説明

帯電防止被覆された成形体の製造方法

塗料系が、バインダーまたはバインダー混合物、場合により溶剤または溶剤混合物、場合により塗料系において慣用されている別の添加剤および増粘剤、この場合、そのつどの乾燥塗膜(成分a、c、d、e)に対してポリマーの増粘剤を0〜20%の含有率で、およびオリゴマーの増粘剤を0〜40%の含有率で使用することができ、5〜50nmの平均一次粒径および百分率で0.01〜99%の凝集度を有する、導電性金属酸化物粉末をa)に対して5〜500質量部、不活性ナノ粒子をa)に対して5〜500質量部からなり、自体公知の方法により被覆し、かつ塗料を硬化させることにより、成形体を1面もしくは複数面において塗料系により被覆することによりプラスチックからなる成形体を製造する方法を記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、導電性を備えたプラスチック成形体を製造するための別の方法、導電性を備えたプラスチック成形体およびその使用に関する。
【0002】
従来技術
EP0514557B1は、熱硬化性シリカポリマー塗料系からなるマトリックス中のたとえば金属酸化物、たとえば酸化スズをベースとする粉末状の導電性粒子からなる、透明な導電性被覆を形成するための被覆溶液を記載している。被覆される支持体、たとえばセラミック表面は、たとえば500〜7000Å(オングストローム、10−10m)の範囲の厚さを有する塗膜を有していてよい。導電性粉末が主として個々の粒子として、ほぼ、または完全に凝集体を有さずに存在している製品を使用することが有利であると記載されている。シリカポリマー塗料系は多くのプラスチック支持体を被覆するために十分に適切ではない、というのも、該塗料系は極めて高い温度で硬化させなくてはならず、通常は極めてもろく、かつ付着性が劣っているからである。
【0003】
EP−A0911859は、透明な支持体、透明な導電性被覆およびもう1つの透明な被覆からなる透明な導電性構造を記載している。導電性粒子として、1〜100nmのサイズを有する金または白金により被覆された銀粒子がバインダーマトリックス中で使用される。比較例では熱硬化性シロキサン塗料系中で特に酸化インジウムスズ(ITO)からなる粒子もまた使用されている。
【0004】
DE10129374は、成形体の1面を、a)バインダー、b)場合により溶剤、c)場合により塗料系中で慣用される別の添加剤およびd)5〜130nmの平均粒径を有する導電性金属酸化物(成分a)に対して)10〜300質量部からなる塗料系により、自体公知の方法で被覆し、かつ該成形体を塗膜の硬化前に、空気に対する境界層に向いている塗膜の半分における金属酸化物粒子は、粒子の少なくとも65%が塗膜のこの半分中に存在するように富化させ、かつその後、塗膜を引き続き硬化させることにより、導電性被覆を有するプラスチックからなる成形体を製造する方法を記載している。
【0005】
課題
すでに比較的低減された金属酸化物の量で、良好な導電性が達成される導電性被覆を有するプラスチックからなる成形体を製造するための別の方法を提供するという課題が存在していた。導電性の金属酸化物、たとえば酸化インジウムスズ(ITO)は粉末の形で、あらゆる種類の成形体上に導電性被覆を製造するための使用することができる塗料系において使用することができる。商業上の欠点は、導電性の金属酸化物の高価な価格であり、このためこのような被覆は極めて高価な製品の場合に使用することができるにすぎない。たとえば酸化インジウムスズ(ITO)の高価な価格は、特に極めて多くの高価な作業工程を含むゾル・ゲル原理による高価な製造方法に起因する。さらにDE10129374からすでに被覆したプラスチック成形体の貯蔵の必要な工程を回避すべきである。というのも、該プラスチック成形体はこの状態で、機械的に極めて敏感だからである。さらに、極めて高価なITOを安価な製品と交換し、その際、被覆の機能、たとえば導電性または耐引掻性がほとんど損なわれることのない方法を見いださなくてはならない。さらに、できる限り高い割合の導電性金属酸化物およびナノ粒子を混合することができ、その際、粘度は該塗料系をもはや加工することができないほど高くなることのない塗料系を開発するという課題が存在していた。
【0006】
解決手段
上記課題は、成形体を1面、2面もしくは複数の面において塗料系により被覆することにより、導電性被覆を有するプラスチックからなる成形体を製造する方法により解決され、該塗料系は
a)バインダーまたはバインダー混合物、
b)場合により溶剤または溶剤混合物および
c)場合により塗料系において慣用されている別の添加剤および
d)増粘剤、または増粘剤混合物、
e)1〜80nmの平均一次粒径および0.01〜99%の凝集度を有する、導電性金属酸化物、あるいはまた金属酸化物のゾルを(成分a)に対して)5〜500質量部、その際、凝集状態とは、一次粒子が少なくとも2の一次粒子からなっているパーセンテージが記載されることを意味し、
f)および2〜100nmの平均一次粒径を有するナノ粒子を(成分a)に対して)5〜500質量部
からなり、自体公知の方法により被覆し、かつ塗料を硬化させる。
【0007】
本発明はさらに、本発明による方法により製造することができる、導電性被覆を有する成形体およびその使用に関する。
【0008】
発明の実施
バインダーまたはバインダー混合物a)
バインダーは物理的に乾燥するか、または熱により、もしくは化学的に硬化することができるか、または高エネルギーの放射線により硬化することができる、有機または有機/無機の混合したバインダーまたはバインダー混合物であってよい。
【0009】
有機バインダーは有機モノマー、オリゴマーおよび/またはポリマーからなる。その例は次のものである:ポリ(メタ)アクリレート、ビニル(コ)ポリマー、エポキシ樹脂、ポリウレタンまたはアルキド樹脂、架橋性および非架橋性の反応性希釈剤。
【0010】
反応性希釈剤とは、塗料に共重合することができる低粘性のモノマーであると理解し、架橋性の反応性希釈剤は分子中に2以上の重合性の基を有する。反応性希釈剤はたとえばブチルアクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレートであり、架橋性の反応性希釈剤はたとえばヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートである。有機/無機の混合されたバインダーはたとえば次のものであってよい:ポリシロキサン、シランの共縮合物、シリコーンまたは前記の化合物と有機ポリマーとのブロックコポリマー。その他の例は、ハイブリッドポリマーであり、これはそのモノマーおよび/またはオリゴマーの成分の混合物として使用される。これは(メタ)アクリレートとエポキシドまたはイソシアネートおよびそのつどの属する硬化剤の組み合わせであってよい。
【0011】
適切なモノマーはたとえばγ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(Silquest A174 NT)、ヘキサンジオールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、Serpol QMA 189(Servo Delden BV、NL)、ジプロピレングリコールジアクリレート、ペンタエリトリットテトラアクリレート、Bisomer PPA6E、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、Sartomer 335、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、Sartomer CD9038、エトキシル化ビスフェノールジアクリレート、Sartomer CD406、シクロヘキサンジメタノールジアクリレート、Sartomer SR 335、ラウリルアクリレート、Sartomer SR 285、テトラヒドロフルフリルアクリレート、Sartomer SR 339、2−フェノキシエチルアクリレート。
【0012】
溶剤b)
塗料系中に場合により含有されている溶剤は、アルコール、エーテルアルコールまたはエステルアルコールであってよい。これらは相互に、または場合により別の溶剤、たとえば脂肪族もしくは芳香族炭化水素またはエステルと混合してもよい。有利な溶剤はアルコール、エーテルアルコールまたはこれらの混合物、アルコールと別の溶剤、たとえばブチルアセテート、ジアセトンアルコールおよびトルエンとの混合物である。
【0013】
添加剤c)
塗料系中に場合により含有されている慣用の添加剤c)は、たとえば着色剤、レベリング剤、湿潤剤、分散剤、酸化防止剤、光開始剤、反応性希釈剤、消泡剤、脱気剤、立体障害アミン光安定剤(HALS)、顔料またはUV吸収剤であってよい。表面活性剤とは特に有利には製品Byk 045、Byk 335、Efka 83、Tego 440、Silan GF 16(Wacker)である。有利なUV吸収剤は次のものである:Norbloc 7966、ビス−DHB−A(Riedel de Haen)、CGL 104(Ciba)、3−(2−ベンゾトリアゾリル)−2−ヒドロキシ−5−t−オクチル−ベンジルメタクリルアミド、BASFのUVA 635−L、Uvinul N35、Tinuvine 1130、329および384である。立体障害アミン光安定剤として有利にはTinuvine 770、440、144、123、765、292、268を使用する。慣用の添加剤はたとえばBrock、Groteklaes、Mischkeの教科書、”Lehrbuch der Lacktechnologie”、第2版、Hannover、Vincentz−Verlag、1998年に記載されている。
【0014】
増粘剤または増粘剤混合物d)
増粘剤または増粘剤混合物として適切なポリマー、たとえばRoehm GmbH & Co.KG社から製造され、かつ市販されている製品PLEX(R)8770 Fを使用することができる。製品PLEX(R)8770 Fはメタクリル酸メチルエステル約75質量%およびブチルアクリレート約25質量%の組成を有する高分子量のPMMAである。粘度数Jは約11である(クロロホルム中20℃で測定)。該製品はパール重合により製造され、開始剤として2,2′−アゾビス−(イソブチロニトリル)が使用される。パール重合の方法は当業者に公知である。
【0015】
別の適切な増粘剤は次のものである:オリゴマーのエポキシアクリレート、たとえばEbecryl 605、Ebecryl 608、ウレタンアクリレート、たとえばEbecryl 210、Ebecryl 264、Ebecryl 284、Ebecryl 5129、Ebecryl 1290、シリコーンアクリレート、たとえばEbecryl 350またはEbecryl 360、ポリエステルアクリレート、たとえばEbecryl 440、エポキシアクリレート、たとえばJaegalux 3300、ポリエステルアクリレート、たとえばJaegalux 1300、ポリエチレングリコールジアクリレート、たとえばIGM Resin BV社、Waalwijk、NL在のEM227。Ebecrylの名称を有する製品はUCB社、Kerpen在から入手することができる。
【0016】
特別な実施態様では、増粘剤は自体反応性であっても、かつたとえば熱による後硬化によってさらに架橋を開始してもよい。このことは特に、フレキシブルであるか、または熱可塑性の支持体を被覆し、かつ該被覆の後で該支持体をなお、たとえば熱により変形、積層またはプレス加工すべき場合に有利である。この場合、たとえば放射線硬化性塗料中での架橋剤含有率は、UV硬化においてまず一定の架橋が行われるが、しかし塗料は変形の際に切れたり、破れたりせず、かつその付着性は延伸または圧縮の際にも一定の度合いまで失われないように調整することができる。たとえば熱による変形またはプレス加工の間に後硬化は増粘剤中に含有されている反応性の基により行われる。その際、最終的な架橋密度は達成されず、かつ系の耐引掻性はもう一度改善される。反応性希釈剤のための例は、たとえば熱の作用の際に相互に反応することができる反応性の基を有する脂肪族もしくは芳香族化合物である。これはたとえば硫黄を含有する基、たとえばメルカプト基およびジスルフィド基、エポキシ基、アミノ基、アルコール、酸性基、イソシアネートまたはキャップトイソシアネート、またはその他のここには記載されない系であり、これらはデュアル・キュア・メカニズムにより第二の硬化工程で第一の放射線硬化の後に実施される。
【0017】
反応性で架橋性の増粘剤以外に、非反応性の架橋剤を単独で、または反応性の架橋剤と組み合わせて使用することができ、その際、被覆の可とう性は非架橋性の増粘剤の使用により有利に影響を与えることができる。架橋剤として通常の多官能性(メタ)アクリレート、たとえば
a)二官能性の(メタ)アクリレート、たとえば一般式:
【0018】
【化1】

[式中、Rは水素またはメチルであり、かつnは3〜20の正の整数である]の化合物、たとえばプロパンジオール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールおよびエイコサンジオールのジ(メタ)アクリレートまたは一般式:
【0019】
【化2】

[式中、Rは水素またはメチルであり、かつnは1〜14の正の整数である]の化合物、たとえばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ドデカエチレングリコール、テトラデカエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールおよびテトラデカプロピレングリコールのジ(メタ)アクリレート;およびグリセリンジ(メタ)アクリレート、2,2′−ビス[p−(γ−メタクリルオキシ−β−ヒドロキシプロポキシ)−フェニルプロパン]またはビス−GMA、ビスフェノール−A−ジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、分子当たり2〜10のエトキシ基を有する2,2′−ジ(4−メタクリルオキシポリエトキシフェニル)プロパンおよび1,2−ビス−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)ブタンまたはさらに
(b)三官能性または多官能性の(メタ)アクリレート、たとえばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートおよびペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート
が考えられる。
【0020】
この場合、塗料はひっかき傷が生じた際に自己回復を示すように構成されていてもよい。これはたとえば適切な置換基を有するオリゴマーおよびポリマーを使用することによって、架橋度を低下させ、かつ弾性を上昇させることにより行うことができる。弾性モノマーのための例は脂肪族の、エステル基のアルコール部分に中程度の鎖長を有するか、または長鎖の基、たとえばイソブチル基を有するアクリレートまたはメタクリレートである。
【0021】
a)、b)、c)およびd)からなる塗料系
適切な物理的に乾燥する塗料はたとえばポリマー、たとえばポリメチルメタクリレート−(コ)ポリマーを30質量%および溶剤、たとえばメトキシプロパノールおよびブチルアセテートを70質量%含有する。薄い層で塗布した後で、該塗料は溶剤が蒸発することによって自ずと硬化する。
【0022】
適切な熱硬化性塗料はたとえばアルキルアルコキシシランの部分的な加水分解および縮合によって得ることができるポリシロキサン塗料であってもよい。硬化は場合により使用される溶剤を場合により20分間ないし数時間、たとえば60〜120℃に加熱することによって蒸発した後に行われる。
【0023】
適切な化学的硬化可能な塗料系はたとえば、ポリイソシアネートおよびポリオールの混合物からなっていてもよい。反応性成分を合した後、該塗料系は自ずと数分〜数時間の期間内に硬化する。
【0024】
放射線により硬化可能な適切な塗料系はたとえば場合によりポリ不飽和のラジカル重合性ビニル不飽和化合物、たとえば(メタ)アクリレート化合物の混合物からなる。硬化は高エネルギーの放射線、たとえばUV線または電子線を、場合により放射線により活性化可能な重合開始剤の添加後に作用させることによって行う。その例は耐引掻性塗料、たとえばDE−A19507174に記載されているものである。
【0025】
この場合、成分a)、b)およびc)はポリ(メタ)アクリレート、ポリシロキサン、ポリウレタン、エポキシ樹脂またはラジカル重合性の、場合により多官能性のビニルモノマーをベースとする塗料系であってよい。
【0026】
特に有利であるのは、硬化した状態でバインダーに対して、官能性の極性基少なくとも5モル%、有利には10〜25モル%の含有率を有するバインダーを含有する塗料系である。
【0027】
適切な被覆組成物は次のものからなっていてよい:
aa)式(I)
C=C(R)−C(O)−O−[CH−CH−O]−C(O)−C(R)=CH (I)
[式中、n=5〜30およびR=HまたはCH]のポリアルキレンオキシド−ジ(メタ)アクリレートからなる混合物を、成分aa)〜ee)の合計に対して、70〜95質量%、その際、
aa1)式(I)のポリアルキレンオキシド−ジ(メタ)アクリレートの混合物の50〜90質量%は、300〜700の平均分子量(Mw)を有するポリアルキレンオキシド−ジオールから、および
aa2)式(I)のポリアルキレンオキシド−ジ(メタ)アクリレートの混合物の50〜10質量%は、900〜1300の平均分子量(Mw)を有するポリアルキレンオキシド−ジオールから形成され、
bb)式
C=C(R)−C(O)−O−[CH−OH (II)
[式中、m=2〜6およびR=HまたはCH]のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを成分aa)〜ee)の合計に対して1〜15質量%、
cc)架橋剤としてのアルカンポリオール−ポリ(メタ)アクリレートを成分aa)〜ee)の合計に対して、0〜5質量%、
dd)1もしくは複数のUV重合開始剤を成分aa)〜ee)の合計に対して、0.1〜10質量%、ならびに
ee)場合により別の、UV硬化性被覆のための通例の添加剤、たとえば促進剤、たとえばアミン促進剤、UV吸収剤または吸収剤および/またはレベリングおよびレオロジーのための添加剤の混合物/組み合わせ、
ff)蒸発により容易に除去することができる溶剤を成分aa)〜ee)の合計に対して0〜300質量%、および/または一官能性の反応性希釈剤を成分aa)〜ee)の合計に対して0〜30質量%。
【0028】
記載の塗料系は2000年1月18日のRoehm GmbH & Co.KG社のDE−A10002059の対象である。
【0029】
増粘剤を有する調製物はたとえば次の組成を有していてよい:
aa)式(I)
C=C(R)−C(O)−O−[CH−CH−O]−C(O)−C(R)=CH (I)
[式中、n=5〜30およびR=HまたはCH]のポリアルキレンオキシド−ジ[メタ]アクリレートからなるの混合物を成分aa)〜ff)の合計に対して70〜95質量%、その際、
aa1)式(I)のポリアルキレンオキシド−ジ(メタ)アクリレートの混合物の50〜90質量%は、300〜700の平均分子量(Mw)を有するポリアルキレンオキシド−ジオールから、および
aa2)式(I)のポリアルキレンオキシド−ジ(メタ)アクリレートの混合物の50〜10質量%は、900〜1300の平均分子量(Mw)を有するポリアルキレンオキシド−ジオールから形成され、
bb)式
C=C(R)−C(O)−O−[CH−OH (II)
[式中、m=2〜6およびR=HまたはCH]のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを成分aa)〜ff)の合計に対して1〜15質量%、
cc)架橋剤としてのアルカンポリオール−ポリ(メタ)アクリレートを成分aa)〜ff)の合計に対して、0〜5質量%、
dd)1もしくは複数のUV重合開始剤を成分aa)〜ff)の合計に対して、0.1〜10質量%、
ee)場合により別の、UV硬化性被覆のための通例の添加剤、たとえば促進剤、助触媒、UV吸収剤および/またはレベリングおよびレオロジーのための添加剤、
ff)蒸発により容易に除去することができる溶剤を成分aa)〜ff)の合計に対して0〜300質量%、および/または一官能性の反応性希釈剤を成分a)〜e)の合計に対して0〜30質量%、
gg)増粘剤または増粘剤混合物を成分aa)〜ff)の合計に対して0.5〜50質量%。
【0030】
このような塗料系は官能性の極性基の比較的高い含有率により水を吸収し、かつたとえばオートバイのヘルメットのバイザーのための被覆として、バイザーの内側の曇りを防止するために使用することができる。導電性金属酸化物と組み合わせることで、実質的に常に周囲から行われる水の吸収は、被覆の一段と改善された導電性につながる。本発明による塗料は水を吸収するにもかかわらず、プラスチック支持体に良好に付着し、かつ透明なままである。
【0031】
導電性金属酸化物e)
適切な導電性金属酸化物e)は、1〜80nmの範囲の一次粒径を有する。金属酸化物e)は分散していない状態で、一次粒子のアグリゲートおよびアグロメレートとして、およびアグリゲートとして存在していてもよく、かつこの場合、2000nmまで、または1000nmまでのアグロメレートの粒径を有していてもよい。アグリゲートは500nmまで、有利には200nmまでの大きさを有する。
【0032】
金属酸化物一次粒子の平均粒径は透過型電子顕微鏡により確認することができ、かつこの場合、一次粒子は一般に5〜50nm、有利には10〜40nmおよび特に有利には15〜35nmの範囲である。平均粒径のための別の適切な測定法はブルナウアー・エメット・テラーの吸着法(BET)またはX線回折法(XRD)である。一次粒子はアグリゲートとして、またはアグロメレートとして存在していてよい。アグリゲートとは、焼結架橋により継続的に凝集している二次粒子であると理解する。分散法によってアグリゲートを分離することはできない。
【0033】
適切な金属酸化物はたとえば酸化アンチモンスズまたは酸化インジウムスズのナノ材料(ITO)であり、これらは特に良好な導電性を有している。適切であるのは、前記の金属酸化物のドープされた変種である。相応する生成物は沈殿法またはゾルゲル法により高純度で得られ、かつ種々の製造業者から入手することができる。平均一次粒径は5〜80nmの範囲である。生成物は一定の割合の個々の粒子からなるアグリゲートおよびアグロメレートを含有する。アグロメレートとは、ファン・デル・ワース力によりまとまっている二次粒子であると理解され、これは分散法により分離することができる。
【0034】
特に有利には50〜200nmの粒径を有する凝集した粒子を、10〜80体積%、有利には20〜60体積%の割合で含有する酸化インジウムスズの粉末を使用する。体積%の割合は粒子分析装置(たとえばCoulter社のレーザー粒子分析装置またはBrookhaven社のBI−90 Particle Sizer)により、動的光散乱により体積平均または強度平均直径を測定することによって測定することができる。
【0035】
適切な酸化インジウムスズ粉末はエーロゾル製造法により、相応する金属塩化物の化合物を熱い火炎中で金属酸化物に変換することによって得られる。
【0036】
酸化インジウムスズ粉末を塗料系へ混合する際に、凝集した粒子は部分的に再びいくつかの個々の粒子のアグリゲートおよび個々の粒子(一次粒子)へと移行することができる。50〜200nmの粒径を有する凝集した粒子の割合は有利には5%を下回ることはなく、有利には10%を下回ることはない。塗料系中で凝集した粒子の25〜90%の割合が鎖状に並んでいることは有利である。この場合、鎖状のアグリゲートは分枝鎖状であっても、または列に並んだ粒子の三次元の構成物として存在してもよい。
【0037】
電子顕微鏡により、アグリゲートは相互に架橋を形成することが見て取れる。
【0038】
Aerosil法による酸化インジウムスズ(ITO)粉末の製造
Aerosil法による酸化インジウムスズ粉末の製造はDegussa社(ドイツ国Hanau−Wolfgang在)の特許出願EP1270511の対象である。
【0039】
前記の特許出願は酸化インジウムスズの製造方法を記載しており、この場合、インジウム塩の溶液をスズ塩の溶液と混合し、場合により少なくとも1のドープ成分の塩の溶液を添加し、該溶液混合物を噴霧し、噴霧された溶液混合物を熱分解し、かつ得られた生成物を排気から分離する。
【0040】
無機化合物、たとえば塩化物、硝酸塩および有機金属前駆化合物、たとえば酢酸塩、アルコラートを塩として使用することができる。
【0041】
溶液は場合により水、水溶性、有機溶剤、たとえばアルコール、たとえばエタノール、プロパノールおよび/またはアセトンを含有していてもよい。
【0042】
溶液の噴霧は超音波噴霧装置、超音波アトマイザー、2流体ノズルまたは3流体ノズルにより行うことができる。超音波噴霧装置または超音波アトマイザーを使用する場合、得られるエーロゾルをキャリアガスおよび/またはN/O空気により火炎に供給し、混合することができる。
【0043】
2流体ノズルまたは3流体ノズルを使用する場合、エーロゾルは直接火炎に供給することができる。
【0044】
水と非混和性の有機溶剤、たとえばエーテルもまた使用することができる。
【0045】
分離はフィルターまたはサイクロンにより行うことができる。
【0046】
熱分解は水素/空気および酸素の燃焼により生じる火炎中で行うことができる。水素の代わりにメタン、ブタンおよびプロパンを使用することもできる。
【0047】
熱分解はさらに外部から加熱される炉により行うことができる。同様に流動床反応器、回転管またはパルス型反応器を使用することができる。
【0048】
本発明による酸化インジウムスズはたとえば酸化物および/または元素の金属の形での次の物質によりドープされていてもよい:
アルミニウム、イットリウム、マグネシウム、タングステン、ケイ素、バナジウム、金、マンガン、コバルト、鉄、銅、銀、パラジウム、ルテニウム、ニッケル、ロジウム、カドミウム、白金、アンチモン、オスミウム、セリウム、イリジウム、ジルコニウム、チタン、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、タンタルまたは亜鉛。その際、原料として相応する塩を使用することができる。カリウム、白金または金によるドープは特に有利でありうる。
【0049】
得られる酸化インジウムスズ(ITO)はたとえば次の物理化学的パラメータを有していてよい:
【0050】
【表1】

【0051】
ナノ粒子e)
乾燥塗膜(つまり溶剤を含有していない塗料の組成)(成分a)、c)、d)、e)およびf))に対して、(不活性)ナノ粒子0.1〜50質量%およびITO30〜80質量%の含有率を有する塗料は良好に硬化することができる塗料となることが判明した。有利であるのはITO約20〜40質量%および不活性ナノ粒子20〜40質量%の組成である。塗料は機械的に安定しており、かつプラスチック支持体上に良好に付着する。
【0052】
意外なことに、不活性無機粒子、たとえばSiOナノ粒子を含有する塗料は良好な付着性を有し、かつ良好な導電性が低下していない。
【0053】
SiOナノ粒子は自体公知の方法で製造され、かつたとえばClariant GmbH社から商品名Highlink OGで市販されている。同様に、商品名Nanocrylを有するHanse−Chemie社、Geesthachtの製品も適切である。
【0054】
不活性ナノ粒子とは、すでに記載したHighlink OGと並んで次の物質および物質群であると理解する:実質的にSiOまたはAlまたはこれらの組み合わせからなるオルガノゾルおよびシリカゾル。同様に適切であるのはその他の酸化物ナノ粒子、たとえば酸化ジルコニウム、二酸化チタン、酸化セリウム、酸化鉄である。微粒子状の分解された熱分解法ケイ酸を使用することもできる。これらは、比較的狭い範囲で塗料の増粘に貢献するにすぎない点で古典的な熱分解法シリカとは異なっている。その例はDegussa社の製品Aerosil 7200およびAerosil 8200である。
【0055】
さらに導電性のために酸化インジウムスズと同程度に、またはより弱い程度で貢献する機能性ナノ粒子を塗料に混合することもできる。適切であるのはたとえば酸化アンチモンスズまたは酸化亜鉛である。機能性ナノ粒子とは本発明の意味では、電流の伝導に関与することによって全複合材の導電性を改善するか、または維持する粒子であると理解する。
【0056】
ここで言及されなかった間接的な貢献は、不活性ナノ粒子がその存在によって機能性ナノ粒子を導体路に類似の構造にし、このことによって導電性が改善されることによっても行われうる。このための1例は、それぞれ次のものからなる:
酸化インジウムスズ 3g、
SiOナノ粒子(13nm、Highlink OG 502−31)(不活性ナノ粒子) 3g、
アクリレート混合物(組成は以下を参照のこと) 3g、
イソプロパノール 7g、
シラン GF 16(Wacker) 0.08g、および
光開始剤をアクリレートに対して2%。
【0057】
この塗料はUV硬化後に<10exp6オーム/平方の表面抵抗を有する帯電防止層を生じる。
【0058】
もう1つの実施例では前記のとおりであるが、ただし、9nmの粒径を有するナノ粒子を使用した点が異なっていた。同様の結果が得られた。比較のために、同一のITO濃度を有しているが、しかしナノ粒子を含有してない塗料を製造した。不活性ナノ粒子の代わりにアクリレートを使用した。10exp9オーム/平方の表面抵抗が見られる。
【0059】
被覆可能な成形体
適切な被覆可能な成形体はプラスチックからなり、有利には熱可塑性もしくは熱により変形可能なプラスチックからなる。
【0060】
適切な熱可塑性プラスチックはたとえばアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、耐衝撃性が改良されたポリメチルメタクリレートまたは2以上の熱可塑性プラスチックからなるその他の混合物(ブレンド)である。ポリオレフィン(ポリエチレンまたはポリプロピレンまたはシクロオレフィンコポリマー、たとえばエチレンおよびノルボルネンからなるコポリマー)は適切な前処理、たとえばコロナ処理、火炎処理、プラズマ溶射またはエッチングにより同様に被覆可能である。
【0061】
有利であるのは透明プラスチックである。被覆可能な支持体として特に有利であるのは、この種のプラスチックの高い透明性に基づいて、押出成形または注型により製造されるポリメタクリレートプラスチックからなる成形体である。ポリメチルメタクリレートは、メチルメタクリレート単位少なくとも80質量%、有利には85〜100質量%からなる。場合により別のラジカル重合可能なコモノマー、たとえばC〜C−アルキル(メタ)アクリレートが含有されていてもよい。適切なコモノマーはたとえばメタクリル酸のエステル(たとえばエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート)、アクリル酸のエステル(たとえばメチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート)またはスチレンおよびスチレン誘導体、たとえばα−メチルスチレンまたはp−メチルスチレンである。
【0062】
注型により製造されたポリメチルメタクリレートは極めて高分子量であり、従ってもはや熱可塑性に加工することができない。しかしこれは熱により変形可能である(熱弾性)。
【0063】
被覆すべき成形体は任意の形状を有していてよい。しかし平面状の成形体が有利である。というのも、これは特に容易かつ効果的に1面または両面を被覆することができるからである。平面状の成形体はたとえば中実パネルまたは中空パネル、たとえばサンドイッチパネルもしくはツインウェブ・サンドイッチパネルまたはマルチウェブ・サンドイッチパネルである。たとえば波板もまた適切である。
【0064】
被覆すべき成形体は艶消し、光沢または構造化された表面を有していてよい。
【0065】
塗料、製造法および組成:
塗料ベース:
適切な塗料はたとえばDE10129374に挙げられている。特に有利な実施態様では放射線硬化性塗料を使用する。放射線硬化性塗料は物理的に乾燥する、化学的に硬化する、または熱により硬化する系に対して、数秒以内に液状から固体の状態へと変化し、相応する架橋の際に、耐薬品性、耐引掻性の被覆が形成され、かつ比較的小さいスペースで取り扱うことができるという利点を有する。被覆の塗布と、塗料の硬化との間の短い時間により、塗料の粘度を十分に高く調整する場合には、塗料中の比重の重い金属酸化物粒子の不所望の沈殿をほぼ防止することができる。
【0066】
UV硬化可能な塗料
ITO添加剤を含有していない塗料は、ITOおよびナノ粒子e)の分散のために低粘度(パラメーター)でなくてはならず、これにより40〜50%の充填剤量、場合によりITO70%までを塗料に導入することができ、かつそれでもなお、十分な加工性、分散性および適用性が与えられている。塗料の粘度はたとえば4.5mPasである。これはたとえば適切な低粘度の反応性希釈剤を選択することにより、または溶剤、たとえばアルコールを添加することにより行うことができる。同時に適切な増粘剤の添加によって塗料中のITO粒子の沈殿を効果的に防止しなくてはならない。これはたとえば適切なポリマーの添加により行うことができる。適切なポリマーのための例は、ポリメタクリレート、たとえばPLEX 8770、または官能基を有するポリメタクリレートである。別の適切なポリマーまたはオリゴマーは、すでに「a)、b)およびc)からなる塗料系」の章で挙げられている。適切なポリマーは一定の極性により優れており、このことによって該ポリマーは塗料のその他の成分およびITOの極性表面と相互作用することができる。完全に無極性のポリマーまたはオリゴマーまたは少ない数の極性基を有するポリマーおよびオリゴマーは増粘のために不適切である、というのも、これらはその他の塗料成分と相互作用することができず、かつ塗料と非相容性だからである。十分に極性のオリゴマーまたはポリマーは、アルコール、エーテル、ポリエーテル、エステル、ポリエステル、エポキシド、シラノール、シリルエーテル、置換された脂肪族もしくは芳香族基を有するケイ素化合物、ケトン、尿素、ウレタン、ハロゲン、ホスフェート、ホスファイト、スルフェート、スルホネート、スルファイト、スルフィド、アミン、ポリアミン、アミド、イミド、カルボン酸、硫黄、窒素および酸素の複素環、フェニルおよび置換された芳香族基、環中にヘテロ芳香族を有するものを含む多環式芳香族の群から選択される極性基を有する。極めて極性のオリゴマーまたはポリマーは同様に不適切である。というのも、完成した塗料の特性へのその作用が不利だからである。不適切な強極性基には、ポリ酸またはポリ酸の塩が挙げられる。不適切な基はしばしば高い水溶性または水膨潤性を特徴とする。適切な極性基の濃度は、塗料の膨潤性が一定の程度を越えないように選択しなくてはならない。従って適切な極性基は、塗料が水溶性ではなく、かつ実質的に膨潤性ではないことが保証されるような濃度で使用される。このことは、極性基のモル割合が上記のポリマー100gあたり、0.4〜100ミリ当量である場合に保証される。極性基としてヒドロキシル−、カルボキシル−、スルホニル−カルボン酸アミド−、ニトリル−およびシラノール−基が挙げられる。極性基はその作用において異なっている。これらはニトリル<ヒドロキシル<第一級カルボン酸アミド<カルボキシル<スルホニル<シラノールの順序で増大する。極性化作用が強いほど、ポリマー中で必要とされる含有率は少なくなる。
【0067】
特に適切な増粘剤は、移行することができない系である。このような系はたとえば塗料へ結合することにより固定することができる。これは塗料への物理的または化学的な結合によって、たとえば共重合によって行うことができる。とりわけ有利であるのは、硫黄架橋によって後架橋するオリゴマーまたはポリマーの、共重合性アクリレートまたはオリゴマー/ポリマー、たとえばRoehm GmbH & Co.KG社のPLEX 8770である。
【0068】
塗料の粘度に対するITOの作用を説明するために、ITOを含有していない塗料の粘度をブルックフィールド粘度計LVT(アダプターA)により測定した。4.5mPasの粘度が見られる。同一の塗料に、バインダーに対して、同一の質量割合のITOを充填し、かつ同様にブルックフィールド粘度計LVT(スピンドル2)において異なった回転速度で測定した。明らかな構造粘性が見られる:
【0069】
【表2】

【0070】
塗料の組成は次のとおりであった:
ITO 24.5部、
アクリレート混合物 24.5部、
イソプロパノール 50部、
分散剤 0.5部、
光開始剤 0.5部。
【0071】
ITOを含有していない塗料は相応して次の組成を有していた:
アクリレート混合物 32.45部、
分散剤 0.66部、
光開始剤 0.66部、
イソプロパノール 66.22部。
【0072】
アクリレート混合物として、ペンタエリトリットトリテトラアクリレート約40質量%およびヘキサンジオールジアクリレート約60%からなる混合物を使用した。分散剤としてWacker Chemie社のSilan GF 16を使用した。光開始剤としてIrgacure 184を使用した。
【0073】
塗料の粘度が、たとえば溶剤を添加しなかったために高すぎる場合、十分な量のITOを分散させることはできない。たとえばヘキサンジオールジアクリレート60部、ペンタエリトリットトリテトラアクリレート40部からなる調製物はITO約30〜40部で充填することができるに過ぎない。この充填剤量を超えると、塗料は粘性になりすぎてその他の、適切な分散剤を添加しなくては加工することができない。
【0074】
適切な塗布技術は、たとえばローラー塗布および噴霧塗布である。塗料の浸漬または流し塗りはあまり適切ではない。
【0075】
特別な実施態様:
塗料は適切なモノマーの選択により、空気(空気酸素)の存在下で良好な硬化が保証されているように調整することができる。例はプロパントリオールトリアクリレートと硫化水素との反応の反応生成物(Roehm GmbH & Co.KG社のPLEX 6696)である。塗料は窒素雰囲気下で、または少量の光開始剤により確かにより迅速に硬化するが、しかしたとえば適切な光開始剤、たとえばIrgacure 907を使用する場合には空気中での硬化もまた可能である。
【0076】
これはたとえばSiOナノ粒子を塗料マトリックス中に混合することにより行うこともできる。適切な生成物は単分散性ナノ粒子であり、これはたとえばClariant社から名称Highlink OGでオルガノゾルの形で市販されている。同様にDegussa社から名称Aerosilで市販されている熱分解法シリカも適切である。特に有利には微粒子状の分解された熱分解法シリカを使用する。というのも、これらは塗料の粘度にほとんど影響を与えないからである。分解されたシリカには、DegussaのAerosil法により数ナノメートルから数百ナノメートルの大きさの一次粒子のアグリゲートとして製造され、かつ適切な製造パラメータの選択により、または後処理により粒径に関してその二次構造および三次構造をほぼ、または完全に百ナノメートルを下回るレベルとされている製品が挙げられる。この特性像を満足する生成物は、Degussa社によりEP0808880B1に記載されている。
【0077】
そのつど乾燥塗膜(つまり溶剤を含有していない塗料の組成)に対して(不活性)ナノ粒子10〜40%およびITO20〜50%の含有率を有する塗料は良好に硬化可能な塗料であることが判明した。該塗料は機械的に安定しており、かつプラスチック支持体上に良好に付着する。
【0078】
意外なことに、不活性無機粒子、たとえばSiOナノ粒子また酸化物ベースのは別のナノ粒子を含有する塗料は、良好な付着性を有し、かつ良好な導電性が低下しない。
【0079】
充填剤粒子が酸化インジウムスズ粒子をいわば導体路に類似の構造へと強制し、このことによって電気伝導の効率は導電性粒子の濃縮によって改善されることを出発点とする。このことによりITO濃度を同一の導電性で低減することができる。
【0080】
Clariantから、名称Highlink OGで市販されているオルガノゾルは一官能性もしくは二官能性のモノマーを含有しており、該モノマーは場合により別の官能基を有していてもよい。同様に有機溶剤、たとえばアルコール中のオルガノゾルが適切である。好適なモノマーはたとえばヘキサンジオールジアクリレートおよびヒドロキシエチルメタクリレートである。モノマーはできる限り少量の重合防止剤を含有すべきである。適切な安定剤はDegussa社のTempolまたはフェノチアジンである。一般にモノマーは<500ppmの、有利な実施態様では<200ppmの、および特に有利には<100ppmの安定剤濃度を有するのみである。安定剤濃度は被覆可能なUV塗料中で反応性成分に対して、200ppm未満、有利には100ppm未満、および特に有利には50ppm未満であるべきである。選択される安定剤濃度は、選択される重合可能な成分の種類と反応性とに依存する。特に反応性の成分、たとえば多くの多官能価アクリレートまたはアクリル酸は比較的高い安定剤量を必要とし、反応性が比較的わずかな成分、たとえばモノ官能性メタクリレートは比較的少ない安定剤量を必要とする。安定剤としてTempolおよびフェノチアジン以外に、たとえばヒドロキノンモノメチルエーテルも考えられ、その際、最初の2つの安定剤は酸素の非存在下でも有効であり、かつ10〜100ppmの極めて少量で使用されるのみである一方、後者の化合物は酸素の存在下でのみ有効であり、かつ50〜500ppmの量で使用される。
【0081】
組成の選択によって塗料は耐引掻性、耐薬品性または可とう性および変形可能となるように調整することができる。架橋剤含有率はこのために適切な方法で適合させる。たとえばヒドロキシエチルメタクリレートの含有率が高い場合、困難な下地、たとえば注型された高分子のPMMA上での付着および同時に変形性は改善される。ヘキサンジオールジアクリレートの含有率が高い場合には、耐薬品性および耐引掻性が向上する。
【0082】
さらに良好な耐引掻性および耐薬品性はさらに高官能性のモノマー、たとえばペンタエリトリットトリテトラアクリレートにより達成される。この場合、塗料の組成は全ての要求される特性の所望の組み合わせが得られるように変更する。
【0083】
変形性を高め、かつ付着性を改善するためのもう1つの可能性は、二重結合の含有率により反応性にも、あるいはまた非反応性にも選択することができるオリゴマーもしくはポリマーの成分の使用である。高分子の成分を使用することによって、硬化の際の塗料の架橋密度および収縮が低減し、このことによって一般に改善された付着性が達成される。
【0084】
適切なポリマーの成分は、たとえばメタクリレートおよびアクリレートならびに官能性モノマーからなっていてもよいポリ(メタ)アクリレートである。官能基を有するポリマーは、付着性の改善に付加的な貢献をするために使用することができる。適切なポリメタクリレートの1例は、Roehm GmbH & Co.KG社の、PLEX 8770 Fであり、これは分子量のための尺度として11±1の粘度数J[ml/g](20℃でCHCl中)を有する。
【0085】
オリゴマーまたはポリマーの添加剤は分子量に応じて異なった量で添加することができる。塗料の全粘度は加工を可能にするように、高分子のポリマーは相応してわずかな量で、および低分子量の製品は比較的大量に添加される。ポリマーの添加剤は同時に増粘剤としても作用し、かつナノ粒子を浮遊させておくため、および被覆後の粒子の不所望の沈殿を防止するためにも利用される。
【0086】
このようにして、表面における、特に層の最上部の200nmにおいてITO濃度がバルク中または支持体に対する相境界面よりも実質的に少ないことがないことが保証される。この措置のもう1つの重要な側面は、増粘剤の添加による支持体付着性の改善である。このための説明は、増粘剤により生じる、支持体への相境界面におけるITO濃度の低減はこのことによって同時に相境界面におけるバインダー濃度を十分に高く維持するということである。というのも、バインダーは良好な支持体付着に貢献するからである。しかし本発明は特定の理論に確定すべきではない。これに対して無機充填剤、たとえばITOにより支持体付着は支持体とバインダーとの接触面積の低減によって、特にこれらが塗料−支持体の相境界面へ沈殿することによってここで富化される場合には劣化する。
【0087】
製造法:
重要なことは、ITO粒子の良好な粉砕/分散が保証されるように塗料粘度を調整することである。これはたとえば粉砕媒体としてガラス球を用いてローラーベッド上で分散させることにより行うことができる(DE10129374を参照のこと)。
【0088】
ITOナノ粒子の分散は、塗料中で強制搬送装置と接続されている特殊な組み合わせの攪拌および分散装置、たとえばHaagen und Rinau GmbH社のUnimix LM6によって行うこともできる。組み合わされた攪拌および分散装置により十分に良好な分散を、ITO凝集体を破壊することなく達成するために、攪拌条件は、ナノ粒子のアグロメレートが十分に小さいアグリゲートへと粉砕されて、被覆の良好な透明性が生じるように調整しなくてはならない。十分な透明性のために、アグリゲートは可視光のラムダの4分の1よりも小さくあるべきである、つまり100nmより大きくてはいけない。混合物を強く、または長く剪断しすぎると、導電性に著しく貢献するアグリゲートが破壊され、かつパーコレーション網目構造はもはや正しく構築されなくなる。パーコレーション網目構造に対する剪断の影響についての示唆はたとえばHans J. Mair、Siegmar Roth(編)、Elektrisch leitende Kunststoffe、Hanser Verlag、1986およびIshihara Functional Materials、Technical News、T−200 Electroconductive Materials、Ishihara社の社報に記載されている。
【0089】
従って本発明の重要な点は、アグリゲートがパーコレーション網目構造に維持され、かつラムダの4分の1より大きい粗粒状のアグロメレートは粉砕されるように剪断を調整することである。
【0090】
このことは、分散装置および分散条件の選択により、組成物の適切な粘度の選択により、および場合により適切な添加剤の添加により行う。
【0091】
適切な添加剤はたとえばEP281365(日本油脂)に記載されている。
【0092】
電流の伝導のためのモデル
帯電防止作用は、パーコレーション網目構造が、数珠状に並んだ、接触する導電性の粒子から構成されている場合に最適に展開されうる。比較的高価なITOのコストパフォーマンス比はこのことにより最適化される。同時に被覆の透明性が改善され、かつ曇りが低減する。というのも、散布粒子の含有率を最小化することができるからである。パーコレーション境界は粒子の形態に依存する。球形の一次粒子が想定される場合には、約40質量%のITOでパーコレーション境界が達成される。針状のITO粒子を使用する場合、粒子の十分な接触はすでにより少ない濃度で行われる。しかし針状の粒子は透明性および曇りに対して不所望の作用の欠点を有する。
【0093】
従って不活性ナノ粒子の使用により、パーコレーション網目構造の形成のために必要とされるITOの量を低減することが本発明の課題である。同時に全系の透明性は不活性ナノ粒子の添加下で損なわれず、かつ系のその他の有利な特性、たとえば比較的大きな硬度、より良好な変形性、良好な支持体付着性という特性を失うことなく、空気酸素下での硬化性がもたらされる。
【0094】
実施例において、ナノ粒子の使用によりすでにITO33%で、塗料中にナノ粒子を含有していないITO50%の場合と同様に良好な導電性が達成されることが示される。
【0095】
被覆技術:
被覆のための方法は、塗料を薄く均一な厚さで塗布することができるように選択しなくてはならない。適切な方法はたとえばワイヤーナイフ、浸漬、刷毛塗り、ローラーおよび噴霧塗布である。当業者に公知の方法により塗料の粘度は、湿潤フィルムにおける膜厚が、場合により添加された溶剤を蒸発させた後で2〜15μmであるように調整しなくてはならない。より薄い層はもはや耐引掻性ではなく、かつ塗料マトリックスからの金属酸化物粒子の突出により艶消し効果を示しうる。より厚い層は透明性の損失と結びついており、導電性における利点はもたらされず、かつコストの理由から有意義ではない。しかし恒常的な機械的負荷による塗料表面の摩耗の理由から、より厚い層を調整することは有意義な場合がある。この場合、100μmまでの膜厚も調整することができる。その際、場合により塗料の粘度をより厚い層の製造のために上昇させなくてはならない。
【0096】
硬化:
十分な硬化を達成するために、光開始剤の種類および濃度も適合させるべきである。場合により、塗料の十分な表面および深さ方向の硬化を得るために、光開始剤の組み合わせが必要である。特に金属酸化物粒子による高い充填度の場合、通例の光開始剤(たとえばCiba社のIrgacure 1173またはIrgacure 184)と、長波領域で吸収する光開始剤(たとえばBASF社のLucirin TPOまたはLucirin TPO−L)との組み合わせは、十分な深さ方向の硬化を得るために有意義である。透明な支持体の場合、場合により被覆された支持体を上側および下側から、使用されるUV線による照射によって硬化させることは有意義である。必要とされる開始剤濃度は、光開始剤0.5%〜8%、有利には1.0〜5%および特に有利には1.5〜3%である。この場合、不活性ガス下での硬化の際にアクリレートに対して0.5〜2%の光開始剤量で十分であるが、他方、空気中での硬化の場合、2〜8%、有利には4〜6%の量が必要である。有利には、塗料中でできる限り少ない分解生成物を生じるために、できる限り少ない開始剤濃度を使用する。というのも、開始剤は長時間耐候性にとって否定的な影響を与えるからである。経済的な理由からもできる限りわずかな開始剤量の使用が有意義である。
【0097】
紫外線による硬化の代わりに、その他の高エネルギー線による被覆の硬化も可能である。適切な方法は電子線による照射である。紫外線に対するこの方法の利点は、厚い層の良好な硬化および雰囲気酸素の存在下で、かつ光開始剤を使用しないでより迅速に硬化することができる可能性である。放射線エネルギーは層の十分な硬化の際に、支持体の損傷または黄変が生じないように調整しなくてはならない
収縮の少ない調製物:
本発明の重要な側面は、塗料の収縮の少ない硬化である。当然のことながら、UV硬化性塗料は放射線硬化の際に収縮し、このことによって塗料表面は不所望な影響をうけることがあり、かつ支持体への付着は失われうる。モノ官能性、二官能性および多官能性のモノマーもしくはオリゴマーの比率、無機充填剤およびポリマー充填剤および添加剤の適切な選択により塗料の収縮は最小限に低減することができる。重合に関与しない不活性充填剤、たとえば金属酸化物、たとえば酸化インジウムスズ、二酸化ケイ素または非反応性のポリマー成分は組成物の全収縮を低下させ、他方、一価のモノマーおよびオリゴマーは中程度に収縮し、かつ多価のモノマーは収縮への著しい貢献をもたらす。
【0098】
収縮の少ない調製物はたとえば、多価成分の割合が一定のレベルを超えないことにより得られる。この考察において、分子量、官能基の数および収縮の関連性に注意しなくてはならない。低い分子量を有する多価の成分は、当然のことながら最も高い収縮を有する一方で、高い分子量を有する一価の成分は収縮に対して最もわずかな貢献をもたらす。
【0099】
収縮の少ない調製物のための例は次のものからなる組成物である:
例1:
溶剤、たとえばエタノールまたはイソプロパノール 100部、
ヒドロキシエチルメタクリレート 35部、
SiOナノ粒子 1) 15部、
酸化インジウムスズナノ粒子 50部、
光開始剤 2部、
および場合によりその他の添加剤。
【0100】
一定の可とう性を有する付着性が良好な被覆が得られる。従ってたとえばこれにより被覆したPMMAフィルムは一定の度合いまで変形するか、または曲げることができる。SiOナノ粒子はたとえばClariant社から名称Highlink OGの名称で市販されている、ヒドロキシエチルメタクリレート中の無機ナノ粒子のオルガノゾルの形で使用することができる。前記の調製物による被覆は機械的に安定しているが、しかし耐引掻性ではない。このような被覆の耐引掻性はオルガノゾルの一部を二官能性もしくは多官能性のアクリレートと置換することによって高めることができる。耐引掻性で収縮の少ない調製物のための1例は次の組成物である:
例2:
溶剤、たとえばエタノールまたはイソプロパノール 100部、
ヒドロキシエチルメタクリレート 17.5部、
SiOナノ粒子 1) 7.5部、
ヘキサンジオールジアクリレート 25部、
酸化インジウムスズナノ粒子 50部、
光開始剤 2部、
および場合によりその他の添加剤。
【0101】
1) オルガノゾルとして、安定剤100ppmを含有するHighlink OG 100−31(Clariant社製)。
【0102】
良好な付着性のための前提は、特に低い安定剤含有率を有するオルガノゾルの使用である。たとえば前記の例ではそのつど安定剤Tempol(R)もしくは安定剤フェノチアジン100ppmを含有するオルガノゾルを使用した。市販の高安定化オルガノゾル(フェノチアジン500ppm)を用いた塗料に対して、良好な付着性(碁盤目試験GT=0)および不活性ガス(窒素)下ならびに空気雰囲気下での良好な付着性が得られた。
【0103】
塗料中の安定剤の含有率をできる限り低く維持するために、代替的に有機溶剤、たとえばアルコール中のSiOナノ粒子の安定剤不含のオルガノゾルも塗料マトリックスへのナノ粒子の導入のために使用することができる。
【0104】
収縮に対する硬化条件の影響:
収縮は調製物による以外に、適切な硬化条件の選択によっても影響を与えることができる。有利であるのは比較的小さい照射エネルギーを用いたゆっくりした硬化であり、他方、迅速な硬化および大きな照射エネルギーの場合には高い収縮が観察される。
【0105】
有利な硬化条件はFusion社の120ワット/cmおよび1〜3m/分の移動速度で焦点照射を有する照射装置F450の使用および光開始剤2%の含有率で窒素雰囲気下である。
【0106】
塗料の耐引掻性:
本発明のもう1つの特徴は、帯電防止塗料の良好な耐引掻性である。記載の硬化条件を選択する場合、わずかな収縮および良好な付着性を有する耐引掻性の帯電防止塗料を製造することができる。
【0107】
ITO33〜50%の含有率を有する本発明による塗料はこれらの条件下で、フリクションホイールCS 10Fおよび5.4Nの加重を有するテーバー摩耗装置上、100回転での試験後に<2%のデルタヘーズの耐引掻性が達成される。
【0108】
塗料の耐薬品性:
本発明による塗料は化学薬品、たとえば無機酸およびアルカリに対して短い作用時間で、多数の有機溶剤、たとえばエステル、ケトン、アルコール、芳香族溶剤に対して良好な安定性を有する。本発明による塗料により被覆したプラスチック成形体はたとえばこれらの溶剤を用いて必要に応じて洗浄することができる。
【0109】
耐候性および調製物:
安定剤が少ない調製物を使用する特別な利点は、空気雰囲気下で硬化させることができ、かつこのことによって不活性化のためのコスト(装置的なコストおよび不活性ガス消費のための継続的なコスト)を低減することができる可能性である。もう1つの利点は、比較的少量の光開始剤ですでに良好な硬化を達成することができることである。実施例においてあげられた調製物ならびにSiO粒子が使用されておらず、かつオルガノゾルの代わりにモノ官能性もしくは多官能性モノマーもしくはこれらの混合物を使用した調製物は、そのつど光開始剤、たとえばIrgacure 184、Irgacure 1173、Irgacure 907またはこれらの混合物2%を用いて耐引掻性で耐候性の調製物へと硬化する。
【0110】
例3:
溶剤、たとえばエタノールまたはイソプロパノール 100部、
ペンタエリトリットトリテトラアクリレート 40部、
ヘキサンジオールジアクリレート 60部、
酸化インジウムスズナノ粒子 50部、
SiOナノ粒子 5部、
光開始剤 2部
および場合によりその他の添加剤。
【0111】
例4:
例3と同様であるが、ただし:
PLEX 8770(増粘剤) 5部、
ペンタエリトリットトリテトラアクリレート 20部、
ヘキサンジオールジアクリレート 75部。
【0112】
前記の調製物に、耐候性の向上のためにさらにUV保護剤を添加することができる。その際、UV保護剤は放射線硬化を妨げないよう注意すべきである。
【0113】
本発明による有利な実施態様では電子線により硬化させる。このことにより、UV吸収剤とUV光との間の不所望の相互作用が現れることを回避する。
【0114】
放射線源としてUVランプを使用する場合、たとえば長波のUV光を、スペクトルの長波領域またはスペクトルの可視光領域で吸収する光開始剤と組み合わせて使用することができる。UV吸収剤は、放射線硬化のために十分な量の高エネルギー光が塗料に到達するように、光開始剤の吸収領域で完全に吸収してはならない。通常のUVランプ、たとえばFusionシステムまたはIST照射技術により作業すべき場合、光開始剤を励起するため、UV線の透過のために吸収領域で十分に大きな窓を有するUV吸収剤を使用することができる。適切なUV吸収剤は、Norbloc 7966、Tinuvin 1130である。
【0115】
前記の措置を組み合わせることにより、特に少量の光開始剤の使用により、耐候性で寿命の長い被覆を製造することが可能である。少量の光開始剤は分解生成物の少ない含有率を条件付け、このことによりその移行のための腐食箇所がほぼ存在しない。従って前記の塗料は人工的な促進耐候試験(DINによるキセノン試験)でその付着性、耐引掻性および良好な透過率を失うことなく5000時間以上を耐えた。
【0116】
プラスチック成形体は窓ガラスまたは窓ガラス部材として、容器のため、医療、生物学および、マイクロエレクトロニクスの分野におけるクリーンルームの設備のため、装置カバーのため、インキュベータのため、ディスプレイのため、視覚表示スクリーンおよび視覚表示スクリーンカバーのため、背面映写スクリーンのため、医療用機器のため、および電気機器のためにシールドとして使用することができる。
その他の適用
透明な適用以外に帯電防止被覆は、不透明な支持体上でも使用することができる。その例は次のものである:帯電防止性のプラスチック床、一般的に木材、紙装飾のような支持体上の帯電防止の耐引掻性フィルムの積層。もう1つの適用は電子線下での硬化による装飾紙の被覆である。このような系のための別の適用はたとえば携帯電話のためのディスプレイであり、この場合、層がその付着性を失うことなくフィルムをカント除去(abkanten)
または変形することができる。もう1つの例は、可とう性でない平坦な、または立体的な支持体上、または場合により可とう性の支持フィルム上でのプラスチックフィルムからなる積層体である。このようなフィルムはたとえば装飾用フィルムとして使用することができる。
【0117】
PCSを用いた(超音波による)粒径の測定
1.試薬
蒸留水または脱塩水、pH>5.5
【0118】
2.装置
Pendraulik社の回転数測定装置を有する実験室用溶解機(Labordissolver)LR 34、31832 Springe 1、分散板、直径40mm、
Dr.Hielscher社の超音波発生装置(Ultraschall−Prozessor) UP 400 S、70184 Stuttgart、チタン製のSonotrode H7、直径7mm、
Retsch Technology社の粒径分析装置HORIBA LB−500、42781 Haan、アクリル秤量キュベット 1.5mlを有する、
Hoechst AG社のDose Hoechst、識別番号22926、内容量250ml、DD−PE、ナチュラル0/0021、Hoechst AG社、
Abt.EK−Verpackung V、Brueningstr.64、 65929 Frankfurt−Hoechst、容器のためのフタ、250ml、識別番号22918、
パスツール・ピペット、3.5ml、長さ150ml、注文番号1−6151、
精密秤(精度0.01g)。
【0119】
3.1%分散液の製造
粉末試料(約10〜100g)を手で振とう(30秒)することによって貯蔵容器中で均質化する。空気抜きのために該試料を少なくとも10分間、放置する。
【0120】
粉末の秤量は精密秤で行う(精度0.01g)。粉末1g(±0.02g)をPE容器に充填し、かつ脱塩水を加えて100g(±0.02g)とする。
【0121】
試料の分散
試料を実験室用溶解機によりフタをしたポリ容器中、2000回転/分で5分間、前分散させ、引き続き80%の振幅およびサイクル=1で超音波を用いて4分間分散させる。
【0122】
4.粒径分布の測定
理論:試験法は光子相関分光分析法(PCS、動的光散乱法)による粒径分布の測定を記載する。この方法は特に、サブミクロンの範囲(10nm〜3μm)の粒子およびアグリゲートを測定するために適切である。使用装置であるHORIBA LB−500は後方散乱光学素子を使用し、その際、単一散乱および多重散乱の間の比はほぼ一定であり、かつ従って無視することができる。この理由から比較的高い濃度を有する分散も、誤測定を生じることなく測定することができる。粒径分布の正確な測定のためには次のパラメータが知られていなくてはならない:
●分散の温度:一定の温度は、キュベット中での、粒子の自由な移動に重畳しうる対流移動を排除するために重要である。HORIBA LB−500はキュベット中の温度を測定し、かつ測定された温度を評価の際に考慮に入れる。
●分散媒体の粘度:希釈系の場合には、たとえば純粋な溶剤で25℃での粘度は周知であるために重要ではない。高すぎる濃度は、分散液の粘度が液相(通常は水)の粘度を上回る場合に問題である。というのも、この場合、粒子の移動が制限されるからである。この理由から測定は通常、約1%の固体濃度で実施される。
●粒子および分散媒体の屈折率:これらの数値は固体および溶剤の大部分に関してHORIBAのソフトウェアにリストアップされている。
●分散液は沈殿に対して安定していなくてはならない。キュベット中での沈殿は粒子の付加的な移動を生じるのみでなく、沈殿によって測定中の散乱光強度が変化する。更にこれにより分散液中で、キュベットの底に蓄積する比較的大きな粒子の濃度が低下する。
【0123】
測定:測定装置はコンピュータープログラムにより制御され、該プログラムは測定信号の評価も行い、かつ測定結果の保存および印刷も可能である。そのつどの測定/測定列の前に、ソフトウェア内で次の調整を行わなくてはならない:
●粒子および媒体の屈折率の入力、
●分散媒体の粘度の入力、
●試料に関する記載およびコメント。
【0124】
溶解機および超音波により分散した試料をパスツール・ピペットで1.5mlのアクリルガラス秤量キュベットへ移す。これをPCS装置の測定室へ差し込み、かつ温度センサを上から分散液へ導入した後、ソフトウェアを用いて測定を開始する(「測定」ボタン)。20秒の待機時間の後、窓「測定表示」が開き、その中に実際の粒子の分布が3秒ごとに表示される。窓の測定表示中の測定ボタンを再度押すと、実際の測定が開始される。前調整の後にそのつど、種々の測定結果を有する粒子の分布(たとえばd50、d10、d90、標準偏差)が30〜60秒後に表示される。d50値が著しく変動する場合(たとえば150nm±20%、これは極めて広い分布の場合に現れる)、測定を約6〜8回実施するが、その他は3〜4回で十分である。
【0125】
5.d50値の表示
すべての測定されたd50値の平均値(デシマル箇所なし)が、nmの明らかな逸脱値以外は表示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形体を1面もしくは複数面において塗料系により被覆することにより、プラスチックからなる成形体を製造する方法において、該塗料系は
a)バインダーまたはバインダー混合物、
b)場合により溶剤または溶剤混合物、
c)場合により塗料系において慣用されている別の添加剤および
d)増粘剤、この場合、そのつどの乾燥塗膜(成分a、c、d、e)に対してポリマーの増粘剤を0〜20%の含有率で、およびオリゴマーの増粘剤を0〜40%の含有率で使用することができ、
e)1〜80nmの平均一次粒径および百分率で0.01〜99%の凝集度を有する、導電性の金属酸化物、粉末、分散液および/またはゾルをa)に対して5〜500質量部、
f)不活性ナノ粒子をa)に対して5〜500質量部
からなり、自体公知の方法により被覆し、かつ塗料を硬化させる、プラスチックからなる成形体の製造方法。
【請求項2】
塗料(a)〜c))が、5〜500mPa・sの粘度(ブルックフィールド粘度計LVTにより測定)を有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
塗料系(請求項1に記載の成分a)〜e))が150〜5000mPa・sの粘度を有することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
不活性ナノ粒子としてSiOナノ粒子を使用することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
導電性の粒子としてITOおよび/または酸化アンチモンスズATOおよび/またはドープされたITOからなる混合物を使用することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の方法により得られるプラスチック成形体において、該プラスチック成形体がPMMA、PC、PET、PET−G、PE、PVC、ABSまたはPPからなることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法により得られるプラスチック成形体。
【請求項7】
窓ガラスとして、容器のため、クリーンルームの設備のため、装置カバーのため、インキュベータのため、ディスプレイのため、視覚表示スクリーンおよび視覚表示スクリーンカバーのため、背面映写スクリーンのため、医療用機器のため、および電気機器のための請求項6記載のプラスチック成形体の使用。

【公表番号】特表2007−510052(P2007−510052A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538664(P2006−538664)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008827
【国際公開番号】WO2005/047376
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(390009128)レーム ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング  (293)
【氏名又は名称原語表記】Roehm GmbH 
【住所又は居所原語表記】Kirschenallee,D−64293 Darmstadt,Germany
【Fターム(参考)】