説明

平板型光源

【課題】 長期間に亘り安定な発光状態を維持し得る平板型光源を得ること。
【解決手段】 一面に設けられた一対の放電電極12,12を覆う誘電体層14が設けられた前面板10と、一面に蛍光体層22が設けられた背面板20と、この前面板10と背面板20との間に配され、放電ガスを密封する放電空間70を形成する隔壁30と、を具えて前面板10の誘電体層14と背面板20の蛍光体層22とが対向配置される平板型光源で、放電電極12,12間のリークの電流密度が電界強度1MV/cmで1×10−7A/cm以下となるような緻密な誘電体層14を形成することにより安定なグロー放電を持続して行なうことができるようにし、異常放電による放電収縮の現象を生じさせないようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液晶表示装置などのバックライトとして用いて好適な安定な発光を行なうことができる平板型光源に関する。
【背景技術】
【0002】
現在主流の陰極線管(CRT)に代わる画像表示装置として、平面型(フラットパネル形式)の表示装置、例えば液晶表示装置(LCD)、プラズマ表示装置(PDP:プラズマ・ディスプレイ)などが市販されている。
中でも液晶表示装置は、薄型軽量であり低消費電力で、長寿命であるなどの長所を有するため、パーソナルコンピュータやテレビなど各種の情報映像ディスプレイとして広く利用されている。この液晶表示装置では、液晶自体は発光素子でないので、表示のためには液晶パネルの背面から光を供給するバックライトが必要である。通常用いられているバックライトは、細径の蛍光ランプとアクリル樹脂の導光体を組み合わせたものが主であるが、平板型の放電ランプによる光源も使用されている。
【0003】
図5は、例えば特許文献1に開示されている従来の平板型光源の断面図である。図に示すように、ソーダガラスなどからなる透光性の前面板10と、ソーダガラスやセラミック等からなる絶縁基板20と側板30とが、例えば低融点ガラス(図示せず)で一体に気密封着され、扁平状の密閉容器1が構成されている。発光面となる前面板10の内面には互いに平行な一対の放電電極40、41が設けられ、該放電電極40、41の表面は、誘電体層50で覆われている。また、絶縁基板20の内面には蛍光体60が塗布されており、密閉容器1内の放電空間70には水銀と始動用ガスとしてアルゴンやネオン−アルゴン等の混合ガス、又はキセノン、クリプトン、アルゴン、ヘリウム、ネオン等の希ガスの放電ガスが封入されている。
【0004】
本構成による平板型光源は、放電電極40、41間に高周波電圧(例えば、20kHz)を印加することにより放電空間70内に放電ガス中でのグロー放電が発生し、グロー放電で発生した紫外線により蛍光体60が励起されて発光し、光が前面板10を通して外部に放射される。
なお、平板型光源においては、封入された放電ガスの種類に応じた波長を有する紫外線が発生し、この紫外線により蛍光体材料の種類に応じた特有の発光色を呈するようになされている。
【0005】
図5の平板型光源では放電空間内に一対の放電電極が配されるだけなので、この放電電極間に生じるグロー放電により蛍光体層が均一に発光することが求められる。
一般に、低気圧中の放電では、電極電圧が増すにつれて、電流が非常に小さい暗流(タウンゼント放電)の状態からグロー放電に移行する。このグロー放電では、陽極寄りの中央部には陽光柱、陰極付近には負グローと呼ばれる発光領域があって、気体の種類によって独自の色を示す。負グローと陰極の間はイオンの空間電荷層が生じて大きな電位差が存在し、ここで加速された陽イオンが陰極を衝撃して2次電子を補給する。さらに電流が大きくなると陰極温度が上昇して熱電子放出が盛んになり、電極間電圧が10V程度に減少するアーク放電の状態となる(岩波書店 理化学辞典第5版)。
【0006】
そして、平板型光源での放電は、グロー放電が安定に行なわれ放電空間内の全領域で発光している、図6Aに示す安定放電の状態を維持するようになされることが必要である。なお、図6で発光している領域Lを斜線で示している。
【特許文献1】特開平9−115483号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本来平板型光源での放電状態は、図6Aに示す放電空間内の全領域で発光している安定放電の状態を維持することが必要であるが、実際にはグロー放電の安定放電状態からずれてしまい、グロー放電からアーク放電への遷移状態あるいはアーク放電へ移行した状態となり、図6B及びCに示すように、放電が放電空間内の局所領域で行なわれる、いわゆる放電収縮の状態となる不具合を生じることがあった。
【0008】
図5で示される特許文献1に開示されている平板型光源の誘電体層50は、例えば、放電電極40,41が形成された前面板10の上面に、スクリーン印刷によって酸化鉛(PbO)を含有した低融点ガラス(フリットガラス)ペーストが略均一に形成されたのち焼成されたものである。
そして、ここで用いられる誘電体層50に含有される酸化鉛は、その粒径が比較的大きいため誘電体層50の膜質として見たときの緻密さが不十分であり、このため、放電の継続により誘電体層50が損傷してしまい、この結果リーク電流が大きくなってグロー放電を維持することができなくなりアーク放電に移行し放電収縮の状態になっていたことを、本願出願人が鋭意検討した結果見出した。
【0009】
すなわち、酸化鉛を含有する低融点ガラスペーストをスクリーン印刷法にて印刷・焼成して得た誘電体層50では、緻密な誘電体層とすることができず、その結果比較的短い時間で所定値より大きなリーク電流を生じるようになるため安定な発光状態を維持することができない。
【0010】
本発明はかかる点に鑑み、長期間にわたって安定な発光を行なうことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明平板型光源は、一面に少なくとも一対の放電電極が設けられると共に、放電電極を覆う誘電体層が設けられた第1基板と、一面に蛍光体層が設けられる第2基板と、この第2基板と第1基板の間に配され、放電ガスを密封する放電空間を形成する隔壁と、を具備し第1基板の誘電体層と第2基板の蛍光体層とが対向配置される平板型光源において、放電電極間のリークの電流密度が電界強度1MV/cmで1×10−7A/cm以下の誘電体層を形成したものである。
【0012】
また、本発明は上記記載の平板型光源において、誘電体層に珪素化合物の層を有するものである。
【0013】
また、本発明は上記記載の平板型光源において、誘電体層の厚さを50μm以下としたものである。
【0014】
また、本発明は上記記載の平板型光源において、誘電体層の珪素化合物の層をSiOxとしたものである。
【0015】
また、本発明は上記記載の平板型光源において、誘電体層の珪素化合物の層をSiNyとしたものである。
【0016】
さらに、本発明は上記記載の平板型光源において、誘電体層の珪素化合物の層をSiOxNyとしたものである。
【0017】
このように構成した本発明平板型光源によれば、誘電体層が珪素化合物単体で又は他の誘電体に加えて珪素化合物の層が設けられて形成され、この珪素化合物は粒径が小さいため誘電体層を緻密に形成することができるのでリークの電流密度を小さく抑えることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明平板型光源によれば、誘電体層の膜質が緻密であるため放電収縮を生じにくく、長期間にわたって安定な発光を行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明平板型光源を実施するための最良の形態の例を図1〜図4、図6を参照して説明する。
【0020】
図1において1は本例の平板型光源を示し、平板型光源1は照光面側となるフロントパネルに相当する略長方形をなす前面板10と、リアパネルに相当する1辺が前面板10の短辺と略同じ大きさの略正方形をなす背面板20とが隔壁30を介して貼り合わされ、これにより形成された略直方体をなす放電空間70に所定の放電ガスが密封されてなるものである。そして、前面板10の裏面の短辺側に後述する誘電体層15で覆われる2つの放電電極12,12が放電空間70の外部に延設されたリード端子13,13が設けられる。
ここで、平板型光源1としては、例えば放電空間70の大きさが幅158mm×奥行き130mm×厚さ1.8mmで対角の長さが略8インチ相当の発光面をもつものである。
【0021】
図2は、図1に示す平板型光源1を分解して示すものである。
前面板10は、透明板11の一面11-2に1対の放電電極12,12とこの放電電極12,12を覆うように所定領域に誘電体層14が形成されたものである。
【0022】
透明板11は、高融点ガラスやソーダガラスなどからなる絶縁性を有し透明で平坦な板であり、この透明板11の一面11-2に形成される帯状の放電電極12,12は、例えば蒸着法などによりクロム膜を面11-2の全面に形成してから、フォトリソグラフィ技術で放電電極12,12のパターンをフォトレジストに転写してからエッチングによりクロム膜をパターニングすることによって形成される。ここで、放電電極12,12の間隙Gが放電ギャップである。本例では放電ギャップGは例えば50mm程度である。
【0023】
そして、放電電極12、12が形成された面11-2の全面に珪素化合物からなる誘電体層14と保護膜層15を形成してから、透明板11の面11-2側の周辺を略矩形枠状に周知のフォトリソグラフィ技術とエッチング技術により除去し、図2に示すように、リード端子13,13を露呈させると共に、後述する隔壁30との接合領域となる面11-2を露呈させる。
【0024】
誘電体層14としては酸化珪素(SiOx)、窒化珪素(SiNy)、酸窒化珪素(SiOxNy)などの珪素化合物の内のいずれかの膜を単体で形成しても、例えばスクリーン印刷で形成した従来の酸化鉛(PbO)などを主とした誘電体層の上にこれら珪素化合物の膜を形成するようにしてもよい。
珪素化合物の膜の形成方法としては、スパッタリング法などのPVD法によるものやCVD(化学的気相成長)法によるものが膜質の均一性・均質性・緻密性の点で好ましく、本例では珪素化合物による単体誘電体層とした場合の厚さは7μm程度とし、別に形成した誘電体層の上に珪素化合物の膜を形成する場合は全体の厚さが50μmを越えないようにする。
【0025】
誘電体層14の膜厚は、PVD法やCVD法によって成膜されたものでも1μm未満では駆動電圧に対し絶縁耐圧不足であり、50μmを越えるような膜厚では駆動電圧を高く設定する必要が生じ現実的でないため、1〜50μmの範囲が好ましい。
また、酸化珪素(SiOx)、窒化珪素(SiNy)、酸窒化珪素(SiOxNy)における添え字(符号)x、yとしては実数値もとり得るものである。従って、例えばSiOxは一般的なSiOに対してSi(珪素)リッチな酸化膜からO(酸素)リッチな膜組成までを含んでいる。
【0026】
また、誘電体層14の上に形成される保護膜層15としては、例えば酸化マグネシウム(MgO)を蒸着法またはスパッタリング法で略0.6μmの厚さで形成する。
【0027】
隔壁30は、耐熱性を有する絶縁材料で枠状に形成したものであり、図2に示すように、本例では複数の直方体状のガラス片30-1〜30-4をガラスペーストにより略正方形枠状に接合したガラススペーサーとしている。なお、隔壁30の厚さが略放電空間70の高さとなるが、この厚さは1〜3mm程度であり、本例では上述のように比較的薄い1.8mmとしている。また、略正方形枠の一辺には後述する放電空間70内を排気するための図示しない排気管が設けられる。
【0028】
背面板20は、絶縁板21の一面21-2の所定領域に略正方形状に蛍光体層22が形成されたものである。ここで用いられる蛍光体層22は、平板型光源1としては白色光が必要なことから光の3原色である赤色、緑色、青色をそれぞれ発光する蛍光体を混合して用いる。
紫外線の照射により赤色に発光する蛍光体材料としては、例えばイットリウム、ガドリニウムのホウ酸塩でユーロピウム付活の(Y:Eu)や[(Y,Gd)BO:Eu]、緑色に発光する蛍光体材料として、例えばケイ酸亜鉛にマンガン付活の(ZnSiO:Mn)、さらに青色に発光する蛍光体材料として、例えばバリウムマグネシウムアルミネートの(BaMgA11423:Eu)などを使用する。
【0029】
このように構成される図2に示す前面板10と隔壁30と背面板20とは、実際には次のように組み上げ平面型光源1とする。
先ず、蛍光体層22が形成されていない絶縁板21の面21-2の周縁に略正方形枠状にガラスペーストを塗布してから、この上にガラススペーサーによる隔壁30を載置し、焼成して固定する。このときの焼成(隔壁焼成工程)は、空気中で行い、焼成温度は560°C程度、焼成は2時間程度である。
【0030】
次に、絶縁板21に固定された隔壁30の内側に露呈されている面21-2上に少なくとも3種の蛍光体が混合された液を塗布してから焼成炉内で焼成し蛍光体層22形成する。その時の焼成温度は510°C程度で焼成時間は10分程度である。
【0031】
次に、例えばスクリーン印刷により、絶縁板21の隔壁30の略正方形枠の上にガラスペーストを枠状に供給する。
【0032】
次に、前面板10を隔壁30上の枠状のガラスペーストに押付け貼り合わせた状態とし、焼成してガラスペーストを硬化させて接合し、前面板10と隔壁30と背面板20を一体とする。
このとき、前面板10に略正方形形状に形成される誘電体層14と保護膜層15の縁辺部が隔壁30と透明板11の間に僅か入り込むような状態で接合し、前面板10と隔壁30と背面板20とが一体とされて形成される内部空間にリード端子13,13の金属面が露呈しないようにする。
【0033】
最後に、例えば隔壁30に設けられた不図示の排気管から前面板10と背面板20との間に形成された空間内の空気を排気してから所定の放電ガスを入れて置換し、この空間を封止し所定のガス圧を有する放電空間70とする。
ここで、放電ガスは、例えば放電開始電圧の低下が期待できるペニング効果の大きいHe−Xe(2%)混合ガスの全圧が、1×10Pa〜4×10Paで封入される。
【0034】
このような構成とした平板型光源1の動作の一例を説明する。先ず、図1及び図2に示す1対の放電電極12,12の内の、それぞれに互いの位相を180°ずらした交流電圧を印加する。すなわち、図4に示すように、例えば時刻tにおいて一方の放電電極12に電圧Vsusを印加させ(図4A)、他方の放電電極12に電圧Vsusと逆方向の電圧の−Vsusを印加し(図4B)、放電電極12,12間で放電を発生させる。この放電によって生じた紫外線が蛍光体層22に照射されることで赤色、緑色、青色の蛍光体のそれぞれを発光させることにより白色光が透明板10を通して得られる。
【0035】
このように構成された平面型光源1での放電状態を、誘電体層14を変えて検討した内容を図3及び図6を参照して説明する。
【0036】
検討手順は以下のようにした。
先ず、誘電体層の膜質について、図3に示すように、Siウェハ100上に誘電体層の膜120(厚さδ)を形成し、この膜120の上に面積の分かっている電極110を設け、LCRメータを接続した状態でSiウェハ100と上の電極110との間に電圧を印加し、誘電体層の膜120中を流れる電流量を測定する。
【0037】
このとき、電圧は膜中の電界強度が1MV/cmとなるように印加し、このときに単位面積(1cm)当たりに流れる電流を得るようにする。
ここで例えば、上電極110の面積を10cmとし、誘電体の膜厚δを10μmとしてSiウェハ100と電極との間に100V印加したとき、電流が10−6Aとすると、電界強度は100/δ=100/(10×10−5)=1MV/cmで、リークの電流密度は10−6/10=10−7A/cmとなる。
【0038】
次に、上述図1例に示す平面型光源1でCVD法により形成した誘電体層14の膜中における放電電極12,12間の電界強度がピークにおいて略1MV/cm以上となるように交流電圧を印加して放電させ、発光状態を目視観察して放電状態を観察した。
【実施例1】
【0039】
酸化珪素(SiOx)の膜質として、図3に示すように、Siウェハ100上に酸化珪素(SiOx)膜120を形成し、電圧を膜中の電界強度が1MV/cmとなるように印加し、このときのリークの電流密度として2.5×10−8A/cmを得た。そして、この酸化珪素(SiOx)を誘電体層14に用いた平面型光源1を作製し、放電させて発光状態を観察した。
この結果、酸化珪素(SiOx)の誘電体層14では所定の発光時間において、図6B或いは図6Cに示す、放電が収縮した状態には移行しなかった。
【実施例2】
【0040】
窒化珪素(SiNy)の膜質として、図3に示すように、Siウェハ100上に窒化珪素(SiNy)膜120を形成し、電圧を膜中の電界強度が1MV/cmとなるように印加し、このときのリークの電流密度として1.0×10−7Aを得た。そして、この窒化珪素(SiNy)を誘電体層14に用いた平面型光源を作製し、放電させて発光状態を観察した。
この結果、窒化珪素(SiNy)の誘電体層14では所定の発光時間において、図6B或いは図6Cに示す、放電が収縮した状態には移行しなかった。
【実施例3】
【0041】
酸窒化珪素(SiOxNy)の膜質として、図3に示すように、Siウェハ100上に酸窒化珪素(SiOxNy)膜120を形成し、電圧を膜中の電界強度が1MV/cmとなるように印加し、このときのリークの電流密度として9.0×10−8A/cmAを得た。そして、この酸窒化珪素(SiOxNy)を誘電体層14に用いた平面型光源を作製し、放電させて発光状態を観察した。
この結果、酸窒化珪素(SiOxNy)の誘電体層14では所定の発光時間において、図6B或いは図6Cに示す、放電が収縮した状態には移行しなかった。
【0042】
すなわち、電界密度を1MV/cmとしたとき、リークによる電流密度が1.0×10−7A/cm以下の膜を誘電体層14とすれば放電収縮しない安定な状態を維持し得ることが分かった。
【0043】
ここで、酸化珪素(SiOx)は、SiH(モノシラン)ガスとNO(亜酸化窒素、笑気)ガスとをプラズマ雰囲気中で反応させ成膜したものであり、窒化珪素(SiNy)はSiHガスとNH(アンモニア)ガスとをプラズマ雰囲気中で反応させ成膜したものであり、酸窒化珪素(SiOxNy)は
酸化珪素(SiOx)の形成のときとはガスの流量比を変えることにより成膜したものである。
【0044】
本例の平板型光源1によれば、放電電極12,12上の誘電体層14を珪素化合物、例えば酸化珪素層、窒化珪素層、酸窒化珪素層などとすることにより誘電体層14が緻密となり、誘電体層14自体が損傷を受けにくくなり、リークの電流密度の増加が抑制され放電収縮を起こしにくくなるため、安定な発光を維持することができる。
【0045】
なお、基板1および基板2として、上述した高融点ガラス、ソーダガラス(NaO・CaO・SiO)だけでなく、例えば硼珪酸ガラス(NaO・B・SiO)、フォルステライト(2MgO・SiO)、鉛ガラス(NaO・PbO・SiO)を使用することができる。
【0046】
また、本例の平板型光源としてクロム膜を基板1に蒸着法で形成したもので説明したが、これに限らず、電気抵抗の低い導体材料からなる複数対の放電電極12,12を略平行に設けてあればよく、放電電極材料として、Ni,Al,Au,Ag,Pd/Ag,Ta,Cu、また透明電極としてITO(インジウム・錫酸化物)やSnOなどを、単独または適宜組み合わせて用いることができる。また放電電極12,12の成膜方法としては、蒸着法に限らず、スパッタ法、スクリーン印刷法、メッキ法などにより透明板11の面11-2に導体を形成したのち、フォトリソグラフィ法、サンドブラスト法、リフトオフ法などによって所定の電極パターンに加工してもよいものである。
また、各一対の放電電極12、12の間隙である放電ギャップ13の寸法は、特に限定されないが、好ましくは10〜200mmである。
【0047】
また、本例では、放電電極12の表面に形成される誘電体層14は、酸化珪素(SiOx)、窒化珪素(SiNy)、酸窒化珪素(SiOxNy)などによる単独の膜で形成されるものとして説明したが、これに限らず従来の誘電体層としての酸化鉛(PbO)など膜の全面にこれら珪素化合物の膜を有していればよいものである。
また、形成方法としては、スパッタ法などのPVD法によるものやCVD法によるものが膜質の均一性・均質性・緻密性の点で好ましいが、ほかにイオンプレーティング法、印刷法、ドライフィルム法、塗布法(スプレーコーティング法含む)、転写法などでも、要求される発光の均一性によっては採用することができる。なお、このPVD法やCVD法以外の成膜法では、一般に膜厚が大となるので電界密度を所定とするためには、印加する交流電圧の電圧振幅を大きくする。
【0048】
保護膜層15を構成する材料としては、酸化マグネシウム(MgO)を例として説明したが、これに限らず、フッ化マグネシウム(MgF)、フッ化カルシウム(CaF)なども採用できるものである。なお、保護膜層15としては、単独材による膜だけでなく、これらのうちの選択された少なくとも2種類の材料から構成された積層膜構造としてもよい。なお、膜厚として酸化マグネシウムを0.6μmとして説明したが、これに限らず10μm程度までであれば支障なく採用できる。
【0049】
また、蛍光体層22の組成として、赤色用は、[(Y,Gd)BO:Eu],(Y:Eu)で説明したが、これに限らず例えば、(YBOEu),(YVO:Eu),(Y0.960.600.40:Eu0.04),(GdBO:Eu),(ScBO:Eu),(3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn)でもよい。また、緑色用は、(ZnSiO:Mn)で説明したが、これに限らず例えば、(BaAl1219:Mn),(BaMgA11627:Mn),(MgGa:Mn),(YBO:Tb),(LuBO:Tb),(SrSiCl:Eu)でもよく、青色用は、(BaMgA11423:Eu)で説明したが、これに限らず例えば、(YSiO:Ce),(CaWO:Pb),CaWO,YP0.850.15,(Sr:Eu),(Sr:Sn)などを使用することができる。
なお、上述例では液晶テレビなど液晶表示装置のバックライトとして白色光を発光させる例で説明したが、これに限らず赤色,緑色,青色の単色光の平面板光源としたり、光の3原色以外の発光色の平面板光源とすることが上述の蛍光体を単独或いは複数混合した蛍光体層により得ることができる。
【0050】
また、蛍光体層22の形成方法も厚膜印刷法以外に、例えば所定の割合で混合された蛍光体を、スプレーにより塗布する方法、蛍光体層22の形成部位に予め粘着性物質を付けておき、蛍光体粒子を付着させる方法、などを採用することができる。
【0051】
隔壁30の構造として、本例では略直方体のガラス片を略正方形の枠状に接合したガラススペーサーを用いた例で説明したが、これに限らず、ガラスで形成した矩形枠を用いたもの、基板2に凹部を設けて隔壁を一体に形成したもののほか、従来広く用いられている低融点ガラスにアルミナなどの金属酸化物を混合した周知の絶縁材料を使用することができる。
また、ガラススペーサーを用いる以外にも、例えばスクリーン印刷法、サンドブラスト法、ドライフィルム法、感光法などによっても形成することができる。
【0052】
ここで、スクリーン印刷法とは、スクリーン版に開口を設け、この開口から隔壁形成用材料をスキージで版の下側に押出し、基板上に隔壁形成用材料層を形成した後、焼成・硬化して隔壁30を形成する方法である。
サンドブラスト形成法とは、例えば、スクリーン印刷やロールコーター、ドクターブレード、ノズル吐出式コーターなどを用いて隔壁形成用材料層を基板上の全面に形成し硬化した後、隔壁形成用材料層の隔壁形成部をマスク層で被覆し、次いで、露出した部分をサンドブラスト法によって除去する方法である。
【0053】
ドライフィルム法とは、基板上に感光性フィルムをラミネートし、露光および現像によって隔壁形成予定部位の感光性フィルムを除去し、除去によって生じた凹部(溝)に隔壁形成用の材料を埋め込み、焼成する方法である。隔壁形成部位以外に残っている感光性フィルムは焼成によって燃焼、除去され、凹部(溝)に埋め込まれた隔壁形成用の材料が残り、隔壁となる。
【0054】
感光法とは、感光性を持たせた隔壁形成材料層を基板上に形成してから、露光および現像によってこの材料層をパターニングした後、焼成を行う方法である。
【0055】
放電空間70内に封入される放電ガスとしては、He−Xe混合ガス以外にも種々用いることができ、例えばHeガス(共鳴線の波長=58.4nm)、Neガス(同74.4nm)、Arガス(同107nm)、Krガス(同124nm)、Xeガス(同147nm)、を単独又は混合して用いることができる。特に単独で用いる場合、希ガスの中でも最も長い共鳴線波長を有するXeガスは、分子線の波長172nmにも強い紫外線を放射するので、好適な希ガスである。
【0056】
また、放電開始電圧の低下が期待できるペニング効果の大きい、Ne−Ar混合ガス、Ne−Xe混合ガス、He−Kr混合ガス、Ne−Kr混合ガス、Xe−Kr混合ガスなどの希ガス2種の混合の放電ガスだけでなく、例えばNe−Xe−Ar混合ガスなどの3種混合の放電ガスとしてもよい。
なお、放電ガスに要求される特性としては、下記の(1)〜(4)がある。(1)平板型光源の長寿命化の観点から、化学的に安定であり、かつ、ガス圧力を高く設定し得ること。(2)平板型光源の高輝度の観点から、紫外線の放射強度が大きいこと。(3)紫外線から可視光線へのエネルギー変換効率を高める観点から、放射される紫外線の波長が長いこと。(4)消費電力低減の観点から、放電開始電圧の低いこと、などである。
【0057】
また、封入されている放電ガスの全圧は、1×10Pa〜4×10Paが好ましいが、1×10Pa〜5×10Paでもよい。このような圧力範囲では、希ガス中で発生した紫外線に照射された蛍光体層22が良好に発光し、圧力が高いほど平板型光源を構成する各種部材のスパッタリング率が低減する結果、平板型光源を長寿命化することができる。
【0058】
また、上述例では、前面板10に透明板11を用いた反射型の平板型光源について説明したが、反射型に限らず、背面板20に透明な絶縁材料を用いた透過型の平板型光源の誘電体層にもリークの電流密度が電界強度1MV/cmで1×10−7A/cm以下となる、例えば珪素化合物の一例の酸化珪素(SiOx)、窒化珪素(SiNy)、酸窒化珪素(SiOxNy)による誘電体層を適用することができる。透過型の平板型光源では、蛍光体層22の発光は背面板20を通して観察される。
【0059】
本発明の平面型光源は、上述例に限ることなく本発明の要旨を逸脱することなく、その他種々の構成をとりうることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は本発明平板型光源の実施の形態の例の、Aは側面断面図、Bは斜視図である。
【図2】図1例の平板型光源の分解斜視図である。
【図3】誘電体の膜質の評価方法の説明に供する断面図である。
【図4】図1例の平板型光源のリード端子に供給する駆動電圧波形である。
【図5】従来の平板型光源の説明に供するAは平面図、Bは側面断面図、Cは斜視図である。
【図6】平板型光源における発光状態の説明に供するAは全面発光状態、Bは一の放電収縮状態、Cは別の放電収縮状態の説明図である。
【符号の説明】
【0061】
10…前面板、12…放電電極、14…誘電体層、20…背面板、22…蛍光体層、30…隔壁、70…放電空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一面に少なくとも一対の放電電極が設けられると共に、前記放電電極を覆う誘電体層が設けられた第1基板と、
一面に蛍光体層が設けられる第2基板と、
該第2基板と前記第1基板の間に配され、放電ガスを密封する放電空間を形成する隔壁と、を具備し 前記第1基板の前記誘電体層と前記第2基板の前記蛍光体層とが対向配置される平板型光源において、
前記放電電極間のリークの電流密度が電界強度1MV/cmで1×10−7A/cm以下の前記誘電体層を形成したことを特徴とする平板型光源。
【請求項2】
請求項1記載の平板型光源において、
前記誘電体層に珪素化合物の層を有することを特徴とする平板型光源。
【請求項3】
請求項1記載の平板型光源において、
前記誘電体層の厚さを50μm以下としたことを特徴とする平板型光源。
【請求項4】
請求項2記載の平板型光源において、
前記誘電体層の前記珪素化合物の層をSiOxとしたことを特徴とする平板型光源。
【請求項5】
請求項2記載の平板型光源において、
前記誘電体層の前記珪素化合物の層をSiNyとしたことを特徴とする平板型光源。
【請求項6】
請求項2記載の平板型光源において、
前記誘電体層の前記珪素化合物の層をSiOxNyとしたことを特徴とする平板型光源。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−294516(P2006−294516A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−116129(P2005−116129)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】