説明

帯電防止性コーティング組成物及び成形物

【課題】 導電性セグメントと疎水性セグメントの間で明確な相分離構造を達成して、帯電防止性を発揮することができ、他の樹脂との相溶性にも優れた、ブロック共重合体を含有する帯電防止性コーティング組成物を提供する。
【解決手段】 導電性セグメントと非導電性の疎水性セグメントとからなる帯電防止性を有するブロック共重合体を含有する帯電防止性コーティング組成物であって、該ブロック共重合体における導電性セグメントの数平均分子量が、全体の数平均分子量の20%−80%であり、該ブロック共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量は、8000〜500000であり、該ブロック共重合体の分子量分布は、2.0以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性セグメントと疎水性セグメントを有するブロック共重合体を帯電防止性ポリマーとして含有する帯電防止性コーティング組成物に関し、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ等の光学物品の表面の帯電防止、フィルムの帯電防止、或いは電気機器、電子機器の帯電防止に適用することができる帯電防止性コーティング組成物、及び該組成物を成形してなる成形物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等のディスプレイ等の光学物品の表示面は、帯電して埃が付着すると視野性が悪くなるために、光学物品に帯電防止性を付与することが求められている。各種ディスプレイの表面に帯電防止性且つ反射防止性を付与するフィルムとして、透明基材フィルム上に金属酸化物を含有させた帯電防止性コーティング組成物を塗布することにより形成した帯電防止性反射防止フィルムは特開2003−301018号公報(特許文献1)により知られている。金属酸化物を導電性材料として用いる場合には、導電性を出すためにはベースポリマー組成物に対して金属酸化物の密度を高くする必要があるが、その場合に金属酸化物の過剰添加の影響からベースポリマー組成物本来の物性(例えば、透明性、耐久性、硬度等)が影響を受けるという問題がある。
【0003】
一方、ポリマー組成物に低分子量の帯電防止剤、例えば、界面活性剤を添加した帯電防止性コーティング組成物が知られている(特開昭63−6064号公報:特許文献2)。しかしながら、界面活性剤を添加した帯電防止性コーティング組成物を用いて形成した塗膜は、界面活性剤が塗膜表面に浮き出やすく、脱離して、帯電防止性の効果が持続しないという問題がある。
【0004】
また、イオン導電性ポリマー、電子伝導性ポリマー等の導電性ポリマーが帯電防止性を有することが知られている。しかしながら、導電性ポリマーは親水性のものが多いため、他の樹脂、例えば、アクリル樹脂やポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂バインダー、電離放射線硬化性を付与することができる電離放射線硬化性樹脂との相溶性が低いため、これらの樹脂と混合して用いることができないという問題がある。
【0005】
また、ポリマー組成物自体に帯電防止性を付与することが知られている。例えば、特開平7−278400号公報(特許文献3)は、導電性ポリマーのセグメントとしてポリ(エチレンオキシド)と、導電性を有さないポリマーのセグメントとしてポリ(メチルメタクリレート)からなるブロック共重合体[ポリ(メチルメクタクリレート)−b−ポリ(エチレンオキシド)ブロック共重合体]を含有する帯電防止性ポリ(メチルメタクリレート)組成物及び成形物が示されている。しかしながら、特許文献3は導電性セグメントと疎水性セグメントの間で相分離構造となるような、効率的な帯電防止性の付与を行うことのできるブロック共重合体の言及がなされていない。また、特許文献3には、帯電防止性の観点からポリマー組成物における分子量や、分子量分布についての考察がなされていない。
【特許文献1】特開2003−301018号公報
【特許文献2】特開昭63−6064号公報
【特許文献3】特開平7−278400号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、その目的とするところは、導電性セグメントと疎水性セグメントを有するブロック共重合体を含有する帯電防止性コーティング組成物であって、導電性セグメントと疎水性セグメントの間で明確な相分離構造を達成して、帯電防止性を発揮することができ、他の樹脂との相溶性にも優れた、ブロック共重合体を含有する帯電防止性コーティング組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の帯電防止性コーティング組成物は、導電性セグメントと非導電性の疎水性セグメントとからなる帯電防止性を有するブロック共重合体を含有する帯電防止性コーティング組成物であって、該ブロック共重合体における導電性セグメントの数平均分子量が、全体の数平均分子量の20%−80%であり、該ブロック共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量は、8000〜500000であり、該ブロック共重合体の分子量分布は、2.0以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明における分子量分布は、Mw/Mn(但し、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)で表したものである。
【0009】
本発明の帯電防止性コーティング組成物を成形することにより得た成形物は、帯電防止性がある。帯電防止性コーティング組成物を成形するには、プラスチック成形の技法、或いは塗布の技法を用いて成形することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の帯電防止性コーティング組成物に含まれるブロック共重合体における導電性セグメントの数平均分子量が、全体の数平均分子量の20%−80%であることにより、ミクロ相分離構造が形成されて導電性セグメントが連続相をなした構造をとり、導電性のパスができるため、導電性が発揮される。
【0011】
また、前記ブロック共重合体における残部の非導電性の疎水性セグメントは、疎水性であるため、他の樹脂、例えば、熱可塑性樹脂バインダー、反応性官能基を有するモノマー、オリゴマーとの相溶性が高いので、前記ブロック共重合体をこれらの樹脂と混合しても均一な樹脂組成物となることから、成形物に高強度を付与することができ、また、硬化にあたって必要に応じて反応性を付与することができる。そのため、帯電防止性ハードコート層を形成することもできる。
【0012】
本発明の帯電防止性コーティング組成物に含まれるブロック共重合体の分子量分布は2.0以下、好ましくは1.5以下と狭く、ブロック共重合体の分子量分布が極めて均一となることから導電性のパスが形成される。一方、ブロック共重合体の分子量分布が2.0を超える場合には導電性セグメントの連続相を形成しにくくなり、導電性のパスの発現が悪くなるので好ましくない。したがって、本発明の帯電防止性コーティング組成物に含まれるブロック共重合体の導電性セグメントの連続相の範囲は、分子量分布「Mw/Mn(但し、Mw:重量平均分子量、Mn:数平均分子量)」を用いて表した。
【0013】
本発明の帯電防止性コーティング組成物に含まれるブロック共重合体のミクロ相分離構造は微小(通常10nm〜100nmレベル)であるため(例えば、ラメラ構造をとる場合の例として、E.Helfand 等の"Macromolecules" 9巻6号、879−888頁(1976年)にポリマーの分子量とミクロ相分離サイズが示されている。)、本発明の帯電防止性コーティング組成物により形成した塗膜等の成形物は透明、好ましくはヘイズが1.80以下の透明となる。
【0014】
本発明の帯電防止性コーティング組成物は、導電性セグメントと疎水性セグメントからなるブロック共重合体を含有しているので、該コーティンク組成物を用いて形成した塗膜は、例えば、界面活性剤のように導電性成分が塗膜表面に浮き出るような不都合がない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
図1は、本発明の帯電防止性コーティング組成物を用いた成形物の1例であり、第1の形態の積層体の層構成を示す概略断面図である。図1は、透明基材フィルム1上に、本発明の帯電防止性コーティング組成物を用いて成形した帯電防止層2、さらにその上にハードコート層3を積層してなる、帯電防止性及び耐傷付き性が付与された積層体である。
【0016】
図2は、前記第1の形態の積層体にさらに低屈折率層を形成して反射防止フィルムとした第2の形態の積層体の層構成を示す概略断面図である。図2の積層物は、透明基材フィルム1上に、帯電防止層2が形成されており、さらにその上にハードコート層3が形成され、さらにその上に低屈折率層4が形成されてなる、帯電防止性及び耐傷付き性が付与された反射防止フィルムである。
【0017】
図3は、本発明のハードコート性が付与された帯電防止性コーティング組成物を用いてフィルム上に帯電防止性ハードコート層を形成してなる第3の形態の成形物の層構成を示す概略断面図である。図3の成形物は、透明基材フィルム1上に、帯電防止性ハードコート層20が形成されており、さらにその上に低屈折率層4が形成されてなる帯電防止性及び耐傷付き性が付与された反射防止フィルムである。
【0018】
本発明の帯電防止性コーティング組成物は、ポリマー成分として帯電防止性を有するブロック共重合体が単独で用いられたものでもよいし、帯電防止性を有さない他のポリマーと該ブロック共重合体を混合したものでもよい。本発明の帯電防止性コーティング組成物を成形、例えば、塗布することにより、帯電防止性が付与された成形物、例えば、帯電防止層を形成することができる。
【0019】
ブロック共重合体構成ユニット
本発明の帯電防止性コーティング組成物に含まれる帯電防止性を有するブロック共重合体は、導電性を有するセグメント(導電性セグメント)と、非導電性の疎水性を持つセグメント(疎水性セグメント)のブロック共重合体である。ブロック共重合体における導電性セグメントの数平均分子量が、全体の数平均分子量の20%−80%で、且つ、疎水性セグメントの数平均分子量が、全体の数平均分子量の80%−20%であることにより、ミクロ相分離構造が形成されて導電性セグメントが連続相をなした構造をとり、導電性のパスができるため、導電性が発揮される。導電性セグメントが20%未満であると、導電性部が不連続構造となり、導電性が不十分となる。また、80%を超えると、疎水性部が不連続構造となり、全体の膜強度が低下してしまうため、好ましくない。
【0020】
本発明の帯電防止性コーティング組成物により形成した塗膜に、帯電防止性に加えてハードコート性を付与するために、ブロック共重合体に反応性基を導入するか、ブロック共重合体に反応性モノマーを混合添加することにより、帯電防止性且つハードコート性を付与することができる。
【0021】
このようなブロック共重合体で、かつ、分子量分布の狭いものを合成する方法としては、リビングアニオン重合、リビングラジカル重合等の公知の方法が挙げられる。
【0022】
本発明において帯電防止性とは、本発明の帯電防止性コーティング組成物を用いて成形物を作製したときに、1.0×1013 Ω/□以下の導電性を有することを意味し、埃付着防止のために必要である。1.0×1013 Ω/□〜1.0×1012 Ω/□は帯電するが静電荷が蓄積しない範囲のため、フィルムなどに埃付着防止性を付与する範囲として有用である。帯電防止性の範囲は、好ましくは、静電荷が帯電するが、すぐ減衰する範囲即ち、1.0×1012 Ω/□〜1.0×1010 Ω/□からなる範囲以下、より好ましくは帯電しない範囲1.0×1010 Ω/□以下であり、最も好ましくは1.0×108 Ω/□以下である。
【0023】
導電性セグメント
導電性セグメントとしては、イオン伝導性を有する構造、電子伝導性を有する構造(電子伝導性ポリマー)が挙げられる。
【0024】
イオン伝導性を有する構造としては、例えば、ポリマー中にカチオン性の置換基を持つカチオン性ポリマー、ポリマー中にアニオン性の置換基を持つアニオン性ポリマー、ポリマー中にエーテル骨格を有するノニオン性ポリマー等が挙げられる。
【0025】
カチオン性ポリマー
カチオン性ポリマーは、分子中にカチオン性基と反応性の不飽和結合を有するモノマーを重合させて得ることができる。カチオン性基としては、例えば、第1〜3級アミノ基、アミド基、4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩等の置換基を有するポリマーが挙げられる。このようなカチオン性ポリマーの例としては、ビニルアミン、アリルアミン、アクリルアミド、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等の重合体が挙げられる。本明細書において、(メタ)アクリレートなる表記は、アクリレートまたはメタクリレートを、(メタ)アクリルなる表記は、アクリルまたはメタクリルを、(メタ)アクリロイルなる表記は、アクリロイルまたはメタクリロイルを意味する。
【0026】
中でも、前記重合体のカチオン性基として、帯電防止性能の点では4級アンモニウム塩基が好ましい。4級アンモニウム塩基としては、例えば、脂肪族アンモニウム塩として、トリメチルアンモニウム塩、トリエチルアンモニウム塩、トリブチルアンモニウム塩、トリヘキシルアンモニウム塩、トリオクチルアンモニウム塩、ジメチルオクチルアンモニウム塩、ラウリルジメチルアンモニウム塩等のアルキルアンモニウム塩、メトキシエチルジメチルアンモニウム塩、エトキシエチルジメチルアンモニウム塩等のアルコキシアルキル基を有するアンモニウム塩等の、4級アンモニウム塩の置換基が挙げられる。
【0027】
脂環式アンモニウムカチオン塩基としては、ピロリジニウム塩類、ピペリジニウム塩類、ピラゾリジニウム塩類、イミダゾリジニウム塩類、ピペラジニウム塩類等が挙げられる。
【0028】
芳香族アンモニウムカチオン塩基としては、メチル2−ピリジニウム、メチル4−ピリジニウム塩、エチル4−ピリジニウム等のピリジニウム塩類、ピリミジニウム塩類、ピラジニウム塩類、イミダゾリウム塩類、オキサゾリウム塩類等の、アンモニウム塩の置換基が挙げられる。
【0029】
また、ジアリルアミンの4級化物等、主鎖に環状構造を持つアンモニウム塩等の置換基が挙げられる。
【0030】
4級アンモニウム塩の置換基を有するポリマーは、これらの置換基を持つモノマーを重合して得られるが、アミノ基を有するモノマーを重合し、重合後にアルキル化剤等で4級化反応を行っても得ることができる。
【0031】
反応性の不飽和結合としては、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられる。
【0032】
これらのカチオンに対する対アニオンとしては、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨードニウムイオン、過塩素酸イオン、フッ素系アニオン等が挙げられる。対アニオンにハロゲン化物イオンを有すると、導電性セグメントは親水性となるが、フッ素系のアニオン、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、テトラフルオロホウ酸、へキサフルオロリン酸、トリフルオロエタンスルホンイミド、ペンタフルオロエタンスルホンイミド等のアニオンを用いることによって、導電性ユニットを疎水性とすることができる。モノマーの段階でアニオン交換反応を行ってから重合してもよく、重合後にアニオン交換反応を行ってもよい。
【0033】
アニオン性ポリマー
アニオン性ポリマーは、分子中にアニオン性基と反応性の不飽和結合を有するモノマーを重合させて得ることができる。アニオン性基としては、例えば、スルホン基、カルボキシル基、リン酸基等とその塩が挙げられ、このようなアニオン性ポリマーの例としては、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸塩、リン酸モノ(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリレート等の重合体や、それらモノマーのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩の重合体を挙げることができる。導電性の点では、塩構造をとっていた方が好ましく、対カチオンがリチウムイオン、ナトリウムイオンの場合が特に好ましい。また、対カチオンの分子量を大きくすると、アニオン性ポリマーを疎水性にすることができる。塩にする場合は、酸性基を中和した後に重合してもよく、重合後に中和してもよい。また、対カチオンを交換する場合には、モノマーの段階でカチオン交換反応を行ってから重合してもよく、重合後にカチオン交換反応を行ってもよい。
【0034】
ノニオン性ポリマー
ノニオン性ポリマーとしては、ポリエーテル系化合物、例えば、エチレンオキシド単位などのアルキレンオキシド骨格を有するポリマーが挙げられ、アルキレンオキシド骨格は、主鎖に有していても、側鎖に有していてもよい。このようなポリマーとしては、例えば、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート等の重合体を挙げることができる。
【0035】
アルキレンオキシド骨格は、それ自体でも水等を介して導電性を示すが、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等、キャリアとなるイオンを添加することで、イオン伝導性を高めることができる。添加する金属塩としては、導電性の点ではリチウム塩が特に好ましい。対アニオンにフツ素系の疎水性アニオン、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸、テトラフルオロホウ酸、ヘキサフルオロリン酸、トリフルオロエタンスルホンイミド、ペンタフルオロエタンスルホンイミド等のアニオンを有することで、耐水性を付与することができる。
【0036】
電子伝導性ポリマー
電子伝導性ポリマーとしては、π共役系導電性高分子として知られる公知のポリマー、例えば、ポリチオフエン類、ポリアニリン類、ポリアセチレン類、ポリピロール類、ポリパラフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリチオフェンビニレン、ポリフルオレン等が挙げられる。これらの電子伝導性ポリマーは、ブロック共重合体の主鎖にあっても、側鎖にあってもよい。また、これらの電子伝導性ポリマーを使用する場合には、必要に応じて、公知のドーパントを添加することによるか、または、公知の方法でドープすることにより、導電性を高めることができる。
【0037】
疎水性セグメント
ブロック共重合体の構成要素の一部である非導電性の疎水性セグメントとしては、例えば、疎水性のモノマーを重合した構造が挙げられる。このようなモノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;2−メトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシアルコキシアルキル(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、α−スチレン、ビニルカプロラクトン等の環状構造を有するモノマ一等を使用することができる。
【0038】
疎水性セグメントへの反応性官能基の導入
ブロック共重合体における疎水性セグメントには、反応性官能基を導入することができる。反応性官能基としては、電離放射線硬化性組成物とする目的のためには、電離放射線硬化性官能基が好ましく、例えば、(メタ)アクリロイル基、アリル基、ビニル基等のエチレン性二重結合、エポキシ基、オキセタン骨格、ビニルエーテル基等のエーテル結合が挙げられる。反応性の導入方法については、グリシジルメタクリレートのような、反応性官能基を有するモノマーを直接重合して導入してもよいし、エステル変性、ウレタン変性、エポキシ変性等の変性で、反応後に反応性官能基を導入することも可能である。例えば、カルボキシル基及び/又はヒドロキシル基及び/又はエポキシ基を有する重合体に、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシアルキルイソシアネート、(メタ)アクリル酸クロリド等を公知の方法で反応させることによりエチレン性二重結合を導入することができる。
【0039】
前記エチレン性二重結合を導入する場合には、ブロック共重合体1g当たり0.05−5ミリモル含有されるように導入することが望ましい。0.05ミリモル未満だと十分な耐傷つき性をもたせることができなくなり、5ミリモルを超えると十分な帯電防止性をもたせることができない。
【0040】
ブロック共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量及び分子量分布
ブロック共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量は、8000〜500000、好ましくは10000〜300000であり、その分子量分布は、2、0以下、好ましくは1.5以下である。ブロック共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量が8000未満の場合は、成膜性の観点で好ましくなく、また、タックが生じるため好ましくなく、重量平均分子量が500000を超える場合には、コーティング組成物としたときの粘度が高くなりすぎるため好ましくない。分子量分布が2.0以上の場合は、導電性セグメントが連続相を形成しにくくなるので好ましくない。
【0041】
帯電防止性を有さないポリマー
本発明の帯電防止性コーティング組成物には、帯電防止性を有するブロック共重合体に加えて、帯電防止性を有さないポリマーを含んでいてもよく、該ポリマーは塗膜の成膜性を高めたり、脆質性を改善したりするために用いることができる。帯電防止性を有さないポリマーには、例えば、ポリオレフイン樹脂、エチレンー酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、アクリルースチレン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、セルロース樹脂、ナイロン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリビニルブチラール、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、フェノール樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン等が挙げられる。
【0042】
帯電防止性を有さないポリマーが、帯電防止性コーティング組成物の全固形分において全く含まれていないか、或いは80質量%以下含有されていることが望ましい。帯電防止性を有さないポリマーの量が、80質量%以上では、帯電防止性能が十分に発現されない。
【0043】
電離放射線硬化性組成物
帯電防止性コーティング組成物を電離放射線硬化型とするには、反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物をブロック共重合体に対して配合することにより、電離放射線硬化性を帯電防止性コーティング組成物に付与することができる。このような化合物は、分子中に反応性官能基を2個以上、好ましくは3つ以上有するモノマー、オリゴマーより構成されることが好ましい。
【0044】
前記反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物が、ガラス転移温度が40℃以下であることが好ましい。ガラス転移温度が40℃以下であると、塗膜形成中に、ブロック共重合体の形成する導電性セグメントと疎水性セグメントのミクロ相分離状態を損なうことなく、疎水性セグメント中に相溶することができるため、好ましい。ガラス転移温度が40℃を超えると、ブロック共重合体がミクロ相分離構造の分離構造が大きくなって透明性が低下したり、連続構造を形成できないために導電性が低下する等の問題が生じるため、好ましくない。
【0045】
電離放射線硬化型の帯電防止性コーティング組成物における、ブロック共重合体の配合割合は、30質量%−80質量%が望ましい。ブロック共重合体が30質量%未満だと導電性セグメントが連続相を形成することが困難となり、帯電防止性が悪くなり、80質量%を超えると、電離放射線硬化性が失われる。
【0046】
電離放射線硬化性を有する反応性基としては、硬化に光ラジカル重合を利用する場合には、(メタ)アクリロイル基、ビニル基等のエチレン性不飽和結合を有する官能基、光カチオン重合を利用する場合には、エポキシ基、ビニルエーテル基、オキセタン基等のエーテル基を挙げることができる。
【0047】
反応性不飽和結合を2個以上有するモノマーとしては、例えば、2官能のモノマーとしては、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート等;3官能のモノマーとしては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート等;4官能のモノマーとしては、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルキレンオキシド変性ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等;5官能のモノマーとしては、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等;6官能のモノマーとしては、ジペンタエリスリトールへキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0048】
環状エーテル基を2個以上有するモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル等のエポキシ系モノマーや、オキセタン系モノマーを挙げることができる。
【0049】
エチレン性不飽和結合を2個以上有するオリゴマーとしては、例えば、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート等が挙げられる。
【0050】
ウレタンアクリレートとしては、例えば、分子中にウレタン結合と、反応性二重結合を有する(メタ)アクリロイル基を有する化合物が使用できる。このような化合物は、例えば、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、2個以上の水酸基を有する化合物と、1個以上の水酸基及び1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応させて得られるウレタンアクリレート、または、2個以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と1個以上の水酸基及び1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を反応して得ることができる。
【0051】
エポキシアクリレートとしては、分子中にエポキシ樹脂骨格、例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェノールノボラック等の構造と、反応性二重結合を有する(メタ)アクリロイル基を有する化合物が使用できる。このような化合物は、例えば、エポキシ基を持つグリシジル化合物と、1個以上の(メタ)アクリロイル基と1個以上のカルボキシル基を持つ化合物とを反応して得ることができる。
【0052】
ポリエステルアクリレートとしては、例えば、分子中にエステル結合と、反応性二重結合を有する(メタ)アクリロイル基を有する化合物を使用することができる。このような化合物は、例えば、2個以上の水酸基を有する化合物または環状エステル化合物と多塩基酸とから合成したポリエステル化合物に、さらに(メタ)アクリロイル基を持つ化合物を反応させて得ることができる。
【0053】
ポリエーテルアクリレートとしては、例えば、分子中にエーテル結合と、反応性二重結合を有する(メタ)アクリロイル基を有する化合物を使用することができる。このような化合物は、ポリオール化合物と、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等の化合物を反応して得られるポリエーテル化合物に対し、エステル交換反応により(メタ)アクリロイル基を導入して得ることができる。
【0054】
エーテル結合を2個以上を有するオリゴマーとしては、例えば、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ系オリゴマー、脂肪族系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系オリゴマー、オキセタン骨格を有するオリゴマー等が挙げられる。
【0055】
以上のモノマー、オリゴマーは2種以上を混合して使用することもできる。その総量は、電離放射線硬化性組成物における総固形分中の95質量%以下、好ましくは90質量%以下で用いることができる。
【0056】
光重合開始剤
本発明のコーティング組成物が電離放射線硬化性組成物である場合には、必要に応じて、光重合開始剤を添加してもよい。光重合開始剤には、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤が挙げられる。
【0057】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベイゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α−メチルベンゾイン、α−フェニルベンゾイン、アントラキノン、メチルアントラキノン、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトン、ベンジルジアセチルアセトフェノン、ベンゾフェノン、p−クロロベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、ジフェニルジスルフィド、テトラメチルチウラムスルフィド、α−クロロメチルナフタレン、アントラセン、ヘキサクロロブタジエン、ペンタクロロブタジエン、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパノン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1,2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン等が挙げられる。
【0058】
光カチオン重合開始剤としては、例えば、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、混合配位子金属塩等が挙げられる。
【0059】
添加剤
本発明のコーティング組成物には、更に添加剤として増感剤、重合禁止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、分散剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤等を必要に応じて添加してもよい。
【0060】
溶剤
本発明の帯電防止性コーティング組成物は、必要に応じて溶媒に溶解させて用いることができる。溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエトルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、N−メチル−ピロリドン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルアセトアミド等、あるいは、酸やアルカリを含む水、アルコール等が挙げられる。
【0061】
溶媒は、ブロック共重合体を構成する各セグメントの良溶媒であるものが好ましい。それぞれのセグメントのどちらかの貧溶媒であると、相分離構造のサイズが大きくなり、透明性が失われる等の問題が生じることがある。
【0062】
透明基材の種類
本発明の帯電防止性コーティング組成物を用いて形成する成形物に用いられる基材としては、透明なガラス又はプラスチック等からなるシート、板状成形体等を挙げることができる。プラスチックとしては、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、アセテートブチレートセルロース、ポリエーテルスルホン、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテル、トリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、アクリロニトリル等が挙げられる。
【0063】
また、成形した帯電防止膜の密着性をより向上させるためのアンカー層、ハードコート層、ガスバリア層、及び/又は光学性能を有する層等を積層した後に、本発明のコーティング組成物を用いて成形した層を積層することができる。
【0064】
また、本発明の帯電防止性コーティング組成物を用いて成形した層の上に、更に、ハードコート層及び/又は低屈折率層などの層を積層することもできる。組成物が電離放射線硬化性組成物の場合には、硬化前に積層する方法、硬化後に積層する方法、半硬化させてから積層後、更に硬化させる方法等がある。
【0065】
適切な膜厚
本発明の帯電防止性コーティング組成物を用いて形成した帯電防止層の厚みは、例えば、0.05〜10μmとすることができる。また、得られた帯電防止層をさらにハードコート層として使用する場合には、1μm以上の膜厚とすることが好ましい。
【0066】
成形物
本発明の帯電防止性コーティング組成物を成形することにより、導電性セグメントが連続相をなした、帯電防止性に優れた成形物を得ることができる。成形物の成形には、一般的には、コーティング法により塗膜を形成し、硬化することが行われるが、プラスチック成形の技法、例えば、押出成形法、中空形成法、射出成形法、ロール成形法、圧縮成形法、トランスファー成形法等の一般的な成形法によっても成形物を得ることができる。
【0067】
前記コーティング方法には、ダイレクトグラビアコート法、グラビアリバースコート法、ロールコート法、スライドダイコート法、スリットダイコート法、コンマコート法、スピンコート法、バーコート法等、公知の塗工手段を用いることができる。
【0068】
コーティング時の乾燥条件
本発明の帯電防止性コーティング組成物のコーティング後は、使用する溶媒の沸点及び透明基材の耐熱性を考慮した温度、条件で乾燥させることが好ましい。乾燥については、時間をかけて行った法がブロック共重合体のミクロ相分離構造ができやすくなる。また、成形した塗膜は、ミクロ相分離構造の形成を進める目的で、それぞれのセグメントのガラス転移点と同じかそれよりも高い温度でアニールすることが好ましい。
【0069】
電離放射線
本発明の帯電防止性コーティング組成物が電離放射線硬化型の場合には、成形後に電離放射線によって硬化させることができる。そのため、帯電防止性ハードコート層を形成することができる。電離放射線としては、紫外線、高エネルギー電離放射線を使用することができる。紫外線としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、炭素アーク灯などから発生するものを使用することができる。また、高エネルギー電離放射線としては、例えば、コッククロフト型加速器、ハンデグラーフ型加速器、リニアアクセレータ、ベータトロン、サイクロトロン等の加速器によって加速された電子線、γ線、X線、α線等の放射線等を使用することができる。
【0070】
ハードコート層
図1、図2の積層体に用いられるハードコート層には、JIS5600−5−4:1999で示される鉛筆硬度試験でH以上の硬度を示すものが使用されることが望ましい。
【0071】
ハードコート層を形成するのに好適な電離放射線硬化型樹脂組成物としては、好ましくはアクリレート系の官能基を有するもの、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエーテル樹脂、多価アルコール、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレートモノステアレート等のジ(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート誘導体やジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートなどの多官能化合物などのモノマー類やエポキシアクリレートやウレタンアクリレートなどのオリゴマーなどを使用することができる。
【0072】
ハードコート層は硬化後の膜厚が0.1〜100μm、好ましくは0.8〜20μmの範囲にあることが望ましい。膜厚が0.1μm以下の場合は充分なハードコート性能が得られず、100μm以上の場合は外部からの衝撃に対して割れやすくなるため好ましくない。
【0073】
低屈折率層
図2、図3の積層体に用いられる低屈折率層には、屈折率が1.6未満、好ましくは1.5未満、さらに好ましくは1.45以下の層であり、積層体における他の層に比べて相対的に低屈折率の層である。反射防止フィルムの目的のために用いられる低屈折率層は、一般的に用いられている低屈折層を形成する公知の方法により形成することができる。例えば、シリカやフッ化マグネシウム等の低屈折率無機微粒子とバインダー樹脂を含む塗工液、或いはフッ素系樹脂等を含有する塗工液を用いて塗膜を形成するか、又は低低屈折率無機微粒子を蒸着にて薄膜を形成することにより低屈折率層を得ることができる。
【実施例】
【0074】
[実施例1](導電性セグメントが41%の例)
ブロック共重合体Aの合成(合成例1)
溶媒としてテトラヒドロフラン(THF:略語)に、開始剤としてsec-ブチルリチウムと1,1−ジフェニルエチレンの付加物を添加したものを−78℃に冷却した。真空下で、メチルメタクリレート0.82gを添加し、アニオン重合により15分間反応させた。続いて、ジメチルアミノエチルメタクリレート0.72gを添加して2時間反応させた。得られた重合溶液をヘキサン、メタノールで精製し、ブロック共重合体A’を得た。
【0075】
次に、前記工程で得られたブロック共重合体A’を、5%の濃度でTHFに溶解し、ヨウ化メチル3.0gをTHFに溶解した溶液を、室温で撹拌しながら滴下し、30分撹拌した。生じた沈殿物を集め、濾過し、ブロック共重合体Aを得た。
【0076】
ブロック共重合体Aの疎水性セグメントはメチルメタクリレート重合部であり、導電性セグメントはジメチルアミノエチルメタクリレート重合物の4級アンモニウム塩のカチオン性ポリマーである。GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定によるブロック共重合体Aのポリスチレン換算重量平均分子量は21000,分子量分布はMw/Mn=1.11であった。NMR測定により、導電性セグメントの数平均分子量が全体の数平均分子量に占める割合は、41%であった。
【0077】
コーティング組成物(1)の調製
ブロック共重合体Aをジメチルスルホキシドに固形分が15質量%になるように溶解して、本実施例1のコーティング組成物(1)を調製した。
【0078】
塗膜の形成
100μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:ダイヤホイルT−600 U−36E、三菱ポリエステルフィルム製)上に、コーティング組成物(1)を乾燥塗布厚が3μmとなるようにバーコーターで塗布し、室温で24時間静置して、溶媒を乾燥させて塗膜を形成した。
【0079】
[実施例2](導電性セグメントが76%の例)
ブロック共重合体Bの合成(合成例2)
メチルメタクリレート0.35g、ジメチルアミノエチルメタクリレート1.50gを使用した他は、前記実施例1のブロック共重合体Aの合成と同様にして、ブロック共重合体Bを得た。ブロック共重合体BのGPC測定によるポリスチレン換算重量平均分子量は23000、分子量分布は1.12であった。NMR測定により、導電性セグメントの数平均分子量が全体の数平均分子量に占める割合は、76%であった。
【0080】
コーティング組成物(2)の調製
ブロック共重合体Bを、ジメチルスルホキシドに固形分が15質量%になるように溶解して、本実施例2のコーティング組成物(2)を調製した。
【0081】
塗膜の形成
コーティング組成物(2)を用いて前記実施例1の塗膜の形成と同様にして本実施例2の塗膜を形成した。
【0082】
[実施例3](導電性セグメントが21%の例)
ブロック共重合体Cの合成(合成例3)
メチルメタクリレート1.48g、ジメチルアミノエチルメタクリレート0.37gを使用した他は、前記実施例1のブロック共重合体Aの合成と同様にして、ブロック共重合体Cを得た。ブロック共重合体CのGPC測定によるポリスチレン換算重量平均分子量は21000、分子量分布は1.10であった。NMR測定により、導電性セグメントの数平均分子量が全体の数平均分子量に占める割合は、21%であった。
【0083】
コーティング組成物(3)の調製
ブロック共重合体Cを、ジメチルスルホキシドに固形分が15質量%になるように溶解して、本実施例3のコーティング組成物(3)を調製した。
【0084】
塗膜の形成
コーティング組成物(3)を用いて前記実施例1の塗膜の形成と同様にして本実施例3の塗膜を形成した。
【0085】
[実施例4](導電性セグメントが52%の例)
コーティング組成物(4)の調製
疎水性セグメントがメチルメタクリレート、導電性セグメントがメタクリル酸ナトリウムであり、GPC測定によるポリスチレン換算重量平均分子量が15000、導電性セグメントの数平均分子量の割合が52%であるアニオン性ポリマー(ポリマーソース社製、商品名P1200−MMAMANa)1gを、ジメチルスルホキシド9gに溶解して本実施例4のコーティング組成物(4)を調製した。
【0086】
塗膜の形成
コーティング組成物(4)を用いて前記実施例1の塗膜の形成と同様にして本実施例4の塗膜を形成した。
【0087】
[実施例5](導電性セグメントが39.3%の例)
コーティング組成物(5)の調製
疎水性セグメントがスチレン、導電性セグメントがエチレンオキシドであり、GPC測定によるポリスチレン換算重量平均分子量が31000、導電性セグメントの数平均分子量の割合が39.3%であるノニオン性のポリマー(ポリマーソース社製、商品名P1920−SEQ)1gを、ジメチルスルホキシド9gに溶解して、リチウム塩(商品名:フロラードHQ−115、住友スリーエム製)0.05gを添加して、コーティング組成物(5)を調製した。
【0088】
塗膜の形成
コーティング組成物(5)を用いて前記実施例1の塗膜の形成と同様にして本実施例5の塗膜を形成した。
【0089】
[実施例6](ブロック共重合体の添加量が30質量%の例)
コーティング組成物(6)の調製
前記実施例1のブロック共重合体Aを用い、下記の配合成分の通り混合して本実施例6の電離放射線硬化性のコーティング組成物(6)を得た。
【0090】
ブロック共重合体A 30質量%
ペンタエリスリトールトリアクリレート 68質量%
光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルズ社製) 2質量%
ジメチルスルホキシド コーティング組成物の固形分が40質量%となる量
【0091】
塗膜の形成
コーティング組成物(6)を用いて前記実施例1の塗膜の形成と同様にしてコーティング組成物(6)を塗布し、室温で24時間静置して、溶媒を乾燥させて塗膜を形成した。次いで、120℃のオーブンで2分間乾燥した後、高圧水銀灯で積算露光量が600mJ/cm2 となるように紫外線を照射し、硬化させて本実施例6の塗膜を形成した。
【0092】
[実施例7](ブロック共重合体の添加量が50質量%の例)
コーティング組成物(7)の調製
前記実施例1のブロック共重合体Aを用い、下記の配合の通り混合して、本実施例7の電離放射線硬化性のコーティング組成物(7)を得た。
【0093】
ブロック共重合体A 50質量%
ペンタエリスリトールトリアクリレート 48質量%
光重合開始剤(イルガキュア184:商品名、チバスペシャルティケミカルズ社製) 2質量%
ジメチルスルホキシド コーティング組成物の固形分が40質量%となる量
【0094】
塗膜の形成
コーティング組成物(7)を用いて前記実施例6の塗膜の形成と同様にして、塗布、及び塗膜の硬化を行って本実施例7の塗膜を形成した。
【0095】
[実施例8](ブロック共重合体の添加量が80質量%の例)
コーティング組成物(8)の調製
前記実施例1のブロック共重合体Aを用い、下記の配合の通り混合して、本実施例8の電離放射線硬化性のコーティング組成物(8)を得た。
【0096】
ブロック共重合体A 80質量%
ペンタエリスリトールトリアクリレート 19質量%
光重合開始剤(イルガキュア184:商品名、チバスペシャルティケミカルズ社製) 1質量%
ジメチルスルホキシド コーティング組成物の固形分が40質量%となる量
【0097】
塗膜の形成
コーティング組成物(8)を用いて前記実施例6の塗膜の形成と同様にして、塗布、及び塗膜の硬化を行って本実施例8の塗膜を形成した。
【0098】
[比較例1](導電性セグメントが8%の例)
ブロック共重合体Dの合成(合成例4)
メチルメタクリレート1.66g、ジメチルアミノエチルメタリルレート0.19gを使用した他は、前記実施例1の合成例1と同様にして、比較例1のブロック共重合体Dを得た。該ブロック共重合体DのGPC測定によるポリスチレン換算重量平均分子量は22000、分子量分布は1.10であった。NMR測定により、導電性セグメントの数平均分子量が全体の数平均分子量に占める割合は、8%であった。
【0099】
コーティング組成物(9)の調製
ブロック共重合体Dを、ジメチルスルホキシドに固形分が15質量%になるように溶解して、本比較例1のコーティング組成物(9)を調製した。
【0100】
塗膜の形成
コーティング組成物(9)を用いて前記実施例1の塗膜の形成と同様にして本比較例1の塗膜を形成した。
【0101】
[比較例2](導電性セグメントが92%の例)
ブロック共重合体Eの合成(合成例5)
メチルメタクリレート0.17g、ジメチルアミノエチルメタリルレート1.69gを使用した他は、前期実施例1の合成例1と同様にして、比較例2のブロック共重合体Eを得た。該ブロック共重合体EのGPC測定によるポリスチレン換算重量平均分子量は24000、分子量分布は1.14であった.NMR測定により、導電性セグメントの数平均分子量が全体のが数平均分子量に占める割合は、92%であった。
【0102】
コーティング組成物(10)の調製
ブロック共重合体Eを、ジメチルスルホキシドに固形分が15質量%になるように溶解して、本比較例2のコーティング組成物(10)を調製した。
【0103】
塗膜の形成
コーティング組成物(10)を用いて前記実施例1のと膜の形成と同様にして本比較例2の塗膜を形成した。
【0104】
[比較例3](分子量の異なるブロック共重合体を混合した結果、ミクロ相分離構造が不連続となった例)
ブロック共重合体F−1及びF−2の合成(合成例6)
メチルメタクリレート4.48g、ジメチルアミノエチルメタリルレート3.00gを使用した他は、前記実施例1の合成例1と同様にして、ブロック共重合体F−1(導電性セグメント40%、ポリスチレン換算重量平均分子量:81000、分子量分布:1.10)を得た。
【0105】
一方、メチルメタクリレート0.54g、ジメチルアミノエチルメタリルレート0.37gを使用した他は、前記実施例1の合成例1と同様にして、ブロック共重合体F−2(導電性セグメント40%、ポリスチレン換算重量平均分子量:10500、分子量分布:1.08)を得た。
【0106】
コーティング組成物(11)の調製
前記工程で得られた、ブロック共重合体F−1を0.33g、ブロック共重合体F−2を0.67g混合し、ジメチルスルホキシドに固形分が15質量%になるように溶解して、本比較例3のコーティング組成物(11)を調製した。混合物のGPC測定によるポリスチレン換算重量平均分子量は40000、分子量分布は2.03であった。NMR測定により、導電性セグメントの数平均分子量が全体の数平均分子量に占める割合は、40%であった。
【0107】
塗膜の形成
コーティング組成物(11)を用いて前記実施例1の塗膜の形成と同様にして本比較例3の塗膜を形成した。
【0108】
[比較例4](ブロック共重合体が20質量%の例)
コーティング組成物(12)の調製
前記実施例1のブロック共重合体Aを用い、下記の配合成分の通り混合して本比較例4の電離放射線硬化性のコーティング組成物(12)を得た。
【0109】
ブロック共重合体A 20質量%
ペンタエリスリトールトリアクリレート 77質量%
光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルズ社製)3質量%
ジメチルスルホキシド コーティング組成物の固形分が40質量%となる量
【0110】
塗膜の形成
コーティング組成(12)を用いて前記実施例6の塗膜の形成と同様にしてコーティング組成物(12)を塗布し、室温で24時間静置して、溶媒を乾燥させて塗膜を形成した。次いで、120℃のオーブンで2分間乾燥した後、高圧水銀灯で積算露光量が600mJ/cm2 となるように紫外線を照射し、硬化させて本比較例4の塗膜を形成した。
【0111】
[比較例5]ブロック共重合体が90質量%の例
コーティング組成物(13)の調製
前記実施例1のブロック共重合体Aを用い、下記の配合成分の通り混合して本比較例5の電離放射線硬化性のコーティング組成物(13)を得た。
【0112】
ブロック共重合体A 90質量%
ペンタエリスリトールトリアクリレート 9質量%
光重合開始剤(商品名:イルガキュア184、チバスペシャルティケミカルズ社製)1質量%
ジメチルスルホキシド コーティング組成物の固形分が40質量%となる量
【0113】
塗膜の形成
コーティング組成(13)を用いて前記実施例6の塗膜の形成と同様にしてコーティング組成物(13)を塗布し、室温で24時間静置して、溶媒を乾燥させて塗膜を形成した。次いで、120℃のオーブンで2分間乾燥した後、高圧水銀灯で積算露光量が600mJ/cm2 となるように紫外線を照射し、硬化させて本比較例5の塗膜を形成した。
【0114】
[評価]
実施例1〜8、対照(基材のみ)及び比較例1〜5の各塗膜の評価を、表面抵抗(Ω/□)、透明性、全光線透過率、耐傷つき性、ミクロ相分離の有無、連続構造又は不連続構造について測定した。その結果を下記の表1に示す。評価方法のうち、耐傷つき性、ミク相分離の有無、連続構造又は不連続構造に関しては以下の方法にて行った。
【0115】
表面抵抗
塗膜の表面抵抗は、表面抵抗計(商品名:Hiresta Mode1 HT−210、三菱油化製)を使用し、印加電圧500Vでの抵抗値を沸定した。
【0116】
透明性
透明性はヘイズおよび全光線透過率により評価した。濁度計(商品名:NDH2000、日本電色工業製)を使用し、ヘイズは、JIS K7316に従い、全光線透過率はJIS K7361−1に従い測定した。
【0117】
耐傷つき性試験
電離放射線硬化性樹脂組成物で作製した塗膜については、耐傷つき性を次の方法にて評価した。スチールウール♯0000上に、200g/cm2 の荷重をかけ、塗膜を10往復し、傷の状況を目視で観察した。傷のないものを○、傷のあるものを×とした。
【0118】
電子顕微鏡観察
塗膜の相構造は、透過型電子顕微鏡により、膜断面を観察することで行った。実施例4、5の塗膜については、酸化オスミウムによる染色を行った。ミクロ相分離の有無、導電性部位・疎水性部位の連続構造の有無について評価した。図4に実施例1の帯電防止性コーティング組成物を用いて形成した塗膜の断面の透過型電子顕微鏡写真を示す。図4によれば、円筒状(水玉模様)の層分離構造が観察される。図5に実施例5の帯電防止性コーティング組成物を用いて形成した塗膜の断面の透過型電子顕微鏡写真を示す。図5によれば、ラメラ状(縞模様)の層分離構造が観察される。
【0119】
【表1】

【0120】
表1の結果によれば、各実施例の塗膜は、表面抵抗がどれも1×1013Ω/□以下で帯電防止性があり、ヘイズも低く、透明性も高かった。電離放射線硬化性塗膜は耐傷つき性良好で、硬度が十分であった。塗膜の断面観察から、200nm以下のミクロ相分離構造が認められ、導電性部位が連続構造をとっていることが確認できた。図3に、本発明の帯電防止性コーティング組成物を用いて形成した塗膜の断面の透過型電子顕微鏡写真を一例として示す。
【0121】
一方、比較例1の塗膜(コーティング組成物(9)を用いた塗膜)は、表面抵抗が高く、帯電防止性能が不十分であった。比較例1の塗膜の断面観察から、ミクロ相分離構造が見られたが、導電性部位は連続構造をとっていないことがわかった。
【0122】
また、比較例2の塗膜(コーティング組成物(10)を用いた塗膜)は、表面抵抗が低く、帯電防止性能は十分であったが、塗膜にべたつきがあった。比較例2の塗膜の断面観察から、ミクロ相分離構造が見られたが、疎水性部位が連続構造をとっていなかったことがわかった。
【0123】
また、比較例3の塗膜(コーティング組成物(11)を用いた塗膜)は、導電性セグメントの含有率が、前記実施例1の塗膜(コーティング組成物(1)を用いた塗膜)とほぼ同等であるにも関わらず、実施例1の塗膜に比べると表面抵抗が高かった。また、ヘイズが高く、透明性が低い傾向が確認された。
【0124】
また、比較例4の塗膜(コーティング組成物(12)を用いた塗膜)は、電離放射線硬化性が付与された帯電防止性コーティング組成物におけるブロック共重合体の量が30質量%未満であるため、ミクロ相分離構造が形成されておらず、ポリマーと反応性モノマーが大きく分離することによって1μm以上の大きな相分離がみられた。そのため、ヘイズが高く、透明性は低いものであった。
【0125】
また、比較例5の塗膜(コーティング組成物(13)を用いた塗膜)は、反応性官能基を有するモノマーの含有量が少ないため、耐傷つき性が不良であった。
【0126】
[実施例9]
ブロック共重合体Gの合成(合成例7)
2 口ナスフラスコにヒドロキシエチルメタアクリレート2.5g、ジメチルホルムアミド(DMF:略語)2.5g、アゾビスイソブチロニトリル32mgを入れ、真空下、凍結融解を3回行なった後、アルゴン雰囲気とした。そこへ、アルゴンで脱気したエチル2−メチル−2−メチルテラニル−プロピオネート50mg、ジメチルジテルリド55mgを加え、密閉した後、60℃で17時間攪拌した。そこへ、脱気したジメチルアミノエチルメタアクリレート3gとDMF 3gを加え、100℃で24時間攪拌した。溶媒を減圧除去した後、メタノールに溶解させ、ジエチルエーテル/へキサンに再沈殿してブロック共重合体G’を得た。GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定によるブロック共重合体G’のポリスチレン換算重量平均分子量は28000、分子量分布はMw/Mn=1.3であった。
【0127】
次に、ブロック共重合体G’1gを5%の濃度でテトラヒドロフラン(THF:略語)に溶解し、2,6−ジ-tert-ブチル−p−クレゾール0.03gとジブチルチンジラウレート2.7gを加え、窒素雰囲気下でアクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズAOI:商品名、昭和電工製)0.6gを滴下した。60℃で5時間攪拌した後、得られた溶液をヘキサンに再沈殿精製して、ブロック共重合体G’’を得た。
【0128】
次に、前記工程で得られたブロック共重合体G’’を5%の濃度でTHFに溶解し、ヨウ化メチル3.2gを15%の濃度でTHFに溶解した溶液を室温で攪拌しながら滴下し、2時間攪拌した。得られた溶液をヘキサンに再沈殿してブロック共重合体Gを得た。
【0129】
ブロック共重合体Gの疎水性セグメントはヒドロキシエチルメタアクリレート重合部のヒドロキシル基にアクリロイルオキシエチルイソシアネート(カレンズAOI:商品名、昭和電工製)が結合したセグメントであり、導電性セグメントはジメチルアミノエチルメタアクリレート重合物の4級アンモニウム塩のカチオン性ポリマーである。NMR測定により求めた、導電性セグメントの数平均分子量が全体の数平均分子量に占める割合は43%であり、アクリロイル基の含有量はブロック共重合体1g当たり1.7ミリモルであった。
【0130】
コーティング組成物(14)の調製
前記工程で得られたブロック共重合体Gを用い、下記の配合成分の通り混合して電離放射線硬化性のコーティング組成物(14)を得た。
【0131】
ブロック共重合体G 50質量%
ペンタエリスリトールトリアクリレート 47質量%
光重合開始剤(イルガキュア184:商品名、チバスペシャルティケミカルズ社製) 3質量%
ジメチルスルホキシド コーティング組成物の固形分が40質量%となる量
【0132】
塗膜の形成
100mm厚のポリエチレンテレフェタレートフィルム(ダイヤホイルT−600 U−36E:商品名、三菱ポリエステルフィルム製) 上に、前記工程で得られたコーティング組成物(14)を乾燥塗布厚が3mmとなるようにバーコーターで塗布し、室温で24時間静置して、溶媒を乾燥させて塗膜を形成した。次いで、120℃のオーブンで2分間乾燥した後、高圧水銀灯で積算露光量が600mJ/cm2 となるように紫外線を照射し、塗膜を硬化させて本実施例9の塗膜を形成した。
【0133】
[実施例10]
ブロック共重合体Hの合成(合成例8)
溶媒としてTHFに、開始剤としてsec−ブチルリチウムと1,1−ジフェニルエチレンの付加物を添加したものを−78℃に冷却した。真空下で、2−(2’−ビニロキシエトキシ) エチルメタアクリレート1gを添加し、アニオン重合により15分間反応させた。続いて、ジメチルアミノエチルメタアクリレート0.53gを添加して2時間反応させた。得られた重合溶液をヘキサン、メタノールで精製し、ブロック共重合体H’を得た。
【0134】
GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)測定によるブロック共重合体H’のポリスチレン換算重量平均分子量は22000、分子量分布はMw/Mn=1.10であった。
【0135】
次に、前記工程で得られたブロック共重合体H’を5%の濃度でTHFに溶解し、ヨウ化メチル3.7gを15%の濃度でTHFに溶解した溶液を室温で攪拌しながら滴下し、2時間攪拌した。得られた溶液をヘキサンに再沈殿してブロック共重合体Hを得た。
【0136】
ブロック共重合体Hの疎水性セグメントは2−(2’−ビニロキシエトキシ) エチルメタアクリレート重合部であり、導電性セグメントはジメチルアミノエチルメタアクリレート重合物の4級アンモニウム塩のカチオン性ポリマーである。NMR測定により求めた、導電性セグメントの数平均分子量が全体の数平均分子量に占める割合は50%であり、ビニルエーテル基の含有量はブロック共重合体1g当たり2.5ミリモルであった。
【0137】
コーティング組成物(15)の調製
前記工程で得られたブロック共重合体Hを用い、下記の配合成分の通り混合して電離放射線硬化性のコーティング組成物(15)を得た。
【0138】
ブロック共重合体H 50質量%
ペンタエリスリトールトリアクリレート 47質量%
光重合開始剤( イルガキュア184:商品名、チバスペシャルティケミカルズ社製) 3質量%
ジメチルスルホキシド コーティング組成物の固形分が40質量%となる量
【0139】
塗膜の形成
前記工程で得られたコーティング組成物(15)を用いて前記実施例9の塗膜の形成と同様にして本実施例10の塗膜を形成した。
【0140】
[評価]
実施例9及び10の各塗膜の評価を下記の表2に示す。評価方法のうち、表面抵抗、ヘイズ、全線透過率、耐傷つき性、塗膜の構造に関しては、前記実施例1〜8の塗膜の評価と同様にし、また、耐傷つき性試験に関しては、次の試験により測定した。
【0141】
耐傷つき性試験
スチールウールに、200g/cm2 の荷重をかけ、塗膜上を往復し、傷の状況を目視で観察した。20往復しても傷がないものを◎、10往復では傷が無いが20往復では傷があるものを○、10往復で傷のあるものを×とした。
【0142】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0143】
本発明は、プラズマディスプレイ、液晶ディスプレイ等の光学物品の表面の帯電防止、フィルムの帯電防止、或いは電気、電子機器の帯電防止に適用することができる帯電防止性コーティング組成物、及び該組成物を成形してなる成形物として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0144】
【図1】本発明の第1の形態の反射防止フィルムの層構成を示す概略断面図である。
【図2】本発明の第2の形態の反射防止フィルムの層構成を示す概略断面図である。
【図3】本発明の第3の形態の反射防止フィルムの層構成を示す概略断面図である。
【図4】本発明の実施例1の帯電防止性コーティング組成物を用いて形成した塗膜の断面の透過型電子顕微鏡写真を示す。
【図5】本発明の実施例5の帯電防止性コーティング組成物を用いて形成した塗膜の断面の透過型電子顕微鏡写真を示す。
【符号の説明】
【0145】
1 透明基材フィルム
2 帯電防止層
3 ハードコート層
4 低屈折率層
20 帯電防止性ハードコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性セグメントと非導電性の疎水性セグメントとからなる帯電防止性を有するブロック共重合体を含有する帯電防止性コーティング組成物であって、
該ブロック共重合体における導電性セグメントの数平均分子量が、全体の数平均分子量の20%−80%であり、
該ブロック共重合体のポリスチレン換算重量平均分子量は、8000〜500000であり、
該ブロック共重合体の分子量分布は、2.0以下であることを特徴とする帯電防止性コーティング組成物。
【請求項2】
前記ブロック共重合体における導電性セグメントが、イオン性ポリマーである請求項1記載の帯電防止性コーティング組成物。
【請求項3】
前記ブロック共重合体における導電性セグメントが、ノニオン性ポリマーであり、且つ該帯電防止性コーティング組成物中に金属塩が含まれることを特徴とする請求項1記載の帯電防止性コーティング組成物。
【請求項4】
前記ブロック共重合体における導電性セグメントが、電子伝導性ポリマーである請求項1記載の帯電防止性コーティング組成物。
【請求項5】
前記ブロック共重合体における非導電性の疎水性セグメントが、反応性官能基を有するポリマーであることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項記載の帯電防止性コーティング組成物。
【請求項6】
前記反応性官能基がエチレン性二重結合であり、ブロック共重合体1g当たり0.05−5ミリモル含有されていることを特徴とする請求項5記載の帯電防止性コーティング組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項記載の帯電防止性コーティング組成物に含有されるブロック共重合体を30質量%−80質量%含み、反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物を配合することにより電離放射線硬化性を付与してなる帯電防止性コーティング組成物。
【請求項8】
前記反応性官能基を分子中に2個以上有する化合物が、ガラス転移温度が40℃以下である請求項7記載の帯電防止性コーティング組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8の何れか1項記載の帯電防止性コーティング組成物を用いて形成した成形物。
【請求項10】
ヘイズ値が1.80以下である請求項9記載の成形物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−104458(P2006−104458A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260719(P2005−260719)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】