説明

布団

【課題】体の所望の部分のみの温度を調整することができ、快適な睡眠環境を提供することができる布団を提供すること。
【解決手段】袋状に形成された布団本体と、この布団本体の内部に設けられた複数の中袋12,13とを備え、前記複数の中袋12,13の少なくとも一つに、前記中袋12,13の内部に空気を入れるための送風口20が形成されていることを特徴とする。これにより、布団全体のある部分のみの温度を調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内部に空気を入れるようになっている空気式の布団に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、羽毛布団より軽く、かつ断熱性に優れ、しかも収容及び搬送を容易にすることができる布団として空気式布団が提案されている(特許文献1参照)。このような空気式布団の内部に、温風又は涼風を送ることにより、室内の温度よりも布団を暖かくしたり、冷たくしたりすることができる。例えば、夏場には布団内部に涼風を送り、冬場には温風を送るなど布団内部の温度を調整することができる。
【特許文献1】特開2005−192977号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような空気式布団では、体全体を暖かくしたり冷やしたりすることはできるものの、足、腰、肩など体の所望の部分のみを暖かくしたりなどすることはできないという問題がある。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、体の所望の部分のみの温度を調整することができ、快適な睡眠環境を提供することができる布団を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明に係る布団は、袋状に形成された布団本体と、この布団本体の内部に設けられた複数の中袋とを備え、前記複数の中袋の少なくとも一つに、前記中袋の内部に空気を入れるための送風口が形成されていることを特徴とする。
【0006】
この発明に係る布団においては、中袋の内部に送風口から涼風又は温風を送り込む。このとき、中袋は複数設けられていることから、布団全体のうち、涼風又は温風を送り込まれた中袋に相当する部分のみの温度が変化する。
以上より、布団全体のある部分のみの温度を調整することができる。
【0007】
また、本発明に係る布団は、前記送風口が、前記布団本体に形成された開閉部から出し入れ可能に構成されていることを特徴とする。
【0008】
この発明に係る布団においては、開閉部を介して送風口が出し入れされる。
以上より、中袋に空気を容易に送り込むことができるだけでなく、空気を入れた後に、送風口を収用することができる。
【0009】
また、本発明に係る布団は、前記中袋が二つ設けられており、これら二つの中袋が、前記布団本体の長さ方向の両端部に配されていることを特徴とする。
【0010】
この発明に係る布団においては、二つの中袋が、布団本体の長さ方向の両端部に配されていることから、使用者の足元や、腰、肩などの所望の部分のみに空気を確実に送り込むことができる。
【0011】
また、本発明に係る布団は、前記二つの中袋のうち、一方の中袋の前記長さ方向の寸法が、前記布団本体の長さ寸法の2/3に設定され、他方の中袋の前記長さ方向の寸法が、前記布団本体の長さ寸法の1/3に設定されていることを特徴とする。
【0012】
この発明に係る布団においては、使用者の足元や腰、肩などの所望の部分のみに空気を確実に送り込むことができる。
【0013】
また、本発明に係る布団は、前記複数の中袋のそれぞれの内部に、中綿が設けられていることを特徴とする。
【0014】
この発明に係る布団においては、複数の中袋のそれぞれの内部に、中綿が設けられていることから、より快適な睡眠環境を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明の布団によれば、布団全体のある部分のみの温度を調整することができることから、体の所望の部分のみを容易に暖めたり冷やしたりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(実施形態1)
以下、本発明の第1の実施形態における布団について、図面を参照して説明する。
図1は、この発明の実施形態を示す斜視図である。
図1において、符号1は布団を示すものである。
【0017】
布団1は、平面視して長方形状の布団本体2を備えている。
布団本体2は、袋状に形成されている。すなわち、布団本体2は、図2及び図3に示すように、長方形状の表側地3及び裏側地4を備えており、これら表側地3と裏側地4とが、植毛テープ7を介して連結されている。
【0018】
表側地3は、使用状態において、上側(使用者側)に配されるものであり、植毛加工生地からなっている。
裏側地4は、使用状態において、下側(床面側)に配されるものであり、内部に綿部8が設けられている。そして、裏側地4には、綿部8がズレないように、キルティング加工が施されている。裏側地4のうちの上側の生地には、織密度の粗い、通気性の高い生地が使用されており、下側の生地には、サテン地が使用されている。また、綿部8には、薄いウール綿が使用されている。
【0019】
また、植毛テープ7は、布団本体2の側面部を形成するものであり、テープの表面に植毛加工が施されて形成されたものである。植毛テープ7と、表側地3及び裏側地4とは、ヘムテープ9によってヘム加工されて止着されている。
【0020】
さらに、本発明に係る布団1においては、布団本体2の内部に、第1の中袋(一方の中袋)12と第2の中袋(他方の中袋)13とが設けられている。
第1の中袋12及び第2の中袋13は、図4に示すように、略長方形状に形成されている。そして、第1の中袋12と第2の中袋13とは、連結部17とを介して連結されている。なお、第1の中袋12及び第2の中袋13は、その内部が互いに連通しておらず、独立の中袋として形成、連結されている。
【0021】
第1の中袋12と第2の中袋13とが連結された状態の全体の長さ寸法L3は、図1に示す布団本体2の長さ方向Lの全長L´(長さ寸法)と等しくなっている。
また、第1の中袋12のうち、布団本体2の長さ方向Lに向けられる長さ寸法L1は、全体の寸法L3の2/3の長さに設定されている。一方、第2の中袋13のうち、布団本体2の長さ方向Lに向けられる長さ寸法L2は、全体の寸法L3の1/3の長さに設定されている。
すなわち、第1の中袋12は、布団本体2の内部に配されて、布団本体2の長さ方向の2/3を占め、第2の中袋13は、布団本体2の長さ方向の1/3を占めるようになっている。
【0022】
また、第1及び第2の中袋12,13の長さ方向Lの両端に配されて互いに対向する一辺部には、それぞれ送風口20が設けられている。これら送風口20を介して、不図示の送風機から排出された空気が第1及び第2の中袋12,13のそれぞれの内部に送られるようになっている。
さらに、第1及び第2の中袋12,13は、送風口20から所定の量だけ空気を送り込んでも、それら送り込まれた空気が第1及び第2の中袋12,13の外方に漏れることなく、第1及び第2の中袋12,13内に均一に広げられるようになっている。そして、所定の量を超えるとそれら空気が外方に排出されるようになっている。言い換えると、第1及び第2の中袋12,13は、送風口20から所定の量だけ空気を送り込むと、内部が所定の圧力に達するまでは、圧力が増大していき、所定の圧力になると、空気を外方に排出することにより、その所定の圧力を保持するようになっている。すなわち、第1及び第2の中袋12,13の生地は、所定量の空気又は所定の圧力を保持することができる通気度に設定されている。例えば、第1及び第2の中袋12,13の生地は、綿サテンからなっており、生地の通気度は、空気の排出量が3〜5立方cm/平方cm Secに設定される。
送風口20の先端部には、帯状の面ファスナ21が設けられている。面ファスナ21は、送風口20の外周にわたって巻回させることにより、送風口20からの空気の流通を規制するようになっている。また、第1及び第2の中袋12,13の上側の面には、メッシュ状の滑り止め部材25が設けられている。これら滑り止め部材25によって、第1及び第2の中袋12,13の布団本体2内における位置ズレが防止されるようになっている。
【0023】
さらに、第1及び第2の中袋12,13には、メッシュ状の中綿16(図2及び図3に示す)が設けられている。そして、第1及び第2の中袋12,13には、中綿16がズレないように、和とじ部26が設けられている。
なお、符号22は、紐を示すものであり、これら紐22は、布団本体2の四隅に設けられたループ部に結ばれることにより、第1及び第2の中袋12,13の布団本体2内における位置ズレを防止するようになっている。
【0024】
さらに、中綿16は、図5に示すように、ポリエステル素材で厚さ20mmのハニカムネットからなっている。そして、中綿16の網目内の所定の位置に、支持部材24が規則的に設けられている。支持部材24は、600g/mで3cm×3cmのサイズのポリエステル硬綿をネットに入れて、ホットメルトで止められて形成されている。
【0025】
また、図1に示すように、布団本体2の長さ方向Lの両端辺には、開閉部29が設けられている。すなわち、植毛テープ7が布団本体2の周方向に二つに分けられており、これら植毛テープ7の長さ方向の両端には、それら互いの両端同士を連結する連結布31が設けられている。
連結布31には、図6に示すように、切り込み30が形成されており、この切り込み30は、スライドファスナ32によって、開閉可能に構成されている。そして、スライドファスナ32を開くと、切り込み30を介して、送風口20を布団本体2の外部に出すことができるようになっている。一方、切り込み口30を介して布団本体2の内部に送風口20を押し込み、スライドファスナ32を閉じると、送風口20が布団本体2の内部に収容されるようになっている。
【0026】
次に、本実施形態における布団1の使用方法について説明する。
ここでは、例えば、足元のみを暖める場合について説明する。
なお、送風口20は、いずれも布団本体2内に収用されているものとする。
まず、第2の中袋13の側のスライドファスナ32を開けて、送風口20を外部に引っ張り出す。そして、送風口20を介して、不図示の送風機から第2の中袋13の内部に温風を送り込む。このとき第2の中袋13の生地は、上記所定の通気度に設定されているため、空気を送り込んで直ちにその空気が外方に漏れることはなく、第2の中袋13内を広がっていく。そして、第2の中袋13内を均一に広がって、所定量の空気又は所定の圧力に達すると、その空気が外方に排出される。第2の中袋13内に所定量の温風を送り込んだ後、送風口20から送風機を外し、送風口20の外周に面ファスナ21を巻回して、送風口20の口を閉める。これにより、送風口20の空気の流通が規制され、第2の中袋13の内部に温風を留めておくことができる。
【0027】
それから、口が閉じられたままの送風口20を切り込み30を介して布団本体2の内部に押し込み、スライドファスナ32を閉じる。
この状態では、布団本体2の長さ方向Lの端部から1/3の長さの分だけ暖められた状態になっている。
そこで、第2の中袋13の側を使用者の足元に配し、第1の中袋12の側を使用者の頭側に配する。
これにより、睡眠時に使用者の足元のみが暖められる。
【0028】
一方、足元のみ冷やしたい場合には、第2の中袋13のみに、上記と同様にして涼風を送り込めばよい。
また、足元や腰を暖めたり又は冷やしたりしたい場合には、第1の中袋12のみに、温風又は涼風を送り込み、第1の中袋12の側を使用者の足元に配する。
さらに、腰や肩を暖めたり又は冷やしたりしたい場合には、第1の中袋12のみに、温風又は涼風を送り込み、第1の中袋12の側を使用者の頭側に配する。
【0029】
以上より、本実施形態における布団1によれば、布団1全体の所定の部分のみの温度を調整することができ、そのため、体の所望の部分のみを容易に暖めたり冷やしたりすることができる。
また、第1及び第2の中袋12,13が、布団本体2の長さ方向Lの2/3及び1/3の長さに設定されていることから、足元のみ又は足元や腰などの温度を容易に調整することができる。
【0030】
また、中綿16が設けられていることから、より快適な睡眠環境を使用者に提供することができる。さらに、第1及び第2の中袋12,13に中綿16が設けられていることから、それら第1及び第2の中袋12,13がつぶされることなく、常に所定の高さ寸法を保持することができ、内部に空間を確保することができる。そのため、第1及び第2の中袋12,13が高さ方向にくっつくことを防止することができ、内部に空気を容易に送り込むことができる。
また、中綿16がハニカムメッシュから形成されていることから、網目を通して、空気を奥まで容易に送りこむことができる。したがって、使用者が使用中であっても、中袋12,13の手前側(送風口20側)から奥側にわたって空気を確実に送り込むことができ、布団本体2の全面にわたって中袋12,13内の温度を均一に保持することができる。
【0031】
また、第1及び第2の中袋12,13の生地が、所定の通気度に設定されているため、第1及び第2の中袋12,13内に空気を均一に送り込むことができ、布団本体2の全面にわたって中袋12,13内の温度を均一に保持することができる。
さらに、開閉部29が設けられていることから、送風口20を布団本体2の内部に収用することができ、第1及び第2の中袋12,13の内部に送り込まれた空気の漏れを防止することができ、デザイン性を損なうこともない。
【0032】
(実施形態2)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図7は、本発明の第2の実施形態を示したものである。
図7において、図1から図6に記載の構成要素と同一部分については同一符号を付し、その説明を省略する。
この実施形態と上記第1の実施形態とは基本的構成は同一であり、ここでは異なる点について説明する。
【0033】
本実施形態においては、第1、第2及び第3の中袋34,35,36の三つの中袋を備えている。これら第1、第2及び第3の中袋34,35,36は、布団本体2の長さ方向Lに均等間隔に並べて配されている。それぞれの送風口20は、布団本体2の短手方向の一辺部から出し入れされるようになっている。
【0034】
このような構成のもと、第1、第2及び第3の中袋34,35,36に空気を送り込むことにより、体の所定の部位のみの温度を確実に調整することができる。例えば、肩のみの温度を調整する場合には、第1又は第3の中袋34,36に空気を送り込み、送り込んだ側を使用者の頭側に配すればよい。また、腰のみであれば、第2の中袋35に空気を送り込めばよい。さらに、足と肩との温度を調整する場合には、第1及び第3の中袋34,36に空気を送り込めばよい。
【0035】
なお、本実施形態においては、第1、第2及び第3の中袋34,35,36を布団本体2の長さ方向Lに均等間隔に並べて配するとしたが、これに限ることはなく、それら間隔は適宜変更可能である。例えば、第1及び第3の中袋34,36をそれぞれ布団本体2の長さ寸法の1/4に設定し、第2の中袋35を布団本体2の長さ寸法の1/2に設定してもよい。これにより、足元や肩のみの温度を確実に調整することができる。
【0036】
また、上記第1又は第2の実施形態においては、中袋を二つ又は三つ設けるとしたが、これに限ることはなく、それら中袋の設置数は適宜変更可能である。
また、中袋の並びを長さ方向Lとしたが、これに限ることはなく、短手方向に並べて配置してもよい。これにより、使用者の左右方向のいずれか一方のみの温度を調整することができる。
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る布団の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1のB−B線矢視断面図である。
【図3】図1のA−A線矢視断面図である。
【図4】本発明における中袋を示す平面図である。
【図5】本発明における中綿を示す平面図である。
【図6】図1の開閉部を拡大して示す説明図である。
【図7】本発明に係る布団の第2の実施形態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0038】
1 布団
2 布団本体
12 第1の中袋(一方の中袋)
13 第2の中袋(他方の中袋)
16 中綿
20 送風口
29 開閉部
34 第1の中袋
35 第2の中袋
36 第3の中袋
L 長さ方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状に形成された布団本体と、
この布団本体の内部に設けられた複数の中袋とを備え、
前記複数の中袋の少なくとも一つに、
前記中袋の内部に空気を入れるための送風口が形成されていることを特徴とする布団。
【請求項2】
前記送風口が、
前記布団本体に形成された開閉部から出し入れ可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の布団。
【請求項3】
前記中袋が二つ設けられており、
これら二つの中袋が、前記布団本体の長さ方向の両端部に配されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の布団。
【請求項4】
前記二つの中袋のうち、一方の中袋の前記長さ方向の寸法が、前記布団本体の長さ寸法の2/3に設定され、
他方の中袋の前記長さ方向の寸法が、前記布団本体の長さ寸法の1/3に設定されていることを特徴とする請求項3に記載の布団。
【請求項5】
前記複数の中袋のそれぞれの内部に、中綿が設けられていることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の布団。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−267915(P2007−267915A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−96588(P2006−96588)
【出願日】平成18年3月31日(2006.3.31)
【出願人】(000141299)株式会社丸八真綿 (10)
【Fターム(参考)】