説明

巻取機

本発明は連続的に供給される糸を巻上げるための巻取機に関する。巻取機は巻取スピンドル(7.1,7.2)の上に固定されたボビン(6)の上に、供給された複数本の糸を巻上げる。この場合、糸は(1)は綾振り装置(4.1)により綾振り糸ガイド(4.2)内でボビン軸線の方向へ綾振りされる。巻き取りスピンドル(7.1,7.2)は回転皿(8)によって保持され、この回転皿(8)はボビン直径の増大と共に送り回動させられる。ボビン直径の生長は圧着ローラ(5)で認識される。この圧着ローラ(5)はボビン直径が増大する場合に退避運動が可能であるように可動に支承されている。この退避運動は認識され、制御装置(18)で回転皿が送り回動させられる。圧着ローラ(5)の退避運動は往復台(15)又はロッカ体(10)によって可能である。この場合、退避運動の運動ベクトル(13.1)と糸道とは小さな角度を成す。これによって糸(1)が退避運動に基づき側方の変位をほぼ行なわないことが達成された。この結果、綾振り糸ガイド(4.2)における摩擦状態は一定に留められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は請求項1の上位概念として記載されている巻取機に関する。
【0002】
この種の巻取機並びにこのような巻取機を運転するための方法は公開特許明細書DE10303641A1号によって公知である。巻取機は連続的に供給される複数本の糸をボビンに巻上げるために用いられる。このためには糸はまず綾振り装置により糸走行方向に対し横方向に綾振りされる。このためには綾振り装置は供給される糸の本数に相当する個数の糸ガイドを有している。この糸ガイドは糸を綾振り方向に綾振りする。次いで糸は回転する圧着ローラを介して案内される。圧着ローラは糸をそれぞれ巻上げようとする同様に回転するボビンに押付ける。この場合には複数のボビンが相前後して整合させられて共通のボビンスピンドルの上に配置されている。これにより複数本の糸を同時に巻上げることが可能である。
【0003】
ボビン直径が増大するにつれて巻取スピンドルと圧着ローラとの間の間隔は連続的に拡大されなければならない。これは、回転軸線が巻取スピンドルの回転軸線に対し平行である回転皿の上に巻取スピンドルが配置されていることで行なわれる。その上、回転皿はボビンが満管である場合に空の巻管で装備される第2の巻取スピンドルを提供する。この巻取スピンドルは回転機構の回転によって満管のボビンを有する巻取スピンドルと交換される。
【0004】
巻取りに際してボビンの生長を認識するためには圧着ローラはボビン長手方向に可動に構成された保持体に取付けられている。この場合には調整装置によって回転機構の回転は、回転機構の回動によって保持体の退避運動が補償されるように制御される。
【0005】
このためにはDE10303641A1号公開明細書ではロッカ体の形をした保持体が巻取機のケーシングに結合されている。ロッカ体状の保持体は公知技術により多く公知である。すべての公知の解決策に共通していることは、ロッカ体レバーが糸走行方向で見て斜め下へ延びていることである。この構成形態は、ボビンの広い直径領域に亘って、ひいてはロータの広い回転角度領域に亘ってボビンに対する圧着ローラの圧着角度が接触接線に対してできるだけ直角にするという目的に基づいている。しかし、この結果、ロッカ体のわずかな退避運動が既に糸を糸走行方向と綾振り方向とに横方向に変位させることになる。この変位運動が綾振り装置により案内された綾振り糸ガイドにおける不都合な摩擦及び案内状態をもたらし、極端な場合には綾振り糸ガイドから糸が飛び出すことが認識された。
【0006】
本発明の課題は冒頭に述べた形式の巻取機を改良し、綾振り糸ガイドにおける糸案内方向を変えないで、圧着ローラの変位運動を可能にすることである。
【0007】
この課題は本発明によれば圧着ローラの中央の作業からの当該圧着ローラの退避運動のベクトルが、綾振り装置と圧着ローラとの間の領域にて糸が有している糸の走行方向に対して平行であるか又は該走行方向に対し小さな角度を成すことによって解決された。これによって糸は圧着ローラの位置が異なる場合でも同じ走入及び走出状態で綾振り糸ガイド内へ走入しかつ綾振り糸ガイドの外へ走出することが保証される。
【0008】
この場合には驚くべきことに圧着ローラがボビン周面に押付けられる角度は、ボビンの質と巻上げられた糸の質とにとっては、綾振り装置の糸ガイドへの糸の走入及び走出角度よりも重要性が低いことが示された。この認識によって今や変えられた観点から幾何学的な形状を好適化することが可能になった。ボビンと圧着ローラとの間の接触角は下位の好適化基準であることができる。それにも拘らず圧着ローラがボビン周面に押付けられる角度は本発明による幾何学的な関係で巻取経過で小さな領域でしか変化しないことが可能になった。
【0009】
0°の領域におけるコサイン関数の平らな経過に基づき10°までの小さな走入角を有する本発明の実施形態が本発明の意味で可能である。
【0010】
公知技術のロッカレバーが中央位置にて糸走入方向に対して30°傾けられていると、圧着ローラの退避運動の結果、糸が退避運動の13%変位させられる。圧着ローラの退避運動はすでに10°の走入角度で1.5%の変位にしかならない。これは先きに述べた13%の変位に対し著しい改良を示している。より小さな走入角5°又はより良くは2°は、0%に近い変位で本発明の思想により良く該当し、したがって優先される。
【0011】
巻取機の幾何学的条件の変化、特に回転皿とロッカ体との間の間隔の変化によって圧着ローラとボビンとの間の接触接線は巻取り過程の経過中に水平からわずかな値しか偏位しない。これは+又は−20°、有利な実施例では+又は−10°である。
【0012】
本発明の有利な実施例では圧着ローラはロッカ体に案内されている。このロッカ体の旋回点は圧着ローラに対する糸の乗上げ点の高さに、ひいては圧着ローラの回転軸の高さに配置されている。ロッカ体の変位角の小さな変化は、ロッカ体運動の円弧が退避運動の値に比較してきわめて大きく、退避運動の運動路が近似的に直線運動と見なされることができるので、綾振り方向に対して横方向での糸道の変位は無視できるほど小さくなる。ロッカ体の旋回点を圧着ローラの上へ糸が乗上げる点の高さに配することは公知技術から容易に想到できるものではない。なぜならば公知技術では綾振り装置は片持式の保持体にて直接ケーシングに固定されているからである。この結果、巻取機の構造を任せられた専門家にとっては、ロッカ体をボビンの上側に配置されかつ張出す綾振り装置の保持体に結合するかもしくは第2の個有の保持体に圧着ローラの上で結合することは容易ではないのである。これによって公知技術によればロッカレバーが糸走行方向で見て傾けられて下方へ延びるという論理的な結果が生じる。
【0013】
本発明によるロッカ体のてこ腕は圧着ローラの回転点とロッカ体の旋回点との間の結合線によって規定される。圧着ローラの退避運動の運動ベクトルはてこ腕に対し垂直である。糸走行平面が圧着ローラの退避運動に対しほぼ平行であるので、この結果として、圧着ローラに対する糸の乗上げ点がほぼてこ腕の上記線上に位置することになる。この結果、角度αをほぼ0°にしたいとする本発明の要求は、ロッカ体の旋回軸と圧着ローラの回転軸とが糸走行方向で見てほぼ同じ高さに配置される構成によって充たされる。これは糸道が垂直に延在している場合には旋回軸線と回転軸線は水平に一平面内に配置されている。この幾何学的な関係から、ロッカ体はできるだけ長いてこ腕で走入角のわずかな変化で退避運動を行ない、ひいては走入角が本発明による領域を逸脱しないことが有利である。
【0014】
選択的な実施態様においては圧着ローラは、直線案内装置を用いてフレームに結合された往復台に回転可能に支承されている。この場合には往復台の運動自由度のベクトルと糸走行方向とは0°に近い角度を形成している。
【0015】
以下、添付図面を用いて本発明の実施例を説明する。
【0016】
図1は本発明の巻取機の正面図。
【0017】
図2は本発明の巻取機の選択的な実施例の正面図。
【0018】
図1には本発明の巻取機が正面図で示されている。図面には図示されていない、巻取機の上側に配置された糸製造設備からは、図面には一本の糸1として示されている糸群が連続的に供給される。本明細書にて1本の糸1について述べられていても、これは意味的には図平面にて相前後して配置された複数本の糸1を意味するものである。供給された糸1は綾振り装置4.1により図平面の方向で往復運動で綾振りされる綾振り糸ガイド4.2によってまず導かれる。綾振り装置4.1には巻取機のケーシング2に片持式に取付けられた綾振りケーシング3に結合されている。次いで織振りされた糸は圧着ローラ5を介して導かれる。圧着ローラ5の周速度は糸速度に相応している。圧着ローラ5の表面は糸が圧着ローラ5の上に滑ることなく支持され、ほぼ1/4回転後にボビン6の上にもたらされるように形成されている。ボビン6は回転する巻取スピンドル7.1の上に固定されている。供給される糸1によってボビン6は生長する。この生長するボビンの直径の増大は以下に記述するように補償される。
【0019】
圧着ローラ5はロッカ体10を用いて、ケーシング2に片持式に固定された保持体9に回転可能に固定されている。ロッカ体10の直線的な退避運動に対するできるだけ良好な接近を達成するためにはロッカ体長さはできるだけ大きく選択されている。ボビン6の直径の増大はまず圧着ローラ5の退避をもたらす。しかしながら圧着ローラ5のわずかな退避運動がすでに1つのセンサ11により認識されかつ制御装置18に供給される。この制御装置18は回転皿8を駆動し、この回転皿8はスピンドル7.1を図示の回転方向に送り回動させる。これによって圧着ローラ5は再び出発位置へもたらされる。制御装置18は圧着ローラの出発位置からの圧着ローラの偏差ができるだけわずかであるように運転される。この要求は綾振り糸ガイド4.2と、圧着ローラ5に対する糸1の乗上げ点との間の間隔をできるだけ一定に保つ必要性から発生する。
【0020】
回転皿8は別の巻取過程の間、次第に制御装置18によってボビン6の最終直径が達成するまで回動させられる。次いで回転皿8は1/2回転を完成するまで引続き回転させられるので供給された糸1は交換巻取スピンドル7.2に固定された巻管の上へ導かれ、この巻管によって連行されかつ巻上げられる。いまや下にある巻取スピンドル7.1の上にある満管ボビンは取外され、空の巻管と置換えられることができる。図1に示された方向とは異って回転皿8は原理的には反対方向へ回転させられかつ交換されることもできる。
【0021】
ここではロッカ体10の旋回軸線12と圧着ローラ5の軸線は糸走行方向で見てほぼ同じ高さに配置されている。これにより幾何学的な条件に基づき、圧着ローラ5に対する糸1の糸上げ点も同じ高さにあることになる。この結果、圧着ローラ5の上記運動に際して圧着ローラを介して案内された糸は小さな値しか走行方向に対して横方向に変位させられない。圧着ローラ5に対する糸1の乗上げ点の領域における圧着ローラ5の運動方向はベクトル13.1で示されている。この場合、ベクトル13.1はロッカ体10の旋回軸線12と圧着ローラ5の軸線との間の結合線に対し垂直である。ベクトル13.1に対する平行線13.2と糸1との間の角度αはきわめて小さく、有利には0°である(図示的な理由からここでは本発明にとって有利である領域よりもいくらか大きく示されている)。これによって糸はロッカ体10が運動する場合に側方へ変位しないか又はわずかにしか変位しない。角度αの値が著しく大きく、例えば公知技術から公知であるように30°であると、すでにロッカ体10のわずかな運動が糸1の側方への変位をもたらすものと想われる。この際に、綾振り糸ガイド4.2によって糸1が案内される条件も変化することになる。
【0022】
図2には本発明の巻取機の選択的な実施形態が示されている。
【0023】
図2に関する記述は図1とは異なるエレメントに限ってある。
【0024】
この選択的な実施形態では圧着ローラ5は往復台15に回転可能に支承されている。往復台15は垂直方向で運動可能に保持体14に取付けられている。この場合にもセンサ16は往復台15の中央位置からの往復台15の偏差を検出する。往復台運動軸は往復台15の運動方向17.1を示している。往復台運動方向17.1に対する平行線17.2は圧着ローラ5における糸1の乗上げ点を通って延び、供給された糸1と角度αを成している。この場合にも角度αはきわめて小さく、有利には0°であって、往復台15が運動した場合に糸が側方へ移動することが減じられている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の巻取機の1実施例の正面図。
【図2】本発明の巻取機の選択的な実施例の正面図。
【符号の説明】
【0026】
1 糸
2 ケーシング
3 綾振りケーシング
4.1 綾振り装置
4.2 綾振り糸ガイド
5 圧着ローラ
6 ボビン
7.1 巻取スピンドル
7.2 交換巻取スピンドル
8 回転皿
9 保持体
10 ロッカ体
11 センサ
12 旋回軸線
13.1 ベクトル
13.2 平行線
14 保持体
15 往復台
16 センサ
17.1 往復台運動方向のベクトル
17.2 平行線
18 制御装置
19 接触接線
α 角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の糸(1)をボビン(6)に連続的に巻上げるための巻取機であって、回転可能に支承された回転皿(8)と、該回転皿(8)に回転可能に片持式に支承された、ボビン(6)を受容するための少なくとも1つの巻取スピン(7.1)と、巻取機のケーシング(2)に不動に結合された、巻取ろうとする糸(1)をボビン軸方向に綾振りするための綾振り装置(4.1)と、綾振りされた糸(1)をボビン(6)に接触させるための圧着ローラ(5)とを有しており、綾振りする糸(1)が綾振り装置(4.1)と圧着ローラ(5)への乗り上げ線との間で1つの糸走行平面を張設しており、ボビン直径の増大の補償を目的として巻取スピンドルと圧着ローラとの間の軸間隔が回転皿(8)の回動によって可変であり、圧着ローラ(5)が受容体(10,15)に回転可能に支承され、該受容体(10,15)が巻取スピンドル軸線に対して相対的に可動に支承されており、圧着ローラ(5)がボビン直径の増大に際して中央の作業位置からベクトル(13.1,17.1)の方向へ退避運動を実旋することができるようになっている形式のものにおいて、圧着ローラ(5)が中央の作業位置から退避する運動のベクトル(13.1,17.1)と圧着ローラ(5)の回転軸線との間に張られた退避平面と、糸走行平面とが角度αを成して交差しており、該角度αが10°よりも小さい値を有していることを特徴とする、巻取機。
【請求項2】
前記角度αが5°よりも小さい値を有している、請求項1記載の巻取機。
【請求項3】
前記角度αが2°よりも小さい値を有している、請求項1記載の巻取機。
【請求項4】
圧着ローラとボビンとが接触接線を有しておりかつ該接触接線が巻上げの経過中にかつ最大20°水平線からそれる、請求項1から3までのいずれか1項記載の巻取機。
【請求項5】
前記接触接線が巻取経過にて最大10°水平線からそれている、請求項4記載の巻取機。
【請求項6】
前記受容体がロッカ体(10)であって、該ロッカ体(10)の旋回軸線と圧着ローラ(5)の回転軸線とが糸走行方向で見てほぼ同じ高さに配置されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の巻取機。
【請求項7】
前記受容体が往復台(15)であって、該往復台(15)が直線案内で巻取機のケーシング(2)と結合されかつ往復台(15)の運動方向と糸走行平面とがほぼ平行である、請求項1から5までのいずれか1項記載の巻取機。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−522926(P2008−522926A)
【公表日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−544828(P2007−544828)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013226
【国際公開番号】WO2006/061235
【国際公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【出願人】(503420235)ザウラー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (51)
【氏名又は名称原語表記】Saurer GmbH & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Landgrafen Str. 45, D−41069 Moenchengladbach, Germany