説明

常温硬化型無機質コーティング膜及びコーティング剤

【課題】 建築用石材面、塩ビ系化学床面、フローリング床面等に使用されるコーティング剤は、自己平滑化する流動性を有する材料で、なんらの高温過熱処理を必要とせず極めて短時間でガラス硬化状態を得て作業能率を向上させなければならない。
【解決手段】 常温硬化型無機質コーティング基本組成からなり、コーティング後に熱処理を要さず、硬度が鉛筆硬度で8H以上、光沢が60以上であり、自己平滑化(流動性)として粘度が3CS以下であり、塗膜後長くとも90分若しくはそれ以内に指触乾燥することを特徴とする常温硬化型無機質コーティング膜及びコーティング剤とした。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、建築用石材面、塩ビ系化学床面、フローリング床面等に使用されるメンテナンス用(美観保護用)に適用されるもので、高硬度、表面光沢性、防汚性(塵埃の付着防止)に優れると共に、コーティング時に床面への自己平滑化流動性を有し、コーティング後に熱処理等を要さず極めて短時間に硬化させることができ、現場での作業性に優れた常温硬化型無機質コーティング膜及びコーティング剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この技術分野に利用される無機質コーティング膜としては、水性ガラスコーティング(液相コーティング)が有用であった。そして、この様な水性ガラスコーティングは次のような用途に使用されてきた。
▲1▼アルミニウムの耐食性を向上させる化成処理膜(特開昭49−23140)
▲2▼金属表面の帯電防止保護膜(特開昭50−157233)
▲3▼プラスティック、木材、セメント系製品など表面硬度が低く光沢がない弱耐薬品性の表面保護膜(特開昭52−59638)
▲4▼額やブラウン管等のガラス表面に低反射率表面を形成する反射防止膜(特開昭61−232247)
▲5▼酸化性雰囲気中の過熱炉において、金属元素を拡散させ複合金属膜を得る酸化雰囲気コーティング膜(特開昭50−5238)
▲6▼無機質塗料(特開昭61−103963)
▲7▼加工用鋼板の処理膜(特開昭52−76236)
▲8▼方向性ケイ素鋼板の絶縁被膜(特開昭53−28043)
▲9▼シリカ結合剤(特開昭61−291655)
▲10▼透明導電性被膜(特開昭61−113772)等の多岐にわたる用途に用いられている。
【0003】
しかしながら、上記水性カラスコーティング膜においては、コーティング処理工程として、上記▲1▼は浸透後過熱乾燥、▲2▼は焼付または焼成、▲3▼は過熱乾燥、▲4▼はスプレー塗布後冷却、▲5▼は圧着後高温過熱、▲6▼は塗布乾燥後焼付、▲7▼は熱風乾燥、▲8▼は塗布後焼付、▲9▼はバインダーとして高温焼成、▲10▼は浸漬後熱風乾燥と言うように、コーティング後に何らかの高温熱処理を施さなければ充分なガラス硬化状態が得られない。また、硬化処理に要する工程が複雑であるばかりでなく硬化までに極めて長時間を要する。
【0004】
また、上記水性ガラスコーティング剤においては、コーティングの方法として浸漬、塗布、圧着等を行なっており、例えば、床面に流し込んだ時に自然に自己平滑化する流動性を有する材料として提供されていない。
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明においては、コーティング後に全く熱処理を施さなくても充分な硬化が短時間に促進され、かつ高硬度、表面光沢、防汚性(塵埃の付着防止)に優れ、撥水性(滑りを防止)を有する常温硬化型無機質コーティング層及びコーティング剤を提供するものである。また、コーティング時に浸透、塗布、圧着等を行なわず、床面に流し込んだ時に自然に自己平滑化するような適切な流動性を有する常温硬化型無機質コーティング膜及びコーティング剤を提供するものである。
【課題を解決する手段】
【0006】
請求項1の発明は、常温硬化型無機質コーティング基本組成からなり、硬度が鉛筆硬度で8H以上、光沢が60以上であることを特徴とする常温硬化型無機質コーティング膜を提供するものである。
【0007】
この発明においては、高硬度、表面光沢性、防汚性、作業性に優れた常温硬化型無機質コーティング層を提供することができる。より好ましくは鉛筆硬度で9H以上、塗膜後の光沢が70以上である。
【0008】
請求項2の発明は、常温硬化型無機質コーティング基本組成からなり、コーティング後に熱処理を要さず、長くとも90分若しくはそれ以内に指触乾燥し、自己平滑化(流動性)として粘度が3CS以下であり、塗膜後の光沢が60以上の状態となることを特徴とする常温硬化型無機質コーティング剤を提供するものである。
【0009】
この発明においては、コーティング後に熱処理を要さず、高硬度、表面光沢性、防汚性、作業性に優れた常温硬化型無機質コーティング剤を提供することができる。より好ましくは30分以内に指触乾燥し、自己平滑化(流動性)が1.5以下であり、塗膜後の光沢が70以上の状態となることである。
【0010】
請求項3の発明は、常温硬化型無機質コーティング基本組成が、シリコーン、シロキサン、アルコキシド、メチルシリケート、エチルシリケート、珪酸ナトリウム、珪酸リチウムの1種若しくは2種以上の主成分100重量比に対して、A:硬度付与剤としてシリカ、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾルから選ばれる1種若しくは2種以上を5〜50重量比と、B:バインダーとしてシランカップリング剤を0.02〜2重量比と、C:内添硬化促進触媒として銀、すず、亜鉛、チタン、リン酸、アルミ、アンモニアから選ばれる1種若しくは2種以上を0.2〜10重量比と、D希釈剤としてメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチルから選ばれる1種若しくは2種以上を0〜30重量比とを内添した基本組成からなる常温硬化型無機質コーティング剤を提供するものである。
【0011】
上記主成分100重量比に対してA:硬度付与剤としてシリカ、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾルから選ばれる1種若しくは2種以上を5〜50重量比であることが必要である。5重量比未満であると、硬度付与の効果が期待されず、50重量比を超えると分子間の結合度あるいは基材との密着性が悪くなる。より好ましくは20〜40重量比である。
【0012】
上記主成分100重量比に対して、Bバインダーとしてシランカップリング剤が0.02〜2重量比であることが必要である。0.02重量比未満であると、バインダーとしての効果が期待されず、5重量比を超えるとコーティング剤の特性(高硬度、耐候性、耐酸性、絶アルカリ性等)に支障をきたす。より好ましくは0.1〜1.0重量比である。
【0013】
上記主成分100重量比に対して、C:内添硬化促進触媒として銀、すず、亜鉛、チタン、リン酸、アルミ、アンモニアから選ばれる1種若しくは2種以上を0.2〜10重量比であることが必要である。0.2重量比未満であると硬化に著しく時間を要し、10重量比を超えると触媒としての反応が著しく進行し、コーティング剤のポットライフ(寿命)を縮めてしまう。より好ましくは3〜5重量比である。
【0014】
上記主成分100重量比に対して、D:希釈剤としてメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチルから選ばれる1種若しくは2種以上が0〜30重量比であることが必要である。これらは添加しなくても使用できるが、30重量比を超えるとコーティング剤の膜厚が薄くなり過ぎて表面保護剤としての機能を失う。より好ましくは10〜25重量比である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の実施例では、シリコーン、シロキサン、アルコキシド、メチルシリケート、エチルシリケート、珪酸ナトリウム、珪酸リチウムの1種若しくは2種以上の主成分100重量比に対して、A:硬度付与剤としてシリカ、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾルから選ばれる1種若しくは2種以上を5〜50重量比と、B:バインダーとしてシランカップリング剤を0.02〜2重量比と、C:内添硬化促進触媒として銀、すず、亜鉛、チタン、リン酸、アルミ、アンモニアから選ばれる1種若しくは2種以上を0.2〜10重量比と、D希釈剤としてメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチルから選ばれる1種若しくは2種以上を0〜30重量比とを内添した基本組成を建築用石材面、塩ビ系化学床面、フローリング床面等に塗布し、高硬度、表面光沢性、防汚性(塵埃の付着防止)に優れた塗膜を形成し、建築用床材表面等のメンテナンス(美観保護)に適用した。
【実施例1】
【0016】
シリコーン、シロキサン、アルコキシド、メチルシリケート、エチルシリケート、珪酸ナトリウム、珪酸リチウムの1種若しくは2種以上の主成分100重量比に対して、A:硬度付与剤としてシリカ、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾルから選ばれる1種若しくは2種以上を5〜50重量比と、B:バインダーとしてシランカップリング剤を0.02〜2重量比と、C:内添硬化促進触媒として銀、すず、亜鉛、チタン、リン酸、アルミ、アンモニアから選ばれる1種若しくは2種以上を0.2〜10重量比と、D希釈剤としてメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチルから選ばれる1種若しくは2種以上を0〜30重量比とを内添した基本組成を第1表に示す割合で内添し、試料1〜18を作成した。
【0017】
【第1表】



【0018】
上記第1表の試料1〜18について、コーティング剤の粘度を粘度測定器により測定し、その後、コーティング剤を塩ビ系タイルに塗布して指蝕乾燥を測定した。また、表面光沢度を光沢度計にて測定し、コーティング表面の硬度、密着性、自己平滑性(流動性)などの塗膜性能を調べ第2表に示した。硬度については硬度測定器により7日経過後、5H以下のものを不良とした。密着性については基盤目テープ密着試験を行い、剥離を生じたものを不良とした。自己平滑性(流動性)については粘度が3以上のものを不良とした。
【0019】
【第2表】


【0020】
第2表から理解されるように、試料1〜11のものは本特許請求の範囲の試験結果で、流動性(粘度)が1.3CS以下と低く自己平滑性に優れているために表面光沢度も70前後の値が得られ、完全硬化後の鉛筆硬度は8H以上と良好であった。
【0021】
それに比較して試料12〜18のものは、硬化時間が長いか、硬度不足、硬化不良、密着不良等を生じた。
【0022】
試料1〜7は触媒の仕様を変えてテストした結果である。この中で特にすず、亜鉛、リン酸などを触媒とした結果が約30分以内で乾燥させることができた。また、試料8〜10に示すようにシランカップリング剤の添加量を変えて試験したが硬度、耐候性などに顕著な差は見られなかった。
【実験例2】
【0023】
第1表の試料1の基本組成に対し、D希釈剤としてメタノール、エタノール、イソルロピルアルコール、酢酸エチルとを第3表に示す割合で添加し、試料19〜26を作成した。
【0024】
【第3表】

【0025】
上記第3表の試料19〜26について、コーティング層の膜厚を三次元測定器により測定し2μ以下のものを不良とした。
【0026】
以上のことから理解されるように、流動性は希釈溶剤の添加量が多いほど、粘度は下がり改善されるが、しかしながら、溶剤の揮発の際に微細な気泡が発生するために塗膜の自己平滑性が失われてしまう。特にその傾向は揮発性の高い溶剤ほど顕著に表れるために揮発性の高い溶剤については逆に光沢を劣化させてしまう可能性がある。また、一連の試験の結果より光沢度(自己平滑性)は固形分濃度が高いほど、体積変化が発生しにくいために高い値を示す。更にコーティング剤の乾燥性が良好なものほど同様に高い値を示す。
【0027】
また、粘度調整のために、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等で希釈すると、希釈率が大きいほどコーティング層の膜厚は当然ながら薄くなるために保護剤としての機能は失われる。
【発明の効果】
【0028】
本発明においては、コーティング後に全く熱処理を施さなくても充分な硬化を極めて短時間で促進でき、かつ高硬度、表面光沢性、防汚性(塵埃の付着防止)に優れ、撥水性(滑りを防止)を有する常温硬化型無機質コーティング剤を提供することができると共に、コーティング時に浸漬、塗布、圧着等を行なわず、床面に流し込んだ時に自己平滑化するような適切な流動性を有する常温硬化型無機質コーティング剤を提供することができる。また、本発明は建築用石材面のみならず、塩ビ系化学床面、フローリング床面、船舶の船体面の腐食防止、自動車、車両等のボディー面の美観保護等のあらゆる用途にも適用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
常温硬化型無機質コーティング基本組成からなり、硬度が鉛筆硬度で8H以上、光沢が60以上であることを特徴とする常温硬化型無機質コーティング膜
【請求項2】
常温硬化型無機質コーティング基本組成からなり、コーティング後に熱処理を要さず、長くとも90分若しくはそれ以内に指触乾燥し、自己平滑化(流動性)として粘度が3CS以下であり、塗膜後の光沢が60以上の状態となることを特徴とする常温硬化型無機質コーティング剤。
【請求項3】
常温硬化型無機質コーティング基本組成が、シリコーン、シロキサン、アルコキシド、メチルシリケート、エチルシリケート、珪酸ナトリウム、珪酸リチウムの1種若しくは2種以上の主成分100重量比に対して、A:硬度付与剤としてシリカ、シリカゾル、アルミナゾル、チタニアゾルから選ばれる1種若しくは2種以上を5〜50重量比と、B:バインダーとしてシランカップリング剤を0.02〜2重量比と、C:内添硬化促進触媒として銀、すず、亜鉛、チタン、リン酸、アルミ、アンモニアから選ばれる1種若しくは2種以上を0.2〜10重量比と、D希釈剤としてメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチルから選ばれる1種若しくは2種以上を0〜30重量比とを内添した基本組成からなる常温硬化型無機質コーティング剤。

【公開番号】特開2006−307124(P2006−307124A)
【公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−161961(P2005−161961)
【出願日】平成17年5月2日(2005.5.2)
【出願人】(505204974)株式会社九州ハイテック (2)
【Fターム(参考)】