説明

帯状電極の製造装置および製造方法

【課題】活物質を変質させることなく歪み分布の緩和に好適な帯状電極の製造装置および製造方法を提供する。
【解決手段】長尺金属箔の巾方向の一部に活物質が長尺方向に連続的に塗工された塗工部W1と、巾方向の残部に長尺方向に延びる未塗工部W2と、を備える帯状素材Wから帯状電極を製造する装置である。このため、帯状素材Wに予め設定した張力を付与した状態で長尺方向に搬送する搬送手段と、前記設定した張力が付与された帯状素材Wの塗工部W1に対して予め設定した温度で加熱しつつ圧縮する加圧ロール15を備えたロールプレス成形装置6と、を備える。そして、ロールプレス成形装置6を通過した帯状素材Wの未塗工部W2に対して加熱ローラ20を転動接触させることにより予め設定した温度で加熱して未塗工部W2に集中的に伸びを与える未塗工部加熱装置7を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状電極の製造装置および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から湾曲したり波打ったりしない帯状電極を製造する方法が提案されている(特許文献1参照)。これは、長尺金属箔に帯状に活物質が連続的に塗工された活物質塗工部と帯状の未塗工部を有する帯状素材を両面から一対の加圧ロールで圧縮するプレス成形工程と、成形後に加熱炉によって帯状素材を加熱して、長尺状の帯状素材に存在する不均一な歪み分布を緩和させるシート歪み緩和工程と、を備える。そして、シート歪み緩和工程では、加圧ロールで圧縮された帯状素材に張りを与えながら巻取りロールで巻取り、加圧ロールと巻取りロールとの間で帯状素材に矯正ロールを圧接させて未塗工部に集中的に伸びを与えて、矯正するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−100286号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来例では、活物質塗工部を厚さ方向に加圧するプレス成形工程において、活物質塗工部の長尺方向への伸び量と加圧されない未塗工部の伸び量とで、差が生じることにより、帯状素材に不均一な歪みが発生される。このため、その後に、帯状素材を加熱炉で加熱して、未塗工部に長手方向の張力を掛けて、帯状素材に存在する不均一な歪み分布を緩和させる必要があり、その際に塗工されている活物質も加熱されることからその変質に対する懸念があった。
【0005】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、活物質を変質させることなく歪み分布の緩和に好適な帯状電極の製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、長尺金属箔の巾方向の一部に活物質が長尺方向に連続的に塗工された塗工部と、巾方向の残部に長尺方向に延びる未塗工部と、を備える帯状素材から帯状電極を製造する装置である。このため、帯状素材に予め設定した張力を付与した状態で長尺方向に搬送する搬送手段と、前記設定した張力が付与された帯状素材の塗工部に対して予め設定した温度で加熱しつつ圧縮する加圧ロールを備えたロールプレス成形装置と、を備える。そして、本発明においては、ロールプレス成形装置を通過した帯状素材の未塗工部に対して加熱ローラを転動接触させることにより予め設定した温度で加熱して未塗工部に集中的に伸びを与える未塗工部加熱装置を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
したがって、本発明では、未塗工部加熱装置による加熱により、塗工されている活物質も加熱されることがなく、張力が付与されている帯状素材の未塗工部に集中的に伸びを与えることができ、活物質の変質に影響を与えずに、帯状素材の未塗工部の伸びを塗工部の伸びと同等にでき、帯状素材に存在する不均一な歪み分布を緩和させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態を示す帯状電極の製造装置の概略構成図。
【図2】帯状素材の説明図。
【図3】制御装置により実行される張力制御の制御フローチャート。
【図4】ロールプレス成形装置及び未塗工部加熱装置の斜視図。
【図5】ロールプレス成形装置及び未塗工部加熱装置の平面図。
【図6】未塗工部加熱装置の拡大図。
【図7】制御装置による帯状素材の張力設定範囲及びロールプレス成形装置及び未塗工部加熱装置の温度設定範囲を説明する特性図。
【図8】未塗工部の変形例を示す拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の帯状電極の製造装置および製造方法を実施形態に基づいて説明する。図1は、本発明を適用した帯状電極の製造装置の実施形態を示す概略構成図である。
【0010】
帯状電極の製造装置は、長尺の帯状素材Wの巻出し装置1と、帯状素材Wの巻取り装置2と、ロールプレス成形装置6の前側及び後側の帯状素材Wの張力を夫々検出する前段及び後段の張力検出装置3,4と、帯状素材Wの張力を制御する制御装置5と、からなる帯状素材Wの搬送手段を備える。そして、帯状素材Wは、制御装置5により加熱温度が夫々制御される、帯状素材Wの活物質塗工部W1を加熱しつつ加圧してプレス成形するロールプレス成形装置6と、帯状素材Wの活物質未塗工部W2を加熱する未塗工部加熱装置7と、を経由して、搬送手段により長手方向に搬送される。
【0011】
長尺の帯状素材Wは、ロールプレス加工後に裁断されることにより、非水系二次電池、例えば、リチウム二次電池に使用されるシート状の正極電極に使用されるものである。しかしながら、シート状の負極電極の製造にも適用することができる。正極電極を構成する帯状素材Wは、アルミニウム箔やステンレス箔などの金属箔集電体の表面に、リチウムコバルト複合酸化物やリチウムマンガン複合酸化物などを含む正極活物質が層状に圧着されたものである。また、負極電極を構成する帯状素材Wは、銅箔やステンレス箔などの金属箔集電体の表面に、黒鉛やコークスなどを含む負極活物質が層状に圧着されたものである。この帯状素材Wは、図2に示すように、長尺帯状の金属箔の両面に幅方向両側の未塗工部W2を残して電極材を帯状に塗布して乾燥した活物質塗工部W1と、金属箔の幅方向両側の活物質を塗布していない未塗工部W2と、を備える帯状電極の素材である。この帯状素材Wは、ロール状に巻付けた巻出しロールWOにより供給される。
【0012】
搬送手段を構成する巻出し装置1は、帯状素材Wの巻出しロールWOを装着し、内蔵するブレーキ装置により制動を加えつつ巻出しロールWOから帯状素材Wを繰出すよう作動する。また、搬送手段を構成する巻取り装置2は、巻出し装置1から繰出されて、ロールプレス成形装置6及び未塗工部加熱装置7を経由して加工された帯状素材Wを、巻取りモータにより回転駆動する巻取りロールWXに巻取るよう作動する。即ち、巻出し装置1の巻出しロールWOから繰出される帯状素材Wは、ロールプレス成形装置6を経由することで帯状素材Wの塗工部W1にプレス成形が施され、未塗工部加熱装置7により加熱されることにより未塗工部W2が伸ばされて、巻取り装置2の巻取りロールWXに巻取られる。
【0013】
次に、帯状素材Wの張力調整について、以下に説明する。即ち、帯状素材Wは巻出し装置1と巻取り装置2との間において、前段張力検出装置3,4及び後段張力検出装置3,4は、巻出し装置1−ロールプレス成形装置6間及びロールプレス成形装置6−巻取り装置2間の帯状素材Wの張力を夫々検出する。具体的には、前段及び後段の張力検出装置3,4は、一対のガイドローラ11とその間に配置した張力検出ローラ12とに帯状素材Wを掛け回して、張力検出ローラ12に作用する横方向荷重を検出することにより、帯状素材Wに作用している張力を検出する。検出された張力値は、加圧ロール前張力値・加圧ロール後張力値として制御装置5に入力される。制御装置5は、前段張力検出装置3及び後段張力検出装置4により夫々検出された張力の検出信号に基づいて、巻出し装置1のブレーキ力及び巻取り装置2のモータトルクを制御して、帯状素材Wの張力を制御する。即ち、制御装置5は、巻出し装置1の巻出しロールWOに加える制動力を調整することにより、巻出される帯状素材Wの加圧ロール15より前段の張力値を調整する。また、制御装置5は、巻取り装置2の巻取りロールWXを回転駆動する巻取りモータの駆動トルクを調整することにより、巻取る帯状素材Wの加圧ロール15より後段の張力値を調整する。
【0014】
図3は制御装置5により所定時間毎に実行される張力制御の制御フローチャートである。帯状素材Wの張力制御においては、先ず、ステップS1において、前段張力検出装置3より検出された張力が読込まれる。次いで、ステップS2において、読込まれた張力が、下限設定値より低いか否かが判定され、下限設定値より低い場合にはステップS3に進み、巻出し装置1のブレーキ力を増加させ、ステップS6へ進む。また、ステップS2においての判定において、読込まれた張力が、下限設定値以上である場合にはステップS4に進み、上限設定値より高いか否かが判定される。そして、読込まれた張力が、上限設定値より低い場合にはステップS6へ進み、上限設定値より高い場合にはステップS5へ進んで巻出し装置1のブレーキ力を低下させた後ステップS6へ進む。
【0015】
ステップS6では、後段張力検出装置4より検出された張力が読込まれる。ステップS7では、読込まれた張力が、下限設定値より低いか否かが判定され、下限設定値より低い場合にはステップS8に進み、巻取り装置2のモータトルクを増加させ、ステップS11へ進む。また、ステップS7においての判定において、読込まれた張力が、下限設定値以上である場合にはステップS9に進み、上限設定値より高いか否かが判定される。そして、読込まれた張力が、上限設定値より低い場合にはステップS11へ進み、上限設定値より高い場合にはステップS10へ進んで巻取り装置2のモータトルクを低下させた後ステップS11へ進む。 ステップS11では、帯状素材Wのプレス成形が完了したか否かが判定され、完了している場合には処理を終了させ、完了していない場合にはステップS1へ進んで、ステップS1〜ステップS10の処理を繰返す。
【0016】
以上に説明した巻出し装置1、前段張力検出装置3、後段張力検出装置4、巻取り装置2は、帯状素材Wに予め設定した張力を付与した状態で長尺方向に搬送する搬送手段を構成している。なお、搬送手段は、帯状素材Wに予め設定した張力を付与した状態で長尺方向に搬送するものであれば、上記構成のものに限定されるものではなく、他の構成のものであってもよい。
【0017】
ロールプレス成形装置6は、図4及び図5に示すように、巻出し装置1と巻取り装置2との間で、前述の張力が調整された帯状素材Wに対して、加熱された上下一対の加圧ロール15により帯状素材Wの塗工部W1を上下両面から加熱しながら加圧してプレス成形する。このため、加圧ロール15には、加熱ヒータ16と温度センサ17が内臓され、温度センサ17による検出値が制御装置5に入力され、検出される温度が設定した温度範囲内となるように制御装置5により加熱ヒータ16が制御される。このように、帯状素材Wの塗工部W1を上下両面から加熱しながら加圧してプレス成形することにより、常温でのプレス成形に比較して、プレス成形の成型荷重を低下させることができ、プレス成形による皺などの歪みの発生を抑制することができる。
【0018】
しかしながら、帯状素材Wを加圧ロール15間に通したとき、活物質塗工部W1の厚みは活物質未塗工部W2の厚みよりも厚いため、活物質塗工部W1は、ロールプレスによる加圧で伸び率や変形量が大きいのに対し、活物質未塗工部W2は、そのような伸び率や変形量がほとんどない。その結果、帯状素材Wに不均一な歪みが生じる。また、場合によっては、活物質塗工部W1が波打ったような形に変形することもある。こうなると、帯状素材Wを所定形状に裁断したとき、シート状の電極が湾曲するなど変形する。このため、電池を製造する際、電極をうまく積層できないなどの問題が生じる。このような問題を解決すべく、本実施形態では、その下流に未塗工部加熱装置7を配列して、帯状素材Wのうち、活物質未塗工部W2を加熱しながら、帯状素材Wに長手方向の張力を掛けて、帯状素材Wに存在する不均一な歪み分布を緩和させるようにしている。
【0019】
未塗工部加熱装置7は、図4〜図6に示すように、プレス成形後の帯状素材Wの活物質未塗工部W2に転動接触して活物質未塗工部W2を加熱する加熱ローラ20と、加熱ローラ20との間で帯状素材Wの活物質未塗工部W2を挟んで転動するガイドローラ21と、を備える。加熱ローラ20とガイドローラ21との軸はリンク22により連結されている。加熱ローラ20は帯状素材Wの両側に設けた各活物質未塗工部W2の幅方向寸法と同等の軸方向長さ寸法が設定されて、帯状素材Wの各活物質未塗工部W2の全幅領域に接触する。また、加熱ローラ20は加圧ロール15の表面に転動接触することにより、加熱された加圧ロール15からの伝熱によりそれ自体が温度上昇されて、他方で接触する帯状素材Wの各活物質未塗工部W2を加熱する。
【0020】
従って、帯状素材Wの未塗工部W2は、加えられる張力が調整された状態で、加熱ローラ20と接触することにより温度上昇されることにより、塗工部W1と同等の伸びが加えられる。このような工程を設ければ、活物質への熱的影響を抑えながら、帯状素材Wに存在する不均一な歪み分布を緩和させることができる。従って、その後に帯状素材Wをシート状の電極として所定形状に裁断してシート電極を形成しても、シート電極に湾曲など変形が生じにくい。また、活物質への熱的影響を考慮する必要がないため、活物質未塗工部W2への加熱温度は、金属箔の強度のみを考慮して上げることができる。このため、長い加熱炉を設置しなくても、シート電極の生産性を向上させることができる。
【0021】
また、ガイドローラ21は、図6に示すように、上下方向(実線参照)若しくは加圧ロール15の円周方向(破線参照)にその位置を変更可能に構成されている。このため、ガイドローラ21の上下方向の位置変更に伴い、加圧ロール15を通過した帯状素材Wの傾きを変更できる。言い換えれば、ガイドローラ21を上下方向にその位置を変更させることにより、帯状素材Wの加圧ロール15への接触角度θおよび接触長さLを調整することができる。なお、ガイドローラ21の上記した上下方向への位置変更時においても、加熱ローラ20はリンク22によりガイドローラ21回りに回動して加圧ロール15への接触状態を継続するようにしている。このため、加熱ローラ20は加圧ロール15より常に受熱状態を維持して、帯状素材Wの活物質未塗工部W2を加熱可能である。
【0022】
上記した帯状素材Wの張力の上限設定値は、図7に示すように、帯状素材Wが破断を開始する張力値THに設定される。また、帯状素材Wの張力の下限設定値は、ロールプレス成形装置6及び未塗工部加熱装置7を通過することにより、帯状素材Wの塗工部W1及び未塗工部W2に発生する皺などが伸ばされ、帯状素材Wに発生する歪みを抑制することができる張力値TLに設定される。
【0023】
また、制御装置5により温度制御されるロールプレス成形装置6・未塗工部加熱装置7の制御温度について説明する。この制御温度の下限値は、図7に示すように、ロールプレス成形装置6により帯状素材Wに発生する皺などを未塗工部加熱装置7により充分に伸ばすことができ、帯状素材Wの歪みを抑制することができる下限温度Tbに設定する。また、制御温度の上限値は、帯状素材Wの塗工部W1に塗工された活物質からなる電極材が変質しない上限温度Taに設定する。電極材の変質は、例えば、活物質を結合しているバインダが変質する場合を含む。なお、図7から分るように、下限温度Tbは帯状素材Wの張力が上限の張力値THに近い側では、若干低下させてもよい。
【0024】
以上の構成の帯状電極の製造装置においては、ロールプレス成形後において、設定した張力が付与されている帯状素材Wに対して、未塗工部加熱装置7によりその活物質未塗工部W2を加熱することで、帯状素材Wの未塗工部W2を伸ばしやすくでき、塗工部W1の伸びと同等にでき、帯状素材Wに存在する不均一な歪み分布を緩和させることができる。
【0025】
図8は未塗工部加熱装置7の変形例であり、加熱ローラ20の加圧ロール15への接触を止めて、加熱ローラ20自体に熱源となる加熱ヒータを備えるようにしたものである。加熱ローラ20の加熱温度は、加圧ロール15の温度と同等に設定してもよく、また、加熱ローラ20が帯状素材Wの未塗工部W2のみに接触するものであるため、未塗工部W2に適した温度に設定することもできる。この場合においては、加熱ローラ20とガイドローラ21との相対位置は、上下方向の位置関係を保つように、図示しないが、固定的若しくは弾性的に位置保持されるようにする。この場合においても、加熱ローラ20により帯状素材Wの各活物質未塗工部W2を加熱することができると共に、ガイドローラ21を上下方向に移動させることにより、帯状素材Wの加圧ロール15への接触角度および接触長さを調整することができる。
【0026】
なお、上記実施形態において、正極の帯状電極の製造方法について説明したが、負極の帯状電極の製造にも本発明を適用できる。負極の帯状電極の場合にも、未塗工部加熱装置7において、負極活物質への熱的影響を抑えながら、長尺状の帯状素材Wに存在する不均一な歪み分布を緩和させることができる。従って、その後に長尺状の帯状負極電極を裁断して負極電極を形成しても、負極電極に湾曲など変形が生じにくい。
【0027】
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
【0028】
(ア)長尺金属箔の巾方向の一部に活物質が長尺方向に連続的に塗工された塗工部W1と、巾方向の残部に長尺方向に延びる未塗工部W2と、を備える帯状素材Wから帯状電極を製造する装置である。このため、帯状素材Wに予め設定した張力を付与した状態で長尺方向に搬送する搬送手段と、前記設定した張力が付与された帯状素材Wの塗工部W1に対して両面から予め設定した温度で加熱しつつ圧縮する一対の加圧ロール15を備えたロールプレス成形装置6と、を備える。そして、ロールプレス成形装置6を通過した帯状素材Wの未塗工部W2に対して加熱ローラ20を転動接触させることにより予め設定した温度で加熱して未塗工部W2に集中的に伸びを与える未塗工部加熱装置7を備える。
【0029】
このため、未塗工部加熱装置7による加熱により、張力が付与されている帯状素材Wの未塗工部W2に集中的に伸びを与えることができ、帯状素材Wの未塗工部W2の伸びを塗工部W1の伸びと同等にでき、帯状素材Wに存在する不均一な歪み分布を緩和させることができる。また、活物質未塗工部W2を加熱ローラ20が押えるので、帯状電極の幅方向の位置ズレを抑制でき、帯状電極の歩留まりを向上させることができる。
【0030】
(イ)帯状素材Wに加える所定の張力は、ロールプレス成形装置6により圧縮される塗工部W1の伸びと未塗工部加熱装置7による未塗工部W2の加熱による伸びとにより帯状素材Wに発生する歪みを抑制できる張力値TLを下限とし、帯状素材Wが破断を開始する張力値THを上限とする範囲内に設定する。また、ロールプレス装置及び未塗工部加熱装置7の予め設定した温度は、ロールプレス成形装置6により圧縮される塗工部W1の伸びと未塗工部加熱装置7による未塗工部W2の加熱による伸びとにより帯状素材Wに発生する歪みを抑制できる下限温度Tbと帯状素材Wの塗工部W1に塗工された活物質からなる電極材が変質しない上限温度Taとの範囲内で設定する。このため、帯状電極の塗工部W1を構成する活物質の変質を抑制すると共に帯状電極の破断を抑制しつつ、帯状電極の歪み分布を緩和させることができる。
【0031】
(ウ)未塗工部加熱装置7は、一方でロールプレス成形装置6の加圧ロール15表面に転動接触することにより加圧ロール15より伝熱されて温度調整され且つ他方で帯状素材Wの未塗工部W2に転動接触する加熱ローラ20と、帯状素材Wの未塗工部W2を挟んで加熱ローラ20と対面して配置されて未塗工部W2に転動接触するガイドローラ21と、により構成されている。このため、未塗工部加熱装置7自身に独自の加熱手段を設ける必要がなく、未塗工部加熱装置7の構成を簡素化することができる。
【0032】
(エ)未塗工部加熱装置7は、ロールプレス成形装置6の加圧ロール15の円周方向若しくは上下方向に移動可能に構成されている。このため、ロールプレス後に、帯状素材Wが加圧ロール15に接触する時間を、変化させることができ、帯状素材Wの塗工部W1への加熱時間を調整することができる。
【符号の説明】
【0033】
W 帯状素材
W1 塗工部
W2 未塗工部
1 巻出し装置
2 巻取り装置
3,4 張力検出装置
5 制御装置
6 ロールプレス成形装置
7 未塗工部加熱装置
15 加圧ロール
20 加熱ローラ
21 ガイドローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺金属箔の巾方向の一部に活物質が長尺方向に連続的に塗工された塗工部と、巾方向の残部に長尺方向に延びる未塗工部と、を備える帯状素材から帯状電極を製造する装置であり、
前記帯状素材に予め設定した張力を付与した状態で長尺方向に搬送する搬送手段と、
前記設定した張力が付与された帯状素材の塗工部に対して予め設定した温度で加熱しつつ圧縮する加圧ロールを備えたロールプレス成形装置と、
前記ロールプレス成形装置を通過した帯状素材の未塗工部に対して加熱ローラを転動接触させることにより予め設定した温度で加熱して未塗工部に集中的に伸びを与える未塗工部加熱装置と、を備えることを特徴とする帯状電極の製造装置。
【請求項2】
前記所定の張力は、ロールプレス成形装置により圧縮される塗工部の伸びと未塗工部加熱装置による未塗工部の加熱による伸びとにより帯状素材に発生する歪みを抑制できる張力値TLを下限とし、帯状素材が破断を開始する張力値THを上限とする範囲内に設定され、
前記予め設定した温度は、ロールプレス成形装置により圧縮される塗工部の伸びと未塗工部加熱装置による未塗工部の加熱による伸びとにより帯状素材に発生する歪みを抑制できる下限温度Tbと帯状素材の塗工部に塗工された活物質からなる電極材が変質しない上限温度Taとの範囲内で設定することを特徴とする請求項1に記載の帯状電極の製造装置。
【請求項3】
前記未塗工部加熱装置は、一方でロールプレス成形装置の加圧ロール表面に転動接触することにより加圧ロールより伝熱されて温度調整され且つ他方で帯状素材の未塗工部に転動接触する加熱ローラと、帯状素材の未塗工部を挟んで加熱ローラと対面して配置されて未塗工部に転動接触するガイドローラと、により構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の帯状電極の製造装置。
【請求項4】
前記未塗工部加熱装置は、ロールプレス成形装置の加圧ロールの円周方向若しくは上下方向に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の帯状電極の製造装置。
【請求項5】
前記ロールプレス成形装置は、前記設定した張力が付与された帯状素材の塗工部に対して両面から予め設定した温度で加熱しつつ圧縮する一対の加圧ロールを備えたことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の帯状電極の製造装置。
【請求項6】
長尺金属箔の巾方向の一部に活物質が長尺方向に連続的に塗工された塗工部と、巾方向の残部に長尺方向に延びる未塗工部と、を備える帯状素材から帯状電極を製造する方法であり、
搬送手段により前記帯状素材に予め設定した張力を付与した状態で長尺方向に搬送し、
搬送される帯状素材の塗工部を予め設定した温度に加熱された加圧ロールで圧縮し、
その後に、帯状素材の未塗工部に予め設定した温度に加熱された未塗工部加熱ローラを転動接触させて、未塗工部に集中的に伸びを与えて、帯状電極を製造することを特徴とする帯状電極の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−69637(P2013−69637A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209225(P2011−209225)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】