説明

希薄溶液を濃縮するための方法および装置

本発明は希薄溶液を濃縮するための方法および装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、希薄溶液を濃縮するための方法および装置に関し、詳細には、多段階の分別凍結(fractional freezing)によって希薄溶液を濃縮するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶液の濃縮は、多くの産業において一般的に行われるプロセスである。この水溶液の濃縮に広く使用されている技術は蒸発である。ただし、効率的な蒸発プロセスは、温度がより高い沸騰状態の下で行う必要があり、その結果、溶液中の特定の揮発性物質や熱に弱い物質が失われたり損傷をうけたりする可能性がある。水を蒸気にすることに代わり、分別凍結は、溶液の凍結点より低い温度で水を氷に結晶化して水溶液を濃縮させることによって行われるプロセスである。分別凍結の目的は高濃度溶液を得ることであり、この溶液には、コロイド溶液、真溶液、混合溶液、精製水などが含まれる。分別凍結はプロセス温度が低いため、蒸発よりも有利な点が多い。低い温度では、元の材料の風味、香り、栄養素およびその他の有価成分を失うことなく保つことができる。さらに、低い温度では、熱に弱い物質の分解を防止することもできる。したがって、分別凍結を用いると、極めて高品質の生成物を得ることができる。分別凍結プロセスは、食品、飲料、乳製品、生化学物質、栄養補給食品、製薬、化学、および環境の各産業の濃縮に適用することができる。
【0003】
理論的には、水から氷への変化の潜熱はおよそ80kcal/kgであり、水から蒸気への潜熱約540kcal/kgの、わずか7分の1である。そのため、水溶液を濃縮するために分別凍結プロセスを用いると、エネルギー消費を減少する見込みが大きい。凍結濃縮は、溶液を冷却するステップと、氷を結晶化するステップと、氷の結晶を母液から分離するステップとを含む。凍結濃縮技術を商業的に実施可能とするには、水溶液を効率的かつ経済的に冷却しなければならず、溶液から簡単に分離されるように大きく均一な氷の結晶を効率的に得なければならない。ただし、氷の結晶化は複雑な相移行であり、氷の結晶化の制御は、複雑であることから非常に困難である。したがって、凍結濃縮に関する主要な問題点は、相関する2つの観点にある。第1に、得られる氷の結晶のサイズが小さいと、氷の結晶を高濃度溶液から分離するのが困難である。第2に、大きな氷の結晶を得るプロセスはゆっくりと進行するため、効率がよくない。
【0004】
特許文献1は分別凍結の方法に関する。この方法は、複数の冷却セクションからなるカスケードを経由して送られる液体混合物から、化合物を連続的に部分結晶化するステップを含む。これら冷却セクションは直列に接続され、カスケード冷却セクションの各セクションの後段の温度は前段より低くなっている。特許文献2には、結晶化可能な物質を多段階の結晶化手順によって超精製するための方法および装置が記載されている。この手順は、前記方法および装置により運ばれる結晶と母液還流材料の量を制御する計量手順を設けることによって、還流比の条件を制御する処置を含む。各段階で、結晶化可能な物質が凍結、再結晶化され、その結晶が母液から分離される。特許文献3には、多段階の再結晶化手順によって、結晶化可能な物質を超精製する方法および装置が開示されている。この手順は、前記方法および装置により運ばれる結晶および母液還流材料の量を制御する計量手順を設けることによって、還流比の条件を制御する処置を含む。特許文献4には、熱交換器および冷却による凍結脱塩および濃縮が開示されている。特許文献5には、向流晶析装置によって水溶液を濃縮する連続運転を行う装置が記載されている。
【0005】
本出願人の知る限りでは、単一の分別カラムでの希薄溶液の濃縮に使用可能な方法はない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第4,666,456号明細書
【特許文献2】米国特許第4,885,016号明細書
【特許文献3】米国特許第5,127,921号明細書
【特許文献4】米国特許第4,112,702号明細書
【特許文献5】米国特許第4,332,140号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の主な目的は、最小限のエネルギー利用によって、単一のカラムを使用して希薄溶液を濃縮するための方法を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、単一の分別カラムで希釈溶液を濃縮する装置を提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、希釈溶液を濃縮するための連続的なプロセスを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、効果的に氷を破砕して氷の結晶を分離することによって、従来技術の限界を克服するものである。本発明は、図1に示されているように、水分を分別凍結し、溶液から分離することによって任意の水溶液を濃縮するための物理的なプロセスに関する。このプロセスの目的は、エネルギー利用に関して優秀な濃縮水溶液を得ることにより、このシステムを経済的に稼働させ、資本コストを低減することである。
【0011】
本発明において、単一のカラムで分別凍結を行うプロセスを決定づけているのは、本装置の動作によって母液から分離できる小さな氷の結晶を形成する技術である。
【0012】
本発明に記載の方法の実施は、単一のカラムで連続的かつ多段階の分別凍結をするための装置で行われる。
【0013】
このように、本発明は希薄溶液を濃縮するための方法に関し、前記方法は、(a)濃縮させる希薄溶液を、垂直の凍結濃縮カラムの下端部の方へ下方向に移動するように、前記凍結濃縮カラムに供給するステップと、(b)ミクロンサイズの局所的な凍結氷粒子を、前記凍結濃縮カラムの上端部の方へ移動するように、前記凍結濃縮カラムの前記下端部の近傍に生成するステップと、(c)前記凍結濃縮カラムの前記上端部の近傍で氷粒子を回収するステップと、(d)前記ステップ(c)で回収した氷粒子を溶かし、その後、その液体の一部分を、前記凍結濃縮カラムの前記下端部の方に移動するように、前記凍結濃縮カラムに再循環させるステップと、(e)溶存固形物の所望の濃度が達成されるまで、前記溶存固形の濃縮物と水溶液を前記凍結濃縮カラムの前記上端部と前記下端部の近傍にそれぞれ分別するために前記ステップ(a)〜(d)を繰り返すステップと、(f)前記凍結濃縮カラムの前記下端部から前記濃縮物を得るステップと、を含む。
【0014】
本発明はまた、希薄溶液を濃縮するための装置に関し、前記装置は、(a)上端部および下端部を有する垂直に配置された凍結濃縮カラムであって、濃縮する前記希薄溶液を供給するための入口を有し、前記希薄溶液が前記凍結濃縮カラムの前記下端部の方へ下方向に移動するように前記入口が配置された凍結濃縮カラムと、(b)前記凍結濃縮カラムの前記下端部の近傍で局所的な凍結を引き起こすように、前記凍結濃縮カラムに接続された冷却ユニットと、(c)前記局所的な凍結の領域に位置するミクロンサイズの氷粒子を生
成する手段と、(d)前記凍結濃縮カラムの第1の出口に結合された、高濃度溶液を回収するための第1の受器であって、前記第1の出口が前記反応器チャンバの前記下端部の近傍に配置される第1の受器と、(e)前記凍結濃縮カラムの第2の出口に結合された、前記ミクロンサイズの氷粒子を回収するための第2の受器であって、前記第2の出口が前記凍結濃縮カラムの前記上端部の近傍に配置される第2の受器と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による希薄溶液を濃縮するための装置の例示的な図である。
【図2】本発明による分別凍結カラムの断面図である。
【図3】外部付属装置を含まない、本発明による分別凍結カラムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、希薄溶液を濃縮するための方法を提供し、前記方法は、(a)濃縮する希薄溶液を、垂直の凍結濃縮カラムの下端部の方へ下方向に移動するように、前記凍結濃縮カラムに供給するステップと、(b)ミクロンサイズの局部的な凍結氷粒子を、前記凍結濃縮カラムの上端部の方へ移動するように、前記凍結濃縮カラムの前記下端部の近傍に生成するステップと、(c)前記凍結濃縮カラムの前記上端部の近傍で氷粒子を回収するステップと、(d)前記ステップ(c)で回収した氷粒子を溶かし、その後、その液体の一部分を、前記凍結濃縮カラムの前記下端部の方に移動するように、前記凍結濃縮カラムに再循環させるステップと、(e)溶存固形物の所望の濃度が達成されるまで、前記溶存固形の濃縮物と水溶液を前記凍結濃縮カラムの前記上端部と前記下端部の近傍にそれぞれ分別するために前記ステップ(a)〜(d)を繰り返すステップと、(f)前記凍結濃縮カラムの前記下端部から前記濃縮物を得るステップと、を含む。
【0017】
本発明はまた、希薄溶液を濃縮するための装置を提供し、前記装置は、(a)上端部および下端部を有する、垂直に配置された凍結濃縮カラムであって、濃縮する前記希薄溶液を供給するための入口を有し、前記希薄溶液が前記凍結濃縮カラムの前記下端部の方へ下方向に移動するように前記入口が配置された凍結濃縮カラムと、(b)前記凍結濃縮カラムの前記下端部の近傍で局所的な凍結を引き起こすように、前記凍結濃縮カラムに接続された冷却ユニットと、(c)前記局所的な凍結の領域に位置するミクロンサイズの氷粒子を生成する手段と、(d)前記凍結濃縮カラムの第1の出口に結合された、高濃度溶液を回収するための第1の受器であって、前記第1の出口が前記反応器チャンバの前記下端部の近傍に配置される第1の受器と、(e)前記凍結濃縮カラムの第2の出口に結合された、前記ミクロンサイズの氷粒子を回収するための第2の受器であって、前記第2の出口が前記凍結濃縮カラムの前記上端部の近傍に配置される第2の受器と、を備える。
【0018】
本発明の一実施形態では、前記ミクロンサイズの氷粒子を生成する手段は、スクラッパ(scrapper)またはスパージャー(sperger)である。
【0019】
本発明の他の実施形態では、前記凍結濃縮カラムが、その上端部へ向かう氷粒子の移動を助ける手段を備える。
【0020】
本発明の他の実施形態では、前記氷粒子の移動を助ける手段が、スクリュー・タイプのコンベヤ、または穴付きスクリューである。
【0021】
本発明の他の実施形態では、前記凍結濃縮カラムの入口が、液体の一部分を第2の受器から前記凍結濃縮カラムへ供給するための前記第2の受器と結合される。
【0022】
本発明の他の実施形態では、前記スクラッパが、モータによって回転可能なシャフトに取り付けられたブレードを備える。
【0023】
分別凍結は、水溶液の水分を小さな氷粒子の形で連続的に取り除くことによって、水溶液を高濃度溶液に濃縮するための物理的なプロセスである。
【0024】
濃度が高い水溶液では溶液の粘性が高いため、形成される小さな氷の動きが制限されて減速されるために、氷の核生成速度は大幅に低減する。が、ゆっくりと解放されるミクロンサイズの氷粒子を、結合して大きな塊を形成する前に利用する方法を用いることによって、濃度がより高い水溶液を分別凍結する本発明が可能になる。
【0025】
したがって、本発明の方法では希薄溶液が凍結濃縮カラムに供給される。この溶液は、下方向に垂直のカラムの下端部の方へ移動する。したがって、希薄溶液は凍結濃縮カラムの下端部より上の位置に供給することができる。つまり、上端部または上端部と下端部の間の任意の中間の位置から、希薄溶液を供給することができる。このように、凍結濃縮カラムには入口を設けることができる。
【0026】
本発明のプロセスでは、局所的な凍結がカラムの下端部の近傍に生じることにより、希薄溶液が濃縮される。この凍結位置でミクロンサイズの氷粒子が生成される。こういったミクロンサイズの氷粒子は、密度の差によって、上方向に凍結濃縮カラムの上端部の方へ移動する。
【0027】
氷粒子は上方向に移動しながら、溶存固形物を希釈溶液へ移動させる。氷粒子および希薄溶液は、平衡状態に達する傾向を有する系を形成する。物質移動すなわち溶存固形物の移動は、氷粒子と希薄溶液との濃度差および温度差のために生じる。したがって、平衡状態に達するために物質移動が生じ、氷粒子から希薄溶液へ溶存固形物が移動する。これによって希薄溶液がさらに濃縮される。氷粒子のサイズが小さいほど表面積が広くなり、したがって物質移動が増大する。
【0028】
氷粒子は、凍結濃縮カラムの上端部の近傍で回収される。凍結濃縮カラムから回収された氷粒子を溶かし、これにより得られた液体の一部分を凍結濃縮カラムに再循環させることができる。
【0029】
凍結濃縮カラムの上端部と下端部の近傍に溶存固形物濃縮物と水溶液を分別する前記ステップは、それぞれ所望の溶存固形物濃度が達成されるまで繰り返すことができる。
【0030】
前記の本発明の方法によって得られた高濃度溶液は、凍結濃縮カラムの下端部から回収することができる。
【0031】
前記の説明から分かるように、本発明の方法は、単一のカラムにおける連続的な多段階凍結プロセスである。
【0032】
したがって、本発明は、本発明により希薄溶液を濃縮するための装置を提供する。この希薄溶液を濃縮するための装置は、垂直に配置された凍結濃縮カラムを備える。凍結濃縮カラムは、上端部および下端部を有する。凍結濃縮カラムには、濃縮する希薄溶液を供給するための入口が設けられる。本発明の方法では、希薄溶液が、下方向にカラムの下端部の方へ移動するように供給される。したがって、入口は、上端部、または凍結濃縮カラムの上端部と下端部の間の任意の中間の位置、またはその近傍に設けることができる。
【0033】
局部的な凍結を発生させるための冷却ユニットが、凍結濃縮カラムのカラム下端部近傍に設けられる。この冷却ユニットは、濃縮する希薄溶液を凍結させる。冷却ユニットによって形成された氷は小さく、さらにはミクロンサイズの氷粒子に変えられる。ミクロンサイズの粒子を生成するためのスクラッパ、スパージャーまたはその他任意の適当な手段を凍結濃縮カラムに設けることができる。ブレードタイプの構造を有するスクラッパは、ミクロンサイズの氷粒子を生成する適当な手段になり得る。スクラッパは、モータにより回転可能なシャフトに取付けることができる。スクラッパ・ブレードと凍結濃縮カラムの壁の間には間隙を設け、スクラッパが動作状態で引っ掛かりが生じないようにすべきことは、はっきり理解されるだろう。
【0034】
凍結濃縮カラムには、高濃度溶液を回収するための出口が設けられる。この高濃度溶液を回収するための出口には、受器を結合することができる。
【0035】
下端部の近傍に形成された小さな、すなわちミクロンサイズの氷粒子は、濃縮カラムの上端部へ上方向に移動する。氷粒子がカラム内を上向きに移動する一方、氷粒子から希薄溶液への溶存固形物の物質移動が行われる。これによって、希薄溶液の濃度がさらに高まる。
【0036】
氷粒子は、凍結濃縮カラムの上端部の近傍に設けられた第2の出口から回収することができる。高濃度溶液を回収する出口は、第1の出口とみなすことができる。第2の出口には、氷粒子を回収するための第2の受器を結合することができる。高濃度溶液を回収する受器は、第1の受器とみなすことができる。
【0037】
第2の受器に回収した氷粒子は溶かされ、溶けた氷の一部分は凍結濃縮カラムに再循環させることができる。
【0038】
本発明の一実施形態によると、氷粒子から希薄溶液への溶存固形物の物質移動を効果的に行うため、氷粒子が上方向にゆっくりと移動するようにその移動を助ける手段を提供することができる。この移動を助ける手段は、スクリュー・タイプのコンベヤ、穴付きスクリュー、または上向きに流れる小さな気泡であってもよい。
【0039】
以上の記載から、本発明の装置では、多段階の凍結濃縮を単一のカラムで実現できることがはっきりと理解されるだろう。
【0040】
以下の段落で、本発明についてその一実施形態による図を参照しながら説明する。これらは限定の意味で解釈すべきではない。
【0041】
図1は、本発明の一実施形態に係る希薄溶液を濃縮するための装置の例示的な図である。図1から分かるように、希薄溶液を濃縮するための装置は、垂直に配置された凍結濃縮カラム(1)を有する。凍結濃縮カラム(1)は、上端部(2)および下端部(3)を有する。凍結濃縮カラム(1)は、濃縮する希薄溶液を供給するための入口(4)を有する。図1には、凍結濃縮カラム(1)の上端部(2)の近傍に設けられた入口(4)が示されている。しかしながら、入口(4)は、希薄溶液が下端部(3)の方に移動するように、上端部(2)と下端部(3)の間の任意の適当な中間位置に設けてもよい。この凍結濃縮カラム(1)に希薄溶液を供給するための入口(4)に、希薄溶液を入れるのに適した液溜め(5)を結合することができる。
【0042】
希薄溶液を凍結するためのカラム(1)の下端部(3)の近傍には、冷却ユニットが設けられる。入口(4)は、冷却ユニットの上方、または希薄溶液の凍結が行われる領域の上方に配置するべきであることがはっきり理解されるだろう。
【0043】
図1、図2および図3を参照すると、凍結濃縮カラム(1)の下端部の近傍に、冷媒を循環させるためのジャケット領域(6)を形成することができる。任意の適当な冷却ユニ
ットが使用可能である。冷却ユニットは、蒸発器(7)、圧縮器(8)、凝縮器(7)および膨張弁(8)を有する。冷却ユニットには、任意の適当な冷媒を使用することができる。希薄溶液はジャケット領域(6)のところでカラム(1)の壁と接触し、カラム(1)の内側に氷が析出する。
【0044】
カラム(1)の内部には、スクラッパ(9)が設けられる。スクラッパ(9)は、カラム(1)の内部に形成する氷を破砕するように配置される。カラム内に形成する氷を破砕することにより、ミクロンサイズの氷粒子が生成される。スクラッパはブレードの形にすることができる。ブレードは、モータ(11)により回転可能なシャフト(10)に取付けられる。スクラッパ(9)と氷形成領域の間に小さな間隙が設けられる。カラム(1)に形成される氷を破砕するためのスクラッパ(9)の動作は、連続的であっても間欠的であってもよい。スクラッパ(9)の動作は、カラム(1)の内部に形成する氷に引っ掛からないように構成することができる。
【0045】
カラム(1)に形成された氷粒子には、上端部(2)の方へ上向きに移動する傾向がある。しかしながら、効果的な物質移動を行うには、氷粒子は上方向にゆっくりと移動することが望ましい。したがって、図1に示すように、カラム(1)の所定の長さにわたって移動するスクリュータイプのコンベヤ(12)が、カラムの内部に設けられる。スクリュー・コンベヤ(12)はシャフト(13)によって駆動され、このシャフトはモータ(14)が動力源となる。
【0046】
典型的なスクリュー・コンベヤの設計は、小さな氷粒子が徐々に上向きに移動し、温度勾配がより大きいゾーンに入るタイミングによって決まる。したがって、氷の中の溶質濃度が小さくなったタイミングで、スクリュー・コンベヤを使用して、形成された氷をシステムから取り除くことが重要である。
【0047】
下端部(3)の近傍のジャケット領域(6)の下には、高濃度溶液を回収するために第1の出口(15)が設けられる。この第1の出口(15)には、高濃度溶液を受けるための第1の受器(16)が結合される。
【0048】
カラム(1)の上端部(2)の近傍には、氷粒子を回収するために第2の出口(17)が設けられる。コンベヤ(12)は、氷粒子を回収して第2の出口(17)の方に移動させるように設計可能である。第2の出口(17)には、氷粒子を受けるための第2の受器(18)が結合される。回収された氷粒子の一部分は溶かすことができ、ポンプ(19)を介して入口(4)からカラム(1)に再供給することができる。
【0049】
図面および特定の実施形態を参照ながら本発明について説明するが、この説明は、限定的な意味で解釈するものではない。本発明の説明を参照することにより、当技術分野の技術者には様々な本発明の代替実施形態が明らかになるだろう。したがって、かかる代替実施形態は本発明の一部をなすことが企図される。
【0050】
例1:
初期体積200mlの1%のブドウ糖水溶液を、上記で説明したシステムへ、供給速度30ml/時で送った。カラムの温度は最初25℃に維持した。表1には、このシステムを120時間稼働させたときに溶質の濃度が50%上昇したことが示される。
【0051】
【表1】

【0052】
例2:
初期体積400mlの5%のブドウ糖水溶液を、上記で説明したシステムへ、供給速度30ml/時で送った。カラムの温度は最初25℃に維持した。プロセスが進行すると、液体中の糖類の濃度は約59%にまで上昇した。したがって、本発明により液体を濃縮することが可能である。
【0053】
【表2】

【0054】
例3:
5%のNaCl溶液を濃縮カラムへ供給速度30ml/分で送った。最初の供給の最初の温度は25℃である。プロセスが進行すると、この液体のNaCl濃度は2時間以内に約25%上昇した。
【0055】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
希薄溶液を濃縮するための方法であって、
(a)濃縮する希薄溶液を、垂直の凍結濃縮カラムの下端部の方へ下方向に移動するように前記凍結濃縮カラムに供給するステップと、
(b)前記凍結濃縮カラムの前記下端部の近傍に、局所的なミクロンサイズの凍結氷粒子を前記凍結濃縮カラムの上端部の方へ移動するように生成するステップと、
(c)前記凍結濃縮カラムの前記上端部の近傍で氷粒子を回収するステップと、
(d)前記ステップ(c)で回収した氷粒子を溶かし、その後、その液体の一部分を前記凍結濃縮カラムの前記下端部の方に移動するように前記凍結濃縮カラムに再循環させるステップと、
(e)溶存固形物の所望の濃度が達成されるまで、前記溶存固形物の濃縮物と水溶液を前記凍結濃縮カラムの前記上端部と前記下端部の近傍にそれぞれ分別するために前記ステップ(a)〜(d)を繰り返すステップと、
(f)前記凍結濃縮カラムの前記下端部から前記濃縮物を得るステップと、を含む方法。
【請求項2】
希薄溶液を濃縮するための装置であって、
(a)上端部と下端部とを有する垂直に配置された凍結濃縮カラムであって、濃縮する前記希薄溶液を供給するための入口を有し、前記希薄溶液が前記凍結濃縮カラムの前記下端部の方へ下方向に移動するように前記入口が配置される凍結濃縮カラムと、
(b)前記凍結濃縮カラムの前記下端部の近傍で局所的な凍結を引き起こすように前記凍結濃縮カラムに接続された冷却ユニットと、
(c)前記局所的な凍結の領域においてミクロンサイズの氷粒子を生成する手段と、
(d)前記凍結濃縮カラムの第1の出口に結合された、高濃度溶液を回収するための第1の受器であって、前記第1の出口が前記反応器チャンバの前記下端部の近傍に配置される第1の受器と、
(e)前記凍結濃縮カラムの第2の出口に結合された、前記ミクロンサイズの氷粒子を回収するための第2の受器であって、前記第2の出口が前記凍結濃縮カラムの前記上端部の近傍に配置される第2の受器と、を備える装置。
【請求項3】
前記ミクロンサイズの氷粒子を生成する手段が、スクラッパまたはスパージャーである、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記凍結濃縮カラムが、前記凍結濃縮カラムの上端部へ向かう氷粒子の移動を助ける手段を備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記氷粒子の移動を助ける手段が、スクリュータイプのコンベヤ、または穴付きスクリューである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記凍結濃縮カラムの入口が第2の受器と結合され、液体の一部分が前記第2の受器から前記凍結濃縮カラムへと供給される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記スクラッパが、モータによって回転可能なシャフトに取り付けられたブレードを備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−530303(P2010−530303A)
【公表日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−512801(P2010−512801)
【出願日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001606
【国際公開番号】WO2008/155640
【国際公開日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(509267074)ナーガールジュナ エネジー プライベート リミテッド (1)