説明

帯電部材、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】本発明の目的は、繰り返し使用しても優れた耐摩耗性を維持し得る帯電部材の提供にある。
【解決手段】表面層を有する帯電部材において、該表面層が、化合物(1)、化合物(2)、化合物(3)、化合物(4)、化合物(5)、化合物(6)で示される構造をもつシルセスキオキサンから選ばれる少なくとも1つと、SiO0.51(OR2)(OR3)で示される第1のユニット、SiO1.04(OR5)で示される第2のユニット及びSiO1.56で示される第3のユニットを有するポリシロキサンとで構成されており、該シルセスキオキサンが該ポリシロキサンの中に含有されている表面層である帯電部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真装置に用いられる帯電部材、プロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真装置において、電子写真感光体の表面に接触し、当該電子写真感光体の表面を帯電させるためのローラ形状の帯電部材(以下、「帯電ローラ」ともいう)は、一般的に、樹脂を含む弾性層を有している。このような帯電ローラは、電子写真感光体とのニップ幅を十分に確保でき、その結果として、電子写真感光体を効率よく、かつ、均一に帯電させることができる。しかしながら、当該弾性層は、柔軟化のために可塑剤や樹脂の低分子量成分を含有している。そのため、長期の使用によって、当該低分子量成分が帯電ローラの表面に滲み出てくることがある。このような課題に対して、特許文献1は、ゾル−ゲル法によって形成される無機酸化物被膜からなるブリージング阻止層で表面を被覆し、低分子量成分が表面に滲みだすことを抑えた導電性ロール基材を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−173641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者等の検討によれば、特許文献1に開示されたブリージング阻止層が表面層となっている導電性ロールは、繰り返しの使用によって摩耗していき、帯電性能が経時的に変化してしまうことを見出した。
【0005】
そこで、本発明の目的は、長期の使用によっても帯電性能の経時的変化が少ない帯電部材を提供することにある。また、本発明の他の目的は、高品位な電子写真画像を安定して形成することのできるプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る帯電部材は、支持体と、導電性の弾性層と、表面層とをこの順に有する帯電部材であって、該表面層は、ポリシロキサンとシルセスキオキサンとを含み、
該ポリシロキサンは、SiO0.51(OR2)(OR3)で示される第1のユニット、SiO1.04(OR5)で示される第2のユニットおよびSiO1.56で示される第3のユニットを有し、
該シルセスキオキサンは、下記の化合物(1)〜(6)で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物であることを特徴とする:
【0007】
【化1】

【0008】
【化2】

【0009】
【化3】

【0010】
【化4】

【0011】
【化5】

【0012】
【化6】

【0013】
[R1、R4およびR6は各々独立に、置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を示し、R2、R3およびR5は各々独立に、水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を示す。化合物(1)〜(6)中、R101〜R616は各々独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基または下記式(7)で示される基から選ばれる少なくとも1つである。
【0014】
【化7】

【0015】
(式(7)中、X、Y、Zは各々独立に、置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基から選ばれる少なくとも1つであり、mは1〜20の整数である)。
【0016】
また、本発明に係る電子写真装置は、上記の帯電部材と該帯電部材と接触配置されている電子写真感光体とを有することを特徴とする。更に、本発明に係るプロセスカートリッジは、上記の帯電部材と、電子写真感光体、現像手段、転写手段及びクリーニング手段から選ばれる少なくとも1つの部材とを一体に保持し電子写真装置の本体に着脱自在に装着可能に構成されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、長期の使用によっても帯電性能が変化しにくい、耐久性に優れた帯電部材を得ることができる。これは、本発明に係る帯電部材の表面層は、化合物(1)〜(6)に係るシルセスキオキサンは、本発明に係るポリシロキサンの隙間を分子レベルで充填することにより、表面層が補強されたためであると考えられる。その結果、当該表面層は均一な機械強度を保持でき、また、接触帯電の際の電子写真感光体との摩擦によっても摩耗しにくくなっているものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る帯電部材の軸方向に対し垂直な面における断面図である。
【図2】本発明に係るプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る帯電部材は、支持体と、導電性の弾性層と、表面層とをこの順に有する帯電部材であって、該表面層は、ポリシロキサンとシルセスキオキサンとを含む。
【0020】
<ポリシロキサン>
ポリシロキサンは、SiO0.51(OR2)(OR3)で示される第1のユニット、SiO1.04(OR5)で示される第2のユニットおよびSiO1.56で示される第3のユニットを有する。
【0021】
ここでR1、R4およびR6は各々独立に、置換もしくは無置換のアルキル基または置換もしくは無置換のアリール基を示す。無置換のアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、デシル基などが挙げられる。また、置換アルキル基としては、先に挙げたアルキル基の少なくとも1つの水素原子が炭素数1〜10のパーフロロアルキル基で置換されたフッ化アルキル基やグリシドキシプロピル基が挙げられる。また、無置換のアリール基としてはフェニル基が挙げられる。更に、置換アリール基としてペンタフルオロフェニル基や4−パーフルオロトリル基などが挙げられる。
【0022】
2、R3およびR5は各々独立に、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を示す。無置換のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、デシル基などが挙げられる。また、置換アルキルとして2−メトキシエチル基やアセチル基などが挙げられる。
【0023】
なお、上記の「SiO0.51(OR2)(OR3)で示される第1のユニット」とは、下記式(i)に示すようなポリシロキサンのうちの四角で囲んだ範囲A1を意味する。範囲A1の中の、アルコキシ基の酸素原子でない酸素原子(Si−O−SiのO)は、2個のケイ素原子と結合しているため、ケイ素原子1個あたりが結合している酸素原子(Si−O−SiのO)の数は0.5個と考える。
【0024】
【化8】

【0025】
上記の「SiO1.04(OR5)で示される第2のユニット」も、「SiO0.51(OR2)(OR3)で示される第1のユニット」と同様であり、具体的には、下記式(ii)に示すようなポリシロキサンのうちの四角で囲んだ範囲A2を意味する。
【0026】
【化9】

【0027】
上記の「SiO1.56で示される第3のユニット」も、「SiO0.51(OR2)(OR3)で示される第1のユニット」と同様であり、具体的には、下記式(iii)に示すようなポリシロキサンのうちの四角で囲んだ範囲A3を意味する。
【0028】
【化10】

【0029】
前記ポリシロキサンは、置換のアルキル基、無置換のアルキル基、置換のアリール基、及び無置換のアリール基からなるグループから選ばれた少なくとも1種の基を有することが好ましい。
【0030】
本発明の、前記ポリシロキサンを含む帯電部材の表面層を構成するには、例えば、下記工程(I)乃至(III)を経て得ることができる。
【0031】
(I)加水分解性シラン化合物と、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物とを加水分解によって縮合させる縮合工程、
(II)化合物(1)〜化合物(6)で示されるシルセスキオキサンを、工程(I)により得られた加水分解性縮合物に加える混合工程、
(III)カチオン重合可能な基を開裂させることにより、工程(II)により得られた混合物を架橋し硬化させる架橋工程。
【0032】
前記工程(I)の縮合工程で、加水分解に用いる水の量は、前記工程(I)に用いる加水分解性シラン化合物の総量に対して20〜50質量%の範囲にあることが好ましい。また、前記加水分解性シラン化合物としては、置換又は無置換のアリール基から選ばれた少なくとも一種の基を有する加水分解性シラン化合物を用いることが好ましい。これらのなかでは、下記式(8)で示される構造を有するアリール基を有する加水分解性シラン化合物がより好ましい。
【0033】
【化11】

【0034】
(式中、R11及びR12は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基を示し、Ar11は、置換若しくは無置換のアリール基を示す。aは、0以上2以下の整数であり、bは、1以上3以下の整数であり、a+b=3である。)
式(8)に示す化合物において、置換アルキル基としてフッ化アルキル基などが挙げられ、無置換のアルキル基としてメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、デシルなどが挙げられる。その中でも、R11及びR12で表されるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。また、前記式(8)中のアリール基Ar11としては、フェニル基が好ましい。前記式(8)中のaが2の場合、2個のR11は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、前記式(8)中のbが2又は3の場合、2個又は3個のR12は同一であってもよく、異なっていてもよい。以下に前記式(8)で表されるアリール基を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
【0035】
(8−1):フェニルトリメトキシシラン
(8−2):フェニルトリエトキシシラン
(8−3):フェニルトリプロポキシシラン
前記アリール基を有する加水分解性シラン化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
【0036】
前記カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物としては、下記式(9)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物が好適である。
【0037】
【化12】

【0038】
式(9)中、R21及びR22は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基を示し、Z21は、2価の有機基を示し、Rc21は、開裂によってオキシアルキレン基を生成しうるカチオン重合可能な基を示す。dは、0以上2以下の整数であり、eは、1以上3以下の整数であり、d+e=3である。前記式(9)中のカチオン重合可能な基Rc21は、開裂によってオキシアルキレン基を生成しうるカチオン重合可能な有機基を示す。Rc21の具体例としては例えば、グリシドキシ基、エポキシ基、オキセタン基などの環状エーテル基、又はビニルエーテル基などが挙げられる。中でも、入手の容易性及び反応制御の容易性の観点から、グリシドキシ基またはエポキシ基が好ましい。また、前記オキシアルキレン基とは、−O−R−(−R−:アルキレン基)で示される構造を有する2価の基(「アルキレンエーテル基」と呼ばれることもある。)である。
【0039】
前記式(9)中のR21及びR22で表される置換アルキル基としてフッ化アルキル基などが挙げられ、無置換のアルキル基としてメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、デシルなどが挙げられる。その中でも、R21及びR22としては、炭素数1〜3の無置換のアルキル基若しくは分岐アルキル基が好ましく、さらには、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0040】
前記式(9)中の2価の有機基Z21としては、例えば、アルキレン基又はアリーレン基などが挙げられる。これらの中では、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、さらにはエチレン基、プロピレン基がより好ましい。また、前記式(9)中のeは3であることが好ましい。前記式(9)中のdが2の場合、2個のR21は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、前記式(9)中のeが2又は3の場合、2個又は3個のR22は同一であってもよく、異なっていてもよい。以下に、前記式(9)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
【0041】
(9−1):グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(9−2):グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
(9−3):エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン
(9−4):エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン
前記カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
【0042】
また、前記工程(I)において、アリール基を有する加水分解性シラン化合物及びカチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物だけでなく、さらに下記式(10)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を併用することが好ましい。これにより、製造される帯電部材の表面の離型性を向上させることができる。下記式(10)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を用いることによって、得られるポリシロキサンは、フッ化アルキル基(パーフルオロアルキル基)を有するポリシロキサンとなる。
【0043】
【化13】

【0044】
式(10)中、R31及びR32は、それぞれ独立に、置換若しくは無置換のアルキル基を示し、Z31は、2価の有機基を示し、Rf31は、炭素数1以上11以下のフッ化アルキル基を示す。fは、0〜2の整数であり、gは、1〜3の整数であり、f+g=3である。R31及びR32において、置換アルキル基としてフッ化アルキル基などが挙げられ、無置換のアルキル基としてメチル、エチル、プロピル、ヘキシル、デシルなどが挙げられる。その中でも、R31及びR32で表されるアルキル基としては、炭素数1〜3のアルキル基若しくは分岐アルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基がより好ましい。
【0045】
また、前記式(10)中のZ31の2価の有機基としては、例えば、アルキレン基又はアリーレン基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、さらにはエチレン基がより好ましい。
【0046】
また、前記式(10)中のRf31の炭素数1以上11以下のフッ化アルキル基としては、処理性の観点から、特に炭素数6〜11の直鎖状のフッ化アルキル基が好ましい。
【0047】
前記式(10)中のgは3であることが好ましい。また、前記式(10)中のfが2の場合、2個のR31は同一であってもよく、異なっていてもよい。前記式(10)中のgが2又は3の場合、2個又は3個のR32は同一であってもよく、異なっていてもよい。以下に、前記式(10)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。下記(10−1)〜(10−6)中のRはメチル基又はエチル基を示す。
【0048】
(10−1):CF3−(CH22−Si−(OR)3
(10−2):CF3−(CF2)−(CH22−Si−(OR)3
(10−3):CF3−(CF23−(CH22−Si−(OR)3
(10−4):CF3−(CF25−(CH22−Si−(OR)3
(10−5):CF3−(CF27−(CH22−Si−(OR)3
(10−6):CF3−(CF29−(CH22−Si−(OR)3
前記(10−1)〜(10−6)の中でも、(10−4)〜(10−6)が好ましい。前記フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物は、1種のみを用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
【0049】
本発明においては、前記工程(I)において、上述の加水分解性シラン化合物以外の加水分解性シランをさらに併用してもよい。上述の加水分解性シラン化合物以外の加水分解性シランとしては、例えば、下記式(11)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物が挙げられる。
【0050】
(R41h─Si─(OR42k (11)
(式中、R41は、置換若しくは無置換のアルキル基を示す。R42は、飽和若しくは不飽和の1価の炭化水素基を示す。hは、0〜3の整数であり、kは、1〜4の整数であり、h+k=4である。)
前記式(11)中のR41としては、炭素数1〜21の無置換のアルキル基が好ましい。前記式(11)中のhは1〜3の整数であることが好ましく、特には1であることがより好ましい。また、前記式(11)中のkは1〜3の整数であることが好ましく、特には3であることがより好ましい。前記式(11)中のR42の飽和又は不飽和の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基又はアリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜3の無置換のアルキル基若しくは分岐アルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基又はn−プロピル基がより好ましい。前記式(11)中のhが2又は3の場合、2個又は3個のR41は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、前記式(11)中のkが2、3又は4の場合、2個、3個又は4個のR42は同一であってもよく、異なっていてもよい。前記式(11)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物は、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。以下に、前記式(11)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
【0051】
(11−1):メチルトリメトキシシラン
(11−2):メチルトリエトキシシラン
(11−3):メチルトリプロポキシシラン
(11−4):エチルトリメトキシシラン
(11−5):エチルトリエトキシシラン
(11−6):エチルトリプロポキシシラン
(11−7):プロピルトリメトキシシラン
(11−8):プロピルトリエトキシシラン
(11−9):プロピルトリプロポキシシラン
(11−10):ヘキシルトリメトキシシラン
(11−11):ヘキシルトリエトキシシラン
(11−12):デシルトリメトキシシラン
(11−13):デシルトリエトキシシラン
(11−14):デシルトリプロポキシシラン
<シルセスキオキサン>
本発明に係る表面層は、上記したポリシロキサンと共に特定の化学構造を有するシルセスキオキサンを含む。具体的には、下記化合物(1)〜(6)からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物を含む。
【0052】
【化14】

【0053】
【化15】

【0054】
【化16】

【0055】
【化17】

【0056】
【化18】

【0057】
【化19】

【0058】
前記化合物(1)〜化合物(6)中の、R101〜R616は、各々独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基および下記式(7)で示される基から選ばれる少なくとも1つである。
【0059】
【化20】

【0060】
式(7)中、X、YおよびZは各々独立に、置換もしくは無置換のアルキル基、および置換もしくは無置換のアリール基から選ばれる少なくとも1つであり、mは、1〜20の範囲の整数である。
【0061】
上記化合物(1)〜(6)において、R101〜R616は、各々独立に、炭素数が1〜20の無置換のアルキル基および上記式(7)で示される基から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。これにより、ポリシロキサンに対するシルセスキオキサンの溶解性を向上させることができる。
【0062】
ここで、R101〜R616から選ばれる何れかの置換基が上記式(7)である場合において、XおよびYは、炭素数1〜3のアルキル基であり、Zは炭素数1〜3のアルキル基またはシクロアルケニル変性アルキル基であり、mは1であることが好ましい。ポリシロキサンとシルセスキオキサンとの表面張力の差を小さくすることができるため、両者の相溶性を向上させることができる。その結果、ポリシロキサンの網目構造中への充填が、より均一となり、表面層の機械的強度のより一層の均一化を図ることができる。また、R101〜R616における置換アルキル基の例としては、炭素数1〜20のアルキル基の少なくとも1つの水素原子をフッ素原子で置換したフッ化アルキル基や、当該水素原子を置換もしくは無置換の脂環式炭化水素基、置換もしくは無置換のアリール基、さらには下記式(12)で示される基で置換されたアルキル基を挙げることができる。
【0063】
【化21】

【0064】
ポリシロキサンに対する溶解性の観点から、シルセスキオキサンとして、上記化合物(2)で示される構造を有するシルセスキオキサンを用いることが好ましい。このとき、R201〜R208としては、炭素数が1〜20の分岐アルキル基または式(7)で示される基であり、かつ、R201〜R208を全て同じ基とすることの組み合わせが好ましい。そして、R201〜R208を上記式(7)で示される基とする場合においては、式(7)中のXおよびYを炭素数1〜4の直鎖状のアルキル基とし、Zをシクロアルケニル基(たとえば、3−シクロヘキセン−1−イルなど)で変性されたエチル基とすることが好ましい。シルセスキオキサンを構成するSi原子数が多くなりすぎないことで、ポリシロキサンの網目構造の隙間に好ましく埋まり、表層膜の機械強度を均一に向上させられる。
【0065】
シルセスキオキサンの前記ポリシロキサンに対する含有量の目安は、ポリシロキサン100molに対して、シルセスキオキサンを1.0mol以上50.0mol以下、特には、10.0mol以上30.0mol以下である。
【0066】
次に、本発明の帯電部材の構成について、表面層の具体的な形成方法を含めて説明する。
【0067】
図1に、本発明の帯電部材の一例である帯電ローラの、軸方向に対し垂直な面における断面模式図を示す。図1中、101は支持体であり、102は導電性弾性層であり、103は表面層である。電子写真感光体と帯電部材との当接ニップを十分に確保する観点から、帯電部材は、例えば図1に示したように、支持体101と表面層103との間に導電性弾性層102を設けた構成であることが好ましい。換言すれば、帯電部材は、支持体101、該支持体101上に形成された導電性弾性層102、及び、該導電性弾性層102上に形成された表面層103を有するものであることが好ましい。また、支持体101と導電性弾性層102との間や導電性弾性層102と表面層103との間に別の層を1つ又は2つ以上設けてもよい。
【0068】
以下、支持体、該支持体上に形成された導電性弾性層、及び、該導電性弾性層上に形成された表面層を有する帯電部材を例にとって説明する。
【0069】
<支持体>
帯電部材の支持体としては鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケルなどの金属製(合金製)の支持体を用い得る。
【0070】
<弾性層>
導電性の弾性層を構成する材料として、従来の帯電部材の弾性層(導電性弾性層)に用 いられているゴムや熱可塑性エラストマーなどの弾性体を1種又は2種以上用いること ができる。ゴムの具体例を以下に挙げる。ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエン ゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プ ロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アクリ ロニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴム又はアルキルエーテルゴムなど。
【0071】
前記熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー又はオレフィ ン系エラストマーなどが挙げられる。スチレン系エラストマーの市販品としては、例え ば、「ラバロン」(商品名、三菱化学(株)製)、「セプトンコンパウンド」(商品名 、クラレ(株)製)などが挙げられる。オレフィン系エラストマーの市販品としては、 例えば、「サーモラン」(商品名、菱化学(株)製)、「ミラストマー」(商品名、三 井化学(株)製)、「住友TPE」(商品名、住友化学(株)製)又は「サントプレー ン」(商品名、アドバンストエラストマーシステムズ社製)などが挙げられる。
【0072】
また、導電性弾性層には、導電剤を適宜使用することによって、その導電性を所定の 値にすることができる。導電性弾性層の電気抵抗は、導電剤の種類及び使用量を適宜選 択することによって調整することができ、その電気抵抗の好適な範囲は102〜108 Ωであり、より好適な範囲は103〜106Ωである。
【0073】
導電性弾性層に用いられる導電剤としては、例えば、陽イオン性界面活性剤、陰イオ ン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、帯電防止剤、電解質などが挙げられる。前記 陽イオン性界面活性剤の例として第四級アンモニウム塩が挙げられる。第四級アンモニ ウム塩の第四級アンモニウムイオンの具体例としてはラウリルトリメチルアンモニウム イオン、ステアリルトリメチルアンモニウムイオン等が挙げられる。また、第四級アン モニウムイオンの対イオンの具体例としては、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン等 が挙げられる。また、前記陰イオン性界面活性剤の具体例としては、脂肪族スルホン酸 塩、高級アルコール硫酸エステル塩等が挙げられる。
【0074】
帯電防止剤の具体例としては、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレング リコール脂肪酸エステル等の非イオン性帯電防止剤が挙げられる。電解質としては周期 律表第1族の金属(LiやNaやKなど)の塩が挙げられ、具体的には、周期律表第1 族の金属の塩(LiCF3SO3、NaClO4等)が挙げられる。
【0075】
また、導電剤としては周期律表第2族の金属(CaやBaなど)の塩(Ca(ClO 42など)が挙げられる。また、導電剤として、導電性のカーボンブラック、グラフ ァイト、金属酸化物(酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等)、金属(ニッケル、銅、銀 、ゲルマニウム等)、導電性ポリマー(ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン 等)を用いることもできる。
【0076】
導電性弾性層には、無機又は有機の充填剤や架橋剤を添加してもよい。充填剤として は、例えば、シリカ(ホワイトカーボン)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレ ー、タルク、ベントナイト、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム又は硫酸アルミニウ ムなどが挙げられる。架橋剤としては、例えば、イオウ、過酸化物、架橋助剤、架橋促 進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤などが挙げられる。
【0077】
導電性弾性層の硬度は、帯電部材と被帯電体である電子写真感光体とを当接させた際 、帯電部材の変形を抑制する観点から、アスカーC硬度で70度以上であることが好ま しく、特には73度以上であることがより好ましい。本発明において、アスカーC硬度 の測定は、測定対象の表面にアスカーC型硬度計(高分子計器(株)製)の押針を当接 し、1000g加重の条件で行った。
【0078】
以下、表面層の具体的な形成方法の一例について説明する。まず、加水分解性シラン 化合物及びカチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物、並びに、必要に応 じて前記の他の加水分解性シラン化合物を水の存在下で加水分解反応させることによっ て加水分解性縮合物を得る(工程I)。加水分解反応の際、温度やpHなどを制御する ことで、所望の縮合度の加水分解性縮合物を得ることができる。
【0079】
また、加水分解反応の際、加水分解反応の触媒として金属アルコキシドなどを利用し 、縮合度を制御してもよい。金属アルコキシドとしては、例えば、アルミニウムアルコ キシド、チタニウムアルコキシド若しくはジルコニウムアルコキシドなど、又はこれら の錯体(アセチルアセトン錯体など)が挙げられる。
【0080】
前記工程(I)の縮合工程で、加水分解に用いる水の量は、前記工程(I)に用いる 加水分解性シラン化合物の総量に対して20〜50質量%の範囲にあることが好ましい 。
【0081】
また、前記加水分解性シラン化合物としては、置換及び無置換アリール基から選ばれ た少なくとも一種の基を有する加水分解性シラン化合物を用いることが好ましい。これ らのなかでは、前記式(8)で示される構造を有するアリール基を有する加水分解性シ ラン化合物がより好ましい。
【0082】
また、前記工程(III)でカチオン重合可能な基を開列させて得られるポリシロキ サンが有する各々の基が、前記ポリシロキサンの全質量に対して次の範囲となることが 好ましい。
【0083】
・アリール基の含有量 :2質量%以上30質量%以下
・アルキル基の含有量 :2質量%以上30質量%以下
・オキシアルキレン基の含有量 :5質量%以上50質量%以下
・シロキサン部分の含有量 :30質量%以上60質量%以下
前記アリール基、アルキル基、オキシアルキレン基の含有量総計は、20〜40質量 %とすることが好ましく、25〜35質量%とすることがより好ましい。アリール基を 有する加水分解性シラン化合物を全加水分解性シラン化合物に対して10〜50mol 部の範囲になるように配合することがより好ましい。
【0084】
また、前記工程(I)において、前記式(10)で示される構造を有する加水分解性 シラン化合物を併用する場合には、前記工程(III)でカチオン重合可能な基を開列 させて得られるポリシロキサンが有する各々の基が、前記ポリシロキサン中の全質量に 対して次の範囲となることが好ましい。
【0085】
・アリール基の含有量 :2質量%以上30質量%以下
・アルキル基の含有量 :2質量%以上30質量%以下
・オキシアルキレン基の含有量 :5質量%以上50質量%以下
・フッ化アルキル基の含有量 :2質量%以上30質量%以下
・シロキサン部分の含有量 :30質量%以上70質量%以下
前記アリール基、アルキル基、オキシアルキレン基、フッ化アルキル基及びシロキサ ン部分の含有量総計は、ポリシロキサンの全質量に対して、10〜60質量%とするこ とが好ましく20〜50質量%とすることがより好ましい。また、カチオン重合可能な 基を有する加水分解性シラン化合物とフッ化アルキル基を含有する加水分解性シラン化 合物とのモル比は10:1〜1:10の範囲になるように配合することがより好ましい 。
【0086】
次に、得られた加水分解性縮合物に、化合物(1)〜(6)で示されるシルセスキオ キサン化合物のいずれか、または2種類以上を添加して混合する(工程II)。
【0087】
化合物(1)〜(6)で示されるシルセスキオキサンとしては市販品を用いることも でき、また公知の方法によって合成したものを用いることもできる。すなわち、シルセ スキオキサンは、任意の置換基と3つの加水分解性基とを有するシラン化合物を加水分 解させ、次いで、脱水縮合させることにより合成することができる。
【0088】
加水分解性基としては、アルコキシ基、塩素原子などがあげられる。例えば、メチルトリクロロシランを、水・溶媒・塩基性触媒存在下で加水分解、および脱水縮合させることにより、オクタメチル−ポリオクタシルセスキオキサンを得ることができる。塩基性触媒としては水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化セシウムなどのアルカリ金属酸化物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどの水酸化アンモニウム塩が挙げられる。中でも、触媒活性が高い点からテトラメチルアンモニウムヒドロキシドが好ましい。
【0089】
加水分解に用いる水は、塩基性触媒の水溶液から補充することもできるし、別途、加えてもよい。水の量は、加水分解性基を加水分解するに足る量以上、好ましくは理論量の1.0〜1.5倍量である。溶媒としては、メタノール、エタノール、2-プロパノールなどのアルコール類、あるいは他の極性溶媒を用いることができる。水との相溶性の観点から、炭素数1〜6の低級アルコールが好ましい。合成時の反応温度は、0〜60℃が好ましく、20〜40℃がより好ましい。加水分解性基が未反応の状態で残存することを抑制でき、また、反応速度が速すぎることによる加水分解生成物の高分子量化を抑制できる。また、反応時間は、加水分解を十分に進行させるためには2時間以上が好ましい。加水分解反応終了後は、水または水含有反応溶媒を分離してもよい。水または水含有反応溶媒を分離する手法としては、減圧蒸発等の手法を用いることができる。水分やその他の不純物を十分に除去するためには、非極性溶媒を添加して加水分解生成物を溶解させ、この溶液を食塩水等で洗浄し、その後、無水硫酸マグネシウム等の乾燥剤で乾燥させる手段が採用できる。
【0090】
得られたシルセスキオキサンの構造は、29Si 核磁気共鳴スペクトル、フーリエ変換赤外吸収スペクトルを用いることにより確認することができる。
【0091】
化合物(1)〜(6)で示されるシルセスキオキサンの添加量の目安は、加水分解性シラン化合物が全て脱水縮合した場合のポリシロキサン固形分の総量を100molとしたときに、化合物(1)〜(6)で示されるシルセスキオキサンの量が1.0mol以上50.0mol以下、特には、10.0mol以上30.0mol以下である。
【0092】
次に、加水分解性縮合物及び化合物(1)〜(6)で示されるシルセスキオキサン化合物を含む表面層形成用の塗布液を調製し、表面層の直下となる層、すなわち、弾性層上に当該塗布液の塗膜を形成する。
【0093】
塗布液を調製する際には、塗布性向上のために、加水分解性縮合物以外に、溶剤を用いてもよい。溶剤としては、例えば、エタノール若しくは2−ブタノールなどのアルコール、酢酸エチル、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、又はこれらを混合したもの等が挙げられる。また、表面層用塗布液を導電性弾性層上に塗布する際には、ロールコーターを用いた塗布、浸漬塗布、リング塗布などの方法を採用することができる。
【0094】
次に、塗膜に活性エネルギー線を照射する。すると、塗膜に含まれる加水分解性縮合物が有するカチオン重合可能な基は開裂する。これによって、該表面塗布液層中の加水分解性縮合物を架橋させることができる。加水分解性縮合物は架橋によって硬化し、これを乾燥すると表面層が形成される(工程III)。
【0095】
前記活性エネルギー線としては紫外線が好ましい。架橋反応に紫外線を用いた場合、短時間(15分以内)に加水分解性縮合物を架橋することができる。加えて、熱の発生も少なく、表面層のシワやクラックが発生しにくい。また、架橋反応を熱の発生が少ない紫外線によって行えば、導電性弾性層と表面層との密着性が高まり、導電性弾性層の膨張・収縮に表面層が十分に追従できるようになるため、環境の温湿度の変化による表面層のシワやクラックを抑制できる。また、架橋反応を紫外線によって行えば、熱履歴による導電性弾性層の劣化を抑制することができるため、導電性弾性層の電気的特性の低下を抑制することもできる。紫外線の照射には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、エキシマUVランプなどを用いることができ、これらのうち、紫外線の波長が150〜480nmの光を豊富に含む紫外線源が好ましく用いられる。
【0096】
なお、紫外線の積算光量は、以下のように定義される。
紫外線積算光量[mJ/cm2]=紫外線強度[mW/cm2]×照射時間[s]
紫外線の積算光量の調節は、照射時間や、ランプ出力や、ランプと被照射体との距離などで行うことが可能である。また、照射時間内で積算光量に勾配をつけてもよい。低圧水銀ランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計「UIT−150−A」(商品名)や「UVD−S254」(商品名)を用いて測定することができる。エキシマUVランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計「UIT−150−A」(商品名)や「VUV−S172」(商品名)を用いて測定することができる。
【0097】
また、架橋反応の際、架橋効率向上の観点から、カチオン重合触媒(重合開始剤)を共存させておくことが好ましい。例えば、活性エネルギー線によって賦活化されるルイス酸のオニウム塩に対してエポキシ基は高い反応性を示すことから、前記のカチオン重合可能な基がエポキシ基である場合、カチオン重合触媒としては、ルイス酸のオニウム塩を用いることが好ましい。
【0098】
その他のカチオン重合触媒としては、例えば、ボレート塩、イミド構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、アゾ化合物、過酸化物などが挙げられる。各種カチオン重合触媒の中でも、感度、安定性及び反応性の観点から、芳香族スルホニウム塩や芳香族ヨードニウム塩が好ましい。特に、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム塩や、下記式(12)で示される構造を有する化合物(商品名:「アデカオプトマ−SP150」、(株)ADEKA製)がより好ましい。また、下記式(13)で示される構造を有する化合物(商品名:「イルガキュア261」、チバスペシャルティーケミカルズ社製)もより好ましい。
【0099】
【化22】

【0100】
【化23】

【0101】
カチオン重合触媒の使用量は加水分解性縮合物に対して0.1〜3質量%が好ましい。
【0102】
また、帯電部材の表面へのトナーや外添剤の固着を抑制する観点から、帯電部材の表面(=表面層の表面)の粗さ(Rzjis;JIS B 0601:2001に準拠して測定)は10μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましい。また、電子写真感光体との当接ニップを十分に確保する観点から、帯電部材の表面層の弾性率は30GPa以下であることが好ましい。一方、一般的に、表面層の弾性率は小さくなるほど架橋密度が小さくなる傾向にある。このため、帯電部材に導電性弾性層を設ける場合には、導電性弾性層中の低分子量成分が帯電部材の表面にブリードアウトして電子写真感光体の表面を汚染してしまうのを抑制する観点から、表面層の弾性率は100MPa以上であることが好ましい。
【0103】
また、表面層の層厚の目安としては、0.01μm以上1.00μm以下、特には0.05μm以上0.50μm以下である。弾性層からの低分子量成分が帯電部材の表面に染み出すことを抑制し、また、帯電部材の帯電性能とを勘案して、上記の範囲で適宜設定すればよい。
【0104】
図2に本発明の帯電部材を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の一例の概略構成を示す。図2中、円筒状の電子写真感光体1は、軸2を中心に矢印Aの方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体1には本発明に係る帯電部材3(図2においてはローラ形状の帯電部材)が接触配置されている。帯電部材3は電子写真感光体1の回転に対して順方向に回転するようになっている。回転駆動される電子写真感光体1の表面は帯電部材3により、正又は負の所定電位に均一に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の表面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく。帯電部材3により電子写真感光体1の表面を帯電する際、帯電部材3には、電圧印加手段(不図示)から直流電圧のみの電圧あるいは直流電圧に交流電圧を重畳した電圧が印加される。本発明の帯電部材は、帯電部材に直流電圧のみの電圧を印加するための電圧印加手段を有する電子写真装置に使用することが好ましい。直流電圧としては、例えば、−1000Vの電圧を印加した場合、その際の暗部電位は−500V程度、明部電位は、−100V程度となることが好ましい。
【0105】
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5の現像剤に含まれるトナーにより現像(反転現像若しくは正規現像)されてトナー像となる。次いで、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が、転写手段(転写ローラなど)6からの転写バイアスによって、転写材(紙など)Pに順次転写されていく。このとき、転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送される。トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7によって転写されなかった現像剤(トナー)が除去される。
【0106】
本発明に係るプロセスカートリッジは、本発明にかかる帯電部材3と、電子写真感光体1、現像手段5、転写手段6及びクリーニング手段7から選ばれる少なくとも1つの部材とを一体に保持し電子写真装置の本体に着脱自在に装着可能に構成されてなる。例えば、図2に示したように、電子写真感光体1、帯電部材3、現像手段5及びクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化してもよい。また、例えば、図2に示したように、電子写真装置本体のレールなどの案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としてもよい。また、本発明に係る電子写真装置は、本発明に係る帯電部材と、該帯電部材と接触配置されている電子写真感光体とを有するものである。また、電子写真装置には、帯電手段に直流電圧のみを印加する電圧印加手段を有しているものが好ましい。
【実施例】
【0107】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0108】
〈実施例1〉
(帯電部材の作製)
下記表1に示した原材料を6リットル加圧ニーダー「TD6−15MDX」(商品名、株式会社トーシン製)にて、充填率70vol%、ブレード回転数30rpmで16分混合して、A練りゴム組成物を得た。
【0109】
【表1】

【0110】
前記A練りゴム組成物に、下記表2に示す加硫促進剤及び加硫剤を加え、ロール径12インチのオープンロールにて、前ロール回転数8rpm、後ロール回転数10rpm、ロール間隙2mmで、左右の切り返しを合計20回実施した後、ロール間隙を0.5mmとして薄通し10回を行って混練物Iを得た。
【0111】
【表2】

【0112】
次に、混練物1をゴム押出機で、外径9.4mm、内径5.4mmの円筒形に押し出し、250mmの長さに裁断し、加硫缶で160℃の水蒸気で30分間1次加硫することによって、導電性弾性層用1次加硫チューブ1を得た。
【0113】
一方、円柱形の鋼製の支持体(直径6mm、長さ256mm;表面をニッケルメッキ加工)を用意した。この支持体の円柱面軸方向中央を挟んで両側115.5mmまでの領域(あわせて軸方向幅231mmの領域)に、金属及びゴムを含む熱硬化性接着剤(商品名:「メタロックU−20」、(株)東洋化学研究所製)を塗布した。これを80℃で30分間乾燥した後、さらに120℃で1時間乾燥した。この支持体を、前記導電性弾性層用1次加硫チューブ1の中に挿入し、160℃で1時間加熱して導電性弾性層用1次加硫チューブ1を2次加硫し、熱硬化性接着剤を硬化した。このようにして、表面研磨前の導電性弾性ローラ1を得た。
【0114】
次に、表面研磨前の導電性弾性ローラ1の導電性弾性層部分(ゴム部分)の両端を切断し、導電性弾性層部分の軸方向幅を231mmとした。さらに、導電性弾性層部分の表面を回転砥石で研磨することによって、導電性弾性ローラ(表面研磨後の導電性弾性ローラ)2を得た。この導電性弾性ローラ2は、端部直径8.2mm、中央部直径8.5mmのクラウン形状の導電性弾性層を有しており、この導電性弾性層の表面の十点平均粗さ(Rzjis)は5.5μm、振れは28μmであった。また、導電性弾性層のアスカーC硬度は78度であった。
【0115】
前記十点平均粗さ(Rzjis)はJIS B 0601:2001に準拠して測定した。振れの測定は、ミツトヨ(株)製高精度レーザー測定機「LSM−430v」(商品名)を用いて行った。詳しくは、該測定機を用いて外径を測定し、最大外径値と最小外径値の差を外径差振れとし、この測定を5点で行い、5点の外径差振れの平均値を被測定物の振れとした。更に、前記アスカーC硬度の測定は、前述したように、測定対象の表面にアスカーC型硬度計(高分子計器(株)製)の押針を当接し、1000g加重の条件で行った。
【0116】
次に、下記表3に示す原料を混合した後、室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流(120℃)を行うことによって、加水分解性シラン化合物の縮合物含有溶液1を得た。
【0117】
【表3】

【0118】
この縮合物含有溶液1にシルセスキオキサンNo.1(商品番号:52684−3、シグマアルドリッチジャパン製)をメチルエチルケトン(以下、MEKという)で10質量%に希釈した溶液を、前記加水分解性シラン化合物の添加量の合計0.320molに対するシルセスキオキサンNo.1が10.0molになるように、279.56g添加した。このシルセスキオキサンNo.1を含んだ縮合物含有溶液1を2−ブタノール/エタノールの混合溶剤に添加することによって、固形分7質量%の縮合物含有アルコール溶液1を調製した。さらに、光カチオン重合開始剤として芳香族スルホニウム塩(商品名:「アデカオプトマーSP−150」、(株)ADEKA製)をメチルイソブチルケトン(以下、MIBKという)で10質量%に希釈したものを、縮合物含有アルコール溶液1に対して2質量部添加した。これをエタノールで希釈することによって、固形分2質量%の表面層用塗布液1を調製した。
【0119】
次に、導電性弾性ローラ(表面研磨後の導電性弾性ローラ)2の導電性弾性層上に表面層用塗布液1をリング塗工ヘッドを用いて塗布した(吐出量:0.008ml/s(リング部のスピード:30mm/s、総吐出量:0.064ml))。そして、導電性弾性層上の塗布液1の塗膜に対して、波長254nmの紫外線を積算光量が8500mJ/cm2になるように照射して、塗膜中の加水分解縮合物1のグリシドキシ基を開裂させ、架橋させ、更に、3秒間放置して乾燥させることにより表面層を形成した。紫外線の照射には、ハリソン東芝ライティング(株)製の低圧水銀ランプを用いた。
【0120】
以上のようにして、支持体、該支持体上に形成された導電性弾性層、および該導電性弾性層上に形成された表面層を有する帯電ローラを作製した。この帯電ローラを帯電ローラ1とする。
【0121】
〈実施例2〜5〉
実施例1のシルセスキオキサンNo.1を下記表4に示すシルセスキオキサンNo.2〜5に変更した以外は実施例1と同様の方法で帯電ローラ2〜5を作製した。
【0122】
【表4】

【0123】
〈実施例6〉
実施例1のシルセスキオキサンNo.1を下記合成例1により作製したシルセスキオキサンNo.6に変更した以外は実施例1と同様の方法で帯電ローラ6を作製した。
【0124】
≪合成例1≫
撹拌機、滴下ロート、温度計を備えた反応容器に、溶媒として2−プロパノール(以下、IPAという)120mlと、塩基性触媒として5%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(以下、TMAH水溶液という)9.40gを加えた。滴下ロートにIPA45mlと、下記式(14)に示す出発物質1を0.150mol(31.56g)入れ、反応溶液を撹拌しながら、室温で30分かけて滴下した。滴下終了後、加熱することなく2時間撹拌した。2時間撹拌後、溶媒を減圧下で除去した後、反応容器にトルエン250mlを加え、内容物を溶解した。当該内容物のトルエン溶液を飽和食塩水で中性になるまで水洗した後、無水硫酸マグネシウムで脱水した。無水硫酸マグネシウムをろ別し、濃縮してシルセスキオキサンNo.6を得た。
【0125】
【化24】

【0126】
得られたシルセスキオキサンNo.6は、29Si CP/MAS 核磁気共鳴スペクトル(日本電子社製 以下、29Si−NMRという)、フーリエ変換赤外吸収スペクトル(日本分光(株)製 以下、FT−IRという)、高速液体クロマトグラフィー分離後の質量分析((株)島津製作所製 以下、LC−MSという)を用いる事により、シルセスキオキサンNo.6の構造、有機置換基の同定、および収率の計算を行った。
【0127】
29Si−NMRより、55ppm付近に、カゴ状構造に特有のシグナルが確認された。また、FT−IRより、2175cm-1および770cm-1にSi−C結合に特有のピークが確認され、また、1120cm-1に、Si−O−Si結合に特有のピークが確認された。更に、液体クロマトグラフ質量分析(LC−MS)より、質量数(m/z)847のベースピークが、Si原子が6つで構成されたシルセスキオキサンNo.6からプロトンが一つ失われてイオン化した構造由来であることが確認された。
【0128】
さらに、LC−MSにおいて、質量数(m/z)847におけるクロマトグラムピークの面積と、上記出発物質1のイオン化物由来である質量数(m/z)209におけるクロマトグラムピークの面積との和に対する、質量数(m/z)847におけるクロマトグラムピークの比率を計算したところ、0.12であった。すなわち、シルセスキオキサンNo.6の収率が12%であることが確認された。
【0129】
〈実施例7〜8〉
実施例6の合成例1で用いた出発物質1を各々下記式(15)〜(16)で示される出発物質2および出発物質3に変更した以外は実施例6と同様の方法でシルセスキオキサンNo.7〜8を合成した。これらのシルセスキオキサンを用いて実施例6と同様にして帯電ローラ7および8を作製した。なお、出発物質2の添加量は28.55g、出発物質3の添加量は、29.47gとした。
【0130】
【化25】

【0131】
【化26】

【0132】
〈実施例9〜12〉
実施例1のシルセスキオキサンNo.1を下記表5に示すシルセスキオキサンNo.9〜12に変更した以外は実施例1と同様の方法で帯電ローラ9〜12を作製した。
【0133】
【表5】

【0134】
〈実施例13〉
実施例6の合成例1で用いた出発物質1を下記式(17)で示される出発物質4に変更した以外は実施例6と同様の方法でシルセスキオキサンNo.13を合成した。このシルセスキオキサンを用いて実施例6と同様にして帯電ローラ13を作製した。なお、出発物質4の添加量は20.43gとした。
【0135】
【化27】

【0136】
〈実施例14〉
実施例1のシルセスキオキサンNo.1を、実施例8にてシルセスキオキサンNo.8を合成したときに同時に得られたシルセスキオキサンNo.14に変更した以外は実施例1と同様の方法で帯電ローラ14を作製した。
【0137】
〈実施例15〉
実施例1のシルセスキオキサンNo.1を、実施例13にてシルセスキオキサンNo.13を合成したときに同時に得られたシルセスキオキサンNo.15に変更した以外は実施例1と同様の方法で帯電ローラ15を作製した。
【0138】
〈実施例16〉
実施例1のシルセスキオキサンNo.1を、実施例8においてシルセスキオキサンNo.8を合成した時に同時に得られたシルセスキオキサンNo.16に変更した以外は実施例1と同様の方法で帯電ローラ16を作製した。
【0139】
〈実施例17〉
実施例1のシルセスキオキサンNo.1をMEKで10質量%に希釈した溶液を、前記加水分解性シラン化合物の添加量の合計0.320molに対するシルセスキオキサンNo.1が0.5mol部になるように13.98g添加した。それ以外は実施例1と同様の方法で帯電ローラ17を作製した。
【0140】
〈実施例18〉
実施例1のシルセスキオキサンNo.1をMEKで10質量%に希釈した溶液を、前記加水分解性シラン化合物の添加量の合計0.320molに対するシルセスキオキサンNo.1が60.0mol部になるように1677.34g添加した。それ以外は実施例1と同様の方法で帯電ローラ18を作製した。
【0141】
実施例1〜18で用いたシルセスキオキサンNo.1〜16の構造を以下に示す。また、各実施例において用いたシルセスキオキサンおよびその添加量を表6に示す。
【0142】
シルセスキオキサンNo.1
(Si原子数=8、分子量=873.616)
201〜R208のすべてが下記構造式(18)で示される基である。
【0143】
【化28】

【0144】
シルセスキオキサンNo.2
(Si原子数=8、分子量=1883.456)
201〜R208のすべてが下記式(19)で示される基である。
【0145】
【化29】

【0146】
シルセスキオキサンNo.3
(Si原子数=8、分子量=913.566)
201〜R207が下記式(20)で示される基である。
【0147】
【化30】

【0148】
208が下記式(21)で示される基である。
【0149】
【化31】

【0150】
シルセスキオキサンNo.4
(Si原子数=8、分子量尾御=1113.796)
201〜R207の全てが下記式(22)で示される基である。
【0151】
【化32】

【0152】
208が下記式(23)で示される基である。
【0153】
【化33】

【0154】
シルセスキオキサンNo.5
(Si原子数=8、分子量=1257.936)
101〜R106の全てが下記式(24)で示される基である。
【0155】
【化34】

【0156】
シルセスキオキサンNo.6
(Si原子数=6、分子量=847.692)
201〜R208の全てが下記式(25)で示される基である。
【0157】
【化35】

【0158】
シルセスキオキサンNo.7
(Si原子数=6、分子量=727.272)
101〜R106の全てが下記式(26)で示される基である。
【0159】
【化36】

【0160】
シルセスキオキサンNo.8
(Si原子数=6、分子量=775.140)
101〜R106の全てが下記式(27)で示される基である。
【0161】
【化37】

【0162】
シルセスキオキサンNo.9
(Si原子数=10、分子量=1653.060)
301〜R310の全てが下記式(28)で示される基である。
【0163】
【化38】

【0164】
シルセスキオキサンNo.10
(Si原子数=10、分子量=1572.420)
301〜R310の全てが下記式(29)で示される基である。
【0165】
【化39】

【0166】
シルセスキオキサンNo.11
(Si原子数=12、分子量=1983.672)
401〜R412の全てが下記式(30)で示される基である。
【0167】
【化40】

【0168】
シルセスキオキサンNo.12
(Si原子数=12、分子量=1886.904)
401〜R412の全てが下記式(31)で示される基である。
【0169】
【化41】

【0170】
シルセスキオキサンNo.13
(Si原子数=14、分子量=939.736)
501〜R514の全てがメチル基である。
【0171】
シルセスキオキサンNo.14
(Si原子数=14、分子量=1808.660)
501〜R514の全てがフェニル基である。
【0172】
シルセスキオキサンNo.15
(Si原子数=16、分子量=1073.984)
601〜R616の全てがメチル基である。
【0173】
シルセスキオキサンNo.16
(Si原子数=16、分子量=2067.040)
601〜R616の全てがフェニル基である。
【0174】
【表6】

【0175】
〈比較例1〉
下記表7に示す原料を混合した後、室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流(100℃)を行うことによって、加水分解性シラン化合物の縮合物含有溶液C1を得た。その後、縮合物C1を160℃1時間で熱硬化することにより表面層を形成した以外は実施例1と同様にして帯電ローラC1を得て、物性を測定した。
【0176】
【表7】

【0177】
〈比較例2〉
シリカフィラー(商品名:アドマファイン アドマテックス社製 平均粒子径=1.0μm 比表面積=3.6m2/g)を比較例1で用いた縮合物含有溶液C1に対して0.5質量部添加したこと以外は、実施例1と同様にして、帯電ローラC2を得て、物性を測定した。
【0178】
(帯電ローラの物性の測定)
前記実施例及び比較例の帯電ローラの物性を、以下に示す方法で測定した。
【0179】
(1)表面層の弾性率;
帯電ローラの表面層の弾性率は、表面皮膜物性試験機(商品名:「フィッシャースコープH100V」、フィッシャーインストルメンツ社製)を用いて測定した。圧子を測定対象の表面から1μm/7secの速度で進入させたときの値を弾性率とした。なお、弾性率測定用のサンプルには、アルミシート上に前記表面層用塗布液を、硬化後の膜厚が10μm以上になるように塗布し、前記実施例又は比較例における帯電ローラと同条件でUV硬化又は熱硬化させたものを使用した。結果を表8に示す。
【0180】
(2)表面層の層厚;
帯電ローラの表面層の層厚は、帯電ローラの表面層付近を基層から採取したものをサンプル片として、表面層の断面側から白金蒸着を施したのち、走査型電子顕微鏡(商品名:「S−4800」、(株)日立ハイテクノロジーズ)に組み込んで観察・計測を行った。得られた結果は表8に示した。
【0181】
(3)表面層の十点平均粗さ;
帯電ローラの表面層の十点平均粗さ(Rzjis)はJIS B 0601:2001に準拠して測定した。得られた結果は表8に示した。
【0182】
【表8】

【0183】
(4)ポリシロキサン中の官能基の含有量;
10〜1000倍の光学顕微鏡下、光学顕微鏡に設置した3次元粗微動マイクロマニピュレーター((株)ナリシゲ製)を用い、帯電ローラの表面層から1mg程度の試料を採取した。採取した試料を、熱重量測定−質量分析(TG−MS(Thermogravimetry - Mass Spectrometry)法;(TG装置にMS装置を直結))により、加熱時に発生する気体の質量数ごとの濃度変化を、重量変化と同時に、温度の関数として追跡した。測定条件を表9に示す。
【0184】
【表9】

【0185】
上記の条件で測定して得られた示差熱−熱重量同時測定(TG−DTA)の結果によると、400〜500℃付近及び500〜650℃付近において、2段階の顕著な重量減少が認められた。ここで、400〜500℃で発生する気体について、下記表10に示すピークが確認された。
【0186】
【表10】

【0187】
前記ピークから、前記400〜500℃の各温度で分解されポリシロキサンから発生した前記の各基に由来する気体成分の濃度を求めた。また、これらの各基に由来する気体成分の濃度と測定された重量減少率から、各温度で発生した前記の各基に由来する気体成分による重量減少率を求めた。これを前記400℃〜500℃にわたって積算し、ポリシロキサン中のオキシアルキレン基、アリール基及びアルキル基の含有量を求めた。
【0188】
また、500℃〜650℃で発生する気体について、質量数(m/z)51、69、119、131のフッ化アルキル基(トリデカフルオロ−1,1,2,2,テトラヒドロオクチルトリエトキシシランのフッ化アルキル基由来、または、シルセスキオキサンの置換基由来)由来のピークが確認された。
【0189】
これらのピークから、前記500℃〜650℃の各温度で分解されたポリシロキサンから発生したフッ化アルキル基に由来する気体成分の濃度を求めた。
【0190】
また、フッ化アルキル基に由来する気体成分の濃度と測定された重量減少率から、各温度で発生したフッ化アルキル基に由来する気体成分による重量減少率を求めた。これを前記500℃〜600℃の温度範囲にわたって積算し、ポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量を求めた。なお、加熱後の残渣は、第1のユニット、第2のユニット、第3のユニットあるいはシルセスキオキサン由来のシロキサン部分とした。
【0191】
(5)表面層中のポリシロキサンが有する各種置換基の比率、およびシルセスキオキサンに由来するカゴ状構造の含有量;
10〜1000倍の光学顕微鏡下、光学顕微鏡に設置した3次元電動マイクロマニピュレーター(Three-axis motorized micromanipulator)(商品名:EMM−3NV;(株)ナリシゲ(NARISHIGE)製)を用い、帯電ローラの表面層から300mg程度の試料を採取した。採取した試料を、固体29Si CP/MAS 核磁気共鳴スペクトル(日本電子社製 以下、固体29Si−NMRという)により測定した。その結果、下記表11に示すピークが確認された。
【0192】
【表11】

【0193】
カゴ状構造とは、化合物物(1)〜(6)に示される構造のうち、置換基を除いた、シロキサン結合により構成されている骨格部分を指す。
【0194】
固体29Si−NMRにおいて、−55ppm付近のピークは、主にSi数が6のカゴ状構造由来することが多い。−65ppm付近のピークは、主に、Si数が8のカゴ状構造に由来することが多い。また、−90〜−100ppm付近のピークは、Si数が10〜16のカゴ状構造に由来することが多い。そこで、シルセスキオキサンのカゴ状構造に由来する、上記−55、−65、−90〜−100ppmの各々におけるピークの面積をシルセスキオキサンのカゴ状構造を構成しているSi原子のmol数とした。
【0195】
そして、Si原子のmol数としたピーク面積を、対応する特定の構造のシルセスキオキサンのカゴ状構造を構成しているSi原子の数で割った値を、シルセスキオキサンのmol数とした。前記シルセスキオキサンのmol数に換算したピーク面積を、前記第1のユニット、第2のユニットおよび第3のユニットに由来するピーク面積の総和で割った値を、表面層に含まれるカゴ状構造のmol%とした。
【0196】
さらに、本発明に係るポリシロキサンの第1のユニットに由来する、−49、−61、−62ppmのピークの面積%の、第1〜第3のユニットの各々に由来するピーク面積の総和で割った値を、第1のユニットのmol%(x)とした。同様に、第2のユニットのmol%を(y)および第3のユニットのmol%(z)を算出した。次いで、(x+y)/(x+y+z)の値を算出した。
【0197】
前記(4)および(5)の測定によって得られた、オキシアルキレン基、アリール基、アルキル基、フッ化アルキル基およびシロキサン部分の質量%、ならびに、(x+y)/(x+y+z)およびシルセスキオキサン由来のカゴ状構造の含有量を表12に示す。
【0198】
【表12】

【0199】
(帯電ローラの評価)
前記実施例に係る帯電ローラ1〜18および比較例に係る帯電ローラC1およびC2を用いて下記の評価を行った。まず、各帯電ローラと電子写真感光体とを、これらを一体に支持するプロセスカートリッジ(商品名:「EP−85(ブラック)」、キヤノン(株)製)に組み込んだ。次いで、当該プロセスカートリッジを、A4紙縦出力用のレーザービームプリンター(商品名:「LBP−5500」、キヤノン(株)製)に装着した。このレーザービームプリンターの現像方式は反転現像方式であり、転写材の出力スピードは47mm/sであり、画像解像度は600dpiである。
【0200】
なお、帯電ローラとともにプロセスカートリッジに組み込んだ電子写真感光体は、支持体上に層厚14μmの有機感光層を形成してなる有機電子写真感光体である。また、この有機感光層は、支持体側から電荷発生層と変性ポリアリレート(結着樹脂)を含有する電荷輸送層とを積層してなる積層型感光層であり、この電荷輸送層は電子写真感光体の表面層となっている。また、前記レーザービームプリンターに使用したトナーは、ワックス、荷電制御剤、色素、スチレン、ブチルアクリレート及びエステルモノマーを含む重合性単量体系を水系媒体中で懸濁重合して得られた粒子を含む、いわゆる、重合トナーである。このトナーは前記粒子にシリカ微粒子及び酸化チタン微粒子を外添してなるトナー粒子を含む重合トナーであって、そのガラス転移温度は63℃、体積平均粒子径は6μmである。画像出力は、30℃/80%RH環境下で行い、A4紙に印字率4%のE文字パターンを形成し、これを47mm/sのプロセススピードで6000枚出力した。
【0201】
(1)表面層の耐磨耗性;
各帯電ローラの表面層の耐摩耗性の指標として、初期の表面層の層厚(nm)に対する、6000枚出力後の表面層の層厚(nm)の比率を保持率として算出した。保持率が小さくなるほど摩耗しているものとした。表面層の層厚は上述の方法により測定して比較した。
【0202】
(2)画像評価;
帯電部材の表面層の摩耗に起因して帯電ムラが生じた場合に、電子写真画像に現れるスジの有無を観察した。観察に使用した画像として、A4紙に、電子写真感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く画像(ハーフトーン画像)を用いた。この画像の1枚目(初期)から6000枚目までの毎1000枚出力時に得られた出力画像を目視することによって行った。
【0203】
評価基準は以下のとおりである。
1:縦スジが全く出ていない
2:縦スジがごく少量発生した
3:縦スジが大量に発生した
上記した表面層の耐摩耗性の評価および画像評価の結果を下記表13に示す。
【0204】
【表13】

【0205】
表13に示した通り、本発明に係る帯電部材は、繰り返しの使用によっても表面層が摩耗しにくく、また、使用によっても帯電性能が変化しにくいことが分かる。
【符号の説明】
【0206】
101 支持体
102 導電性弾性層
103 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、導電性の弾性層と、表面層とをこの順に有する帯電部材であって、該表面層は、ポリシロキサンとシルセスキオキサンとを含み、
該ポリシロキサンは、SiO0.51(OR2)(OR3)で示される第1のユニット、SiO1.04(OR5)で示される第2のユニットおよびSiO1.56で示される第3のユニットを有し、
該シルセスキオキサンは、下記の化合物(1)〜(6)で示される化合物からなる群から選ばれる少なくとも1つの化合物であることを特徴とする帯電部材:
【化1】

【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

[R1、R4およびR6は各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を示し、R2、R3およびR5は各々独立に水素原子または置換もしくは無置換のアルキル基を示す。化合物(1)〜(6)中、R101〜R616は各々独立に置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基および下記式(7)で示される基から選ばれる少なくとも1つである。
【化7】

(式(7)中、X、YおよびZは各々独立に、置換もしくは無置換のアルキル基および置換もしくは無置換のアリール基から選ばれる少なくとも1つであり、mは1〜20の整数である。)]
【請求項2】
前記化合物(1)〜(6)において、R101〜R616は各々独立に炭素数が1〜20の無置換のアルキル基および式(7)で示される基から選ばれる何れかであり、R101〜R616から選ばれるいずれかの置換基が式(7)である場合において、式(7)中のXおよびYは炭素数1〜3のアルキル基であり、Zは炭素数1〜3のアルキル基またはシクロアルケニル変性アルキル基であり、mは1である請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記シルセスキオキサンが化合物(2)で示されるシルセスキオキサンであり、R201〜R208が炭素数が1〜20の分岐アルキル基、及び式(7)で示される基から選ばれる何れかであって、かつ、R201〜R208の全てが同じ基である請求項2に記載の帯電部材。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の帯電部材と該帯電部材と接触配置されている電子写真感光体とを有することを特徴とする電子写真装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の帯電部材と、電子写真感光体1、現像手段5、転写手段6及びクリーニング手段7から選ばれる少なくとも1つの部材とを一体に保持し電子写真装置の本体に着脱自在に構成されていることを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−145660(P2011−145660A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−267194(P2010−267194)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【特許番号】特許第4717959号(P4717959)
【特許公報発行日】平成23年7月6日(2011.7.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】