説明

平板瓦

【課題】瓦裏の瓦尻に瓦を葺く際、桟木に引掛ける引掛部を突設すると共に、瓦尻の表側に上記引掛部先端が嵌合可能な凹部を形成した平板瓦において、台車上に一定間隔で立てて自立させた状態で、台車ごと窯に入れて焼成する際、台車上での自立状態が安定し、台車の移動開始や停止時に倒れにくくする。
【解決手段】平板瓦11の瓦裏の瓦尻に瓦11を葺く際、桟木に引掛ける略三角形の引掛部12を瓦尻両側に突出形成すると共に、引掛部12間に凹形の窪み13を一対、一定間隔を存して形成する一方、瓦表の瓦尻に瓦11を積重ねたとき、上記引掛部12の先端部が嵌合可能な凹部14を一対、引掛部12に対応した箇所に形成すると共に、瓦表の水返し15に上記窪み13に嵌合可能な突部16を一対、上記窪み13に対応した箇所に形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート造りの建物、洋風の建築物等に用いられる平板瓦に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の平板瓦は、湾曲した通常の波板状をなす桟瓦と同様、プレス成形された粘土瓦を窯に入れて焼成することにより製造され、粘土瓦を窯に入れる際、波板状の桟瓦の場合は、台車上に一定間隔を置いて立てて載置され、台車ごと窯に入れて焼成される。波板状の桟瓦では立てて自立させたときの安定性があり、台車の移動開始や停止時に加速度が加わったときでも前後に倒れるおそれはないが、平板瓦の場合、立てて自立させたときの安定性が悪く、台車の移動開始時や停止時に立てた瓦が将棋倒しに倒れ易い。そこで従来、平板瓦を台車に載せて窯に入れる際には、台車上に瓦を一枚一枚仕切って縦向きに入れることができるケースを設置し、該ケースに平板瓦を一枚一枚差込んで入れたのち、窯に搬送していたが、この場合、平板瓦間のピッチが大となって、台車で一度に運べる瓦の枚数が少なくなり、生産性が低下すると共に、一枚の瓦を焼成するのに要するエネルギー原単位が上昇してコスト増をもたらす。この問題に対処し、平板瓦を桟瓦と同様、台車上に一定間隔を置いて立てて載置できるようにするため、下記特許文献1には、図1に示すように、瓦尻の裏側に瓦を葺く際に桟木を引掛ける略三角形の引掛部1を一対突設した平板瓦2が開示されている。
【特許文献1】特開2001−304771号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示される平板瓦によると、図2に示すように、引掛部1を設けることにより、瓦2の表面から引掛部先端までの間隔aが広がって台車3に立てて並べたときの安定性が増し、瓦2が矢印方向に傾こうとすると、引掛部1が踏ん張って倒れにくくなっていることから、台車上に桟瓦と同様に立てておくことができ、そのため従来の平板瓦に比べ、生産性が向上し、瓦を焼成するのに必要な瓦1枚当りのエネルギー単位を向上させることができる。
【0004】
本発明は、上述する平板瓦に改良を加え、瓦を台車上に立てて置いたときの安定性をより向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に係る発明は、瓦裏の瓦尻に瓦を葺く際、桟木に引掛ける引掛部を突設すると共に、瓦尻の表側に上記引掛部先端が嵌合可能な凹部を形成した平板瓦において、瓦尻の表側の凹部より離れた箇所の水返しに突部を形成すると共に、瓦尻の裏側に上記突部が嵌合可能な窪みを形成したことを特徴とし、
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明における突部が瓦尻から瓦頭に向かって瓦と平行に移動する真空吸引装置の吸着具の移動経路と干渉しない位置に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の平板瓦によると、瓦の突部先端から引掛部先端までの間隔が図1に示す瓦表面から引掛部先端までの間隔aより更に広がり、しかも瓦が後向きに倒れそうになると、引掛部が踏ん張り、前向きに倒れそうになると突部が踏ん張って、平板瓦を台車上に立てて自立させたときの安定性がより一層増すようになる。出荷等のため瓦を積み重ねて運搬するときには、上側の瓦の引掛部が下側の瓦の凹部に、また下側の瓦の突部が上側の瓦の窪みに嵌合することにより嵩張らず、積重ね状態が安定する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施形態の平板瓦について図面により説明する。
図3は、平板瓦を表側から見た図であり、図4は図3のA−A線における断面を示すもので、瓦裏の瓦尻に瓦11を葺く際、桟木に引掛ける略三角形の引掛部12を瓦尻両側に突出形成すると共に、引掛部12間に凹形の窪み13を一対、一定間隔を存して形成する一方、瓦表の瓦尻に瓦11を積重ねたとき、上記引掛部12の先端部が嵌合可能な凹部14を一対、引掛部12に対応した箇所に形成すると共に、瓦表の水返し15に上記窪み13に嵌合可能な突部16を一対、上記窪み13に対応した箇所に形成している。
【0008】
本実施形態の平板瓦によると、図4及び図5に示すように、引掛部先端と突部先端までの間隔dが図1に示す平板瓦に比べ、突部16の高さb分だけ間隔が広くなること、瓦11を立てたとき、後向き(実線の矢印方向)に倒れようとすると、引掛部12が踏ん張り、前向き(点線の矢印方向)に倒れようとすると、突部16が踏ん張って倒れにくくなり、瓦11を台車上に立てて自立させたときの安定性が増す。また出荷時に瓦11を積重ねて運搬するときには、引掛部12を下側の瓦11の凹部14に、突部16を上側に重ねる瓦の窪み13に嵌合させることにより、嵩張らず、運搬時の瓦のずれが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】従来の平板瓦の斜視図。
【図2】図1に示す従来の平板瓦を台車上に立てて並べた状態を示す図。
【図3】本発明に係る平板瓦の斜視図。
【図4】図3のA−A線断面図。
【図5】図3に示す平板瓦を立てた状態を示す図。
【符号の説明】
【0010】
11・・平板瓦
12・・引掛部
13・・窪み
14・・凹部
15・・水返し
16・・突部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
瓦裏の瓦尻に瓦を葺く際、桟木に引掛ける引掛部を突設すると共に、瓦尻の表側に上記引掛部先端が嵌合可能な凹部を形成した平板瓦において、瓦尻の表側の凹部より離れた箇所の水返しに突部を形成すると共に、瓦尻の裏側に上記突部が嵌合可能な窪みを形成したことを特徴とする平板瓦。
【請求項2】
上記突部が瓦尻から瓦頭に向かって瓦と平行に移動する真空吸引装置の吸着具の移動経路と干渉しない位置に形成されることを特徴とする請求項1記載の平板瓦。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−299670(P2006−299670A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123935(P2005−123935)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(591091663)株式会社石州川上窯業 (8)