説明

帯板材の接合構造

【課題】、帯板材を面一な状態で強力に接合できるとともに、防水効果にも優れた接合構造。
【解決手段】帯板部1の一側の裏側に突縁2を直角に形成し、他側の裏側には挟持溝3をそれぞれ形成した複数の帯板材aを、隣り合う帯板材aのうち一方の帯板材aの挟持溝3の外側に形成した溝壁3aを、他方の帯板材aの突縁2が差し込まれた状態でかしめて挟持させて接合するとともに、上記挟持溝3の外側の溝壁3aと上記突縁2との間には軟質のパッキン17あるいはコーキング材22を配置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯板部の一側の裏側に突縁を直角に形成し、他側の裏側には挟持溝をそれぞれ形成した複数の帯板材を、防水性を確保しつつ接合する帯板材の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、標識板や掲示板のような表面が平坦な大型の板状体は、大型の一枚板かあるいは小さな板材を接合した複合板によって構成されている。一枚板の場合、表面に凹凸がなく、その上に印刷フィルム等を貼着しても一体の連続面であるから仕上がりが綺麗である。その反面、一枚板の強度は板厚によって確保される場合が多いから、高強度の板状体は単価が高くなる。これに対し、複合板の場合は、単価が廉価であるほか、強度も板厚ではなくリブ出しによって確保することができるから、全体としてのコストも低く抑えることができる。その反面、複合板は複数の板材を接合した構成であるから、隣り合う板材間に凹凸が出やすく、印刷物を貼ると、板材の境界に凹凸が生じ、印刷物自体が美しくても、その美しさが損なわれてしまうという問題がある。
【0003】
ところが、複合板には、上記欠点があるものの、コストが安く、大型の設備は不要であり、全体の大きさを自由に調整できる、アルミニウムであればアルマイト処理は形材の方が板材よりも経済的である等の利点があるという理由から、表面が平坦な大型の板材を形成するには、凹凸の少ない板状体の複合板が望まれている。
【0004】
従来、帯板材を接合する構造として、帯板材の一側端に略逆J形状をなす下はぜ部を形成し、他側端には前記したはぜの先端に略V形状をなす係止折曲片を付設した上はぜ部を形成して、両はぜ部を重ねて潰すことで帯板材を接合するものは、例えば特許文献1により知られており、また、接合する帯板材の一側端に第1の嵌合片を設け、他側端に第1の嵌合片を抱え込む第2の嵌合片を設けて、これら嵌合片を嵌合させた後、両社の当接部に設けた孔にねじを締めこんで、帯板材同士を密着させるようにするものは、例えば特許文献2により知られている。
【特許文献1】特開平3−221655号
【特許文献2】実公平7−17846号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらのものは、接合の際に帯板材の表面を揃えることができないため、表面に不可避的に段差を生じたり、ネジの緩みが生じたりするという欠点があるほか、たとえば湾曲した帯板材を接合して排水管を形成したり、箱型の電照式のサインボードの裏板を複数の帯板材の接合によって構成したり、あるいは複数の帯板材の接合によって防水壁を形成するというような場合には、接合部から水が浸入するのを防止しなければならない。
【0006】
本発明は上記問題点を解消し、帯板材を面一状態で強力に接合できるとともに、防水効果にも優れた帯板材の接合構造を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、帯板部の一側の裏側に突縁を直角に形成し、他側の裏側には挟持溝をそれぞれ形成した複数の帯板材を、隣り合う帯板材のうち一方の帯板材の挟持溝の外側に形成した溝壁を、他方の帯板材の突縁が差し込まれた状態でかしめて挟持させて接合するとともに、上記挟持溝と上記突縁との間には軟質のパッキンを配置したことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、上記挟持溝の外側の溝壁と上記突縁との間に軟質のパッキンを配置したことを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、上記挟持溝の外側の溝壁と上記突縁との間に軟質のパッキンを配置することに代え、上記帯板部の裏面と上記突縁の先端との間に上記パッキンを配置したことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、上記挟持溝の外側の溝壁と上記突縁との間に軟質のパッキンを配置することに代え、上記突縁の外側面には凹溝、上記挟持溝の内側の溝壁の内面には上記凹溝に嵌まり合う嵌合凸部を形成し、上記凹溝と嵌合凸部との間に上記パッキンを配置したことを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、上記挟持溝の外側の溝壁と上記突縁との間に軟質のパッキンを配置することに代え、上記挟持溝の内側の溝壁の外側面の基部と上記突縁の外側面の基部には、互いに向き合う凹部を形成し、これらの凹部の内部に上記パッキンを配したことを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、上記挟持溝と上記突縁との間に軟質のパッキンを配置することに代え、上記挟持溝と突縁との間にコーキング材を挿入したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1および請求項2に係る発明によれば、突縁は挟持溝の外側溝壁をかしめることにより挟持されるが、パッキンはかしめにより突縁と挟持溝との間に圧縮された状態で閉じ込められる。したがって、裏側の水が外側の溝壁の外側から浸入しても、パッキンを越えて内部に進むことはできないから、良好に防水される。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、パッキンは帯板部の裏面と上記突縁の先端との間に配置されるから、かしめにより突縁の先端で圧接されることになり、水が裏側から挟持溝内に浸入する手前で確実に防水することができる。
【0015】
請求項4および請求項5に係る発明によれば、表側からの水の浸入を防止することができる。
【0016】
請求項6に係る発明によれば、コーキング材は突縁と挟持溝との間の隙間にくまなく回りこむので、防水効果は非常に高い。また、コーキング材は接着効果もあるので、これを使用することにより、突縁と挟持溝とが一体化するので、接合が強固になり、曲げ強度も向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明に係る帯板材の接合構造の実施形態について説明する。
【0018】
図1(a)は帯板材の接合構造で帯板材の接合開始時の説明図であり、同図(b)は帯板材の接合を完了した接合構造の説明図である。
【0019】
上記接合構造は、図2に示す複数の帯板材aを接合したもので、帯板材aは、帯板部1の一側の裏側に突縁2を直角に形成し、他側の裏側には挟持溝3をそれぞれ形成したアルミニウムなどの押出形材である。裏側中央には鉤型をなす1対のリブ5が対向形成されている。
【0020】
上記突縁2の外側面には凹溝6が形成され、内側面には上下2個の凹条部7が形成されている。これらの2個の凹条部7は、上記凹溝6より上および下の位置に形成されている。さらに、帯板部1の突縁2側の端部には戻り止め突起8が形成されている。この戻り止め突起8の内側には傾斜した案内面9が形成されている。
【0021】
次に、上記挟持溝3は外側の溝壁3aと内側の溝壁3bと溝底3cとから構成されている。内側の溝壁3bの内面には上記突縁2の凹溝6に嵌まり合う嵌合凸部10が形成されている。また、外側の溝壁3aの内面には上記突縁2の凹条部7に係合可能な2個の凸条部11が形成されている。さらに、外側の溝壁3aの基部には、薄肉部12が形成されている。溝底3cには、上記突縁2の先端を案内する案内部13が形成されている。
【0022】
なお、上記外側の溝壁3aは押出成形時には内側の溝壁3bに対して斜めになり、挟持溝3が開くように成形されている。
【0023】
ところで、図1(a)および図2に示されるように、挟持溝3の内側の溝壁3bの外側面の基部と上記突縁2の外側面の基部には、互いに向き合う凹部14が形成されている。そして、この凹部14より表面側では上記溝壁3bと突縁2とが密着し、凹部14より挟持溝3の奥側では上記溝壁3bと突縁2との間にわずかな隙間15が形成されるように構成されている。
【0024】
次に、上記構成の帯板材aを接合するときは、図1(a)に示されるように、挟持溝3の外側の溝壁3aの内側に軟質の筒状パッキン17を留めておき、一方の帯板材aの突縁2を他方の帯板材aの挟持溝3内に差し込む。このとき、突縁2の先端は溝底3cの案内部13により内側の溝壁3bの方に寄った位置に案内され、嵌合凸部10と凹溝6とが嵌合する。そこで、かしめ装置(図面省略)により上記外側の溝壁3aを内側に曲げると、図2に示されるように、外側の溝壁3aは薄肉部12から曲がり、その先端は戻り止め突起8の案内面9に沿って案内されて戻り止め突起8の内側に入り込むとともに、同図(b)のように強く突縁2にかしめ付けられる。このとき、外側の溝壁3aの凸条部11は突縁2の凹条部7に係合する。また、上記パッキン17は突縁2と挟持溝3との間に圧縮された状態で閉じ込められる。
【0025】
なお、上記パッキン17はシリコンゴム、ネオプレンゴム等、あるいはスポンジ状ゴム等から構成すればよい。上記パッキン17は筒状の他、中実丸形、矩形、かまぼこ形、板状のもの等が使用できる。
【0026】
上述のように、一方の帯板材aに形成した挟持溝3の外側の溝壁3aを予め開いておいて他方の帯板材aの突縁2を差し込み、上記溝壁を閉じるようにしてかしめれば容易かつ迅速に帯板材aを接合することができる。
【0027】
2枚の帯板材aの接合はかしめによるものであるから、隣り合う帯板材a同士は密着する。また、一方の帯板材aの突縁2の外側面の凹溝6と、他方の帯板材aの嵌合凸部10とが嵌り合い、さらに、一方の帯板材aの凹条部7と他方の帯板材aの凸条部11とが係合するので、両帯板材aが正しく位置決めされるから、両帯板材aは面一に保持される。したがって、一枚板のような表面状態のボードを製作することができる。また、帯板材aの数によって大小いろいろなボードを製作することができる。
【0028】
しかも、凹溝6と嵌合凸部10とが嵌合し、凸条部11と凹条部7とが係合した上でかしめを行うものであるから、2枚の帯板材aの係合は強固であり、振動や衝撃を受けても接合の緩みや外れを起こすことがない。
【0029】
また、上記突縁2の凹条部7は、上記凹溝6より上および下の位置に2個形成されているから、外側の溝壁3aをかしめたとき、この溝壁の凸条部11が上記凹条部7に強く押圧されるので、接合が強固となる。
【0030】
さらに、上記外側の溝壁3aをかしめて閉じたとき、戻り止め突起8によって元の開き状態に戻ることはできないから、接合状態は良好に保持される。
【0031】
また、挟持溝3の溝内へ突縁2を差し込むと、突縁2の先端は案内部13に案内されて所定の位置に位置決めされるので、突縁2が挟持溝3内で遊んでぐらつくことがなく、隣り合う帯板材aの面一を確保することができる。
【0032】
さらにまた、外側の溝壁3aをかしめるとき、必ず薄肉部12から曲がっていくから、かしめ作業が安定する。
【0033】
しかも、凹部14より挟持溝3の奥側では上記内側の溝壁3bと突縁2との間にわずかな隙間15が形成されるから、かしめたときに必ず上記凹部14より表面側において上記溝壁と突縁2とが強く密着することになり、帯板材の隣り合う角部16は強く接合される。このため、帯板材aの表面の面一性をより確実にすることができる。
【0034】
これに対し、挟持溝3の内側の溝壁3bと上記突縁2の外側面とが面一になるように当接するときは、成形誤差が小さく、またかしめによる変形が起きにくい、一般には成形誤差や取付誤差やかしめの誤差を考慮しないと、隣り合う帯板材aの接合部には隙間ができやすい。
【0035】
また、パッキン17は突縁2と挟持溝3との間に圧縮された状態で閉じ込められるので、裏側の水が外側の溝壁3aの外側から浸入しても、パッキン17を越えて内部に進むことはできないから、良好に防水される。
【0036】
なお、突縁2と挟持溝3の構成は上述の実施形態に限定されない。例えば、図3のように、突縁2の内側にも凹溝6を形成し、外側の溝壁3aの内側にも嵌合凸部10を形成した構成であってもよい。この場合も、パッキン17はかしめにより突縁2と挟持溝3との間に圧縮された状態で閉じ込めればよい。
【0037】
次に、パッキン17の配置は上述のように、突縁2と外側の溝壁3aとの間に限定されない。例えば、図4のように、上記帯板部1の裏面と上記溝壁3aの先端18との間に上記パッキン17を配置してもよい。この場合も、かしめ作業の前にパッキン17を上記帯板部1の裏面の戻り止め突起8の内側に留めておけばよい。
【0038】
上記構成によれば、かしめによりパッキン17は突縁2の先端に圧接されるので、上述の場合よりもさらに水が挟持溝3内に浸入する手前で防水することができる。
【0039】
なお、図5は突縁2の外側の凹溝6と嵌合凸部10とを斜めに形成するとともに、突縁2の先端を二股に形成し、挟持溝3の溝底3cには係合突起19を形成し、さらに突縁2の内側と外側の溝壁3aの内側に凸部20、21を形成した点において上述の形態とは相違している。このような構成の接合構造でも、帯板部1の裏面と上記溝壁3aの先端18との間に上記パッキン17を配置することにより防水効果を得ることができる。
【0040】
次に、パッキン17は図6に示されるように、上記凹溝6と嵌合凸部10との間に配置してもよい。この場合も、かしめにより嵌合凸部10は凹溝6内に深く嵌合するから、パッキン17も圧縮状態で閉じ込められる。したがって、表側からの水は上記パッキン17を越えては浸入することはできないため。水が裏側にまわるのを良好に防止することができる。
【0041】
さらに、パッキン17は挟持溝3の内側溝壁3bの基部と突縁2の外側面の基部に、互いに向き合うように形成された凹部14の内部に配置してもよい。
【0042】
この場合、凹部14は表側に近接しているので、表側から浸入した水は、この浅い部分で防水されるから、非常に効果的である。
【0043】
なお、パッキン17の位置は1箇所に限定されない。上記図6のように、数箇所に配置してもよい。パッキン17の数が多ければそれだけ防水効果も高くなる。
【0044】
ところで、防水手段は必ずしもパッキン17に限定されない。コーキング材であってもよい。図7(a)(b)に示されるように、コーキング材22はかしめ作業終了後に挟持溝3と突縁2との間に挿入すればよい。このようなコーキング材22としては、シリコン系やブチル系のコーキング材が使用できる。コーキング材22は図のように突縁2と挟持溝3との間の全面に施す必要はなく、突縁2の外側又は内側だけまたは突縁2あるいは挟持溝3の内側凹溝の一部に施してもよい。コーキング材22は隙間にくまなく回りこむので、防水効果は非常に高い。
【0045】
コーキング材22は接着効果もあるので、これを使用することにより、突縁2と挟持溝3とが一体化するので、接合が強固になり、曲げ強度も向上する。
【0046】
上述の接合構造によれば、複数の帯板材を接合させることにより、防水効果を必要とする排水管などの管状体や防水壁、サインボード等の面状体を得ることができる。
【0047】
なお、帯板材は図2に示したように、一側に突縁、他側に挟持溝を形成したものに限定されない。たとえば、両側に突縁を形成した帯板材と両側に挟持溝を形成した帯板材とを結合する場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】(a)(b)はそれぞれ帯板材の接合構造で帯板材の接合開始時および接合完了状態の説明図である。
【図2】帯板材の側面図である。
【図3】上記接合構造の他の実施形態の断面図である。
【図4】上記接合構造のさらに他の実施形態の断面図である。
【図5】上記接合構造の別の実施形態の断面図である。
【図6】上記接合構造のさらに別の実施形態の断面図である。
【図7】(a)(b)はコーキング材を施した状態の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0049】
a 帯板材
1 帯板部
2 突縁
3 挟持溝
17 パッキン
22 コーキング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯板部の一側の裏側に突縁を直角に形成し、他側の裏側には挟持溝をそれぞれ形成した複数の帯板材を、隣り合う帯板材のうち一方の帯板材の挟持溝の外側に形成した溝壁を、他方の帯板材の突縁が差し込まれた状態でかしめて挟持させて接合するとともに、上記挟持溝と上記突縁との間には軟質のパッキンを配置した
ことを特徴とする帯板材の接合構造。
【請求項2】
上記挟持溝の外側の溝壁と上記突縁との間に軟質のパッキンを配置したことを特徴とする請求項1に記載の帯板材の接合構造。
【請求項3】
上記挟持溝の外側の溝壁と上記突縁との間に軟質のパッキンを配置することに代え、上記帯板部の裏面と上記突縁の先端との間に上記パッキンを配置したことを特徴とする、請求項2に記載の帯板材の接合構造。
【請求項4】
上記挟持溝の外側の溝壁と上記突縁との間に軟質のパッキンを配置することに代え、上記突縁の外側面には凹溝、上記挟持溝の内側の溝壁の内面には上記凹溝に嵌まり合う嵌合凸部を形成し、上記凹溝と嵌合凸部との間に上記パッキンを配置したことを特徴とする、請求項2に記載の帯板材の接合構造。
【請求項5】
上記挟持溝の外側の溝壁と上記突縁との間に軟質のパッキンを配置することに代え、上記挟持溝の内側の溝壁の外側面の基部と上記突縁の外側面の基部には、互いに向き合う凹部を形成し、これらの凹部の内部に上記パッキンを配したことを特徴とする、請求項2に記載の帯板材の接合構造。
【請求項6】
上記挟持溝と上記突縁との間に軟質のパッキンを配置することに代え、上記挟持溝と突縁との間にコーキング材を挿入したことを特徴とする、請求項1に記載の帯板材の接合構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−14997(P2007−14997A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−200514(P2005−200514)
【出願日】平成17年7月8日(2005.7.8)
【出願人】(000250432)理研軽金属工業株式会社 (89)