巻線リール及び巻取装置
【課題】巻取作業の自動化を容易にし、かつ、使用後の残線量を減少させて線材の無駄を省くことができる巻線リール及び巻取装置を提供すること。
【解決手段】巻取システム10において、巻線リール20は、線材13を巻く円筒状の巻芯21と、巻芯21に巻かれた線材13を保持するつば部26とを備えている。巻芯21は、線材13を外周側から内周側へ向けて貫挿させるために貫通形成された貫通路22と、貫通路22に貫挿された線材13の先端部13aを巻芯21の内周面21aに沿ってリール回転方向Aとは逆向きBに屈曲させた状態で保持するために内周側21aに設けられた保持部25とを備えている。巻取装置30は、巻芯21の内側に配置されて保持部25との間で線材13の先端部13aを挟持する略円筒状の挟持部材60と、巻芯21の内周に沿って移動し保持部25と協働して線材13の先端部13aを屈曲させる屈曲機構50とを備えている。
【解決手段】巻取システム10において、巻線リール20は、線材13を巻く円筒状の巻芯21と、巻芯21に巻かれた線材13を保持するつば部26とを備えている。巻芯21は、線材13を外周側から内周側へ向けて貫挿させるために貫通形成された貫通路22と、貫通路22に貫挿された線材13の先端部13aを巻芯21の内周面21aに沿ってリール回転方向Aとは逆向きBに屈曲させた状態で保持するために内周側21aに設けられた保持部25とを備えている。巻取装置30は、巻芯21の内側に配置されて保持部25との間で線材13の先端部13aを挟持する略円筒状の挟持部材60と、巻芯21の内周に沿って移動し保持部25と協働して線材13の先端部13aを屈曲させる屈曲機構50とを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線機で使用する線材をあらかじめストックするための巻線リール及び巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルを形成するための巻線機として、あらかじめ巻取装置により線材をストックした巻線リールから、線材を巻戻して使用するものが知られている。この巻線リールには、一相分のコイルを形成するのに必要な長さの線材がストックされる。そして、一相分のコイルを形成した後に巻線リールを交換することにより、コイル形成中に巻線機を停止させることなく巻線作業を行えるようになっている。
【0003】
ここで、巻線リールに線材を巻き取る技術としては、ボルト等の線材固定部材を廃止して、線材のリールへの巻取作業を自動化したものが知られている(特許文献1)。特許文献1に開示された技術では、巻線リールの巻芯に直線溝が設けられている。そして、線材を直線溝に挿入した状態で巻線リールを回転させることにより、線材の先端部を曲げている。これにより、線材に作用する張力以上のクランプ力を生じさせ、線材が巻線リールから抜けないようにしている。
【特許文献1】特開平6−86513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術では、線材を巻芯の直線溝に挿入しているだけなので、リールの回転により線材に作用する張力以上のクランプ力が生じるまでは、線材を巻線リールに確実に固定することができなかった。このため、回転開始時に線材が巻線リールから抜けてしまうおそれがあった。また、少なくともリール一周以上巻かなければ、上に巻く線材によるクランプ力も生じない。このため、リール一周分を巻き終えるまでは、巻線リールを低速回転させる必要があった。こうした課題が、特許文献1に開示された巻取作業の自動化技術には残されていた。
【0005】
また、巻線機により巻線リールから線材を巻戻す際、巻線リールの残線量がリール一周分以下になると、上に巻かれた線材によるクランプ力が生じなくなる。このとき、特許文献1に開示された巻線リールでは、リール自体が線材を保持していないため、線材が巻線リールから抜けてしまう。こうした事情から、一般的には、線材が抜けないようにするために、巻線リールに線材を一周分余分にストックすることが行われていた。
ところが、このように余分に線材をストックすると、使用後の巻線リールにおける残線量が多くなってしまう。また、この残余線材は、一相分のコイルを形成するごとに発生してしまう。こうした事情から、線材の無駄が多くなるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、巻取作業の自動化を容易にし、かつ、使用後の残線量を減少させて線材の無駄を省くことができる巻線リール及び巻取装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するためになされた本発明に係る巻線リールは、線材を巻く円筒状の巻芯と、前記巻芯に巻かれた線材を保持するつば部とを備えた巻線リールにおいて、前記巻芯は、前記線材を外周側から内周側へ向けて貫挿させるために貫通形成された貫通路と、前記貫通路に貫挿された前記線材の先端部を前記巻芯の内周面に沿ってリール回転方向とは逆向きに屈曲させた状態で保持するために内周側に設けられた保持部とを有することを特徴とする。
【0008】
この巻線リールでは、巻芯の貫通路に貫挿された線材の先端部が、保持部により巻芯の内周面に沿ってリール回転方向とは逆向きに屈曲した状態で保持される。これにより、巻取りの開始時から線材に作用する張力以上のクランプ力を発生させることができるので、線材を巻線リールに確実に固定することができる。このため、この巻線リールによると、線材が巻線リールから抜けない。したがって、巻取作業を自動化してリールを高速回転させることができ、線材を巻線リールに短時間で巻取ることができる。
【0009】
また、この巻線リールでは、線材の先端部を曲げることでクランプ力を生じさせているため、巻線リールに線材を余分にストックしておく必要がない。したがって、コイル形成後の残線量を最小限に抑え、線材の無駄を少なくすることができる。
【0010】
さらに、この巻線リールにストックされた線材は、先端部を曲げることによりクランプされているだけである。したがって、この巻線リールを用いて巻線装置によりコイルを形成した後、所定以上の力を作用させて容易に抜くことができる。これにより、巻線作業の自動化を阻害することもない。
【0011】
本発明に係る巻線リールにおいて、前記貫通路は、前記保持部に対して鋭角をなすように形成されていることが望ましい。
【0012】
このように貫通路を形成することにより、貫通路に貫挿された線材の先端部を鋭角に屈曲させた状態で保持することができる。これにより、線材の先端部が保持部によりしっかりと保持されるため、線材の抜けをより確実に防止することができる。
【0013】
本発明に係る巻線リールにおいて、前記保持部における前記線材の屈曲部との当接部位は、R面形状又はC面形状に形成されていることが望ましい。
【0014】
このように保持部における線材の曲部との当接部位をR面形状又はC面形状に形成することにより、R面又はC面の設計を変更するだけで、線材に発生させるクランプ力を変更することができる。これにより、適宜必要なクランプ力を線材に作用させることができるため、汎用性が高いものとなる。
【0015】
本発明に係る巻線リールにおいて、前記保持部は、巻芯とは別体に形成されていることが望ましい。
【0016】
このように、保持部を巻芯とは別体に形成することにより、保持部のみを容易に交換することができる。こうして、共通の巻線リールを使用しながら、必要なクランプ力の変更を行うことができる。これにより、適宜必要なクランプ力を線材に作用させることができるため、汎用性が高いものとなる。
【0017】
上記問題点を解決するためになされた本発明に係る巻取装置は、上記したいずれかの巻線リールに線材を巻き取る巻取装置において、前記巻芯の内側に配置され、前記保持部との間で前記線材の先端部を挟持する略円筒状の挟持部材を有することを特徴とする。
【0018】
この巻取装置では、巻芯の内側に配置された略円筒状の挟持部材と保持部との間に、線材の先端部を屈曲させた状態で挟持することができる。これにより、挟持部材の外周面を利用して線材の先端部を持続的に挟持できるため、リール回転の際、屈曲させた線材の先端部が巻芯の内周面から浮くのを防止することができる。これにより、線材に作用するクランプ力が弱まって巻芯の貫通路から線材が抜けるのを防止することができる。
【0019】
本発明に係る巻取装置において、前記巻芯の内周に沿って移動可能に設けられ、前記保持部と協働して前記線材の先端部を屈曲させる屈曲機構を有することが望ましい。
【0020】
この装置によれば、屈曲機構を巻芯の内周に沿って移動させるという簡単な構成で、巻芯に対する線材の保持を自動化することができる。
【0021】
本発明に係る巻取装置において、前記屈曲機構は、前記線材を屈曲させた後、前記挟持部材の一部をなすことが望ましい。
【0022】
この装置によれば、屈曲機構が挟持部材の一部をなすため、屈曲機構に線材の挟持機能を兼用させることができる。このため、本発明に係る装置をコンパクトに構成できるとともに、屈曲機構によっても線材の先端部を持続的に挟持することができる。
【0023】
本発明に係る巻取装置において、前記屈曲機構は、前記線材を屈曲させた後、前記挟持部材とともに円筒形状をなすことが望ましい。
【0024】
この装置によれば、屈曲機構により線材を屈曲させた後、挟持部材及び屈曲機構により全周にわたって線材の先端部を挟持することができる。こうして、線材の先端部をより確実に巻芯に固定することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る巻線リール及び巻取装置によれば、上記した通り、巻取作業の自動化を容易にし、かつ、使用後の残線量を減少させて線材の無駄を省くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の巻線リール及び巻取装置を具体化した一実施形態に係る巻取システムについて、図面に基づき詳細に説明する。この巻取システムは、巻線機で使用する線材をあらかじめストックするためのものである。そこで、この巻取システムについて、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る巻取システムを示す全体構成図である。
【0027】
この巻取システム10は、図1に示すように、複数のボビン12を有する線材供給部11と、各ボビン12から巻き取られる線材13を巻取位置へと案内するガイド部14と、ガイド部14により案内された線材13に作用させる張力を調整する張力調整部15と、適切な張力を付与された各線材13を一列に整列させる整列部16と、整列した線材13を巻き付けてストックするための巻線リール20と、巻線リール20に線材13を巻き取るための巻取装置30と、線材13をストックした巻線リール20を保管するリール保管部18とを備えている。
【0028】
本実施形態の線材供給部11には、十二個のボビン12が保管されている。そして、各ボビン12には線材13が一本ずつストックされている。ガイド部14では、これら12本の線材13を一つの束にまとめられるようになっている。張力調整部15は、線材13の片側に所定の間隔をあけて当接するように設けられた二つのロール15a,15aと、これらのロール15a,15aの間に逆側から線材13の束を押圧するように設けられたロール15bとを備えている。そして、ロール15bによる押圧力を変更することにより、線材13に作用させる張力を調整できるようになっている。整列部16は、次第に幅狭となるように形成された通路(図示略)を備えている。そして、この通路に線材13の束を通過させることにより、線材13を一列に整列させるようになっている。整列した線材13は、巻取装置30に備わるグリッパ17により、装置30にセットされた巻線リール20へと導かれるようになっている。
【0029】
続いて、本実施形態に係る巻線リールについて、図2〜図5を参照しながら詳細に説明する。図2は、同システムに係る巻線リールを示す斜視図である。図3は、同巻線リールの内部構造を示す斜視図である。図4は、保持部により線材を保持した状態を示す部分拡大図である。図5は、保持部の変更例を示す斜視図である。
巻線リール20は、図2に示すように、線材13を巻く円筒状の巻芯21と、巻芯21に巻かれた線材13を保持するつば部26と、巻芯21とつば部26とを一体に固定する円筒部材27とを備えている。
【0030】
巻芯21は、図3に示すように、外周側から内周側へ線材13を貫挿させるための貫通路22と、貫通路22に貫挿された線材13の先端部13aを保持するための保持部25とを備えている。貫通路22は、外周側から内周側へと貫通するように形成された空間である。そして、この貫通路22は、保持部25に対して鋭角θ(例えば45度程度)をなすように形成されている。これにより、図4に示すように、貫通路22に貫挿された線材13の先端部13aを鋭角θに屈曲させた状態で保持できるようになっている。また、巻芯21には、軸方向に貫通形成された複数の組付穴23が設けられている。この組付穴23は、巻芯21をつば部26及び円筒部材27と組み付けるために使用するものである。
【0031】
保持部25は、貫通路22に貫挿された線材13の先端部13aを、巻芯21の内周面21aに沿ってリール回転方向Aとは逆向きBに屈曲させた状態で保持するためのものである。この保持部25は、巻芯21とは別体に形成されている。これにより、保持部25のみを容易に交換することができる。したがって、共通の巻線リール20を使用しながら、線材13に作用させるクランプ力の変更を行うことができる。これにより、適宜必要なクランプ力を線材13に作用させることができるため、汎用性が高いものとなる。
【0032】
この保持部25は、鋭角θに屈曲した略L型形状をなしており、その短辺部分25aが貫通路22の一部を構成し、長辺部分25bが巻芯21の内周面21aの一部を構成している。また、保持部25の屈曲部25cは、R面形状をなしている。そして、この屈曲部25cが、貫通路22を通過した線材13の先端部13aの屈曲部と当接するようになっている。これにより、巻取りの開始時から線材13に作用する張力以上のクランプ力を発生させて、線材13を巻線リール20に確実に固定できるようになっている。また、保持部25の屈曲部25cをR面形状に形成することにより、Rの値を変更するだけで、線材13に発生させるクランプ力を変更することができる。これにより、適宜必要なクランプ力を線材13に作用させることができるため、汎用性が高いものとなる。
【0033】
ここで、保持部の変更例について、図5を参照しながら説明する。変更例に係る保持部70では、図5に示すように、屈曲部70cがC面形状に形成されている。そして、この保持部70では、面取りの幅Dを変更することにより、線材13に発生させるクランプ力を変更することができる。したがって、この保持部70の屈曲部70cによっても、適宜必要なクランプ力を線材13に作用させることができるため、上記同様に汎用性が高いものとなる。
【0034】
つば部26は、図2に示すように、巻芯21の両端面から全周にわたって外側へ延設された環状の板部材である。このつば部26により、巻芯21に巻かれた線材13が、巻芯21から外れないようになっている。
【0035】
円筒部材27は、巻芯21と同径の円筒形状をなしている。そして、二つの円筒部材27,27が、巻芯21の両端面とともに各つば部26,26の内径側を挟むように設けられている。また、円筒部材27には巻芯21の組付穴23に対応する複数の組付穴27aが形成されている。そして、各つば部26を挟み込んだ状態で、巻芯21と各円筒部材27とがボルトにより固定されている。こうして、巻芯21と各つば部26,26と各円筒部材27,27とが一体に固定されている。また、円筒部材27には、巻線リール20と巻取装置30との位置決めに用いられるピン穴部28が形成されている。
【0036】
続いて、本実施形態に係る巻取装置について、図2及び図6を参照しながら詳細に説明する。図6は、同巻取システムに係る巻取装置を示す概略構成図である。
巻取装置30は、図6に示すように、装置全体を支持するための支持台31と、巻線リール20を回転させるための回転機構40と、線材13の先端部13aを屈曲させるための屈曲機構50と、屈曲させた線材13の先端部13aを挟持するための挟持部材60とを備えている。
【0037】
挟持部材60は、巻芯21の内側に配置されて、保持部25との間で線材13の先端部13aを挟持するものである。この挟持部材60は、巻芯21の内周より僅かに小さい略円板形状をなしている。そして、挟持部材60の外周には、巻芯21の内周面に沿って円筒状に形成された挟持部61が設けられている。この挟持部61の外周面と巻芯21の内周面との間には、僅かな隙間が形成されており、この隙間を利用して線材13の先端部13aを挟持するようになっている。また、挟持部材60の円周面には、部分的に欠けるように形成された欠け部62が設けられている(図2参照)。この欠け部62は、後述する屈曲爪56の弧状部57を収納可能に形成されている。また、挟持部材60の中央には、円形穴63が形成されている。この円形穴63により、挟持部材60を、支持台31に固定された円筒状の固定部材35の上端に嵌め込んで固定するようになっている。したがって、挟持部材60は、支持台31に対して動かないよう構成されている。
【0038】
回転機構40は、支持台31に固定されたサーボモータ32と、サーボモータ32に減速機33を介して接続されたタイミングベルト34と、タイミングベルト34に接続された円筒状の回転部材45とを備えている。この回転部材45には、上記ピン穴部28に対応する位置にロケートピン46が取り付けられている。また、回転部材45は、支持台31に固定された円筒状の固定部材35の外周面に、ベアリング44を介して回転可能に設けられている。そして、巻線リール20のピン穴部28をロケートピン46に嵌めこんだ状態で、回転部材45を回転させることにより、巻線リール20を回転させられるようになっている。
【0039】
屈曲機構50は、固定部材35の内部にベアリング51を介して回転可能に貫挿されたメインシャフト52と、メインシャフト52の一端に取り付けられた屈曲用モータ(図示略)と、メインシャフト52の他端に取り付けられたメインギヤ53と、メインギヤ53と噛み合うピニオンギヤ54を回動可能に保持するピニオンシャフト55と、ピニオンギヤ54に一体に取り付けられた屈曲爪56とを備えている。そして、屈曲用モータによりメインシャフト52を回動させると、メインギヤ53がピニオンギヤ54を回動させる。これにより、ピニオンギヤ54に一体に取り付けられた屈曲爪56も、ピニオンシャフト55を軸に回動するようになっている。
【0040】
屈曲爪56は、図2に示すように、巻芯21の内周に沿うように形成された弧状部57と、弧状部57とピニオンギヤ54とを連結する連結部58とを備えている。そして、弧状部57の一端57aは、巻芯21の内周に沿って移動するように設けられている。これにより、線材13をリール20の貫通路22に貫挿した状態で、屈曲爪56をリール回転方向Aとは逆方向Bへ回動させると、屈曲爪56の弧状部57が、線材13の先端部13aを、巻芯21の内周面21aに沿ってB方向へ屈曲させるようになっている。また、弧状部57は、線材13を屈曲させた後、挟持部材60の欠け部62に収納され、挟持部材60とともに円板形状をなすようになっている。これにより、屈曲機構50に線材13の挟持機能を兼用させることができる。このため、巻取装置30をコンパクトに構成できるとともに、屈曲機構50によっても線材13の先端部13aを持続的に挟持することができる。また、挟持部材60とともに円板形状をなすように構成することにより、全外周にわたって線材13の先端部13aを挟持することができ、線材13の先端部13aを確実に巻芯21に固定することができる。以上のように、屈曲機構50を巻芯21の内周に沿って移動させるという簡単な構成で、巻芯21に対する線材13の保持を自動化することができる。
【0041】
次に、上記構成を有する巻取装置30の動作について、図7〜図10を参照しながら説明する。図7は、回転部材に巻線リールを組み付けた状態を示す説明図である。図8は、巻線リールに線材を挿入した状態を示す説明図である。図9は、線材の先端部を屈曲させた状態を示す説明図である。図10は、巻取装置の動作を示すフローチャートである。
【0042】
図10に示すように、ステップS1において、巻取装置30は、ストックする巻線リール20の相情報(U相、V相,W相のいずれのコイルを形成するための線材を巻き取るかについての情報)を取得する。ステップS2において、巻取装置30は、図7に示すように、取得した相情報に対応する空リール20を、巻取装置30(の回転部材45)にセットする。このとき、巻線リール20のピン穴部28には、回転部材45に設けられたロケートピン46が差し込まれる(図6参照)。これにより、巻線リール20を適切に位置決めした状態で回転させることができる。そして、ステップS3において、巻取装置30は、セットされた巻線リール20を、線材13の挿入位置に回転させる。ステップS4において、巻取装置30は、図8に示すように、線材13を巻線リール20の貫通路22に挿入する。
【0043】
続いて、ステップS5において、巻取装置30は、図9に示すように、屈曲機構50により線材13の先端部13aを巻芯21の内周面21aに沿って屈曲させる。これにより、巻芯21の貫通路22に貫挿された線材13の先端部13aが、保持部25により巻芯21の内周面21aに沿ってリール回転方向Aとは逆向きBに屈曲した状態で保持される(図4参照)。したがって、巻取りの開始時から線材13に作用する張力以上のクランプ力を発生させることができるので、線材13を巻線リール20に確実に固定することができる。本実施形態では、例えば49N(5kgf)程度以上のクランプ力を発生させて、線材13が巻線リール20から抜けないようにしている。これにより、巻取作業を自動化してリール20を高速回転させ、線材13を巻線リール20に短時間で巻取ることができる。
【0044】
また、線材13の先端部13aを曲げることでクランプ力を生じさせているため、巻線リール20の残線量がリール一周分以下になっても、必要なクランプ力を線材13に作用させておくことができる。このため、巻線リール20に線材13を余分にストックしておく必要がない。したがって、コイル形成後におけるリール20の残線量を最小限に抑え、線材13の無駄を省くことができる。さらに、この巻線リール20にストックされた線材13は、先端部13aを曲げることによりクランプされているだけである。したがって、この巻線リール20を用いて巻線装置によりコイルを形成した後、所定以上の力を作用させて容易に抜くことができる。本実施形態では、例えば98N(10kgf)程度以上の力で抜けるようになっている。これにより、巻線作業の自動化を阻害することもない。
【0045】
そして、ステップS6において、巻取装置30は、線材13を掴んでいたグリッパ17を開放する。ステップS7において、巻取装置30は、巻線リール20を巻取位置まで回転させる。ステップS8において、巻取装置30は、回転部材45とともに巻線リール20を回転させる。このとき、この巻取装置30では、挟持部材60と保持部25との間に、線材13の先端部13aを屈曲させた状態で挟持することができる。こうして、挟持部材60の外周面を利用して線材13の先端部13aを持続的に挟持できるため、巻線リール20を回転させても屈曲させた線材13の先端部13aが巻芯21の内周面21aから浮くのを防止することができる。これにより、線材13に作用するクランプ力が弱まって線材13が巻芯21の貫通路22から抜けてしまうのを防止することができる。
【0046】
そして、ステップS9において、巻取装置30は、取得した相情報に基づき所定回転だけリール20を回転させた後、リール20の回転を停止させる。これにより、リール20の巻芯21に所定長さの線材13がストックされる。また、巻取終了時のリール位置は、巻取りの開始位置と同じになっている。このように、巻取開始と巻取終了とを同位置で行うことにより、後工程の際、再度リールの位置合せをする必要がない。ステップS10において、巻取装置30は、線材13をカットする。ステップ11において、巻取装置30は、巻線リール20をリール保管部18に搬送する。そして、巻取装置30は、巻取作業を終了する。
【0047】
以上、詳細に説明したように本実施形態に係る巻取りシステム10によれば、巻取作業の自動化を容易にし、かつ、使用後の残線量を減少させて線材13の無駄を省くことができる。
【0048】
なお、上記実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記実施形態においては、巻線リール20を巻芯21、つば部26及び円筒部材27の三部品から構成しているが、巻線リール20を一体形成により一部品又は二部品となるように構成してもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、貫通路22が保持部25に対してなす鋭角θの値を自由に変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態に係る巻取システムを示す全体構成図である。
【図2】同システムに係る巻線リールを示す斜視図である。
【図3】同巻線リールの内部構造を示す斜視図である。
【図4】保持部により線材を保持した状態を示す部分拡大図である。
【図5】保持部の変更例を示す斜視図である。
【図6】同巻取システムに係る巻取装置を示す概略構成図である。
【図7】同巻取装置に巻線リールを組み付けた状態を示す説明図である。
【図8】同巻線リールに線材を挿入した状態を示す説明図である。
【図9】線材の先端部を屈曲させた状態を示す説明図である。
【図10】巻取装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
10 巻取システム
13 線材
13a 先端部
20 巻線リール
21 巻芯
21a 内周面
22 貫通路
25 保持部
25c 屈曲部
26 つば部
30 巻取装置
50 屈曲機構
60 挟持部材
A リール回転方向
B リール回転逆方向
D 面取りの幅
θ 鋭角
【技術分野】
【0001】
本発明は、巻線機で使用する線材をあらかじめストックするための巻線リール及び巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コイルを形成するための巻線機として、あらかじめ巻取装置により線材をストックした巻線リールから、線材を巻戻して使用するものが知られている。この巻線リールには、一相分のコイルを形成するのに必要な長さの線材がストックされる。そして、一相分のコイルを形成した後に巻線リールを交換することにより、コイル形成中に巻線機を停止させることなく巻線作業を行えるようになっている。
【0003】
ここで、巻線リールに線材を巻き取る技術としては、ボルト等の線材固定部材を廃止して、線材のリールへの巻取作業を自動化したものが知られている(特許文献1)。特許文献1に開示された技術では、巻線リールの巻芯に直線溝が設けられている。そして、線材を直線溝に挿入した状態で巻線リールを回転させることにより、線材の先端部を曲げている。これにより、線材に作用する張力以上のクランプ力を生じさせ、線材が巻線リールから抜けないようにしている。
【特許文献1】特開平6−86513号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1に開示された技術では、線材を巻芯の直線溝に挿入しているだけなので、リールの回転により線材に作用する張力以上のクランプ力が生じるまでは、線材を巻線リールに確実に固定することができなかった。このため、回転開始時に線材が巻線リールから抜けてしまうおそれがあった。また、少なくともリール一周以上巻かなければ、上に巻く線材によるクランプ力も生じない。このため、リール一周分を巻き終えるまでは、巻線リールを低速回転させる必要があった。こうした課題が、特許文献1に開示された巻取作業の自動化技術には残されていた。
【0005】
また、巻線機により巻線リールから線材を巻戻す際、巻線リールの残線量がリール一周分以下になると、上に巻かれた線材によるクランプ力が生じなくなる。このとき、特許文献1に開示された巻線リールでは、リール自体が線材を保持していないため、線材が巻線リールから抜けてしまう。こうした事情から、一般的には、線材が抜けないようにするために、巻線リールに線材を一周分余分にストックすることが行われていた。
ところが、このように余分に線材をストックすると、使用後の巻線リールにおける残線量が多くなってしまう。また、この残余線材は、一相分のコイルを形成するごとに発生してしまう。こうした事情から、線材の無駄が多くなるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は上記した問題点を解決するためになされたものであり、巻取作業の自動化を容易にし、かつ、使用後の残線量を減少させて線材の無駄を省くことができる巻線リール及び巻取装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題点を解決するためになされた本発明に係る巻線リールは、線材を巻く円筒状の巻芯と、前記巻芯に巻かれた線材を保持するつば部とを備えた巻線リールにおいて、前記巻芯は、前記線材を外周側から内周側へ向けて貫挿させるために貫通形成された貫通路と、前記貫通路に貫挿された前記線材の先端部を前記巻芯の内周面に沿ってリール回転方向とは逆向きに屈曲させた状態で保持するために内周側に設けられた保持部とを有することを特徴とする。
【0008】
この巻線リールでは、巻芯の貫通路に貫挿された線材の先端部が、保持部により巻芯の内周面に沿ってリール回転方向とは逆向きに屈曲した状態で保持される。これにより、巻取りの開始時から線材に作用する張力以上のクランプ力を発生させることができるので、線材を巻線リールに確実に固定することができる。このため、この巻線リールによると、線材が巻線リールから抜けない。したがって、巻取作業を自動化してリールを高速回転させることができ、線材を巻線リールに短時間で巻取ることができる。
【0009】
また、この巻線リールでは、線材の先端部を曲げることでクランプ力を生じさせているため、巻線リールに線材を余分にストックしておく必要がない。したがって、コイル形成後の残線量を最小限に抑え、線材の無駄を少なくすることができる。
【0010】
さらに、この巻線リールにストックされた線材は、先端部を曲げることによりクランプされているだけである。したがって、この巻線リールを用いて巻線装置によりコイルを形成した後、所定以上の力を作用させて容易に抜くことができる。これにより、巻線作業の自動化を阻害することもない。
【0011】
本発明に係る巻線リールにおいて、前記貫通路は、前記保持部に対して鋭角をなすように形成されていることが望ましい。
【0012】
このように貫通路を形成することにより、貫通路に貫挿された線材の先端部を鋭角に屈曲させた状態で保持することができる。これにより、線材の先端部が保持部によりしっかりと保持されるため、線材の抜けをより確実に防止することができる。
【0013】
本発明に係る巻線リールにおいて、前記保持部における前記線材の屈曲部との当接部位は、R面形状又はC面形状に形成されていることが望ましい。
【0014】
このように保持部における線材の曲部との当接部位をR面形状又はC面形状に形成することにより、R面又はC面の設計を変更するだけで、線材に発生させるクランプ力を変更することができる。これにより、適宜必要なクランプ力を線材に作用させることができるため、汎用性が高いものとなる。
【0015】
本発明に係る巻線リールにおいて、前記保持部は、巻芯とは別体に形成されていることが望ましい。
【0016】
このように、保持部を巻芯とは別体に形成することにより、保持部のみを容易に交換することができる。こうして、共通の巻線リールを使用しながら、必要なクランプ力の変更を行うことができる。これにより、適宜必要なクランプ力を線材に作用させることができるため、汎用性が高いものとなる。
【0017】
上記問題点を解決するためになされた本発明に係る巻取装置は、上記したいずれかの巻線リールに線材を巻き取る巻取装置において、前記巻芯の内側に配置され、前記保持部との間で前記線材の先端部を挟持する略円筒状の挟持部材を有することを特徴とする。
【0018】
この巻取装置では、巻芯の内側に配置された略円筒状の挟持部材と保持部との間に、線材の先端部を屈曲させた状態で挟持することができる。これにより、挟持部材の外周面を利用して線材の先端部を持続的に挟持できるため、リール回転の際、屈曲させた線材の先端部が巻芯の内周面から浮くのを防止することができる。これにより、線材に作用するクランプ力が弱まって巻芯の貫通路から線材が抜けるのを防止することができる。
【0019】
本発明に係る巻取装置において、前記巻芯の内周に沿って移動可能に設けられ、前記保持部と協働して前記線材の先端部を屈曲させる屈曲機構を有することが望ましい。
【0020】
この装置によれば、屈曲機構を巻芯の内周に沿って移動させるという簡単な構成で、巻芯に対する線材の保持を自動化することができる。
【0021】
本発明に係る巻取装置において、前記屈曲機構は、前記線材を屈曲させた後、前記挟持部材の一部をなすことが望ましい。
【0022】
この装置によれば、屈曲機構が挟持部材の一部をなすため、屈曲機構に線材の挟持機能を兼用させることができる。このため、本発明に係る装置をコンパクトに構成できるとともに、屈曲機構によっても線材の先端部を持続的に挟持することができる。
【0023】
本発明に係る巻取装置において、前記屈曲機構は、前記線材を屈曲させた後、前記挟持部材とともに円筒形状をなすことが望ましい。
【0024】
この装置によれば、屈曲機構により線材を屈曲させた後、挟持部材及び屈曲機構により全周にわたって線材の先端部を挟持することができる。こうして、線材の先端部をより確実に巻芯に固定することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係る巻線リール及び巻取装置によれば、上記した通り、巻取作業の自動化を容易にし、かつ、使用後の残線量を減少させて線材の無駄を省くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の巻線リール及び巻取装置を具体化した一実施形態に係る巻取システムについて、図面に基づき詳細に説明する。この巻取システムは、巻線機で使用する線材をあらかじめストックするためのものである。そこで、この巻取システムについて、図1を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る巻取システムを示す全体構成図である。
【0027】
この巻取システム10は、図1に示すように、複数のボビン12を有する線材供給部11と、各ボビン12から巻き取られる線材13を巻取位置へと案内するガイド部14と、ガイド部14により案内された線材13に作用させる張力を調整する張力調整部15と、適切な張力を付与された各線材13を一列に整列させる整列部16と、整列した線材13を巻き付けてストックするための巻線リール20と、巻線リール20に線材13を巻き取るための巻取装置30と、線材13をストックした巻線リール20を保管するリール保管部18とを備えている。
【0028】
本実施形態の線材供給部11には、十二個のボビン12が保管されている。そして、各ボビン12には線材13が一本ずつストックされている。ガイド部14では、これら12本の線材13を一つの束にまとめられるようになっている。張力調整部15は、線材13の片側に所定の間隔をあけて当接するように設けられた二つのロール15a,15aと、これらのロール15a,15aの間に逆側から線材13の束を押圧するように設けられたロール15bとを備えている。そして、ロール15bによる押圧力を変更することにより、線材13に作用させる張力を調整できるようになっている。整列部16は、次第に幅狭となるように形成された通路(図示略)を備えている。そして、この通路に線材13の束を通過させることにより、線材13を一列に整列させるようになっている。整列した線材13は、巻取装置30に備わるグリッパ17により、装置30にセットされた巻線リール20へと導かれるようになっている。
【0029】
続いて、本実施形態に係る巻線リールについて、図2〜図5を参照しながら詳細に説明する。図2は、同システムに係る巻線リールを示す斜視図である。図3は、同巻線リールの内部構造を示す斜視図である。図4は、保持部により線材を保持した状態を示す部分拡大図である。図5は、保持部の変更例を示す斜視図である。
巻線リール20は、図2に示すように、線材13を巻く円筒状の巻芯21と、巻芯21に巻かれた線材13を保持するつば部26と、巻芯21とつば部26とを一体に固定する円筒部材27とを備えている。
【0030】
巻芯21は、図3に示すように、外周側から内周側へ線材13を貫挿させるための貫通路22と、貫通路22に貫挿された線材13の先端部13aを保持するための保持部25とを備えている。貫通路22は、外周側から内周側へと貫通するように形成された空間である。そして、この貫通路22は、保持部25に対して鋭角θ(例えば45度程度)をなすように形成されている。これにより、図4に示すように、貫通路22に貫挿された線材13の先端部13aを鋭角θに屈曲させた状態で保持できるようになっている。また、巻芯21には、軸方向に貫通形成された複数の組付穴23が設けられている。この組付穴23は、巻芯21をつば部26及び円筒部材27と組み付けるために使用するものである。
【0031】
保持部25は、貫通路22に貫挿された線材13の先端部13aを、巻芯21の内周面21aに沿ってリール回転方向Aとは逆向きBに屈曲させた状態で保持するためのものである。この保持部25は、巻芯21とは別体に形成されている。これにより、保持部25のみを容易に交換することができる。したがって、共通の巻線リール20を使用しながら、線材13に作用させるクランプ力の変更を行うことができる。これにより、適宜必要なクランプ力を線材13に作用させることができるため、汎用性が高いものとなる。
【0032】
この保持部25は、鋭角θに屈曲した略L型形状をなしており、その短辺部分25aが貫通路22の一部を構成し、長辺部分25bが巻芯21の内周面21aの一部を構成している。また、保持部25の屈曲部25cは、R面形状をなしている。そして、この屈曲部25cが、貫通路22を通過した線材13の先端部13aの屈曲部と当接するようになっている。これにより、巻取りの開始時から線材13に作用する張力以上のクランプ力を発生させて、線材13を巻線リール20に確実に固定できるようになっている。また、保持部25の屈曲部25cをR面形状に形成することにより、Rの値を変更するだけで、線材13に発生させるクランプ力を変更することができる。これにより、適宜必要なクランプ力を線材13に作用させることができるため、汎用性が高いものとなる。
【0033】
ここで、保持部の変更例について、図5を参照しながら説明する。変更例に係る保持部70では、図5に示すように、屈曲部70cがC面形状に形成されている。そして、この保持部70では、面取りの幅Dを変更することにより、線材13に発生させるクランプ力を変更することができる。したがって、この保持部70の屈曲部70cによっても、適宜必要なクランプ力を線材13に作用させることができるため、上記同様に汎用性が高いものとなる。
【0034】
つば部26は、図2に示すように、巻芯21の両端面から全周にわたって外側へ延設された環状の板部材である。このつば部26により、巻芯21に巻かれた線材13が、巻芯21から外れないようになっている。
【0035】
円筒部材27は、巻芯21と同径の円筒形状をなしている。そして、二つの円筒部材27,27が、巻芯21の両端面とともに各つば部26,26の内径側を挟むように設けられている。また、円筒部材27には巻芯21の組付穴23に対応する複数の組付穴27aが形成されている。そして、各つば部26を挟み込んだ状態で、巻芯21と各円筒部材27とがボルトにより固定されている。こうして、巻芯21と各つば部26,26と各円筒部材27,27とが一体に固定されている。また、円筒部材27には、巻線リール20と巻取装置30との位置決めに用いられるピン穴部28が形成されている。
【0036】
続いて、本実施形態に係る巻取装置について、図2及び図6を参照しながら詳細に説明する。図6は、同巻取システムに係る巻取装置を示す概略構成図である。
巻取装置30は、図6に示すように、装置全体を支持するための支持台31と、巻線リール20を回転させるための回転機構40と、線材13の先端部13aを屈曲させるための屈曲機構50と、屈曲させた線材13の先端部13aを挟持するための挟持部材60とを備えている。
【0037】
挟持部材60は、巻芯21の内側に配置されて、保持部25との間で線材13の先端部13aを挟持するものである。この挟持部材60は、巻芯21の内周より僅かに小さい略円板形状をなしている。そして、挟持部材60の外周には、巻芯21の内周面に沿って円筒状に形成された挟持部61が設けられている。この挟持部61の外周面と巻芯21の内周面との間には、僅かな隙間が形成されており、この隙間を利用して線材13の先端部13aを挟持するようになっている。また、挟持部材60の円周面には、部分的に欠けるように形成された欠け部62が設けられている(図2参照)。この欠け部62は、後述する屈曲爪56の弧状部57を収納可能に形成されている。また、挟持部材60の中央には、円形穴63が形成されている。この円形穴63により、挟持部材60を、支持台31に固定された円筒状の固定部材35の上端に嵌め込んで固定するようになっている。したがって、挟持部材60は、支持台31に対して動かないよう構成されている。
【0038】
回転機構40は、支持台31に固定されたサーボモータ32と、サーボモータ32に減速機33を介して接続されたタイミングベルト34と、タイミングベルト34に接続された円筒状の回転部材45とを備えている。この回転部材45には、上記ピン穴部28に対応する位置にロケートピン46が取り付けられている。また、回転部材45は、支持台31に固定された円筒状の固定部材35の外周面に、ベアリング44を介して回転可能に設けられている。そして、巻線リール20のピン穴部28をロケートピン46に嵌めこんだ状態で、回転部材45を回転させることにより、巻線リール20を回転させられるようになっている。
【0039】
屈曲機構50は、固定部材35の内部にベアリング51を介して回転可能に貫挿されたメインシャフト52と、メインシャフト52の一端に取り付けられた屈曲用モータ(図示略)と、メインシャフト52の他端に取り付けられたメインギヤ53と、メインギヤ53と噛み合うピニオンギヤ54を回動可能に保持するピニオンシャフト55と、ピニオンギヤ54に一体に取り付けられた屈曲爪56とを備えている。そして、屈曲用モータによりメインシャフト52を回動させると、メインギヤ53がピニオンギヤ54を回動させる。これにより、ピニオンギヤ54に一体に取り付けられた屈曲爪56も、ピニオンシャフト55を軸に回動するようになっている。
【0040】
屈曲爪56は、図2に示すように、巻芯21の内周に沿うように形成された弧状部57と、弧状部57とピニオンギヤ54とを連結する連結部58とを備えている。そして、弧状部57の一端57aは、巻芯21の内周に沿って移動するように設けられている。これにより、線材13をリール20の貫通路22に貫挿した状態で、屈曲爪56をリール回転方向Aとは逆方向Bへ回動させると、屈曲爪56の弧状部57が、線材13の先端部13aを、巻芯21の内周面21aに沿ってB方向へ屈曲させるようになっている。また、弧状部57は、線材13を屈曲させた後、挟持部材60の欠け部62に収納され、挟持部材60とともに円板形状をなすようになっている。これにより、屈曲機構50に線材13の挟持機能を兼用させることができる。このため、巻取装置30をコンパクトに構成できるとともに、屈曲機構50によっても線材13の先端部13aを持続的に挟持することができる。また、挟持部材60とともに円板形状をなすように構成することにより、全外周にわたって線材13の先端部13aを挟持することができ、線材13の先端部13aを確実に巻芯21に固定することができる。以上のように、屈曲機構50を巻芯21の内周に沿って移動させるという簡単な構成で、巻芯21に対する線材13の保持を自動化することができる。
【0041】
次に、上記構成を有する巻取装置30の動作について、図7〜図10を参照しながら説明する。図7は、回転部材に巻線リールを組み付けた状態を示す説明図である。図8は、巻線リールに線材を挿入した状態を示す説明図である。図9は、線材の先端部を屈曲させた状態を示す説明図である。図10は、巻取装置の動作を示すフローチャートである。
【0042】
図10に示すように、ステップS1において、巻取装置30は、ストックする巻線リール20の相情報(U相、V相,W相のいずれのコイルを形成するための線材を巻き取るかについての情報)を取得する。ステップS2において、巻取装置30は、図7に示すように、取得した相情報に対応する空リール20を、巻取装置30(の回転部材45)にセットする。このとき、巻線リール20のピン穴部28には、回転部材45に設けられたロケートピン46が差し込まれる(図6参照)。これにより、巻線リール20を適切に位置決めした状態で回転させることができる。そして、ステップS3において、巻取装置30は、セットされた巻線リール20を、線材13の挿入位置に回転させる。ステップS4において、巻取装置30は、図8に示すように、線材13を巻線リール20の貫通路22に挿入する。
【0043】
続いて、ステップS5において、巻取装置30は、図9に示すように、屈曲機構50により線材13の先端部13aを巻芯21の内周面21aに沿って屈曲させる。これにより、巻芯21の貫通路22に貫挿された線材13の先端部13aが、保持部25により巻芯21の内周面21aに沿ってリール回転方向Aとは逆向きBに屈曲した状態で保持される(図4参照)。したがって、巻取りの開始時から線材13に作用する張力以上のクランプ力を発生させることができるので、線材13を巻線リール20に確実に固定することができる。本実施形態では、例えば49N(5kgf)程度以上のクランプ力を発生させて、線材13が巻線リール20から抜けないようにしている。これにより、巻取作業を自動化してリール20を高速回転させ、線材13を巻線リール20に短時間で巻取ることができる。
【0044】
また、線材13の先端部13aを曲げることでクランプ力を生じさせているため、巻線リール20の残線量がリール一周分以下になっても、必要なクランプ力を線材13に作用させておくことができる。このため、巻線リール20に線材13を余分にストックしておく必要がない。したがって、コイル形成後におけるリール20の残線量を最小限に抑え、線材13の無駄を省くことができる。さらに、この巻線リール20にストックされた線材13は、先端部13aを曲げることによりクランプされているだけである。したがって、この巻線リール20を用いて巻線装置によりコイルを形成した後、所定以上の力を作用させて容易に抜くことができる。本実施形態では、例えば98N(10kgf)程度以上の力で抜けるようになっている。これにより、巻線作業の自動化を阻害することもない。
【0045】
そして、ステップS6において、巻取装置30は、線材13を掴んでいたグリッパ17を開放する。ステップS7において、巻取装置30は、巻線リール20を巻取位置まで回転させる。ステップS8において、巻取装置30は、回転部材45とともに巻線リール20を回転させる。このとき、この巻取装置30では、挟持部材60と保持部25との間に、線材13の先端部13aを屈曲させた状態で挟持することができる。こうして、挟持部材60の外周面を利用して線材13の先端部13aを持続的に挟持できるため、巻線リール20を回転させても屈曲させた線材13の先端部13aが巻芯21の内周面21aから浮くのを防止することができる。これにより、線材13に作用するクランプ力が弱まって線材13が巻芯21の貫通路22から抜けてしまうのを防止することができる。
【0046】
そして、ステップS9において、巻取装置30は、取得した相情報に基づき所定回転だけリール20を回転させた後、リール20の回転を停止させる。これにより、リール20の巻芯21に所定長さの線材13がストックされる。また、巻取終了時のリール位置は、巻取りの開始位置と同じになっている。このように、巻取開始と巻取終了とを同位置で行うことにより、後工程の際、再度リールの位置合せをする必要がない。ステップS10において、巻取装置30は、線材13をカットする。ステップ11において、巻取装置30は、巻線リール20をリール保管部18に搬送する。そして、巻取装置30は、巻取作業を終了する。
【0047】
以上、詳細に説明したように本実施形態に係る巻取りシステム10によれば、巻取作業の自動化を容易にし、かつ、使用後の残線量を減少させて線材13の無駄を省くことができる。
【0048】
なお、上記実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。例えば、上記実施形態においては、巻線リール20を巻芯21、つば部26及び円筒部材27の三部品から構成しているが、巻線リール20を一体形成により一部品又は二部品となるように構成してもよい。
【0049】
また、上記実施形態においては、貫通路22が保持部25に対してなす鋭角θの値を自由に変更してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施形態に係る巻取システムを示す全体構成図である。
【図2】同システムに係る巻線リールを示す斜視図である。
【図3】同巻線リールの内部構造を示す斜視図である。
【図4】保持部により線材を保持した状態を示す部分拡大図である。
【図5】保持部の変更例を示す斜視図である。
【図6】同巻取システムに係る巻取装置を示す概略構成図である。
【図7】同巻取装置に巻線リールを組み付けた状態を示す説明図である。
【図8】同巻線リールに線材を挿入した状態を示す説明図である。
【図9】線材の先端部を屈曲させた状態を示す説明図である。
【図10】巻取装置の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0051】
10 巻取システム
13 線材
13a 先端部
20 巻線リール
21 巻芯
21a 内周面
22 貫通路
25 保持部
25c 屈曲部
26 つば部
30 巻取装置
50 屈曲機構
60 挟持部材
A リール回転方向
B リール回転逆方向
D 面取りの幅
θ 鋭角
【特許請求の範囲】
【請求項1】
線材を巻く円筒状の巻芯と、前記巻芯に巻かれた線材を保持するつば部とを備えた巻線リールにおいて、
前記巻芯は、
前記線材を外周側から内周側へ向けて貫挿させるために貫通形成された貫通路と、
前記貫通路に貫挿された前記線材の先端部を前記巻芯の内周面に沿ってリール回転方向とは逆向きに屈曲させた状態で保持するために内周側に設けられた保持部とを有する
ことを特徴とする巻線リール。
【請求項2】
請求項1に記載する巻線リールにおいて、
前記貫通路は、前記保持部に対して鋭角をなすように形成されている
ことを特徴とする巻線リール。
【請求項3】
請求項2に記載する巻線リールにおいて、
前記保持部における前記線材の屈曲部との当接部位は、R面形状又はC面形状に形成されている
ことを特徴とする巻線リール。
【請求項4】
請求項3に記載する巻線リールにおいて、
前記保持部は、巻芯とは別体に形成されている
ことを特徴とする巻線リール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載する巻線リールに線材を巻き取るための巻取装置において、
前記巻芯の内側に配置され、前記保持部との間で前記線材の先端部を挟持する略円筒状の挟持部材を有する
ことを特徴とする巻取装置。
【請求項6】
請求項5に記載する巻取装置において、
前記巻芯の内周に沿って移動可能に設けられ、前記保持部と協働して前記線材の先端部を屈曲させる屈曲機構を有する
ことを特徴とする巻取装置。
【請求項7】
請求項6に記載する巻取装置において、
前記屈曲機構は、前記線材を屈曲させた後、前記挟持部材の一部をなす
ことを特徴とする巻取装置。
【請求項8】
請求項7に記載する巻取装置において、
前記屈曲機構は、前記線材を屈曲させた後、前記挟持部材とともに円筒形状をなす
ことを特徴とする巻取装置。
【請求項1】
線材を巻く円筒状の巻芯と、前記巻芯に巻かれた線材を保持するつば部とを備えた巻線リールにおいて、
前記巻芯は、
前記線材を外周側から内周側へ向けて貫挿させるために貫通形成された貫通路と、
前記貫通路に貫挿された前記線材の先端部を前記巻芯の内周面に沿ってリール回転方向とは逆向きに屈曲させた状態で保持するために内周側に設けられた保持部とを有する
ことを特徴とする巻線リール。
【請求項2】
請求項1に記載する巻線リールにおいて、
前記貫通路は、前記保持部に対して鋭角をなすように形成されている
ことを特徴とする巻線リール。
【請求項3】
請求項2に記載する巻線リールにおいて、
前記保持部における前記線材の屈曲部との当接部位は、R面形状又はC面形状に形成されている
ことを特徴とする巻線リール。
【請求項4】
請求項3に記載する巻線リールにおいて、
前記保持部は、巻芯とは別体に形成されている
ことを特徴とする巻線リール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載する巻線リールに線材を巻き取るための巻取装置において、
前記巻芯の内側に配置され、前記保持部との間で前記線材の先端部を挟持する略円筒状の挟持部材を有する
ことを特徴とする巻取装置。
【請求項6】
請求項5に記載する巻取装置において、
前記巻芯の内周に沿って移動可能に設けられ、前記保持部と協働して前記線材の先端部を屈曲させる屈曲機構を有する
ことを特徴とする巻取装置。
【請求項7】
請求項6に記載する巻取装置において、
前記屈曲機構は、前記線材を屈曲させた後、前記挟持部材の一部をなす
ことを特徴とする巻取装置。
【請求項8】
請求項7に記載する巻取装置において、
前記屈曲機構は、前記線材を屈曲させた後、前記挟持部材とともに円筒形状をなす
ことを特徴とする巻取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2009−256036(P2009−256036A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−106067(P2008−106067)
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月15日(2008.4.15)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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