説明

帯電防止性樹脂組成物

【課題】 帯電防止性に優れるとともに、廃棄物として廃棄された場合に自然界において微生物によって容易に分解され、環境破壊等を生じる虞れのない帯電防止生分解性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の帯電防止生分解性樹脂組成物は、カプロラクトン系樹脂中に、グリセリン脂肪酸エステルを40重量%以上含む非イオン系帯電防止剤を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は帯電防止性樹脂組成物剤に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】合成樹脂は静電気が発生して帯電し易く、合成樹脂製品表面に静電気が帯電すると、不快な放電を生じたり、表面にゴミが付着して製品価値を著しく低下させるという問題がある。また、合成樹脂製品の製造工程等において発生する静電気によるスパークは、火災や爆発の原因となるという問題がある。
【0003】このような問題を解決するために、合成樹脂成型品、合成樹脂フィルムやシート、発泡用合成樹脂粒子等の表面に帯電防止剤を塗布したり、合成樹脂中に帯電防止剤を練り込むことにより、合成樹脂製品表面の固有抵抗を低下させて静電気の発生や帯電を防止する方法が採用されている。
【0004】一般に汎用の合成樹脂製品は、ゴミとして埋め立てて廃棄した場合に微生物によって分解されることがほとんどないため、埋め立て処分場の確保が問題となっている。また焼却処理する場合には、高い燃焼エネルギーによる焼却炉破損の問題や、焼却時に有害な廃ガスが生じる虞れがあることが近年問題となっている。このような従来の汎用的な合成樹脂にかわり、自然環境下で微生物によって容易に分解される特性を有する生分解性樹脂が、環境保護の上から注目され、その利用が検討されている。
【0005】生分解性樹脂として知られているカプロラクトン系樹脂、乳酸系樹脂、澱粉系樹脂等のうち、カプロラクトン系樹脂は乳酸系樹脂等と比べると帯電性が少ない樹脂ではあるが、成形体やシート、フィルム、発泡体、繊維等の製品になると、摩擦による帯電を生じ易くなるが、カプロラクトン系樹脂を一般の合成樹脂に用いられている帯電防止剤で処理した場合、帯電防止効果が不十分であったり樹脂が着色して商品価値を低下させるという問題があり、未だカプロラクトン系樹脂に適切な帯電防止性を付与せしめるにいたっていない。
【0006】本発明は上記の点に鑑みなされたもので、カプロラクトン系樹脂よりなる帯電防止性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明の帯電防止性樹脂組成物は、カプロラクトン系樹脂中に、グリセリン脂肪酸エステルを40重量%以上含む非イオン系帯電防止剤を含有することを特徴とする。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明の帯電防止性樹脂組成物におけるカプロラクトン系樹脂としては、ε−カプロラクトン、4−メチルカプロラクトン、3,5,5−トリメチルカプロラクトン、3,3,5−トリメチルカプロラクトン、β−プロピオンラクトン、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、エナントラクトンの単独重合体や、これらの2種以上の共重合体が挙げられる。これらのカプロラクトンは2種以上を混合して用いることができる。これらカプロラクトンのなかでも、ポリ−ε−カプロラクトンが好ましい。
【0009】本発明の帯電防止性樹脂組成物中に含まれる、非イオン系帯電防止剤としてのグリセリン脂肪酸エステルとは、グリセリン又はポリグリセリンと脂肪酸とのエステルをいう。このようなグリセリン脂肪酸エステルとしては、例えば、グリセリンモノベヘン酸エステル、グリセリンモノステアリン酸エステル、グリセリンモノオレイン酸エステル、グリセリンモノパルミチン酸エステル、グリセリンモノミリスチン酸エステル、グリセリンモノラウリン酸エステル、グリセリンモノカプリン酸エステル、ジグリセリンモノベヘン酸エステル、ジグリセリンモノステアリン酸エステル、ジグリセリンモノオレイン酸エステル、ジグリセリンモノパルミチン酸エステル、ジグリセリンモノミリスチン酸エステル、ジグリセリンモノラウリン酸エステル等が挙げられる。
【0010】本発明の帯電防止性樹脂は、上記グリセリン脂肪酸エステルを40重量%以上含む非イオン系帯電防止剤を含有する。非イオン系帯電防止剤としてグリセリン脂肪酸エステルと他の非イオン系帯電防止剤との混合物を用いる場合、他の非イオン系帯電防止剤としては、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンーポリオキシプロピレンアルキルエーテル、脂肪酸のエチレンオキサイド付加体等が挙げられるが、特に、脂肪酸ジエタノールアミド、ポリオキシエチレンアルキルアミンが好ましい。
【0011】上記脂肪酸ジエタノールアミドとしては、例えばラウリン酸ジエタノールアミド、パルミチン酸ジエタノールアミド、ミリスチン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド等が挙げられる。またポリオキシエチレンアルキルアミンとしては、脂肪族一級アミン(炭素数は12〜18の直鎖状もしくは分岐状)のエチレンオキシド1〜2モル付加体が挙げられる。これらのうち、脂肪酸ジエタノールアミドとしてはラウリン酸ジエタノールアミドが好ましく、ポリオキシエチレンアルキルアミンとしてはラウリルアミンのエチレンオキシド2モル付加体が好ましい。
【0012】本発明の組成物においてグリセリン脂肪酸エステルを40重量%以上含む非イオン系界面活性剤の添加量は、充分な帯電防止効果が得られ、また樹脂物性が低下したり樹脂の流動性が増加しない範囲とすることが好ましい。通常、カプロラクトン系樹脂100重量部当たり0.1〜15重量部、特に1〜10重量部添加することが好ましい。
【0013】本発明の樹脂組成物中には、必要に応じて着色剤、滑剤、安定剤、難燃剤等の添加物を配合することができる。
【0014】本発明の帯電防止生分解性樹脂組成物は、各種容器等の成形体、シートやフィルム、発泡体、繊維等の原料として好適に利用することができる。
【0015】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
【0016】実施例1〜8カプロラクトン樹脂(セルグリーンPHB−02:ダイセル化学工業株式会社製)100重量部当たり、表1に示す非イオン系帯電防止剤を同表に示す量添加して押出機内で混練した後、押出機より押出して縦65mm、横45mm、厚さ2mmのプレートを成形し、このプレートの表面抵抗値、帯電圧半減期、及び目視によりプレートの着色度合いを測定した。結果を、帯電防止剤未添加のカプロラクトン樹脂の場合の測定結果とともに表2に示す。
【0017】比較例1実施例1〜8で用いたと同様のカプロラクトン樹脂100重量部当たり、帯電防止剤としてアルキルスルホン酸ナトリウムを2重量部添加した他は実施例1〜8と同様にしてプレートを押出成形し、表面抵抗値、帯電圧半減期、プレートの着色度合いを測定した。結果を表2にあわせて示す。
【0018】
【表1】


【0019】
【表2】


【0020】※1:プレートの着色は、帯電防止剤未添加のプレートの色と目視比較し、○・・変わりなし。
△・・やや着色している。
×・・着色している。
として評価した。
【0021】比較例2実施例1〜8で用いたと同様のカプロラクトン樹脂100重量部当たり、非イオン系帯電防止剤としてソルビタンモノラウリン酸エステルを2重量部添加した他は、実施例1〜8と同様にしてプレートを押出成形し、このプレートの表面抵抗値、帯電圧半減期、プレートの着色度合いを測定した。結果を表2にあわせて示す。
【0022】比較例3実施例1〜8で用いたと同様のカプロラクトン樹脂100重量部当たり、ラウリルアミンEO2モル付加体を2重量部添加した他は、実施例1〜8と同様にしてプレートを押出成形し、このプレートの表面抵抗値、帯電圧半減期、プレートの着色度合いを測定した。結果を表2にあわせて示す。
【0023】比較例4実施例1〜8で用いたと同様のカプロラクトン樹脂100重量部当たり、グリセリンモノステアリン酸エステル30重量部とラウリルアミンEO2モル付加体70重量部の混合物を2重量部添加した他は、実施例1〜8と同様にしてプレートを押出成形し、このプレートの表面抵抗値、帯電圧半減期、プレートの着色度合いを測定した。結果を表2にあわせて示す。
【0024】比較例5実施例1〜8で用いたと同様のカプロラクトン樹脂100重量部当たり、ラウリン酸ジエタノールアミドを2重量部添加した他は、実施例1〜8と同様にしてプレートを押出成形し、このプレートの表面抵抗値、帯電圧半減期、プレートの着色度合いを測定した。結果を表2にあわせて示す。
【0025】比較例6実施例1〜8で用いたと同様のカプロラクトン樹脂100重量部当たり、グリセリンモノステアリン酸エステル30重量部とラウリン酸ジエタノールアミド70重量部の混合物を2重量部添加した他は、実施例1〜8と同様にしてプレートを押出成形し、このプレートの表面抵抗値、帯電圧半減期、プレートの着色度合いを測定した。結果を表2にあわせて示す。
【0026】
【発明の効果】本発明の帯電防止性樹脂組成物は、帯電防止性に優れるとともに生分解性に優れ、本発明の樹脂組成物を用いた容器等の成形品や、フィルム、シート、発泡体、繊維等の製品を、使用後に廃棄物として廃棄する場合、地中等に埋設する等の処理を行うだけで微生物によって容易に分解されるため、環境汚染を生じる虞れがない等の効果を奏する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 カプロラクトン系樹脂中に、グリセリン脂肪酸エステルを40重量%以上含む非イオン系帯電防止剤を含有することを特徴とする帯電防止性樹脂組成物。