説明

巻線型回転検出器の故障検出方法及び装置

【目的】 本発明は巻線型回転検出器の故障検出方法及び装置に関し、特に、レゾルバ等の巻線の断線及びレアショート等の故障を確実に検出することを目的とする。
【構成】 本発明による巻線型回転検出器の故障検出方法及び装置は、2相出力信号(KE sin ωt・cos θ,KE sin ωt・sin θ)を各々乗算して得た乗算出力(10a,11a)を加算し、この加算出力(12a)の最大値(13a)に基づいて故障信号(15)を出力することによりレアショートを検出する構成である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、巻線型回転検出器の故障検出装置に関し、特に、レゾルバ等の巻線の断線及びレアショート等の故障を確実に検出するための新規な改良に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、用いられていたこの種の巻線型回転検出器の故障検出装置としては、一般に、巻線の断線を検出するための導通の有無を検出することのみが行われていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来の巻線型回転検出器の故障検出装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。すなわち、従来構成では、断線検出のみであったため、巻線のレアショート等の断線以外の故障の検出は不可能であり、出力信号の精度にも悪影響が発生していた。
【0004】本発明は、以上のような課題を解決するためになされたもので、特に、レゾルバ等の巻線の断線及びレアショート等の故障を確実に検出するようにした巻線型回転検出器の故障検出装置を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明による巻線型回転検出器の故障検出装置は、2相の巻線出力部から得られた2相出力信号を各々乗算して各乗算出力を得ると共に、前記各乗算出力を加算して得た加算出力の最大値を検出し、前記最大値に基づいて故障信号を出力する方法である。
【0006】本発明による巻線型回転検出器の故障検出装置は、2相の巻線出力部から得られた2相出力信号を各々乗算するための第1、第2乗算器と、前記各乗算器からの各乗算出力を加算するための加算器と、前記加算器に接続され前記加算器からの加算出力の最大値を検出するための最大値検出回路と、前記最大値検出回路に接続され前記最大値のレベル判定を行うための最大値レベル判定回路とを備え、前記最大値レベル判定回路から故障信号を出力するようにした構成である。
【0007】
【作用】本発明による巻線型回転検出器の故障検出方法及び装置においては、巻線型回転検出器であるレゾルバの2相の巻線出力部から得られた2相出力信号を各々乗算し、その和を求めると、次式の通りとなる。
22 sin ωt・cos2θ+K22 sin2 ωt・sin2 θ=K22 sin2 ωt(cos2 θ+sin2 θ)=K22 sin2 ωt但し、K:巻線の変圧比E:入力電圧ω:2πf(fは励磁周波数)
t:時間θ:回転角さらに、前記和の最大値は、sin ωt=1の時で、その最大値はK22となる。この最大値K22は前述のように変圧比と入力電圧よりなるもので、回転角θに依存するものではない。従って、この最大値K22の変動を予め設定した設定値と比較することにより、1次側ロータトランス、1次側ロータコイル、2次側ステータコイルの故障(レアショート、絶縁不良等)を検出することができる。
【0008】
【実施例】以下、図面と共に本発明による巻線型回転検出器の故障検出方法及び装置の好適な実施例について詳細に説明する。図1は、巻線型回転検出器としてのレゾルバ(シンクロの場合もある)の巻線構造を示す結線図であり、この図1において符号1で示されるものはトランス入力巻線2とトランス出力巻線3からなる1次ロータトランスであり、このトランス出力巻線3には2相状の1次ロータ巻線4が接続されている。
【0009】前記ロータ巻線4に対応して2相状の2次ステータ巻線5(2相の巻線出力部をなす)が固定して配設されている。前記トランス入力巻線2には、励磁信号Esin ωtが印加され、2次ステータ巻線5の各出力端5a,5bからは2相出力信号KE sin ωt・sin θ,KE sin ωt・cos θが出力される。なお、この場合、2次ステータ巻線5側から2相出力信号を得ているが、逆の構成としてロータ巻線側からロータトランスを介して2相出力を得るようにすることもできる。
【0010】次に、前記2相出力信号KE sin ωt・cos θ,KE sin ωt・sin θは、第1、第2乗算器10,11で各々個別に乗算処理され、各乗算器10,11からの乗算出力10a,11aが加算器12で加算される。この加算器12で加算された加算出力12aは、その最大値検出回路13にて検出されるように構成されており、この最大値検出回路13で検出された最大値13aは最大値レベル判定回路14にて判定され、その判定結果により前記最大値レベル判定回路14から故障信号15が出力されるように構成されている。
【0011】次に、動作について述べる。まず、前記2相出力信号KE sin ωt・cos θ,KEsin ωt・sin θを各々乗算器10,11で乗算し、その和を求めると、次式の通りとなる。
22 sin ωt・cos2θ+K22 sin2 ωt・sin2 θ=K22 sin2 ωt(cos2 θ+sin2 θ)=K22 sin2 ωt但し、K:巻線の変圧比E:入力電圧ω:2πf(fは励磁周波数)
t:時間θ:回転角さらに、前記和の最大値は、sin ωt=1の時で、その最大値はK22となる。この最大値K22は前述のように変圧比と入力電圧よりなるもので、回転角θに依存するものではない。従って、この最大値K22の変動を予め設定した設定値と比較することにより、1次側ロータトランス、1次側ロータコイル、2次側ステータコイルの故障(レアショート、絶縁不良等)を検出することができ、故障信号15を出力することができる。なお、故障検出は、回転検出器が非回転の停止している時でも故障検出が可能であり、かつ、この励磁信号E sin ωt の励磁周波数の周期(高速)で故障検出が可能である。
【0012】
【発明の効果】本発明による巻線型回転検出器の故障検出方法及び装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。すなわち、2相出力信号を各々乗算し、各乗算出力の最大値を用いて故障を検出しているため、従来のような巻線の断線検出のみではなく、巻線のレアショートの検出が可能であり、例えば、自動車、電車等の車輌用電動機の制御装置の速度及び位置精度を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による巻線型回転検出器の故障検出装置に用いる巻線型回転検出器を示す結線図である。
【図2】故障検出装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
5 巻線出力部
KE sin ωt・cos θ,KE sin ωt・sin θ 2相出力信号
10,11 第1、第2乗算器
10a,11a 乗算出力
12 加算器
12a 加算出力
13 最大値検出回路
13a 最大値
14 最大値レベル判定回路
15 故障信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】 2相の巻線出力部(5)から得られた2相出力信号(KE sin ωt・cos θ,KE sin ωt・sin θ)を各々乗算して各乗算出力(10a,11a)を得ると共に、前記各乗算出力(10a,11a)を加算して得た加算出力(12a)の最大値(13a)を検出し、前記最大値(13a)に基づいて故障信号(15)を出力することを特徴とする巻線型回転検出器の故障検出方法。
【請求項2】 2相の巻線出力部(5)から得られた2相出力信号(KE sin ωt・cos θ,KE sin ωt・sin θ)を各々乗算するための第1、第2乗算器(10,11)と、前記各乗算器(10,11)からの各乗算出力(10a,11a)を加算するための加算器(12)と、前記加算器(12)に接続され前記加算器(12)からの加算出力(12a)の最大値(13a)を検出するための最大値検出回路(13)と、前記最大値検出回路(13)に接続され前記最大値(13a)のレベル判定を行うための最大値レベル判定回路(14)とを備え、前記最大値レベル判定回路(14)から故障信号(15)を出力するように構成したことを特徴とする巻線型回転検出器の故障検出装置。

【図1】
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【図2】
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