説明

巻芯保持装置

【課題】小型化の巻芯保持装置を提供する。更に、主軸の進退できるストロークの限界を
人手によらず調整できる巻芯保持装置を提供する。
【解決手段】巻芯保持装置1は、巻芯の軸方向に隔たる先端2及び基端3を有し巻芯に先
端2を着脱自在に接続できる主軸4と、主軸4を軸方向に進退させる進退手段5と、主軸
4に回転力を伝達する伝達手段6と、主軸4と進退手段5との間に介在し主軸4を進退手
段5に対して軸方向に変位させるストローク調整手段7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば巻取機で形成されるロール物の巻芯を着脱自在に保持する巻芯保持装
置に関する。
【背景技術】
【0002】
互いに対向する一対の主軸を備える巻取機は、一対の主軸を巻芯の両側の端部にそれぞ
れ接続し、一対の主軸と共に回転する巻芯でフィルム等を巻取ることにより、ロール物を
形成する。巻取機に巻軸を取付けるには、図5(a)に示すように、一対の主軸4の間に
巻芯Oを進入させ、一対の主軸4を互いに近づく方向へ前進させ、主軸4の先端2を巻芯
Oの端部に嵌入することにより行われる。主軸4の先端2にはエアチャック30が設けら
れている。エアチャック30は、主軸4の内部を通して圧搾空気が供給されたとき膨張し
、主軸4を巻芯Oに固定するものである。また、巻取機は、フィルム等が満巻に達したと
ころで、エアチャック30から圧搾空気を断ち、一対の主軸4を互いに離れる方向へ後退
させることにより、巻芯Oの端部から主軸4を離脱させる。
【0003】
以上に述べた主軸4の進退動作は、図6に示す従来例の巻芯保持装置101によって実
現される。巻取機は2基の巻芯保持装置101を対にして備えるが、その片方の巻芯保持
装置101が同図に表れている。巻芯保持装置101は、主軸4に縦列する送りねじ11
0を、主軸4の基端3に回転自在に取付け、送りねじ110に螺合したナット120に、
エアシリンダ18のピストンロッド19を連結している。エアシリンダ18は筐体80に
支持されている。主軸4は、筐体80に軸受された回転スリーブ9にスライドキー31を
介して係合し、回転スリーブ9に対して矢印Sで指した軸方向に滑動自在である。エアシ
リンダ18は主軸4を次のように進退させる。
【0004】
即ち、図6に表れたナット120が送りねじ110に対して図示の位置にある状態で、
2基の巻芯保持装置101が、それぞれのエアシリンダ18のピストンロッド19をその
ストロークの限界まで押出すと、一対の主軸4の間隔は、図5(a)に記した寸法S1の
広さになる。反対に、2基の巻芯保持装置101が、それぞれのエアシリンダ18のピス
トンロッド19をそのストロークの限界まで引戻すと、一対の主軸4の間隔は、図5(b
)に記した寸法S2まで狭くなる。
【0005】
寸法S2よりも全長の短い巻芯O’を巻取機に取付ける場合、図6に表れた送りねじ1
10を、その後端111へ向けてナット120が送られるよう回転させる。そして、2基
の巻芯保持装置101が、それぞれのエアシリンダ18のピストンロッド19を引戻すと
、ナット120が上記のように変位した分、一対の主軸4の間隔が寸法S2よりも狭くな
るので、主軸4の先端2を巻芯O’の端部に嵌入することができる。
【特許文献1】特開2000−053283号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来例の巻芯保持装置101は、送りねじ110を主軸4の基端3に位置決めしている
。これは、送りねじ110を回転させたときに主軸4に対して送りねじ110が偏心する
のを抑え、エアシリンダ18のピストンロッド19の出力が主軸4に真っ直ぐ伝わるよう
にするためである。しかしながら、主軸4に送りねじ110が縦列する構造であるので、
巻芯保持装置101の形状が軸方向に長大になることは避けられない。
【0007】
上記の問題は、ナット120の移動できる範囲(調整代)を広げようとして送りねじ1
10の全長を長くする程著しくなる。また、送りねじ110を回転させる作業は人手に依
存しており、この作業を担うオペレータは、巻取機の動作に細心の注意を払いながら巻取
機に接近しなければならない。
【0008】
本発明の目的は、巻芯保持装置の小型化を実現し、更に主軸の進退できるストロークの
限界を人手によらず調整できる巻芯保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る巻芯保持装置は、巻芯の軸方向に隔たる先端及び基端を有し前記巻芯に前
記先端を着脱自在に接続する主軸と、前記主軸を軸方向に進退させる進退手段と、前記主
軸に回転力を伝達する伝達手段と、前記主軸と前記進退手段との間に介在し前記主軸を前
記進退手段に対して軸方向に変位させるストローク調整手段とを備えるものであって、前
記ストローク調整手段が、前記主軸に並列したスライドレールでスライダを案内し、前記
主軸に並列し前記進退手段によって軸方向に進退される送りねじにナットを螺合し、前記
主軸の基端を回転自在に接続された継手部材、及び前記ナットを、前記スライダに連結し
、前記送りねじの回転に従わせて前記ナットを軸方向に送ることにより、前記スライダ及
び前記継手部材と共に、前記主軸を変位させることを特徴とする。
【0010】
更に、前記スライドレールは、前記スライダを軸方向に滑動自在に係合する軌条を有す
る。更に、本発明に係る巻芯保持装置は、前記送りねじを回転させる駆動源を備えること
を特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る巻芯保持装置によれば、進退手段が送りねじを軸方向に進退させることに
より、送りねじに螺合したナット、及びスライドレールで案内されるスライダと共に、主
軸を進退させることができる。また、主軸の基端を接続された継手部材とナットとはスラ
イダに連結しているので、進退手段が送りねじを軸方向に進退させる過程で、スライドレ
ールは、主軸とナットとが軸方向に対して振れるのを抑止することができる。
【0012】
特に、スライドレールの軌条にスライダを係合させている場合、進退手段が送りねじを
進退させる方向が主軸に対して僅かに傾く等の狂いに起因して、スライダがスライドレー
ルを中心に捻られるようなモーメントが発生しても、スライダがスライドレールの周りを
回転するのを規制できる。これにより、主軸とナットとの振れを抑止する効果を顕著に達
成することができる。
【0013】
更に、本発明に係る巻芯保持装置によれば、主軸、送りネジ、及びスライドレールが相
互に並列する構造であるため、軸方向の寸法を長くする必要がなく、当該巻芯保持装置の
小型化、及び送りねじの全長を長く設定するのに有利である。
【0014】
更に、本発明に係る巻芯保持装置によれば、送りねじを駆動源で回転させることができ
るので、送りねじを回転させる雑作と、そのための人員を省くことができる。また、駆動
源の起動、停止、及び反転の切換えを遠隔操作で行えるようにすれば、オペレータが巻取
機に接近する雑作を省くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
既述の要素には以下でも同じ呼称又は符号を用いるものとし、その説明又は図示は省略
する。図1,2に示すように、巻芯保持装置1は、巻芯Oの軸方向に隔たる先端2及び基
端3を有し巻芯Oの端部に先端2を着脱自在に接続できる主軸4と、主軸4を軸方向に進
退させる進退手段5と、主軸4に回転力を伝達する伝達手段6と、主軸4と進退手段5と
の間に介在し主軸4を進退手段5に対して軸方向に変位させるストローク調整手段7とを
備える。
【0016】
主軸4は、筐体8に軸受された回転スリーブ9にスライドキーを介して係合し、回転ス
リーブ9に対して軸方向に滑動自在である。回転スリーブ9には、その周面から突出する
スプロケット10が設けられている。伝達手段6は、スプロケット10に巻掛したチェー
ンを介してモータ等の回転力を回転スリーブ9及び主軸4に伝達するものである。或いは
、回転スリーブ9の周面にギアを形成し、このギアにモータ等で回転するピニオンを噛合
わせても良い。
【0017】
ストローク調整手段7は、軸方向に延びる送りねじ11と、送りねじ11に螺合したナ
ット12と、主軸4に並列したスライドレール13と、スライドレール13に案内される
スライダ14と、主軸4の基端3を回転自在に接続された継手部材15と、ナット12、
スライダ14、及び継手部材15を連結する連結部材16とを備える。スライドレール1
3は、スライダ14を軸方向に滑動自在に係合する軌条17を有する。軌条17は、スラ
イダ14がスライドレール13を中心に回転するのを規制するが、このような作用は、軌
条17の断面の形状を多角形とし、又は互いに平行な2本のスライドレール13でスライ
ダ14を案内することによっても達成できる。
【0018】
進退手段5は、エアシリンダ18のピストンロッド19に、ガイドスリーブ20に挿入
された継手部材21を取付けたものである。エアシリンダ18、及びガイドスリーブ20
は、それぞれ筐体8に支持されている。継手部材21は、図3に示すように、ガイドスリ
ーブ20で軸方向に案内されるインナスライダ14に、送りねじ11の軸方向の荷重を受
止めるベアリング22を内装し、送りねじ11の一端をベアリング22で軸受したもので
ある。ストローク調整手段7の継手部材15は、図2,4に示すように、連結部材16の
下端に、水平方向に延びるピン23を中心に回動自在に取付けられたケーシング24に、
主軸4の軸方向の荷重を受止めるベアリング25を内装し、主軸4の基端3をベアリング
25で軸受したものである。
【0019】
図1の符号26,27は、ナット12が送りねじ11に沿って変位できる範囲を規定す
るストッパを指している。符号28は、ナット12を送りねじ11の適所に位置決めでき
るクランプを指している。また、送りねじ11の他端に手回し用のノブ29を設け、ノブ
29をオペレータが握る等して送りねじ11を回転させても良い。
【0020】
以上に述べた巻芯保持装置1によれば、主軸4の先端2を巻芯Oの端部に嵌入し、又は
主軸4の先端2を巻芯Oから離脱させる工程で、進退手段5は、エアシリンダ18のピス
トンロッド19の動作に従わせて送りねじ11を軸方向に進退させる。これにより、主軸
4はナット12及びスライダ14と共に進退する。また、ナット12と継手部材15とは
スライダ14に連結部材16を介して連結しているので、上記のように送りねじ11が進
退する過程で、スライドレール13は、主軸4とナット12とが軸方向に対して振れるの
を抑止することができる。
【0021】
しかも、スライドレール13の軌条17にスライダ14が係合しているので、進退手段
5が送りねじ11を進退させる方向が主軸4に対して僅かに傾く等の狂いに起因して、ス
ライダ14がスライドレール13を中心に捻られるようなモーメントが発生しても、スラ
イダ14がスライドレール13の周りを回転するのを規制することができる。これにより
、主軸4とナット12とが軸方向に対して振れるのを効果的に抑止することができる。
【0022】
更に、主軸4、送りネジ、及びスライドレール13が相互に並列しているので、当該巻
芯保持装置1の小型化、及び送りねじ11の全長を長く設定するのに有利である。更に、
図1に示したノブ29に代わるギアに、モータ等の駆動源Mの出力軸に取付けたピニオン
を噛合わせても良い。この場合、送りねじ11を駆動源Mで回転させられるので、ナット
12を変位させるのに送りねじ11をオペレータが手動で回転させる雑作を省くことがで
きる。また、駆動源Mの起動、停止、及び反転の切換えを遠隔操作で行えるようにすれば
、オペレータが巻取機に接近しなくて済むという利点を得ることができる。
【0023】
尚、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正
、又は変形を加えた態様で実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明に係る巻芯保持装置は、巻芯を巻取機に着脱自在に取付ける用途に限らず、無人
搬送車両又はスタッカークレーン等のあらゆる搬送装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る巻芯保持装置の要部を破断した側面図。
【図2】図1のX−X線断面図。
【図3】本発明の実施形態に係る巻芯保持装置に適用した継手部材の一例を示す断面図。
【図4】本発明の実施形態に係る巻芯保持装置に適用した継手部材の他例を示す断面図。
【図5】(a)は従来例の巻芯保持装置が巻芯を保持する動作を示す側面図、(b)はその動作の他例を示す側面図。
【図6】従来例の巻芯保持装置の要部を破断した側面図。
【符号の説明】
【0026】
1:巻芯保持装置
2:先端
3:基端
4:主軸
5:進退手段
6:伝達手段
7:ストローク調整手段
11:送りねじ
12:ナット
13:スライドレール
14:スライダ
15:継手部材
17:軌条
M:駆動源
O:巻芯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻芯の軸方向に隔たる先端及び基端を有し前記巻芯に前記先端を着脱自在に接続する主
軸と、前記主軸を軸方向に進退させる進退手段と、前記主軸に回転力を伝達する伝達手段
と、前記主軸と前記進退手段との間に介在し前記主軸を前記進退手段に対して軸方向に変
位させるストローク調整手段とを備える巻芯保持装置であって、
前記ストローク調整手段が、前記主軸に並列したスライドレールでスライダを案内し、
前記主軸に並列し前記進退手段によって軸方向に進退される送りねじにナットを螺合し、
前記主軸の基端を回転自在に接続された継手部材、及び前記ナットを、前記スライダに連
結し、前記送りねじの回転に従わせて前記ナットを軸方向に送ることにより、前記スライ
ダ及び前記継手部材と共に、前記主軸を変位させることを特徴とする巻芯保持装置。
【請求項2】
前記スライドレールは、前記スライダを軸方向に滑動自在に係合する軌条を有すること
を特徴とする請求項1に記載の巻芯保持装置。
【請求項3】
前記送りねじを回転させる駆動源を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の巻
芯保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−220969(P2009−220969A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−68639(P2008−68639)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000232807)日本輸送機株式会社 (320)
【Fターム(参考)】