズのチタンシート・グレード1を脱脂し、まず鉄グリットで表面粗さR値70〜100μmが得られるまでサンドブラストした後、20重量%のHCl中、90〜100℃の温度で20分間エッチングした。
【0021】
乾燥後、シートを空気の存在下650℃で3時間熱処理に付し、酸化チタンの保護層の成長を得た。
次に、重量比80:15:5(モル比約83.9:14.8:1.3に相当)のイリジウム、タンタル及びチタンの酸化物に基づく触媒コーティングを、イリジウムの総装填量45g/mで保護層上に適用した。触媒コーティングの適用は、前駆体溶液(HClで酸性化されたTaCl水溶液をTiCl水溶液に加え、次いでHIrClをIr濃度が195g/lに達するまで加えることによって得た)を20層に塗装し、その後480℃で熱分解することによって実施した。
【0022】
このようにして得られた電極から10cm表面のサンプル3個を切り取り、アノード酸素発生下で促進寿命試験に付し、150g/lのHSO中、温度60℃及び電流密度30kA/mで失活時間(1Vの電位増加を観察するのに要した運転時間と定義される)を測定した。
【0023】
3個のサンプルの平均失活時間は4980時間であった。
同様の3個組のサンプルを1mg/l及び5mg/lのフッ化物イオンの存在下で同じ試験に付した。そのような試験後、それぞれ3630及び920時間の平均失活時間が検出された。
【0024】
同様の3個組のサンプルを20g/lのマンガンイオンの存在下で試験に付した。そのような試験後、2100時間の平均失活時間が検出された。
実施例4
200×200×3mmサイズのチタンシート・グレード1を脱脂し、プラズマスプレーによって重量比70:30のチタンとタンタルの酸化物の保護層を約25μmの厚さに堆積させた。
【0025】
次に、重量比75:24:1(モル比約76.6:23.1:0.3に相当)のイリジウム、タンタル及びチタンの酸化物に基づく触媒コーティングを、イリジウムの総装填量20g/mで保護層上に適用した。触媒コーティングの適用は、前駆体溶液(HClで酸性化されたTaCl水溶液をTiCl水溶液に加え、次いでHIrClをIr濃度が195g/lに達するまで加えることによって得た)を15層に塗装し、その後480℃で熱分解することによって実施した。
【0026】
このようにして得られた電極から10cm表面のサンプル3個を切り取り、アノード酸素発生下で促進寿命試験に付し、150g/lのHSO中、温度60℃及び電流密度30kA/mで失活時間(1Vの電位増加を観察するのに要した運転時間と定義される)を測定した。
【0027】
3個のサンプルの平均失活時間は3600時間であった。
同様の3個組のサンプルを1mg/l及び5mg/lのフッ化物イオンの存在下で同じ試験に付した。そのような試験後、それぞれ870及び120時間の平均失活時間が検出された。
【0028】
同様の3個組のサンプルを20g/lのマンガンイオンの存在下で試験に付した。そのような試験後、2460時間の平均失活時間が検出された。
比較例1
200×200×3mmサイズのチタンシート・グレード1を脱脂し、まず鉄グリットで表面粗さR値70〜100μmが得られるまでサンドブラストした後、20重量%のHCl中、90〜100℃の温度で20分間エッチングした。
【0029】
乾燥後、重量比80:20のチタンとタンタルの酸化物に基づく保護層をシートに適用した。総装填量は金属を基準にして0.6g/mであった(酸化物を基準にすると0.87g/mに相当)。保護層の適用は、前駆体溶液(HClで酸性化されたTaCl水溶液をTiCl水溶液に加えることによって得た)を三層に塗装し、その後500℃で熱分解することによって実施した。
【0030】
次に、重量比65:35のイリジウムとタンタルの酸化物に基づく触媒コーティングを、イリジウムの総装填量45g/mで保護層上に適用した。触媒コーティングの適用は、前駆体溶液(HIrClをTaCl水溶液にIr濃度が76g/lに達するまで加えることによって得た)を29層に塗装し、その後520℃で熱分解することによって実施した。
【0031】
このようにして得られた電極から10cm表面のサンプル3個を切り取り、アノード酸素発生下で促進寿命試験に付し、150g/lのHSO中、温度60℃及び電流密度30kA/mで失活時間(1Vの電位増加を観察するのに要した運転時間と定義される)を測定した。
【0032】
3個のサンプルの平均失活時間は2800時間であった。
同様の3個組のサンプルを1mg/lのフッ化物イオンの存在下で同じ試験に付した。全3個のサンプルとも100時間未満の失活時間が検出された。
【0033】
同様の3個組のサンプルを20g/lのマンガンイオンの存在下で試験に付した。そのような試験後、1550時間の平均失活時間が検出された。
比較例2
200×200×3mmサイズのチタンシート・グレード1を脱脂し、まず鉄グリットで表面粗さR値70〜100μmが得られるまでサンドブラストした後、20重量%のHCl中、90〜100℃の温度で20分間エッチングした。
【0034】
乾燥後、重量比80:20のチタンとタンタルの酸化物に基づく保護層をシートに適用した。総装填量は金属を基準にして0.6g/mであった(酸化物を基準にすると0.87g/mに相当)。保護層の適用は、前駆体溶液(HClで酸性化されたTaCl水溶液をTiCl水溶液に加えることによって得た)を三層に塗装し、その後500℃で熱分解することによって実施した。
【0035】
次に、重量比80:20のイリジウムとタンタルの酸化物に基づく触媒コーティングを、イリジウムの総装填量45g/mで保護層上に適用した。触媒コーティングの適用は、前駆体溶液(HIrClをTaCl水溶液にIr濃度が76g/lに達するまで加えることによって得た)を30層に塗装し、その後520℃で熱分解することによって実施した。
【0036】
このようにして得られた電極から10cm表面のサンプル3個を切り取り、アノード酸素発生下で促進寿命試験に付し、150g/lのHSO中、温度60℃及び電流密度30kA/mで失活時間(1Vの電位増加を観察するのに要した運転時間と定義される)を測定した。
【0037】
3個のサンプルの平均失活時間は2940時間であった。
同様の3個組のサンプルを1mg/lのフッ化物イオンの存在下で同じ試験に付した。全3個のサンプルとも100時間未満の失活時間が検出された。
【0038】
同様の3個組のサンプルを20g/lのマンガンイオンの存在下で試験に付した。そのような試験後、1020時間の平均失活時間が検出された。
比較例3
200×200×3mmサイズのチタンシート・グレード1を脱脂し、まず鉄グリットで表面粗さR値70〜100μmが得られるまでサンドブラストした後、20重量%のHCl中、90〜100℃の温度で20分間エッチングした。
【0039】
乾燥後、重量比80:20のチタンとタンタルの酸化物に基づく保護層をシートに適用した。総装填量は金属を基準にして0.6g/mであった(酸化物を基準にすると0.87g/mに相当)。保護層の適用は、前駆体溶液(HClで酸性化されたTaCl水溶液をTiCl水溶液に加えることによって得た)を三層に塗装し、その後500℃で熱分解することによって実施した。
【0040】
次に、重量比63:35:2のイリジウム、タンタル及びチタンの酸化物に基づく触媒コーティングを、イリジウムの総装填量45g/mで保護層上に適用した。触媒コーティングの適用は、前駆体溶液(HClで酸性化されたTaCl水溶液をTiCl水溶液に加え、次いでHIrClをIr濃度が76g/lに達するまで加えることによって得た)を29層に塗装し、その後520℃で熱分解することによって実施した。
【0041】
このようにして得られた電極から10cm表面のサンプル3個を切り取り、アノード酸素発生下で促進寿命試験に付し、150g/lのHSO中、温度60℃及び電流密度30kA/mで失活時間(1Vの電位増加を観察するのに要した運転時間と定義される)を測定した。
【0042】
3個のサンプルの平均失活時間は2170時間であった。
同様の3個組のサンプルを1mg/lのフッ化物イオンの存在下で同じ試験に付した。全3個のサンプルとも100時間未満の失活時間が検出された。
【0043】
同様の3個組のサンプルを20g/lのマンガンイオンの存在下で試験に付した。そのような試験後、940時間の平均失活時間が検出された。
前述の記載は本発明の制限を意図したものではない。本発明はその範囲から逸脱することなく異なる態様に従って使用でき、その範囲は添付の特許請求の範囲によって一義的に定義されている。
【0044】
本願の記載及び特許請求の範囲全体にわたって、“含む(comprise)”という用語並びに“comprising”及び“comprises”などのその変形は、その他の要素又は添加物の存在を排除しないものとする。
【0045】
文献、行為、材料、装置、物品などの考察は、本発明の背景を提供する目的のためだけに本明細書に含められている。これらの事項のいずれか又はすべてが先行技術の基礎の一部を形成していた、又はそれらが本願の各クレームの優先日より前に本発明の関連分野で共通の一般的知識であった、ということを示唆又は表しているのではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学プロセスにおける酸素発生用電極であって、バルブ金属の基材と、金属を基準にしてIr76〜84%、Ta15〜23%、Ti0.2〜1.3%のモル組成を有するイリジウム、タンタル及びチタンの酸化物の外層を含む触媒コーティングとを含む電極。
【請求項2】
前記触媒コーティングが、金属を基準にしてIr60〜70%、Ta30〜40%のモル組成を有するイリジウムとタンタルの酸化物の内層を含む、請求項1に記載の電極。
【請求項3】
前記触媒コーティングが、20〜50g/mのイリジウムの特定装填量を有する、請求項1又は2に記載の電極。
【請求項4】
前記内層のイリジウムの特定装填量が、前記触媒コーティングのイリジウムの総特定装填量の15〜25%に相当する、請求項2又は3に記載の電極。
【請求項5】
前記基材と前記触媒コーティングとの間に間置された、チタン又はタンタルの酸化物に基づく中間保護層を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の電極。
【請求項6】
前記中間保護層が、金属を基準にしてTi75〜85%、Ta15〜25%のモル組成を有するチタンとタンタルの酸化物の混合物からなる、請求項5に記載の電極。
【請求項7】
前記基材のバルブ金属がチタンであり、前記中間保護層が、基材の熱酸化によって形成された酸化チタンからなる、請求項5に記載の電極。
【請求項8】
1リットルあたり180グラムのイリジウムより高い濃度のイリジウム前駆体を含有する溶液の適用及びその後の熱分解による前記外層の形成を含む、請求項1〜7のいずれか1項に記載の電極の製造法。
【請求項9】
1リットルあたり70〜80グラムのイリジウムを含む濃度のイリジウム前駆体を含有する溶液の適用及びその後の熱分解による前記内層の形成を含む、請求項2〜7のいずれか1項に記載の電極の製造法。
【請求項10】
所望により真空下での、火炎又はプラズマスプレー、電着及び化学又は物理気相成長方からなる群から選ばれる技術の手段による前記中間保護層の形成を含む、請求項5に記載の電極の製造法。
【請求項11】
前記イリジウム前駆体がHIrClである、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項12】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の電極上で、電解槽から酸素をアノード的に発生させることを含む工業電気化学プロセス。
【請求項13】
前記電解槽が少なくとも0.2ppmのフッ化物イオンを含有する、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記電解槽が少なくとも1g/lのマンガンイオンを含有する、請求項12又は13に記載のプロセス。

【公表番号】特表2013−500397(P2013−500397A)
【公表日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−522140(P2012−522140)
【出願日】平成22年7月27日(2010.7.27)
【国際出願番号】PCT/EP2010/060839
【国際公開番号】WO2011/012597
【国際公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【出願人】(507128654)インドゥストリエ・デ・ノラ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (29)
【Fターム(参考)】