説明

工程紙用ポリエステルフィルム

【課題】 光エネルギーを用いて材料を溶融することによる孔開け、切断等の加工をする工程にて好適に使用することのできる工程紙用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 光エネルギーを照射して材料を溶融加工する工程で工程紙として使用されるポリエステルフィルムであって、高圧水銀ランプから導かれた、光束のエネルギーが40W/cmの光を照射した時の熱変換エネルギーが0.5〜3.5W/gであることを特徴とする工程紙用ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ等の光線を用いて材料を溶融することによる孔開け、切断等の加工工程に使用することのできる工程紙用ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルフィルムは、強靱で破れ難く、テンションをかけて加熱される工程内でのフィルムの変形が少ないという利点から、各種機能材料製造用の工程紙として広く使用されている。ポリエステルフィルムの形態としては、フィルムそのものの場合、または、表面にシリコーン樹脂、ポリオレフィン樹脂、あるいはフッ素系樹脂等の離型層を施したポリエステルフィルムの場合がある。
【0003】
近年、携帯電話など通信分野に使用される電子部品の小型化、高周波化が進むに伴い、コンデンサ、コイルを一つの部品内に集積させた積層セラミック部品、あるいはLTCCと呼称される低温焼成セラミック積層回路基板が用いられるようになっている。これらの積層セラミックデバイスは、低誘電率の絶縁体層内に内部電極によって形成したコンデンサ、コイルを互いに結線し、また表層電極と内部電極とを、あるいは内部電極と内部電極とを、貫通孔に導電材を充填するなどの方法で結線して導通回路を形成している。
【0004】
こうした積層セラミックデバイスは、セラミックのスラリーを、シリコーン樹脂離型層を有するポリエステルフィルムに塗工し、乾燥して得たグリーンシートと呼ばれる状態のセラミックシートに、電極の印刷およびこの印刷前に電極と電極とを結線する貫通孔の形成をした後、積層、焼成して製造する。この貫通孔形成法として、特許文献1にはポリエステルフィルム面側から、レーザ加工することが提案されている。
【0005】
レーザなどの光エネルギーを照射して、通常の透明なポリエステルフィルム面から貫通孔を開けるには、吸収した光エネルギーを効率良く熱エネルギーに変換させなければならない。この変換効率が低いとポリエステルフィルムへの貫通孔の溶融加工が不十分となり、貫通孔へ導電材を充填できないという問題が発生する。
【0006】
また別な例として、薄いポリイミドフィルムやその他の腰の弱い機能材を強靱なポリエステルフィルムと軽く接着させた状態で、切断することがあり、この際にも光エネルギーによる加工方法が品質、効率の点から採用される場合がある。この場合も、熱変換効率が低いとポリエステルフィルムの溶融が不十分となって切断ができないという問題が発生する。
【0007】
かかる問題点の解決方法として、特許文献2には、紫外線域の365nmでの光線透過率が30%以下であるポリエステルフィルムが提案されている。光エネルギーによる溶融加工には光エネルギーを熱エネルギーに効率良く変換してポリエステルフィルムを十分に加熱する必要があるが、特定波長の透過率では熱エネルギーへの変換効率は一義的には決定されない。すなわち当該目的に合致したポリエステルフィルムの設計には吸収した光エネルギーの熱エネルギーへの変換効率を制御する必要があるが、従来技術にはこの着眼点がなく、ポリエステルフィルムの設計精度が十分でない。
【0008】
【特許文献1】特開2003−124630号公報
【特許文献2】特開2006−152138号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、光エネルギーを用いて材料を溶融することによる孔開け、切断等の加工をする工程にて好適に使用することのできる工程紙用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリステルフィルムが工程紙用として有用であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の要旨は、光エネルギーを照射して材料を溶融加工する工程で工程紙として使用されるポリエステルフィルムであって、高圧水銀ランプから導かれた、光束のエネルギーが40W/cmの光を照射した時の熱変換エネルギーが0.5〜3.5W/gであることを特徴とする工程紙用ポリエステルフィルムに存する。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリエステルフィルムは、単層あるいは2層以上の多層であってもよく、押出口金から溶融押し出され、次いで、縦方向および横方向の二軸方向に延伸させたフィルムであってもよい。
【0013】
本発明において、ポリエステルとは、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを溶融重縮合させて得られる。芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。溶融重合法としては、例えば、芳香族ジカルボン酸の低級アルキルエステルとグリコールとの間でエステル交換反応をさせるか、あるいは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接エステル化させるかして、実質的に芳香族ジカルボン酸のビスグリコールエステル、またはその低重合体を形成させ、次いでこれに重合触媒を添加し減圧下、加熱して 重縮合させる方法が採用される。代表的なポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレ−ト(PET)、ポリエチレン−2,6−ナフタレ−ト(PEN)等が例示される。
【0014】
また、本発明で用いるポリエステルは、ホモポリエステルであっても共重合ポリエステルであってもよい。共重合ポリエステルの場合は、30モル%以下の第三成分を含有した共重合体である。共重合ポリエステルのジカルボン酸成分としては、イソフタル酸、フタル酸、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、および、オキシカルボン酸(例えば、P−オキシ安息香酸など)の一種または、二種以上が挙げられ、グリコール成分として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール等の一種または二種以上が挙げられる。
【0015】
本発明のフィルムは、高圧水銀ランプから導かれた光を、光束のエネルギーが40W/cmとなるようにしてポリエステルフィルムに照射した時の熱変換エネルギーが0.5〜3.5W/gであることに特徴を有するものであるが、これを達成する方法としては、炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム等の遮光性の無機粒子やカーボンブラックを配合する方法や、光を吸収し熱エネルギーに変換する有機化合物を配合する方法を挙げることができる。また微細加工用レーザとして良く用いられるのは、発振波長337nmの窒素レーザおよび同355nmのYAGレーザであることから、遮光性のない透明粒子や有機化合物を用いる場合には、概ね320〜370nmの波長域の光を吸収して熱エネルギーに変換する性質の物質を用いる。
【0016】
この性質を持つ有機化合物の一例として、紫外線吸収剤を挙げることができる。紫外線吸収剤としては、ポリエステルに含有させることができる紫外線吸収剤であればよい。例えば、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリシレート系化合物、シアノアクリレート系化合物、ベンゾオキサジン系化合物等がある。これらの中でも、トリアジン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾオキサジン系化合物がポリエステルとの相溶性が良く好ましい。トリアジン系化合物の例としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールを挙げることができる。ベンゾオキサジン系化合物は、概ね320〜370nmの波長域の光を吸収して熱エネルギーに変換する効率が高いことから、その配合量を比較的少なくできるので、より好ましい。ベンゾオキサジン系化合物の例として、下記構造のものを挙げることができる。
【0017】
【化1】

【0018】
上記式中、Rは2価の芳香族炭化水素残基を表し、X1およびX2はそれぞれ独立して水素または以下の官能基群から選ばれるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0019】
官能基群:アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ハロゲン基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、エステル基、ニトロ基代表的な化合物として、2,2−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン]が挙げられる。
【0020】
本発明では、単層構成の二軸延伸ポリエステルフィルムに紫外線吸収剤を配合したフィルムであってもよく、また、積層フィルムであってもよい。本発明では、工程紙として使うが、紫外線吸収剤がセラミック層等の機能材と接触することを嫌う場合は、積層構造のフィルムとし、内層に紫外線吸収剤を配合することが好ましい。内層に紫外線吸収剤を配合する方法としては、紫外線吸収剤を含有するポリエステルと紫外線吸収剤を含まないかまたは少量の紫外線吸収剤を含むポリエステルとを共押出しする方法がよい。最外層には紫外線吸収剤がないことが好ましいが、工程の汚れやフィルムの特性を損ねない範囲で含有していても構わない。また、最外層の厚みは片側の厚み分として、0.5μmからフィルム全体の厚みの2/5の範囲が好ましい。厚みが薄すぎると紫外線吸収剤のブリードアウトを防ぐことができず、厚すぎると紫外線吸収剤を含有させる層の紫外線吸収剤が多くなり濁りが出たり、デラミネーションの原因となったりしやすい傾向がある。
【0021】
本発明において、有機物を用いて光を吸収し熱エネルギーに変換する方法として、上記のように紫外線吸収剤を含有させる方法のほかに、ナフタレンジカルボン酸をカルボン酸成分とするポリエステルを使う方法がある。ナフタレンジカルボン酸をカルボン酸成分とするポリエステルとは、2,6―ナフタレンジカルボン酸、2,7―ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸から選ばれる少なくとも1種のナフタレンジカルボン酸を酸成分とするポリエステルである。このポリエステルの酸成分としては、ナフタレンジカルボン酸の他に、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,4−シクロヘキシルジカルボン酸のようなジカルボン酸の1種以上を含んでいても構わない。ナフタレンジカルボン酸をカルボン酸成分とするポリエステルに使うグリコールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等を挙げることができる。これらの酸成分とグリコール成分とからなるポリエステルは、先に挙げたポリエステルの製造方法にて得ることができる。
【0022】
一方、光エネルギーによる加工時の位置決めなどの目的で、ポリエステルフィルムに透過視認性が求められる場合には、視認性要求度に応じて、有色系の粒子よりは白色系の粒子を配合したポリエステルの方が好ましく、次に熱エネルギー変換物質としてナフタレンジカルボン酸をカルボン酸成分とするポリエステルを使う方法が好ましく、さらには紫外線吸収剤の使用がより好ましい。またこの視認性は、高圧水銀ランプから導かれる光束のエネルギーが40W/cmとなるように照射した時の熱変換エネルギーが0.5〜3.5W/gの範囲で、これら配合物質の濃度あるいは配合層の厚みなどで任意に調整することができる。
【0023】
本発明のポリエステルフィルムは、炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミナ、硫酸バリウム等の無機粒子やカーボンブラック、または光エネルギーを吸収し熱エネルギーに変換する有機化合物を含有し、高圧水銀ランプから導かれポリエステルフィルムに照射される光束のエネルギーが40W/cm時のポリエステルフィルム熱変換エネルギーが0.5W/g以上であることが必要であり、好ましくは0.8W/g以上、より好ましくは1.5W/g以上である。一方、3.5W/gを超えるようにすると、含有させる添加物量が多くなりフィルムの生産性が劣る。この場合、製造コスト的にも不利になる。
【0024】
本発明では、ナフタレンジカルボン酸をカルボン酸成分とするポリエステルを単独で用いてフィルムとしてもよく、また、その他のポリエステルに配合してフィルムとしてもよい。その他のポリエステルは、上記に記載の同様の手法で得ることができる。
【0025】
ナフタレンジカルボン酸をカルボン酸成分とするポリエステルとしては、ポリエチレン−2,6−ナフタレートを挙げることができる。また、本発明のポリエステルフィルムの例としては、ポリエチレン−2,6−ナフタレートそのもののフィルムや、ポリエチレン−2,6−ナフタレートとポリエチレンテレフタレートを混合したフィルムや、ポリエチレン−2,6−ナフタレートとポリエチレンテレフタレートを積層したフィルムを挙げることができる。 その他に、上記の酸成分やグリコール成分を共重合したポリエステルであってもよく、また、ナフタレンジカルボン酸を成分とするポリエステル化合物を含有するポリエチレンテレフタレートフィルムであってもよい。必要に応じて他の成分や添加剤を含有していてもよい。
【0026】
本発明のポリエステルには、フィルムの走行性を向上する等の目的で、アクリル樹脂、グアナミン樹脂等の有機粒子や触媒残渣を粒子化させた析出粒子を含有させることができる。含有量を上げるとフィルムの表面の粗度が上がるので、工程紙として使用する際に、平坦な面からマット面までフィルムの粗度設計に応じ、含有量を適宜決めることができる。また、必要に応じて従来公知の各種安定剤、潤滑剤、帯電防止剤等を適宜加えることもできる。
【0027】
本発明のポリエステルフィルムを製膜する方法としては、通常知られている製膜法でよく、特に制限はない。例えば、逐次二軸延伸法として、押出機より溶融押し出して得た未延伸フィルムを、ロール延伸法により、60〜150℃で2〜7倍に延伸して、一軸延伸ポリエステルフィルムを得、次いで、テンター内で先の延伸方向とは直角方向に80〜150℃で2〜7倍に延伸し、さらに、150〜250℃で1〜600秒間熱処理を行う製膜方法が良く知られている。未延伸フィルムを縦、横同時に延伸する方法でもよい。
【0028】
積層フィルムの製膜方法の例としては、2種(A,B)のポリエステルを2台の押し出し機から押し出し、口金内で2種3層(A/B/A)に積層させ、口金より溶融押し出し、冷却ロール上でシート状に成形し、次いで先の方法にて二軸に延伸する方法を挙げることができる。
【0029】
本発明のフィルムはそのまま工程紙として使ってもよく、また、剥離性のある層を設層して工程紙として使ってもよい。剥離性のある層としては、シリコーン樹脂を含有する層、ポリオレフィン樹脂を含有する層、フッ素系樹脂を含有する層を挙げることができる。これらの層の設層は、コーティングする方法でもよく、フィルムを積層する方法でもよい。通常設置される層の厚みはポリエステルフィルムの厚みと比較すると無視できる程度に薄く、光エネルギーによる溶融加工に影響は及ぼさない範囲とすることが好ましく、具体的にはポリエステルフィルムの厚みの2%以下とすることが望ましい。
【0030】
また、本発明フィルムには、異物の付着防止のため、少なくとも片面に帯電防止コート層を設けてもよい。前記の剥離性のある層や帯電防止層をコーティングする方法としては、二軸延伸フィルムに従来技術でコートしてもよくまた、ポリエステルフィルムを製造する工程中で、従来技術でコートしてもよい。例えば、先に説明した逐次二軸延伸法においては、縦一軸延伸後のフィルムにコートした後、横に延伸する方法、または、二軸延伸フィルム後にコートし乾燥する方法がある。方法に制約はないが、一軸延伸フィルムにコートし、次いで横延伸し、熱処理する方法は、コート層を均一に薄くできる等の特徴があり好ましい。
【0031】
ポリエステルフィルムにコートする方法としては、例えば、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるような塗布技術を用いることができる。具体的には、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、カレンダコーター、押出コーター、バーコーター等のような技術が挙げられる。
【0032】
本発明のポリエステルフィルムの厚みはフィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常用いられるセラミックスラリーの塗布厚みに対応し、25〜250μmの厚みのポリエステルフィルムが好適に用いられる。より好ましくは38〜188μmの範囲が用いられる。さらに好ましくは50〜100μmの範囲が用いられる。
【0033】
現在の当業者が利用可能な紫外線レーザ加工機の発振波長は、窒素レーザの337nmおよびYAGレーザの355nmである。しかしながらこれらの発振波長を照射してのポリエステルフィルムの熱エネルギー変換効率の評価を再現性良く行うことは非常に難しい。一方、示差走査熱量測定(DSC)の装置は一般的には温度の時間変化を制御しつつ試料の温度変化に伴う吸発熱量を測定する再現性の良い確立された方法であるが、本発明者は試料に高圧水銀ランプから光ファイバにより導いた光束を照射した状態で温度を一定に保つために必要な熱流量の測定を実施した。光源として用いた高圧水銀ランプは、365nmに特に強い主発光波長を持つことから、窒素レーザまたはYAGレーザ照射時の熱変換効率を評価できることを見いだした。
【発明の効果】
【0034】
本発明のポリエステルフィルム自身が、光エネルギーを熱エネルギーに変換する効率に優れることから、このフィルムは、セラミックグリーンシート等の機能材料を、光エネルギーを用いて溶融することによる孔開け、切断等の加工をする工程にて工程紙として好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例および比較例における評価方法は下記のとおりである。また、実施例および比較例中の「部」は「重量部」を示す。
【0036】
(1)光エネルギー変換効率の評価
ポリエステルフィルムの試料5〜10mgをオープン型の試料パンに入れ示差走査熱量計(Q2000:ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)にセットし、その上に照射部品(フォトカロリメーターアクセサリー:ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製)を設置し、高圧水銀ランプ光源から光ファイバで光束を導いて一定の光エネルギー(40W/cm)を照射しながら試料を30℃に維持するべく冷却動作を行い、その際に試料に流れ込む熱流量を測定した。
【0037】
(2)UVレーザ加工性の評価
常温下でポリエステルフィルムに波長355nmのレーザ光束を0.3mm径に絞り、0.5秒間、1.0秒間の2水準で最大ピーク出力8kwの条件で照射して、それぞれ貫通孔の開き具合を目視で評価した。評価基準としては不貫通を使用不可と判断した。
【0038】
以下の実施例および比較例にて使うポリエステル原料は次の方法にて製造した。
【0039】
<ポリエステルA(ポリエチレンテレフタレート)>
エチレングリコールとテレフタル酸とから常法により重縮合され、平均粒径2.2μmのシリカ粒子600ppmを含むペレット状にした汎用ポリエステル材料である。ポリエステルAの極限粘度は、0.66であった。
【0040】
<ポリエステルB(紫外線吸収剤配合ポリエステル)の製造>
ポリエステルAをベント付き二軸押出機に供して、紫外線吸収剤として2,2−(1,4−フェニレン)ビス[4H−3,1−ベンゾオキサジン−4−オン](CYTEC社製 CYASORB UV−3638(分子量369:ベンゾオキサジン系))を10重量%濃度となるように供給して溶融混練りしてチップ化を行い、紫外線吸収剤マスターバッチポリエステルチップ(ポリエステルB)を製造した。得られたポリエステルBの極限粘度は、0.59であった。
【0041】
<ポリエステルC(白色無機粒子配合ポリエステル)の製造>
ポリエステルAをベント付き二軸押出機に供して、平均粒径0.3μmの二酸化チタン粒子を40重量%濃度となるように供給して溶融混練りしてチップ化を行い、二酸化チタンマスターバッチポリエステルチップ(ポリエステルC)を製造した。
【0042】
<ポリエステルD(黒色粒子配合ポリエステル)の製造>
ポリエステルAをベント付き二軸押出機に供して、ファーネス法により製造した凝集体平均粒径が0.13μmのカーボンブラックを10重量%濃度となるように供給して溶融混練りしてチップ化を行い、カーボンブラックマスターバッチポリエステルチップ(ポリエステルD)を製造した。
【0043】
実施例1:
ポリエステルA70部とポリエステルC30部とを混合した原料を、295℃で押出機よりシート状に押し出し急冷して無定形シートを得た。得られたシートを90℃にて縦方向に3.0倍延伸し、次いで100℃にて横方向に3.5倍延伸し、230℃で熱固定して、厚み50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。高圧水銀ランプから照射される光束のエネルギーが40W/cm時の熱変換エネルギーを測定したところ1.6W/gであった。UVレーザ(355nm)を最大ピーク出力8kwの条件にて0.5秒間、1.0秒間の2水準照射し、それぞれ貫通孔の開き具合を目視で評価した結果、いずれも貫通していた。
【0044】
実施例2:
実施例1において、ポリエステルA90部とポリエステルD10部を混合した原料を用いたこと以外、実施例1と同様にして、厚み50μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た。高圧水銀ランプから照射される光束のエネルギーが40W/cm時の熱変換エネルギーを測定したところ3.3W/gであった。UVレーザ(355nm)を実施例1と同条件にて2水準照射し、それぞれ貫通孔の開き具合を目視で評価した結果、いずれも貫通していた。
【0045】
実施例3:
ポリエステルAをI層の原料とし、ポリエステルAとポリエステルBとをそれぞれ90部、10部の割合で混合した混合原料をII層の原料として、それぞれ乾燥し、2台の押出機に各々を供給し、各々285℃で溶融した後3層となる様に多層ダイへ導き、I層を最外層(表層)、II層を中間層として、40℃に冷却したキャスティングドラム上に、2種3層(I/II/I)の層構成で共押出し冷却固化させて無配向シートを得た。次いで90℃にて縦に3.5倍に延伸して縦一軸延伸フィルムを得た。このフィルムを、100℃の雰囲気で横に4.0倍延伸し、次いで235℃にて熱処理して、厚さ100μmの2軸延伸ポリエステルフィルムを得た。このフィルムの厚み構成は、8μm/84μm/8μmであった。高圧水銀ランプから照射される光束のエネルギーが40W/cm時の熱変換エネルギーを測定したところ1.0W/gであった。UVレーザ(355nm)を実施例1と同条件にて2水準照射し、それぞれ貫通孔の開き具合を目視で評価した結果、0.5秒間では少し孔面積が小さくなったが貫通し、1.0秒間は十分に貫通していた。
【0046】
比較例1:
上記で得たポリエステルAのみを使って、縦方向に3.5倍延伸し、次いで横方向に3.5倍延伸し、230℃で熱固定して、厚み50μmの二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムを得た。高圧水銀ランプから照射される光束のエネルギーが40W/cm時の熱変換エネルギーを測定したところ0.3W/gであった。UVレーザ(355nm)を実施例1と同条件にて2水準照射し、それぞれ貫通孔の開き具合を目視で評価した結果、いずれも不貫通だった。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のフィルムは、例えば、各種機能材料製造用の工程紙として、レーザ等の光線を用いる孔開け、切断等の加工工程にて好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光エネルギーを照射して材料を溶融加工する工程で工程紙として使用されるポリエステルフィルムであって、高圧水銀ランプから導かれた、光束のエネルギーが40W/cmの光を照射した時の熱変換エネルギーが0.5〜3.5W/gであることを特徴とする工程紙用ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2009−67842(P2009−67842A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−235395(P2007−235395)
【出願日】平成19年9月11日(2007.9.11)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】