説明

常に同一の水平線上にある水槽と水面計の二つの水面を計測の基準とするレベル測定器

【課題】水位を簡単に指定の高さに設定でき、水面計からのオーバーフローを防止しできるレベル測定器を提供する。
【解決手段】水槽を任意の場所に設置できると共に、水槽の高さの調整とその水位を微調整できるようにするジャッキ付き三脚を設けた。また、水面計からのオーバーフローを防止する為、水面計の上部に浮力バルブを設けた。更に、水位一定と見做せる誤差の値を決め、これに対し適切な水面計および水槽の選定方法を表した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジャッキ付き三脚に水面の面積が大の水槽を組み込み、この水槽の底部と水面面積が小の水面計を長尺ホースで連結したもので、常に同一の水平線上にあって、尚且つ、水位も常に一定である、と見做せるようにしたこの二つの水面を指定の高さに設定し、水面計の水面と様々な場所に配置された対象物や線との直接の比較をして、レベルを出したり、或いは、高さを測ったりするレベル測定器に関するものであります。
主に建築の外装や内装工事、機械の据付工事、土木工事、及び、測量作業等々、にて使用します。
【背景の技術】
【0002】
従来の器具に、下水管の推進工事に使用される水盛り法があります。
柱に固定した水槽の底部と下水管に固定した水面計を水道ホースで連結したもので、水面計内の水面位置の変化幅で下水管の勾配を見るのです。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上に述べた従来の器具は、次に示す問題があります。
その第一、上述した機器は、水槽を様々な場所に設置したり、水槽自体の高さを自在に換えたり、また、その水位を簡単に指定の高さに設定したりする事ができない為、水面計の水面と様々な場所に在る対象物や線とは、直接の比較をする事ができません。
従い、水面の位置を墨腺という新たな基準を設けて、これに移項しスケールで比較せねばなりません。これでは、不便ですし計算ミスも多くなります。
この直接の比較は、現在のオートレベルやレーザーレベルでもできません。
計測の基準となる機器の中の線や光線は、水平と高さの二つを同時に設定できないからです。最大の弱点なのです。
【0004】
第二の課題、水面には大気圧が必要ですので水面計の上部もオープンです。
従い、水面計を水槽の水面位置より下げるとオーバーフローをします。
これでは、移動や取り扱いに気を使いますし、水の補充も大変です、
【0005】
第三の課題、従来のものは、誤差や誤差の表示を無視されましたので、精度不明であることが問題です。
水面計のみを下水管と共に移動させ、その水面位置の変化で勾配を計測するものですので、管内の水面は、ほとんど設定した位置にはありません。
この場合、水面計からの水が水槽に出入りしますので水位が変わります。
よって、水槽と水面計の二つの水面は常に同一の水平線上にあっても、その水位は常に一定とは言えません。誤差があるのです。
従い、水位も常に一定である、と見做せる誤差や水面計の水面面積、及び、有効長さを決め、そして、これに対し最適な水面面積を有する水槽の寸法を算出することが必要です。
これを怠られた為、精度を疑われたのです。
【0006】
本発明は、このような従来の機器が有していた問題を解決しようとするものであり、建築や土木や測量等々、多種多様な用途に適用できるレベル測定器の実現を目的とするものであります。
同時に、現在の主流であるオートレベルやレーザーレベルを凌ぐものにする事も大きな目的であります。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記、第一の課題を解決する手段として、水槽自体の高さを自在に調整し、また、その水位を微調整するジャッキ付き三脚を設けました。
これは、任意の場所に設置したりする事もできるものです。図1
これにより、水面は、水平と同時に高さの設定もできるものとなりました。
そして、水面計や水槽、及び、ホースは軽量化コンパクト化を図りましたので、一人で持ち運びができます。
これにより、何処でも水槽の設置ができますし、水槽と水面計の水面を指定の高さに設定出来ますので、対象物や線との直接の比較が可能となりました。
尚、高所に位置する天井のフレーム等のレベル出し作業や水槽の設置場所を頻繁に変更する測量作業等においては、三脚に代えて水槽や水位調整装置を組み込めるようにした伸縮ポール付きキャリアカートを用います。図4
【0008】
また、第二の課題を解決する手段として、水面計3の開口部に浮力バルブ10を設けました。浮力によって開口部を塞ぎオーバーフローを防止します。
この働きについては、後述の
【0022】
で説明します。
【0009】
第三の課題の解決する手段は、まず、水位の誤差を決め表示する事です。
この誤差の数値は、水位も常に一定である、と見做せられる事です。
勿論、計測時に水面計の水面がその有効範囲に位置するなら、です。
水位の誤差=0,05mm とします。
【0010】
次に、この誤差を保持する水面計や水槽の寸法を選択します。
先に水面計の有効長さや口径を決めますが、水面計やこれに繋ぐホースは、持ち回って作業するものですので、軽量でコンパクトなものが望まれます。
設定する水面位置を0mmとし、水面計に印字します。
水面計の有効長さ100mm、0mmを基点として上下50mmとします。
水面計の内径は、6mmとします。 水面面積は =28,26平方mmです。
次に誤差と水面の面積倍率、及び、水面計や水槽の関係式を示します。
水面の面積倍率= 水面計の有効長さ/誤差
= 100 / 0、05mm
= 2000
水槽の水面面積= 水面の面積倍率×水面計の内径面積
= 28,26×2000=56520平方mm以上あれば良いのです。
よって、水槽の内寸法は、例えばヨコ250mmでタテが227mmとなります。
水槽の高さは、ホースや水面計への供給量を考慮し200mmと決めます。
【0011】
この水面計と水槽を用いて計測する場合、水面の位置と誤差の関係は次のようになります。
設定した水面位置のまま計測した場合、誤差はありません。0mmです。
次に設定した水面位置に対し、上50mmの位置で計測した場合と下50mmの位置で計測した場合では、その最大誤差は0,05mmとなります。
これにより、誤差は0,05mm以内であるので、充分に水位も常に一定と見做せるものとなりました。また、高精度の測定器であることも証明しました。
尚、上記の誤差の数値や水面計や水槽の寸法は、計測の対象物や用途により変える場合があります。
【発明の効果】
【0012】
上述したように本レベル測定器の水槽と水面計の二つの水面は、水平と高さの二つを同時に設定できますので、水面計の水面と対象物や線との直接の比較が可能となりました。オーバーフローもしませんし、誤差の数値も明示しますので、便利で使い易い測定器となりました。
これにより、幅広い用途に使用する事ができます。
【0013】
また、一人作業ができます。
水槽や水面計やホースは、小型化、軽量化を図りましたので、移動や設置が容易ですし、オーバーフローによる水の補充も不必要です。
従い、全ての作業が一人でできます。
また、治具を設けて水面計を機械やフレーム等に取り付けられるようにすれば、手を使わずに水面と対象物との比較ができます。自由な両手で調整作業ができますので、一人、三役も可能なのです。
【0014】
また、計測の基準である水面位置が一目瞭然ですので、監督者始め作業者全員が何時でも計測作業やチェック作業をする事ができます。
素人でも可能です。
【0015】
また、水位の誤差が最大0、05mmは、比類なき高精度の測定器の証です。
【0016】
また、水槽と水面計がホースで連結されているかぎり、遮蔽物がある場所、或いは、遠く離れた所でも作業をすることが可能です。
この為、水槽は邪魔にならない場所に設置する事もできます。
【0017】
また、水槽の下側面に設けた三個のプラグにホースを連結すれば、同時に四箇所のレベルを見る事も可能です。
【0018】
また、設置したレベル測定器を四六時中、見張る必要がありません。
少々の事では故障したり、破損したりする事がないからです。
【発明を実施する為の最良の形態】
【0019】
以下、本発明の構成による実施の形態を図1から図2に基づいて説明します。
【0020】
図1において、レベル測定器の全体図です。
ジャッキ付き三脚1に水槽2を取り付け、この底部と水面計3を長尺ホース4で連結した構成となっているものです。
【0021】
図2においては、水面計3の詳細図です。これには、天井の高さや地面の高低差を測ったりする場合に用いるスライドスケール18をブラケット17に取り付けた状態のものを記載しました。また、通常のレベル出し作業時には、スライドスケール18は、はずしておきます。
【0022】
また、図2のC−C矢視においては、浮力バルブ10の働きを示したものです。
左図は、水面計3を水槽2の水面より下にした場合で、浮力を受けた浮力体15が上昇するとオーリング16により開口部を塞ぎますので、オーバーフローを防止する事ができます。
右図は水面計3を上に揚げた場合で、水面の下降と共に浮力体15も下降しますので、開口部より空気が流れ込み測定可能状態を示したものです。
【0023】
以下、本発明の使用方法を機械のレベル出し作業を例に挙げて説明します。
尚、図1から図2に基づきます。
工事仕様書には、機械上面の高さはFL+1450mmで、その精度は+−0,5mm以内にするよう指定されています。
また、柱12には、FL+1000mmの基準墨線が与えられています。
【0024】
図1において、柱12のFL+1000mmにスケールをあて、450mm上がった処に墨腺を入れます。この墨腺が、FL+1450mmで指定の高さです。
【0025】
柱12のそばに、水槽2組み込んだジャッキ付き三脚1を設置します。
次に、水槽2の水位計5の水面を見ながら、三脚1の脚を上下させ概略の高さにあわせます。
水面計3を持ってFL+1450mmの墨線上にあて目盛り線0を重ねます。
次に、ジャッキハンドル6を回して水槽2を上下させ、水面計3内の水面を0の目盛り線に合わせます。 図1におけるA部拡大図
そして、指定の高さ1,450mmの墨腺と水面計3の0の目盛り線、及び、その水面が一致した状態を設定水位と言います。
【0026】
次に、水面計3を持って移動し、機械13の上面に直接あてます。水面の高さは、1450mmですのでこれとの比較をします。クサビ14で機械13を上下させ水面に合わせます。 図1におけるB部拡大図
機械13の四隅、及び、必要箇所に繰り返し水面計3をあて水面と高低差を確認します。一致した時、レベル出しが完了します。
比較作業中、水面計の水面が0の目盛り線に対し、上下に50mm以内に位置しておれば、理論上の誤差は0、05mm以内となります。
【0027】
次に天井の高さを測る方法について、その高さが2900mmである場合を事例に挙げ説明します。設定の方法は、
【0025】
に準じますが、その設定水位は、基準墨腺、FL+1000mmに合わせます。 図1、図2、図3に基づきます。
【0028】
次に水面計3のブラケット17にスライドスケール18を取り付け、その目盛り1900mmを水面計3の0の目盛り線に合わせます。計測の準備作業が済みました。 図2のD部詳細
【0029】
水面計3を持って現場に移動し、スライドスケール13の先端を天井に押し付けます。天井の高さが低い場合、水面は水面計3の上部に位置します。
高い場合は逆になります。 図3におけるE点、F点。
水面位置にカーソル20を合わせ、スライドスケール18の目盛りを読み、1000mmを加えれば天井の高さを直接、測る事ができます。
また、地面の高さを測る場合や基礎の高低を知りたい場合等は、スライドスケール18を逆の下方向に取り付け、同様の手順で作業をします。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明、レベル測定器の全体図
【図2】同レベル測定器の水面計3の正面図、側面図
【図3】同レベル測定器を使用して天井高さを計測している図、側面図
【図4】高所に位置する対象物に対し、伸縮ポール付きキャリアカートを用いてレベル出しをしている図、側面図
【符号の説明】
【0031】
ジャッキ付き三脚1、水槽2、水面計3、長尺ホース4、水位計5
ジャッキハンドル6、コック7、バルブ8、プラグ9、浮力バルブ10、
蓋付き空気口11、柱12、機械13、クサビ14、浮力体15、オーリング16、
ブラケット17、スライドスケール18、水面管19、カーソル20、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジャッキ付き三脚に水面の面積が大の水槽を組み込み、この水槽の底部と水面面積が小の水面計を長尺ホースで連結したもので、三脚とジャッキによって二つの水面を指定の高さに設定し、水面計の水面と様々な場所に配置された対象物や線との直接の比較をして、レベルを出したり、或いは、高さを測ったりするレベル測定器
【請求項2】
水槽を組み込んだ伸縮ポール付きキャリアカートによって、その水面を高所に位置する対象物の指定の高さと同一に設定できるようにした請求項1記載のレベル測定器
【請求項3】
水漏れ防止器を水面計の上部に設け、ここからのオーバーフローを防止する請求項1記載のレベル測定器
【請求項4】
誤差の計算をして、水面計を誤差修正目盛りとした請求項1記載のレベル測定器
【請求項5】
水槽の下部に複数のプラグを設ける事により水面計を複数個、同時に使用出来るようにした請求項1記載のレベル測定器
【請求項6】
水面計をラジコンの車や戦車等に搭載し、遠隔操作できるようにした請求項1記載のレベル測定器

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−93571(P2007−93571A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−315371(P2005−315371)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(593008195)