説明

平板スピーカ

【課題】本発明は、建物の壁や天井に設置される平板スピーカにおいて、耳障りになる帯域の音を軽減する防音装置がスピーカ容積以外の空間を占有しないスピーカを提供することを目的とする。
【解決手段】そしてこの目的を達成するために本発明の平板スピーカは、開口部を設けたフレーム19と、フレーム19の開口部に設けた振動板20と、フレーム19内に設置されると共に、振動板20と結合され、この振動板20を振動させる駆動部とを備えた平板スピーカであって、フレーム19内に一つ以上の第一の共鳴吸音器18を設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅やオフィスビル等の居住空間の壁や天井に設置して使用される平板スピーカに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のスピーカは、図8に示すように、フレーム背面側の音を軽減するために、フレームの背面を覆う防音カバーを設置していた。
【0003】
すなわち、図8に示すごとく、従来のスピーカ1は、天井パネル2を上下に貫通して嵌め込まれて設置されており、天井パネル2の表面にグリル3が取付けられている。駆動部を含めたスピーカの大部分は、天井パネル2の裏面側に設置され、防音カバー4がフレーム8を覆うように設計されている。
【0004】
駆動部は、磁気回路5と、ボイスコイル6を巻回したボイスコイルボビン7とから構成されている。
【0005】
スピーカ1は、駆動部とフレーム8以外に、振動板9、ダンパー10及びエッジ11とダストキャップ12を備えている。天井パネル2に設けた開口部13の端部とフレーム8の外周部とが接合されることで、スピーカ1は、天井パネル2と連結されている。
【0006】
磁気回路5は、下部プレート14とマグネット15及び上部プレート16から構成されている。
【0007】
このような従来のスピーカは、硬質樹脂等の材料で形成された、例えば円錐形の防音カバー4を、フレーム8を覆うように設け、これにより、音がスピーカ1の背面に漏れるのを防止していた。
【0008】
なお、この出願に関する先行技術文献としては、下記特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2007−96546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来のスピーカ1は、フレーム8の外方を覆うごとく防音カバー4を設けているので、この防音カバー4の分だけスピーカ1の厚みが増す。このため、天井と上階の床との空間が狭い一般住宅では設置が困難であるという課題を有していた。
【0010】
そこで本発明は、天井と上階の床との空間が狭い一般住宅でも、防音装置を設けたスピーカを簡単に設置することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために本発明は、開口部を設けた皿状のフレームと、このフレームの開口部に設けた振動板と、フレーム内に設けられるとともに、振動板に結合され、振動板を振動させる駆動部とを備え、フレーム内に一つ以上の共鳴吸音器を設置し、これにより初期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の平板スピーカは、耳障りとなる帯域の音を軽減する共鳴吸音器がフレーム内に設置されているので、全体の厚みを増すことなく背面への漏出音を抑制できるので、天井と上階の床との空間が狭い一般住宅でも、簡単に設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1の平板スピーカについて、図面を用いて説明する。
【0014】
図1は、実施の形態1における平板スピーカ17の平面図である図2の、線A−Aに沿う断面図である。図1、図2に示すごとく、本実施形態の平板スピーカ17は、開口部を設けた鉄製で皿状フレーム19と、このフレーム19の開口部に設けた平板状の振動板20と、前記皿状のフレーム19内に設置されると共に、このフレーム19と前記振動板20のそれぞれと結合され、振動板20を振動させる駆動部とを備えている。更に、皿状のフレーム19内で、その底面部分には、一つ以上の第一の共鳴吸音器18が設置されている。ここで、図1は天井に取付けた実使用状態を示した図であるため、フレーム底面部分とはこの場合逆方向である図の上方に位置している部分となる。
【0015】
天井板を兼ねた薄い木でできた振動板20は略平板状で、その形状は当実施の形態の場合、例えば、一辺が60cmの四角形である。したがって、フレーム19の開口部も四角形状となっており、四角形の振動板20は、フレーム19の四角形状の開口部に設置され密閉状態になっている。尚、振動板20は他の天井板、例えば、軽量硬質素材の樹脂板、発泡樹脂板、金属板等でも形成できる。その場合、振動板の材料毎に違った音質を楽しむことができる。また、本実施の形態1では、振動板20の形状は四角形状であるが、円形や多角形等の他の形状であっても良い。その場合、スピーカのデザインの自由度が増すという効果を奏する。
【0016】
駆動部は、フレーム19内底面と振動板20間の中央部に設置された磁気回路21と、ボイスコイル22が巻回されたボイスコイルボビン23とから構成されている。
【0017】
磁気回路21は、フレーム19の底部中央にヨーク24が固定され、その上にマグネット25と上部プレート26を設けて構成され、このヨーク24と上部プレート26の間には磁気ギャップを有している。
【0018】
ボイスコイル22は、磁気回路21の磁気ギャップ内に配置されており、ボイスコイル22を巻回するボイスコイルボビン23は、振動板20に振動を伝達するカプラー27を通じて振動板20と連結されている。
【0019】
ダンパー28は、その内周側はボイスコイルボビン23と連結され、ダンパー28の外周側は、フレーム19内の環状の凹部19aの内面と連結されて、ボイスコイルボビン23を支持している。
【0020】
第一の共鳴吸音器18は、フレーム19内の環状の凹部19aとフレーム19の外枠部との間にあって、フレーム19内部の底面に設置されている。
【0021】
図4、図5に示す様に、本実施の形態における第一の共鳴吸音器18は、樹脂製のダクト18aと、中空キャビネット18bとから構成されている。
【0022】
ダクト18aは、両端部が開いた円筒形状で、中空キャビネット18bの一方側に設けられ、ダクト18aの上部は、空気中に露出しており、その下部は、中空キャビネット18bの中に挿入して構成されている。また、本実施の形態のダクト18aは断面形状が円形となっているが、それ以外に断面形状が矩形や多角形等でも同様の効果を得ることができる。
【0023】
中空キャビネット18bは、直方体となっており、中には空気を保っている。また、本実施の形態では中空キャビネット18bが直方体となっているが、空気を保つことができればその形状には特に制約は無い。
【0024】
本実施の形態における第一の共鳴吸音器18は、樹脂製であるが、木や金属といった材料でも形成することができる。木を用いた場合は、共鳴吸音器18自身による共振音を軽減することが可能となる。金属を用いた場合は、共鳴吸音器18の剛性を大きくすることができるので、破損を防ぐことが可能となる。
【0025】
このようなヘルムホルツ型の第一の共鳴吸音器18では、音速をc、円筒形ダクト18aの断面積をS、円筒形ダクト18aの長さをL、中空キャビネット18bの容積をVとした場合、共振周波数fは次の式により求められる。
【0026】
共振周波数f=(c/2π)・(S/LV)1/2
平板スピーカ17から音を再生した際、振動板20の裏側から放射された上記共振周波数の音波は、フレーム19の内部に設置された第一の共鳴吸音器18のダクト18aにより入射し、空気室中の空気がバネの作用をし、ダクト18a中の空気の質量が錘の役目をして単共振を起こす。そうするとダクト18aのところで激しい空気の出入りが行われ、そこで空気の分子が摩擦熱を発して音響エネルギーが熱エネルギーに変換され、その結果、音が軽減される。また、ダクト18aの断面積Sと長さL、中空キャビネット18bの容積Vを調整することによって、異なる周波数の音を軽減することができる。
【0027】
上述の吸音原理に基づいて、図3に示す様に第一の共鳴吸音器18を、フレーム19の内部に一つ以上設置することにより、平板スピーカ17の背面へ漏れ出す耳障りとなる帯域の音を軽減することができる。その結果、空間が狭い天井に平板スピーカ17を設置することができ、上階の人にも迷惑をかけることなく音楽を楽しむことが可能となる。
【0028】
なお、第一の共鳴吸音器18はフレーム19上に接着をはじめとした接合手段によって設置される以外にも、フレーム19と一体に成型されても良い。その場合、部品点数と工数の削減の効果を奏する。
【0029】
また、本実施の形態1では、駆動部はフレーム19と振動板20の中央部とそれぞれ結合されるが、中心をずらして結合されても良い。その場合、振動板20上で発生する分割共振を分散することができ、ピーク・ディップが抑制された周波数特性を得ることが可能となる。
【0030】
また、前記駆動部は導電型加振器、磁歪型加振器、電歪型加振器のいずれかを用いて構成されても良い。
【0031】
(実施の形態2)
以下、本発明の実施の形態2における平板スピーカ29について図6と図7を用いて説明する。なお、説明の繁雑化を防ぐために、実施の形態1と同一部分は同一番号を付し、説明を簡略化する。
【0032】
図6は、本発明の実施の形態2における平板スピーカ29の斜視図である。図6において、第二の共鳴吸音器30はフレーム19の外側、すなわち、フレーム19の外底面側に設置される。つまり、図7に示すごとくフレーム19の底面にフレーム19内に突出する凹部19aを設け、この凹部19a内に第二の共鳴吸音器30を設置した。しかし、この状態でも、この図7から明らかに見えるように、第二の共鳴吸音器30はフレーム19の厚さの内に設けているので、このときも第二の共鳴吸音器30はフレーム19内に実質的に配置された状態となっている。この構成により、平板振動板20から前面に放射され、天井裏へ回り込んだ音を第二の共鳴吸音器30により軽減することが可能となり、上階への漏れ出す音を更に軽減することができる。
【0033】
更に、この実施の形態2ではフレーム19の外側に第二の共鳴吸音器30を設置しているが、その代わりに多孔性吸音板、又は軽減したい周波数の音波の1/4波長に相当する長さを有する音響管であっても同様の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の平板スピーカは、背面から周囲空間への音漏れを軽減し、隣室や上階に放射される音を抑える効果を有し、住宅、マンション、オフィスなどへの音響機器として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態1における平板スピーカの(図2のA−A)断面図
【図2】本発明の実施の形態1における平板スピーカの平面図
【図3】本発明の実施の形態1における平板スピーカのフレームの斜視図
【図4】同実施の形態における平板スピーカの共鳴吸音器の斜視図
【図5】平板スピーカの共鳴吸音器の図4のB−Bにおける断面図
【図6】本発明の実施の形態2における平板スピーカの斜視図
【図7】本発明の実施の形態2における平板スピーカの構造断面図
【図8】従来の防音スピーカの構造断面図
【符号の説明】
【0036】
1 スピーカ
2 天井パネル
3 グリル
4 防音カバー
5 磁気回路
6 ボイスコイル
7 ボイスコイルボビン
8 フレーム
9 振動板
10 ダンパー
11 エッジ
12 ダストキャップ
13 開口部
14 下部プレート
15 マグネット
16 上部プレート
17 平板スピーカ
18 第一の共鳴吸音器
18a ダクト
18b 中空キャビネット
19 フレーム
20 振動板
21 磁気回路
22 ボイスコイル
23 ボイスコイルボビン
24 ヨーク
25 マグネット
26 上部プレート
27 カプラー
28 ダンパー
29 平板スピーカ
30 第二の共鳴吸音器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を設けた皿状のフレームと、
前記フレームの開口部に設けた振動板と、
前記フレームと前記振動板との間に設置されると共に、前記振動板と結合され、
前記振動板を振動させる駆動部とを備えた平板スピーカであって、前記平板スピーカは、前記フレーム内に、前記振動板の背面側に放射される再生音の一部を軽減させるための第一の共鳴吸音器が一つ以上設置されることを特徴とする平板スピーカ。
【請求項2】
前記フレームの外面に、このフレーム内に向かって突入した凹部を設け、この凹部内に第二の共鳴吸音器が設置された請求項1に記載の平板スピーカ。
【請求項3】
前記第二の共鳴吸音器は、その代わりに音響管及び多孔性吸音板のうち、いずれかを設けた請求項2に記載の平板スピーカ。
【請求項4】
前記第一、前記第二の共鳴吸音器は樹脂、木、若しくは金属のうち、一種類以上の材料からなる請求項1から請求項3のいずれか一つに記載の平板スピーカ。
【請求項5】
前記第一、第二の共鳴吸音器は、ダクトと、中空キャビネットとから構成された請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の平板スピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−199819(P2010−199819A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−40789(P2009−40789)
【出願日】平成21年2月24日(2009.2.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】