説明

巻線チップインダクタ

【目的】 インダクタンスの制御においてインダクタンス公差を小さくし、Qを向上させることを目的とする。
【構成】 一対の端子間に磁気コア1を配置し、磁気コア1に施された巻線6の両端部が前記端子にそれぞれ接続されて構成される巻線チップインダクタであって、磁気コア1が、所定方向に延在する四角ドラム状の基部2と、基部2の軸方向両端部にそれぞれ設けられた十字型の鍔部3とで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子回路に供給されるインダクタンス素子、トランスに関し、特に高周波かつ面実装に供する巻線チップインダクタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】図7を参照して従来の巻線チップインダクタについて説明する。磁気コアは、基部と該基部の両端から足部が延在しているいわゆるU字型の形状をしており、前記基部には、銅線が巻回されており、前記基部の両端部の下面には、リード端子12が接着されている。さらに、銅線で巻回されたU字型磁気コア11とリード端子12を覆うように樹脂モールドが施されている。このような構造の巻線チップインダクタは、1T単位で巻数を制御し、インダクタンスの制御を巻数と巻ピッチで行っていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記した従来の巻線チップインダクタは、インダクタンス公差が最大±20%という問題があった。又、従来の巻線チップインダクタは樹脂モールドが施されていたが、これによってコアにストレスがかかりQ(尖鋭度)が低下する問題があった。又、従来の巻線チップインダクタはコアにリード端子を接着していたが、うず電流損が大きくなりQ(尖鋭度)が低下する問題があった。
【0004】本発明の課題は、上記問題点を解消し、インダクタンスの制御においてインダクタンス公差を小さくすることができ、かつQ(尖鋭度)を向上させることができる巻線チップインダクタを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、一対の端子間に磁気コアを配置し、該磁気コアに施された巻線の両端部が前記端子にそれぞれ接続されて構成される巻線チップインダクタにおいて、前記磁気コアが、所定方向に延在する四角ドラム状の基部と、該基部の軸方向両端部にそれぞれ設けられた十字型の鍔部とで構成されていることを特徴とする巻線チップインダクタが得られる。
【0006】又、本発明によれば、一対の端子間に磁気コアを配置し、該磁気コアに施された巻線の両端部が前記端子にそれぞれ接続されて構成される巻線チップインダクタにおいて、前記巻線に磁性メッキ銅線を使用し、前記端子はリードフレームを用いることなく前記磁気コアに直接塗布して形成され、前記磁気コアを覆うための樹脂モールドを施さずに構成されたことを特徴とする巻線チップインダクタが得られる。
【0007】又、本発明によれば、一対の端子間に磁気コアを配置し、該磁気コアに施された巻線の両端部が前記端子にそれぞれ接続されて構成される巻線チップインダクタにおいて、前記磁気コアが、所定方向に延在する四角ドラム状の基部と、該基部の軸方向両端部にそれぞれ設けられた十字型の鍔部とで構成され、前記巻線に磁性メッキ銅線を使用し、前記端子はリードフレームを用いることなく前記磁気コアに直接塗布して形成され、前記磁気コアを覆うための樹脂モールドを施さずに構成されたことを特徴とする巻線チップインダクタが得られる。
【0008】
【実施例】本発明に係る巻線チップインダクタの一実施例について図面を参照して詳細に説明する。図1及び図2R>2に示すように、磁気コア1は、四角ドラム型の基部2と、基部2の両端に形成された十字の形状の鍔部3とで構成されている。磁気コア1の材料は任意に透磁率、誘電率が取れるフェライトまたはセラミック等である。
【0009】上記したように形成された磁気コア1に、図3に示すように磁気コア1の両端の鍔部3の下部に銀ペーストを塗布し、高温で焼き付けして銀ペースト焼付塗布端子を形成する。このように形成された端子付きコアに、図4に示すように銅線または磁性メッキ銅線(図中の符号6)で巻線を行う。このとき巻線の巻終わりが4ケ所存在するため巻数を1/4T単位で制御することができる。巻線が終了したら銅線6の両引き出し端部を両端子4にハンダ付け、あるいはハンダによる溶融のない高信頼性のスポット溶接等により電気的に接続する。以上の工程で巻線チップインダクタ5を製造する。
【0010】図5及び図6は従来のU型コア巻線チップインダクタにおける、巻線線材に銅線と磁性メッキ銅線を使用したもののQ(尖鋭度)の周波数特性データである。図5及び図6のグラフにおいて、実線は、巻線線材が磁性メッキ銅線を使用した場合におけるQの周波数特性データであり、破線は、巻線線材が、銅線を使用した場合におけるQの周波数特性データである。図からわかるように磁性メッキ銅線を使用すると、Qが向上することがわかる。尚、図5の場合は、コア形状がU字形コアで、コア材がフェライトAで、銅線及び磁性メッキ銅線の巻回数が16Tで、両巻線の線径がφ50μmである。一方、図6の場合は、コア材がフェライトBで、巻回数が36Tであり、これ以外は図5の場合と同じである。
【0011】尚、フェライトAの組成は、61(Ni0.7 ・Cu0.3 )O・ 6ZnO・33Fe2 3 であって、その各秤量は、Fe2 3 が33.0(モル/%),NiOが42.7(モル/%)、CuOが18.3(モル/%)、ZnOが6.0(モル/%)である。フェライトBの組成は、57(Ni0.7 ・Cu0.3 )O・10ZnO・33Fe2 3 であって、その各秤量は、Fe2 3 が33.0(モル/%),NiOが39.9(モル/%)、CuOが17.1(モル/%)、ZnOが10.0(モル/%)である。
【0012】以下に示す表1は従来のU型コア巻線チップインダクタにおける、モールド樹脂を施したものと施していないもののQの比較データを示す。これによりモールド樹脂によりコアにストレスがかかりQが低下することがわかる。尚、この場合で使用された磁気コアの形状は、U字形であり、巻線には銅線を使用し、巻線の巻回数は17Tで、巻線の線径はφ40μmである。
【0013】
【表1】


【0014】
【発明の効果】以上述べたごとく本発明によれば、以下の効果がある。
【0015】第1に、巻数を1/4T単位で制御できることによりインダクタンス公差を低減でき、高周波の各周波数における様々なインダクタンスが設定可能となる。
【0016】第2に、Q特性が向上することにより電気効率が良くなる。
【0017】以上より通信機器をはじめとする電気製品のデバイスとして、ユーザーの要求する巻線チップインダクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る巻線チップインダクタの磁気コアの構造を示した外観斜視図である。
【図2】図1に示された磁気コアの構造を示す図で、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は側面図である。
【図3】図1に示された磁気コアに端子を塗布した端子付磁気コアを示す外観斜視図である。
【図4】本発明に係る巻線チップインダクタの構造を示した外観斜視図である。
【図5】銅線及び磁性メッキ銅線の周波数に対するQ特性を示したグラフである。
【図6】銅線及び磁性メッキ銅線の周波数に対するQ特性を示したグラフである。
【図7】従来の巻線チップインダクタの構造を示した外観斜視図である。
【符号の説明】
1 十字型磁気コア
2 基部
3 鍔部
4 銀ペースト焼付塗布端子
5 巻線チップインダクタ
6 銅線
11 U字型磁気コア
12 リード端子
13 モールド樹脂

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一対の端子間に磁気コアを配置し、該磁気コアに施された巻線の両端部が前記端子にそれぞれ接続されて構成される巻線チップインダクタにおいて、前記磁気コアが、所定方向に延在する四角ドラム状の基部と、該基部の軸方向両端部にそれぞれ設けられた十字型の鍔部とで構成されていることを特徴とする巻線チップインダクタ。
【請求項2】 一対の端子間に磁気コアを配置し、該磁気コアに施された巻線の両端部が前記端子にそれぞれ接続されて構成される巻線チップインダクタにおいて、前記巻線に磁性メッキ銅線を使用し、前記端子はリードフレームを用いることなく前記磁気コアに直接塗布して形成され、前記磁気コアを覆うための樹脂モールドを施さずに構成されたことを特徴とする巻線チップインダクタ。
【請求項3】 一対の端子間に磁気コアを配置し、該磁気コアに施された巻線の両端部が前記端子にそれぞれ接続されて構成される巻線チップインダクタにおいて、前記磁気コアが、所定方向に延在する四角ドラム状の基部と、該基部の軸方向両端部にそれぞれ設けられた十字型の鍔部とで構成され、前記巻線に磁性メッキ銅線を使用し、前記端子はリードフレームを用いることなく前記磁気コアに直接塗布して形成され、前記磁気コアを覆うための樹脂モールドを施さずに構成されたことを特徴とする巻線チップインダクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開平8−124748
【公開日】平成8年(1996)5月17日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−260090
【出願日】平成6年(1994)10月25日
【出願人】(000134257)株式会社トーキン (1,832)