説明

巻芯およびロール状物

【課題】 巻き取るシート部材の端部によりシート部材自身に凹凸が付くのを防止できる巻芯を提供することを目的とする。
【解決手段】 巻芯1において、シート状部材9を巻き取る表層部に、膜内に気体を閉じこめたセルからなる層を形成する。表層部は、円筒状の基部2の上に形成されている第1の層3と第2の層4で構成されている。第1の層3は、基部2の上にエアーキャップ(登録商標)を巻回・接着して形成される。つまり、プラスチックフィルムという膜内に気体を閉じこめたセルが、エアーキャップ(登録商標)のドーム7である。第2の層4は、第1の層3に例えば厚さ0.1mmの紙テープを巻回・接着して形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェブなどのシート状の部材を巻き取るための巻芯および巻芯にシート状の部材が巻き取られてなるロール状物に関し、特にリノリューム製床シートなどの厚手の床材を巻き取る巻芯およびロール状物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の巻芯は、スポンジなどの発泡体や密度の低い紙などの弾性変形や塑性変形を起こしやすい変形体を用いて、巻き始めの端部によってできる段差により、リノリューム製床シートなどの表面に段差の痕跡、つまり巻き始めの端部の段差が転写した凹みが発生することを防止している(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、発泡体や低密度の紙などの変形体は、弾性変形の割合が大きく、塑性変形を起こしにくいことから応力が生じるため、段差によってシート状部材に生じる凹凸を完全に消し去ることは難しい。そこで、従来から、断面くさび形の柔軟性シートをシート部材の端部にあてがってシート部材表面と巻芯表面との段差をなだらかに埋める方法も提案されている(特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】特開平11−263537号公報
【特許文献2】特開2004−217349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように従来の巻芯およびロール状物においては、巻芯表面に発泡体などを形成しているが、完全な塑性変形で所望の形になったときに反発力を生じないものではないため、完全に凹凸を消し去ることが難しく、一方、段差をなだらかに埋めるような断面くさび形の部債をあてがう場合には作業効率が落ちるという問題がある。
本発明は上記の問題点を解消するためになされたものであり、作業効率を低下させずに、発泡体などよりも段差による凹凸の発生を抑制できる巻芯を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の課題解決手段による巻芯は、シート状部材を巻き取る表層部に、膜内に気体を閉じこめた複数のセルからなる層が形成されているものである。
第2の課題解決手段による巻芯は、気体を閉じこめたセルからなる層が、2枚のフィルムを部分的に接着することにより空気室が設けられてなる緩衝材を巻き付けて形成されているものである。
第3の課題解決手段による巻芯は、セルからなる層に接着されて変形可能な層が表面に形成されているものである。
第4の課題解決手段によるロール状物は、第1から第4の課題解決手段のいずれかの巻芯に、シート状部材が巻き取られてなるものである。
【発明の効果】
【0007】
第1の課題解決手段の巻芯によれば、膜が変形することにより、膜内の気体からシート部材の端部およびシート部材の端部上に覆い被さる手前の部分、すなわちセルからなる層に接する部分に、気体を介して同じ圧力が加わるので、段差による凹凸を十分に抑制できるという効果がある。
第2の課題解決手段の巻芯によれば、2枚のフィルムを部分的に接着するという簡単な構成で空気室を設けられるので、段差による凹凸が付きにくい巻芯を安価に提供できるというという効果がある。
第3の課題解決手段の巻芯によれば、空気室が切断されることによる、空気室の粗な領域においてフィルム状部材が支えられないという不具合を緩和できるという効果がある。
第4の課題解決手段の巻芯によれば、膜が変形することにより、膜内の気体より、セルからなる層に接する部分に、気体を介して同じ圧力が加わるので、段差による凹凸のほとんどないシート部材を提供できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、この発明の第1実施形態による巻芯およびその製造方法について図1乃至図5を用いて説明する。
図1は第1実施形態による巻芯の一構成例を示す斜視図である。
図1に示す巻芯1は、円筒状の基部2と、基部の上に空気室を有する緩衝材が巻かれてなる第1の層3と、第1の層の上に複数枚の紙テープを螺旋状に巻回してなる表面層4とを備えて形成される。そして、これら第1の層3と第2の層4により表層部が構成されている。この表層部の上にリノリューム製床シートなどのシート部材が巻回される。巻芯1の一例として、長さが約2m、内径が約75mm、厚みが約10mmであるものが挙げられる。また、シート部材の例としては、厚さが1.8〜3mm、幅が1.8m〜2m、長さが5〜20mのものが挙げられる。
図2は、巻芯1を構成する円筒状の基部2の一構成例を示す斜視図である。
図2に示す円筒状の基部2は、紙テープを螺旋状に複数層巻回して形成されている。図2に示す構成以外に、円筒状の基部2は、例えば押し出し成形などの成形手法を用いてプラスチックなどを成形して形成することもできる。円筒状の基部2の一例として、長さが2m、内径が75mm、厚みが5mmの紙管を挙げることができる。
【0009】
図3には、円筒状の基部2に、エアーキャップ(商品、宇部興産株式会社製)5が巻き付けられた状態が示されている。エアーキャップ(登録商標(以下(R)と記載する)は、2枚のプラスチックシート、例えばポリエチレンフィルムやポリプロピレンフィルムを、空気の入った半球状のドーム7が形成されるように、部分的に張り合わせて形成されている。エアーキャップ(R)5を用いると、比較的安価に、プラスチックフィルムという膜で気体を閉じこめたセルを、第1の層3に設けることができる。エアーキャップ(R)5の一例としては、ドーム(気泡)高さが4mm、直径10mmのものが挙げられる。
図3に示されているように、エアーキャップ(R)5を帯状に切断して巻き付けていくと、帯状に切断した両端の継ぎ目6の部分で、エアーキャップ(R)5のドーム7も切断される。そのため、切断されたドームから気体が抜け、本来のシート状部材の凹凸解消という効果が低下してしまう。
そこで、この問題を解消するために、図1に示すように、膜内に気体を封じ込めたセルを含む第1の層3の上に、第2の層4が形成されている。図4は、図1のX−X線断面図である。紙テープ8を螺旋状に巻回して形成された円筒状の基部2の上に、エアーキャップ(R)5により第1の層3が形成されている。そして、第1の層3の外周に紙テープを螺旋状に巻き、エアーキャップ(R)5の各ドーム7aの上部に接着剤にて接着することによって第2の層4が形成される。
エアーキャップ(R)5のドーム7bは、エアーキャップ(R)5を帯状に加工する際に、端に位置したために切断されて内部の気体が抜けてしまった状態にある。しかし、ドーム7bの周囲にあるドーム7aが紙テープに接着されているため、ドーム7bの気体が抜けたことによるシート部材の落ち込みを防いでいる。
第2の層4を形成する紙テープの例としては、0.1mm〜0.3mmで幅が130mmのものが挙げられる。
なお、本実施形態の説明では、第2の層4に紙テープを用いる場合について説明したが、エラストマーやプラスチックを用いてもよく、所望の変形をする薄いシート状のものであればよい。
【0010】
図5は図1の巻芯にシート部材を巻き取った状態を示す断面図である。図5の断面図は、巻芯の中心軸に垂直な平面で切った状態を示している。巻芯1に、例えばリノリューム製床シートなどのシート部材9が巻き付けられたとき、シート部材9の端部9aがドーム7cの一部を押さえてドーム7cが変形する。あるいは、いずれかの複数のドーム7の間に、シート部材9の端部9aが入る場合には、その周辺のドーム7が第2の層4の変形に追随して変形し、ドーム7cの一部を押さえる場合に近い効果を発揮する。
ドーム7cの一部が押し下げられたときには、押し下げられなかった部分に気体が移動して気体の圧力が上昇する。そして、シート部材9の端部9a上に覆い被さる手前の部分9b、すなわち第1の層3(セルからなる層)に接する部分(9b)に、気体を介して同じ圧力が加わる。それにより、シート部材9には端部9aの近傍で圧力の差が生じにくくなり、段差による凹凸の解消の効果が向上することとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態による巻芯の構成を示す斜視図である。
【図2】図1に示す巻芯の円筒状の基部を示す斜視図である。
【図3】図2の円筒状の基部にエアーキャップ(R)を巻き付けた状態を示す斜視図である。
【図4】図1のX−X線断面図である。
【図5】図1の巻芯にシート部材を巻き付けた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0012】
1 巻芯、2 円筒状の基部、3 第1の層、4 第2の層、5 エアーキャップ(R)、7,7a,7b,7c ドーム、9 シート部材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状部材を巻き取る表層部に、膜内に気体を閉じこめた複数のセルからなる層が形成されていることを特徴とする巻芯。
【請求項2】
前記気体を閉じこめたセルからなる層が、2枚のフィルムを部分的に接着することにより空気室が設けられてなる緩衝材を巻き付けて形成されていることを特徴とする、請求項1記載の巻芯。
【請求項3】
前記セルからなる層に接着されて変形可能な層が表面に形成されていることを特徴とする、請求項1または請求項2記載の巻芯。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかの巻芯に、シート状部材が巻き取られてなるロール状物。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate