説明

干果製造用果吊り具

【課題】 汎用性に富んで安価に提供できる干果製造用果吊り具を実現する。
【解決手段】 紐2等に取り付けられて生の柿等の果50を吊るす樹脂製の吊り具本体3からなる干果製造用果吊り具において、吊り具本体3は、略平板状をなし、果50のヘタ51より延びている枝52が差し込まれる開口部4と、開口部4より下方に向かって略楔状に切り込み形成されている溝5と、溝5内に差し込まれた枝52に対して弾発力を付与するためのスリット状の開口7,8とを形成している構成にした。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば、干し柿を作る際に皮をむいた生柿を吊るすための果吊り具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】干し柿を作るには、天日で数日間にわたって乾燥させて作る場合と、乾燥機内に入れ、温風を吹き付けて機械乾燥させて作る方法等が用いられている。何れの場合も、皮をむいた生柿を適宜な手段で沢山吊り下げ、これを一度に乾燥させている。その皮をむいた生柿を沢山吊り下げる手段としては、例えば実開昭52−68494号、実開昭61−125290号、特開平6−133719号等で見ることができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来例のうち、実開昭52−68494号で知られる吊り下げ手段では、柿のヘタより延びている枝を、麻糸等で撚られている紐の間に通し、その反対側で枝にクリップを装着して抜け止めさせて取り付ける方法が取られている。この方法では、撚られている紐の間に枝を通すので作業が面倒な問題点があった。
【0004】次に、実開昭61−125290号で知られる吊り下げ手段では、枠状に形成された干し器本体に、複数の生柿を串刺しさせた干し棒の両端を係合させて取り付ける方法が取られており、干し器本体は自由に向きが変えられない状態になっている。この方法では風や陽当たりにむらが生じて安定した品質が得られない。また、干し器本体の大きさが固定され、製造場所に応じて長さ等の大きさを簡単に変えることができないと言う問題点があった。
【0005】次に、特開平6−133719号で知られる吊り下げ手段では、柿のヘタより延びている枝を係合させて取り付ける保持体を、剛性を有した吊り体に略等間隔で複数取り付け、その保持体に生柿をそれぞれ係合させて吊るす方法、及び上端にフックを取り付けた可撓性を有する紐の途中に保持体を略等間隔で複数取り付け、その保持体に生柿をそれぞれ係合されて吊るす方法等が開示されている。このうち、剛性を有した吊り体に取り付けた保持体に生柿をそれぞれ係合させて吊るす方法では、吊り体の大きさが固定されており、製造場所に応じて長さ等の大きさを簡単に変えることができないと言う問題点があった。一方、上端にフックを取り付けた可撓性を有する紐の途中に保持体を略等間隔で複数取り付け、その保持体に生柿をそれぞれ係合されて吊るす方法では、紐に対して保持体を後から取り付ける必要があり、作業が面倒で、また紐に対する保持体の固定が十分でないと柿の位置が保持体と共に上下方向に延びてしまうと言う問題点があった。
【0006】本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は汎用性に富んで安価に提供でき、かつ品質の優れた干果を作ることが可能な干果製造用吊り具を提供することにある。さらに、他の目的は、以下に説明する内容の中で順次明らかにして行く。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明は、図面に例示される如く紐2等に取り付けられて生の柿等の果50を吊るす樹脂製の吊り具本体3からなる干果製造用果吊り具において、前記吊り具本体3は、略平板状をなし、前記果50のヘタ51より延びている枝52が差し込まれる開口部4と、該開口部4より下方に向かって略楔状に切り込み形成されている溝5と、前記溝5内に差し込まれた前記枝52に対して弾発力を付与するためのスリット状の開口7,8とを形成している構成にした。
【0008】
【作用】この構成によれば、吊り具本体3は開口部4より下方へ形成された溝5及びスリット状の開口7,8を有し、開口部4から溝5内に差し込まれてくる枝52を開口7,8の存在により弾性的に挟持して確実に保持可能となる。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を用いて詳細に説明する。図1乃至図6は本発明の一実施例として示す干果製造用果吊り具の要部構造を示すもので、図1R>1はその側面図、図2はその斜視図、図3は図1のA−A線に沿って縦断面して見た側面図、図4は図1のB−B線に沿って縦断面して見た側面図、図5は図1のC−C線に沿って水平断面して見た上面図、図6は図1のD−D線に沿って水平断面して見た上面図である。
【0010】図1乃至図6において、この果吊り具1は、一本の可撓性を有した紐2に吊り具本体3が略等間隔で固定して取り付けられ、この吊り具本体3を取り付けた紐2を図示せぬ治具に巻き付けておき、必要な長さに切断して使用できる構造になっている。
【0011】さらに詳述すると、紐2は、ポリエステル繊維を撚って自由に折り曲げ、あるいは結んだりすることが可能な状態に形成されている。要は可撓性を有したより紐であれば良い。一方、吊り具本体3は、樹脂製であり、全体として縦に細長い四角形をした偏平板ないしは略平板状に形成されている。また、その成型時には、この吊り具本体3の片側に偏った位置で、かつ吊り具本体3を上下方向に貫通した状態にして上記紐2がインサートされ、このインサートによって吊り具本体3が紐2に固定して取り付けられる。そして、この紐2は、吊り具本体3を成形する毎に所定量だけずらされ、そのずらされた位置で新たに吊り具本体3を成形することによって、一本の紐2上に複数の吊り具本体3が略等間隔で固定して取り付けられた状態になっている。紐2に対する複数個の吊り具本体3の固定は、吊り具本体3の成形時に紐2をインサート成形する方法以外であってもよく、例えば樹脂の溶融を利用した熱かしめなどで行なうことも可能である。
【0012】ここで、吊り具本体3には、干果としての柿50のヘタ51より延びている枝52を差し込むための開口部4が上部に形成されており、また開口部4より連続して下方に延ばされた溝5が設けられている。なお、この溝5は下方に進むに従って序々に幅が狭くなる楔状に形成されており、開口部4側では枝52の外径よりも十分大きく、下方では枝52の外径よりも十分小さく形成されており、開口部4側から差し込まれて来た枝52を係合させて保持できる状態になっている。加えて、溝5の内面は、内側に進むに従って尖るエッジ部6がほぼ溝5の内面全体にわたって形成されており、溝5内に差し込まれて来る枝52にエッジ部6が食い込いで係合できる構造になっている。また、溝5の外側には、この溝5に沿ってスリット状の開口7,8が形成されている。そして、この開口7,8を設けたことによって、溝5の部分では、開口部4側より枝52が差し込まれて来たときに、この溝5と開口7,8との間の部分9,10を開口7,8側に弾性変形させ、この溝5内に枝52を弾性的に保持することができる。なお、開口8と連続して形成されている開口部分12は、吊り具本体3を成形するときに、図示せぬ成形型内で紐2をずれないように保持する治具(不図示)が挿入される部分である。さらに、吊り具本体3の下部で、かつ紐2を中心として、この周囲に、吊り具本体3より略直角に突出して鍔状に形成されたガード部11が吊り具本体3と一体に形成されている。
【0013】そして、このように形成されている果吊り具1を用いて柿50を吊るす場合について説明する。先ず、吊り具1を竿等に吊るす場合は、図7に示すように、吊り具1の先端を竿60の外側に回し、最初の吊り具本体3を横にして2番目の吊り具本体3の開口部4及び溝5内を通し、貫通した後で最初の吊り具本体3の向きを約90度水平に変えて、この最初の吊り具本体3を2番目の吊り具本体3に抜け止め係合させると、最初の吊り具本体3と2番目の吊り具本体3との間に形成されたループ部20で吊り具1を吊るすことができる。また、吊るした後は、必要な長さで切断される。こうして、竿60の必要とする箇所に、吊り具1を順次取り付ける。
【0014】次に、柿50を吊るす場合は、皮がむかれた生の柿50の枝52を開口部4内に差し込み、次いで柿50を吊り具本体3と平行に下側に移動させ、枝52を溝5内に圧入する。すると、溝5内でエッジ部6が枝52に食い込み、かつ弾性的に挟持された状態で、吊り具本体3に柿50が係合され、この吊り具本体3及び紐2を介して柿50を竿60に吊るすことができる。図8は、このようにして吊り具本体3に柿50が取り付けられている状態を示している。また、この状態では、図6に示すように、吊り具本体3のガード部11が柿50に直接当たるようにして、紐2が柿50に直接当たって柿50に傷を付けないようにして商品価値を保護している。さらに、紐2がより紐を使用しているので、複数個の柿50を吊るすと紐のよりが変化して各柿50が異方向に位置することから、各柿50が一方向に向くことも防止される。
【0015】なお、上記実施例では、ポリエステル繊維を撚って形成してなる紐2を使用した場合について説明したが、これ以外にも木綿糸や麻糸等を撚って形成したようなものであっても差し支えないものである。
【0016】
【発明の効果】以上説明したとおり、本発明によれば、吊り具本体が開口部より下方へ形成された溝及びスリット状の開口を有し、開口部から溝内に差し込まれてくる果の枝を開口の存在により弾性的に挟持し確実に保持することができる。なお、保持力を更に上げるには、請求項2の如く溝がエッジ部を有しそのエッジ部の食い込み力を利用したり、請求項3の如く開口を溝の両側に設け、枝が差し込まれて来たときに、溝と各開口との間の部分を弾性変形することが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例として示す干果製造用吊り具の要部構成を示す側面図である。
【図2】本実施例に係る吊り具の要部構成を示す斜視図である。
【図3】図1のA−A線に沿って縦断面して見た側面図である。
【図4】図1のB−B線に沿って縦断面して見た側面図である。
【図5】図1のC−C線に沿って水平断面して見た上面図である。
【図6】図1のD−D線に沿って水平断面して見た上面図である。
【図7】本実施例に係る吊り具の使用説明図である。
【図8】本実施例に係る吊り具の使用説明図である。
【符号の説明】
1は果吊り具
2は紐
3は吊り具本体
4は開口部
5は溝
6はエッジ部
7と8はスリット状の開口
50は柿(果)
51はヘタ
52は枝

【特許請求の範囲】
【請求項1】 紐等に取り付けられて生の柿等の果を吊るす樹脂製の吊り具本体からなる干果製造用果吊り具において、前記吊り具本体は、略平板状をなし、前記果ヘタより延びている枝が差し込まれる開口部と、該開口部より下方に向かって略楔状に切り込み形成されている溝と、前記溝内に差し込まれた前記枝に対して弾発力を付与するためのスリット状の開口とを形成している、ことを特徴としている干果製造用果吊り具。
【請求項2】 前記楔状の溝は、内面に向かって尖るエッジ部に形成されており、該エッジ部が前記開口部より差し込まれる前記枝に食い込み可能である請求項1に記載の干果製造用果吊り具。
【請求項3】 前記開口は、前記溝に沿ってかつ溝の両側に形成されており、前記枝が前記開口部より前記溝に差し込まれて来たときに、前記溝との間の部分を逃がして弾性変形させる請求項1又は2に記載の干果製造用果吊り具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2000−93142(P2000−93142A)
【公開日】平成12年4月4日(2000.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−295428
【分割の表示】特願平7−30179の分割
【出願日】平成7年1月27日(1995.1.27)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)