説明

帯状ガラスを切断する方法および装置

【課題】所望の属性を有する板ガラスを許容可能な収率で製造する方法において、帯状ガラスの安定性を向上させる。
【解決手段】連続した帯状ガラスを切断する方法は、帯状ガラスの速度方向V1に往復動可能な柔軟なリンケージを介してロボットツーリングのアクチュエータATRに接続された、サクションカップやクランプ等の縁部拘束器ER1を用いる。柔軟なリンケージを用いることで、予め形成されたスコア線に沿った曲げおよび分離の際に、帯状ガラスが横方向に引っ張られたり押されたりする際のピーク引張り力が低減される。本発明は、垂直ダウンドロー成形法の延伸の底部において有利に用いられ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、板ガラス製造装置および方法に関する。特に、本発明は、板ガラスが曲げられて分離される際に板ガラスを取り扱う方法および装置に関する。本発明は、例えば、フュージョン・ダウンドロー法やスロット・ダウンドロー法等のダウンドロー法を用いての、LCDガラス基体に適した板ガラスの製造に有用である。
【背景技術】
【0002】
フュージョン・ダウンドローは、液晶ディスプレイ(LCD)用ガラス基体や他のオプトエレクトロニクスデバイスとしての使用に適した薄く精密な板ガラスを製造するための、米国ニューヨーク州コーニングに所在のコーニング社(Corning Incorporated)によって開発された主要な技術である。このプロセスでは、溶融ガラス流を、根底部と称されるラインにおいて収束する2つの側面を有するアイソパイプと称される成形トラフに導入し、アイソパイプのトラフの堰と称される両上面の上に溶融ガラスを越流させて、2つの溶融帯状ガラスとしてアイソパイプの両側面に沿って下に流れさせ、それらを根底部において接合および融合させて、単一の帯状ガラスを形成し、次にそれを根底部の下方において下方に延伸して冷却し、所望の寸法を有する板ガラスを形成する。根底部の下方のゾーンでは、帯状ガラスは延伸されながら略垂直方向に下に移動し、粘性の状態から粘弾性、そして最終的には略弾性の状態へと冷却される。次に、弾性の帯状ガラスは個々の板ガラスに切断され、更に縁部の丸み付けや研磨等の仕上げを施され、梱包されて、TFTやカラーフィルター用の基体として用いられるためにLCDパネル製造業者に出荷される。アイソパイプの下方における帯状ガラスの切断は、一般的に、帯状ガラスの表面のスコアリングを含み、その後、スコア線に沿った曲げにより、帯状ガラスから個々の板ガラスが分離され、移送される。
【0003】
板ガラスを製造するためのフュージョン・ダウンドロー法の長所の1つとしては、板ガラスの品質領域は大気に晒されるのみで、アイソパイプの表面や成形装置等といった固体の材料に接触しないため、板ガラスの表面品質が高いことがある。このプロセスは、3000mmもの大きな幅と約0.6mmの厚さとを有する板ガラスの製造に良好に用いられている。
【0004】
民生用電子機器市場におけるLCDのサイズは、所望される画像品質と共に、過去十年ほどで着々と増加している。これにより、幅が大きいガラス基体の要求が加速され、縁部の反りや波打ち、板ガラスの反り、表面の波打ちや粗さ、厚さの均一性、応力等といった、板ガラスの品質に対する要求がますます厳密になっている。更に、消費者はより軽量の電子機器に興味を示しており、そのためには500μm、400μm、300μmまたは更に薄い厚さの、より薄いガラス基体が必要である。
【0005】
フュージョン・ダウンドロー法を用いてサイズが大きく且つ/または薄い板ガラスを製造することは、容易な仕事ではない。本発明者ら等の専門家は、何年にも渡って、板ガラスの所望の属性に影響し得る多くのプロセスパラメータに関する見識を得てきた。例えば、ガラスが略弾性であるときに帯状ガラスから板ガラスを分離すると、分離線の上方で帯状ガラスの望ましくない動きが生じ、それが粘弾性ゾーン、更には粘性ゾーンにまで伝搬して、これらのゾーンで形成される板ガラスの属性に影響し得ることが発見された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、所望の属性を有する板ガラスを許容可能な収率で製造するための、帯状ガラスの安定性を向上させた装置および方法が依然として必要とされいる。本発明は、上記および他の必要性を満たすものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書には本発明の幾つかの態様が開示される。これらの態様は互いに重複してもしなくてもよいことを理解されたい。従って、一つの態様の一部が別の態様の範囲に含まれることもあり、その逆もある。
【0008】
各態様は多くの実施形態で示され、それらの実施形態は1以上の具体的な実施形態を含み得る。これらの実施形態は互いに重複してもしなくてもよいことを理解されたい。従って、1つの実施形態またはその具体的な実施形態が、別の実施形態またはその具体的な実施形態の範囲に含まれることも含まれないこともあり、その逆もある。
【0009】
本発明の第1の態様は、目的の板ガラスを製造する方法に関し、該方法は、
(A)弾性部分を有する先駆体帯状ガラスを設ける工程であって、弾性部分は厚さT1と、幅W1と、速度V1で移動する目標点TPを有する第1の主要な表面S1と、S1の反対側にある第2の主要な表面S2とを有し、S1は第1の周辺領域PR1と、第2の周辺領域PR2と、第1の中心領域CR1とを有し、S2は第3の周辺領域PR3と、第4の周辺領域PR4と、第2の中心領域CR2とを有し、PR1はPR3の反対側にあり、PR2はPR4の反対側にあり、CR1はCR2の反対側にある、工程と、
(B)地面に対して略静止した回転軸を有する第1の対の縁部ローラFR1を、第1の縁部ローラ位置においてPR1およびPR3と係合させる工程と、
(C)地面に対して略静止した回転軸を有する第2の対の縁部ローラFR2を、第2の縁部ローラ位置においてPR2およびPR4と係合させる工程と、
(D)V1と略等しい速度で移動する第1の縁部拘束器ER3を、目標点TPを通りV1に対して略垂直な線SLの下流の第1の縁部拘束器位置において、PR1およびPR3の少なくとも一方と接触させる工程と、
(E)V1と略等しい速度で移動する第2の縁部拘束器ER4を、線SLの下流の第2の縁部拘束器位置において、PR2およびPR4の少なくとも一方と接触させる工程と、
(F)第1の縁部拘束器位置および第2の縁部拘束器位置の下流において、S1上に、線SLに沿った横方向のスコア線を形成する工程と、
(G)スコア線の下方において、弾性部分に対して垂直且つS1からS2に向かう方向の折り取り力F1を弾性部分に加えると共に、スコア線の上方において、F1と反対の方向の支持力F2を弾性部分に加えることにより、弾性部分をスコア線に沿って折り取り、スコア線の下方において目的の板ガラスを得る工程とを備え、
工程(G)において、F1は、本質的に抵抗無くV1の方向に往復動可能な柔軟なリンケージを介してアクチュエータによって作動されるER3および/またはER4によって加えられる。
【0010】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、V1は、重力ベクトルに対して本質的に平行である。
【0011】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、V1は、重力ベクトルに対して本質的に垂直である。
【0012】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、工程(G)において、目的の板ガラスの重力以外にV1と同じ方向の最大限の力F3がスコア線の下方において弾性部分に加えられ、0≦F3≦400ニュートンであり、特定の実施形態では0≦F3≦300ニュートンであり、特定の実施形態では0≦F3≦200ニュートンであり、特定の実施形態では0≦F3≦100ニュートンであり、特定の実施形態では0≦F3≦80ニュートンであり、特定の実施形態では0≦F3≦60ニュートンであり、特定の実施形態では0≦F3≦50ニュートンであり、特定の実施形態では0≦F3≦40ニュートンであり、特定の実施形態では0≦F3≦30ニュートンであり、特定の実施形態では0≦F3≦20ニュートンであり、特定の実施形態では0≦F3≦10ニュートンであり、特定の実施形態では0≦F3≦5ニュートンであり、特定の実施形態では0≦F3≦3ニュートンであり、特定の実施形態では0≦F3≦2ニュートンである。
【0013】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、F3は、ER3および/またはER4によって帯状ガラスに加えられる。
【0014】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、0.9Vset≦V1≦1.1Vsetであり、ここでVsetは所定の定数である。
【0015】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、工程(A)が、(A1)速度V1を略連続的に測定する工程を更に含み、工程(D)および(E)において、ER3およびER4の速度が略連続的にV1と同期される。
【0016】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、本方法は、
(H)V1と略等しい速度で移動する第3の縁部拘束器ER1を、線SLの上流の第3の拘束器位置においてPR1およびPR3の少なくとも一方と接触させる工程と、
(I)V1と略等しい速度で移動する第4の縁部拘束器ER2を、線SLの上流の第4の拘束器位置においてPR2およびPR4の少なくとも一方と接触させる工程とを更に備える。
【0017】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、工程(H)および(I)は略同期して行われ、該工程(H)および(I)は、工程(D)および(E)より前に、工程(G)において行われる。
【0018】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、本方法は、工程(H)および(I)の後に、
(J)第3の縁部拘束器によって、V1に対して垂直な緊張力F5を弾性部分に加えると共に、第4の縁部拘束器によって、F5とは反対の方向の緊張力F6を弾性部分に加える工程を更に備える。
【0019】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、本方法は、
(K)第3の縁部拘束器によって、V1とは反対の方向の緊張力F7を弾性部分に加えると共に、第4の縁部拘束器によって、V1とは反対の方向の緊張力F8を弾性部分に加える工程を更に備える。
【0020】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、工程(K)は少なくとも工程(G)において行われる。
【0021】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、工程(K)は工程(F)において行われる。
【0022】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、本方法は、工程(G)の後に、
(L)ER1およびER2を弾性部分から離す工程を更に備える。
【0023】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、工程(D)および工程(E)は同期して行われる。
【0024】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、S1は中心線CL1を有し、工程(F)および(G)において、ER3およびER4はCL1に関して略対称に配置される。
【0025】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、S1は中心線CL1を有し、工程(F)および(G)において、ER1およびER2はCL1に関して略対称に配置される。
【0026】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、工程(F)および(G)において、ノーズ部がスコア線の近傍でS2と接触する。
【0027】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、工程(G)において、ノーズ部は、PR3からPR4へと延びS2と接触してスコア線を覆う平坦なノーズバーである。
【0028】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、工程(G)において、ノーズ部は、スコア線の近傍でS2と接触し、ノーズ部は、S2の曲率を実質的に変形することなくS2の曲率に沿うように調節される。
【0029】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、ER3およびER4はサクションカップ、クランプおよびローラから選択される。
【0030】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、ER1、ER2およびノーズ部は、垂直方向に往復動可能な台に固定される。
【0031】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、先駆体帯状ガラスは、V1に対して平行な速度V2で移動する粘弾性ゾーンを、スコア線の上方10メートル以内、特定の実施形態では5メートル以内、他の実施形態では3メートル以内、他の実施形態では2メートル以内、他の実施形態では1メートル以内、他の実施形態では0.5メートル以内に更に有する。
【0032】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、先駆体帯状ガラスは、粘弾性ゾーンの上方5メートル以内、特定の実施形態では3メートル以内、特定の実施形態では2メートル以内、特定の実施形態では1メートル以内に、粘性ゾーンを更に有する。
【0033】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、弾性ゾーンのW1/T1比は少なくとも1000、特定の実施形態では少なくとも2000、他の特定の実施形態では少なくとも3000、他の特定の実施形態では少なくとも5000である。
【0034】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、弾性ゾーンのT1は、最大で1.0mm、特定の実施形態では最大で0.8mm、特定の実施形態では最大で0.7mm、他の特定の実施形態では最大で0.6mm、特定の実施形態では最大で0.4mm、他の特定の実施形態では最大で0.3mmである。
【0035】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、工程(I)の後に工程(D)、(E)、(F)、(G)および(H)が繰り返され、第2の目的の板ガラスが製造される。
【0036】
本発明の第1の態様の特定の実施形態では、工程(A)は、
(A1)溶融ガラスを設け、
(A2)フュージョン・ダウンドロー法またはスロット・ダウンドロー法によって、溶融ガラスから、連続した帯状ガラスを形成し、
(A3)連続した帯状ガラスを冷却して先駆体帯状ガラスを形成することを含む。
【0037】
本発明の第2の態様は、弾性部分を有する連続して移動する先駆体帯状ガラスから目的の弾性板ガラスを製造する装置に関し、弾性部分は第1の主要な表面S1と、該S1の反対側にある第2の主要な表面S2とを有し、S1は第1の周辺領域PR1と、第2の周辺領域PR2と、第1の中心領域CR1とを有し、S2はPR1の反対側にある第3の周辺領域PR3と、PR2の反対側にある第4の周辺領域PR4と、CR1の反対側にある第2の中心領域CR2とを有する。この装置は、
(I)地面に対して略静止した軸を有し、速度V1を先駆体帯状ガラスに与えるためにPR1、PR3、PR2およびPR4と係合可能な少なくとも二対の固定された回転縁部ローラFR1およびFR2と、
(II)表面S1上に略水平なスコア線を設けることが可能なスコアリング装置と、
(III)(a)先駆体帯状ガラスを安定させるためにS2と接触して係合し、(b)V1と略等しい速度で移動し、(c)先駆体帯状ガラスが曲げられる際に、S1に対して垂直且つS2からS1へと向かう支持力F2を与えるよう構成されたノーズ部と、
(IV)(a)スコア線の下方においてPR1およびPR3の少なくとも一方と接触し、(b)V1と略等しい速度で移動し、(c)S1に対して垂直且つF4とは反対の方向の折り取り力F1の少なくとも一部を弾性部分に与えるよう構成された第1の縁部拘束器ER3と、
(V)(a)スコア線の下方においてPR2およびPR4の少なくとも一方と接触し、(b)V1と略等しい速度で移動し、(c)折り取り力F1の少なくとも一部を与えるよう構成された第2の縁部拘束器ER4と、
(VI)本質的に抵抗無くV1の方向に往復動可能な柔軟なリンケージを介してER3および/またはER4に接続されたアクチュエータと、
(VII)(a)スコア線の上方においてPR1およびPR3の少なくとも一方と接触し、(b)V1と略等しい速度で移動し、(c)速度V1に対して垂直な緊張力F5を弾性部分に与えるよう構成された、必要に応じて設けられる第3の縁部拘束器ER1と、
(VIII)(a)スコア線の上方においてPR2およびPR4の少なくとも一方と接触し、(b)V1と略等しい速度で移動し、(c)速度V1に対して垂直且つF1とは反対の方向の緊張力F6を弾性部分に与えるよう構成された、必要に応じて設けられる第4の縁部拘束器ER2とを備える。
【0038】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、V1は重力ベクトルに対して略平行である。
【0039】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、V1は重力ベクトルに対して略垂直である。
【0040】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、ER1およびER2が存在する場合に、ER1およびER2並びにノーズ部の全てが、V1と略等しい速度で移動する共通の台に取り付けられる。
【0041】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、ER3、ER4、ER1およびER2はサクションカップまたはクランプである。
【0042】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、ER3およびER4は、同期して先駆体帯状ガラスと接触するよう構成される。
【0043】
本発明の第2の態様の特定の実施形態では、ER3、ER4、ER1およびER2は同期して先駆体帯状ガラスと接触するよう構成される。
【発明の効果】
【0044】
本開示の一以上の実施形態および/または態様は、以下の長所の一以上を有する。第1に、縁部拘束器および曲げ/分離アクチュエータに接続された、実質的に抵抗無く帯状ガラスの移動方向に往復動可能な柔軟なリンケージを設けることにより、縁部拘束器によって帯状ガラスに及ぼされるピーク引張り力を大きく低減および/または解消でき、より安定した曲げおよび分離プロセスとすることができる。第2に、曲げおよび分離プロセスの安定性を高めることにより、先駆体帯状ガラスの粘弾性ゾーンおよび更には粘性ゾーンにまで上に向かって伝搬し得る下流の板ガラスの動きが減少し、応力、応力分布、厚さおよび厚さのばらつき等の一貫した属性を有する板ガラスとすることができる。第3に、大きな板幅若しくは薄い板厚、またはそれらの両方によって特徴付けられる高い可撓性を有する板ガラスに関して、良好な民生品用板ガラス製造の障害の1つとなるのは、板ガラスの動きおよび曲率の不安定性、更にはボウ・ポッピング(bow-popping)にも起因する、BODにおける収率である。本発明は、そのような薄く且つ/または幅広の製品の製造を容易にするものであり得る。第4に、帯状ガラスに及ぼされるピーク引張り力を低減することにより、固定ローラに加わるピークの力が実質的に低減され、これによってロールの滑りが減少し、ロールの摩耗が減少し、ロールの寿命が長くなる。最後に、縁部拘束器の柔軟なリンケージは比較的低コストで既存の製造ラインに組み込むことができ、或いは新たなラインに設置できるので、本発明は実施が容易である。
【0045】
本発明の更なる特徴および長所は以下の詳細な説明で述べられ、部分的には、その説明から当業者に自明であり、或いは、明細書、特許請求の範囲および添付の図面に記載されているように本発明を実施することによって認識される。
【0046】
上記の一般的な説明および以下の詳細な説明は、単に本発明を例示するものであり、特許請求される本発明の性質および特性を理解するための概観や骨組みの提供を意図するものであることを理解されたい。
【0047】
添付の図面は、本発明の更なる理解を提供するものであり、本明細書に組み込まれてその一部を構成するものである。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明のプロセスの一実施形態に従って動作する装置の、表面S1側から見た平面図を示す概略図
【図2】図1に示されているものと同じ装置の、表面S2側から見た平面図を示す概略図
【図3】図1に示されているものと同じ装置の側面図を示す概略図
【図4】形状適応型のノーズ部を用いた場合の、本発明のプロセスの一実施形態に従って動作する帯状ガラスの断面を示す概略図
【図5】平坦なノーズ部を用いた場合の、本発明のプロセスの一実施形態に従って動作する帯状ガラスの断面を示す概略図
【図6】V1の方向に往復動可能な柔軟なリンケージを介してアクチュエータに接続された3つのサクションカップの配列を有する縁部拘束器の側面を示す概略図
【図7】曲げおよび分離工程における図3の同じ装置の側面を示す概略図
【図8】複数のスコアリング、曲げおよび分離サイクルにおいて帯状ガラスに及ぼされる動的な力を示す図
【図9】複数のスコアリング、曲げおよび分離の製造サイクルにおける引張り力の変化を示す図
【発明を実施するための形態】
【0049】
特に示さない限り、明細書および特許請求の範囲で用いられる構成要素の重量パーセントおよびモルパーセント、寸法、および特定の物理的特性の値等を表す全ての数字は、全ての事例において「約」という語で修飾されるものと理解されたい。また、明細書および特許請求の範囲で用いられる正確な数値は、本発明の追加的な実施形態を構成するものであることも理解されたい。実施例に開示される数値の正確さを確実にするための努力がなされてきた。しかし、測定されたどの数値も、本質的に、各測定技術に見出される標準偏差から生じる幾分の誤差を含み得る。
【0050】
本明細書において、本発明の説明および特許請求の範囲の記載で用いられる不定冠詞の「a」または「an」は「少なくとも1つ」を意味するものであり、特に明示しない限り「1つのみ」と限定されるべきではない。従って、例えば「サクションカップ」とは、特に明示しない限り、1つ、2つまたはそれ以上のそのようなサクションカップを有する実施形態を含むものである。
【0051】
上述のように、本発明に従って処理される先駆体帯状ガラスは、国際公開第03/014032号、国際公開第05/081888号の各パンフレット(それらの関連する内容の全体を参照して本願明細書に組み込む)等に開示されているような、アイソパイプを用いたフュージョン・ダウンドロー法によって製造され得る。或いは、先駆体帯状ガラスは、溶融ガラス流が容器のスロットを通って流れて粘性の帯状ガラスを形成し、この帯状ガラスが冷却され且つ下に向かって延伸されて剛性で弾性の板ガラスを形成する、スロット・ダウンドローによって製造され得る。更に、先駆体帯状ガラスは、予備成形された板ガラスを加熱炉内で粘性および/または粘弾性状態まで再加熱することによって形成されることも考えられ、それから帯状ガラスを下方に延伸して厚さを減少させ、弾性状態になるよう冷却する。更に、先駆体帯状ガラスは、溶融ガラス塊又は厚い板ガラスを圧延する等の圧延プロセスによって形成されることも考えられ、それからダウンドロー、薄化および冷却が行われる。従って、本発明の特に有利な実施形態では、先駆体帯状ガラスは、粘性ゾーンVZ、粘弾性ゾーンVEZおよび弾性ゾーンEZを有する。しかし、リドロー・ダウンドロー法等の特定の実施形態では、先駆体帯状ガラスは、粘性ゾーンVZは有さず、粘弾性ゾーンVEZおよび弾性ゾーンEZのみを有することがあり、更に、精密垂直板ガラス切断プロセス等の他の実施形態では、連続した先駆体帯状ガラスは、粘弾性ゾーンVEZや粘性ゾーンを有しずに、弾性ゾーンEZのみを有することがある。垂直ダウンドロー法では、先駆体帯状ガラスの弾性部分は、重力ベクトルに対して平行な速度V1で下に向かって移動する。弾性部分が、V1に加えて、重力ベクトルに対して垂直な非ゼロ成分V2を有する速度で移動することもあり得るが、多くの実施形態においては、弾性部分の合計の速度ベクトルはV1に等しいのが望ましく、従って、弾性部分は略下方のみに移動するのが望ましい。これらの実施形態では、全体的な帯状ガラス形状および形状の変化に対する重力の影響は、V2≠0の場合と比較して小さい。
【0052】
更に、本発明のプロセスおよび方法は、フロート成形法等の水平ガラス成形法において形成された帯状ガラスを切断するために用いられ得ることも考えられる。垂直ダウンドロー法においては、V1は重力ベクトルに対して略平行であり、水平成形法においては、V1は重力ベクトルに対して略垂直であるか、または重力ベクトルに対して90°以外の角度を有するものであり得る。
【0053】
本発明を、添付の図面に示す垂直ダウンドロー成形法に関する具体的な実施形態を参照して更に説明する。なお、特許請求される本発明は、図示されている実施形態のみに限定されるべきではない。
【0054】
従来、BOD領域では、帯状ガラスは、板ガラス分離装置によって個々の板ガラスに分離されるまで、縁部ローラ等のローラによって誘導され引っ張られる。これらの固定ローラFR1、FR2、FR3、FR4の回転軸は、成形装置または地面に対して静止した状態に維持される傾向があり、これにより、部分的に、帯状ガラスをV1の速度で連続的に下方に移動させる力を提供して、連続した板ガラス成形プロセスを可能にする。典型的なBODの設定では、板ガラス分離装置は構成要素として、(1)例えばサクションカップによって、移動する帯状ガラスと係合し、帯状ガラスを固定して、帯状ガラスと共に移動するロボットツーリング、および(2)板ガラスの速度と同期するための垂直移動キャリッジを有する移動アンビル装置(TAM:Traveling Anvil Machine)を備え得る。TAMでは、機械的水平スコアリング装置を用いて、板ガラスの分離を容易にするために一片のノーズバーに接触して押し付けられるよう保持された状態の板ガラスに、該板ガラス(ビード領域を除く)を横断する直線のスコア線(傷)SLを形成することができる。拡大した縁部(一般的にビードと称される)の存在に起因して、ノーズバーNBの幅は板ガラスの全幅よりも僅かに狭いのが一般的である。同様に、ビードの存在に起因して、スコア線SLは板ガラスの全幅よりも僅かに短いのが一般的である。スコア線SLが形成されると、ロボットツーリングは板ガラスをノーズ部に押し付けて曲げ、スコア線SLに沿って帯状ガラスから板ガラスを分離する。スコアリングおよび分離の際にはノーズバーNBは前方に移動し、分離後は後退する。ロボットツーリングは、分離された板ガラスを、クレートやコンベアベルト等の板ガラス移送装置へと移送する。安定した製造プロセスにおいては、この処理が繰り返されて、複数の板ガラスが製造され、それらは更に仕上げを施され、LCD用ガラス基体等の目的の用途に用いられる。2009年6月22日に出願された本願と同じ譲受人による同時係属の「スコアリングを開始するための方法および装置(METHODS AND APPARATUS FOR INITIATING SCORING)」という名称の米国特許出願第12/507248号明細書、国際公開第08/140677号および国際公開第08/140678号の各パンフレットは、BODにおいて板ガラスを分離する装置を開示しており、その内容の全体を参照して本明細書に組み込む。
【0055】
BODにおけるスコアリング、曲げおよび分離処理は、スコア線の上方の帯状ガラスに望ましくないエネルギーを伝達して、帯状ガラスに動きと形状変化を与え、これが弾性ゾーンから上に向かって粘弾性ゾーン、更には粘性ゾーンへと伝搬することがある。例示的なプロセスでは、スコアリング、曲げおよび分離の前に、延伸に沿った帯状ガラスの剛性がより高くなるように、弾性帯状ガラスに対してその幅に沿った小さい安定した曲率を維持するのが望ましいことであり得る。スコアリング、曲げおよび分離によって与えられる特に望ましくない形状変化は、帯状ガラスの曲率の方向の反転である。繰り返される帯状ガラスのスコアリング、曲げおよびの分離による粘弾性ゾーンの擾乱は、これが制御されない場合には、望ましくない板ガラスの厚さおよび厚さのばらつき、板ガラスの応力および応力のばらつき、反り、曲率、並びに他の重大な望ましくない製品属性を生じ得る。高品質の板ガラスを許容可能な収率で確実に製造できるようにするために、擾乱を許容可能レベルまで低減するためのプロセス調整が長時間続けられることがある。
【0056】
本発明者らは、本明細書においてW1/T1の比率(ここで、W1はミリメートル単位の幅であり、T1はミリメートル単位の厚さである)として定義される弾性帯状ガラスの可撓性が、ダウンドロー法のプロセス安定性に大きく影響することを見出した。帯状ガラスの可撓性が高いほど、帯状ガラスはBODにおけるスコアリング、曲げおよび分離に起因するプロセスの不安定性の影響を受けやすい。例えば、共に厚さが700μmである帯状ガラスの場合、幅が3000mmを超える帯状ガラスは、幅が2500mm未満の帯状ガラスよりも、BODにおける曲率の反転を遥かに生じやすい。従って、同じ厚さで、同じ度合いの反り、応力、応力のばらつき、および厚さのばらつきの要件において、幅が3000mmを超える板ガラスを製造するのは、幅が2500mmの板ガラスを製造するよりも遥かに困難である。同様に、幅が2000mmで厚さが400μmの板ガラスを製造するのは、同じ幅で厚さがより厚い700μmである板ガラスを製造するよりも遥かに困難である。サイズが大きくまたは厚さが薄く可撓性が高い板ガラスに関して、分離の際の帯状ガラスの安定化を大きく向上させることは非常に望ましい。
【0057】
モデリングおよび実験では、前の段落で述べた従来のダウンドロー成形法におけるスコアリング後の曲げ−分離工程が、粘弾性ゾーンへと伝搬し得るより大きな帯状ガラスの形状変化および振動を誘発し得ることが更に示された。このような板ガラスの変化は、しばしば、ボウ・ポッピングと称される帯状ガラスの方向の反転を含み得る。ボウ・ポッピングは、帯状ガラス形成プロセスの安定性および製品属性にとって特に有害である。
【0058】
先駆体帯状ガラスの弾性部分は2つの主要な表面S1およびS2を有し、表面S1およびS2はそれぞれ2つの周辺領域PR1およびPR2、PR3およびPR4、中心領域CR1およびCR2を有する。LCDガラス基体用の板ガラスの製造プロセス等といった特定の実施形態では、帯状ガラスのS1およびS2の少なくとも一方の中心領域は清浄であって、絶対に必要な場合以外には固体の物体と直接接触しないことが非常に望ましい。このような保護されるべき領域は一般的に「品質領域」と称される。一方、縁部に近い周辺領域には、ローラや本発明の縁部拘束器等の安定化および誘導装置が適用される。例えば、フュージョン・ダウンドロー法やスロット・ダウンドロー法のBOD領域において帯状ガラスが形成される場合等の特定の実施形態においては、PR1およびPR3、PR2およびPR4等といった互いに対向する周辺領域は、共に、「ビード」と称される拡大した厚さを有する縁部を画成し得る。縁部拘束器は、しっかりとした接触を確立できる周辺領域の領域に配置されるのが非常に望ましい。従って、縁部拘束器がサクションカップである場合には、縁部拘束器がガラス表面に接触する場所は略平坦であるのが非常に望ましい。ガラス表面に接触する縁部拘束器ER1、ER2、ER3およびER4の中心からの距離は、周辺領域の最も外側の縁部から50cm以内、特定の実施形態では40cm、他の特定の実施形態では30cm以内、他の特定の実施形態では20cm、更に他の実施形態では10cm以内であるのが望ましい。縁部拘束器が周辺領域の最も外側の縁部に近いほど、縁部拘束器が品質領域に接触しにくくなり、より大きな面積の使用可能なガラスを得やすくなる。
【0059】
帯状ガラス上のスコア線は、ガラス製造プロセスの必要に応じて、帯状ガラス上の任意の位置を選択可能である。スコア線の位置、即ち、連続的に形成された帯状ガラスから板ガラスが分離される位置の決定因子は、(i)販売および/または使用される最終的な板ガラスの寸法、(ii)成形装置の寸法、(iii)分離前の帯状ガラスに欠陥が検出されたか否か、および(iv)スコアリングアセンブリを担持し得る移動アンビル装置の寸法および範囲等を含むが、これらに限定されない。従って、当業者であれば、製品およびプロセスに基づいて、主要な表面S1における目標点TPを選択することができる。スコア線と、帯状ガラスに接触する縁部拘束器ER3およびER4の位置の中心との間の最短距離は、例えば、50cm以内、特定の実施形態では40cm以内、特定の実施形態では30cm、特定の実施形態では20cm以内、特定の実施形態では10cm以内であり得る。
【0060】
工程(B)および(C)では、縁部拘束器の上方における弾性ゾーンEZにおいて、帯状ガラスはその縁部を少なくとも二対の固定ローラFR1およびFR2によって固定されて誘導され、この際、各対が一方の周辺領域を固定する。帯状ガラスは、粘弾性ゾーンVZにおいて、二対の固定ローラFR3およびFR4によって更に拘束され得る。固定ローラ対は、実際には、引張りローラ、縁部ローラまたはスタブロールであってよく、それらはモータによって駆動されてもよく(能動)、アイドルローラであってもよく(受動)、または両方のタイプの組合せであってもよい。これらのローラの軸は、垂直ダウンドロー法においては重力ベクトルに対して略垂直であり得、または重力ベクトルに対して90°以外の角度を有し得る。このように、固定ローラ対は、帯状ガラスを適切な位置に保持してある程度安定させ、帯状ガラスの弾性部分に所望の速度を与える。固定ローラの表面は、動作中に、ガラス表面に対して滑らないのが非常に望ましい。従って、弾性領域に配置されたローラの表面速度は、帯状ガラスの弾性部分の合計速度と略同じであるのが望ましい。帯状ガラスが重力ベクトルに対して略平行な速度で移動する特定の望ましいフュージョン・ダウンドロー法およびスロット・ダウンドロー法では、複数の固定ローラは、組合せにおいて、帯状ガラスに下方向の速度V1を与えるのが望ましい。これらの実施形態では、固定ローラ対と縁部拘束器との組合せによって、成形装置の下方の帯状ガラスを安定させる。固定ローラに、速度センサや、力および/またはトルクセンサを設けて、ローラの動作を常にまたは断続的に監視するようにしてもよい。
【0061】
工程(D)および(E)において、ER3およびER4は、対応する周辺領域と係合させられる。縁部拘束器ER1およびER2は、TP、所定のスコア線SLおよび縁部拘束器ER3およびER4の位置の下方の位置において、帯状ガラスと接触して係合する。帯状ガラスの動きを乱したり変えたりしないために、ER1およびER2は、それぞれが帯状ガラスと係合する際に、目標点TPと略同じ下方向の速度V1で移動するのが望ましい。工程(D)および(E)は、ER1およびER2が最初の接触時に帯状ガラスに対して緊張力、圧縮力または捻り力を及ぼさない限り、異なるタイミングで行われてもよい。しかし、帯状ガラスが両側において略同期して拘束され係合するように、ER1およびER2の動きは同期される、即ち、工程(D)および(E)は略同時に行われるのが望ましい。工程(D)および(E)が最初に行われる際、即ち、ER1およびER2が最初に板ガラスと接触および係合させられる際には、帯状ガラスが緊張、圧縮または捻りを受けないように、ER1およびER2は横方向の力、即ち、重力ベクトルに対して垂直な力を及ぼさないのが望ましい。
【0062】
特定の有利な実施形態では、工程(H)および(I)において、板ガラス製造プロセスにおいて帯状ガラスの弾性部分と係合する付加的な縁部拘束器ER3およびER4が更に用いられる。本発明ではER3およびER4の使用は必須ではないが、これらを含むことによって、スコアリング、曲げおよび分離の際に帯状ガラスを更に安定させることができ、望ましくない板ガラスの動きの発生および上方への伝搬が低減され、板ガラスの属性および属性の一貫性を高めることができる。上述したように、従来の成形プロセスでは、帯状ガラスの縁部を拘束して帯状ガラスの位置を安定させるために、静止した縁部ローラを用いていた。しかし、ローラの軸が固定されているため、スコアリング、曲げおよび分離工程の際には、スコア線とローラとの間の距離が増加する。静止したローラとスコア線との間の距離が大きくなると、それらの間の領域も増大し、この領域における帯状ガラスの可撓性も高くなる。この大きく増大した領域は、上述の歪みを比較的受けやすい。スコア線の上方において、意図されるスコア線と略同じ下方向の速度で移動し帯状ガラスを能動的に緊張させることができる縁部拘束器ER3およびER4を用いることにより、スコア線と縁部拘束器との間における帯状ガラスの可撓性を大きく低減でき、高いレベルの剛性を維持でき、これにより、上に向かって粘弾性ゾーンへと伝搬し得る板ガラスの大きな形状の歪みの可能性を大きく減少させることができる。
【0063】
工程(H)および(I)が行われる場合には、帯状ガラスの動きを乱したり変えたりしないために、ER3およびER3は、それぞれが帯状ガラスと係合する際に、目標点TPと略同じ下方向の速度V1で移動するのが望ましい。工程(H)および(I)は、ER3およびER4が最初の接触時に帯状ガラスに対して緊張力、圧縮力または捻り力を及ぼさない限り、異なるタイミングで行われてもよい。しかし、帯状ガラスが両側において略同期して拘束され係合するように、ER3およびER4の動きは同期される、即ち、工程(H)および(I)は略同時に行われるのが望ましい。工程(H)および(I)が最初に行われる際、即ち、ER3およびER4が最初に板ガラスと接触および係合させられる際には、帯状ガラスが緊張、圧縮または捻りを受けないように、ER3およびER4は横方向の力、即ち、重力ベクトルに対して垂直な力を及ぼさないのが望ましい。PR1およびPR2におけるER3およびER4の位置は、S1の中心線CL1に関して対称であるのが有利であり得る。その理由は、そのように対称であると、ER3およびER4によって帯状ガラスに緊張力が加えられた際に帯状ガラスがより安定し、上部の固定ローラ対等の他の帯状ガラス安定化装置に対する応力が低くなるからである。
【0064】
工程(H)および(I)が行われる場合には、ER1、ER2、ER3およびER4の最初の接触および係合によって望ましくない板ガラスの動きが生じない限り、または板ガラスに対して望ましくない力が及ぼされない限り、工程(D)、(E)、(H)および(I)は任意の順序で行われ得る。しかし、工程(D)および(E)は上述のように略同時に同期して行われるのが望ましく、工程(H)および(I)は上述のように略同時に同期して行われるのが望ましい。別の望ましい実施形態では、工程(H)および(I)は工程(D)および(E)より前に行われる。更に別の望ましい実施形態では、工程(D)、(E)、(H)および(I)は略同時に同期して行われる。
【0065】
特定の実施形態では、工程(H)および(I)が行われる場合には、必要に応じて、次に工程(J)が行われるのが有利であり得る。工程(J)では、工程(H)および(I)におけるER3およびER4の最初の接触および係合の後に、意図されるスコア線SLの上方において帯状ガラスに緊張力F5およびF6が加えられる。F5およびF6の印加は同期して行われる、即ち、力F5およびF6の印加開始から減少、そして最終的な解消まで、力F5およびF6は略等しい大きさ(但し反対方向)であるのが望ましい。F5およびF6の印加が帯状ガラスに対する捻りモーメントを生じないように、F5およびF6は主要な表面S1に対して略平行であるのが望ましい。更に、F5およびF6は緊張力であるので、それらの方向は中心領域から周辺領域に向かうものであり、その結果、帯状ガラスの内部に張力を生じる。緊張力F5およびF6は、次の幾つかの効果を達成するよう機能し得る。(a)スコアリング、曲げおよび分離の際に帯状ガラスを安定化させる、(b)帯状ガラスの幅W1に沿った曲率をノーズバー(詳細は後述する)の要件に沿うように変更する、および(c)スコアリング、曲げおよび分離によって生じる帯状ガラスの動きが過度に上方まで伝搬するのを防止または減少させる。
【0066】
工程(F)では、必要に応じて設けられる縁部拘束器ER3、ER4の下方であり且つER1およびER2の上方において、帯状ガラスにスコア線SLが形成される。このようなスコア線は、当業者に周知の機械的、熱的および/または光学的手段を用いて生成され得る。スコア線SLはV1に対して略垂直であるのが望ましく、垂直ダウンドロー法の場合には、スコア線SLは重力ベクトルに対して略垂直であるのが望ましい。
【0067】
工程(G)では、図9に示されるように、曲げおよび分離によって、目的の板ガラスが、工程(F)で形成されたスコア線に沿って帯状ガラスから分離される。曲げは、ノーズバーNBによって及ぼされ得るスコア線SLの上方またはスコア線SLに沿った支持力F2と、ER1および/またはER2によって及ぼされ得るスコア線SLの下方の折り取り力F1とによって行われる。この2つの反対向きの力F1およびF2は、帯状ガラスに対して、スコア線に沿った、当業者によって決定される十分な大きさの曲げモーメントを生じ、これにより帯状ガラスを折って、目的の板ガラスを帯状ガラスから分離させる。力F1は、縁部拘束器ER1および/またはER2を、それらが係合している帯状ガラスの表面に対して引張ることおよび/または押すこと(装置構成によって異なり、図9は引張る場合を示している)によって及ぼすことができる。
【0068】
概要を上述したように、縁部拘束器ER1およびER2、並びに必要に応じて設けられる縁部拘束器ER3およびER4は、帯状ガラスの弾性部分と略同じ垂直方向の速度で移動する。工程(H)、(I)および(J)が行われる本発明のプロセスの特定の実施形態では、工程(J)および工程(G)の後に、以下の工程(J1)が行われるのが望ましい。
【0069】
(J1):F5およびF6を連続的に略0まで減少させる。
【0070】
工程(J1)を行うことにより、帯状ガラスからの板ガラスの曲げおよび分離の直後のスコア線の上方の帯状ガラスは、ER3およびER4によって略拘束されたままとなる。F1および/またはF2を突然略0まで低減する(例えば、ER3およびER4による緊張力を短時間に完全になくす)と、この緊張によって帯状ガラスに蓄えられたエネルギーが制御不可能に解放され、上に向かって粘弾性ゾーンVEZ、更には粘性ゾーンVZにまで伝搬し得る望ましくない帯状ガラスの動きを生じ得ると考えられる。ゆっくりと制御された状態でF5およびF6を低減する、即ち、スコア線の上方の帯状ガラスから、ゆっくりと制御された状態でER3およびER4を離すことにより、スコアリング、曲げおよび分離の際の強制的な形状変化に起因して帯状ガラスに蓄えられたエネルギーを、ゆっくりと解放して吸収できる。F5およびF6が帯状ガラスに加えられた後は常に、F5およびF6の大きさは略同じであって、F5およびF6の方向は互いに略反対であるのが望ましい。
【0071】
工程(H)、(I)および(J)が行われる特定の実施形態では、工程(G)の後、必要に応じて行われる上述の工程(J1)の後に、以下の工程(J2)が行われる。
【0072】
(J2):F1およびF2の方向を逆転させる。
【0073】
曲げおよび分離後、F5およびF6が共に略0まで低減された後に、F5およびF6の方向を逆転させること、即ち、ER3およびER4によって加えられる力を緊張から圧縮に変えることは、帯状ガラスの曲率(ボウ)の方向を維持するのに有益であり得ると考えられる。当業者であれば、横方向の力が加えられていない状態(即ち、F5=F6=0の場合)の帯状ガラスの元の曲率よりかなり大きい程度まで帯状ガラスがその幅W1に沿って曲がるほど大きく押されないように、工程(J2)における圧縮力F5およびF6の正しい量を決定できる。工程(J1)と同様に、F5およびF6の低減および解消によって望ましくない帯状ガラスの動きが生じないように、工程(J2)の後、帯状ガラスからER3およびER4を離す工程の前に、力F5およびF6を徐々に0まで低減するのが一般的に望ましい。
【0074】
縁部拘束器ER3およびER4を用いる実施形態では、本プロセスは、スコアリング、曲げおよび分離の際に帯状ガラスを更に安定させることができる。スコア線の上方の帯状ガラスは、ER3、ER4、ER1、ER2および/またはノーズ部と係合する前は略平坦であり得る。特定の有利な実施形態では、縁部拘束器が帯状ガラスに係合する前は、帯状ガラスはPR1およびPR2からの曲率を示す。このような自然な曲率は、例えば、計画的な成形設定、成形後の冷却、および縁部引張りロール、スタブロール等の駆動機構による緊張力および/または圧縮力の結果としての機械的付与等によって生じ得る。そのようなPR1からPR2までの曲率は、表面S2側から見たとき、「ボウル形状」と称される突出した中心領域CR2を有する形状または「ドーム形状」と称される凹んだ中心領域CR1を有する形状を有し得る。
【0075】
上述したように、スコアリング、曲げ、および目的の板ガラスの帯状ガラスからの分離の際、ER1、ER2、および場合によってはER3、ER4、並びに/またはノーズ部が係合する前に、帯状ガラスが上述のようにPR1およびPR2からの曲率を示す場合には、帯状ガラスの曲率の方向が反転するのは非常に望ましくない。そのような曲率の反転は「ボウ・ポッピング」と称されることがあり、大きな板ガラスの動きを生じ得るものであり、それが上に向かって粘弾性ゾーンVEZおよび/または粘性ゾーンVZへと移動して、応力および応力分布、厚さのばらつき等といった帯状ガラスの属性を変え得る。帯状ガラスを更に安定させるために、本発明の特定の実施形態では、工程(F)の前に、以下の工程(E1)が行われるのが更に望ましい。
【0076】
(E1):工程(F)および(G)において曲率が逆転されないよう、且つ、必要に応じて設けられる工程(H)および(I)が行われた場合にER3およびER4を離した後も曲率が維持されるように、線SLの上方の弾性ゾーンに力F7を加える。
【0077】
従って、その目的で、力F7の方向は、曲率を補強するものであることが望ましい。従って、S1の表面から見たときに、曲率がPR1からPR2への凹み(dip)を示す場合には、F7はS1からS2に向いているのが望ましく、その逆もまた同様である。特定の実施形態では、工程(F)、(G)において、並びに必要に応じて工程(H)および(I)が行われる場合にはER3およびER4を帯状ガラスから離す際に、即ち、帯状ガラスの緊張、スコアリング、曲げおよび分離の際に、工程(E1)が行われ得る。力F7は、例えば以下の手法の1つによって加えることができる。
【0078】
(F7a):S2側においてS1側より高い空気圧を維持する。
【0079】
(F7b):S2のCR2の一部に対して、S2がS1に向かって押されるようにガス流を吹き付ける。
【0080】
(F7c):CR2と接触するピンにより、S2をS1に向かって押す。
【0081】
(F7d):上記(F7a)、(F7b)および(F7c)の少なくとも2つの組み合わせ。
【0082】
特定の実施形態において、力F7をもたらすために(F7b)の手法が選択された場合には、CR2におけるガス流の接触領域は、スコア線の上方50cm以内、特定の実施形態ではスコア線の上方40cm以内、他の特定の実施形態ではスコア線の上方30cm以内、他の特定の実施形態ではスコア線の上方20cm以内になるよう選択され得る。一般的に、F7が加えられる主な領域とスコア線との距離が短かければ、小さい量のF7で形状保存効果を達成できる。従って、これらの実施形態では、力F7は20ニュートン未満、特定の実施形態では10ニュートン未満、特定の実施形態では5ニュートン未満であり得る。
【0083】
必要に応じて設けられる工程(H)、(I)および(J)が行われる本発明のプロセスの特定の実施形態では、工程(F)は工程(J)より前に行われる。即ち、スコアリング工程の前およびスコアリング工程においては、縁部拘束器ER3およびER4は帯状ガラスの周辺領域に緊張力を加えない。そのような実施形態は、帯状ガラスの幅が2000mm未満である等の比較的小さい幅である場合(この場合、帯状ガラスは一般的に比較的高い剛性を示す)、または工程(D)、(E)、(H)および(I)の前の帯状ガラスが略平面状であり、一方の側から他方の側への曲率を示さない場合に、有利に採用され得る。しかし、特定の実施形態では、スコアリング工程の際にスコア線の上方の緊張力F5およびF6によって帯状ガラスが安定するように、工程(F)の前に工程(J)が行われるのが非常に有利である。なお、必要に応じて設けられる縁部拘束器ER3およびER4は、それらが用いられる場合には、意図的に緊張力F5およびF6を与えずとも幾分の縁部拘束機能を提供するが、F5およびF6の印加は、帯状ガラスの剛性を更に高めると共に、平坦であり得るノーズバーNBに帯状ガラスを沿わせるよう機能し得る。
【0084】
工程(F)では、機械的スコアリングホイールが表面S1をスコア線SLに沿って押圧し、PR1からPR2へと延びる連続した傷SLを形成するために表面S1に印をつけられるように、表面S2のスコア線SLの近傍の領域を支持するためにノーズバーNBが用いられ得る。上述したように、特定の実施形態では、垂直ダウンドロー・ガラス製造プロセスにおいては、SLはV1に対して略垂直、即ち、略水平であり、且つ重力ベクトルに対して垂直であるのが望ましいが、他の実施形態では、90°以外の角度を有する傾斜したスコア線も許容可能であり得る。ノーズバーNBは、帯状ガラスを支持して、機械的ホイールが表面S1を押圧する際に帯状ガラスが動くのを防ぐ。ノーズバーの材料、形状、位置および動作、並びにスコアリングホイールの位置、材料および動作の詳細な説明は、例えば、国際公開第08/140677号および国際公開第08/140678号に見出すことができる。
【0085】
従って、特定の実施形態では、ノーズバーNBは、PR3およびPR4から延びS2と接触する略平坦な材料片で構成される。従って、S1からS1に対して垂直な方向に見ると、スコア線SLはノーズバーNBの領域内に含まれるか、またはノーズバーNBの領域の僅かに上方若しくは下方にある。帯状ガラスはノーズバーNBとスコア線SLとを分離しているので、ノーズバー領域は、これら3つの場合の全てにおいて、スコア線SLの近傍にあると見なされる。ノーズバーNBの領域がスコア線SLをカバーする場合には、直接の支持が与えられるため、帯状ガラスはより安定すると考えられる。
【0086】
特定の実施形態では、工程(G)において、帯状ガラスが曲げられて分離される際に、ノーズバーは帯状ガラスの表面S2と直接接触したままである。これらの実施形態では、ノーズバーNBは、支持力F2の少なくとも一部を提供し、支持力F2は、F1との組合せにおいて、帯状ガラスを曲げて分離するのに必要な曲げモーメントを生じる。
【0087】
必要に応じて設けられる縁部拘束器ER3およびER4は、それらが用いられる場合には、工程(G)の最後で目的の板ガラスが帯状ガラスから分離された後、工程において帯状ガラスから離される。工程(G)においてノーズバーNBがS2と接触する場合には、必要に応じて設けられる工程(H)および(I)が行われる場合にER3およびER4が帯状ガラスから離される工程において、またはその後で、ノーズバーNBはS2から離されるのが望ましい。
【0088】
上述のように、および図5に示されるように、特定の実施形態では、表面S2と接触するノーズバーNBは平坦であり得る。これらの実施形態では、工程(H)および(I)が行われる場合には、表面S1がスコアリングされる工程(F)の前に、帯状ガラスが緊張力F5およびF6によって平坦になって、平坦なノーズバーに沿うように、工程(F)においてまたは工程(F)の前に、工程(J)が行われるのが望ましい。他の特定の実施形態では、図4に示される、S2の曲率を実質的に変えることなくS2および/またはS1の曲率に沿うように調節可能な湾曲したノーズバーNBを用いるのが非常に有利である。この形状適応型のノーズ部は、S2のみと、またはS1およびS2の両方と接触するよう構成され得る。このような形状適応型のノーズ部の材料選択、構造および動作を含む詳細は、国際公開第08/140677号および国際公開第08/140678号に記載されており、それらの内容の全体を参照して本明細書に組み込む。形状適応型のノーズ部並びに必要に応じて設けられる縁部拘束器ER3およびER4を更に用いるこのような実施形態では、帯状ガラスの表面曲率を変える緊張力F5およびF6が加えられないように、工程(F)の前に工程(J)を行わないのが非常に有利である。これらの実施形態では、曲げおよび分離の際に、縁部拘束器EER3およびER4によって帯状ガラスを更に安定させて緊張させるように、工程(J)は、工程(F)の後であり且つ工程(G)の前に行われるのが有利である。更に、特定の実施形態では、ノーズ部が略平坦になって帯状ガラスの曲げおよびの分離が容易になるように、工程(G)においてノーズ部の曲率を調節するのが有利である。更に、これらの実施形態では、ER3およびER4が帯状ガラスから離される際に、帯状ガラスの曲率が、縁部拘束器およびノーズバーによる外的な緊張や圧縮が存在しない自然な形状に戻ることができるように、工程(G)の後であり且つER3およびER4を帯状ガラスから離す前に、工程(G)が行われる前に、ノーズ部の曲率をS2の曲率に沿うように調整するのが有利である。
【0089】
本発明の縁部拘束器は様々な形態をとり得る。例えば、ER1およびER2並びに必要に応じて設けられるER3およびER4のそれぞれは、サクションカップ、クランプまたは一対のローラであり得る。表面S1および/またはS2に直接接触するサクションカップ、クランプまたはローラ対の材料は、シリコーンゴム、ポリテトラフルオロエチレン等の高温高分子材料で作られるのが有利であり得る。縁部拘束器は、S1および/またはS2の周辺領域との密な接触を確立し、V1と略等しい速度で下に移動可能であり、帯状ガラスに表面接触を介して所望の量の緊張力および/または圧縮力を及ぼすことができる。板ガラスを取り扱う当業者は、取り扱われる帯状ガラスのサイズ、速度、厚さ、温度、および他のパラメータに従って、サクションカップ、クランプおよび縁部ローラの適切な材料、サイズ、構造および作動装置の設計および選択を行うことができる。
【0090】
特定の実施形態では、工程(H)、(I)、(J)および(G)において、縁部拘束器ER3およびER4はS1のみと接触し、S2とは接触しない。特定の実施形態では、工程(H)、(I)、(J)および(G)において、縁部拘束器ER3およびER4はS2のみと接触し、S1とは接触しない。他の実施形態では、工程(H)、(I)、(J)および(G)において、縁部拘束器ER3およびER4はS1およびS2の両方と接触する。特定の実施形態では、工程(H)、(I)、(J)および(G)において、縁部拘束器ER3およびER4はS1のみと接触し、S2とは接触しない。他の実施形態では、工程(D)、(E)、(F)および(G)において、縁部拘束器ER1およびER2はS2のみと接触し、S1とは接触しない。他の実施形態では、工程(D)、(E)、(F)および(G)において、縁部拘束器ER1およびER2はS1およびS2の両方と接触する。他の実施形態では、工程(D)、(E)、(F)および(G)において、縁部拘束器ER1およびER2はS1のみと接触し、S2とは接触しない。縁部拘束器としてクランプを用いる場合には、それらは一般的に、S1およびS2の両方と接触して、必要な拘束機能、緊張機能および圧縮機能を提供する。縁部拘束器としてサクションカップを用いる場合には、S1およびS2のいずれかの側または両側と接触するよう選択可能である。
【0091】
上述の説明から明らかなように、図1、図2、図3、図7および図9の帯状ガラスの各周辺領域PR1およびPR2には縁部拘束器ER3およびER4が1つのみ示されているが、帯状ガラスの表面S1および/またはS2と同時にまたは順次接触する縁部拘束器ER3およびER4の複数の構成要素が用いられてもよい。例えば、各周辺領域PR1またはPR2においては、縁部拘束器ER3およびER4の2つ、3つまたはそれ以上のサクションカップおよび/またはクランプが用いられて、縁部の拘束機能、誘導機能および緊張機能を集合的に提供してもよい。PR1と接触するER3の複数の縁部拘束器要素をER3(1)、ER3(2)…ER3(n)と称し、PR2と接触するER4の複数の縁部拘束器要素をER4(1)、ER4(2)…ER4(n)等と称し得る。ER3(1)、ER3(2)…ER3(n)の位置は、水平または垂直な線、三角形のパターン、正方形のパターン、円形のパターン、およびそれらの組み合わせ等を構成し得る。同様に、ER4(1)、ER4(2)…ER4(n)の位置は、水平または垂直な線、三角形のパターン、正方形のパターン、円形のパターン、およびそれらの組み合わせ等を構成し得る。しかし、特定の実施形態では、ER3(1)、ER3(2)…ER3(n)の位置によって構成されるパターンとER4(1)、ER4(2)…ER4(n)の位置によって構成されるパターンとは、S1の中心線CL1に関して対称であるのが望ましい。更に、ER3(1)、ER3(2)…ER3(n)およびER4(1)、ER4(2)…ER4(n)の動作は同期され且つ中心線CL1に関して対称であるのが有利である。移動アンビル装置等の共通の台を用いることで、そのような同期および対称を比較的容易に達成することができる。
【0092】
特定の実施形態では、縁部拘束器ER3およびER4の動作を同期させるために、縁部拘束器ER3およびER4を、帯状ガラスの一方の周辺領域から他方の周辺領域へと延び、動作中に帯状ガラスのV1と略等しい速度で移動可能な単一の台の上に設置してもよい。特定の実施形態では、複数の拘束動作、スコアリング動作、曲げ動作および分離動作において工程(H)、(I)、(J)、(F)および(G)を繰り返せるように、台は垂直方向に往復動可能であるのが有利である。更に、特定の実施形態では、縁部拘束器ER3、ER4、ノーズバー、およびスコアリングアセンブリは全て、垂直方向に往復動可能な単一の台の上に設置され、繰り返しの動作を可能にすることが望ましい。そのような台は、スコアリング工程、曲げ工程および分離工程の際にアンビルの機能を提供するので、移動アンビル装置(TAM)と称されることがある。TAMの詳細な説明は、例えば、米国特許第6,616,025号明細書および国際公開第08/133800号パンフレットに記載されており、その内容の全体を参照して本明細書に組み込む。
【0093】
同様に、上述の説明から明らかなように、図1、図2、図3、図7および図9の帯状ガラスの各周辺領域PR1およびPR2には縁部拘束器ER1およびER2が1つのみ示されているが、帯状ガラスの表面S1および/またはS2と同時にまたは順次接触する縁部拘束器ER1およびER2の複数のサクションカップおよび/またはクランプが用いられてもよい。例えば、例えば、各周辺領域PR1またはPR2においては、縁部拘束器ER1およびER2の2つ、3つまたはそれ以上のサクションカップおよび/またはクランプが用いられて、縁部の拘束機能、誘導機能および緊張機能を集合的に提供してもよい。PR1と接触する複数のER1およびER2の縁部拘束器要素をER1(1)、ER1(2)…ER1(n)と称し、PR2と接触するER2の複数の縁部拘束器要素をER2(1)、ER2(2)…ER2(n)等と称し得る。ER1(1)、ER1(2)…ER1(n)の位置は、水平または垂直な線、三角形のパターン、正方形のパターン、円形のパターン、およびそれらの組み合わせ等を構成し得る。同様に、ER2(1)、ER2(2)…ER2(n)の位置は、水平または垂直な線、三角形のパターン、正方形のパターン、円形のパターン、およびそれらの組み合わせ等を構成し得る。しかし、特定の実施形態では、ER1(1)、ER1(2)…ER1(n)の位置によって構成されるパターンとER2(1)、ER2(2)…ER2(n)の位置によって構成されるパターンとは、S1の中心線CL1に関して対称であるのが望ましい。更に、ER1(1)、ER1(2)…ER1(n)およびER2(1)、ER2(2)…ER2(n)の動作は、同期され且つ中心線CL1に関して対称であるのが有利である。ロボットツーリング等の共通の台を用いることで、そのような同期および対称を比較的容易に達成できる。
【0094】
図6は縁部拘束器ER1アセンブリの実施形態を示しており、該アセンブリは、個別の短い取付板M1(1)、M1(2)およびM1(3)をそれぞれ介して共通の長い取付板M1Lに取り付けられた3つのサクションカップER(1)、ER(2)およびER(3)を有する。共通の取付バーM1Lは、ER1アセンブリをV1に対して略垂直な可変速度V3で横方向に移動させるよう制御可能なアクチュエータに接続されている。ER1アセンブリの横方向の動きにより、ER1は曲げおよび分離の前に帯状ガラスに近づいて、帯状ガラスの表面の周辺領域と係合し、工程(G)において帯状ガラスを押すかまたは引張り(装置構成によって異なる)、これによって帯状ガラスが曲げられ、折られ、帯状ガラスから目的の板ガラスが分離される。縁部拘束器ER1およびER2は、垂直ダウンドロー法のBOD領域において板ガラスを取り扱うロボットツーリングの一部であるのが有利である。ER1およびER2は、単独でまたは組合せにおいて、帯状ガラスをスコア線に沿って曲げて折り取るのに必要な折り取り力F1を提供できる。工程(G)の最後およびその後において、ER1およびER2は、分離された板ガラスを、クレート、コンベアベルト、移送台等といった下流の位置または機構に運んでもよい。ロボットツーリングについては例えば米国特許第6,616,025号明細書で説明されており、その内容の全体を参照して本明細書に組み込む。
【0095】
縁部拘束器がガラス表面と直接係合する位置は、略一定であって、接触が確立されたら固定されるのが望ましい。この理由は、サクションカップおよび/またはクランプがガラス表面に対して動くことは接触が弱いことを意味し、この場合、接触が完全に失われることがあると、板ガラスがロボットツーリングから落下し、帯状ガラスに、粘弾性ゾーンおよび粘性ゾーンに向かって上に移動し得る望ましくない動きが付与されるからである。従って、縁部拘束器ER1およびER2とアクチュエータとの間に剛性のリンケージを用いた場合、即ち、リンケージが実質的に、V1に対して垂直な縁部拘束器の動きのみを許容するものである場合には、縁部拘束器ER1およびER2の引張る/押す作用により、帯状ガラスから目的の板ガラスが分離される直前に、大きな引張り力、即ち、V1の方向の力が帯状ガラスに加えられることになる。この状況を、簡略化した力解析図として図8に示す。帯状ガラスGRの剛性により、曲げの後、スコア線の下方における帯状ガラスの直線速度V1’は、V1の大きさを有するものの、その方向はV1に対して角度θを有するものとなっており、V1に対して垂直な横方向の速度V3は、V1’の方向の非ゼロ成分を有するものとなる。V3を与えるために縁部拘束器によって及ぼされる横方向の力は、V1’の方向の引張り力成分を有するものとなる。折り取りプロセスにおける折り取り力はかなり大きいものになり得るので、引張り力成分もかなり大きいものになり得る。
【0096】
上述したように、ガラス製造プロセスの通常の動作においては、固定されたローラ対は、帯状ガラスを安定させ、帯状ガラスの弾性部分に略一定の速度V1を与える。長くなる帯状ガラスの速度の制御は、固定されたローラ対によってガラス表面に可変の摩擦力を加えることによって達成される。従って、本願明細書で開示するER3およびER4の使用等といった付加的な縁部拘束方法が無い場合には、固定ローラ対の下方における自由状態の帯状ガラスがより長く重くなると、固定ローラは、増加する重力に対抗するために、より大きな摩擦力を及ぼさなければならなくなる。縁部拘束器ER1およびER2によって及ぼされる引張り力が無視できないほど大きくなる場合には、固定ローラ対はこの更なる力に対向しなければならなくなる。
【0097】
ER1およびER2によって及ぼされるこのような動的な引張り力を実験で観察し、そのデータを図9に示す。この図では、縦軸は固定ローラ対によってガラス表面に加えられた力の測定値を示し、横軸は時間を示している。図9に示されている力のピークは、帯状ガラスからの目的の板ガラスの折り取りに対応しており、従って、これらが上述の引張り力である。
【0098】
図9に示されている非常に大きな引張り力のピークに対抗するには、滑りを防止するために、固定ローラ対によってガラス表面に加えられる摩擦力を増加させなければならない。積極的に摩擦力を加えると、ローラ寿命が急激に短くなり、早期にローラの不具合が生じるとともに、ローラの形状および寸法が変化し、プロセスの安定性に弊害をもたらす。ローラ対の間で帯状ガラスが滑ることは、上流の粘弾性ゾーンおよび粘性ゾーンにおけるガラス成形プロセスにとって特に破壊的であり、大きな厚さのばらつき、反り、および反りのばらつき等が生じ得る。従って、板ガラス製造プロセスにおいては、引張り力のピークを低減させるのが非常に望ましい。
【0099】
引張り力のピーク(垂直ダウンドロー成形法の場合には垂直方向の下向きの力のピーク)を低減させるために、本発明者らは、縁部拘束器ER1、ER2とアクチュエータとの間における柔軟なリンケージの使用を提案する。この柔軟なリンケージは、縁部拘束器ER1およびER2がアクチュエータ(または固定ローラ)に対してV1の方向(垂直ダウンドロー法の場合には垂直方向)に往復動するのを可能にするものである。従って、曲げおよび分離工程(G)において、ER1およびER2はV1の方向に動いて、サクションカップおよび/またはクランプによって及ぼされる力を、ガラス表面(従って、図8に示されるV1’)に対して略垂直に維持し、これにより、大きな引張り力のピークの発生を効果的に低減および/または解消する。
【0100】
新たなER1およびER2の柔軟なリンケージ設計の様々な実施形態を含み得る図6を参照する。この図では、サクションカップER1(1)、ER1(2)、ER1(3)(これらは集合的にER1を構成する)は、短い取付板M1(1)、M1(2)およびM1(3)にそれぞれ取り付けられ、これらの短い取付板は、アクチュエータATRに接続された長い取付板M1Lに取り付けられている。一実施形態では、M1(1)、M1(2)およびM1(3)とM1Lとの接続は全て柔軟な接続であってV1の方向への往復動を可能にするものであるが、M1LとアクチュエータATRとの接続は固定された剛性の接続である。第2の実施形態では、M1(1)、M1(2)およびM1(3)とM1Lとの接続は全て固定された剛性の接続であるが、M1LとアクチュエータATRとの接続は柔軟な接続であってV1の方向への往復動を可能にするものである。第3の実施形態では、M1(1)、M1(2)およびM1(3)とM1Lとの接続は全て柔軟な接続であってV1の方向への往復動を可能にするものであるが、M1LとアクチュエータATRとの接続は柔軟な接続であって最小限の抵抗でV1の方向への往復動を可能にするものである。このような柔軟なリンケージは、両端に設けられたばねによって維持されるフリー・スライド・ライド(free-slide-ride)設計を用いてもたらされ得る。
【0101】
ロボットツーリングのアクチュエータとロボットツーリングのサクションカップとの間に剛性のリンケージを用いた場合には、400ニュートンもの高いピーク引張り力が生じ得ることが観察された。本発明では、柔軟なリンケージを用いることにより、400ニュートン以下、特定の実施形態では300ニュートン以下、別の特定の実施形態200ニュートン以下、別の特定の実施形態100ニュートン以下、別の特定の実施形態80ニュートン以下の低減されたピーク引張り力を達成でき、より安定した曲げおよび分離プロセスとすることができる。
【0102】
固定ローラ対に及ぼされる引張り力のピークを低減するための第2の方法は、スコア線の下方における分離前の帯状ガラスの重量の一部および曲げおよび分離の際にER1およびER2によって生じる引張り力に対抗するために、縁部拘束器ER3および/またはER4を用いることである。
【0103】
上述のように、本発明のプロセスは、先駆体帯状ガラスが、スコアリングされ曲げられ分離される弾性ゾーンに加えて、弾性ゾーンと直接接続し弾性ゾーンの動きによって負の影響を受け得る粘弾性ゾーンを有するフュージョン・ダウンドロー法、スロット・ドロー法またはリドロー法等のガラス製造プロセスに特に有利である。粘弾性ゾーンは、このゾーンにおいて生じ得る薄化に起因して、V1と略等しいかまたはV1より僅かに低速の垂直な速度V1’で移動し得る。特定の実施形態では、粘弾性ゾーンはスコア線の上方10メートル以内、特定の実施形態では5メートル以内、他の実施形態では3メートル以内、他の実施形態では2メートル以内、他の実施形態では1メートル以内、他の実施形態では0.5メートル以内である。
【0104】
上述のように、本発明のプロセスは、先駆体帯状ガラスが、スコアリングされ曲げられ分離される弾性ゾーンに加えて、弾性ゾーンの動きによって負の影響を受け得る、弾性ゾーンの上方で弾性ゾーンと直接接続している粘弾性ゾーンと、粘弾性ゾーンの上方で粘弾性ゾーンと直接接続している粘性ゾーンとを有するフュージョン・ダウンドロー法、スロット・ドロー法またはリドロー法等のガラス製造プロセスに特に有利である。特定の実施形態では、粘性ゾーンはスコア線の上方12メートル以内、特定の実施形態では10メートル以内、特定の実施形態では8メートル以内、特定の実施形態では5メートル以内、他の実施形態では3メートル以内である。
【0105】
上述のように、本発明のプロセスは、W1/T1比によって定義される高い可撓性(低い剛性)を有する先駆体帯状ガラスを有する板ガラス製造プロセスに特に有利である。特に、本発明のプロセスは、W1/T1比が少なくとも1000、特定の実施形態では少なくとも2000、他の特定の実施形態では少なくとも3000、他の特定の実施形態では少なくとも5000、他の特定の実施形態では少なくとも6000、他の特定の実施形態では少なくとも7000、他の特定の実施形態では少なくとも8000、他の特定の実施形態では少なくとも9000、他の特定の実施形態では少なくとも10000の板ガラスの製造に特に有利である。縁部拘束器ER3およびER4は、外観通り単純なものであるが、製造プロセスおよび製品属性の一貫性、特に、高いW1/T1比を有する板ガラスの厚さのばらつき、応力および応力分布に対して、大きな安定性の向上を提供するものである。
【0106】
特に、本発明のプロセスは、厚さT1が最大で1.0mm、特定の実施形態では最大で0.8mm、特定の実施形態では最大で0.7mm、他の特定の実施形態では最大で0.6mm、特定の実施形態では最大で0.4mm、他の特定の実施形態では最大で0.3mmの板ガラスの製造に特に有利である。
【0107】
工程(G)において、表面S1のスコア線は、国際公開第08/133800号パンフレット(その内容の全体を参照して本明細書に組み込む)に詳細が記載されている機械的スコアリングホイールを用いた機械的スコアリングによって形成され得る。或いは、例えば、国際公開第08/140818号、国際公開第09/045319号、国際公開第09/067164号、および国際公開第09/091510号の各パンフレット(それらの内容の全体を参照して本明細書に組み込む)に記載されているレーザスコアリングを用いてスコア線を形成してもよい。レーザスコアリングと縁部拘束器の使用との組合せは、上述の幅が大きく且つ/または厚さが薄いもののような剛性が低い板ガラスの製造に特に有利である。
【0108】
上述のように、連続ガラス製造プロセスでは、工程(A)で設けられる先駆体帯状ガラスは通常は連続しており、この帯状ガラスは、複数の目的の板ガラス製品を製造するために繰り返しスコアリングおよび分離される必要がある。フュージョン・ダウンドロー・ガラス成形技術を用いたもの等といった、このような連続板ガラス製造プロセスにおいて、特に、垂直方向に往復運動可能なTAMを用いる場合には、複数の板ガラスを一貫した品質および大きなプロセス安定性で連続的に製造できるように、工程(D)、(E)、(F)、(G)、並びに必要に応じて含まれる工程(H)および(I)が繰り返され得る。縁部拘束器ER1、ER2を帯状ガラスの表面と係合させ、帯状ガラスを曲げ、分離された板ガラスを下流の装置に移送し、縁部拘束器ER1およびER2から板ガラスを解放して、次のサイクルで分離すべき帯状ガラスと係合するための所定の位置に戻すことを繰り返すように、ロボットツーリングをプログラムできる。
【0109】
従って、工程(A)の例は以下の工程を含み得る。
【0110】
(A1):溶融ガラスを設け、
(A2):フュージョン・ダウンドロー法またはスロット・ダウンドロー法によって、溶融ガラスから、連続した帯状ガラスを形成し、
(A3):連続した帯状ガラスを冷却して先駆体帯状ガラスを形成する。
【0111】
フュージョン・ダウンドロー法については、例えば国際公開第03/014032号、国際公開第05/081888号の各パンフレットに詳細に説明されており、その内容の全体を参照して本明細書に組み込む。
【0112】
本発明の第2の態様は、弾性部分を有する連続して移動する先駆体帯状ガラスから目的の弾性板ガラスを製造する装置であって、弾性部分は第1の主要な表面S1と、S1の反対側にある第2の主要な表面S2とを有し、S1は第1の周辺領域PR1と、第2の周辺領域PR2と、第1の中心領域CR1とを有し、S2はPR1の反対側にある第3の周辺領域PR3と、PR2の反対側にある第4の周辺領域PR4と、CR1の反対側にある第2の中心領域CR2とを有し、この装置は、
(I):地面に対して略静止した軸を有し、速度V1を先駆体帯状ガラスに与えるためにPR1、PR3、PR2およびPR4と係合可能な少なくとも二対の固定された回転縁部ローラFR1およびFR2と、
(II):表面S1上に略水平なスコア線を設けることが可能なスコアリング装置と、
(III):(a)先駆体帯状ガラスを安定させるためにS2と接触して係合し、(b)V1と略等しい速度で移動し、(c)先駆体帯状ガラスが曲げられる際に、S1に対して垂直且つS2からS1へと向かう支持力F2を与えるよう構成されたノーズ部と、
(IV):(a)スコア線の下方においてPR1およびPR3の少なくとも一方と接触し、(b)V1と略等しい速度で移動し、(c)S1に対して垂直且つF4とは反対の方向の曲げ力F1の少なくとも一部を弾性部分に与えるよう構成された第1の縁部拘束器ER1と、
(V):(a)スコア線の下方においてPR2およびPR4の少なくとも一方と接触し、(b)V1と略等しい速度で移動し、(c)曲げ力F1の少なくとも一部を与えるよう構成された第2の縁部拘束器ER2と、
(VI)柔軟なリンケージを介してER1および/またはER2に接続され、本質的に抵抗無くV1の方向に往復動可能なアクチュエータと、
(VII):(a)スコア線の上方においてPR1およびPR3の少なくとも一方と接触し、(b)V1と略等しい速度で移動し、(c)速度V1に対して垂直な緊張力F5を弾性部分に与えるよう構成された、必要に応じて設けられる第3の縁部拘束器ER3と、
(VIII):(a)スコア線の上方においてPR2およびPR4の少なくとも一方と接触し、(b)前記V1と略等しい速度で移動し、(c)速度V1に対して垂直であり且つF1とは反対の方向の緊張力F6を弾性部分に与えるよう構成された、必要に応じて設けられる第4の縁部拘束器ER4とを備える。
【0113】
本発明の装置の特定の実施形態では、ER1、ER2、並びに必要に応じて設けられるER3およびER4はサクションカップまたはクランプである。特定の実施形態では、ER1、ER2、並びに必要に応じて設けられるER1およびER2は、サクションカップおよび/またはクランプの位置、及ぼされる真空、クランプ力、緊張力、圧縮力、係合、解放等を必要に応じて調節するために使用可能なアクチュエータ、バルブおよび他の制御機構を備える。
【0114】
特定の実施形態では、縁部拘束器ER3およびER4は、それらが用いられる場合には、スコア線から測定して70mm〜150mmであることが推奨される。実験室試験データによれば、例えば、50mm〜200mmのより広い範囲を使用可能であったことが示唆されている。装置の空間的制約も、もう1つの決定因子となり得る。特定の実施形態では、空間を節約するために、サクションカップER3およびER4はロボットツーリングのサクションカップER1およびER2と水平に位置合わせされる。これらは、ロボットツーリングのように板ガラスの移動に対応できることが必要である。十分な耐荷重(滑りが無いことおよび長いサクションカップ寿命)をもたらすために、拘束器ユニットの各側に2〜3個のカップが垂直、水平または三角形に配置され得る。サクションカップは、S1および/またはS2の側から帯状ガラスと係合できる。特定の実施形態では、帯状ガラスが曲げられて分離される際に、ER1およびER2は少なくともS1と係合し、ER1およびER2は帯状ガラスを引くのではなく押すのが非常に望ましく、このことでより安定したプロセスとなる。特定の実施形態では、緊張力F4およびF5は、板ガラスのサイズ、板ガラスの厚さ等の因子に応じて0〜50ポンド(0〜222ニュートン)の範囲であり得る。特定の有利な実施形態では、縁部拘束器ER3およびER4は、それらが用いられる場合には、現行のロボットツーリングとしての全ての位置合わせ能力を有する。ER3およびER4がプラスチック材料でできている場合には、ER3およびER4は、より高温の上流の構成要素から熱的にシールドされ得る。特定の実施形態では、上流の壊滅的な板ガラスの破損等といった特定の事象が生じた際に、ER3およびER4が落下するガラス片の経路から退避できるように、ER3およびER4は関節アーム上に配置される。
【0115】
本発明の範囲および精神から逸脱することなく本発明に様々な修正や変更がなされ得ることは、当業者には自明である。従って、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその均等物に含まれる本発明の修正や変更を網羅することが意図される。
【符号の説明】
【0116】
ER1、ER2、ER3、ER4 縁部拘束器
FR1、FR2、FR3、FR4 固定ローラ(縁部ローラ)
NB ノーズバー
ATR アクチュエータ
M1(1)、M1(2)、M1(3)、M1L 取付板
T1 厚さ
W1 幅
V1 速度
EZ 弾性ゾーン
VEZ 粘弾性ゾーン
VZ 粘性ゾーン
S1、S2 主要な表面
TP 目標点
CL1 S1の中心線
PR1、PR2、PR3、PR4 周辺領域
CR1、CR2 中心領域
SL スコア線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
目的の板ガラスを製造する方法であって、
(A)弾性部分を有する先駆体帯状ガラスを設ける工程であって、前記弾性部分は厚さT1と、幅W1と、速度V1で移動する目標点TPを有する第1の主要な表面S1と、S1の反対側にある第2の主要な表面S2とを有し、前記S1は第1の周辺領域PR1と、第2の周辺領域PR2と、第1の中心領域CR1とを有し、前記S2は第3の周辺領域PR3と、第4の周辺領域PR4と、第2の中心領域CR2とを有し、前記PR1は前記PR3の反対側にあり、前記PR2は前記PR4の反対側にあり、前記CR1は前記CR2の反対側にある、前記工程と、
(B)地面に対して略静止した回転軸を有する第1の対の縁部ローラFR1を、第1の縁部ローラ位置において前記PR1およびPR3と係合させる工程と、
(C)地面に対して略静止した回転軸を有する第2の対の縁部ローラFR2を、第2の縁部ローラ位置において前記PR2およびPR4と係合させる工程と、
(D)前記V1と略等しい速度で移動する第1の縁部拘束器ER3を、前記目標点TPを通り前記V1に対して略垂直な線SLの下流の第1の縁部拘束器位置において、前記PR1およびPR3の少なくとも一方と接触させる工程と、
(E)前記V1と略等しい速度で移動する第2の縁部拘束器ER4を、前記線SLの下流の第2の縁部拘束器位置において、前記PR2およびPR4の少なくとも一方と接触させる工程と、
(F)前記第1の縁部拘束器位置および前記第2の縁部拘束器位置の下流において、前記S1上に、前記線SLに沿った横方向のスコア線を形成する工程と、
(G)前記スコア線の下方において、前記弾性部分に対して垂直且つ前記S1から前記S2に向かう方向の折り取り力F1を前記弾性部分に加えると共に、前記スコア線の上方において、前記F1と反対の方向の支持力F2を前記弾性部分に加えることにより、前記弾性部分を前記スコア線に沿って折り取り、前記スコア線の下方において前記目的の板ガラスを得る工程と
を備え、
前記工程(G)において、重力以外に前記V1と同じ方向の最大限の力F3が前記スコア線の下方において前記弾性部分に加えられ、0≦F3≦400ニュートンであることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記V1が、重力ベクトルに対して本質的に平行であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記F3が、前記ER3および/またはER4によって前記帯状ガラスに加えられることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記工程(G)の前に、
(G−1)前記ER3およびER4を、本質的に抵抗無く前記V1に対して平行な方向に往復動可能な柔軟なリンケージを介してアクチュエータに接続する工程
が行われることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の方法。
【請求項5】
0.9Vset≦V1≦1.1Vsetであり、ここでVsetは所定の定数であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか記載の方法。
【請求項6】
前記工程(A)が、(A1)前記速度V1を略連続的に測定する工程を更に含み、
前記工程(D)および(E)において、前記ER3およびER4の速度が略連続的にV1と同期されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の方法。
【請求項7】
前記工程(F)および(G)において、ノーズ部が前記スコア線の近傍で前記S2と接触することを特徴とする請求項1〜6のいずれか記載の方法。
【請求項8】
前記先駆体帯状ガラスが、前記V1に対して平行な速度V2で移動する粘弾性ゾーンを、前記スコア線の上方10メートル以内に更に有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか記載の方法。
【請求項9】
前記弾性ゾーンのW1/T1比が少なくとも1000であることを特徴とする請求項1〜8のいずれか記載の方法。
【請求項10】
前記弾性ゾーンの前記T1が最大で1.0mmであることを特徴とする請求項1〜9のいずれか記載の方法。
【請求項11】
弾性部分を有する連続して移動する先駆体帯状ガラスから目的の弾性板ガラスを製造する装置であって、前記弾性部分は第1の主要な表面S1と、該S1の反対側にある第2の主要な表面S2とを有し、前記S1は第1の周辺領域PR1と、第2の周辺領域PR2と、第1の中心領域CR1とを有し、前記S2は前記PR1の反対側にある第3の周辺領域PR3と、前記PR2の反対側にある第4の周辺領域PR4と、前記CR1の反対側にある第2の中心領域CR2とを有し、前記装置は、
(I)地面に対して略静止した軸を有し、速度V1を前記先駆体帯状ガラスに与えるために前記PR1、PR3、PR2およびPR4と係合可能な少なくとも二対の固定された回転縁部ローラFR1およびFR2と、
(II)前記表面S1上に略水平なスコア線を設けることが可能なスコアリング装置と、
(III)(a)前記先駆体帯状ガラスを安定させるために前記S2と接触して係合し、(b)前記V1と略等しい速度で移動し、(c)前記先駆体帯状ガラスが曲げられる際に、前記S1に対して垂直且つ前記S2から前記S1へと向かう支持力F2を与えるよう構成されたノーズ部と、
(IV)(a)前記スコア線の下方において前記PR1および前記PR3の少なくとも一方と接触し、(b)前記V1と略等しい速度で移動し、(c)前記S1に対して垂直且つF4とは反対の方向の折り取り力F1の少なくとも一部を前記弾性部分に与えるよう構成された第1の縁部拘束器ER3と、
(V)(a)前記スコア線の下方において前記PR2および前記PR4の少なくとも一方と接触し、(b)前記V1と略等しい速度で移動し、(c)前記折り取り力F1の少なくとも一部を与えるよう構成された第2の縁部拘束器ER4と、
(VI)(a)前記スコア線の上方において前記PR1およびPR3の少なくとも一方と接触し、(b)前記V1と略等しい速度で移動し、(c)前記速度V1に対して垂直な緊張力F5を前記弾性部分に与えるよう構成された、必要に応じて設けられる第3の縁部拘束器ER1と、
(VII)(a)前記スコア線の上方において前記PR2および前記PR4の少なくとも一方と接触し、(b)前記V1と略等しい速度で移動し、(c)前記速度V1に対して垂直且つ前記F1とは反対の方向の緊張力F6を前記弾性部分に与えるよう構成された、必要に応じて設けられる第4の縁部拘束器ER2と
を備えることを特徴とする装置。
【請求項12】
前記V1が、重力ベクトルに対して略平行であることを特徴とする請求項11記載の装置。
【請求項13】
前記ER1およびER2が存在する場合に、該ER1およびER2並びに前記ノーズ部の全てが、前記V1と略等しい速度で移動する共通の台に取り付けられることを特徴とする請求項11または12記載の装置。
【請求項14】
前記ER3、ER4、ER1およびER2がサクションカップまたはクランプであることを特徴とする請求項11〜13のいずれか記載の装置。
【請求項15】
前記ER3およびER4が、本質的に抵抗無く前記V1に対して平行な方向に往復動可能な柔軟なリンケージを介してアクチュエータに接続されることを特徴とする請求項11〜14のいずれか記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−96988(P2012−96988A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−238409(P2011−238409)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)