説明

常温接合装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、センサ部品や微小機械の組み立て等、精密、高精度の接合に適用される常温接合装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、構造物の接合には、ティグ溶接,ミグ溶接が、また、最近ではレーザ溶接等が用いられている。
【0003】一方、近年ではセラミックスや複合材料あるいは異種金属材料の接合方法として、真空ろう付、拡散接合技術に関する研究が盛んになり、一部で実用化されつつある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで前述のような従来の方法は、いずれも高温下での熱を利用した接合方法であり、被接合物は、融点の1/2以上の高温に加熱される。
【0005】したがって、センサ部品や微小機械の組み立て等、被接合物の温度上昇や変形を許容されない精密かつ高精度が要求される製品の接合には適用出来ない不具合がある。
【0006】本発明は上記不具合点を解決した新たな常温接合装置を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するための構成として本発明の常温接合装置は、真空容器内において常温で金属又は非金属材料同士を接合する常温接合装置において、該装置が、被接合物を保持したホルダーの両端を支持して、水平軸中心に回転させる機構と、上記機構を、上下並列に配置し、相互の間隔を圧縮バネで保持する機構と、さらにこれらを鉛直方向に摺動させる機構と、上記各々の回転機構に独立して回転動力を伝達するフレキシブルシャフトと、上記フレキシブルシャフトを電動モータにより、複数歯車の構成で同時に回転させる駆動機構と、被接合物の接合面を水平方向から垂直方向に回転位置決めする際の位置検出のための光電スイッチと、接合の際、垂直方向に被接合物同士を押し当て加圧する油圧方式等のプレス機構と、さらに、被接合物の接合面にアルゴンイオンビームを照射して、清浄化処理する水平に配したイオン銃とを具備したことを特徴としている。
【0008】
【作用】上記のように構成した本発明の常温接合装置により金属又は非金属材料同士を接合する際、真空容器中にて、常温(室温)状態で遠隔操作により接合する。
【0009】被接合物同士を常温で直接接合する為に必要な接合面の清浄化は、アルゴンイオンビームの照射により処理する。
【0010】そのため、予め大気中で研磨を行った被接合物の接合面に対して真空容器内において真空度10-4〜10-6Torrの雰囲気で、アルゴンイオンビームを30〜300sec間照射することによりアルゴンイオンの衝撃で表面の不純原子が除去されることで清浄化され、常温での直接接合が可能となる。
【0011】被接合物をまず水平姿勢で水平方向からアルゴンイオンビームの照射後、直ちに垂直姿勢として、垂直方向からプレスにより被接合物同士を押し付け加圧する。
【0012】被接合物の回転は、曲折,偏心状態で回転・伝動可能なフレキシブルシャフトを介して電動モータの回転動力を伝達する様に構成した。
【0013】被接合物への回転伝動にフレキシブルシャフトを用いることにより固定化した電動モータによる駆動部からイオンビーム照射時及びプレスによる加圧接合時において水平から垂直へ姿勢変更する回転機構部への伝動、さらに、上下摺動によって生じる回転機構部との偏心量の変化を吸収して連結することができる。
【0014】上記の機構を採用したことにより、装置の小型化、機構の簡素化を図ることができる。
【0015】さらに、装置全体を、プレス機構を有する真空容器内に設置することが出来、容器外との取合が容易となり、遠隔操作化を図ることができる。
【0016】
【実施例】以下図面により本発明の1実施例について説明する。図1は本発明の1実施例に係る常温接合装置の正面図、図2は同装置の平面図、図3は図1におけるA矢視図、図4は図1におけるB−B断面図を示す。
【0017】これらの図において、接合を行う1対の被接合物1は真空容器内において、上下に対向配置したホルダーA2及びホルダーB16に各々、ボールプランジャ28にて押さえ保持されている。そして該ホルダーA2及びホルダーB16は、両端を軸受ケース4に内蔵した軸受3で回転可能に支持されている。
【0018】この時ホルダーA2及びホルダーB16は、図2に示すように共に軸受3とは着脱可能な様にはめ込み構造とし、図4に示すボールプランジャ28により押さえている。
【0019】また軸受ケース4は、各々鉛直方向に摺動可能なように、並列に配したガイドレール5を介して、ベースA6上に固定された向かい合う1対のブラケット7に取付けられている。
【0020】軸受ケース4には、各々初期の状態で、被接合物1間の間隔が、ホルダーA2及びホルダーB16が軸受3を軸中心として回転しても干渉しないすき間となるよう自重力以上の力を有する圧縮バネA13及び圧縮バネB14を間に設けている。
【0021】また、同じベースA6上に、電動モータ8及び回転動力を伝動するため上下にかみ合せ配置した歯車A9,歯車B10,歯車C31から構成される駆動機構を設けている。
【0022】さらに、ホルダーA2側の軸受3と歯車B10を、ホルダーB16側の軸受3と歯車C31を、各々偏心,曲折可能なフレキシブルシャフト11で連結している。
【0023】そして電動モータ8の駆動により歯車A9,歯車B10,歯車C31及び各フレキシブルシャフト11を介して上下の軸受3に各々回転伝動され、同時に独立して相反する方向に回転する。
【0024】これらの上記機構をベースB21上に搭載し、また同じベースB21上に図3に示すように直角位置方向に、照射口を被接合物1に向けたアルゴンイオン銃18をホルダC19を介して水平姿勢で固定している。なお30はアルゴンイオン銃18より照射されるイオンビームである。
【0025】ベースB21,ベースC22,ベースD23は、上下に重ね相互にキー25,25′で位置決めされボルト26により、水平に前後左右に摺動するよう構成され、直上に設けられた加圧プレスのプレスロッド15の先端と、ホルダーA2の受け面の位置決め調整、心出しができるようにしている。
【0026】そしてこれらを真空容器内のベースE24上に搭載し、いずれも真空容器内に内蔵する。
【0027】またホルダーB16の下には適当な間隔をあけ、加圧時の当て座として受けブロック17をベースA6上に配置し、またアルゴンイオンビーム30の照射時に被接合物1以外の部分に当たらないように保護する遮へい板20をホルダー側部に設けている。
【0028】つぎに本装置の作動について説明すると、例えば真空度が10-4〜10-6Torrの状態で常温(室温)の真空容器内において、図3に示す様に、まず、電動モータ8を駆動してフレキシブルシャフト11を介してホルダーA2及びホルダーB16を水平軸中心に回転し、被接合物1を水平姿勢とし該被接合物1の接合面をアルゴンイオン銃18の照射口側に向ける。
【0029】そして、アルゴンイオン銃18によりイオンビーム30を接合面に例えば30〜300sec間照射する。
【0030】照射後、直ちに、図4に示す様に、電動モータ8を駆動して被接合物を保持する各ホルダーを回転し、被接合物1を垂直姿勢とし2つの接合物1の接合面を向かい合わせる。
【0031】この回転動作の回転端、方向検出として歯車A9の回転部に光電スイッチ12を設けている。
【0032】さらに、正確に位置決めする為に図2に示すようにインデックスプランジャ27のピンで固定される。インデックスプランジャ27のセットにより回転動作の機械的ストッパーとなり、この時の負荷の変化で電動モータ8に流れる電流の増大を利用して過負荷電流検知として電動モータ8を停止させる。
【0033】ついで加圧プレスを作動し、プレスロッド15を下降していくと該プレスロッドの先端はホルダーA2に当たりホルダーA2を押し下げていく。
【0034】そして、圧縮バネA13及び圧縮バネB14は押し付け力に負けて縮んでいく。
【0035】被接合物1の対向する接合面が当たりさらに押し下げていくとホルダーB16の背面が固定した受けブロック17に当たり、接合面に加圧力(例えば10kgf/mm2 )が発生する。この状態で数分保持することで接合が完了する。
【0036】接合作業完了後プレスロッド15を上昇して無負荷にすると、圧縮バネB14の復元力でホルダーB16が上昇し、元の状態に復帰する。
【0037】同様に圧縮バネA13も復元し、ホルダーA2も元の状態まで上昇する。
【0038】被接合物1の取り外しは、真空容器を大気開放したのちボールプランジャ28を緩め、被接合物1のホルダーA2及びホルダーB16による保持力を緩め、図4に示す押しねじ29の回転により押し出してホルダーA2及びホルダーB16より外す。
【0039】以上本発明の1実施例につき縷々説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものでなく本発明の技術思想の範囲内において種々設計変更が可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に属する。
【0040】
【発明の効果】以上述べたように本発明の常温接合装置によれば、センサ部品やマイクロマシン等の微小機械の組み立てならびにセラミックスや複合材料、超伝導線等、被接合物の温度上昇や変形を許容されない精密、高精度な接合が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施例に係る常温接合装置の正面図である。
【図2】図1の装置の平面図である。
【図3】図1のA矢視図である。
【図4】図1のB−B断面図である。
【符号の説明】
1 被接合物
2 ホルダーA
3 軸受
4 軸受ケース
5 ガイドレール
6 ベースA
7 ブラケット
8 電動モータ
9 歯車A
10 歯車B
11 フレキシブルシャフト
12 光電スイッチ
13 圧縮バネA
14 圧縮バネB
15 プレスロッド
16 ホルダーB
17 受けブロック
18 アルゴンイオン銃
19 ホルダーC
20 遮へい板
21 ベースB
22 ベースC
23 ベースD
24 ベースE
25,25′ キー
26 ボルト
27 インデックスプランジャ
28 ボールプランジャ
29 押しねじ
30 イオンビーム
31 歯車C

【特許請求の範囲】
【請求項1】 真空容器内において常温で金属又は非金属材料同士を接合する常温接合装置において、該装置が、被接合物を保持したホルダーの両端を支持して、水平軸中心に回転させる機構と、上記機構を、上下並列に配置し、相互の間隔を圧縮バネで保持する機構と、さらにこれらを鉛直方向に摺動させる機構と、上記各々の回転機構に独立して回転動力を伝達するフレキシブルシャフトと、上記フレキシブルシャフトを電動モータにより、複数歯車の構成で同時に回転させる駆動機構と、被接合物の接合面を水平方向から垂直方向に回転位置決めする際の位置検出のための光電スイッチと、接合の際、垂直方向に被接合物同士を押し当て加圧する油圧方式等のプレス機構と、さらに、被接合物の接合面にアルゴンイオンビームを照射して、清浄化処理する水平に配したイオン銃とを具備したことを特徴とする常温接合装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【特許番号】特許第3316320号(P3316320)
【登録日】平成14年6月7日(2002.6.7)
【発行日】平成14年8月19日(2002.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−277161
【出願日】平成6年10月18日(1994.10.18)
【公開番号】特開平8−118043
【公開日】平成8年5月14日(1996.5.14)
【審査請求日】平成12年2月15日(2000.2.15)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【参考文献】
【文献】特開 昭62−282788(JP,A)
【文献】特開 平3−81077(JP,A)
【文献】特開 昭63−101085(JP,A)