説明

帯電微粒子水による保湿方法及び静電霧化装置

【課題】人肌に対して高い保湿性能を得ることができる帯電微粒子水による保湿方法及び静電霧化装置を提供する。
【解決手段】水を静電霧化して、活性種としてヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含む帯電微粒子水を生成し、肌に暴露させる。帯電微粒子水は、粒子径が3〜100nmである。帯電微粒子水は、マイナスに帯電している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電微粒子水、つまりは帯電しているとともに微粒子とされている帯電微粒子水による保湿方法及び静電霧化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水に電荷を付与することによって生成される帯電微粒子水は、吸着性が高く、レイリー分裂によって微細化されやすい。このような帯電微粒子水の特徴を生かし、特開平13−170514号公報には、ナノメータサイズの粒子径の帯電微粒子水を効率のよい集塵剤として利用した例が示されている。
【0003】
一方、活性化学種であるラジカルは、化学的に反応性が高くて悪臭成分の分解無臭化などに効果的であることが知られている。しかし、活性であるが故に、非常に不安定な物質で空気中では短寿命であり、臭気成分と反応する前に消滅してしまうために十分な効果を得ることが困難であった。
【0004】
また、より効果を高める目的で、ラジカルを含んだ微粒子水を用いることによって空気浄化などを試みたものが特開昭53−141167号公報、特開平13−96190号公報などに示されている。ただし、これらの例での微粒子水は、その粒子径がミクロンサイズであり、空気浄化を目的としたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平13−170514号公報
【特許文献2】特開昭53−141167号公報
【特許文献3】特開平13−96190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の従来の問題点に鑑みて発明したものであって、人肌に対して高い保湿性能を得ることができる帯電微粒子水による保湿方法及び静電霧化装置を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明に係る帯電微粒子水による保湿方法は、水を静電霧化して、活性種を含む帯電微粒子水を生成し、肌に暴露させることを特徴とする。
【0008】
また、静電霧化装置は、水を静電霧化して、活性種を含み、肌に暴露させて保湿するための帯電微粒子水を生成することを特徴とする。
【0009】
そして、前記活性種として、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいることが好ましい。
【0010】
また、前記帯電微粒子水は、粒子径が3〜100nmであることが好ましい。
【0011】
また、前記帯電微粒子水は、マイナスに帯電していることが好ましい。
【0012】
このように、水を静電霧化することで生成した活性種を含む帯電微粒子水を肌に暴露させて保湿効果を高めることができる。
【0013】
含有するラジカルは、上述のように、ヒドロキシルラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のものであるために、反応性も高く、また大気中の酸素や水蒸気から生成されるためにラジカル原材料を用いる必要もなくて、ラジカル含有状態の確保が容易となる。
【0014】
また、帯電微粒子水は、粒子径が3〜100nm(電気移動度が0.1〜0.001cm2/vsec)としたのは、粒子径が3nm未満になると、帯電微粒子水の寿命が極端に短くなり、また、粒子径が100nmを超えると後述の人の肌の保湿性能の確保が困難となる(100nm程度といわれている肌の角質層の隙間からの帯電微粒子水の浸透が困難となる)からであり、この結果、帯電微粒子水の粒子径を3〜100nmとすることで、肌の角質層の隙間から帯電微粒子水の浸透を良好に行うことができる。
【0015】
含有するラジカルは、上述のように、ヒドロキシルラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のものであるために、反応性も高く、また大気中の酸素や水蒸気から生成されるためにラジカル原材料を用いる必要もなくて、ラジカル含有状態の確保が容易となる。
【0016】
ちなみに、粒子径がμmオーダーのものであると、含まれる活性種が殆どなく、また帯電微粒子水が有する電荷量もきわめて低く、また、対向電極を接地し、水に負電圧を加えた場合には、マイナスイオン効果も期待することができるものの、その効果は低く、実際上、湿度調整に有効なだけである。
【0017】
しかも上記ラジカルに加えて酸性化学種を含有していると、代表的な悪臭成分であるアミン化合物などのアルカリ性臭気成分に対しより効果的に作用させることができる。
【0018】
加えるに、上記酸性化学種が、窒素酸化物や有機酸であると、大気中の窒素や二酸化炭素から生成することができるために、原材料を添加することなく、酸性化学種含有状態の確保が容易となる。
【0019】
硝酸、硝酸水和物、亜硝酸、亜硝酸水和物であってもよい。これらである場合、帯電微粒子水を弱酸性に保つことが可能で、アルカリ性臭気成分への作用だけでなく、人の肌への浸透、保湿への効果を併せ持つことになる。
【0020】
帯電微粒子水の帯電極性は、特に限定はされないが、マイナスに帯電させることによって、脱臭作用だけでなく、いわゆるマイナスイオン効果として知られるストレス低減効果をも併せ持つことができる上に、ナノメータサイズのものであるために、通常のマイナスイオンよりも高い効果を得ることができる。
【0021】
なお、ラジカルを含有する上に粒子径がナノメータサイズであると、空気中に放出された時の寿命が長くて拡散性が大である。
【0022】
ナノメータサイズの粒子径に霧化された帯電微粒子水は、どのような装置で生成してもよいが、静電霧化装置、殊に水を搬送する多孔質体で構成された搬送体と、搬送体で搬送される水に電圧を印加する水印加電極と、上記搬送体と対向する位置に配された対抗電極と、上記水印加電極と対向電極との間に高電圧を印加する電圧印加部とからなり、搬送体で保持される水と対向電極との間に印加される高電圧によって水を帯電微粒子水とするものを好適に用いることができる。
【0023】
このような静電霧化装置において、多孔質体の材質、形状、対向電極極との距離、印加する電圧値、電流値などを制御することで、目的とするナノメータサイズの粒子径の粒子を容易に得ることができる。
【0024】
なお、得られた帯電微粒子の粒子径は、微分型電気移動度計測器(DMA/ワイコフ興業製)を用いて電気移動度として計測し、ストークスの法則に基づいて粒子径に換算している。このようにすることで粒子径の正確な測定が可能となるとともに、上記の静電霧化装置の構造や運転条件に粒子径の制御についてのフィードバックが可能となり、目的とするナノメータサイズの粒径を得ることがはじめて可能となった。
【0025】
帯電微粒子の粒子径が3nm以上である場合、3nm未満である時よりもその寿命は明らかに長寿命化される。アルミ容器内に帯電微粒子を取り込んで粒子数の変化を微分型電気移動度計測器(DMA)を用いて測定することで、20nm付近の粒子径をもつ帯電微粒子水イと1nmの粒子径の帯電微粒子水ロの粒子数とその寿命を求めた結果を図1に示す。なお、20nmの粒子径の微粒子水イは、後述の実施例で示した静電霧化装置を用いて生成し、1nmの粒子径の微粒子水ロはコロナ放電電極を用いて生成した。
【0026】
帯電微粒子水は、室内に放出する場合、特に限定するものではないが、0.1g/hr以上の量を噴霧することが望ましい。なお、この量は静電霧化装置内のタンク水の減少量で測定した。
【0027】
帯電微粒子水に含まれるラジカルの分析は、帯電微粒子をスピントラップ剤が含まれた溶液に導入することによってラジカルを安定化した後、電子スピン共鳴スペクトル法(ESR)によって測定することができる。
【0028】
また帯電微粒子水に含まれる酸性化学種に関しては、帯電微粒子を純水中に導入した後、イオンクロマトグラフィーによって測定することができる。
【0029】
また、帯電微粒子水内の酸性化学種に関しては、その他に、ドリフトチューブ型イオン移動度/質量分析装置によっても計測することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明は、水を静電霧化して、活性種を含む帯電微粒子水を生成し、肌に暴露させるので、寿命が長く、人肌に対して高い保湿性能を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(a)(b)本発明の方法及び装置における帯電微粒子水の特性を示す説明図である。
【図2】同上の帯電微粒子水の生成に供する静電霧化装置の一例の分解斜視図である。
【図3】同上の動作の説明図である
【図4】同上の他例の動作説明図である。
【図5】同上の静電霧化装置で生成した帯電微粒子水の粒子径分布計測結果を示す特性図である。
【図6】同上の静電霧化装置で生成した帯電微粒子水中のラジカルの電子スペクトル(ESR)チャートである。
【図7】(a)は同上の静電霧化装置で生成した帯電微粒子水中の質量スペクトルチャート、(b)は分子量と化学式とイオン数との説明図である。
【図8】同上の耐電微粒子水によるチャンバー内のアセトアルデヒド分解性能測定結果を示す特性図である。
【図9】同上の帯電微粒子水による杉花粉抗原のELISA試験による不活性評価結果の特性図である。
【図10】同上の帯電微粒子水による冷水負荷後の肌角質層の導電率の特性図である。
【図11】同上の帯電微粒子水による冷水負荷後の手指温度の特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明すると、図2は帯電微粒子水を生成するための静電霧化装置の一例を示すもので、水溜め部1と、下端を水溜め部1内の水に浸している複数本の多孔質体からなる棒状の搬送体2と、これら搬送体2の保持及び水に対する電圧の印加のための水印加電極4と、絶縁体からなる保持部6によって保持されているとともに上記複数本の搬送体2の先端部と対向する対向部を備えている対向電極3と、上記水印加電極4と対向電極3との間に高電圧を印加する電圧印加部5とからなるもので、対向電極3と水印加電極4は共にカーボンのような導電材を混入した合成樹脂やSUSのような金属で形成されている。
【0033】
また、上記搬送体2は多孔質体で形成されてその上端が針状に尖った針状霧化部となっているもので、複数本、図示例では6本の搬送体2が水印加電極4に取り付けられている。これら搬送体2は水印加電極4の中央5を中心とする同心円上に等間隔で配置されて、上部が水印加電極4よりも上方に突出し、下部は下方に突出して上記水溜め部1内に入れられた水と接触する。
【0034】
対向電極3は、中央に開口部を有するとともに、この開口部の縁が上方から見た時、前記複数本の搬送体2の上端の針状霧化部を中心とする複数の同一径の円弧Rを他の円弧で滑らかにつないだものとなっている。対向電極3を接地し、水印加電極4に電圧印加部5を接続して高電圧を印加するとともに、多孔質体で形成されている搬送体2が毛細管現象で水を吸い上げている時、搬送体2の上端の針状霧化部が印加電極4側の実質的な電極として機能すると同時に、対向電極3の上記円弧Rが実質的な電極として機能するものである。電圧印加部5としては、700〜1200V/mmの電界強度を与えることができるものが好ましい。
【0035】
そして、上記搬送体2は上述のように毛細管現象で水を先端にまで運ぶことができる多孔質体で形成されているのであるが、ここでは気孔率が10〜60%、粒子径が1〜100μm、先端針状部の断面形状がφ0.5mm以下の多孔質セラミックを用いているとともに、対向電極3が接地され且つ水印加電極4にマイナスの電圧が印加される場合、使用する水のpH値でマイナスに帯電する等電位点を有する材料からなるものを使用している。なお、水のpH値が7であるならば、シリカを主成分とするものを好適に用いることができる。
【0036】
このような材質を選択しているのは次の理由による。すなわち、霧化させる水が例えば水道水、地下水、電解水、pH調整水、ミネラルウォーター、ビタミンCやアミノ酸等の有用成分が入った水、アロマオイルや芳香剤や消臭剤等が添加されている水等に、Ca,Mg等のミネラル成分が入った水である時、毛細管現象で搬送体の先端部まで引き上げられた時、空気中のCOと反応し、搬送体の先端部にCaCO,MgO等として析出付着して静電霧化が起こり難くなってしまうが、使用する水のpH値でマイナスに帯電する等電位点を有する材料からなるものを使用した場合、水印加電極4にマイナスの電圧を印加した状態で水と多孔質セラミックである搬送体2とが接触した時、シラノール基の乖離によって搬送体2が図3に示すようにマイナスに帯電し、対向電極方向が図中の上方向である時、多孔質セラミックである搬送体2中の毛細管内の水は静電ポテンシャルの分布(ゼータ電位を図中Zで示す)を持つものとなって電気二重層が形成され図中イで示す方向のいわゆる電気浸透流が発生するものであり、Ca,Mg等の陽イオンは電位の低い水印加電極4の方に向かう。つまり、水は搬送体2内を毛細管現象で対向電極3方向に引き上げられるが、水が含んでいるCa,Mg等の陽イオンは対向電極3側に向かわないために、搬送体2の先端で空気中のCOと反応し、搬送体の先端部にCaCO,MgO等として析出付着するという事態を招くことがないものである。図中Sは電気浸透流の流速がゼロになる面(滑り面)を示している。
【0037】
対向電極3が接地され且つ水印加電極4にプラスの電圧が印加される場合には、使用する水のpH値でプラスに帯電する等電位点を有する材料からなる多孔質セラミックを搬送体2に使用する。なお、水のpH値が7であるならば、アルミナを主成分とするものを好適に用いることができる。この場合、図4に示すように、電位の高い水印加電極4方向に流れる電気浸透流の陰イオンの流れに伴ってCa,Mg等の陽イオンも水印加電極4の方に向かう。従って、この場合においても、Ca,Mg等の陽イオンは対向電極3側に向かわないために、搬送体2の先端で空気中のCOと反応し、搬送体の先端部にCaCO,MgO等として析出付着するという事態を招くことがないものである。
【0038】
いずれにせよ、水溜め部1内の水に搬送体2を接触させて毛細管現象で水を吸い上げさせ、さらに対向電極3を接地するとともに水印加電極4に電圧印加部5を接続して、水印加電極4に電圧を印加した時、この電圧が搬送体2の針状霧化部に位置する水にレイリー分裂を起こさせることができる高電圧であれば、搬送体2の上端の針状霧化部において水はレイリー分裂を起こして霧化する。静電霧化がなされるわけであり、この時、静電霧化で生じるミストは、電界強度が700〜1200V/mmである時、3〜100nmの粒子径を有するナノメータサイズのものとなるとともに、ラジカル(ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド等)を持ち、且つ強い電荷量を持ったものとなる。
【0039】
ところで、700〜1200V/mmの電界強度を与えた時、粒子径が3〜20nmのミストと粒子径が30〜50nmのミストが多く発生するが、電界強度を高くすると、粒子径が小さくなる方向にシフトすることが観察でき、また電界強度900V/mmで16〜20nmの粒子径を持つミストを多く発生させた場合に、上記の各効果が特に有効に現れた。
【0040】
ちなみに搬送体2としては、前述のように、気孔率が10〜60%、粒子径が1〜100μm、先端針状部の先端断面形状がφ0.5mm以下の多孔質セラミックを用いると、粒子径が揃ったミストを発生させることができ、特に気孔率が40%、粒子径が1〜3μm、針状霧化部の先端断面形状がφ0.25mmの時に900V/mmの電界強度を与えた時、16〜20nmの粒子径を持つミストを多く発生させることができた。
【0041】
なお、搬送体2は多孔質セラミックからなるものに限定されるものではなく、たとえばフェルトなどを用いてもよい。ただし、粒子径が揃ったミストを発生させるという点では多孔質セラミックが有利である。
【0042】
そして、このようなナノメータサイズの帯電微粒子水は、脱臭、花粉が持つ花粉症を引き起こす物質の不活性化、空気中のウイルスや菌の不活性化、空気中の黴の除去及び抗黴効果といった作用を有することが確認できた。
【0043】
すなわち、水印加電極4が負電極となるようにした状態で上記の静電霧化装置によって得られた帯電微粒子水が、微分型電気移動度計測器による測定で図5に示す粒径分布で示されるもの、つまり20nm付近をピークとして、10〜30nmに分布を持つものであり、また、生成される帯電微粒子水の量が水溜め部1内の水の減少量による測定で0.5g/hrであり、帯電微粒子水中のラジカルの電子スピンスペクトル法による測定チャートが図6に示されるもの(図中Aはラジカルの検出ピーク、Bは標準物質である酸化マンガンのピーク)であり、さらに帯電微粒子水中のドリフトチューブ型イオン移動度/質量分析装置で測定された各種イオンの分析結果が図7に示すものである時、この帯電微粒子水を用いて確認することができた効果について、以下に記す。なお、図6から明らかなように、この帯電微粒子水はラジカルを含有する上に、図7から明らかなように、大気中の窒素や二酸化炭素から生成されたと考えられる窒素酸化物や有機酸といった酸性種を多く含有したものとなっている。
【0044】
まず、3Lチャンバー内における10ppmのアセトアルデヒドを上記帯電微粒子水で1時間処理すると、60%の減少が確認された。その測定結果を図8に示す。図中αが上記帯電微粒子水で処理した場合、βが粒子径1nmの帯電微粒子水で処理した場合を、γが何も処理しなかった場合である。
【0045】
このような、脱臭効果は、臭気ガスが帯電微粒子中のラジカルとの化学反応で無臭化されることでなされるものであると考えられる。下記はラジカルとアセトアルデヒドをはじめとする各種臭気との脱臭反応式である。・OHはヒドロキシラジカルを示す。
【0046】
アセトアルデヒド CHCHO+6・OH+O→2CO+5H
アンモニア 2NH+6・OH→N+6H
酢酸 CHCOOH+4・OH+O→2CO+4H
メタンガス CH+4・OH+O→CO+H
一酸化炭素 CO+2・OH→CO+H
一酸化窒素 2NO+4・OH→N+2O+2H
ホルムアルデヒド HCHO+4・OH→CO+3H
また、上記帯電微粒子水に黴菌を曝したところ、黴残存率は60分後には0%となる結果を得ることができた。OHラジカルが黴の菌糸を分解するために抗黴効果を得られるものと考えられる。
【0047】
また、上記の帯電微粒子水に杉花粉から抽出した抗原Cry j1,Cry j2を曝露させてELISA試験を行ったところ、図9に示すように、抗原量が初期状態(blank)から半減するという結果を得ることができた。
【0048】
また、上記静電霧化装置から上記帯電微粒子水が内部に供給される円筒容器(φ55×200mm)内に一端開口から噴霧器にてウイルス溶液を噴霧し、他端開口からウイルスをインピンジャーで回収してプラーク法により抗ウイルス効果を確認したところ、回収溶液中のプラーク数はウイルスを単にマイナスイオンに曝した場合よりも少なくなる結果を得ることができた。
【0049】
また、大腸菌O−157を上記帯電微粒子水に曝露させたところ、30分後には不活性化率が100%となる結果を得ることができた。これは帯電微粒子水中の活性種が菌体表面のタンパクを変成し、菌体の増殖を抑制するためと考えられる。
【0050】
そして、本発明は、水を静電霧化することで生成した前述のような特徴を有する活性種を含む帯電微粒子水を肌に暴露させることに特徴がある。
【0051】
肌への保湿性に関して、肌に直接微粒子水を暴露した後の肌の含水量を評価したところ、図10にホで示すように、ブランクの場合(図中ヘ)よりも保湿時間が長くなったことが確認された。
【0052】
また、マイナスの電荷を持つ帯電微粒子水において、冷水後の体温上昇試験を行ったところ、図11にトで示すように、通常の粒子径1nmのマイナスイオンの場合(チ)よりも体温上昇速度の向上が確認された。図中ヌは帯電微粒子水を含まない場合である。
【0053】
酸性種として、硝酸、硝酸水和物、亜硝酸、亜硝酸水和物の少なくとも1つ以上を含有させるようにしてもよい。これらを含有させた場合、帯電微粒子水は弱酸性を保つことになり、アルカリ性臭気成分への作用だけでなく、人の肌への浸透や保湿の点で有意な効果を有するものとなる。
【0054】
なお、粒子径が3nmより小さい場合及び粒子径が50nmを超える場合、上記のような抗原の不活性化といった作用はあまり得ることができなかった。また粒子径が3〜50nmというきわめて小さい帯電微粒子水は、空気中の湿度調整という点に関して殆ど影響を与えることはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を静電霧化して、活性種を含む帯電微粒子水を生成し、肌に暴露させることを特徴とする帯電微粒子水による保湿方法。
【請求項2】
前記活性種として、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいることを特徴とする請求項1記載の帯電微粒子水による保湿方法。
【請求項3】
前記帯電微粒子水は、粒子径が3〜100nmであることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の帯電微粒子水による保湿方法。
【請求項4】
前記帯電微粒子水は、マイナスに帯電していることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の帯電微粒子水による保湿方法。
【請求項5】
水を静電霧化して、活性種を含み、肌に暴露させて保湿するための帯電微粒子水を生成することを特徴とする静電霧化装置。
【請求項6】
前記活性種として、ヒドロキシラジカル、スーパーオキサイド、一酸化窒素ラジカル、酸素ラジカルのうちのいずれか1つ以上のラジカルを含んでいることを特徴とする請求項5記載の静電霧化装置。
【請求項7】
前記帯電微粒子水は、粒子径が3〜100nmであることを特徴とする請求項5又は請求項6記載の静電霧化装置。
【請求項8】
前記帯電微粒子水は、マイナスに帯電していることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか一項に記載の静電霧化装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−5266(P2011−5266A)
【公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179292(P2010−179292)
【出願日】平成22年8月10日(2010.8.10)
【分割の表示】特願2003−425862(P2003−425862)の分割
【原出願日】平成15年12月22日(2003.12.22)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】