説明

差圧解消装置

【課題】簡単な操作で室内と室外との間の差圧を解消できるようにする。
【解決手段】室内Aと室外Bとを仕切る仕切部材(例えば、出入りのためのドア)2には、室内Aと室外Bとを連通する空間部3を形成しておき、その内側開口部4Aは内側蓋部材5Aによって開閉可能に構成し、外側開口部4Bは外側蓋部材5Bによって開閉可能に構成し、前記内側蓋部材5Aと外側蓋部材5Bとは連結部材7を介して連動するように構成しておく。内側蓋部材5Aを矢印F1に示すように押し込めるという簡単な操作で、図1(b) (c) に示すように外側蓋部材5Bも移動し、両方の開口部4A,4Bが開口されて室内外の差圧が解消されることとなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内と室外との間で圧力差がある場合にその差圧を解消するための差圧解消装置に関する。
【背景技術】
【0002】
建物において室内と室外との間で圧力差が生じてしまい、ドアが開けにくくなってしまうことがある。例えば、強風時には、屋外と室内で圧力差が大きくなり、ドアが開けにくくなってしまう。また、室内で換気扇を稼働させているような場合には、室内の圧力が室外よりも低下してしまってドアが開けにくくなってしまう。そのような差圧を解消する装置として幾つかのものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図6は、従来の差圧解消装置の構成の一例を示す斜視図であり、符号100は、ヒンジ101により揺動自在に支持された遮蔽板を示し、符号102は、スクリューロッドを示し、符号103は、該スクリューロッド102を回転させるためのハンドルを示す。通常は、前記遮蔽板100にはパッキンDが押し付けられて室内外が遮断されるように構成されているが、ハンドル103を所定の方向に回転させると、スクリューロッド102を介して遮蔽板100が所定の方向に移動してパッキンDから離間され、室内外が連通されて差圧が解消されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2009−144327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図6に示す差圧解消装置の場合、遮蔽板100の開閉のためにはハンドル103を回さなければならず、その操作が煩雑であるという問題があった。
【0006】
本発明は、上述の問題を解消することができる差圧解消装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、図1に例示するものであって、室内(A)と室外(B)との間の差圧を解消する差圧解消装置(1)において、
室内(A)と室外(B)とを仕切る仕切部材(2)中に形成されると共に、室内側には内側開口部(4A)が形成され室外側には外側開口部(4B)が形成された空間部(3)と、
前記内側開口部(4A)を前記空間部(3)の側から開閉できるように、該空間部(3)内にて揺動自在に支持された内側蓋部材(5A)と、
前記外側開口部(4B)を前記空間部(3)の側から開閉できるように、該空間部(3)内にて揺動自在に支持された外側蓋部材(5B)と、
前記内側蓋部材(5A)が前記内側開口部(4A)を前記空間部(3)の側から閉塞すると共に前記外側蓋部材(5B)が前記外側開口部(4B)を前記空間部(3)の側から閉塞するように、これらの蓋部材(5A,5B)に付勢されるバネ部材(6A,6B)と、
前記空間部(3)内にて揺動自在に支持されると共に各蓋部材(5A,5B)にそれぞれ連結されることに基づき、前記蓋部材の一方(5A又は5B)の揺動を伝達して他方の蓋部材(5B又は5A)を揺動させるように構成された連結部材(7)と、
を備え、
前記内側蓋部材(5A)が前記内側開口部(4A)を開口する状態では前記外側蓋部材(5B)が前記外側開口部(4B)を開口し、前記内側蓋部材(5A)が前記内側開口部(4A)を閉塞する状態では前記外側蓋部材(5B)が前記外側開口部(4B)を閉塞するように構成されたことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において、前記内側蓋部材(5A)を揺動自在に支持する第1揺動軸(9A)、
前記外側蓋部材(5B)を揺動自在に支持する第2揺動軸(9B)、
前記連結部材(7)を揺動自在に支持する第3揺動軸(9C)、
を備え、
これらの揺動軸(9A,9B,9C)は略平行に配置されてなることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において、前記内側蓋部材(5A)と前記連結部材(7)とはヒンジ結合(8A)により揺動自在に連結され、
前記外側蓋部材(5B)と前記連結部材(7)とはヒンジ結合(8B)により揺動自在に連結されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の発明において、図3及び図4に例示するように、前記内側開口部(4A)と前記外側開口部(4B)とは、前記仕切部材(2)の面方向に沿って上下及び/又は左右にオフセットしている位置に形成されたことを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の発明において、図5(c) に例示するものであって、前記連結部材(37)は、遮光性材料で形成されたルーバー(37a)を有し、前記内側開口部(4A)及び前記外側開口部(4B)が開口される際にこれらの開口部(4A,4B)の間に配置されるように構成されたことを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発明において、前記仕切部材(2)は、出入りのためのドア、又は該ドアの近傍に配置された部材であることを特徴とする。
【0013】
なお、括弧内の番号などは、図面における対応する要素を示す便宜的なものであり、従って、本記述は図面上の記載に限定拘束されるものではない。
【発明の効果】
【0014】
請求項1乃至6に係る発明によれば、室内側から前記内側蓋部材を仕切部材内に押し込めると、前記連結部材を介して前記外側蓋部材も仕切部材内に押し込められ、前記内側開口部及び前記外側開口部の両方が同時に開口することとなる。同様に、室外側から前記外側蓋部材を仕切部材内に押し込めると、前記連結部材を介して前記内側蓋部材も仕切部材内に押し込められ、前記内側開口部及び前記外側開口部の両方が同時に開口することとなる。いずれの場合も室内側と室外側とは空間部により連通されることとなり、室内と室外との間の差圧が解消され、ドアが開けやすくなるという効果を奏する。また、差圧解消のための操作は前記内側蓋部材又は前記外側蓋部材を押すという操作だけで良く、操作が簡単であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1(a) 〜(c)は、本発明に係る差圧解消装置の構成の一例及び作動の様子を説明するための断面図である。
【図2】図2(a) 及び(b)は、本発明に係る差圧解消装置の構成の他の例を示す断面図である。
【図3】図3(a) 〜(c)は、内側開口部及び外側開口部の配置位置の態様を示す正面図である。
【図4】図4は、(a) 〜(c)は、内側開口部及び外側開口部の配置位置の態様を示す正面図である。
【図5】図5(a) 〜(c)は、連結部材の形状の例を示す斜視図である。
【図6】図6は、従来の差圧解消装置の構成の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図1乃至図5に沿って、本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
本発明に係る差圧解消装置は、建物において室内と室外との間の差圧を解消するための装置であって、図1に符号1で例示するように、室内Aと室外Bとを仕切る仕切部材2中に形成された空間部3を備えている。そして、該仕切部材2の室内側の面には内側開口部4Aが形成されており、該仕切部材2の室外側の面には外側開口部4Bが形成されていて、室内Aと室外Bとは該空間部3により連通されるようになっている。
【0018】
また、前記空間部3内における前記内側開口部4Aの近傍には内側蓋部材5Aが揺動自在に支持されていて、該内側開口部4Aを前記空間部3の側(つまり、室内Aの側からではなく、仕切部材2中の空間部3の側)から開閉できるようになっている。同様に、前記空間部3内における前記外側開口部4Bの近傍には外側蓋部材5Bが揺動自在に支持されていて、該外側開口部4Bを前記空間部3の側(つまり、室外Bの側からではなく、仕切部材2中の空間部3の側)から開閉できるようになっている。
【0019】
また、各蓋部材5A,5Bにはバネ部材6A,6Bが付勢されていて、前記内側蓋部材5Aが前記内側開口部4Aを前記空間部3の側から閉塞すると共に前記外側蓋部材5Bが前記外側開口部4Bを前記空間部3の側から閉塞するように構成されている。なお、図1に示すバネ部材6A,6Bは圧縮バネであるが、もちろんこれに限られるものではなく、圧縮バネ以外のバネ部材であっても良い。また、図1に示す例ではバネ部材6A,6Bが各蓋部材5A,5Bを直接的に付勢しているが、もちろんこれに限られるものではない。例えば、揺動軸9A及び9Bの両方、及び/又は揺動軸9Cにトーションバネを巻き付けておいて、各蓋部材5A,5Bを間接的に付勢するようにしても良い。さらに、適当な位置にダンパーを配置しておいて、各蓋部材5A,5Bがゆっくりと閉まるようにして、その間に差圧解消が行われるようにすると良い。
【0020】
さらに、前記空間部3内には連結部材7が揺動自在に支持されている。そして、該連結部材7の一方の揺動端(又は揺動端部近傍)7aは前記内側蓋部材5Aと揺動自在な状態で連結されており、他方の揺動端(又は揺動端部近傍)7bは前記外側蓋部材5Bと揺動自在な状態で連結されていて、前記蓋部材の一方(5A又は5B)の揺動を伝達して他方の蓋部材(5B又は5A)を揺動させるように構成されている。具体的には、
・ 前記内側蓋部材5Aが前記内側開口部4Aを開口する状態では前記外側蓋部材5Bが前記外側開口部4Bを開口し、
・ 前記内側蓋部材5Aが前記内側開口部4Aを閉塞する状態では前記外側蓋部材5Bが前記外側開口部4Bを閉塞する
ように構成されている。
【0021】
ここで、前記内側蓋部材5Aと前記連結部材7とはヒンジ結合8Aにより揺動自在に連結し、前記外側蓋部材5Bと前記連結部材7とはヒンジ結合8Bにより揺動自在に連結しておくと良い。また、図2(a) に示すように、前記連結部材7の一方の揺動端7aと前記内側蓋部材5Aの揺動端5aとを何らかの部材(例えば、紐部材)18Aにより揺動可能に連結し、前記連結部材7の他方の揺動端7bと前記外側蓋部材5Bの揺動端5bとを何らかの部材(例えば、紐部材)18Bにより揺動可能に連結しておいても良い。さらには、図2(b)
に示すように、前記内側蓋部材5Aと前記連結部材7とは磁石28Aにより揺動可能に連結し、前記外側蓋部材5Bと前記連結部材7とは磁石28Bにより揺動可能に連結しておいても良い。その場合の蓋部材5A,5Bは磁石28A,28Bが吸着するような鉄製やステンレス製にすると良い。なお、図2(b)
において磁石28A,28Bをそれぞれ2つずつ設けているのは、連結部材7が揺動しても各蓋部材5A,5Bとの連結を確保するためである。
【0022】
ところで、上述の内側蓋部材5Aを揺動自在に支持する揺動軸9Aを“第1揺動軸”とし、上述の外側蓋部材5Bを揺動自在に支持する揺動軸9Bを“第2揺動軸”とし、上述の連結部材7を揺動自在に支持する揺動軸9Cを“第3揺動軸”とした場合に、これらの揺動軸9A,9B,9Cは略平行に配置しておくと良い。また、必要に応じて、前記第1揺動軸9Aや前記第2揺動軸9Bを図1(a) 等に示すようにスライド自在に構成しておくと良い。
【0023】
本発明によれば、図1に矢印F1で示すように、室内側から前記内側蓋部材5Aを仕切部材2内に押し込めると、前記連結部材7を介して前記外側蓋部材5Bも仕切部材2内に押し込められ(図1(b) (c) 参照)、前記内側開口部4A及び前記外側開口部4Bの両方が同時に開口することとなる。同様に、室外側から前記外側蓋部材5Bを仕切部材2内に押し込めると、前記連結部材7を介して前記内側蓋部材5Aも仕切部材2内に押し込められ、前記内側開口部4A及び前記外側開口部4Bの両方が同時に開口することとなる。いずれの場合も室内側と室外側とは空間部3により連通されることとなり、室内と室外との間の差圧が解消され、ドアが開けやすくなるという効果を奏する。また、差圧解消のための操作は前記内側蓋部材5A又は前記外側蓋部材5Bを押すという操作だけで良く、操作が簡単であるという効果を奏する。
【0024】
ところで、上述のような構成の差圧解消装置1を配置する仕切部材2としては、例えば、出入りのためのドアや、該ドアの近傍に配置された何らかの部材を挙げることができる。
【0025】
また、上述の内側開口部4Aと外側開口部4Bとは、前記仕切部材2の面方向に沿って上下及び/又は左右にオフセットしている位置に形成すると良い。図3(a) 〜(c) 及び図4(a) 〜(c) は内側開口部4A及び外側開口部4Bの配置位置の例を図示したものであり、符号2は仕切部材であるドアを示し、符号2aはドアノブを示す。図3(a)
に示すように、内側開口部4A及び外側開口部4Bをドアノブ2aの下に設けた場合には、ドア2を開ける際に内側蓋部材5A又は外側蓋部材5Bを膝で押すことができ、図3(b)
及び(c) に示すように、内側開口部4A及び外側開口部4Bをドアノブ2aの横に設けた場合には、ドア2を開ける際に内側蓋部材5A又は外側蓋部材5Bを肘や手で押すことができ、図4(a)
〜(c) に示すように、内側開口部4A及び外側開口部4Bをドア2の下縁付近に設けた場合には、ドア2を開ける際に内側蓋部材5A又は外側蓋部材5Bを足で押す(蹴る)ことができる。なお、請求項1から請求項3に係る発明において、内側開口部4Aと外側開口部4Bとがオフセットしていない構成のものを排除する趣旨では無い。
【0026】
さらに、連結部材は、図5(a) に符号17で示すように、開口部17aを有するものとし、内側開口部4Aと外側開口部4Bとの間の通気を良くするようにすると良い。また、連結部材は、図5(b)
に符号27で示すように、遮光性材料で形成された板状として、室外から室内を容易に覗かれないようにすると良い。さらに、連結部材は、図5(c) に符号37で示すように、遮光性材料で形成されたルーバー37aを有するものとし、前記内側開口部4A及び前記外側開口部4Bが開口される際にこれらの開口部4A,4Bの間に配置されるようにすると良い。そのようにした場合には、室外から室内を容易に覗かれないようにできると共に内側開口部4Aと外側開口部4Bとの間の通気を確保できる。
【符号の説明】
【0027】
1 差圧解消装置
2 仕切部材
3 空間部
4A 内側開口部
4B 外側開口部
5A 内側蓋部材
5B 外側蓋部材
6A,6B バネ部材
7 連結部材
8A ヒンジ結合
8B ヒンジ結合
9A 第1揺動軸
9B 第2揺動軸
9C 第3揺動軸
A 室内
B 室外

【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内と室外との間の差圧を解消する差圧解消装置において、
室内と室外とを仕切る仕切部材中に形成されると共に、室内側には内側開口部が形成され室外側には外側開口部が形成された空間部と、
前記内側開口部を前記空間部の側から開閉できるように、該空間部内にて揺動自在に支持された内側蓋部材と、
前記外側開口部を前記空間部の側から開閉できるように、該空間部内にて揺動自在に支持された外側蓋部材と、
前記内側蓋部材が前記内側開口部を前記空間部の側から閉塞すると共に前記外側蓋部材が前記外側開口部を前記空間部の側から閉塞するように、これらの蓋部材に付勢されるバネ部材と、
前記空間部内にて揺動自在に支持されると共に各蓋部材にそれぞれ連結されることに基づき、前記蓋部材の一方の揺動を伝達して他方の蓋部材を揺動させるように構成された連結部材と、
を備え、
前記内側蓋部材が前記内側開口部を開口する状態では前記外側蓋部材が前記外側開口部を開口し、前記内側蓋部材が前記内側開口部を閉塞する状態では前記外側蓋部材が前記外側開口部を閉塞するように構成された、
ことを特徴とする差圧解消装置。
【請求項2】
前記内側蓋部材を揺動自在に支持する第1揺動軸、
前記外側蓋部材を揺動自在に支持する第2揺動軸、
前記連結部材を揺動自在に支持する第3揺動軸、
を備え、
これらの揺動軸は略平行に配置されてなる、
ことを特徴とする請求項1に記載の差圧解消装置。
【請求項3】
前記内側蓋部材と前記連結部材とはヒンジ結合により揺動自在に連結され、
前記外側蓋部材と前記連結部材とはヒンジ結合により揺動自在に連結された、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の差圧解消装置。
【請求項4】
前記内側開口部と前記外側開口部とは、前記仕切部材の面方向に沿って上下及び/又は左右にオフセットしている位置に形成された、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の差圧解消装置。
【請求項5】
前記連結部材は、遮光性材料で形成されたルーバーを有し、前記内側開口部及び前記外側開口部が開口される際にこれらの開口部の間に配置されるように構成された、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の差圧解消装置。
【請求項6】
前記仕切部材は、出入りのためのドア、又は該ドアの近傍に配置された部材である、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の差圧解消装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−107466(P2012−107466A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258615(P2010−258615)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000174943)三井住友建設株式会社 (346)
【出願人】(391016886)日本フネン株式会社 (30)
【Fターム(参考)】