説明

左手/右手系複合伝送路

【課題】薄型を保ちつつ簡単にキャパシタ及びインダクタの値を制御することができる左手/右手系複合伝送路を提供する。
【解決手段】グランド板3に対して各々垂直に配置された互いに平行な一対の第1平行導体板41と、一対の第1平行導体板41間に挟まれかつ平行に配置された一対の第2平行導体板42と、一対の第2平行導体板42間に挟まれかつ平行に配置されると共にグランド板3側の一端がグランド板3に接続されるように配置された導体板43と、一対の第1平行導体板41と一対の第2平行導体板42との間をそれぞれ接続する一対の第1棒状導体44と、第2平行導体板42同士を接続する第2棒状導体45と、第2棒状導体45とグランド板3を接続する第3棒状導体46から構成される。一対の第3平行導体板5がグランド板3と離間して配置されると共に、導体ユニット4を挟みかつ第1平行導体板41に対して平行になるように配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左手/右手系複合伝送路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、伝送線路として用いられる同軸線路やマイクロストリップ線路等は、インダクタLR及びキャパシタCRを用いた等価回路で表すと、入力と出力との間にインダクタLRが複数直列に接続され、入力−出力間とグランドとの間にキャパシタCRが接続されたLCL構造のローパスフィルタ(LPF)の構成をとるものであった。このようなLCL構造の伝送路は、右手系伝送路と呼ばれ、位相−周波数特性が線形となる特性を備えている。
【0003】
これに対して、位相−周波数特性が非線形となる特性を備えた左手系伝送路が研究されている。この左手系伝送路は、インダクタLL及びキャパシタCLを用いた等価回路で表すと、入力と出力との間にキャパシタCLが複数直列接続され、入力−出力間とグランドとの間にインダクタLLが接続されたCLC構造のハイパスフィルタ(HPF)の構造をとることになる。現実的には純粋なCLC構造の左手系伝送路は存在せずに、左手系伝送路と右手系伝送路とを組み合わせた左手/右手系複合伝送路を左手系伝送路として用いている。
【0004】
上記左手/右手系複合伝送路は、インダクタLR、LLとキャパシタCR、CLを用いた等価回路で表すと、入力と出力との間にインダクタLR及びキャパシタCLが複数直列接続され、入力−出力間とグランドとの間に互いに並列接続されたインダクタLL及びキャパシタCRが接続されている。
【0005】
上記左手/右手系複合伝送路は、インダクタLR、LLとキャパシタCR、CLを用いた等価回路で表すと、入力と出力との間にインダクタLR及びキャパシタCLが複数直列接続され、入力−出力間とグランドとの間に互いに並列接続されたインダクタLL及びキャパシタCRが接続されている。
【0006】
上述したような等価回路を実現する左手/右手系複合伝送路として、例えば、図8に示された構成のものが提案されている(非特許文献1)。同図に示すように、左手/右手系複合伝送路100は、立方体状の誘電性を有する誘電体セラミック101と、この誘電体セラミック101の表面に設けられた4枚のグランド板102と、この誘電体セラミック101内に設けられた複数の導体ユニット103と、を備えている。
【0007】
上記4枚のグランド板102は、互いに連結されて接地されている。4枚のグランド板102は、誘電体セラミック101を囲むように誘電体セラミック101の図8中の正面、背面、上面及び下面にそれぞれ配置されている。上記導体ユニット103は、図8に示す例では2つ設けられている。この導体ユニット103は各々、断面U字状のU字導体板103aと、メアンダライン導体板103bと、から構成されている。上記U字導体板103aは、誘電体セラミック101の正面及び背面に対してそれぞれ平行に配置された一対の平行導体板103a−1と、一対の平行導体板103a−1の上面側の端部同士を連結する連結導体板103a−2と、が一体に形成されている。
【0008】
上記メアンダライン導体板103bは、ジグザグに蛇行して設けられていて、上記連結板103a−2と誘電体セラミック101の下面に設けられたグランド板102との間を接続する。上述した誘電体セラミック101は、隣り合う導体ユニット103の平行導体板103a−1同士が互いに離間しかつ平行になるように複数並べて設けられている。
【0009】
次に、上述した構成の図8に示す左手/右手系複合伝送路100とLC等価回路との関係を図9を参照して説明する。同図に示すように、互いに隣り合う導体ユニット103の平行導体板103a−1間のギャップにキャパシタCLが生じ、メアンダライン導体板103bにインダクタLLが生じる。また、U字導体板103aにインダクタLR(=1/2LR+1/2LR)が生じ、連結導体板103a−2と誘電体セラミック101の上面に配置されたグランド板102との間のギャップにキャパシタCRが生じる。
【0010】
結果、上述した図8に示す左手/右手系複合伝送路100のLC等価回路は、図12に示すようになる。即ち、左手/右手系複合伝送路100は、入力と出力との間にインダクタ1/2LR、インダクタ1/2LR、キャパシタCL、インダクタ1/2LR、インダクタ1/2LRがこの順に直列接続され、インダクタ1/2LRとインダクタ1/2LRとの間に互いに並列接続されたキャパシタCR及びインダクタLLが接続される。
【0011】
上述した図8に示す左手/右手系複合伝送路100では、誘電体セラミック101の4面に4枚のグランド板102を設ける必要があり、構造が複雑になるという問題があった。また、図9に示すように上記キャパシタCRが連結誘電体103a−2と誘電体セラミック101の上面に配置されたグランド板102との間のギャップに生じているので、キャパシタCRの値を大きくするためには、上記連結導体板103a−2の面積を大きくする必要がある。しかしながら、左手/右手系複合伝送路100を薄型にするために上記連結導体板103a−2の面積を大きくすることができず、キャパシタCRの値を制御することが困難である、という問題があった。
【0012】
また、例えば、キャパシタCLの容量を調整するために平行導体板103a−1の長さlを変更すると、U字導体板103aの全長も変更されてしまうため、インダクタLRの値も変更されてしまう。即ち、キャパシタCLとインダクタLRとを互いに独立して調整することができずインダクタLRの設計自由度が低いという問題があった。
【0013】
また、上述した左手/右手系複合伝送路100の従来例として、例えば、図10に示された構成のものも提案されている(非特許文献2)。同図に示すように、左手/右手系複合伝送路100は、立方体状の誘電体を有する誘電体セラミック101と、この誘電体セラミック101の表面に設けられた4枚のグランド板102と、この誘電体セラミック101内に設けられた複数の導体ユニット103と、出力ストリップライン104と、入力ストリップライン105と、を備えている。
【0014】
上記4枚のグランド板102は、互いに連結されて接地されている。4枚のグランド板102は、誘電体セラミック101を囲むように誘電体セラミック101の図10中の正面、背面、上面及び下面にそれぞれ配置されている。上記導体ユニット103は、図10に示す例では2つ設けられている。この導体ユニット103は各々、断面U字状のU字導体板103aと、線状導体板103cと、から構成されている。U字導体板103aは、誘電体セラミック101の上面及び下面に対してそれぞれ平行に配置された一対の平行導体板103a−1と、この一対の平行導体板103a−1の正面側の端部同士を連結する連結導体板103a−2と、が一体に形成されている。
【0015】
上記線状導体板103cは、直線状に設けられていて、U字導体板103aと誘電体セラミック101の正面に設けられたグランド板102との間を接続する。上述した導体ユニット103は、隣り合う導体ユニット103の平行導体板103a−1同士が互いに離間しかつ平行になるように複数並べて設けられている。上記出力ストリップライン104は、下面側に設けられた導体ユニット103の下面側の平行導体板103a−1から突出して設けられている。上記入力ストリップライン105は、上面側に設けられた導体ユニット103の上面側の平行導体板130a−1から突出して設けられている。
【0016】
次に、上述した構成の図10に示す左手/右手系複合伝送路100とLC等価回路との関係を図11を参照して説明する。同図に示すように、互いに隣り合う導体ユニット103の平行導体板103a−1間のギャップにキャパシタCLが生じ、線状導体板103cにインダクタLLが生じる。また、U字導体板103aにインダクタ1/2LRが生じ、連結導体板103a−2と誘電体セラミック101の正面に配置されたグランド板102との間のギャップにキャパシタCRが生じる。結果、上述した図10に示す左手/右手系複合伝送路100のLC等価回路は、図8に示す左手/右手系複合伝送路100と同様に、図12に示すようになる。
【0017】
そして、上述した図10に示す左手/右手系複合伝送路100も、図8と同様に、誘電体セラミック101の4面に4枚のグランド板102を設ける必要があり、構造が複雑になるという問題があった。また、キャパシタCRは、連結導体板103a−2と誘電体セラミック101の正面に配置されたグランド板102との間のギャップに生じているので、キャパシタCRを大きくするには連結導体板103a−2を大きくする必要がある。しかしながら、左手/右手系複合伝送路100を薄型にするためには、上記連結導体板103a−2の面積を大きく取ることができず、キャパシタCRの値を制御することが困難である、という問題があった。また、図8と同様に、例えば、キャパシタCLの容量を調整するために平行導体板103a−1の長さlを変更すると、U字導体板103aの全長も変更されてしまうため、インダクタLRの値も変更されてしまう。即ち、キャパシタCLとインダクタLRとを互いに独立して調整することができずインダクタLRの設計自由度が低いという問題があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Y.Horii,C.Caloz and T.Itoh,"Super-compact multilayered left-handed transmission line and diplexer application,"IEEE Trans.Microwave Theory and Techinques,vol.53,pp.1527-1534.Apr.2005
【非特許文献2】Y.horii,A. Tanaka, T. Hayashi and Y .IIDA ," A compact multilayered wideband bandpass filter exhibuting left-handed and right-handed behaviors,"IEICE Trans.Electron., vol E89-C,pp.1348-1350,2006.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
そこで、本発明は、グランド板を1枚にして構成を簡単にすると共に、薄型を保ちつつ簡単にキャパシタCR及びインダクタLRの値を制御することができる左手/右手系複合伝送路を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述した課題を解決するための請求項1記載の発明は、接地された1枚のグランド板と、(a)前記グランド板と離間して配置されると共に前記グランド板に対して各々垂直に配置された互いに平行な一対の第1平行導体板と、(b)前記グランド板と離間して配置されると共に前記一対の第1平行導体板間に挟まれかつ前記一対の第1平行導体板に対して平行になるように配置された一対の第2平行導体板と、(c)前記一対の第2平行導体板間に挟まれかつ前記一対の第2平行導体板に対して平行に配置されると共に前記グランド板側の一端が前記グランド板に接続されるように配置された導体板と、(d)前記一対の第1平行導体板の一方と前記一対の第2平行導体板の一方との間、及び、前記一対の第1平行導体板の他方と前記一対の第2平行導体板の他方との間、をそれぞれ接続する一対の第1棒状導体と、(e)前記一対の第2平行導体板同士を接続する第2棒状導体と、(f)前記第2棒状導体と前記グランド板とを接続する第3棒状導体と、から構成される導体ユニットと、前記グランド板と離間して配置されると共に互いの間に前記導体ユニットを挟みかつ前記第1平行導体板に対して平行になるように配置された一対の第3平行導体板と、を備えたことを特徴とする左手/右手系複合伝送路に存する。
【0021】
請求項2記載の発明は、前記導体ユニットが、隣り合う導体ユニットの前記第1平行導体板同士が互いに離間しかつ平行になるように複数並べて設けられ、前記一対の第3平行導体板が、互いの間に前記複数の導体ユニットを挟むように設けられていることを特徴とする請求項1に記載の左手/右手系複合伝送路に存する。
【0022】
請求項3記載の発明は、前記第2棒状導体が、前記第2平行導体板の前記グランド板と平行な方向に対向する一対の端部にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の左手/右手系複合伝送路に存する。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように請求項1〜3記載の発明によれば、導体板を設けることにより、第2平行導体板と導体板との間のギャップにキャパシタCRが生じるので、グランド板を1枚にして構成を簡単にすると共に薄型を保ちつつ簡単にキャパシタCRの値を制御することができる。また、第1平行導体板と第2平行導体板との間に第1棒状導体を設けることにより、第1棒状導体にインダクタLRが生じるので、第1棒状導体の長さを調整することによりキャパシタCLとは独立してインダクタLRの値を制御することができる。さらに、第2棒状導体とグランド板とを接続する第3棒状導体を設けることにより、棒状の第3棒状導体にインダクタLLが生じるので、インダクタLLとグランド板との結合を少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の左手/右手系複合伝送路の一実施形態を示す斜視図である。
【図2】(A)は図1に示す左手/右手系複合伝送路のP1矢視図であり、(B)はP2矢視図であり、(C)はP3矢視図である。
【図3】(A)及び(B)は図1及び図2に示す左手/右手系複合伝送路とLC等価回路との関係を示す概略P1矢視図及び概略P2矢視図である。
【図4】図1及び図2に示す左手/右手系複合伝送路のLC等価回路を示す回路図である。
【図5】図1に示す左手/右手系複合伝送路の周波数と位相との関係を示す位相特性のグラフである。
【図6】図1に示す左手/右手系複合伝送路の位相差と周波数との関係を示す分散特性のグラフである。
【図7】他の実施形態における左手/右手系複合伝送路を示す概略上面図である。
【図8】(A)は従来の左手/右手系複合伝送路の一例を示す斜視図であり、(B)は(A)に示す左手/右手系複合伝送路の正面図であり、(C)は(A)に示す左手/右手系複合伝送路の側面図である。
【図9】図8に示す左手/右手系複合伝送路とLC等価回路との関係を示す説明図である。
【図10】(A)は従来の左手/右手系複合伝送路の一例を示す斜視図であり、(B)は(A)に示す左手/右手系複合伝送路の上面図であり、(C)は(A)に示す左手/右手系複合伝送路の側面図である。
【図11】図10に示す左手/右手系複合伝送路と等価回路との関係を示す説明図である。
【図12】図8及び図10に示す左手/右手系複合伝送路のLC等価回路を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1及び図2に示すように、左手/右手系複合伝送路1は、立方体状の誘導性を有する誘導体セラミック2(図2(A)及び(B)参照)と、この誘電体セラミック2の表面に設けられた1枚のグランド板3と、この誘電体セラミック2内に設けられた複数の導体ユニット4と、第3平行導体板5と、を備えている。
【0026】
上記1枚のグランド板3は、図示しない誘電体セラミック2の一面に設けられている。上記導体ユニット4は、本実施形態では1つ設けられている。この導体ユニット4は各々、平面視四角形の平板状に設けられた一対の第1平行導体板41、一対の第2平行導体板42、及び、導体板43と、棒状に設けられた一対の第1棒状導体44、一対の第2棒状導体45、及び、一対の第3棒状導体46と、から構成されている。上記一対の第1平行導体板41は、グランド板3と離間して配置されている。上記一対の第1平行導体板41は、グランド板3に対してそれぞれに垂直に配置されると共に互いに平行に配置されている。
【0027】
上記一対の第2平行導体板42は、グランド板3と離間して配置されている。上記一対の第2平行導体板42は、一対の第1平行導体板41間に挟まれ、かつ、第1平行導体板41に対して平行に配置されている。上記導体板43は、一対の第2平行導体板42間に挟まれていて、第2平行導体板42に対して平行に配置されている。また、上記導体板43は、一端がグランド板3に接続されるように配置されている。即ち、一対の第1平行導体板41、一対の第2平行導体板42、及び、導体板43は、互いに平行になるように互いに間隔をあけて並んで配置されている。
【0028】
上記一対の第1棒状導体44の一方は、導体板43よりも各導体板41、42、43の並び方向Y1一方側にある第1平行導体板41の一方と第2平行導体板42の一方との間を接続するように設けられている。上記一対の第1棒状導体44の他方は、導体板43よりも並び方向Y1他方側にある第1平行導体板41の他方と第2平行導体板42の他方との間を接続するように設けられている。また、上記一対の第1棒状導体44は、第1平行導体板41の中央と第2平行導体板42の中央とを結ぶように設けられると共に互いに一直線状になるように設けられている。
【0029】
上記一対の第2棒状導体45は、一対の第2平行導体板42同士を接続するように設けられている。一対の第2棒状導体45は、第2平行導体板42上のグランド板3と平行な方向Y2に対向する一対の端部のグランド板3から最も離れた場所にそれぞれ設けられている。上記一対の第3棒状導体46は、第2棒状導体45とグランド板3とを接続するように設けられている。第3棒状導体46は、第2棒状導体45の中央から平行な方向Y2に沿って突出し、その後直角に曲がってグランド板3に接地される。また、上述した第3平行導体板5は、グランド板3と離間して配置されている。第3平行導体板5は、互いの間に上記導体ユニット4を挟みかつ第1平行導体板41と平行になるように配置されている。
【0030】
次に、上述した構成の図1及び図2に示す左手/右手系複合伝送路1とLC等価回路との関係を図3を参照して説明する。同図(A)に示すように、導体ユニット4の第1平行導体板41と第3平行導体板5との間のギャップにキャパシタCLが生じる。また、同図(B)に示すように、第2棒状導体45及び第3棒状導体46にそれぞれインダクタLLが生じる。さらに、同図(A)に示すように、導体板43と第2平行導体板42との間のギャップにそれぞれキャパシタCRが生じ、第1棒状導体44にそれぞれインダクタLRが生じる。
【0031】
結果、図1に示す左手/右手系複合伝送路1のLC等価回路は図4に示すようになる。即ち、入力と出力との間にキャパシタCL、インダクタLR、インダクタLR、キャパシタCLがこの順に直列に接続され、インダクタLR間とグランドとの間に互いに並列接続されたキャパシタCR及びインダクタLLが接続される。
【0032】
以上の構成によれば、導体ユニット4の第1平行導体板41及び第3平行導体板5の面積、第1平行導体板41及び第3平行導体板5の距離を調整すれば、キャパシタCR、インダクタLR、LLとは独立してキャパシタCLの値を制御することができる。また、第1棒状導体44の長さを調整すれば、キャパシタCL、CR、インダクタLLとは独立してインダクタLRの値を制御することができる。また、第1平行導体板41と導体板43とが重なる面積及び第1平行導体板41と導体板43との距離を調整すれば、キャパシタCL、インダクタLR、LLとは独立してキャパシタCRの値を制御することができる。さらに、第3棒状導体46の長さを調整すれば、キャパシタCR、CL、インダクタLRとは独立してインダクタLLの値を制御することができる。即ち、キャパシタCR、CL、インダクタLR、LLの値をそれぞれ独立して制御することができる。
【0033】
次に、本発明者らは、上述した図1に示す左手/右手系複合伝送路1を作製し、作製した左手/右手系複合伝送路1に対する入力信号の周波数を0〜2.5GHzの範囲で変化させたときの出力信号の位相を測定した。結果を図5に示す。また、本発明者らは、上述した図1に示す左手/右手系複合伝送路1を作製し、作製した左手/右手系複合伝送路1の周波数を0〜2.5GHzの範囲で変化させたときの入力信号と出力信号との位相差を測定した。結果を図6に示す。
【0034】
なお、上述した左手/右手系複合伝送路1としては、導体ユニット4として銅、誘電体セラミック2として比誘電率3.5のものを用い、図2に示すように導体板41〜43、5の幅w1=20mm、導体板41、42、5の高さl1=12mm、導体板43の高さl2=10.5mm、導体板41、42、5とグランド板3との離間距離l3=1mm、第3棒状導体46の平行方向Y2の突出距離l4=1mm、第3棒状導体46の厚みd1=0.5mm、第2棒状導体45の長さd2=3.08mm、第1平行導体板41と第3平行導体板5との距離l5=0.77mm、第1棒状導体44の長さl6=77mmの寸法のものを作製している。図5及び図6から明らかなように、図1に示す左手/右手系複合伝送路1の位相特性及び分散特性は非線形となっていることから、左手系媒体の特徴を有していることが分かる。
【0035】
上述した構成の左手/右手系複合伝送路1によれば、導体板43を設けることにより、第2平行導体板42と導体板43との間のギャップにキャパシタCRが生じるので、グランド板3を1枚にして構成を簡単にすると共に薄型を保ちつつ簡単にキャパシタCRの値を制御することができる。また、第1平行導体板41と第2平行導体板42との間に第1棒状導体44を設けることにより、第1棒状導体44にインダクタLRが生じるので、第1棒状導体44の長さを調節することによりキャパシタCLとは独立してインダクタLRの値を制御することができる。さらに、第2棒状導体45とグランド板3とを接続する第3棒状導体46を設けることにより、棒状の第3棒状導体46にインダクタLLが生じるので、インダクタLLとグランド板3との結合を少なくすることができる。
【0036】
なお、上述した実施形態によれば、第2棒状導体45及び第3棒状導体46を一対、即ち2つ設けていたが、本発明はこれに限ったものではない。第2棒状導体45及び第3棒状導体46は1つであってもよい。
【0037】
また、上述した実施形態によれば、導体ユニット4が1つの場合について説明していたが、本発明はこれに限ったものではない。例えば、図7に示すように、導体ユニット4を互いに隣り合う導体ユニット4の第1平行導体板41同士が互いに離間しかつ平行になるように複数並べて設け、互いの間に複数の導体ユニット4を挟むように一対の第3平行導体板5を設けてもよい。この場合、隣り合う導体ユニット4の第1平行導体板41間のギャップにキャパシタCRが生じる。
【0038】
また、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0039】
3 グランド板
4 導体ユニット
5 第3平行導体板
41 第1平行導体板
42 第2平行導体板
43 導体板
44 第1棒状導体
45 第2棒状導体
46 第3棒状導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接地された1枚のグランド板と、
(a)前記グランド板と離間して配置されると共に前記グランド板に対して各々垂直に配置された互いに平行な一対の第1平行導体板と、(b)前記グランド板と離間して配置されると共に前記一対の第1平行導体板間に挟まれかつ前記一対の第1平行導体板に対して平行になるように配置された一対の第2平行導体板と、(c)前記一対の第2平行導体板間に挟まれかつ前記一対の第2平行導体板に対して平行に配置されると共に前記グランド板側の一端が前記グランド板に接続されるように配置された導体板と、(d)前記一対の第1平行導体板の一方と前記一対の第2平行導体板の一方との間、及び、前記一対の第1平行導体板の他方と前記一対の第2平行導体板の他方との間、をそれぞれ接続する一対の第1棒状導体と、(e)前記一対の第2平行導体板同士を接続する第2棒状導体と、(f)前記第2棒状導体と前記グランド板とを接続する第3棒状導体と、から構成される導体ユニットと、
前記グランド板と離間して配置されると共に互いの間に前記導体ユニットを挟みかつ前記第1平行導体板に対して平行になるように配置された一対の第3平行導体板と、
を備えたことを特徴とする左手/右手系複合伝送路。
【請求項2】
前記導体ユニットが、隣り合う導体ユニットの前記第1平行導体板同士が互いに離間しかつ平行になるように複数並べて設けられ、
前記一対の第3平行導体板が、互いの間に前記複数の導体ユニットを挟むように設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の左手/右手系複合伝送路。
【請求項3】
前記第2棒状導体が、前記第2平行導体板の前記グランド板と平行な方向に対向する一対の端部にそれぞれ設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の左手/右手系複合伝送路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−71577(P2011−71577A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−218543(P2009−218543)
【出願日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】