説明

帯電部材、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】初期状態での異常放電が発生し易くなることを防止できる帯電装置、この帯電装置を備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置はプロセスカートリッジを備えている。プロセスカートリッジは帯電装置17を備えている。帯電装置17は帯電ローラ22とスプリング45を備えている。帯電ローラ22は芯金48と電気抵抗調整層49と表面層50と空隙保持部材47を備えている。芯金48はスプリング45により感光体ドラム18に向かって付勢されている。空隙保持部材47は感光体ドラム18の外表面に当接する。空隙保持部材47は電気抵抗調整層49の小径部52上の第1空隙保持部材53とこの第1空隙保持部材53上の第2空隙保持部材54を備えている。第2空隙保持部材54を構成する材料は第1空隙保持部材53を構成する材料よりも柔らかい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンター等に用いられる感光体ドラムなどの像担持体の外表面を一様に帯電する帯電部材及び当該帯電部材を備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンター、ファクシミリ、又は、これらの複合機などの電子写真方式を用いた画像形成装置は、外表面が静電潜像が形成される像担持体としての感光体ドラムと、この感光体ドラムの外表面を一様に帯電する帯電部材としての帯電ローラと、帯電ローラにより一様に形成された像担持体の外表面を露光して静電潜像を形成するレーザ書き込みユニットと、感光体ドラムの外表面上の静電潜像を現像してトナー像を形成する現像装置と、感光体ドラムの外表面上のトナー像を記録紙に転写する転写装置と、転写後の感光体ドラムの外表面に付着する残留トナー等の付着物を除去するクリーニング装置と、を備えている。
【0003】
前述した帯電装置として、感光体ドラムの外表面に接触した帯電ローラと、この帯電ローラに直流電圧や交流電圧を印加する電源とを備えた接触式の帯電装置が用いられている。この種の接触式の帯電装置は、前記帯電ローラに直流電圧や交流電圧を印加すると、感光体ドラムの外表面を一様に高電圧に帯電する。このような、帯電装置の帯電メカニズムは、帯電ローラと感光体ドラムとの間の微小空間におけるバッシェンの法則に従った放電であることが示されている。
【0004】
しかしながら、前述した接触式の帯電装置では、帯電ローラと感光体ドラムとを互いに接触させるために、帯電ローラを構成する物質が染み出して感光体ドラムの外表面に付着して当該感光体ドラムの外表面に帯電ローラが接触した跡が生じたり、帯電ローラに交流電圧を印加した際に帯電ローラが振動して異音を生じたり、帯電ローラを構成する物質が染み出して当該帯電ローラにトナーが付着しやすくなり当該トナーが付着することにより帯電ローラの帯電性能が低下したり、感光体ドラムを長期間停止した際に帯電ローラが永久変形するという問題があった。この種の問題を解決するために、帯電ローラを感光体ドラムと近接させながら当該帯電ローラを感光体ドラムから間隔をあけて配置する帯電装置(例えば、特許文献1ないし特許文献3参照)が用いられている。
【0005】
この種の帯電装置の帯電ローラは、感光体ドラムと平行に配置されたローラ本体と、このローラ本体の長手方向の両端部に設けられかつ当該ローラ本体よりも大径な空隙保持部材と、前記ローラ本体を感光体ドラムに向かって押し付けて前記空隙保持部材を感光体ドラムの外表面に密に接触させる付勢手段を備えている。前述した帯電ローラは、ローラ本体が感光体ドラムから間隔をあけて配置される。一方、この間隔は、帯電ローラのローラ本体の汚れ、感光体ドラムの外表面の汚れにより変動してしまう。この間隔の変動により帯電ムラが生じやすいために、前述した特許文献1ないし特許文献3に示された帯電装置の帯電ローラは、ローラ本体に直流電圧と高圧の交流電圧が重畳して印加されることで、前記感光体ドラムの外表面を一様に帯電している。
【0006】
しかしながら、ローラ本体に交流電圧が印加されるために、感光体ドラムに付着した放電生成物などの汚染物質が感光体ドラムとローラ本体との間で飛翔し、経時では、ローラ本体の表面に徐々に蓄積してしまう。この汚染物質の蓄積により、前述した帯電ローラは、ローラ本体の表面の抵抗値にムラが生じて、放電ムラが生じ、異常画像が発生するという問題があった。
【0007】
ところで、前述した特許文献1ないし特許文献3に示された帯電装置の帯電ローラは、ローラ本体の感光体ドラムとの間の間隔をできるだけ広くすることができれば、ローラ本体へ付着する汚染物質を低減できる。しかし、この間隔を広く取りすぎると、交流電圧の電圧値を高くする必要があるので、リークによる異常放電が発生し易くなり、画像上に白ポチ(異常画像)が発生しやすくなる。それゆえ、感光体ドラムとローラ本体との間の間隔を広くすることができない。
【0008】
このため、前述した帯電ローラの特にローラ本体の表面を含んだ表面層は、ケッチンブラックEC、アセチレンブラック等の導電性カーボンや、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン等の導電性ポリマー等、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウムなどの無機イオン性導電性物質などの導電性の材料で構成されている。前述した導電性カーボンを用いると、前述したリークによる異常放電が発生し易くなり、画像上に白ポチ(異常画像)が発生しやすくなる。前述した無機イオン性導電性物質を用いると、当該物質が分子レベルによる分散(溶解)が可能であるので、前述したリークによる異常放電が発生し難くなり、画像上に白ポチ(異常画像)が発生し難くなる。前述した特許文献3に示された帯電ローラは、帯電ローラのローラ本体の表面層を、イオン性導電性物質でありながら低抵抗化を図ることができる材料を見出して、前述した間隔が変動しても良好に帯電することを可能としている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
前述した特許文献3などに示されるように、表面層をイオン性導電性物質で構成しても、初期状態では、経時によって徐々にローラ本体の表面が汚れる。このために、特に、初期状態では、ローラ本体の表面が徐々に汚れることによって感光体ドラムを徐々に帯電させ難くなり、ローラ本体の表面が徐々に汚れることにより異常放電が徐々に発生しやすくなる、という問題があった。
【0010】
本発明は、以上の背景に鑑みてなされたものであり、特に、初期状態での異常放電が発生し易くなることを防止できる帯電装置、この帯電装置を備えたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の帯電部材は、像担持体と平行でかつ当該像担持体に向かって押し付けられた状態で設けられる部材本体と、前記部材本体上に設けられかつ前記像担持体の外表面に当接して前記部材本体の外表面を前記像担持体の外表面から間隔をあけた状態に保つ空隙保持部材と、を備えた帯電部材において、前記空隙保持部材が、前記部材本体上に設けられた第1空隙保持部材と、前記第1空隙保持部材上に設けられかつ当該第1空隙保持部材を構成する材料と前記像担持体の外表面を構成する材料との双方よりも柔らかい材料で構成された第2空隙保持部材と、を備えたことを特徴としている。
【0012】
請求項2に記載の帯電部材は、請求項1に記載の帯電部材において、前記第1空隙保持部材が、前記像担持体の外表面を構成する材料よりも硬い材料で構成されていることを特徴としている。
【0013】
請求項3に記載の帯電部材は、請求項1又は請求項2に記載の帯電部材において、前記第1空隙保持部材が、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンおよびその共重合体、ポリカーボネートから選ばれるデュロメータ硬さ55より大きい材料で構成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項4に記載の帯電部材は、請求項1又は請求項2に記載の帯電部材において、前記第2空隙保持部材が、低密度ポリエチレン、軟質ポリプロピレン、FEP、PTFEからなるフッ素系樹脂層から選ばれるデュロメータ硬さ50より小さい一以上の材料で構成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載のプロセスカーリッジは、外表面に潜像を担持する像担持体と、前記像担持体の外表面から残留トナーを除去するクリーニング装置と、前記像担持体の外表面を帯電する帯電部材と、前記像担持体の外表面の潜像を現像する現像装置と、を備えたプロセスカートリッジにおいて、前記帯電部材として請求項1ないし請求項4のうちいずれか一項に記載の帯電部材を備えたことを特徴としている。
【0016】
請求項6に記載の画像形成装置は、外表面に潜像を担持する像担持体と、前記像担持体の外表面から残留トナーを除去するクリーニング装置と、前記像担持体の外表面を帯電する帯電部材と、前記像担持体の外表面の潜像を現像する現像装置と、を備えた画像形成装置において、前記帯電部材として請求項1ないし請求項4のうちいずれか一項に記載の帯電部材を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の帯電装置によれば、第1空隙保持部材上に設けられた第2空隙保持部材が、第1空隙保持部材を構成する材料と感光体ドラムの外表面を構成する材料との双方よりも柔らかい材料で構成されているので、特に初期状態において第2空隙保持部材が徐々に磨耗する。このために、特に初期状態において、帯電ローラの回転が増加すなわち画像を形成する記録紙の枚数が増加するのにしたがって、徐々に第2空隙保持部材が磨耗し、部材本体と像担持体との間の間隔が徐々に狭くなる。このため、初期状態において、画像を形成する記録紙の枚数が増加するのにしたがって部材本体が徐々に汚れても、当該部材本体が像担持体に徐々に近づくので、リークなどの異常放電が発生することを防止できる。
【0018】
請求項2に記載の帯電装置によれば、第1空隙保持部材が像担持体の外表面を構成する材料よりも硬い材料で構成されているので、第2空隙保持部材が全て磨耗して、第1空隙保持部材が像担持体に接触しても、当該第1空隙保持部材が磨耗することがない。このために、第2空隙保持部材が像担持体に接触する初期状態を超えると、当該第1空隙保持部材が像担持体に接触するので、画像を形成する記録紙の枚数が増加しても部材本体と像担持体との間の間隔が一定に保たれる。よって、第2空隙保持部材が像担持体に接触する初期状態を超えて、部材本体上の汚れが増加しない状態となると、部材本体と像担持体との間の間隔を一定に保つので、常に一定の状態で像担持体の外表面を帯電することができる。
【0019】
請求項3に記載の帯電装置によれば、第1空隙保持部材が、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンおよびその共重合体、ポリカーボネートから選ばれるデュロメータ硬さ55より大きい材料で構成されているので、第1空隙保持部材が像担持体に接触すると、画像を形成する記録紙の枚数が増加しても部材本体と像担持体との間の間隔が確実に一定に保たれる。
【0020】
請求項4に記載の潤滑剤塗布装置によれば、第2空隙保持部材が、低密度ポリエチレン、軟質ポリプロピレン、FEP、PTFEからなるフッ素系樹脂層から選ばれるデュロメータ硬さ50より小さい材料で構成されているので、第2空隙保持部材が像担持体に接触する初期状態では、画像を形成する記録紙の枚数が増加するのにしたがって、当該第2空隙保持部材が徐々に磨耗して、部材本体と像担持体との間の間隔を確実に徐々に狭くすることができる。
【0021】
請求項5に記載のプロセスカートリッジによれば、前述した帯電装置を備えているので、初期状態において、画像を形成する記録紙の枚数が増加するのにしたがって部材本体が徐々に汚れても、当該部材本体が像担持体に徐々に近づくので、リークなどの異常放電が発生することを防止できる。
【0022】
請求項6に記載の画像形成装置によれば、初期状態において、画像を形成する記録紙の枚数が増加するのにしたがって部材本体が徐々に汚れても、当該部材本体が像担持体に徐々に近づくので、リークなどの異常放電が発生することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態にかかる潤滑剤塗布装置を備えた画像形成装置の構成を正面からみた説明図である。
【図2】図1に示された画像形成装置のプロセスカートリッジの断面図である。
【図3】(a)は図2に示されたプロセスカートリッジの帯電ローラなどの断面図であり、(b)は図3(a)中のB部を拡大して示す断面図である。
【図4】図3に示された帯電ローラの印刷枚数と間隔との間の関係を示す説明図である。
【図5】図3に示された帯電ローラの製造工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態を、図1ないし図5に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態にかかる画像形成装置の構成を正面からみた説明図である。図2は、図1に示された画像形成装置の本発明の一実施形態にかかるプロセスカートリッジの断面図である。
【0025】
画像形成装置1は、イエロー(Y)、マゼンダ(M)、シアン(C)、黒(K)の各色の画像則ちカラー画像を、一枚の転写材としての記録紙2(図1に示す)に形成する。なお、イエロー、マゼンダ、シアン、黒の各色に対応するユニットなどを、以下、符号の末尾に各々Y,M,C,Kを付けて示す。
【0026】
画像形成装置1は、図1に示すように、装置本体3と、給紙ユニット4と、レジストローラ対5と、転写ユニット6と、定着ユニット7と、複数のレーザ書き込みユニット8Y,8M,8C,8Kと、複数のプロセスカートリッジ9Y,9M,9C,9Kとを少なくとも備えている。
【0027】
装置本体3は、例えば、箱状に形成され、フロア上などに設置される。装置本体3は、給紙ユニット4と、レジストローラ対5と、転写ユニット6と、定着ユニット7と、複数のレーザ書き込みユニット8Y,8M,8C,8Kと、複数のプロセスカートリッジ9Y,9M,9C,9Kを収容している。
【0028】
給紙ユニット4は、装置本体3の下部に複数設けられている。給紙ユニット4は、前述した記録紙2を重ねて収容するとともに装置本体3に出し入れ自在な給紙カセット10と、給紙ローラ11とを備えている。給紙ローラ11は、給紙カセット10内の一番上の記録紙2に押し当てられている。給紙ローラ11は、前述した一番上の記録紙2を、レジストローラ対5の一対のローラ5a,5b間に送り出す。
【0029】
レジストローラ対5は、給紙ユニット4から転写ユニット6に搬送される記録紙2の搬送経路に設けられており、一対のローラ5a,5bを備えている。レジストローラ対5は、一対のローラ5a,5b間に記録紙2を挟み込み、該挟み込んだ記録紙2をトナー像に重ね合わせ得るタイミングで、転写ユニット6とプロセスカートリッジ9Y,9M,9C,9Kとの間に送り出す。
【0030】
転写ユニット6は、給紙ユニット4の上方に設けられている。転写ユニット6は、駆動ローラ12と、従動ローラ13と、搬送ベルト14と、転写ローラ15Y,15M,15C,15Kとを備えている。駆動ローラ12は、記録紙2の搬送方向の下流側に配置されており、駆動源としてのモータなどによって回転駆動される。
【0031】
従動ローラ13は、装置本体3に回転自在に支持されており、記録紙2の搬送方向の上流側に配置されている。搬送ベルト14は、無端環状に形成されており、前述した駆動ローラ12と従動ローラ13との双方に掛け渡されている。搬送ベルト14は、駆動ローラ12が回転駆動されることで、前述した駆動ローラ12と従動ローラ13との回りを図中半時計回りに循環(無端走行)する。
【0032】
転写ローラ15Y,15M,15C,15Kは、それぞれ、導電性の芯金の回りに弾性材料が被覆されて構成されており、プロセスカートリッジ9Y,9M,9C,9Kの感光体ドラム18との間に搬送ベルト14と該搬送ベルト14上の記録紙2とを挟む。
【0033】
転写ユニット6は、転写ローラ15Y,15M,15C,15Kが、給紙ユニット4から送り出された記録紙2を各プロセスカートリッジ9Y,9M,9C,9Kの感光体ドラム18の外表面に押し付けて、感光体ドラム18上のトナー像を記録紙2に転写する。転写ユニット6は、トナー像を転写した記録紙2を定着ユニット7に向けて送り出す。
【0034】
定着ユニット7は、転写ユニット6の記録紙2の搬送方向の下流に設けられ、互いの間に記録紙2を挟む一対のローラ7a,7bを備えている。定着ユニット7は、一対のローラ7a,7b間に転写ユニット6から送り出されてきた記録紙2を押圧加熱することで、感光体ドラム18から記録紙2上に転写されたトナー像を、該記録紙2に定着させる。
【0035】
レーザ書き込みユニット8Y,8M,8C,8Kは、それぞれ、装置本体3の上部に取り付けられている。レーザ書き込みユニット8Y,8M,8C,8Kは、それぞれ、一つのプロセスカートリッジ9Y,9M,9C,9Kに対応している。レーザ書き込みユニット8Y,8M,8C,8Kは、プロセスカートリッジ9Y,9M,9C,9Kの後述の帯電ローラ22により一様に帯電された感光体ドラム18の外表面にレーザ光を照射して、静電潜像を形成する。また、本発明では、レーザ書き込みユニット8Y,8M,8C,8Kの他に、LEDアレイと結像手段とで構成される露光装置を用いることができる。
【0036】
プロセスカートリッジ9Y,9M,9C,9Kは、それぞれ、転写ユニット6と、レーザ書き込みユニット8Y,8M,8C,8Kとの間に設けられている。プロセスカートリッジ9Y,9M,9C,9Kは、装置本体3に着脱自在である。プロセスカートリッジ9Y,9M,9C,9Kは、記録紙2の搬送方向に沿って、互いに並設されている。
【0037】
プロセスカートリッジ9Y,9M,9C,9Kは、図2に示すように、カートリッジケース16と、帯電装置17と、感光体ドラム(像担持体に相当する)18と、クリーニング装置19と、現像装置20と、潤滑剤塗布装置21とを備えている。このため、画像形成装置1は、帯電部材としての帯電ローラ22と、感光体ドラム18と、クリーニング装置19と、現像装置20と、潤滑剤塗布装置21を少なくとも備えている。
【0038】
カートリッジケース16は、装置本体3に着脱自在で、かつ帯電装置17と、感光体ドラム18と、クリーニング装置19と、現像装置20と、潤滑剤塗布装置21を収容している。
【0039】
帯電装置17は、感光体ドラム18の外表面を一様に帯電する。なお、この帯電装置17の構成は、後ほど説明する。
【0040】
感光体ドラム18は、直径が30mmから100mm程度の導電性の支持部材の表面に光電性物質で構成された感光層を設け、さらにこの感光層の表面に表面層を設けて構成されている。支持部材を構成する材料として、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス鋼などの導電性の金属を用いることができる。感光層としては、電荷発生材と電荷輸送材との機能が一体的に構成された単層型の物と、電荷発生層と電荷輸送層との2層構造に構成された機能分離型の物を用いることができる。
【0041】
一般的な機能分離型の感光体ドラム18には、支持部材上に直接、又は、下引き層(中間層)を介して電荷発生層が設けられ、そして、この電荷発生層上に電荷輸送物質を含有する電荷輸送層が設けられている。特に、機能分離型の感光層を用いると、感度設計の自由度が広がるので、感光体ドラム18には、機能分離型の感光層が望ましい。表面層は、感光層の外表面全体を被覆している。表面層は、例えば、ポリカーボネート(Polycarbonate)などの合成樹脂で構成されている。また、本発明では、像担持体としてベルト状の感光体ベルトを用いてもよい。
【0042】
感光体ドラム18は、現像装置20の後述する現像ローラ30と間隔をあけて配されている。また、感光体ドラム18は、その外表面が搬送ベルト14に接している。感光体ドラム18は、軸芯を中心として回転自在な円柱状又は円筒状に形成されている。感光体ドラム18は、帯電装置17により外表面が一様に帯電された後、対応するレーザ書き込みユニット8Y,8M,8C,8Kにより外表面の長手方向の両端部を除く中央部R1(図3に示し、以下、画像形成領域と呼ぶ)に静電潜像が形成される。感光体ドラム18は、外表面の画像形成領域R1上に形成されかつ担持する静電潜像に現像剤24のトナーが吸着して現像し、こうして得られたトナー像を搬送ベルト14との間に位置付けられた記録紙2に転写する。
【0043】
クリーニング装置19は、クリーニング部材としてのクリーニングローラ25と、トナー回収コイル26とを備えている。クリーニングローラ25は、その長手方向が感光体ドラム18と平行な円柱状に形成されている。クリーニングローラ25は、潤滑剤塗布装置21の後述する塗布ケース40にその軸芯回りに回転自在に支持されているとともに、その外周面が感光体ドラム18の外表面に接触している。
【0044】
クリーニングローラ25は、感光体ドラム18が回転すると、当該感光体ドラム18と連れ回りする。クリーニングローラ25は、感光体ドラム18と連れ回りすることで、記録紙2にトナー像を転写した後に、感光体ドラム18の外表面に残留した残留トナーを除去する。トナー回収コイル26は、クリーニングローラ25が感光体ドラム18の外表面から除去した残留トナーなどを搬送して、回収する。
【0045】
現像装置20は、図2に示すように、現像剤供給部28と、ケース29と、現像剤担持体としての現像ローラ30と、規制部材としての図示しないドクタブレードとを少なくとも備えている。
【0046】
現像剤供給部28は、収容槽32と、攪拌部材としての一対の攪拌スクリュー33と、を備えている。収容槽32は、感光体ドラム18と長さが略等しい箱状に形成されている。また、収容槽32内には、該収容槽32の長手方向に沿って延びた仕切壁34が設けられている。仕切壁34は、収容槽32内を第1空間35と、第2空間36とに区画している。また、第1空間35と第2空間36とは、両端部が互いに連通している。
【0047】
収容槽32は、第1空間35と第2空間36との双方に現像剤24を収容する。現像剤24は、トナーと、磁性キャリア(磁性粉ともいう)とを含んでいる。トナーは、第1空間35と、第2空間36とのうち現像ローラ30から離れた側の第1空間35の一端部に、適宜供給される。トナーは、乳化重合法又は懸濁重合法により製造された球状の微粒子である。なお、トナーは、種々の染料又は顔料を混入・分散した合成樹脂で構成される塊を粉砕して得られても良い。トナーの平均粒径は、3μm以上でかつ7μm以下である。また、トナーは、粉砕加工などにより形成されても良い。
【0048】
磁性キャリアは、第1空間35と第2空間36との双方に収容されている。磁性キャリアの平均粒径は、20μm以上でかつ50μm以下である。
【0049】
攪拌スクリュー33は、第1空間35と第2空間36それぞれに収容されている。攪拌スクリュー33の長手方向は、収容槽32、現像ローラ30及び感光体ドラム18の長手方向と平行である。攪拌スクリュー33は、軸芯周りに回転自在に設けられており、軸芯周りに回転することで、トナーと磁性キャリアとを攪拌するとともに、該軸芯に沿って現像剤24を搬送する。
【0050】
図示例では、第1空間35内の攪拌スクリュー33は、現像剤24を前述した一端部から他端部に向けて搬送する。第2空間36内の攪拌スクリュー33は、現像剤24を他端部から一端部に向けて搬送する。
【0051】
前述した構成によれば、現像剤供給部28は、第1空間35の一端部に供給されたトナーを、磁性キャリアと攪拌しながら、他端部に搬送し、この他端部から第2空間36の他端部に搬送する。そして、現像剤供給部28は、第2空間36内でトナーと磁性キャリアとを攪拌し、軸芯方向に搬送しながら、現像ローラ30の外表面に供給する。
【0052】
ケース29は、箱状に形成され、前述した現像剤供給部28の収容槽32に取り付けられて、該収容槽32とともに、現像ローラ30などを覆う。また、ケース29の感光体ドラム18と相対する部分には、開口部29aが設けられている。
【0053】
現像ローラ30は、円柱状に形成され、第2空間36と、感光体ドラム18との間でかつ前述した開口部29aの近傍に設けられている。現像ローラ30は、感光体ドラム18と収容槽32との双方と平行である。現像ローラ30は、感光体ドラム18と間隔をあけて配されている。現像ローラ30と感光体ドラム18との間の空間は、現像剤24のトナーを感光体ドラム18に吸着させて、静電潜像を現像してトナー像を得る現像領域37をなしている。現像領域37では、現像ローラ30と感光体ドラム18とが相対する。
【0054】
現像ローラ30は、円柱状のマグネットローラ(磁石体ともいう)38と、円筒状の現像スリーブ39とを備えている。マグネットローラ38は、長手方向が感光体ドラム18の長手方向と平行に配され、前述したケース29に回転することなく固定されている。マグネットローラ38は、その外周面にその長手方向に沿って直線状に延在した固定磁極が複数設けられている。固定磁極は、現像スリーブ39の外表面に現像剤24を吸着させる。
【0055】
現像スリーブ39は、円筒状に形成されている。現像スリーブ39は、マグネットローラ38を内包し(収容し)て、軸芯回りに回転自在に設けられている。現像スリーブ39は、その内周面が固定磁極に順に相対するように回転される。現像スリーブ39は、アルミニウム合金、真鍮、ステンレス鋼(SUS)、導電性の樹脂などの非磁性材料で構成されている。
【0056】
ドクタブレードは、現像装置20の感光体ドラム18寄りの端部に設けられている。ドクタブレードは、現像スリーブ39の外表面と間隔をあけた状態で、前述したケース29に取り付けられている。ドクタブレードは、所望の厚さを越える現像スリーブ39の外表面上の現像剤24を収容槽32内にそぎ落として、現像領域37に搬送される現像スリーブ39の外表面上の現像剤24を所望の厚さにする。
【0057】
前述した構成の現像装置20は、現像剤供給部28でトナーと磁性キャリアとを十分に攪拌し、この攪拌した現像剤24を固定磁極により現像スリーブ39の外表面に吸着する。そして、現像装置20は、現像スリーブ39が回転して、複数の固定磁極により吸着した現像剤24を現像領域37に向かって搬送する。現像装置20は、ドクタブレードで所望の厚さになった現像剤24を感光体ドラム18の画像形成領域R1上に形成された静電潜像に吸着させる。こうして、現像装置20は、現像剤24を現像ローラ30に担持し、現像領域37に搬送して、感光体ドラム18上の静電潜像を現像して、トナー像を形成する。
【0058】
そして、現像装置20は、現像済みの現像剤24を、収容槽32に向かって離脱させる。さらに、そして、収容槽32内に収容された現像済みの現像剤24は、再度、第2空間36内で他の現像剤24と十分に攪拌されて、感光体ドラム18の静電潜像の現像に用いられる。なお、現像装置20は、現像剤供給部28が例えば感光体ドラム18に供給されるトナーの濃度が低下したことを後述するトナー濃度センサが検知すると、撹拌スクリュー118の回転駆動によりトナーを現像ローラ30に向けて繰り出すようになっている。
【0059】
潤滑剤塗布装置21は、図2に示すように、塗布ケース40と、塗布ローラ41と、固形潤滑剤42と、塗布ブレード43とを備えている。
【0060】
塗布ケース40は、カートリッジケース16内に収容されかつ現像装置20との間に感光体ドラム18を位置付ける位置に設けられている。塗布ローラ41は、芯軸の回りに全周に亘って繊維が設けられた円柱状に形成され、かつ、感光体ドラム18と平行に設けられている。塗布ローラ41は、軸芯回りに回転自在に塗布ケース40に支持されているとともに、感光体ドラム18の外表面に接触している。塗布ローラ41は、軸芯回りに回転されて、固形潤滑剤42の一部を削り取り、当該削り取った潤滑剤を感光体ドラム18の外表面に塗布する。
【0061】
固形潤滑剤42は、その長手方向が感光体ドラム18及び塗布ローラ41と平行な直方体状のブロックに形成されている。固形潤滑剤42は、一般的に使用される潤滑性物質で構成されている。特に、固形潤滑剤42は、潤滑性に優れる固体状のメラミンシアヌレート、ポリテトラフッ化エチレン、窒化ホウ素、膜形成に優れる脂肪酸金属塩のステアリン酸亜鉛などの潤滑性物質で構成されるのが望ましい。固形潤滑剤42は、付勢手段としての図示しないバネにより塗布ローラ41に向かって付勢されている。
【0062】
塗布ブレード43は、その長手方向が感光体ドラム18と平行な帯板状に形成されている。塗布ブレード43を構成する材料としては、弾性を有する合成樹脂としてのウレタン樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂を用いることができる。塗布ブレード43を構成する材料としては、耐摩耗性、機械的な強度の観点からウレタン樹脂を用いるのが望ましい。塗布ブレード43は、一般的に、遠心成形により弾性を有する合成樹脂をシート状に成形した後、このシート状の合成樹脂が所定のブレード形状に切断されて得られる。
【0063】
塗布ブレード43は、塗布ケース40の帯電装置17寄りの側壁にブレード支持部材57を介して取り付けられている。ブレード支持部材57は、金属、プラスチック、セラミックから選ばれる材料で構成されているが、必ずしもこれらに限定されるものではない。塗布ブレード43は、感光体ドラム18に押し付けられて、弾性変形された状態で設けられて、所定の圧力で感光体ドラム18の外表面に当接している。このため、塗布ブレード43は、所謂カウンター方式とされている。塗布ブレード43は、感光体ドラム18の外表面に付着した固形潤滑剤の一部を、薄く延ばして当該感光体ドラム18の外表面に塗りこむ。
【0064】
帯電装置17は、図2に示すように、潤滑剤塗布装置21と現像装置20との間でかつ感光体ドラム18の上方に設けられている。帯電装置17は、図2に示すように、帯電部材としての帯電ローラ22と、スプリング45(図3に示す)と、一対の帯電クリーニングローラ23と、図示しない電源とを備えている。帯電ローラ22は、感光体ドラム18と平行でかつ当該感光体ドラム18に接離自在に設けられ、図3に示すように、部材本体としてのローラ本体46と、一対の空隙保持部材47とを備えている。
【0065】
ローラ本体46は、図3に示すように、導電性支持部材としての芯金48と、この芯金48の中央部の回りを被覆した電気抵抗調整層49と、表面層50と、を備えている。
【0066】
芯金48は、導電性の金属で構成され、かつ外径が長手方向に一定の円柱状に形成されている。電気抵抗調整層49は、芯金48の長手方向の中央部を被覆しかつ当該芯金48と同軸に設けられている。電気抵抗調整層49は、芯金48の長手方向の中央部上に設けられた大径部51と、この大径部51の両端に連なりかつ当該大径部51よりも外径が小さな一対の小径部52とを一体に備えている。大径部51と小径部52は、それぞれ、外径が長手方向に一定に形成されている。大径部51は、前記感光体ドラム18の外表面の画像形成領域R1よりも長く形成されて、その両端が当該画像形成領域R1の両端よりも外側に位置している。
【0067】
電気抵抗調整層49は、高分子型イオン導電材料が分散された熱可塑性樹脂組成物により形成されている。電気抵抗調整層49は、体積固有抵抗が10-5〜10-9Ωcmである材
料で構成されることが望ましい。10-9Ωcmを越えると、帯電能力や転写能力が不足して
しまい、10-5Ωcmよりも体積固有抵抗が低いと、感光体ドラム18全体への電圧集中に
よるリークが生じてしまうからである。
【0068】
電気抵抗調整層49に用いられる熱可塑性樹脂は、特に限定されるものではないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS,ABS)、ポリアミド、ポリカーボーネート(PC)等の汎用樹脂であれば、成形加工が容易であり好ましい。これらの熱可塑性樹脂に分散させる高分子型イオン導電材料としては、ポリエーテルエステルアミド成分を含有する高分子化合物が好ましい。ポリエーテルエステルアミドはイオン導電性の高分子材料であり、マトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散、固定化される。したがって、金属酸化物、カーボンブラック等の電子伝導系導電剤を分散した組成物に見られるような分散不良に伴う抵抗値のばらつきが生じない。
【0069】
また、高い印加電圧を掛ける際には、電子伝導系導電剤の場合、局所的に電気の流れやすい経路が形成さるため、感光体ドラム18へのリーク電流が発生し、帯電ローラ22の場合、異常画像である白・黒ポチ画像が発生する。ポリエーテルエステルアミドは、高分子材料であるため、ブリードアウトが生じ難い。配合量については、抵抗値を所望の値にする必要があることから、熱可塑性樹脂が20〜70重量%、高分子型イオン導電剤が80〜20重量%とする必要がある。
【0070】
更に、抵抗値を調整するために、電解質(塩)を添加することも可能である。塩としては、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム等のアルカリ金属塩、エチルトリフェニルホスホニウム・テトラフルオロボレート、テトラフェニルホスホニウム・ブロマイド等の四級ホスホニウム塩が挙げられる。導電剤は物性を損なわない範囲で、単独若しくは、複数をブレンドして用いても構わない。
【0071】
導電材料をマトリックスポリマー中に分子レベルで均一に分散させるためには、相溶化剤を添加することにより、導電材料のミクロ分散が可能になるため、相溶化剤を適宜使用しても構わない。その他、物性を損なわない範囲において、酸化防止剤等の添加剤を使用しても構わない。
【0072】
樹脂組成物の製造方法に関しては特に制限はなく、各材料を混合し二軸混練機、ニーダー等で溶融混練することによって、容易に製造できる。電気抵抗調整層49の芯金48上への形成は、押出成形や射出成形等の手段で芯金48に前記導電性樹脂組成物を被覆することによって、容易に行うことができる。
【0073】
芯金48上に電気抵抗調整層49のみを形成して帯電ローラ22を構成すると、電気抵抗調整層49にトナー及び、トナーの添加剤等が固着して性能低下する場合がある。このような不具合は、電気抵抗調整層49に前述した表面層50を形成することで、防止することができる。
【0074】
表面層50は、電気抵抗調整層49の大径部51の外表面を被覆しているとともに、その厚みが帯電ローラ22の長手方向と周方向との双方に均一に形成されている。表面層50を形成する材料としては、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂等が非粘着性に優れ、トナー固着防止の面で好ましい。また表面層50の電気抵抗調整層49の大径部51上への形成は、上記表面層50を構成する材料を有機溶媒に溶解して塗料を作製し、スプレー塗装、ディッピング、ロールコート等の種々のコーティング方法で行う。膜厚については、10〜30μm程度が望ましい。
【0075】
表面層50を構成する材料は、硬化剤を併用する2液性塗料にすることより、耐環境性、非粘着性、離型性を高めることが出来る。2液性塗料としては、分子中に水酸基を有する主剤及び、水酸基と架橋反応を起こす、イソシアネート系樹脂を用いることが有効である。イソシアネート系樹脂を用いることにより、100℃以下の比較的低温で架橋・硬化反応が起こる。さらに、官能基(OH基)1当量に対して硬化剤の配合量を変えることで表層の架橋密度を比較的、自由に変更でき、調節できる。
【0076】
表面層50を構成する材料は、トナーの非粘着性から検討を進めた結果、シリコーン系樹脂、あるいはシリコン、フッ素がグラフト化された樹脂が良好である。
【0077】
帯電ローラ22は電気特性(抵抗値)が重要であるため、表面層50を導電性にする必要がある。特に、イオン導電性の形成方法は、樹脂材料中に導電性付与材(電解質塩)を分散することにより可能である。イオン導電性にするためには、過塩素酸ナトリウム、過塩素酸リチウム、過塩素酸カルシウム、塩化リチウム等の過塩素酸アルカリ金属、あるいはアルカリ土類金属塩、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム、チルトリフェニルホスホニウム・テトラフルオロボレート、テトラフェニルホスホニウム・ブロマイド等の四級ホスホニウム塩等の含フッ素有機アニオン塩類、変性脂肪酸ジメチルアンモニウムエトサルファート、ステアリン酸アンモニウムアセテート、ラウリルアンモニウムアセテート等が挙げられる。その中でも、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メタン、トリフルオロメタンスルホン酸リチウムを用いることで低抵抗が可能となる。
【0078】
さらに、イオン導電の低抵抗化には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、またその共重合体等からなるポリエーテルポリオール類(エーテル酸素)が必要である。これらポリエーテルポリオール樹脂は、表面層(塗膜)を形成する全樹脂のうち、20〜70重量%が望ましく、35〜55重量%が最も望ましい。また、ポリエーテルポリオール中のポリエーテル酸素量としては、(エチレンオキサイド換算量;EO量)40重量%以上が望ましい。表層全体で考えると、ポリエーテルポリオール樹脂比率とEO量との積が25重量%以上必要であり、45重量%程度が望ましい。
【0079】
電解質塩の添加量としては、塗膜(表面層)を形成する全樹脂のうち、1〜15重量%が望ましく、1.5〜10重量%が最も望ましい。電解質塩は、物性を損なわない範囲で、単独若しくは、複数をブレンドして用いても構わない。
【0080】
空隙保持部材47は、それぞれ、芯金48の端部と電気抵抗調整層49の小径部52の回りを被覆して、これらの上に設けられている。すなわち、空隙保持部材47は、ローラ本体46の両端部上に設けられている。また、空隙保持部材47は、感光体ドラム18の外表面の画像形成領域R1の両端に連なりかつ前述した静電潜像が形成されない非画像形成領域R2(図3に示す)と相対する位置に設けられている。
【0081】
空隙保持部材47は、芯金48及び電気抵抗調整層49と同軸に設けられ、かつ、図3(a)に示すように、互いに同軸に設けられた第1空隙保持部材53と第2空隙保持部材54とを備えている。第1空隙保持部材53は、芯金48の端部と電気抵抗調整層49の小径部52上すなわちローラ本体46上に設けられている。第1空隙保持部材53は、その外径が電気抵抗調整層49の大径部51上の表面層50の外径よりも若干大きく形成されている。すなわち、第1空隙保持部材53と電気抵抗調整層49の大径部51上の表面層50との間には、図3(b)に示すように、段差D1が形成されている。この段差D1の高さは、40μm程度(40〜60μm)となっている。
【0082】
第2空隙保持部材54は、第1空隙保持部材53上に設けられている。第2空隙保持部材54は、勿論、その外径が電気抵抗調整層49の大径部51上の表面層50と第1空隙保持部材53との双方の外径よりも若干大きく形成されている。すなわち、第2空隙保持部材54と電気抵抗調整層49の大径部51上の表面層50の間には、図3(b)に示すように、段差D2が形成されている。この段差D2の高さは、100μm程度(60μm以上は確保した方が好ましく、100μm以下)となっている。
【0083】
このように形成された空隙保持部材47は、芯金48がスプリング45により感光体ドラム18に向かって付勢されることで、感光体ドラム18の外表面の非画像形成領域R2に当接して、帯電ローラ22のローラ本体46の電気抵抗調整層49と感光体ドラム18の外表面との間の間隔を前述した段差D1,D2の高さと等しくする。こうして、空隙保持部材47は、帯電ローラ22のローラ本体46の電気抵抗調整層49上の表面層50と感光体ドラム18の外表面との間の間隔を一定に保つ。そして、帯電ローラ22は、感光体ドラム18と連れ回りする。このとき、第2空隙保持部材54が感光体ドラム18の外表面に当接すると、帯電ローラ22のローラ本体46の電気抵抗調整層49上の表面層50と感光体ドラム18の外表面との間の間隔を前述した段差D2の高さと等しい100μm程度に保つ。また、第2空隙保持部材54は、後述するように、第1空隙保持部材53を構成する材料と感光体ドラム18の外表面をなす表面層を構成する材料(例えば、ポリカーボネート)との双方よりも柔らかい材料で構成されているので、印刷する記録紙2の枚数が増加するのにしたがってすなわち経時により、徐々に磨耗する。そして、第2空隙保持部材54が完全に磨耗すると、第1空隙保持部材53が感光体ドラム18の外表面に当接して、帯電ローラ22のローラ本体46の電気抵抗調整層49上の表面層50と感光体ドラム18の外表面との間の間隔を前述した段差D1の高さと等しい40μm程度(40〜60μm)に保つ。
【0084】
この帯電ローラ22のローラ本体46の電気抵抗調整層49上の表面層50と感光体ドラム18の外表面との間の間隔は、第1空隙保持部材53と第2空隙保持部材54とのうち一方が感光体ドラム18の外表面の非画像形成領域R2に当接することにより、100μm程度、特に40μm〜80μm程度の範囲に保たれる。これにより、常温常湿環境での帯電装置17の作動時における異常画像の形成を抑えることができる。前述した間隔が、100μmを超えると、感光体ドラム18に到達するまでの距離も長くなることで、パッシェンの法則の放電開始電圧が大きくなり局所的な放電破壊を起こしやすい傾向になり異常放電現象が発生する。
【0085】
また、前述した間隔が40μmを下回ると、感光体ドラム18までの到達距離も短く、放電エネルギーも小さくても感光体ドラム18を帯電させることができる。しかし、帯電ローラ22と感光体ドラム18との間により形成される空間が狭くなり、当該空間内の空気の流が悪くなってしまう。そのために、放電空間で形成された放電生成物はこの空間内に滞留するために、画像形成後も放電空間に多量に残留し、帯電ローラ22と感光体ドラム18に付着して、汚れや固着を引き起こし帯電不良となる原因となる。耐久性を考慮するならば、40μm以上は確保した方が好ましい。
【0086】
画像形成装置1の帯電ローラ22の使用初期である初期状態では、当該帯電ローラ22の外表面が清浄な状態であるので、比較的前述した間隔が広くても、リークによる異常放電が生じないとともに、勿論帯電ローラ22の外表面が清浄な状態であり汚染物質が蓄積していないので汚染物質の蓄積による放電ムラも生じない。しかしながら、画像形成装置1の画像を形成する記録紙2の枚数が徐々に増加するのにしたがってすなわち帯電ローラ22が経時するのにしたがって、勿論、帯電ローラ22の外表面に前述した汚染物質が徐々に蓄積する。このため、画像形成装置1の画像を形成する記録紙2の枚数が徐々に増加するのにしたがってすなわち帯電ローラ22が経時するのにしたがって、リークによる異常放電が生じずかつ汚染物質の蓄積による放電ムラも生じない帯電ローラ22の外表面と感光体ドラム18の外表面との間の間隔が、徐々に狭くなる。
【0087】
この画像を形成する記録紙2の枚数の変化によるリークによる異常放電が生じないための間隔Xと、画像を形成する記録紙2の枚数の変化による汚染物質の蓄積による放電ムラが生じないための間隔Yの変化を図4に示す。図4において、一点鎖線は、リークによる異常放電が生じないための間隔Xを示し、この一点鎖線Xよりも間隔が広がるとすなわち図4中の上側がリークによる異常放電が生じ、一点鎖線よりも間隔が狭いとすなわち図4中の下側がリークによる異常放電が生じないことを示している。図4において、二点鎖線は、汚染物質の蓄積による放電ムラが生じないための間隔Yを示し、この二点鎖線Yよりも間隔が広がるとすなわち図4中の上側が汚染物質の蓄積による放電ムラが生じないことを示し、二点鎖線Yよりも間隔が狭いとすなわち図4中の下側が汚染物質の蓄積による放電ムラが生じることを示している。
【0088】
すなわち、図4中の一点鎖線Xと二点鎖線Yとの間の間隔に、前述した帯電ローラ22と感光体ドラム18の外表面との間の間隔に保つことにより、良好な状態で帯電ローラ22が感光体ドラム18の外表面を帯電させることができる。また、初期状態を過ぎると、経時により、帯電ローラ22の外表面の汚れが増加しなくなるため、リークによる異常放電が生じないための間隔Xと、汚染物質の蓄積による放電ムラが生じないための間隔Yが、殆ど変化しなくなる。
【0089】
そこで、本実施形態では、第2空隙保持部材54を磨耗し易い材料で構成し、帯電機能が高い初期状態では、前述した間隔を広くとり、経時で帯電機能が徐々に低下して来るにつれて第2空隙保持部材54自身が磨耗し、前述した間隔を徐々に小さくする。さらに、初期状態を過ぎて、第2空隙保持部材54が完全に磨耗すると、第1空隙保持部材53が感光体ドラム18の外表面に当接する。すると、第1空隙保持部材53を構成する材料が感光体ドラム18の表面層を構成する材料よりも硬いので、当該第1空隙保持部材53が磨耗せずに、帯電ローラ22の外表面と感光体ドラム18の外表面との間の間隔が、画像を形成する記録紙2の枚数が増加してもすなわち経時によっても殆ど変化しない(一定に保たれる)。このため、帯電機能の低下が飽和したところで間隔を一定に保つことが出来る。
【0090】
空隙保持部材47に必要とされる特性としては、感光体ドラム18との間に間隔を環境及び、長期(経時)に渡って安定して形成することである。そのためには、空隙保持部材47すなわち第1及び第2空隙保持部材53,54は、吸湿性が小さい材料で構成されるのが望ましい。また、空隙保持部材47すなわち第1及び第2空隙保持部材53,54は、トナー及びトナー添加剤が付着しにくいことや、感光体ドラム18と当接し、摺動するために、感光体ドラム18を摩耗させない材料で構成されるのが望ましい。このため、空隙保持部材47すなわち第1及び第2空隙保持部材53,54は、種々の条件に応じて、適宜選択される材料で構成されるのが望ましい。
【0091】
具体的には、空隙保持部材47すなわち第1及び第2空隙保持部材53,54は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS、ABS)等の汎用樹脂、ポリカーボネート(PC)、ウレタン、フッ素(PTFE)から選ばれる一以上の材料で構成されるのが望ましい。そして、第1空隙保持部材53は、前述した材料のうち感光体ドラム18の表面層50を構成する材料よりも硬い材料で構成されるのが望ましい。さらに、第2空隙保持部材54は、前述した材料のうち感光体ドラム18の表面層50を構成する材料と第1空隙保持部材53を構成する材料との双方よりも柔らかい材料で構成されるのが望ましい。第1及び第2空隙保持部材53,54は、このような条件を満たす上記のうち選択された一以上の材料の組み合わせで構成されるのが好ましい。
【0092】
また、空隙保持部材47すなわち第1及び第2空隙保持部材53,54は、絶縁性の材料で構成されるのが好ましく、体積固有抵抗で10-13Ωcm以上の材料で構成されるのが好ましい。絶縁性が必要である理由は、感光体ドラム18との間でリーク電流を発生させないためである。
【0093】
前述した空隙保持部材47を形成する方法としては、成型加工により成形された第1空隙保持部材53を電気抵抗調整層49の両端部に設置する。さらに、第2空隙保持部材54を第1空隙保持部材53の上に覆うように設置するあるいは近接して配置する、あるいは前記した樹脂材料で溶剤可溶なものを塗布により形成することも可能である。空隙保持部材53,54を切削、研削等の除去加工により精度を増すことも可能である。さらに、空隙保持部材53,54と電気抵抗調整層49を同時加工することで、帯電ローラ22と感光体ドラム18との間の間隔をさらに高精度としても良い。
【0094】
図示例では、前述した帯電ローラ22は、図5に示すように形成される。まず、図5(a)に示すように、芯金48の回りに射出成型により電気抵抗調整層49を形成する。なお、この状態では、電気抵抗調整層49の外径がその全長に亘って一定に形成されている。そして、図5(b)に示すように、電気抵抗調整層49の両端部に切削加工を施して、小径部52を形成する。そして、図5(c)に示すように、内面に芯金48と小径部52の外径に等しい段部が形成された第1空隙保持部材53となるリング状の部材55内に当該芯金48の両端部及び小径部52を圧入する。そして、図5(d)に示すように、このリング状の部材55の外周面に切削加工を施して第1空隙保持部材53を得るとともに、電気抵抗調整層49の外周面に切削加工を施して大径部51を得る。そして、さらに、図5(e)に示すように、第2空隙保持部材54となるリング状の部材56内に第1空隙保持部材53を圧入する。そして、図5(f)に示すように、このリング状の部材56の外周面に切削加工を施して第2空隙保持部材54を得る。その後、電気抵抗調整層49の大径部51の回りに表面層50を形成して、前述した構成の帯電ローラ22を得る。
【0095】
スプリング45は、帯電ローラ22の芯金48の両端部それぞれに対応して設けられ、これらの帯電ローラ22の芯金48の両端部を感光体ドラム18の両端部に向かって付勢している。
【0096】
一対の帯電クリーニングローラ23は、互いに間隔をあけて平行に設けられているとともに、帯電ローラ22と平行に設けられている。帯電クリーニングローラ23は、それぞれ、軸芯回りに回転自在に設けられているとともに、外表面が帯電ローラ22の外表面に接触している。帯電クリーニングローラ23は、それぞれ、帯電ローラ22と連れ回りして、当該帯電ローラ22の外表面から前述した汚染物質などを除去する。
【0097】
前述した電源は、帯電ローラ22に所定の電圧を印加する。電源が印加する電圧としては、直流電圧だけでも良いが、直流電圧と交流電圧を重畳した電圧であるのが好ましい。帯電ローラ22の電気抵抗調整層49や表面層50の厚みなどに不均一な部分が存在する場合には、直流電圧のみを印加すると感光体ドラム18の表面電位が不均一になることがある。直流電圧と交流電圧を重畳した電圧を印加すると、帯電ローラ22の外表面が等電位となり、放電が安定して感光体ドラム18を均一に帯電させることができる。重畳する電圧における交流電圧は、ピ−ク間電圧を感光体ドラム18の帯電開始電圧の2倍以上にすることが好ましい。帯電開始電圧とは、帯電ローラ22に直流のみを印加した場合に感光体ドラム18が帯電され始めるときの電圧の絶対値である。これにより、感光体ドラム18から帯電ローラ22への逆放電が生じ、そのならし効果で感光体ドラム18をより安定した状態で均一に帯電させることができる。また、交流電圧の周波数は感光体ドラム18の回転速度(プロセススピード)の7倍以上であることが望ましい。7倍以上の周波数にすることにより、モアレ画像が(目視)認識できなくなる。
【0098】
前述した帯電装置17は、帯電ローラ22の空隙保持部材47が感光体ドラム18の外表面の非画像形成領域R2に当接して、電源により当該帯電ローラ22が印加される。そして、帯電装置17は、帯電ローラ22が感光体ドラム18の外表面を一様に帯電する。そして、画像を形成した記録紙2の枚数が増加するのにしたがってすなわち経時により、第1空隙保持部材53が徐々に磨耗して、スプリング45の付勢力により帯電ローラ22が感光体ドラム18に近づく。そして、画像を形成した記録紙2の枚数が前述した図4中の一点鎖線Xと二点鎖線Yにおいて間隔が略一定となる初期状態の終わりの遷移点S(図4に示し、図示例では、記録紙2の枚数が200Kである)を超えると、第2空隙保持部材54が全て磨耗して存在しなくなる。すると、第1空隙保持部材53が感光体ドラム18の外表面に接触して、経時によっても、前述した間隔が一定に保たれる。図示例では、図4中に実線で示すように、1枚目の記録紙2に画像を形成する際には、前記間隔が70μmとなっている。そして、経時により前記間隔が徐々に狭くなり、前記遷移点S以降では間隔が50μmで一定となっている。
【0099】
前述した構成の画像形成装置1は、以下に示すように、記録紙2に画像を形成する。まず、画像形成装置1は、感光体ドラム18を回転して、この感光体ドラム18の外表面を一様に帯電ローラ22により−700Vに帯電する。感光体ドラム18の外表面にレーザ光を照射して、感光体ドラム18を露光して、画像部分を−150Vに減衰させて、該感光体ドラム18の外表面に静電潜像を形成する。そして、静電潜像が現像領域37に位置付けられると、この静電潜像に−550Vの現像バイアス電圧を印加して、現像装置20の現像ローラ30の外表面に吸着した現像剤24のトナーが感光体ドラム18の外表面に吸着して、静電潜像を現像し、トナー像を感光体ドラム18の外表面に形成する。
【0100】
そして、画像形成装置1は、給紙ユニット4の給紙ローラ11などにより搬送されてきた記録紙2が、プロセスカートリッジ9Y,9M,9C,9Kの感光体ドラム18と転写ユニット6の搬送ベルト14との間に位置して、感光体ドラム18の外表面上に形成されたトナー像を記録紙2に転写する。画像形成装置1は、定着ユニット7で、記録紙2にトナー像を定着する。こうして、画像形成装置1は、記録紙2にカラー画像を形成する。
【0101】
一方、転写されずに感光体ドラム18上に残ったトナーTはクリーニングローラ によって回収される。残留トナーを除去された感光体ドラム18は図示しない除電ランプで初期化され、潤滑剤塗布装置21により外表面に固形潤滑剤42の一部が塗布されて、帯電装置17により再度外表面が帯電されて、次回の画像形成プロセスに供される。
【0102】
また、前述した画像形成装置1では、環境変動や経時変動による画質の変動を抑えるために、プロセスコントロールを行なっている。具体的には、まず現像装置20における現像能力を検出する。例えば、あるトナーパターンの画像を、現像バイアス電圧を一定にした条件下で感光体ドラム18上に形成し、その画像濃度を図示しない光センサで検出し、濃度変化から現像能力を把握する。そして、この現像能力が所定の目標現像能力になるように、トナー濃度の目標値を変更することで、画質を一定に保つことができる。例えば、光センサで検出したトナーパターンの画像濃度が、目標現像濃度よりも薄い場合には、トナー濃度を高くするように、図示しない制御手段としてのCPUが現像剤収容部114に現像剤を攪拌するモータの駆動回路を制御する。一方、光センサで検出したトナーパターンの画像濃度が、目標現像濃度よりも薄い場合には、トナー濃度を低くするように、CPUが前述したモータの駆動回路を制御する。ここで、上記トナー濃度は図示しないトナー濃度センサで検知される。なお、感光体ドラム18上に形成されるトナーパターンの画像濃度は、現像ローラ30による画像濃度周期ムラの影響で多少変動することがある。
【0103】
本実施形態によれば、第1空隙保持部材53上に設けられた第2空隙保持部材54が、第1空隙保持部材53を構成する材料と感光体ドラム18の外表面をなす表面層を構成する材料との双方よりも柔らかい材料で構成されているので、特に初期状態において第2空隙保持部材54が徐々に磨耗する。このために、特に初期状態において、帯電ローラ22の回転が増加すなわち画像を形成する記録紙2の枚数が増加するのにしたがって、徐々に第2空隙保持部材54が磨耗し、ローラ本体46と感光体ドラム18との間の間隔が徐々に狭くなる。このため、初期状態において、画像を形成する記録紙2の枚数が増加するのにしたがってローラ本体46が徐々に汚れても、当該ローラ本体46が感光体ドラム18に徐々に近づくので、リークなどの異常放電が発生することを防止できる。
【0104】
また、第1空隙保持部材53が感光体ドラム18の外表面をなす表面層を構成する材料よりも硬い材料で構成されているので、第2空隙保持部材54が全て磨耗して、第1空隙保持部材53が感光体ドラム18に接触しても、当該第1空隙保持部材53が磨耗することがない。このために、第2空隙保持部材54が感光体ドラム18に接触する初期状態を超えると、当該第1空隙保持部材53が感光体ドラム18に接触するので、画像を形成する記録紙2の枚数が増加してもローラ本体46と感光体ドラム18との間の間隔が一定に保たれる。よって、第2空隙保持部材54が感光体ドラム18に接触する初期状態を超えて、ローラ本体46上の汚れが増加しない状態となると、ローラ本体46と感光体ドラム18との間の間隔を一定に保つので、常に一定の状態で感光体ドラム18の外表面を帯電することができる。
【0105】
第1空隙保持部材が、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリアセタール(POM)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン(PS)およびその共重合体(AS、ABS)等の汎用樹脂、ポリカーボネート(PC)から選ばれるデュロメータ硬さ55より大きい材料で構成されているので、第1空隙保持部材53が感光体ドラム18に接触すると、画像を形成する記録紙2の枚数が増加してもローラ本体46と感光体ドラム18との間の間隔が確実に一定に保たれる。
【0106】
第2空隙保持部材が、低密度ポリエチレン、軟質ポリプロピレン、FEP、PTFEからなるフッ素系樹脂層から選ばれるデュロメータ硬さ50より小さい材料で構成されているので、第2空隙保持部材54が感光体ドラム18に接触する初期状態では、画像を形成する記録紙2の枚数が増加するのにしたがって、当該第2空隙保持部材54が徐々に磨耗して、ローラ本体46と感光体ドラム18との間の間隔を確実に徐々に狭くすることができる。
【0107】
本実施形態のプロセスカートリッジ9Y,9M,9C,9K及び画像形成装置1は、前述した帯電装置17を備えているので、初期状態において、画像を形成する記録紙2の枚数が増加するのにしたがってローラ本体46が徐々に汚れても、当該ローラ本体46が感光体ドラム18に徐々に近づくので、リークなどの異常放電が発生することを防止できる。
【0108】
なお、前述した実施形態では、第2空隙保持部材54をリング状の部材56の外周面に切削加工を施すことで得ているが、本発明では、第2空隙保持部材54を、第1空隙保持部材53の外周面にシートを貼り付けたり、樹脂を塗布することで、形成してもよい。
【0109】
次に、本発明の発明者らは、本発明にかかる帯電ローラ22を製造し、その効果を確認した。結果を表1に示す。
【0110】
【表1】

【0111】
本実験では、本発明品1ないし本発明品5、比較例1及び比較例2について、初期状態における白ポチの発生の有無すなわちリークによる異常放電の発生状況、500000枚目の記録紙2に形成した画像の良否、500000枚目の記録紙2に画像を形成した後の帯電ローラ22の状況を確認した。白ポチの発生の無いことと画像が良いことと帯電ローラ22の状況が良いことを丸印で示し、白ポチの発生の有ることと画像が悪いことと帯電ローラ22の状況が悪いことをバツ印で示している。なお、本実験では、本発明品1ないし本発明品5、比較例1及び比較例2の帯電ローラ22を用いて実際に記録紙2の画像を形成した。帯電ローラ22には、直流が−700V、交流が2.2kVpp(周波数が2kHz)、外部環境を23度、60%RHとした。
【0112】
本発明品1の帯電ローラ22は、ABS樹脂(GR−3000、電気化学工業社製)25重量%、及び、ポリエーテルエステルアミド(IRGASTAT、P18、チバスペシャリティケミカルズ社製)75重量%を配合して樹脂組成物とし、この樹脂組成物100部にポリカーボネート−グリシジルメタクリレート−アクリロニトリル共重合体(モディパーCL440−G、日本油脂製)4部添加して、溶融混練することにより、樹脂溶融組成物とした。そして、この樹脂溶融組成物 を、Ni鍍金が施されたSUMで構成された外径が10mmの芯金48上に、射出成型して、外径13mmの電気抵抗調整層49を得た。その後、電気抵抗調整層49の両端部に小径部52を形成した後、外径13mm、内径12mmの高密度ポリエチレン(ノバティックHD、HY540、日本ポリケム社製)で構成されたリング状の部材55内に芯金48の両端部及び小径部52を圧入し、切削加工により外径が12.60mmの第1空隙保持部材53と外径が12.46mmの電気抵抗調整層49の大径部51を得た。さらに、外径13mm、内径12.6mmで低密度ポリエチレン(ノバティックLD、LJ902、日本ポリケム社製)で構成されたリング状の部材56内に第2空隙保持部材54を圧入し、再度、切削加工により外径が12.64mmの第2空隙保持部材54を得た。ついで、電気抵抗調整層49の大径部51の外表面に、トナー非付着性のアクリル変性シリコーン樹脂(3000VH−P、川上塗料社製)20重量部、ポリエーテルポリオール樹脂(E540、旭硝子社製)50重量部、イソシアネート系硬化剤(T4、川上塗料社製)24重量部、電解質塩としてビス(トリフルオロメタン)スルホニルイミド酸リチウム酢酸ブチル溶液(三光化学工学社製)5.5重量部、有機塩触媒(U−CAT−SA−1、サンアプロ社製)0.5重量部、酢酸ブチル溶解カーボンブラックの分散液(REC−SM−23、レジノカラー工業社製)0.5重量部からなりかつ酢酸ブチル、MEKからなる希釈溶媒で固形分が調整された塗料を厚み20μm分スプレー塗布して、その後、100度で1.5時間加熱して前記塗料を加熱硬化させて表面層50を形成した。そして、第2空隙保持部材54と電気抵抗調整層49との間の段差が70μm、第1空隙保持部材53と電気抵抗調整層49との間の段差が50μmの帯電ローラ22を得た。
【0113】
本発明品2の帯電ローラ22は、前述した本発明品1と同様に、Ni鍍金が施されたSUMで構成された外径が10mmの芯金48上に、外径13mmの電気抵抗調整層49を得た。その後、電気抵抗調整層49の両端部に小径部52を形成した後、外径13mm、内径12mmの高密度ポリエチレン(ノバティックHD、HY540、日本ポリケム社製)で構成されたリング状の部材55内に芯金48の両端部及び小径部52を圧入し、切削加工により外径が12.60mmの第1空隙保持部材53と外径が12.46mmの電気抵抗調整層49の大径部51を得た。さらに、低密度ポリエチレン(ノバティックLL、UF240、日本ポリケム社製)で構成された厚みが20μmのフィルム(粘着成分含む)を第1空隙保持部材53の外周面に接着して第2空隙保持部材54を得、前述した本発明品1と同様に表面層50を形成した。そして、第2空隙保持部材54と電気抵抗調整層49との間の段差が70μm、第1空隙保持部材53と電気抵抗調整層49との間の段差が50μmの帯電ローラ22を得た。
【0114】
本発明品3の帯電ローラ22は、前述した本発明品1と同様に、Ni鍍金が施されたSUMで構成された外径が10mmの芯金48上に、外径13mmの電気抵抗調整層49を得た。その後、電気抵抗調整層49の両端部に小径部52を形成した後、外径13mm、内径12mmの高密度ポリエチレン(ノバティックHD、HY540、日本ポリケム社製)で構成されたリング状の部材55内に芯金48の両端部及び小径部52を圧入し、切削加工により外径が12.60mmの第1空隙保持部材53と外径が12.42mmの電気抵抗調整層49の大径部51を得た。さらに、フッ素樹脂(ネオフロンNP−20、ダイキン工業社製)で構成された外径が13mm、内径が12.4mmのリング状の部材56内に第1空隙保持部材53を圧入し、再度、切削加工により外径が12.55mmの第2空隙保持部材54を得た。前述した実施例1と同様に表面層50を形成した。そして、第2空隙保持部材54と電気抵抗調整層49との間の段差が70μm、第1空隙保持部材53と電気抵抗調整層49との間の段差が50μmの帯電ローラ22を得た。
【0115】
本発明品4の帯電ローラ22は、前述した本発明品1と同様に、Ni鍍金が施されたSUMで構成された外径が10mmの芯金48上に、外径13mmの電気抵抗調整層49を得た。その後、電気抵抗調整層49の両端部に小径部52を形成した後、外径13mm、内径12mmの高密度ポリエチレン(ノバティックHD、HY540、日本ポリケム社製)で構成されたリング状の部材55内に芯金48の両端部及び小径部52を圧入し、切削加工により外径が12.60mmの第1空隙保持部材53と外径が12.46mmの電気抵抗調整層49の大径部51を得た。さらに、軟質ポリプロピレン(ニューコンRタイプ、日本ポリケム社製)で構成された厚みが20μmのフィルム(粘着成分含む)を第1空隙保持部材53の外周面に接着して第2空隙保持部材54を得、前述した本発明品1と同様に表面層50を形成した。そして、第2空隙保持部材54と電気抵抗調整層49との間の段差が70μm、第1空隙保持部材53と電気抵抗調整層49との間の段差が50μmの帯電ローラ22を得た。
【0116】
本発明品5の帯電ローラ22は、前述した本発明品1と同様に、Ni鍍金が施されたSUMで構成された外径が10mmの芯金48上に、外径13mmの電気抵抗調整層49を得た。その後、電気抵抗調整層49の両端部に小径部52を形成した後、外径13mm、内径12mmの高密度ポリエチレン(ノバティックHD、HY540、日本ポリケム社製)で構成されたリング状の部材55内に芯金48の両端部及び小径部52を圧入し、切削加工により外径が12.60mmの第1空隙保持部材53と外径が12.46mmの電気抵抗調整層49の大径部51を得た。さらに、第1空隙保持部材53の外周面にプライマー処理を行い、フッ素樹脂(ZX−022、富士化成工業社製)を第1空隙保持部材53の外周面に厚み20μmでコーティングし、イソシアネート架橋を施して、第2空隙保持部材54を得、前述した本発明品1と同様に表面層50を形成した。そして、第2空隙保持部材54と電気抵抗調整層49との間の段差が70μm、第1空隙保持部材53と電気抵抗調整層49との間の段差が50μmの帯電ローラ22を得た。
【0117】
比較例の帯電ローラ22は、前述した本発明品1と同様に、Ni鍍金が施されたSUMで構成された外径が10mmの芯金48上に、外径13mmの電気抵抗調整層49を得た。その後、電気抵抗調整層49の両端部に小径部52を形成した後、外径13mm、内径12mmの高密度ポリエチレン(ノバティックHD、HY540、日本ポリケム社製)で構成されたリング状の部材55内に芯金48の両端部及び小径部52を圧入し、切削加工により外径が12.70mmの第1空隙保持部材53と外径が12.42mmの電気抵抗調整層49の大径部51を得た。さらに、前述した本発明品1と同様に表面層50を形成した。そして、第1空隙保持部材53と電気抵抗調整層49との間の段差が120μmの帯電ローラ22を得た。
【0118】
比較例の帯電ローラ22は、前述した本発明品1と同様に、Ni鍍金が施されたSUMで構成された外径が10mmの芯金48上に、外径13mmの電気抵抗調整層49を得た。その後、電気抵抗調整層49の両端部に小径部52を形成した後、外径13mm、内径12mmの高密度ポリエチレン(ノバティックHD、HY540、日本ポリケム社製)で構成されたリング状の部材55内に芯金48の両端部及び小径部52を圧入し、切削加工により外径が12.52mmの第1空隙保持部材53と外径が12.42mmの電気抵抗調整層49の大径部51を得た。さらに、前述した本発明品1と同様に表面層50を形成した。そして、第1空隙保持部材53と電気抵抗調整層49との間の段差が30μmの帯電ローラ22を得た。
【0119】
表1によると、比較例では、リークによる異常放電により白ポチ画像が発生するのに対し、本発明品1ないし本発明品5ではリークによる異常放電により白ポチ画像が発生しないことが明らかとなった。また、比較例では、汚染物質の蓄積により放電ムラが生じて、500000枚目の記録紙2には色ポチ、黒ポチ、スジ画像が発生するのに対し、本発明品では、これらが生じないことが明らかとなった。
【0120】
前述した画像形成装置1では、プロセスカートリッジ9Y,9M,9C,9Kはカートリッジケース16と帯電装置17と感光体ドラム18とクリーニング装置19と現像装置20とを備えている。しかしながら、本発明ではプロセスカートリッジ9Y,9M,9C,9Kは少なくとも帯電装置20を備えていれば良い。また、前述した実施形態では画像形成装置1は装置本体3に着脱自在なプロセスカートリッジ9Y,9M,9C,9Kを備えている。しかしながら本発明では画像形成装置1は帯電装置17を備えていれば良く、プロセスカートリッジ9Y,9M,9C,9Kを必ずしも備えていなくても良い。
【0121】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱し
ない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0122】
1 画像形成装置
9Y,9M,9C,9K プロセスカートリッジ
17 帯電装置
18 感光体ドラム(像担持体)
19 クリーニング装置
20 現像装置
21 潤滑剤塗布装置
22 帯電ローラ(帯電部材)
46 ローラ本体(部材本体)
47 空隙保持部材
53 第1空隙保持部材
54 第2空隙保持部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0123】
【特許文献1】特開2006−162646号公報
【特許文献2】特開2007−121480号公報
【特許文献3】特開2009−271131号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体と平行でかつ当該像担持体に向かって押し付けられた状態で設けられる部材本体と、
前記部材本体上に設けられかつ前記像担持体の外表面に当接して前記部材本体の外表面を前記像担持体の外表面から間隔をあけた状態に保つ空隙保持部材と、
を備えた帯電部材において、
前記空隙保持部材が、前記部材本体上に設けられた第1空隙保持部材と、前記第1空隙保持部材上に設けられかつ当該第1空隙保持部材を構成する材料と前記像担持体の外表面を構成する材料との双方よりも柔らかい材料で構成された第2空隙保持部材と、を備えたことを特徴とする帯電部材。
【請求項2】
前記第1空隙保持部材が、前記像担持体の外表面を構成する材料よりも硬い材料で構成されていることを特徴とする請求項1記載の帯電部材。
【請求項3】
前記第1空隙保持部材が、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンおよびその共重合体、ポリカーボネートから選ばれるデュロメータ硬さ55より大きい材料で構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の帯電部材。
【請求項4】
前記第2空隙保持部材が、低密度ポリエチレン、軟質ポリプロピレン、FEP、PTFEからなるフッ素系樹脂層から選ばれるデュロメータ硬さ50より小さい一以上の材料で構成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれか一項に記載の帯電部材。
【請求項5】
外表面に潜像を担持する像担持体と、前記像担持体の外表面から残留トナーを除去するクリーニング装置と、前記像担持体の外表面を帯電する帯電部材と、前記像担持体の外表面の潜像を現像する現像装置と、を備えたプロセスカートリッジにおいて、
前記帯電部材として請求項1ないし請求項4のうちいずれか一項に記載の帯電部材を備えたことを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項6】
外表面に潜像を担持する像担持体と、前記像担持体の外表面から残留トナーを除去するクリーニング装置と、前記像担持体の外表面を帯電する帯電部材と、前記像担持体の外表面の潜像を現像する現像装置と、を備えた画像形成装置において、
前記帯電部材として請求項1ないし請求項4のうちいずれか一項に記載の帯電部材を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−242647(P2011−242647A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115432(P2010−115432)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】