説明

巻取紙支持装置,給紙装置及び輪転印刷機並びに巻取紙装着方法

【課題】巻取紙支持装置,給紙装置及び輪転印刷機並びに巻取紙装着方法に関し、巻取紙に加速トルクや減速トルクを確実に加えることができ、巻取紙の支持剛性も容易に確保することができるようにする。
【解決手段】巻取紙1の紙管の全長に亘って内挿されて巻取紙1を支持しながら回転するシャフト14と、シャフト14の両端をそれぞれ回転可能に支持する一対の軸支部材13a,13bと、巻取紙1をシャフト14と一体回転するようにシャフト14に対し所定の軸方向位置に固定する固定機構と、をそなえ、一対の軸支部材13a,13bのうち一方13aを支持部材12に固定し、他方13bを、シャフト14の端部を支持する状態とシャフト14の端部から外れてシャフト14の端部を通じてシャフト14に巻取紙1を着脱させうる状態との間で可動に構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新聞輪転機等の輪転印刷機、及び輪転印刷機に用いて好適の、巻取紙支持装置及びそれをそなえた給紙装置並びに巻取紙装着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
新聞輪転機等の輪転印刷機(輪転機)には、巻取紙を印刷部に繰り出す給紙部に給紙装置がそなえられる。このような給紙装置には、巻取紙の交換時に巻取紙の両端を支持する支持部材(リールアーム)を旋回させるようにして、巻取紙を支持する軸の軸心位置が可動の可動式巻取紙支持装置(例えば、特許文献1参照)や、巻取紙を支持する軸の軸心位置を固定させた固定式巻取紙支持装置(例えば、特許文献2参照)がある。
【0003】
例えば、図7は可動式巻取紙支持装置としてのリールスタンド20を示すもので、図示するように、立設固定された左右一対の支持フレーム21a,21bに、軸22が回転可能に支持され、軸22には、左右に対を成すリールアーム23a,23bが複数組(ここでは3組)そなえられている。リールアーム23a,23bのうち少なくとも一方は(ここでは、リールアーム23a)は、軸22に対して軸方向に移動可能になっており、巻取紙1のリールスタンド20への着脱時には、リールアーム23aを軸方向に移動させて、対を成すリールアーム23bとの間を離間させて着脱を行うようになっている。
【0004】
なお、リールアーム23b先端部分の内側面には、エキスパンションチャック24bがそなえられ、リールアーム23a先端部分の内側面には、コーンチャック24aがそなえられており、巻取紙1を装着する際には、使用するリールアーム23a,23bが所要の方向になるように軸22を回転させ、リールアーム23a,23bを離間状態にし、リールアーム23a,23b間に巻取紙1を配置する。さらに、リールアーム23aを対向するリールアーム23bに接近させエキスパンションチャック24b及びコーンチャック24aを巻取紙1の紙管1aに嵌入させて両チャック24a,24bで紙管1aを挟み込む。そして、エキスパンションチャック24bを拡径させることにより、紙管1aとエキスパンションチャック24bとの結合を強化する。
【0005】
また、装着した巻取紙1を使用する際には、使用するリールアーム23a,23bが所要の方向になるように軸22を回転させる。
輪転機の運転中には、給紙装置のこのようなリールスタンド20から巻取紙1を繰り出し給紙するが、給紙装置の下流の紙の搬送速度よりも巻取紙1の繰り出し速度が速くなっては紙に弛みが生じてしまうので、巻取紙1を支持する軸22の回転にブレーキ力を加えるブレーキ25が、各軸22の一端(ここでは、エキスパンションチャック24b側の端)にそなえられている。
【0006】
一方、図8は固定式巻取紙支持装置を示すもので、図示するように、この固定式巻取紙支持装置は、立設固定された左右一対の支持フレーム(固定フレーム)31a,31bと、これらの固定フレーム31a,31b間に延在する一対のレール32と、一対のレール32に沿って走行可能な左右一対の移動フレーム33a,33bとをそなえている。移動フレーム33a,33bには、巻取紙1の紙管1aの端部を支持するための軸34a,34bを回転自在に支持する軸受部(軸支部材)35a,35bがそなえられる。
【0007】
また、各移動フレーム33a,33bをレール32に沿って走行させる駆動装置36がそなえられ、各軸34a,34bにはチャック37a,37bが備えられており、両移動フレーム33a,33bを離隔させてこの間に巻取紙1を配置して、両移動フレーム33a,33bを離隔させて、移動フレーム33a,33bの軸34a,34bのチャック37a,37bを巻取紙1の紙管1aの端部に嵌入して巻取紙1を支持することができるようになっている。なお、駆動装置36は、各移動フレーム33a,33bのねじ穴に螺合するねじ軸36bと、ねじ軸36bを回転駆動するモータ36aとからなる。
【0008】
さらに、一方の移動フレーム33aには、軸34aの回転を加速する加速装置38が設けられ、他方の移動フレーム33bには、軸34bの回転を制動するブレーキ装置39が設けられ、軸34a,34bを通じて、紙管1aを軸34a,34bに外嵌された巻取紙1の加速や減速を行えるようになっている。また、固定フレーム31a,31bには、紙継ぎ装置40が備えられている。
【特許文献1】特開平10−45288号
【特許文献2】特開平8−91647号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、可動式巻取紙支持装置の場合も固定式巻取紙支持装置の場合も、巻取紙1の支持については、紙管1aの両端部にチャックを嵌合させて支持する構造が一般的であるが、チャックにより紙管1aの両端部を支持するだけでは、チャックと紙管1a内周との接触面積に限界があるため、チャック及び紙管1aを通じて巻取紙1に加速トルクや減速トルクを加える際に、チャックと紙管1aとの間に滑りが生じるおそれがある。
【0010】
特に、新聞輪転機に使用される巻取紙1などは極めて重量があるため、巻取紙1の回転時の慣性エネルギが大きくなり、上述の巻取紙1に加える加速トルクや減速トルクも相応に大きいものになり、上記の滑りが一層生じやすい。
このような滑りが生じると、巻取紙1の給紙速度を適正に制御できなくなり、巻取紙1に弛みが生じたり過大な張力が生じたりして、印刷に支障をきたすおそれや、巻取紙1の断紙のおそれも招くことになり好ましくない。
【0011】
また、可動式巻取紙支持装置の場合、各支持フレーム21a,21bが、巻取紙1を装着された複数(図7の場合、3つ)のリールアーム23a,23bを支える構造なので、支持フレーム21a,21bの僅かな撓みもリールアーム23a,23bの先の巻取紙1では増幅され、これに、支持フレーム21a,21b自体尾の撓みも加わるため、巻取紙1を支え、巻取紙1の支持剛性を確保することは困難である。このため、可動式巻取紙支持装置の場合、巻取紙1の給紙速度を適正に制御する上でも不利になる。
【0012】
本発明はこのような課題に鑑み案出されたもので、巻取紙に加速トルクや減速トルクを確実に加えることができ、また、巻取紙の支持剛性も容易に確保することができるようにした、巻取紙支持装置,給紙装置及び輪転印刷機並びに巻取紙装着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明の巻取紙支持装置(請求項1)は、巻取紙の紙管の全長に亘って内挿されて前記巻取紙を支持しながら回転するシャフトと、前記シャフトの両端をそれぞれ回転可能に支持する一対の軸支部材と、前記巻取紙を前記シャフトと一体回転するように前記シャフトに対し所定の軸方向位置に固定する固定機構と、をそなえ、前記一対の軸支部材のうち、一方の軸支部材は、支持部材に固定されている固定軸支部材であって、他方の軸支部材は、前記シャフトの端部を支持する状態と前記シャフトの端部から外れて前記シャフトの端部を通じて前記シャフトに前記巻取紙を着脱させうる状態との間で、可動に支持部材に支持されている可動軸支部材であることを特徴としている。
【0014】
前記固定機構は、前記シャフトの外周に軸方向に位置調整可能に装備され、前記巻取紙の前記シャフトへの装着時に、予め位置調整され、前記巻取紙の軸方向位置を規制するストッパと、前記シャフトの外周に備えられ、前記巻取紙の紙管の内周に圧接して前記巻取紙を前記シャフトに一体係合させる圧接部とを有することが好ましい(請求項2)。
また、前記圧接部は、前記シャフトに対して径方向に出没可能に保持され、前記圧接部を前記シャフトの径方向に出没駆動するアクチュエータが設けられていることが好ましい(請求項3)。
【0015】
さらに、前記巻取紙の繰り出し時に、前記シャフトに制動力を与えて前記巻取紙の繰り出し速度を規制するために、回生ブレーキ装置がそなえられていることが好ましい(請求項4)。
また、本発明の給紙装置(請求項5)は、請求項1〜4の何れか1項に記載の巻取紙支持装置をそなえた給紙装置であって、前記シャフトの位置が固定された固定式給紙装置であることを特徴としている。
【0016】
また、本発明の輪転印刷機(請求項6)は、請求項5記載の給紙装置と、インフィード部と、印刷部と、折部と、を備えるとともに、該給紙装置と該インフィード部と該印刷部と該折部とをそれぞれ同期して駆動させる駆動手段を備えたことを特徴としている。
さらに、本発明の給紙装着方法(請求項7)は、請求項1〜4の何れか1項に記載の巻取紙支持装置において、前記シャフトの端部から前記シャフトに装着用の巻取紙を装着する巻取紙装着方法であって、前記可動軸支部材を前記シャフトの端部から外して、前記シャフトから使用した巻取紙又は該巻取紙の紙管を除去した状態とする第1ステップと、前記装着用巻取紙を、昇降機構付き移送装置の昇降台上に載せると共に、前記昇降機構を作動させ、前記装着用巻取紙の紙管の高さを前記シャフトの高さと一致させる第2ステップと、前記移送装置を作動させて前記装着用巻取紙を移動させ、前記装着用巻取紙の紙管を前記シャフトに外装する第3ステップと、前記装着用巻取紙を前記シャフトに対して所定の軸方向位置に配置して固定する第4ステップと、前記可動軸支部材を移動させて前記シャフトの端部を支持させる第5ステップと、前記昇降機構付き移送装置を退避させる第6ステップと、をそなえていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の巻取紙支持装置(請求項1),給紙装置(請求項5)及び輪転印刷機(請求項6)によれば、巻取紙を支持するシャフトが巻取紙の紙管の全長に亘って内挿されるので、シャフトを紙管の略全長に亘って紙管内周に接触させるなど、シャフトと紙管との接触面積を十分に確保することが可能になり、シャフトから紙管を通じて巻取紙に加速トルクや減速トルクを加える際に、シャフトと紙管との間に生じる滑りを回避しやすくなる。このため、巻取紙の給紙速度等を適正に制御することが可能になる。
【0018】
また、シャフトを両端で支持する一対の軸支部材のうち、一方は固定された固定軸支部材であるため、シャフトの一端の支持剛性を高め易く、巻取紙の支持剛性を確保する上で有利になる。このため、巻取紙の給紙時に巻取紙の位置を安定させることができ、巻取紙の給紙速度等を適正に制御する上でも有利になる。
このような滑りの回避及び巻取紙の支持剛性確保により、例えば新聞輪転機に使用される極めて重量がある巻取紙などの場合にも、巻取紙の給紙を適正に行いやすくなる。
【0019】
本発明の巻取紙支持装置(請求項2),給紙装置(請求項5)及び輪転印刷機(請求項6)によれば、ストッパを予め位置調整して、巻取紙をストッパに当接するまでシャフトに差し込んでいくことにより、巻取紙をシャフトの所定の軸方向位置に位置決めすることができ、シャフトの外周に備えられた圧接部を巻取紙の紙管の内周に圧接させれば、巻取紙をシャフトの所定の軸方向位置に一体係合させることができ、シャフトと紙管との間の滑りの回避を容易にしかも確実に行うことができる。
【0020】
本発明の巻取紙支持装置(請求項3),給紙装置(請求項5)及び輪転印刷機(請求項6)によれば、アクチュエータを作動させ、圧接部をシャフトに対して径方向に突出させれば、巻取紙をシャフトに一体係合させることができ、圧接部をシャフトに対して径方向に埋没させれば、巻取紙をシャフトから離脱可能にすることができる。
本発明の巻取紙支持装置(請求項4),給紙装置(請求項5)及び輪転印刷機(請求項6)によれば、回生ブレーキ装置により、巻取紙の繰り出し時シャフトに制動力を与えてその繰り出し速度を規制するので、エネルギを回収しながら繰り出し速度の規制を行うことができる。
【0021】
本発明の給紙装置(請求項5)によれば、シャフトの位置が固定された固定式給紙装置であるので、巻取紙の支持剛性を一層確保しやすく、巻取紙の給紙をより適正に行いやすくなる。
本発明の輪転印刷機(請求項6)によれば、給紙装置がシャフトの位置が固定された固定式給紙装置であり、巻取紙の支持剛性を一層確保しやすくなるため、駆動力や性動力の伝達性能を向上させることができ、輪転印刷機の急加速、緊急停止に対してより対応しやすくなり、印刷機の生産性を向上させることができる。
【0022】
また、本発明の巻取紙装着方法(請求項7)によれば、シャフトに巻取紙を装着する際に、シャフトをその一端だけで支持する片持ち状態で支持しながら行うので、シャフトの一端の軸支部材等に大きな負荷がかかりやすいが、装着用巻取紙を、昇降機構付き移送装置の昇降台上に載せ、昇降機構を作動させ、装着用巻取紙の紙管の高さをシャフトの高さと一致させて装着し、シャフトの他端を可動軸支部材に支持させた上で昇降機構付き移送装置を退避させるので、巻取紙の装着時における、シャフトの一端の軸支部材等への負荷を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面により、本発明の実施の形態について説明する。
図1〜図6は本発明の一実施形態に係る巻取紙支持装置及び給紙装置を示すもので、これらの図に基づいて説明する。
本実施形態に係る巻取紙支持装置は、例えば新聞輪転機等の輪転印刷機の給紙部(給紙装置)に備えられ、巻取紙1を繰り出し供給するものであり、巻取紙1を支持するシャフト14の軸心位置が固定される固定式巻取紙支持装置として構成され、本巻取紙支持装置を有する給紙装置は固定式給紙装置として構成される。
【0024】
なお、本実施形態に係る輪転印刷機(輪転機)は、図示しないが、本巻取紙支持装置を有する給紙装置と、インフィード部と、印刷部と、折部とをこの順に備えるとともに、これらの給紙装置とインフィード部と印刷部と折部とをそれぞれ同期して駆動させる駆動手段を備えている。この場合の駆動手段としては、各部を個別に駆動するモータと、これらのモータの回転を制御するコントローラとから構成した、シャフトレス駆動方式のものでもよく、各部に連結された駆動シャフトと、この駆動シャフトを回転駆動するモータと、モータの回転を制御するコントローラとから構成した、シャフト駆動方式のものでもよい。
【0025】
本巻取紙支持装置は、図1(a),(b)に示すように、固設された支持ポスト11及び支持ポスト11上に固定された支持フレーム12からなる支持部材に、巻取紙1を回転可能に支持する軸支部材13a,13bが支持されている。なお、図1(b)では、支持ポスト11を省略している。
軸支部材13a,13bには、巻取紙1の紙管1aの全長に亘って内挿されるシャフト14の各端部が回転可能に支持され、シャフト14は、巻取紙1を支持しながら回転する。これらの軸支部材13a,13bのうち、一方の軸支部材13aは、支持フレーム12に固定されシャフト14の一端14aを軸支する固定軸支部材となっているが、他方の軸支部材13bは、支持フレーム12に可動に支持されシャフト14の他端14bを軸支する可動軸支部材となっている。なお、図3に示すように、軸支部材13a,13bには、シャフト14を回転自在に支持する軸受16が装備されている。
【0026】
特に、可動軸支部材13bは、図1に実線で、図3(b)に二点鎖線で示すように、シャフト14の他端14bを支持する状態と、図1に二点鎖線で、図3(b)に実線で示すように、シャフトの他端14bから外れて開放したシャフト14の他端14bを通じてシャフト14に巻取紙1を着脱させうる状態と、の間で移動可能になっている。つまり、可動軸支部材13bは、図1(b)に矢印で示すような軸方向への移動と、図1(a)に矢印で示すような軸方向に対し直角な方向への移動とが可能になっている。可動軸支部材13bをこれらの両方向へそれぞれ移動するために、図示しないアクチュエータが備えられ、図示しない操作盤を通じた指令によって、可動軸支部材13bを移動させることができるようになっている。
【0027】
シャフト14の一端14aの固定軸支部材13a側の外周には、図1〜図3に示すように、ストッパ15が装備されており、シャフト14に巻取紙1を装着する際には、ストッパ15は予め所定の軸方向位置に位置調整され、巻取紙1の一端面がストッパ15に当接するまで巻取紙1をシャフト14に差し込めば、巻取紙1を所定の軸方向位置に位置決めできるようになっている。
【0028】
また、図3(a)に示すように、シャフト14の一端14a(固定軸支部材13a側)には、シャフト14を回転駆動したり回生制動したりすることができるモータ・ジェネレータ(回生ブレーキ装置)17が装備されている。これにより、シャフト14に外装された巻取紙1の繰り出し速度(給紙速度)を適切に制御しながら、制動時に得られる運動エネルギを電力に変換してエネルギ回生をすることができる。
【0029】
ストッパ15の具体的な構成例としては、図4(a)に示すように、ストッパ15Aをリング状に形成し、シャフト14の一端14a近傍の外周面に雄ネジ151aを形成し、ストッパ15Aの内周面に雌ネジ151bを形成し、雌ネジ151bを雄ネジ151aに螺合させるようにシャフト14の一端14a近傍にストッパ15Aを装着し、ストッパ15Aを回転させることにより、ストッパ15Aをシャフト14に対して軸方向への位置調整を例えば手動で容易に行うことができる。
【0030】
あるいは、図示しないが、ストッパ15をシャフト14の外周面に沿って摺動可能に構成し、ストッパ15を流体圧シリンダ等のアクチュエータで軸方向に駆動するようにすれば、例えばスイッチ操作によってストッパ15を所定の軸方向位置に位置決めすることができる。なお、この場合も、図4(a)に示す場合と同様に、ストッパ15をシャフト14と一体回転させることになる。
【0031】
また、図4(b)に示すように、ストッパ15Bを、ストッパ本体152と、このストッパ本体152を軸方向に進退駆動する電動モータ153とから構成し、ストッパ本体152を電動で位置決めできるようにすることも考えられる。つまり、ストッパ本体152をネジ軸152aの一端に固定し、固定軸支部材13a側に、外周部にコイル153aを配設し、内周部に回転子としてのコマ153bを配設されてなる電動モータ153を設け、コマ153bに形成された雌ネジとネジ軸152aの雄ネジとを螺合させ配置する。
【0032】
ネジ軸152aはシャフト14の軸方向に沿って配置され、コイル153aへの通電によりコマ153bが回転すると、回転量に応じてネジ軸152aはシャフト14の軸方向に沿って移動する。これにより、コマ153bを所要量だけ回転させれば、ストッパ本体152をシャフト14の軸方向所定位置に位置決めすることができる。この場合、ストッパ本体152は非回転なので、巻取紙1をストッパ本体152に当接させて位置決め固定したら、ストッパ本体152を固定軸支部材13a側に退避させる。
【0033】
次に、シャフト14の構成を説明すると、図5に示すように、本実施形態では、シャフト14自体の外径は巻取紙1の紙管1aの内径よりも一定以上小さく設定され、シャフト14自体の紙管1a内への進入が円滑にできるようになっている。そして、巻取紙1がシャフト14と一体になって回転するように、巻取紙1の紙管1aをシャフト14に固定する圧接部材18がシャフト14の外周に出没可能に設けられている。つまり、図5(a)に示すように、シャフト14は中空に形成され、図5(b)に示すように、シャフト14には軸方向に延びたスリットが形成される。
【0034】
圧接部材18は、シャフト14のスリットに沿う棒状の部材で、図5(a)に示すように、シャフト14の内周面に沿う円筒状に形成された基部18aをシャフト14の中空内部に装備され、基部18aの中間部から外方に突出形成された圧接用突起部(圧接部)18bをシャフト14に形成されたスリットを貫通するように装備される。なお、ここでは、スリット及び圧接用突起部18bを軸方向に複数(ここでは3つ)に分割し、周方向に等間隔又は略等間隔に複数[ここでは、6系統(6本)]配設している。
【0035】
シャフト14の中空内部における圧接部材18の基部18a内側には、圧接部材18の圧接用突起部18bを、スリットからシャフト14の外周に突出させるためのアクチュエータとして、ゴムチューブ等の弾性体チューブ19が装備されている。弾性体チューブ19内にエアを供給して弾性体チューブ19を拡径させれば、圧接用突起部18bをスリットからシャフト14の外周に突出させることができ、弾性体チューブ19の中空内部19aに図示しないエア源からエアを供給して弾性体チューブ19を拡径させれば、圧接用突起部18b内のエアを排出すれば圧接用突起部18bの突出は抑えられるようになっている。なお、エアの給排は、図示しない給排バルブ等を通じて手動又は電気的制御等により行われる。
【0036】
なお、シャフト14の圧接部材18が、ストッパ15の位置設定範囲まで配置される場合であって、ストッパ15がシャフト14の外周を摺動するように構成する場合、図6に示すように、ストッパ15Cの内周には、圧接部材18の圧接用突起部18bとの干渉を回避するために、圧接用突起部18bの突出形状に合わせた溝154を加工することが必要になる。
【0037】
本発明の一実施形態に係る巻取紙支持装置,給紙装置及び輪転印刷機は上述のように構成されているので、例えば、シャフト14に巻取紙1を装着する場合、或いは、シャフト14に装着する巻取紙1を交換する場合、以下のように行うことができる。
まず、図1に二点鎖線で示すように、可動軸支部材13bをシャフト14の端部14bから外して、シャフト14に、使用した巻取紙1又は使用し終わった巻取紙1の紙管1aが残っていれば、これらの巻取紙1又は紙管1aをシャフト14から除去する(第1ステップ)。そして、装着すべき巻取紙(装着用巻取紙)1の軸方向の長さ等を参照してストッパ15の軸方向位置を調整する。なお、単に、シャフト14の巻取紙1を外す場合には、このステップ1のみを実施することになる。
【0038】
次に、図2に示すように、装着用巻取紙1を、昇降機構(リフタ)41を通じて昇降台42を所定の高さに昇降駆動しうる昇降機構付き移送装置40の昇降台42上に載せ、昇降機構41を作動させ、装着用巻取紙1の紙管1aの軸心線の高さをシャフト14の軸心線の高さと一致させる(第2ステップ)。
次に、移送装置40を作動させて、図2に実線で示すように、装着用巻取紙1の紙管1aの軸心線の位置をシャフト14の軸心線の位置と一致させて、図2に二点鎖線で示すように、装着用巻取紙1の紙管1aをシャフト14に外装させていき、装着用巻取紙1の端面をストッパ15に当接させる(第3ステップ)。なお、この際には、弾性体チューブ19を縮径させて、圧接用突起部18bの突出を抑えて、紙管1a内へのシャフト14の進入を容易にする。
【0039】
さらに、縮径していた弾性体チューブ19を拡径させて、圧接部材18の圧接用突起部18bをシャフト14の外方へ突出させ、圧接用突起部18bを装着用巻取紙1の紙管1aの内周面に圧接させる。これにより、装着用巻取紙1の紙管1aがシャフト14の外周に強固に固定される(第4ステップ)。
次に、可動軸支部材13bを、図1に二点鎖線で示す位置から実線で示す位置へと移動させて、可動軸支部材13bの軸穴にシャフト14の端部を進入させて、可動軸支部材13bによりシャフト14を支持させる(第5ステップ)。
【0040】
こうして、シャフト14が、固定軸支部材13a及び可動軸支部材13bにより両端を支持された状態となり、その後、昇降機構付き移送装置40をシャフト14下方の領域から退避させる(第6ステップ)。
このようにして、シャフト14への巻取紙1の装着や、シャフト14に装着する巻取紙1の交換や、シャフト14からの巻取紙1の取り外しを行うことができる。
【0041】
かかる巻取紙1の装着方法或いは交換方法によれば、巻取紙1を固定軸支部材13a及び可動軸支部材13bにより両端支持するまでは、昇降機構付き移送装置40により支持するので、片持ち状の固定軸支部材13aに重量のある巻取紙1を支持させることが回避され、巻取紙1の装着時や交換時における固定軸支部材13aの重量負担を軽減させることができる。このため、固定軸支部材13a等に過大な強度や剛性を要求する必要がなくなるため、固定軸支部材13a等の簡素化や軽量化を図ることができる。
【0042】
また、シャフト14を両端で支持する一対の軸支部材のうち、一方は固定軸支部材であるため、シャフト14の支持剛性を高め易く、巻取紙1の支持剛性を確保する上で有利になる。このため、巻取紙1の給紙時に巻取紙1の位置を安定させることができ、巻取紙1の給紙速度等を適正に制御する上でも有利になる。
そして、本巻取紙支持装置によれば、巻取紙1の紙管1aの全長に亘って内挿されるシャフト14が巻取紙1を支持するので、シャフト14を紙管1aの略全長に亘って紙管1a内周に接触させて、シャフト14と紙管1aとの接触面積を十分に確保することが可能になる。したがって、シャフト14から紙管1aを通じて巻取紙1に加速トルクや減速トルクを加える際に、シャフト14と紙管1aとの間に生じる滑りを回避しやすくなり、巻取紙1の給紙速度等を適正に制御することが可能になる。
【0043】
このような滑りの回避及び巻取紙1の支持剛性確保により、シャフト14と巻取紙1の紙管1aとの間で大きな動力を伝達することが可能となるので、例えば新聞輪転機に使用される極めて重量がある巻取紙などの場合にも、シャフト14と巻取紙1との間の確実な動力伝達によって、巻取紙の給紙を適正に行いやすくなる。
特に、輪転機の急加速や緊急停止の際には、シャフト14と巻取紙1との間で大きなトルク伝達(駆動トルクや制動トルクの伝達)が必要になり、この大きなトルク伝達が行えずに、シャフト14と巻取紙1との間で滑りが生じてしまうと、給紙装置とインフィード部と印刷部と折部とをそれぞれ同期して駆動させても、巻取紙と印刷部が異なる速度となって断紙を招いてしまう。この場合、修復に時間を要するので生産性を損なってしまう。この点、本給紙装置では、シャフト14と巻取紙1との間で大きなトルクを伝達できるので、輪転機の急加速や緊急停止に対しても、巻取紙と印刷部とを確実に同期させることができ、断紙を招くことなく輪転機の急加速や緊急停止を行うことができ、輪転機の生産性を向上させることができる。
【0044】
また、ストッパ15を予め位置調整しておき、巻取紙1をストッパ15に当接するまでシャフト14に差し込んでいくことにより、巻取紙1をシャフト14の所定の軸方向位置に容易に位置決めすることができる。さらに、シャフト14の外周に備えられた圧接用突起部18bを巻取紙1の紙管1aの内周に圧接させれば、巻取紙1をシャフト14の所定の軸方向位置に確実に一体係合させることができ、シャフト14と紙管1aとの間の滑りの回避を容易にしかも確実に行うことができる。
【0045】
特に、スリット及び圧接用突起部18bを軸方向に分割することにより、一部の圧接用突起部18bが紙管1a内周面に対して傾斜して軸方向に不均一に片当たりしたとしても、圧接用突起部18bの長さが抑えられているため傾斜による片当たりの影響は小さく、また、軸方向に隣接する他の圧接用突起部18bが紙管1a内周面に圧接するため、一部の圧接用突起部18bの片当たりの影響を抑えることができる。また、圧接用突起部18bの長さが抑えられているため、圧接用突起部18bの出没駆動も容易となる。
【0046】
また、圧接用突起部18bの出没駆動は、流体式アクチュエータを作動させればよく、極めて容易に行うことができる。
そして、固定軸支部材13aに備えられたモータ・ジェネレータ(回生ブレーキ装置)17により、シャフト14に外装された巻取紙1の繰り出し速度(給紙速度)を適切に制御しながら、回生制動によって制動時に得られる運動エネルギを電力に変換してエネルギ回収をすることができ、省エネルギを促進することができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更して実施することができる。
例えば、上記実施形態では、巻取紙支持装置を輪転機の給紙部に備える場合を説明したが、輪転機の給紙部に限らず、本発明の巻取紙支持装置は、コルゲータ等の巻取紙を用いる産業機械に広く適用しうる。
【0048】
また、ストッパ15や圧接部材18といった本願発明の固定機構に係る部材についても、上記実施形態のものは1例であって、これに限定されるものではなく、巻取紙1をシャフト14と一体回転するようにシャフト14に対し所定の軸方向位置に固定できるものであればよい。
また、詳細には、上記の実施形態では、スリット及び圧接用突起部18bを軸方向に分割し、周方向にも複数系統配設しているが、スリット及び圧接用突起部18bの軸方向分割数や、周方向の本数もこれに限定されない。さらに、圧接用突起部(圧接部)18bを先端が一条のリブとなるように形成しているが、リブの条数やリブ先端の形状もこれに限定されない。
【0049】
さらに、上記実施形態では、巻取紙1を支持するシャフト14の軸心位置を固定させた固定式巻取紙支持装置に、本発明を適用しているが、本発明は、例えば図7に示すように、巻取紙を支持する軸の軸心位置が可動の可動式巻取紙支持装置にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の一実施形態に係る巻取紙支持装置及び給紙装置を示す模式的構成図であり、(a)はその側面図、(b)はその要部正面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る巻取紙支持装置への巻取紙の装着を説明する図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る巻取紙支持装置の要部を示す図であり、(a)はその固定軸支部材の側を示す構成図(一部は断面図)、(b)はその可動軸支部材の側を示す構成図(一部は断面図)である。
【図4】本発明の一実施形態に係る巻取紙支持装置のストッパの構成例を示す図であり、(a)はその第1例を示す構成図(一部は断面図)、(b)はその第2例を示す構成図(一部は断面図)である。
【図5】本発明の一実施形態に係る巻取紙支持装置のシャフトの構成例を示す図であり、(a)はその斜視図、(b)はその横断面図、(c)はその部分側面図である。
【図6】図5のシャフトに対応したストッパの構成例を示す正面図である。
【図7】従来技術に係る可動式巻取紙支持装置を示す図であり、(a)は側面図、(b)は一部破断させた正面図である。
【図8】従来技術に係る固定式巻取紙支持装置を一部破断させて示す正面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 巻取紙
1a 紙管
11 支持ポスト(支持部材)
12 支持フレーム(支持部材)
13a 固定軸支部材
13b 可動軸支部材
14 シャフト
14a シャフト14の一端
14b シャフト14の他端
15,15A〜15C ストッパ
16 軸受
17 モータ・ジェネレータ(回生ブレーキ装置)
18 圧接部材
18a 圧接部材18の基部
19 弾性体チューブ
151a 推ネジ
151b 雌ネジ
152 ストッパ本体
152a ネジ軸
153 電動モータ
153a コイル
153b 回転子としてのコマ
154 溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻取紙の紙管の全長に亘って内挿されて前記巻取紙を支持しながら回転するシャフトと、
前記シャフトの両端をそれぞれ回転可能に支持する一対の軸支部材と、
前記巻取紙を前記シャフトと一体回転するように前記シャフトに対し所定の軸方向位置に固定する固定機構と、をそなえ、
前記一対の軸支部材のうち、一方の軸支部材は、支持部材に固定されている固定軸支部材であって、他方の軸支部材は、前記シャフトの端部を支持する状態と前記シャフトの端部から外れて前記シャフトの端部を通じて前記シャフトに前記巻取紙を着脱させうる状態との間で、可動に支持部材に支持されている可動軸支部材である
ことを特徴とする、巻取紙支持装置。
【請求項2】
前記固定機構は、
前記シャフトの外周に軸方向に位置調整可能に装備され、前記巻取紙の前記シャフトへの装着時に、予め位置調整され、前記巻取紙の軸方向位置を規制するストッパと、
前記シャフトの外周に備えられ、前記巻取紙の紙管の内周に圧接して前記巻取紙を前記シャフトに一体係合させる圧接部とを有する
ことを特徴とする、請求項1記載の巻取紙支持装置。
【請求項3】
前記圧接部は、前記シャフトに対して径方向に出没可能に保持され、
前記圧接部を前記シャフトの径方向に出没駆動するアクチュエータが設けられている
ことを特徴とする、請求項1又は2記載の巻取紙支持装置。
【請求項4】
前記巻取紙の繰り出し時に、前記シャフトに制動力を与えて前記巻取紙の繰り出し速度を規制するために、回生ブレーキ装置がそなえられている
ことを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の巻取紙支持装置。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか1項に記載の巻取紙支持装置をそなえた給紙装置であって、
前記シャフトの位置が固定された固定式給紙装置である
ことを特徴とする、給紙装置。
【請求項6】
請求項5記載の給紙装置と、インフィード部と、印刷部と、折部と、を備えるとともに、
該給紙装置と該インフィード部と該印刷部と該折部とをそれぞれ同期して駆動させる駆動手段を備えた
ことを特徴とする、輪転印刷機。
【請求項7】
請求項1〜4の何れか1項に記載の巻取紙支持装置において、前記シャフトの端部から前記シャフトに装着用の巻取紙を装着する巻取紙装着方法であって、
前記可動軸支部材を前記シャフトの端部から外して、前記シャフトから使用した巻取紙又は該巻取紙の紙管を除去した状態とする第1ステップと、
前記装着用巻取紙を、昇降機構付き移送装置の昇降台上に載せると共に、前記昇降機構を作動させ、前記装着用巻取紙の紙管の高さを前記シャフトの高さと一致させる第2ステップと、
前記移送装置を作動させて前記装着用巻取紙を移動させ、前記装着用巻取紙の紙管を前記シャフトに外装する第3ステップと、
前記装着用巻取紙を前記シャフトに対して所定の軸方向位置に配置して固定する第4ステップと、
前記可動軸支部材を移動させて前記シャフトの端部を支持させる第5ステップと、
前記昇降機構付き移送装置を退避させる第6ステップと、をそなえている
ことを特徴とする、巻取紙装着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−254839(P2008−254839A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−96689(P2007−96689)
【出願日】平成19年4月2日(2007.4.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】