説明

布物の自動展開投入装置

【課題】大きさや種類の異なる布物の混在に1台で対応でき、設備費が安くつき、能率も高い布物の自動展開投入装置を提供する。
【解決手段】不定形な方形状布物のワークを山積みにしたワーク堆積物から1枚ずつワークを取り上げるハンドを有しており、ワーク堆積物から1枚のワークを取り上げる取上げ機構と、ワークの両端を保持する二つの保持装置を有しており、取り上げられたワークの両端を保持して、ワークのコーナー部を撮像可能に吊下げる吊下げ機構と、ワークの端辺を把持するハンドを有しており、ワークを把持して次工程装置の投入部に移動させて、固有の方形状に広げる展開機構と、吊下げ機構で両端を支持されたワークのコーナー部を撮像するカメラと、その撮像画像からコーナー部の3次元位置を演算し、展開機構のハンドの移動経路を演算して教示する演算部を備えた展開動作制御部を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不定形な方形状布物の自動展開投入装置に関する。さらに詳しくは、不定形な方形状布物のワークを山積みにしたワーク堆積物から1枚ずつワークを取り上げて、固有の方形状に広げるよう展開し次工程装置に投入する自動展開投入装置に関する。
【0002】
本発明が対象とする布物の代表例は、タオル類であるが、これに限らず、不定形な性状を有し、方形の形状をもつ布物であれば、本発明の対象となる。
また、本発明はタオルのうち、フェイスタオルとバスタオルのように同じ方形の布物でありながら大きさが異なるものの扱いを主な対象としている。とりわけ、洗濯工場で洗い乾燥したタオルを折畳み機できちんと折り畳むために、山積みになった洗濯後のタオルの山から1枚づつタオルを取り出して、固有の方形状に広げて折畳み機(本明細書にいう次工程装置の一つ)に投入する自動展開投入装置に関する。
【背景技術】
【0003】
従来のタオルの自動展開投入装置として、特許文献1記載のものがある。
この自動展開投入装置は、吊上げ装置と、角端出し装置と、角端取り装置と、横引き装置と、2位置保持装置と、縁出しコンベアと、ローラと、載せ掛け装置と、吊下げ装置とを基本構成としている。
吊上げ装置は、丸めた状態の矩形布片の任意の箇所を保持して該布片を所定高さまで吊上げるためのものである。角端出し装置は、吊上げ装置で吊上げた布片の任意の箇所を保持して該布片を例えば台板上で水平方向に引き摺り、該布片の終端部である布片角端を現出させるためのものである。
角端取り装置は、角端出し装置により例えば台板上に現出させた布片角端付近を保持し且つ該布片角端付近を保持して布片を垂れ下げ状態で支持するものである。横引き装置は、角端取り装置で垂れ下げ支持している布片を水平方向に横たわらせるためのものである。
2位置保持装置は、横引き装置で横たわらせた状態の布片の角端付近とそこから適宜距離だけ離間する箇所の2位置を同高さで保持するものである。縁出しコンベアは、2位置保持装置で保持した布片を載せて布片長辺側の一方の側縁を現出させるためのものである。
ローラは、縁出しコンベアの終端側にあって該縁出しコンベアの走行方向に向けて設置している。載せ掛け装置は、縁出しコンベア上に現出させた布片長辺部における間隔をもった2位置を保持する各チャックを有し且つ該布片をローラ上を引き摺りながら該ローラ上に載せ掛けするものである。
吊下げ装置は、ローラ上に載せ掛けた布片の一方の短辺側端縁の各端部寄り2箇所を保持する各チャックを有し且つ該各チャックで布片短辺側端縁を保持して該布片を展開状態で吊下げるものである。
【0004】
上記従来技術によれば、上記各個別装置により、丸めた状態の矩形布片を吊上げ装置で吊上げる初期工程から、吊下げ装置で矩形布片を展開状態で吊下げる最終工程までの全工程を自動で行うことができる。
しかしながら、上記従来技術は、全てメカニカルな要素で構成されているため、専用化した設計とならざるを得ない。したがって、バスタオルとフェイスタオルの混在に対応することができない。
混在に対処するため、バスタオル用とフェイスタオル用と分ける工程を入れ、それぞれ専用の装置を備えることは可能であるが、それでは設備費が高くなるし、仕分け工程が入る結果、能率も低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−113300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑み、大きさや種類の異なる布物の混在に1台で対応でき、設備費が安くつき、能率も高い布物の自動展開投入装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の布物の自動展開投入装置は、不定形な方形状布物のワークを山積みにしたワーク堆積物から1枚ずつワークを取り上げて、固有の方形状に広げるよう展開し次工程装置に投入する自動展開投入装置であって、ワークを取り上げるハンドを有しており、ワーク堆積物から1枚のワークを取り上げる取上げ機構と、ワークの両端を保持する二つの保持装置を有しており、取り上げられたワークの両端を把持して、ワークのコーナー部を撮像可能に吊下げる吊下げ機構と、ワークの端辺を把持するハンドを有しており、該ワークを把持して次工程装置の投入部に移動させて、固有の方形状に広げる展開機構と、前記吊下げ機構で両端を支持されたワークのコーナー部を撮像するカメラと、その撮像画像からコーナー部の3次元位置を演算し、前記展開機構のハンドの移動経路を演算して教示する演算部を備えた展開動作制御部を備えたことを特徴とする。
第2発明の布物の自動展開投入装置は、第1発明において、ワーク堆積物を撮像するカメラと、その撮像画像からワーク堆積物の頂点の3次元位置を演算し前記取上げ機構のハンドの移動経路を演算して教示する演算部を備えた取上げ動作制御部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
第1発明によれば、取上げ機構によりワークの堆積物から1枚のワークを取り上げ、ついで、吊下げ機構で吊下げられたワークのコーナー位置も画像を基に展開動作制御部で演算するので、長さや形の違うワークが混在していても必ず展開機構のハンドで把持することができる。このように、ワークの混在に拘らず、確実にワークを取り上げ、平たく展開して次工程に投入することができる。
第2発明によれば、ワーク堆積物の頂点位置は画像を基に取上げ動作制御部により演算するので、異種のワークが混在していてもワーク堆積物の形や大きさが変動しても必ず取上げ機構のハンドで1枚のワークを取り上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係る自動展開投入装置Aの全体説明図である。
【図2】第1実施形態における自動展開投入装置Aの斜視図である。
【図3】同自動展開投入装置におけるワークピックアップの説明図である。
【図4】同自動展開投入装置におけるワーク保持動作の説明図である。
【図5】同自動展開投入装置におけるワーク引き上げ動作の説明図である。
【図6】同自動展開投入装置におけるワーク計測動作の説明図である。
【図7】同自動展開投入装置におけるワーク把持動作の説明図である。
【図8】同自動展開投入装置におけるワーク展開動作の説明図である。
【図9】同自動展開投入装置におけるワークたぐり動作の説明図である。
【図10】同自動展開投入装置におけるワークたぐり動作の説明図である。
【図11】本発明の第2実施形態に係る自動展開投入装置Bの斜視図である。
【図12】同実施形態の自動展開投入装置Bにおけるワーク分離動作の説明図である。
【図13】同実施形態の自動展開投入装置におけるワークピックアップ動作の説明図である。
【図14】同実施形態の自動展開投入装置におけるワーク受け渡し動作の説明図である。
【図15】同実施形態の自動展開投入装置におけるワーク引き上げ動作前の説明図である。
【図16】同実施形態の自動展開投入装置におけるワーク引き上げ動作の説明図である。
【図17】同実施形態の自動展開投入装置におけるワーク端撮像時の説明図である。
【図18】同実施形態の自動展開投入装置におけるワーク把持動作の説明図である。
【図19】同実施形態の自動展開投入装置におけるワークたぐり動作の説明図である。
【図20】同実施形態の自動展開投入装置におけるワーク展開動作の説明図である。
【図21】ワーク角部提示装置の改良の説明図である。
【図22】ワーク角部提示装置の改良の説明図である。
【図23】ワーク角部提示装置およびたぐり補正装置の改良説明図である。
【図24】たぐり補正装置の改良説明図である。
【図25】たぐり補正装置の改良説明図である。
【図26】たぐり補正装置の改良説明図である。
【図27】たぐり補正装置の改良説明図である。
【図28】たぐり補正装置の改良説明図である。
【図29】たぐり補正装置の改良説明図である。
【図30】把持装置の改良の説明図である。
【図31】把持装置の改良の説明図である。
【図32】把持装置の改良の説明図である。
【図33】把持装置の改良の説明図である。
【図34】把持装置の改良の説明図である。
【図35】把持装置の改良の説明図である。
【図36】本発明の第3実施形態に係る自動展開投入装置の斜視図である。
【図37】同実施形態の自動展開投入装置における取上げ機構の説明図である。
【図38】同実施形態の自動展開投入装置における取上げ機構の説明図である。
【図39】同実施形態の自動展開投入装置における取上げ機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
不定形な方形状布物であるタオル等のワークの自動展開では、(1)ワーク分離、(2)ワーク端出し、(3)ワークコーナー出し、(4)ワークの辺出し、(5)短辺出し、(6)展開、といった基本的な流れが必要である。
【0011】
本発明においてメカニカルな構成要件は、取上げ機構、吊下げ機構および展開機構の三つであるが、これらは以下のように構成することができる。
イ)取上げ機構
ワークを1枚づつ取り上げる機構なので、種々の形状のワークを確実に把持する機能と自由度とを有するハンドと、ワークを搬送できる動きが可能なアームやスライダを有するロボットが好ましい。そのような機能と搬送自由度を有する機構と制御手段の組合せである限り、構造的には制約がなく、次のいずれのタイプのロボットでも採用可能である。また、1台のロボットでなく、2台のロボットを用い、ワークの取込みと、その中からのピックアップとに分担させてもよい。
1)直角座標形(伸縮−伸縮−伸縮−ハンド)
2)円筒座標形(回転−伸縮−伸縮−ハンド)
3)極座標形(回転−旋回−伸縮−ハンド)
4)多関節形
・多関節極座標系
・多関節円筒座標系
・多関節直角座標系
例えば、取上げ機構ではXYZ(デカルト)座標系で並進運動制御するロボットでよく、展開機構ではワーク姿勢に対応するハンド把持姿勢をとるためXYZ座標系での並進運動制御に加えて上記座標軸周りの回転角A,B,Cでハンド制御点のポーズ変換移動ができる6軸多関節ロボットがよい。
ロ)吊下げ機構
ワークの両端を保持して引っ張り、ワークのコーナー出しができるように、二つのハンドを有して引っ張った状態でワークを吊下げる機能を有していればよい。いわゆるロボット型よりも、スライダ機構によって動く可動ハンドと、定位置で保持する固定ハンドからなる機構が好ましい。また、ワークの吊下げ状態を略三角形にして、コーナー出しが出来るように、ワークを引っ張るときに幅方向に狭めるガイドなどの機構も備えるのが好ましい。
ハ)展開機構
ワークを本来持っている固有の形状に広げる機構であり、種々の形状のワークを確実に把持する機能と自由度とを有するハンドと、ワークを搬送できる動きが可能なアームを有するロボットが好ましい。そのような機能と搬送自由度を有する限り、構造的には制約がなく、前記取上げ機構と同様に種々のタイプのロボットを採用可能である。
【0012】
前記取上げ機構と前記展開機構は、自らワークを把持しに行って搬送し、受け渡す機能を持っているが、前記吊下げ機構は、この機能を欠いている。そのため、取上げ機構のハンドで吊下げ機構へのワーク受渡し機能を果たさせるか、あるいは何らかの受渡し専用機構を用いてワーク受渡しを行うようにしている。また、吊下げ機構も、吊下げ用の二つのハンドの外にワーク受入れ用のハンドを備えておくようにしてもよい。
【0013】
本発明は、画像処理によりワーク位置を特定する点に特徴がある。つまり、取上げ動作制御部と把持動作制御部は、ワークを撮像するカメラと、そのカメラにより撮像された撮像画面に基づいてワーク堆積物の頂点位置や吊下げられたワークのコーナー位置を演算してハンドの移動軌跡を演算して教示するコンピュータを用いた演算部を備えている。
本発明は、この取上げ動作制御部と把持動作制御部を備えていることにより、ワークの大きさや形が異なっていても把持動作を確実に実行できる自由度の高さが特徴である。
【0014】
以下に、本発明の三つの実施形態を説明する。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態を図1〜図10に基づき説明する。
図1において、Aは本発明の第1実施形態に係る布物の自動展開投入装置Aである。Xは検査機、Yは折畳機であり、これらは自動展開投入装置Aの次工程装置である。
Zはかごであって、前工程の洗濯機で洗濯されたフェイスタオルやバスタオル等の布物(以下、ワークという)を山積みに投入して、自動展開投入装置Aの入側まで運搬してくる。
自動展開投入装置Aは、山積みのワークからワークを取り込み、これを1枚づつ分離し、ワーク端出し、ワークコーナー出し、ワーク辺出し、短辺出し、平たく展開というステップを実行し、付設のコンベヤで折畳機Yに送り込む装置である。
折畳機Yは、平たく展開されたワークを、フェイスタオルやバスタオルの識別を行い、きちんと折畳む仕上げ装置である。
【0016】
図2に示す自動展開投入装置Aは、つぎのように構成されている。
取上げ機構は、取上げロボット1とピックアップ装置3で構成されている。
吊下げ機構はスライダを用いた専用機で構成され、ワーク受渡し用のワーク昇降機2を備えている。
展開機構は展開ロボット7で構成されており、次工程にワークを送る排出コンベヤ8が付設されている。また、取上げ動作制御部を構成するカメラ11,12を備え、展開動作制御部を構成するカメラ(後述)も備えている。これらの演算部となるコンピュータやそれに付属するモニタ、入力機器等は図示省略している。
以下に、上記主構成要素に加え付随要素も含めて、その構造を説明する。
【0017】
図2において、1は取上げロボット、2はワーク昇降機、3はピックアップ装置、4はコンベヤであり、これらがワーク分離とワーク端出しを実行するためのメカニズムである。
取上げロボット1は、かごDの到着位置に近接して配置された多関節ロボットである。ワーク昇降機2はワーク保持板21とその上端部に取付けられたハンド22と、ワーク保持板21を昇降させるレールやプーリー、タイミングベルト、サーボモータ等の昇降機構とからなる。ピックアップ装置3は、左右2本の縦ガイド31と、縦ガイドに昇降自在に取付けられた横ガイド32と、横ガイド32に横行自在に取付けられた移動ハンド33とからなる。横ガイド32の昇降や移動フィンガ33の横行は、タイミングベルトやボールネジとサーボモータでの駆動等の任意の機構を採用できる。コンベヤ4は取上げロボット1とワーク昇降機2とピックアップ装置3の下部に沿って配置されている。
11は前記かごDの上方に取付けられ、かごD内の山積みワークを撮像するカメラである。12はコンベヤ4の上方に取付けられ、コンベヤ4上のワークを撮像するカメラである。カメラ11,12はいずれもコンピュータを用いた画像処理装置に接続され、取上げ動作制御部を構成している。
取上げ動作制御部は、カメラ11の撮像図から山積みのワーク堆積物の頂点を捉え、頂点位置まで取上げロボット1を動かす移動軌跡を算出する。
一回のワーク撮像から得る把持位置データは1ワークについて一セットだが、ワークの山のような複数ワーク計測では時間の短縮の為、ワーク把持位置候補群をリストとしてもっておき、優先順位の高い位置から(例:高い位置)取り出し、リストの位置を全て処理したら再計測してもよい。ロボットが撮像範囲にないときは撮像可能である。
カメラ12の撮像図からコンベヤ4上のワークの後端位置を検出し、ピックアップ装置3の移動方向と移動量を算出する。
【0018】
図3に示すように、ワークは洗濯ライン末端の乾燥機に接続された搬送ラインからコンベア4に供給されるケースもある。この場合、かごDおよび取上げロボット1は用いられない。ワークのピックアップ処理は図2で説明した場合と同じである。
この場合、ワークが山積み状態でワーク取上げロボットの下までくるのでカメラ12からの画像をもとにワーク山の頂点を演算し、ピックアップ装置3およびコンベア4の移動方向と移動量を算出する。
【0019】
図4に示すように、ピックアップ装置3のハンド33で把持されたワークは、ワーク保持板21上部のハンド23に受け渡される。ワーク保持板21の背面の吸着ブロワが動作しワークのすそを負圧で保持する。その後ワークの下端が検知センサ(光電管等を用いた光センサで符号34を示す)で検出されるまで保持板21全体が下降する。
図4において、5は傾斜スライダ装置、6はワーク端部保持装置であり、これらがワークのコーナー出し、辺出し、短辺出しを行うメカニズムである。
図6に詳細を示すように、傾斜スライダ装置5は、斜めに傾斜して設置されたスライドガイド51をそれに沿って動くスライダ52と、スライダ52に取付けられた可動ハンド53とを有している。
また、スライドガイド51の下側にワークを通したとき細くしぼっていく三角形の凹所を形成したワーク保持装置54と、その内部に設けられたワークの脱落を防止する固定ハンド55を備えている。
ワーク端部保持装置6は長い板材または棒材61,61をリンク62とエアシリンダ63を開閉自在にしたもので、長く引き伸ばされたワークが落下しないようにしたものである。傾斜スライダ5は、水平でもよいが、傾斜することにより端部を一端持ち上げる行程を減らすことができる。
【0020】
図5に示すように、カメラ14はワーク保持板21に吸着されたワークのすそ部を撮影するカメラ14で取上げ動作制御部の演算部によって、ワークの端部位置を認識する。ワークのすそ端部の位置データから傾斜スライダ装置5がクロス方向に、ワーク保持板21が上下にスライドし可動ハンド53を把持位置に位置決めし、傾斜スライダ装置5の長手(傾斜)方向のスライドによりワークを把持して引き上げる。引き上げる際に(ワーク角部計測用)ワーク保持装置54内の固定ハンド55は開放している。
【0021】
図6に示すように、ワークを傾斜スライダ装置5で引き上げ(引き上げ前にクロス位置は中央に移動)、ワーク後端の通過をセンシングすると、ワーク保持装置54内の固定ハンド55がワークの末端を保持し、ワーク端部保持装置6が閉まる。この状態で、ワークは両端を僅かに引っ張られて吊下げられており、ワークの中央部は少し垂れ下がり、三角形になったコーナー部が現出している。ここでカメラ13がスクリーン(図示していない)を背景にしてワークのコーナー部を撮像し、その画像に基づいて展開動作制御部の演算部がワーク角部のポーズを計測する。そして、展開ロボット7に向けハンドの移動経路とハンドの向きを指示し、ワークを把持させる。また、把持した後の排出コンベヤ8までの移動経路も指示する。
ここで、カメラ撮像図を元に演算部のコンピュータがワークのコーナー形状情報として、角部端点a、角部周辺の長辺点b、角部周辺の短辺点cの3点のXYZ座標値を計測する。カメラの計測座標系での計測座標値は演算部でロボットの座標系での座標値に変換される。
ここで画像からどのようにして把持特徴点の3次元位置データをだすかは、
H.Kobayashi, S.Hata, H.Hojoh, T.Hamada, H.Kawai, "A Study on Handling System for Cloth Using 3-D Vision Sensor", Proceedings of the 34th Annual Conference of the IEEE Industrial Electronics Society (IECON 2008), Sensors and Actuators for Human Support Systems, pp. 3403-3408, 2008.
またこのデータをどのように処理してロボット動作を行うかは、
S.Hata, T.Hiroyasu, J.Hayashi, H.Hojoh T.Hamada, "Robot System for Cloth Handling", Proceedings of the 34th Annual Conference of the IEEE Industrial Electronics Society (IECON 2008), Sensors and Actuators for Human Support Systems, pp. 3449-3454, 2008.として、どちらも本願発明者を含む著者名で既に論文発表されている。
この論文では
・6軸多関節ロボットに追加したハンドのツール座標系の定義方法
・布の角部の形状を定義する三点の位置の計測方法
・3点の位置計測値からワーク座標系の定義方法
・ワーク座標系とツール座標系を一致させるように6軸ロボットを制御する方法
をワークの端部を単純につり下げたとき、ワークの下部に出現する角部の点、角部周辺の長辺側の点、短辺側の点の三点から、角部から上の方にしやすい長辺点との間でワークを把持するように、ワーク座標系を設定する方法を記述しているため不定な変形をするタオルのようなワークの角部周辺の辺の一部を把持するための演算手法になる。一般的に専用機のシステム設計では各動作機構の駆動タイミングを制御する従来の手法で動作方法を設計できるが、本発明のように撮像画像からの三次元データからハンドリングを行う場合この計算手法により把持姿勢をとることができる。
ここで本発明と公開された論文の技術との違いは以下がある。
公開論文では一対の把持フィンガで角部を把持する手法を記載しているが、本発明では2対のフィンガを用いて角と角周辺の辺把持をおこなうという違いがある。しかし、撮像画像からはフィンガが把持すべき辺上の2点の3次元位置計測を行ない、他の一点の位置関係から把持の方向を出しているので、最初の2点の間隔をハンドの間隔と同じになるように認識させることで、この手法を採用できる。
第1実施形態の場合では、これが公開論文とは、長辺側と短辺側の方向が入れ替わった状態でワークをつり下げているが、第1実施形態では角部から上の方に出現する短辺点を把持しようとするので、基本把持姿勢のときの下側のフィンガをロボット制御点になるようにロボット端部からフィンガ制御点までのツールパラメータを設定しツール座標系を設定することで、この方法と同じ方法で把持ポーズを決定することができる。
具体的にはロボットは短辺の角部周辺を把持するようにハンド姿勢をとるので、把持開始状態のハンドの二組のフィンガのうち下側のフィンガの先端をロボット制御点として設定しさらにロボットの端部からフィンガの基底座標系を記述するツールパラメータをロボットコントローラに設定することで制御点のポーズ制御が可能になる。
ここでワーク角部周辺の短辺を把持するためワーク形状情報のa、b、c各点の位置情報からaからcに向かうベクトルAC、aからbに向かうベクトルAB、その外積ベクトル(AB×AC)を計算し、ACと外積ベクトル(AB×AC)が設定されたフィンガのツール座標系の基底座標系と一致するようにすると所望の辺a,cを把持する姿勢がとれる。
【0022】
図7に示すように、可動ハンド53と固定ハンド55で両端を保持され吊り下げられたワークの角部周辺の短辺を把持した状態である。その後、ワークはワーク端部保持装置6で吊下げられ、傾斜スライダ装置5と可動ハンド53は待機位置に帰っていく。カメラの撮像画像に基づく計測データからロボット7の保持姿勢を計算しロボット7のハンドを閉じてワークを把持する。
【0023】
図8に示すように、7はワークを展開するための端部にたぐり展開機能を有するハンドをもつ多軸展開ロボット、8は排出コンベアであり、これらによりワークを平らに展開して排出するメカニズムが構成されている。
展開ロボット7でワークを平らに、折り重ねがないように展開した後、コンベア8に受け渡している状態である。コンベア8は、その受入側の下部にブロワを設置し、コンベヤ8の受入部分には多数の吸引孔を形成している。この吸引により、受け渡し時にタオル等のワークが落ちないようにしている。
【0024】
図9に示すように、展開ロボット7でワークを排出コンベヤ8の受入側に移動させ、ワークのたぐり動作を開始する。ハンドに設けたたぐりフィンガは左右一組あり、内側の固定フィンガ71、外側の移動フィンガ72がある。それぞれのフィンガの把持力は大小に調整することができるまた、それぞれのフィンガ71,72にはワークの有無を検出するセンサがある。フィンガを閉じたまま固定フィンガ71と移動フィンガ72の把持力を変え、インチワーム動作しながらセンサでワーク端通過を確認することで把持量を一定にすることができる。このようにして、たぐりフィンガ装置の間隔を広げワークを平らに広げる展開動作を実行する。
【0025】
図10に示す状態からワークを展開して、ワークを排出コンベヤ8に広げてのせ終わると、排出コンベヤ8がワークを次工程装置(折畳機)へ送る。このとき可動ハンド6は待機位置に帰っている。
【0026】
(第2実施形態)
第2実施形態を図11〜図20に基づき説明する。
図11に示す自動展開投入装置Bでは、取上げ機構は取上げロボット1で構成され、吊下げ機構はスライダを用いた専用機で構成され、展開機構は展開用ロボット7で構成されている。取上げ動作制御部は、カメラ12とコンピュータを用いた演算部(図示省略)から構成され、展開動作制御部はカメラ13(図16参照)とコンピュータを用いた演算部から構成されている。
以下に、上記主構成要素に加え付随要素も含めて、その構造を説明する。
【0027】
図11において、1はワークを取り込むための取上げロボット、4Aおよび4Bはコンベヤ、5は傾斜スライダ、7はワークを展開するための展開ロボット、8は排出コンベヤである。これら各構成要素の機能は、第1実施形態のものと実質同一である。
カメラ12の撮像画像に基づき、コンベヤ4A上の山積みのワーク堆積物を計測して、頂点を抽出する。ついで、取上げロボット1が、コンベヤ4A上の最上位付近の1枚ないし数枚のワークを把持する。
【0028】
図12では、図11に引き続いて、取上げロボット1が山から1枚ないし2枚を分離したワークを、コンベア4Bに載せる状態を示している。
【0029】
図13では、コンベヤ4B上のワークを光電センサ等の位置センサで通過を確認しながらワークの後端が定位置にきたらコンベア4Bを停止する。カメラ12の撮像画像に基づきタオルの角部候補を計測識別し、取上げロボット1がワーク端部を把持する。ワークの角部はコンベヤ4B上で直角ないし鋭角的になって伸びているので、そのワークの角部のコンベヤ上における位置を特定すると、その位置にハンドが到達するように教示できる。取上げロボット1のハンドでワークの角を把持したとき、ワークの端は少しフィンガより上に出ているようにする。
【0030】
図14では、取上げロボット1が、把持したワークの端部を、傾斜スライダ5の固定ハンド56まで移動し受け渡す。ワークは固定ハンド56で端部を把持され吊り下げられる。
【0031】
図15では、図14の違う視点からの図である。ワークWは取上げロボット1で搬送され、固定ハンド56で把持される寸前である。
本図の状態から固定ハンド56がワークの一端を把持すると、可動ハンド53がワーク側に移動してきて、ワークの上端(固定ハンド56より上方に突出している部分)を把持する。そして、可動ハンド53が元の位置へ帰りはじめ、固定ハンド56はワークを離すことになる。
【0032】
図16では、傾斜スライダ5の下方にはワーク保持装置54が設けられている。ワーク保持装置54には、ワークを通すと、幅を細く絞っていく三角形の凹所が形成されており、内部には展開してワークを保持するハンド55が設けられている。
カメラ13はスクリーンの前面のワークを撮像できる位置に取り付けられている。
【0033】
図17では、固定ハンド56がワークを離した後、なお可動ハンド53はワークを把持した状態で斜め上方へ引っ張っていく。すると、ワークはワーク保持装置54の三角形の凹所を通る間に細くしぼられ、そしてワークの末端が内蔵のハンド55で把持される。
この状態で、ワークは三角形になって、その両端が引っ張られ、真中が三角形の頂点となって下に向いている。また、ワークはこの状態で背景を遮断するスクリーンの前面に位置している。
カメラ13がスクリーンを背景にして三角形になったワークを撮像する。その撮像図を元に演算部のコンピュータがワークのコーナー形状を3D計測して(a,b,cの3点)、ロボット7のハンド移動軌跡を求める。
図17はロボット7のハンドがコーナーを把持しようとしている状態を示している。
ここで、カメラ撮像図を元に演算部のコンピュータがワークのコーナー形状情報として、角部端点a、角部周辺の長辺点b、角部周辺の短辺点cの3点のXYZ座標値を計測する。カメラの計測座標系での計測座標値は演算部でロボットの座標系での座標値に変換される。
ここでこの撮像データをどのように処理してロボット動作を行うかは、前述した論文で公開された通りである。この論文ではワークの端部を単純につり下げたとき、ワークの下部に出現する角部の点、角部周辺の長辺側の点、短辺側の点の三点から、角部から上の方にしやすい長辺点との間でワークを把持するように、ワーク座標系を設定する方法を記述している。ここで第2実施形態の場合では、これが長辺側と短辺側が入れ替わった状態でワークをつり下げているが、角部から水平方向に出現する長辺点を把持しようとするので、ロボットからみて右側で構えるフィンガの先端をロボットの制御点として下から長辺を把持するように把持ポーズを決定することができる。
具体的には、ここで、カメラ撮像図を元に演算部のコンピュータがワークのコーナー形状情報として、角部端点a、角部周辺の長辺点b、角部周辺の短辺点cの3点のXYZ座標値を計測する。カメラの計測座標系での計測座標値は演算部でロボットの座標系での座標値に変換される。
ロボットは長辺の角部周辺を把持するようにハンド姿勢をとるので、把持開始状態のハンドの二組のフィンガのうち端部を把持する図示右側フィンガの先端をロボット制御点として設定しさらにロボットの端部からフィンガの基底座標系を記述するツールパラメータをロボットコントローラに設定することで制御点のポーズ制御が可能になる。
ここでワーク角部周辺の長辺を把持するためワーク形状情報のa、b、c各点の位置情報からaからcに向かうベクトルAC、aからbに向かうベクトルAB、その外積ベクトル(AB×AC)を計算し、ABと外積ベクトル(AB×AC)の向きが設定されたフィンガのツール座標系の基底座標系と一致するようにすると所望の辺a,bを把持する姿勢がとれる。
【0034】
図18では、ロボット7でワークの角部長辺を把持したあと、少しポーズをかえて(たぐりやすいポーズに)、たぐりハンドで把持して、ワークの長辺をすこしたぐり把持幅を拡大する。たぐり後の把持幅は100mm〜200mmが好ましく、とくに150mm位が、後でワークを平たく展開するために好ましい。ロボット7のハンドは左右2個のフィンガを設けておき、一方の固定側のフィンガの把持力を強くし、他方の移動側のフィンガの把持力を弱くしておくのがよい。または、固定側フィンガの摩擦力を強くするため表面にギザギザ加工し、移動側フィンガには滑り性を良くする加工をしてもよい。
たぐりのためのフィンガの移動機構は、移動側フィンガをスライド機構に接続するようにしている。スライド機構は直動レールとエアシリンダを組合せている。この他にも第1実施形態のような平行リンク機構を用いても良い。
【0035】
図19では、排出コンベヤ8の受入部には吸引ボックスを内蔵し、ワークを吸引して仮保持できるようにしている。81は多数の吸引孔である。また、受入部の片側には三角筒状のたぐり開始部82を設けている。このたぐり開始部82は三角形状の凸部によって、ワークの両側を垂れ下がりやすくしている。また、たぐり開始部82の上面に設けた吸引孔83によって、ワークのたぐり開始時に多少の抵抗を与えるようにしている。
排出コンベヤ8は停止している。コンベヤ8の吸引ボックスが吸引動作開始すると、ロボット7はワーク長辺角部周辺部をコンベヤ8のたぐり補正装置の処理開始部に移動する。なおたぐり開始部82の形状は三角筒状に限定するものではなくワークを保持できれば他の形状でもよい。
【0036】
図20では、ロボット7がワークの一辺をたぐり出すたぐり開始部82の上を水平に移動する。このときワーク短辺が、直列に並べた通過確認用光電センサ130の上を通過するときの位置をセンサで検知しながら、スライド開始時点からの変位に応じて吸引スライド装置が変位の反対方向にスライドしワーク辺位置補正する。
ワークの短辺周辺部がたぐり開始部82を通過して、センサ130が全てワーク無しと判定したらコンベア8の上面にきれいにのったと判定し、排出コンベヤ8が起動し、ワークが排出される。コンベヤ8で排出されるワークは折畳機に投入される。
【0037】
(第3実施形態)
第3実施形態を、図36〜図39に基づき説明する。
図36において、Cは第3実施形態の自動展開投入装置である。
本実施形態において、ワークの吊下げ機構と展開機構は第1,第2実施形態と同様の構成であり、取上げ機構のみが相違している。吊上げ機構は、多関節形ロボットを用いず、支柱型のピックアップ装置3を用いている。
本実施形態は、取上げ機構にロボットを用いずピックアップ装置3のみで構成しているため、システム全体を安価に構成できるという利点がある。
取上げ動作制御部と展開動作制御部は、第1,第2実施形態と同様に用いられる。
【0038】
図36において、4Aと4Bはワークを供給するコンベヤ、5は傾斜スライダ装置、6はワーク端部保持装置、7は展開ロボット、8は排出コンベヤである。
ピックアップ装置3は、支柱35とこれに沿って昇降する移動ハンド33からなる。ハンドの昇降機構は、直動スライダ、サーボモータ、タイミングベルト駆動等の任意の機構を援用できる。ワークが山積みで供給されるとき、このピックアップ装置3を用いると、コンベヤ4上に送られてきたワーク堆積物から、1枚のワークを取り上げることができる。ここでは図示しないが第2実施形態のピックアップ装置と接続するとワーク堆積物の頂点位置を把握するため、カメラとコンピュータを用いた演算部からなる取上げ動作制御部を用いると、能率よく1枚のワークを取上げることができるが、取上げ動作制御部を用いずに、ランダムにワークを取上げてもよい。
【0039】
図37において、9は受渡し装置である。受渡し装置9は、前記移動ハンド33に吊下げられたワークを把持するフィンガ91とそれを伸縮させるシリンダ92を有している。また、フィンガ91で引き摺られるワークの移動経路に配置された上下一対の押圧板93,93と、上方の押圧板93を押えるシリンダ94を有している。さらに、ワークの移動経路に配置された上下一対のローラ95,95と上方のローラ95を押圧動作させるシリンダ96を有している。
図38に示すように、フィンガ91で把持したワークをシリンダ92で引きながら、閉じられた押圧板93,93とローラ95,95の間を引き摺ると、ワークは布片の間の空気が排出されていく。
【0040】
図39に示すように、傾斜スライダ装置5の可動ハンドがワークを把持しに来て把持すると、あとは前記第1,第2実施形態と同様にワークの両端を保持して吊下げることができる。そして、吊下げ状態でワークのコーナー出しを行い、カメラで撮像してコーナー位置を演算し、展開ロボット7でワークを展開し、排出コンベヤ8にのせる点も前記第1,第2実施形態と同様である。
【0041】
(改良技術)
(1)ワーク角部提示装置の改良
(2)たぐり補正装置の改良
(3)把持装置の改良
の3点があり、概要は以下のとおりである。
第1,第2,第3実施形態に記載した取上げ機構、吊り下げ機構、展開機構は適宜その組合せを変更しても構成できる。
またこれらの機構についての改良技術については以下のような技術がある。下記の改良技術はどの実施形態での改良技術であるかを記載しているが、示されていない実施形態でも搭載してよい。
図21では第2実施形態の構成に第1実施形態に記載したワーク端部保持装置6を搭載している。機構追加することで、これまで展開ロボット7が把持するまで可動ハンド53が保持し続けなければならなかったのが、ワークを引き出してワーク端部保持装置6が作動すれば、次のワークを取りに行けるのでタクトタイムが短縮した。
【0042】
図22では、第2実施形態の構成に第1実施形態に記載したワーク端部保持装置6を搭載し、ワークを可動ハンド53からワーク保持装置6に受け渡した状態である。ワーク両端を保持しているので可動ハンド53が次のワークの処理を処理するための動作を開始できるとともに、カメラ13はワーク角部の計測を開始できる。
【0043】
図23では、展開ロボット7がワーク角周辺の長辺を把持して、たぐり動作を行ったあと、ワーク角部長辺をたぐり開始部82(ワーク保持吸引箱)の定位置に掛けた状態である。改良点として・たぐり補正装置にワーク長辺部を把持してコンベアのローラ部周辺でローラ軸に平行にワークを引き出すスライド付き長辺把持機構を追加したことと、
・処理装置の左側にたぐり開始部82を設けている。
これにより展開ロボットはワーク保持吸引箱にワーク角周辺の長辺を掛けることで処理が完了し、展開ロボット7のハンド73,74がたぐり補正装置の上を平行に移動することなく次のワークの処理に取りかかれるので工程のサイクルタイムが大幅に短縮する。
【0044】
図24は図23のワーク受け渡し状態をコンベアの上流側からみた展開ロボットから長辺把持装置へ持ち替える前の状態である。
図25は図23のワーク受け渡し状態をコンベアの上流側からみた展開ロボットから長辺把持装置へ持ち替えた後の状態である。
ここで展開ロボット7の受け渡し姿勢については、展開ロボットが把持しているワークの長辺把持部を確実にスライド付き長辺把持装置に持ち替えさせるのが好ましいので、第2実施形態に示すような進入姿勢が好ましく第2実施形態と同じ方向にワークを送るのが好ましい。
しかし、第2実施形態のような配置の場合、ロボットの動作パスの長さが長くなり展開ロボットのサイクルタイムが長くなる。短縮のためには展開ロボットの受け渡し姿勢を変え、第2実施形態と反対方向に補助たぐりを行うようにすることを考案した。
展開ロボット7のハンド73,74が、把持したワーク角部周辺の長辺の間隔を広げたたぐり開始部82であるワーク吸引保持箱に接近し、ワークを吸引箱82の上部と側面から負圧吸引して整形しながら通過し、スライド付き長辺把持装置の下部把持板周辺まで移動する。移動後展開ロボットハンドを解放するとワーク長辺部は、前記長辺把持装置の下部把持板に載る。このとき、コンベアには負圧が発生するようにコンベア下部にブロアが配置されていて、空気の流れを作っておりこれを利用して長辺が把持板に載るようにしている。ワークを乗せたら展開ロボットは次の処理のための待機位置に復帰する。
長辺把持装置の把持フィンガ110は、4節リンクで構成しており、リンク113、リンク114の支点は一端が固定されている。フィンガ112はリンク113とリンク114に連結し他のリンク支点をフィンガの上下に固定して配置することを特徴として、リンクパラメータを設定している。図では1式のリンク機構しか見えないが前後に平列して2式配置されており両フィンガならびに各支点となるシャフト117は前後のリンクを貫通すると同等の配置をしている。駆動は両端を支点とするシリンダ116であり、一端は固定端で揺動し他端はフィンガに接続された支点に連結している。これによりシリンダ116が引き込み待機したときは図24に示すように装置の高さが低くおさえられるので、展開ロボット7の受け渡し姿勢が図24のようであってもワークの受け渡しが可能になる。またフィンガ先端の動作経路はワーク辺の状態が、はねていたりしてもワークをまたぐようにして押さえることができる。
なおこの機構は、展開ロボットからの受け渡し配置に制限がある場合に用いられるものである。たとえば第2実施形態と同じ方向に補助たぐりをおこなうような展開ロボットの受け渡し姿勢であれば、フィンガ機構がロボットハンドと干渉はしにくいので、展開ロボットのハンドの内側に持ち替えるフィンガ2組を配置する等の単純な機構ですむ。
【0045】
図25はワークたぐり展開スライダの受け渡し図である。
【0046】
図26はたぐり開始部82であるワーク保持吸引箱に掛けたワークを、スライド付き長辺把持装置110に持ち替えた後、長辺把持装置がスライドしている状態である。たぐり開始部82とコンベアの間で、ワークが通過する部分の直下には直列にワーク通過確認用光電センサ130を配置してあり、ワークをスライド開始した時点での布端位置と、長辺把持装置をスライドしているときにの短辺の布端位置が変化してないか検知する。変化した場合は修正されるまでワーク保持吸引箱を変位の反対方向にスライドする。
スライド付長辺把持装置110は、把持部とスライダ機構118から構成していて118のスライド部119に把持部が連結されている。
110がスライドしているあいだコンベア8の下の吸引ブロワとたぐり開始部82の吸引ブロワは作動しワーク保持する。
【0047】
図27はたぐり補正装置で、スライド付き長辺把持装置110がタオルを展開しながらスライドし、ワークの短辺周辺がすべてコンベア8に乗った状態である。この状態ではワーク通過光電センサはすべてワークがないと識別し、その信号をうけて長辺把持装置のフィンガは解放動作しワークをコンベアに乗せることになる。
【0048】
図28はたぐり補正動作をしたあと長辺把持装置が待機位置に横行復帰する状態を示している。
図29は横行復帰動作の後、長辺把持装置が待機位置に下降復帰する状態を示している。このときワークはコンベア8に載っており、下流へ搬送開始する。このときそのままの高さで長辺把持装置を復帰させるには、ワークのコンベア通過を待たないといけないので、長辺把持装置を昇降する機構120を設けている。これにより長辺把持装置は上昇して待機位置まで横行スライドし下降することで待機位置に復帰することを、ワーク解放後、直後にできる。
昇降機構はどのような機構でもよいがここでは、平行4節リンク121,123を利用しエアシリンダ122でリンク121を揺動し、昇降するようにした昇降機構を、110と電動直道スライダのスライド部分119の間に接続した。
【0049】
図30は取上げ機構でもちいるハンドがワークに接触していないときの図面である。
図31は取上げ機構でもちいるハンドがワークに接触したときの図面である。ハンドはロボット端部のハンド(エンドエフェクタ)取付面に直接接続しても良いが、ワークの山の頂点を計測するような場合、計測データに多少の誤差を含むことになる。この計測値が実際よりも高めにでるとワークを把持できず、低めにでるとワークを過剰に押さえつけることになり最悪の場合、過負荷でロボットが停止する。これらの不具合を解消するためハンドとロボットのハンド取付面の間に緩衝機構140を配置した。図31では緩衝機構は機構の変形により過剰におさえつけても一定の押しつけ力をワークに与える。機構はスライド機構や揺動機構等を組み合わせて構成すればよい。ここでは、平行4節リンク141,142,144,145で機構を構成し、リンクの中間部142aと固定部145bをエアシリンダ143の両端を支点として配置することで、コンパクトで変形量の大きな機構にした。エアシリンダのストローク下端部には近接センサ143cがあり、近接センサ143cが作動するときはハンドが下端にあることを検知できる。これはワークを押さえつけて機構が変形したことを検知できることであるので、把持認識位置が実際よりも上だったためワークを押さえれず把持できないときは、近接センサ143cの信号が変化するまで適当量ハンドを下降させることで高速、確実にワークを取り出せる。
押しつけ力はハンドの質量とシリンダからの押しつけ力の合計になるが、布の取り出しにおいては確実にハンド先端がワークに接触していれば良い。取り出し装置でのハンドの姿勢が決まっている場合では、ハンドの自重のみで押しつけ作用するのでシリンダのエア圧は不要であり、近接センサの機能のみを使用すればよい。(移動の途中でハンド姿勢が変化するのが不都合なときはエア圧を加えるとよい)
【0050】
図32はフィンガの開放時の把持幅を選択可能にするための機構である
フィンガはストローク拘束部を換えることで、ワークに応じ解放把持幅を全開、中間の2つもつ。図31は中間位置を示し、図30は全開を示す。
取上げ機構で使用するハンドは市販の把持ハンドでよいが、第2実施形態のようにワークの山から取り上げる工程と、ワークの端部を取り上げる工程がある等、複数工程を担当する場合でそれぞれの最適な把持幅が異なる場合には、フィンガの解放幅を選べるようにするため図32のようなリンク機構を付加したり、フィンガ形状を工夫してハンド本体のフィンガ取付部151が閉じるときにフィンガ152が開くようにする。このとき二つのハンドのフィンガ取付部の間に適当な幅の部材153を挟むようにすることでフィンガ解放時の幅を、部材がないときよりも小さくできる。この部材は二種類の幅を用意しこの部材に接続したシリンダ154スライド用のガイド161で、フィンガが閉じたときに次に解放するときの把持幅に適した幅の側になるよう部材を移動可能にする。部材の把持幅を選択できるようにすることでフィンガの解放時の把持幅を選べる。
第2実施形態では、山から取り出すときは一枚ないし数枚把持すればよいので幅を広めにして把持して、端部を把持するときは幅を狭めにして把持するとよい。
またフィンガはハンドのフィンガ取付部に直接把持するように接続する、あるいは交差して把持するように接続するような形状に接続しても良いが、この図32のように平行リンク機構152,155,159を利用して、フィンガ先端が前進しながら把持するような把持経路の設計をくみいれることで、たとえば展開機構での辺把持動作のときのようにワークの把持位置周辺で不要な布地が存在して両方を挟む可能性がある場合でも、フィンガの進入経路をそのようにすることで複数枚数把持する可能性を減少できる。ここではフィンガ取付部151とリンク155の中間部に支点を設け、これをレバー160を左右交互に連結して、ハンドのフィンガ取付部151がスライドしたときリンク機構の一部であるフィンガ152が開閉するようにしている。
【0051】
図32はリンクの機構関係がわかる図である。
【0052】
図33はコンベア上のワークの端部をとるときの図である。フィンガ先端に先端がとがったピン156を出し入れ可能に配置している。フィンガ152をコンベア上のワークに出したピンを接触しながら近づけ、フィンガ開閉したさい、フィンガを押さえつけるときのコンベアからの反力でピンはもどる。
ピン156がワークの繊維に引っかかっているのでコンベア上をフィンガ先端が押さえながら把持するとき、両フィンガの間にワークを入れるような作用をするので確実な取り出しができる。
ピンはフィンガ先端に取り付けたエアシリンダ157のロッド158と一体であり、ピンやロッドの軸方向は、フィンガ152がワークに接近するときや、ワークを把持するときに把持しやすいような方向に配置されている。ピン156の作用は繊維が引っかかりやすくするためであり、ほかにもブラシ状の素材をフィンガ表面に貼り付けても良いが、第2実施形態のコンベア上にワークをおくようなときは繊維がブラシ上の素材にからんでフィンガから分離しないときがあるのでピンのほうがワークを完全に解放でき好ましい。
このとき前記の緩衝機構はワークの押しつけ力を一定にする作用があり、確実な取り出しに寄与する相乗効果がある。
【0053】
図34はフィンガにつけたピンが出たときのイメージ図である。
この場合、把持したときにフィンガの間に摘んだように保持されるので、実質2枚の布を挟んだことになる。
【0054】
図35に示すように、ワーク端部の把持姿勢の例2である。裾の下部からスライドして把持することで袋状にならない把持ができる。
この場合、把持したときにフィンガの間にすくうように保持されるので、実質1枚の布を挟むことになる。
【符号の説明】
【0055】
1 取上げロボット
2 ワーク昇降機
3 ピックアップ装置
4 コンベヤ
5 傾斜スライダ装置
6 ワーク端部保持装置
7 展開ロボット
8 排出コンベア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
不定形な方形状布物のワークを山積みにしたワーク堆積物から1枚ずつワークを取り上げて、固有の方形状に広げるよう展開し次工程装置に投入する自動展開投入装置であって、
ワークを取り上げるハンドを有しており、ワーク堆積物から1枚のワークを取り上げる取上げ機構と、
ワークの両端を保持する二つの保持装置を有しており、取り上げられたワークの両端を保持して、ワークのコーナー部を撮像可能に吊下げる吊下げ機構と、
ワークの端辺を把持するハンドを有しており、該ワークを把持して次工程装置の投入部に移動させて、固有の方形状に広げる展開機構と、
前記吊下げ機構で両端を支持されたワークのコーナー部を撮像するカメラと、その撮像画像からコーナー部の3次元位置を演算し、前記展開機構のハンドの移動経路を演算して教示する演算部を備えた展開動作制御部を備えた
ことを特徴とする布物の自動展開投入装置。
【請求項2】
ワーク堆積物を撮像するカメラと、その撮像画像からワーク堆積物の頂点の3次元位置を演算し前記取上げ機構のハンドの移動経路を演算して教示する演算部を備えた取上げ動作制御部を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の布物の自動展開投入装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【公開番号】特開2010−273732(P2010−273732A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−126935(P2009−126935)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成18から22年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(502407130)株式会社プレックス (75)