説明

左右両側に引き手を有する引き戸

【課題】 2枚の引き違いの引き戸を有する押入れや戸棚、食器棚等は、その2枚の引き戸の位置関係により、奥の引き戸の引き手が隠れてしまいその引き戸の移動を簡単に行いがたい状態になることが多々ある。そこで、2枚の引き戸がどんな位置関係にあるときでも、奥の引き戸の移動が簡単にでき、また、左右の引き戸が入れ代わった状態でも、違和感のない閉まった状態を生じさせることのできる引き戸を提供する。
【解決手段】 2枚の引き違いの引き戸に従来から存在する引き手1na、2naに加えて、引き手1nb、2nbの存在する引き戸。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、押入れや戸棚、食器棚等の引き戸の引き手の位置および数に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の2枚の引き違いの引き戸を有する押入れや戸棚、食器棚等 (以下押入れとする)の引き戸は、正しく閉まった状態では、図13のように向かって右側にある引き戸1oにはその引き戸の右側のみに引き手1oaが、左側にある引き戸2oにはその左側のみに引き手2oaが存在する。
【先行技術文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−293121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の引き手の位置では、図13の状態の押入れの左側の引き戸2oを右側の引き戸1oの後ろに完全に移動し図9のように左側を全開した後、再び図13のように、押入れを正しく閉まった状態にもどそうとすると、奥の引き戸2oは完全に隠れているので図10のようにいったん手前の引き戸1oを左側に少し移動することになる。ところが、その時、奥の引き戸2oは見えるようにはなるが、その見える範囲には引き手が存在しない。
【0005】
したがって、引き戸2oを左側に移動するには、引き戸2oの見えている部分に指又は手をすべらないように押し当てて左側に力を加え移動するか、あるいは、図10のSのあたりの引き戸2oとその右側の押入れの外枠とのわずかな隙間に指先か爪の先をこじ入れて引き戸2oを左側に移動することになる。いずれの場合も引き戸や指先、爪の先に無理な力を加えることになる。
【0006】
上記の方法で引き戸2を左側に少し移動した後、図11のように引き戸1oを右端まで移動すると、引き戸2oの引き手2oaが見えるようになる。その引き手2oaに指をかけ引き戸2oを左端まで移動し、押入れを閉めることになる。
【0007】
図9の状態から図13の押入れが正しく閉まった状態にするために考えられる他の方法は、図12に示すようにいったん引き戸1oを左端まで移動し引き戸2oの引き手2oaに指をかけ引き戸2oを少し左側に移動した後、引き戸2oの右側にできる引き戸2oと外枠との隙間に手を入れ引き戸2oを左端まで移動し、再び引き戸1oを右端まで移動し、押入れを閉めるというものである。この方法によると引き戸や指先、爪の先に無理な力はかからないが、引き戸1oを右端から左端そしてまた右端まで移動させなければならず、個人差はあろうが、億劫に感じられる。
【0008】
その他にも図9の状態から図13の状態にするのにいくつかの方法(手順)はあろうが、いずれの場合も本発明の引き戸にした場合、手や指、爪の先、あるいは引き戸に無理な力をかけたり、億刧に感じたりする頻度は減少する。
【0009】
ただし、以上の説明は、押入れが正しく閉まった状態で向かって右側の引き戸が手前、左側の引き戸が奥にある場合の説明であり、向かって右側の引き戸が奥、左側の引き戸が手前の場合は当然のごとく左右逆の現象が生じる。なお、ここでいう、正しく閉まった状態というのは、引き手が外側に存在する状態で閉まっている図13のような状態をいうのであって、引き手が内側に存在する状態で閉まっている図12のような状態を正しく閉まった状態とはいわない。
【0010】
そこで、この発明は、引き戸がどんな状態にあるときでも、従来の引き戸と比べて、同等か、あるいは、それよりも無理なく迅速に開閉ができるような引き戸を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上の課題を解決するために第一発明は、引き手を左右両側に有することを特徴とした引き戸である。
また、第二発明は、同形の引き手が左右対称の位置に存在することを特徴とする引き戸である。
【発明の効果】
【0012】
第一発明によれば、前述の図9の状態から押入れが正しく閉まった状態にする時の過程のひとつをあらわした図10は、それぞれの引き戸が左右に引き手を有するので、図7のようになる。すなわち、図10の状態では、引き戸2oの引き手は見えなかったが、図7に示すように左右に引き手を有する引き戸であれば、引き戸2nの引き手2nbが見えるので、それに指をかけ引き戸2nを左側に移動させることは容易である。引き戸や指先、爪の先に無理な力をかけなくてすむのである。
【0013】
また、第二発明によれば、同じく前述の図9の状態から押入れが閉まった状態にする時の過程のひとつをあらわした図12は、それぞれの引き戸が左右対称の位置に同形の引き手を有するので、図2のようになる。すなわち左右対称の位置に同形の引き手を有する引き戸が、向かって右側の引き戸を手前にして正しく閉まった状態をあらわした図1と左右の引き戸が入れ代わっている状態を示した図2とを比べたとき、引き手の見える位置が正面観では、同じ位置になる。したがって、図2の状態をもって、押入れが正しく閉まった状態としてもほとんど違和感はない。
【0014】
一方、右側か左側かのいずれか片方にしか引き手のない従来の引き戸の押入れが正しく閉まった状態をあらわした図13とその左右の引き戸が入れ代わった状態の図12とでは、引き手の見える位置が明らかに違う。したがって、図12の状態をもって押入れが正しく閉まった状態とは、やはり、言いがたい。よって、この引き手が同形で、左右対称の位置に存在することを特徴とする引き戸という第二発明により、二枚の引き戸の左右が入れ代わってもほとんど違和感のない正しく閉まった状態を生じさせることができる。よって、左側を全開した図8の状態から引き戸1nを左端へ移動するだけという簡単な作業で図2の、いわゆる押入れがほとんど違和感のない正しく閉まった状態にできるのである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の引き戸を使用した押入れで、正しく閉まった状態を示す正面図。
【図2】図1の左右の引き戸が入れ代わった状態の正面図。
【図3】図1の点線Aにおける断面図。
【図4】周囲に幅rの縁取りのある本発明の引き戸を有する押入れの正面図。
【図5】縦の縁に幅rの縁取りのある本発明の引き戸を有する押入れの正面図。
【図6】縁取りのない本発明の引き戸を有する押入れの正面図。
【図7】図10の状態にある引き戸1o,2oを本発明の引き戸1n、2nに入れ代えた状態を示す正面図。
【図8】図9の状態にある引き戸1o,2oを本発明の引き戸1n、2nに入れ代えた状態を示す正面図。
【図9】従来の押入れで、左側が全開した状態の正面図。
【図10】図9の状態から引き戸1oを少し左側に移動した状態を示す正面図。
【図11】図10の状態から引き戸2oを左側に少し移動した後、引き戸1oを右端まで移動させた状態を示す正面図。
【図12】図9の状態から引き戸1oを左端まで移動した状態を示す正面図。
【図13】従来の引き戸を使用した押入れで、正しく閉まった状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
この発明の一実施形態を、図1に示す。図1を含め以下の図は押入れをイメージして描いているが、引き違いの2枚の引き戸を有する戸棚や食器棚等も同様である。
図1において引き戸の引き手1na、2naの存在する位置は、図13に示す従来の引き戸の引き手1oa、2oaの存在する位置と基本的に大差はない。
【0017】
ただ、留意しなければならないのは、本発明においては、図1のように引き手1nb、2nbが存在するので、2nbが引き戸1nの後ろに隠れないような位置に配することである。すなわち、図3に示すように、2枚の引き戸の重なる部分の幅rよりも、引き戸2nの向かって右側の端から引き手2nbの右端までの長さtの方が長くなくてはならない。その長さtにより、引き手1nb、1na、2naの位置も図3のように決定される。
【0018】
こうすることで図1の引き戸1nと2nの左右が入れ代わった図2の状態になっても違和感がほとんどない正しく閉まった状態ができるのである。さらに付け加えるなら、rの幅の縁取りが、引き戸の周囲に、もしくは縦の縁にあれば(図4、図5)、それがない場合(図6)よりも、4つの引き手の位置のバランスがよく見える。
【0019】
この発明による引き戸は、3枚や4枚の引き戸を有する押入れや戸棚、食器棚等に用いても、2枚の場合と同様、使い勝手の良いものとなる。
【0020】
さらに、この発明による引き戸は、部屋と部屋の間仕切りとして使用されている襖や障子などにも応用することができる。その際は、引き戸の表と裏の同じ位置に引き手を付しておかなければならない。つまり、一枚の引き戸について表裏合わせて4つの引き手が存在することになる。こうすることで、使い勝手の良さを向上させることができる。
【符号の説明】
【0021】
1n 本発明の、手前に位置する引き戸
2n 本発明の、奥に位置する引き戸
1na 引き戸1nに存在する引き手のうち向かって右側にあるもの
1nb 引き戸1nに存在する引き手のうち向かって左側にあるもの
2na 引き戸2nに存在する引き手のうち向かって左側にあるもの
2nb 引き戸2nに存在する引き手のうち向かって右側にあるもの
点線A 図3の断面図を作成するための面を表す
r 正しく閉まった状態における引き戸1nと引き戸2nの重なりの幅
t 本発明の引き戸の縦の縁から近い方にある引き手までの長さ
S 引き戸2oと押入れの外枠の間に、存在するかしないかのわずかな隙間
1o 従来の、手前に位置する引き戸
2o 従来の、奥に位置する引き戸
1oa 引き戸1oの引き手
2oa 引き戸2oの引き手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右両側に引き手を有することを特徴とする引き戸。
【請求項2】
前記引き手は左右同形で、左右対称の位置に存在することを特徴とする請求項1記載の引き戸。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−275845(P2010−275845A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145809(P2009−145809)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(509172055)