説明

平滑筋制御装置

【課題】平滑筋又は腺の収縮および/または収縮力を直接的および局部的に制御する装置を提供する。
【解決手段】平滑筋の一部又は腺の付近に配置される少なくとも1つの電極と、前記電極に電力を供給し、前記平滑筋又は腺の刺激を発生しない非刺激性電場を発生させる制御器とを備え、前記非刺激性電場は、血流中の化学物質のレベルを制御するように前記平滑筋又は腺の活性に作用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋肉に電場をかけることによって平滑筋の機械的および/または電気的活性を制御する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの身体組織では、個々の細胞の活性、特に収縮は膜内外電位差の変化によって誘導される。これらのタイプの組織は、電気シグナルによって興奮させると活性化によって反応するので、興奮性組織とも呼ばれる。興奮性組織のいくつかの例としては、心筋、骨格筋、平滑筋および神経組織が挙げられる。多くの場合、かかる大多数の興奮性組織細胞の活性は、電気的な活性化シグナルを伝達することによって同期化される。活性化シグナルとは、興奮性細胞に達するとそれを脱分極させ、その活性を遂行する電気シグナルである。さらに、この脱分極により新たな伝達性活性化シグナルが作り出され、次いでこれが次の活性化されていない細胞に向けて伝達され続ける。ほとんどの興奮性組織では、脱分極の後、細胞は不応性となるので、活性化シグナルはすぐには逆戻りできない。
【0003】
胃腸(GI)管は、多くの活性が電気的活性化シグナルの伝達によって統合されている主要な生理学的系の一例である。GI管は、胃、小腸および大腸を含んでなっている。典型的な消化のプロセスにおいて、食物は口で咀嚼され、消化のための胃に送られる。食物は磨砕のための幽門洞に周期的に送られ、次いで再び胃へ送られる。一定時間の後、幽門括約筋が開き、食物は小腸へ送られる。小腸では食物は激しく攪拌され、大腸に達するまで腸のリズミカルな運動によって前方へ送られる。一方向の括約筋は小腸から大腸へのみ移動させる。食物はひとたび大腸へ来ると、大腸の運動によってさらに激しく攪拌されてコンパクトになる。これらの運動はまた消化された食物、ここでは糞便を、GI管の末端を特色付ける外部括約筋へと前進させる。
【0004】
GI管は主に、脱分極した際に収縮する平滑筋からなっている。前記したGI管の全ての運動は伝わる活性化シグナルによって同期化される。考えられる限り、多くの場合、これらの電気シグナルが正しく活性化されない、かつ/または応答しないと疾病が起こる。1つの例では、潰瘍がGI組織の炎症を引き起こす。炎症組織は疑似活性化シグナルを作り出し、これが無秩序に胃を収縮させ得る。炎症組織はまた、活性化シグナルを導かないことによって、あるいは健全な組織とは異なる伝導速度を持つことによって胃の活性化プロフィールに影響を及ぼし得る。
【0005】
GI管のペーシングは、例えばその開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,292,344号および同第5,540,730号に示されるように、当技術分野で周知である。同第’730号の特許では、迷走神経の種々の部分を刺激することによりGI管の興奮性が高まること、および低下することの双方が記載されている。また、同第’344号の特許では、GI管の一部を直接刺激するペースメーカーについて記載されている。GI管の電気的刺激はまた、その開示が参照により本明細書に組み入れられるSU 1039506で明示されるように、術後制動症候群(post operative damping syndrome)に罹患した患者のGI管を刺激するのに用いられることも知られている。
【0006】
子宮もまた、電気的活性化シグナルに応じて収縮する平滑筋を含んでなる。その開示が参照により本明細書に組み入れられる、D. Devedeuxらによる"Uterine Electromyography: A Critical Review", Am. J. Obstet Gynecol 1993; 169:1636-53には、種々のタイプの子宮筋およびかかる筋肉によって生起された電気シグナルが記載されている。そこに記載されている重要な発見は、子宮の電気的活性は分娩前では相関はないが、分娩に入ると、それらに関与する収縮と電気的活性がよく同期化するようになることが明らかであるということである。
【0007】
最近の医学の実践では、ある薬剤を投与することにより分娩を遅延させることが可能である。しかしながら、これらの薬剤の取扱いはいくぶん不明確である。さらに、オキシトシンにような他の薬剤を用いて分娩を誘導することもできる。残念ながら、必要とされるオキシトシンの用量は予め知ることはできず、また、薬剤の過量は胎児および/または母胎に機械的に損傷を与える可能性がある過剰収縮を引き起こし得る。
【0008】
その開示が参照により本明細書に組み入れられるSU 709078では、外用電流を用いて分娩後の子宮を刺激して興奮を高め、子宮を迅速に収縮させることにより後産の娩出や出血の軽減を助けることが記載されている。
【0009】
痛みを減ずるための局部印加電場の使用は当技術分野で十分公知である。その開示が参照により本明細書に組み入れられる"Electrical Field Stimulation-Meditated Relaxation of a Rabbit Middle Cerebral Artery", D.A. Van RipperおよびJ.A. Bevan, Circulatory Research 1992, 70:1104-1112では、電場をかけることによって動脈の弛緩が起こすことを記載されている。その開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第4,537,195号では、頭痛の治療のためのTENS(経皮電気神経刺激)を用いる痛みの治療が記載されている。この特許では電気刺激が動脈壁における筋肉の刺激により動脈の収縮を防ぎ、それにより頭痛の原因である毛細管の拡張を防ぐと仮定されている。
【0010】
その開示が参照により本明細書に組み入れられるSU 1147408では、動脈に電場をかけ、心臓のリズムと同期化するようにその電場の周波数を変えることによって肝臓内及び周辺の血流の分布を変化させる方法が記載されている。
【0011】
その開示が参照により本明細書に組み入れられる米国特許第5,447,526号では、
平滑筋、特に子宮筋の収縮を阻害するまたは低下させるための経皮電気的平滑筋制御装置が記載されている。この制御装置は腹部の外側につけられ、これもまた筋肉の収縮を検知し、検知された収縮に応じ、医学適用によって子宮に全体的に阻害性または刺激性パルスを施す。
【特許文献1】米国特許第5,292,344号明細書
【特許文献2】米国特許第5,540,730号明細書
【特許文献3】ソ連特許第1039506号明細書
【特許文献4】ソ連特許第709078号明細書
【特許文献5】ソ連特許第1147408号明細書
【非特許文献1】D. Devedeuxらによる"Uterine Electromyography: A Critical Review", Am. J. Obstet Gynecol 1993; 169:1636-53
【非特許文献2】"Electrical Field Stimulation-Meditated Relaxation of a Rabbit Middle Cerebral Artery", D.A. Van RipperおよびJ.A. Bevan, Circulatory Research 1992, 70:1104-1112
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明のいくつかの態様の目的は、平滑筋の収縮および/または収縮力を直接的および局部的に制御する方法を提供することである。本発明の特に好ましい実施形態では、かかる制御は、特に胃腸(GI)管、子宮、膀胱、内分泌腺、胆嚢および血管に使用される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者らは、判断による非刺激性電場の印加により平滑筋の収縮力を高めることもできるし、低下させることもできることを見出した。非刺激性電場とは、平滑筋において伝わる活動電位を誘導しない電場である。しかしながら、かかる非刺激性電場は刺激性電場に対する平滑筋の反応を向上させる。発明者らはまた、平滑筋を活性化シグナルに対して減感させることができ、それにより減感した平滑筋は活性化シグナルに応答せず、また活性化シグナルを伝達しないことを見出した。電場を取り除いた後すぐ、その作用は起こらなくなる。多くの平滑筋は複数の繊維層を有することで特徴づけられ、各々層の繊維は好ましい方向を有している。本発明の好ましい実施形態では、個々の層は、繊維の向きに実質的に平行に電場をかけることにより選択的に制御される(この場合、電場は極めて効果的である)。筋肉層と電場の間の相互作用の程度が小さい方が望ましければ、電場は筋肉繊維に垂直にかけられることが好ましい。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態目的は、薬剤および/または単一もしくは複数部位のペーシングを用いて可能なものよりもより正確にGI管を制御する方法を提供することである。本発明の好ましい実施形態では、弱まった収縮を補い、かつ/またはそうでなければ固着性ボーラスを前進させるために、GI管の部分の収縮力を高める。その代わりとして、またはそれに加えて、腸が過度に敏感な患者を治療するためなどには、収縮力を減じる。その代わりとして、またはそれに加えて、切開部分の治癒を促進するために、腸の切開部を減感、すなわち電気的活性化シグナルから遮断し得る。収縮の低下または遮断はまた、急性の下痢の治癒、および胃からの漏出が望ましくない場合にかかる漏出を止めるのに有用である。その代わりとして、またはそれに加えて、腸の運動性を高めるには、例えば戻り波(リフラックス)を遮断することによって、通常前進波と戻り波を含むGI管の活性化プロフィールを変更する。戻り波の遮断は、前進波が通過した後に腸の1以上の節を減感させて、戻り波が減感した節で止まるようにすることにより行われ得る。あるいは、戻り波の期間、腸の全長を減感させる。戻り波が停止した後は、減感電場を取り除いて前進波が適切に伝わるようにすることが好ましい。前進波および戻り波はそれらの機械的活性化によるか、またはより好ましくはそれらの電気的活性によるかのいずれかで検出できる。
【0015】
本発明の特に好ましい実施形態では、結腸の下端の緊張を緩和してその部位での血液供給を向上させ、痔や裂肛の治癒を助ける。痔に伴う痛みの多くは組織の虚血によって引き起こされ、次いで結腸下部の緊張の異常な上昇によって引き起こされることが最近示された。かかる緊張は本明細書ではニトログリセリンのような薬剤を局所塗布により処置される。
【0016】
内視鏡は、本発明のもう1つの好ましい実施形態に従い、平滑筋に内視鏡を前進および/または後退させるよう腸の活性を局部的に制御する。その代わりとして、またはそれに加えて、薬剤を用いる内蔵の弛緩の代わりに、および/またはそれに加え、局部的な電気的減感が使用される。
【0017】
本発明の実施形態のいくつかは内視鏡または結腸鏡に関して記載されているが、本発明のこれらの実施形態は、一般に探針、特に内視鏡、結腸鏡、子宮鏡および直腸鏡に応用されると理解されるべきである。
【0018】
本発明のもう1つの好ましい実施形態の目的は、分娩の開始の遅延および/もしくは促進、分娩の長さの延長もしくは短縮、ならびに/または開始後もしくは分娩の前段階での停止を含む、分娩のより正確な制御法を提供することである。分娩を停止させることは分娩の早期開始の症例を治療するのに特に重要である。かかる制御は、本発明の好ましい実施形態に従い、子宮筋の収縮性を減じること、それらの収縮性を高めること、またはそれらを減感して同期的な収縮を起こすことができないようにすることにより行使される。分娩は自給プロセス(self-feeding process)であり、そこでは収縮力は、次の収縮サイクルでさらに強力な収縮力を作り出すと仮定されている。このようなフィードバックループは収縮力の制動により断ち切ることができる。さらに、子宮が減感した際には収縮は起こらず、分娩は、薬剤から予想され得るような危険を胎児に与えることなく少なくとも一時的に停止する。このようにして中断した分娩は、薬剤によって中断された分娩に伴うような問題もなく、直ちに再開させることができる。本発明の好ましい実施形態では、その活性化シグナルが早期分娩を起こし得る部分を含む子宮筋腫のような子宮の異常部位から生起される疑似的な電気的活性化シグナルが、子宮組織の局部的減感および/または遮断によって小さくなる。
【0019】
本発明のもう1つの好ましい実施形態に従い、月経周期的に計画された子宮の収縮(痙攣)が、かかる痙攣を検知し、子宮へ減感電場をかけてかかる痙攣を制動することにより治療される。あるいは、痙攣が起こると予測されるときにかかる減感電場をかけてもよい。
【0020】
本発明のもう1つの好ましい実施形態の目的は、膀胱の収縮を制御することである。本発明の1つの好ましい実施形態では、膀胱を減感して、かかる収縮が望ましくないときに、一時的に収縮させないようにする。好ましくは、本発明の好ましい実施形態に従う膀胱制御装置は、膀胱が充満を越えるようになるとその活性を停止するフィードバック機構を含む。本発明の付加的または選択的実施形態では、膀胱の収縮力は排尿中に高められる。本発明の好ましい実施形態では、膀胱が肥大した患者において膀胱の収縮力が高められ、その結果膀胱は徐々に縮む。かかる治療は、尿道の閉塞を軽減するためにその処置が使用される薬剤処置および/またはステントの移植と組み合わせることが好ましい。
【0021】
本発明のもう1つの好ましい実施形態によれば、内分泌腺もしくは神経内分泌腺の放出速度が制御され、好ましくは減感電場をかけることによって減じられる。本発明の好ましい具体例では、高インスリン血症患者で膵臓のβ島細胞に減感電場をかけてインスリンの生成を減じる。かかる制御はβ島細胞の電気的活性を測定せずに適用されることが好ましい。その代わりとして、またはそれに加えて、かかる制御は、血液グルコースレベルのモニタリングの間に適用される。減感電場は好ましくは局部的にかけられるDC電場であり、電極の分極および/または組織に対する損傷を防ぐためにその極性は時間当たり1度といった極めて低い頻度でしか切り替わらない。
【0022】
本発明のもう1つの態様は、身体の主要な血管を電気的に制御することによる血管痙攣、狭心症および/または異常血圧の治療に関する。本発明の好ましい実施形態によれば、腹部静脈のような大静脈は、それらに局部的阻害性電場をかけることによって弛緩される。その代わりとして、またはそれに加えて、大動脈のような主要な動脈は、それらに局部的阻害性電場をかけることによって弛緩される。その代わりとして、またはそれに加えて、刺激性電場を動脈および/または静脈かけ、それらを収縮させる。認識できる限り、動脈および静脈の容積の変化は、患者の血圧および/または心血管の性能に直接影響を及ぼし得る。さらに、静脈の弛緩は心臓の前負荷を軽減し、それにより虚血、例えば狭心症の発現を止めることができる。さらには、大動脈の弛緩は、多くの場合で狭心症の原因となる血管痙攣の症例に有用である。
【0023】
弛緩性電場は痙攣中の血管にかけることが好ましく、これはある場合には冠状血管であってもよい。電気的に誘導される血管の弛緩は、医薬の代わりに、またはさらに使用してもよい。さらに、動脈および静脈の強制的な弛緩は急性虚血の発生を処置するのに有用である。典型的には、虚血発生は心拍数を増大させ、これが虚血性心組織をさらに緊張させる。心臓の前負荷および/または後負荷を軽減することにより、心臓の要求量が減り、これにより虚血組織の酸素要求が減り、かつ/または虚血組織の灌流がよりよくなる。その代わりとして、またはそれに加えて、心筋の灌流を助けるには拡張期を延長させてもよい。拡張期の延長は例えば、その開示が参照により本明細書に組み入れられる、1997年1月8日出願のPCT IL97/00012, "Electrical Muscle Controller"に記載されているような技術を用いて、心臓の少なくとも一部を減感させることにより達成してもよい。
【0024】
従って、本発明の好ましい実施形態によれば、平滑筋の損傷の治癒を促進する方法であって、
損傷を有する平滑筋部分を選択し、
その部分に、その部分の機械的活性を減じる非刺激性電場をかけることを含んでなる方法が提供される。
【0025】
電場の印加が平滑筋部分を減感させることを含んでなることが好ましい。その代わりとして、またはそれに加えて、電場の印加が損傷を取り巻く平滑筋の電気的活性を遮断することを含んでなる。
【0026】
損傷は筋肉の虚血部であることが好ましい。その代わりとして、またはそれに加えて、損傷は筋肉の縫合部であることが好ましい。
【0027】
機械的活性の軽減は、その位置で機械的活性を阻害することを含んでなることが好ましい。
【0028】
本発明の好ましい実施形態では、平滑筋部分が胃腸(GI)管部分である。
【0029】
本発明の好ましい実施形態によれば、
炎症を起こした腸の部分を選択し;
その部分での機械的活性を減じる電場をかける、
ことを含んでなる、下痢の治療法もまた提供される。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、
胃の少なくとも一部を選択し;
その部分に、空腹を遅らせるまたは防ぐ電場をかける、
ことを含んでなる、肥満の治療法もまた提供される。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によれば、
胃の少なくとも一部を選択し;
その部分に、胃の機械的活性を減じる電場をかける、
ことを含んでなる、吐気の治療法もまた提供される。
【0032】
本発明好ましい実施形態によれば、
胃の出口部分に、その末端部の運動性を減じる電場をかけることを含んでなり;かつ
空腹時に前記電場を除去することが望ましい、
空腹の制御法もまた提供される。
【0033】
好ましくは、その方法は、前記出口部分に第2の電場をかけることをさらに含んでなり、空腹時に第2の電場が胃の運動性を高めることが好ましい。第2の電場は刺激性電場であってもよい。その代わりとして、またはそれに加えて、第2の電場は収縮力を高めるものである。
【0034】
本発明の好ましい実施形態によれば、
結腸を有する患者を準備し;
結腸の一部に、結腸の少なくとも一部、すなわち、その出口付近を弛緩させる電場をかける
ことを含んでなる、痔の治療法が提供される。
【0035】
前記の痔は結腸部分にないことが好ましい。その代わりとして、またはそれに加えて、その方法は、
結腸部の張力を測定し、
電場の印加が、測定された張力が所定量を越える場合に電場をかける、ことを含んでなる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態では、前記の方法において、電場の印加が、局部の活性化に遅れて電場がかけられることを含んでなる。
【0037】
本発明の好ましい実施形態によれば、
GI管の部分を選択し;
その部分に、その部分の収縮力を高める非刺激性電場をかける、
ことを含んでなる、GI管の運動性を高める方法もまた提供される。
【0038】
好ましくはその方法は、第2の電場をGI管の第2の部分、すなわち、前記部分から下流にかけ、その第2の電場がその第2の部分の収縮力を低下させることを含む。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によれば、
GI管における戻り波のタイミングを決定し;
そのGI管の少なくとも一部に、戻り波に対するGI管の応答を減じる電場をかける、
ことを含んでなる、GI管の運動性を高める方法もまた提供される。
【0040】
好ましくは、タイミングの決定は、前進波を検出することを含んでなり、かつ、電場の印加は、その前進波と実質的に干渉しない時にだけ電場をかけることを含んでなる。
【0041】
その代わりとして、またはそれに加えて、タイミングの決定は、戻り波を検出することを含んでなり、かつ、電場の印加は、その戻り波と実質的に干渉しない時にだけ電場をかけることを含んでなる。
【0042】
その代わりとして、またはそれに加えて、電場の印加は、戻り波を同期化する活性化シグナルの伝達を阻害する電場をかけることを含んでなる。
【0043】
その代わりとして、またはそれに加えて、電場の印加は、GI管の少なくとも一部の収縮力を減じる電場をかけることを含んでなる。
【0044】
本発明の好ましい実施形態によれば、各々繊維の向きが異なった複数の筋肉層を有する平滑筋のある層だけを選択的に刺激する方法であって、
第1の筋肉層の繊維の向きと平行な阻害性電場を筋肉にかけ;
第2の筋肉層を刺激する刺激性電場を筋肉にかける、
ことを含んでなる方法もまた提供される。
【0045】
本発明の好ましい実施形態によれば、各々繊維の向きが異なった複数の筋肉層を有する平滑筋のある層だけの収縮力を選択的に高める方法であって、
第1の筋肉層の繊維の向きと平行に阻害性電場を筋肉にかけ;
第2の筋肉層の繊維の向きと平行に向き、第2の筋肉層の収縮力を高める第2の電場を筋肉にかける、
ことを含んでなる方法もまた提供される。
【0046】
本発明の好ましい実施形態によれば、平滑筋の多点ペーシング法であって、
前記筋肉の複数の位置で刺激性電場をかけ;
前記複数の位置の中にある第2の複数の位置で少なくとも1つの阻害性電場をかけ、その阻害性電場が前記第1の複数のペーシングされた位置間の活性化シグナルの伝達を妨げる、
ことを含んでなる方法もまた提供される。
【0047】
本発明の好ましい実施形態によれば、生体内の平滑筋の少なくとも一部の局部活性を制御する装置であって、
制御される平滑筋部分と接触させるのに適合している複数の電極;および
前記電極に、その平滑筋において伝達する活動電位を発生しない電場となる電力を供給し、その電場が活性化シグナルに対する平滑筋の反応を改変する制御器、
を含んでなる装置もまた提供される。
【0048】
好ましくは、本装置は、前記部分の電気的活性を検出する電気的活性センサーを含んでなり、前記制御器が前記センサーからのシグナルに応じて前記電極に電力を供給する。前記電極の各々に電力を供給する制御装置はその局部的な電気的活性に応答することが好ましい。その代わりとして、またはそれに加えて、前記電気的活性センサーは前記の複数の電極のあるものを通じて電気的活性を検知する。
【0049】
その代わりとして、またはそれに加えて、本装置は、前記の複数の電極のうち選択されたものの間の少なくとも1つのインピーダンスを検知するインピーダンスセンサーを含む。
【0050】
その代わりとして、またはそれに加えて、本装置は、前記の部分で機械的活性を検出する力変換器を含み、前記制御器が前記センサーからのシグナルに応じて前記電極に電力を供給する。前記制御器は前記の機械的活性が一定の閾値を越える場合に筋肉に阻害性電場をかけることが好ましい。その代わりとして、またはそれに加えて、前記電極の各々における電力供給はその局部的な機械的活性に応答する。
【0051】
その代わりとして、またはそれに加えて、前記の非刺激性電場は前記部分で機械的活性を阻害する。その代わりとして、またはそれに加えて、前記の非刺激性電場は前記部分の収縮力を減じる。その代わりとして、またはそれに加えて、前記の非刺激性電場は前記部分の収縮力を高める。本発明の好ましい実施形態では、前記制御器が前記電極の少なくとも1つにおいて刺激性電場となる電力を供給する。
【0052】
本発明の好ましい実施形態では、前記の複数の電極が二次元マトリックスで配列される。
【0053】
その代わりとして、またはそれに加えて、前記制御器は前記の複数の電極の1つに選択的に電力を供給して、2つの垂直電場のうち1つを選択的に発生させる。
【0054】
本発明の好ましい実施形態では、前記制御器は胃の内部に埋め込み、胃壁に取り付けるのに適合している。
【0055】
その代わりとして、またはそれに加えて、前記制御器は子宮の内部に埋め込み、子宮壁に取り付けるのに適合している。
【0056】
その代わりとして、またはそれに加えて、前記制御器は体内のGI管の一部の外側に埋め込むのに適合している。
【0057】
その代わりとして、またはそれに加えて、前記制御器は体内の子宮の外側に埋め込むのに適合している。
【0058】
本発明の好ましい実施形態では、制御装置が子宮に適合している場合、前記制御器が子宮内の収縮頻度を決定し、前記制御器が決定されたその頻度に応じて前記電極に電力を供給する。
【0059】
前記電極は弾性リード線を含んでなることが好ましい。
【0060】
本発明の好ましい実施形態では、前記電極は前記子宮の複数の離れた領域に取り付けられる。
【0061】
本発明の好ましい実施形態では、前記制御器は実質的に子宮全体の機械的活性を検知し、かつ、阻害する。その代わりとして、またはそれに加えて、前記制御器は実質的に子宮全体の収縮力を高める。
【0062】
本発明の好ましい実施形態では、前記制御器は直腸に、または膣に挿入するのに適合したカプセル状である。
【0063】
その代わりとして、またはそれに加えて、前記電極は体内に埋め込むのに適合し、一方、前記制御は体外に設置するのに適合している。前記電極は体外から前記平滑筋から電源を切るのに適合していることが好ましい。
【0064】
本発明の好ましい実施形態のよれば、GI管の2つの部分を結ぶスリーブ部分;
ボタンの各側でGI管と電気的に接触するのに適合した少なくとも2つの電極;および
電極に電力を供給して、そのボタンの付近のGI管の収縮力を減じる制御器、
を含んでなる吻合ボタンもまた提供される。
【0065】
前記制御器は、ボタンの一方の側のGI管からボタンの他方の側のGI管へペーシングシグナルを伝達することが好ましい。
【0066】
その代わりとして、またはそれに加えて、力を減じることは、ボタンの場所でGI管の電気的活性を阻害することを含んでなる。
【0067】
本発明の好ましい実施形態によれば、腸における戻り波を阻害する装置であって、
腸の一部に阻害性電場をかける少なくとも1つの電極;
腸における波の伝達を検知するセンサー;および
検知された伝達波に応じて前記電極に電力を供給する制御器、
を含んでなる装置もまた提供される。
【0068】
前記センサーは戻り波を検出することが好ましい。
【0069】
本発明の好ましい実施形態によれば、ボーラスを前進させる装置であって、
前記ボーラスに隣接した第1のGI管の部分に電場をかける少なくとも1つの第1の電極;
前記ボーラスから下流の第2のGI管の部分に電場をかける少なくとも1つの第2の電極;および
第1の部分の収縮力を高める非刺激性電場によって少なくとも1つの第1の電極に電力を供給し、かつ、第2の部分の筋肉を弛緩させる非刺激性電場によって少なくとも1つの第2の電極を電力を供給する制御器、を含んでなる装置もまた提供される。
【0070】
本装置は、GI管の第1部分にボーラスの存在を検出するインピーダンスセンサーを含んでなることが好ましい。
【0071】
本発明の好ましい実施形態では、GI管の診断を助ける方法であって、
GI管の部分の内部に、先端部を有する延長探針を準備し;
探針の先端部に隣接するGI管部に、GI管部の弛緩に効果をもたらす非刺激性電場をかける、
ことを含んでなる方法もまた提供される。
【0072】
その方法は、前記電場をかけた後にGI管部を膨張させることを含んでなることが好ましい。
【0073】
前記GI管部は胆管に隣接する部分であることが好ましい。
【0074】
本発明の好ましい実施形態では、先端部を有する延長探針を進入させ(advance)、GI管の部分に挿入する方法であって、
先端部の場所で、GI管の部分を収縮させて探針を捕らえる第1の電場をかけ;
先端部から離れた探針部分に隣接する第2のGI管の部分に、第2のGI管の部分を伸長させる第2の電場をかける、
ことを含んでなる方法もまた提供される。
【0075】
その方法は、先端部から離れた探針部分に隣接する第3のGI管の部分に、探針の周囲を収縮させないように第3のGI管の部分を弛緩させる第3の電場をかけることを含む。
【0076】
その代わりとして、またはそれに加えて、その方法は、阻害性電場をかけて、GI管の第1の部分と他の部分の間の活性化シグナルの伝達を遮断することを含む。

本発明の好ましい実施形態では、延長探針を進入させる方法であって、
GI管の部分の内部に、先端部を有する延長探針を準備し;
GI管の部分に、腸が所望の方向に探針を送るように刺激性電場をかける、
ことを含んでなる前記方法もまた提供される。
【0077】
前記刺激性電場は、所望の輸送方向によって、先端部の場所かまたは先端部から離れた探針に沿った異なる位置かのいずれかに選択的にかけられることが好ましい。
【0078】
その代わりとして、またはそれに加えて、その方法は、前記部分に阻害性電場をかけて、その部分と残りのGI管の間の活性化シグナルの伝達を遮断することを含む。
【0079】
本発明の好ましい実施形態では、前記探針は内視鏡である。あるいは、前記探針は結腸鏡である。
【0080】
本発明の好ましい実施形態によれば、GI管内に進入させるのに適合した延長探針であって、
先端部を有する延長本体;
少なくとも該先端部に配置した複数の電極;および
選択的に電極に電力を供給して、平滑筋の収縮に作用する非刺激性電場を与える制御器、
を含んでなる前記探針もまた提供される。
【0081】
本探針は、探針本体の少なくとも一部に沿って配置された第2の複数の電極を含むことが好ましい。
【0082】
その代わりとして、またはそれに加えて、前記制御器は第1の複数の電極に電力を供給し、前記GI管の部分に前記探針を選択的に進入または後退させる。
【0083】
その代わりとして、またはそれに加えて、前記制御器は前記第1および第2の複数の電極の1つに電力を供給して、探針の先端部に隣接するGI管の部分からGI管の他の部分への活性化シグナルの伝達を阻害する。
【0084】
本発明の好ましい実施形態によれば、子宮を制御する方法であって、
望ましくない活性化シグナルを生ずると推測される子宮の部分を決定し;
前記推測部分の周囲の子宮筋に局部的阻害性電場をかける、
ことを含んでなる前記方法もまた提供される。
【0085】
本発明の好ましい実施形態によれば、子宮を制御する方法であって、
望ましくない活性化シグナルを生ずると推測される子宮の部分を決定し;
前記推測部分に局部的減感性電場をかける、
ことを含んでなる前記方法もまた提供される。
【0086】
本発明の好ましい実施形態によれば、分娩を制御する方法であって、
子宮の複数の位置で局部的活性化を決定し;
その複数の位置の各々に、局部的活性化に遅れた時点で非刺激性電場をかける、
ことを含んでなる前記方法もまた提供される。
【0087】
前記非刺激性電場が前記の複数の位置で収縮力を高めることが好ましい。
【0088】
その代わりとして、またはそれに加えて、前記非刺激性電場は前記の複数の位置で収縮力を減じる。
【0089】
その代わりとして、またはそれに加えて、前記非刺激性電場は子宮を伝わる活動電位の伝導を阻害する。
【0090】
本発明の好ましい実施形態では、その方法は、複数の電極を複数の位置に埋め込むことを含む。前記電極は封入された電源を含むことが好ましい。その代わりとして、またはそれに加えて、前記埋め込みは帝王切開中に行われる。
【0091】
本発明の好ましい実施形態によれば、産道を弛緩させる非刺激性電場を産道にかけることを含んでなる分娩補助法もまた提供される。
【0092】
本発明の好ましい実施形態によれば、産道の収縮力を高める非刺激性電場を産道にかけることを含んでなる早産の予防方法もまた提供される。
【0093】
本発明の好ましい実施形態によれば、子宮の痙攣を治療する方法であって、
子宮の少なくとも1つの位置において電気的または機械的活性を検出し;
前記の少なくとも1つの位置に非刺激性電場をかける、
ことを含んでなる前記方法もまた提供される。
【0094】
本発明の好ましい実施形態によれば、痙攣を治療する方法であって、
子宮内部に少なくとも1つの電極を提供し、その1つの電極がその少なくとも1つの位置で子宮の少なくとも一部と接触し;
その部分に非刺激性電場をかける、
ことを含んでなる前記方法もまた提供される。
【0095】
本発明の好ましい実施形態では、非刺激性電場は前記の少なくとも1つの位置で活性化シグナルの伝達を阻害する。その代わりとして、またはそれに加えて、非刺激性電場はその少なくとも1つの位置で収縮力を減じる。
【0096】
本発明の好ましい実施形態によれば、複数の個別カプセルを含んでなり、各カプセルが少なくとも1つの電極と、電極に電力を供給する電源を含み、その電極が局部的非刺激性電場をかける平滑筋制御装置もまた提供される。前記カプセルの各々は平滑筋の局部的活性を測定するセンサーを含むことが好ましい。
【0097】
その代わりとして、またはそれに加えて、前記カプセルは外部制御器が媒介することなくそれらの電極への電力供給を同期化するよう作用する。
【0098】
本発明の好ましい実施形態によれば、痙攣を治療する装置であって、
外部分を有し、子宮内部に上手く埋め込むのに適合した軟質本体;
前記本体の外部に配置された複数の電極;および
前記電極に電力を供給して非刺激性電場を発生させる制御器、
を含んでなる前記装置もまた提供される。
【0099】
前記軟質本体は膨張性があることが好ましい。その代わりとして、またはそれに加えて、本装置は子宮外に設置するのに適合した第2の電極を含むことが好ましい。
【0100】
本発明の好ましい実施形態によれば、心臓を含む循環系を制御する方法であって、
静脈に隣接して電極を提供し;
心臓の前負荷が大きくなるよう、該電極に電力を供給して血管を収縮させる、
ことを含んでなる前記方法もまた提供される。
【0101】
本発明の好ましい実施形態によれば、心臓を含む循環系を制御する方法であって、
静脈に隣接して電極を提供し;
心臓の前負荷が小さくなるよう、該電極に電力を供給して血管を拡張させる、
ことを含んでなる前記方法もまた提供される。
【0102】
本発明の好ましい実施形態によれば、心臓を含む循環系を制御する方法であって、
動脈に隣接して電極を提供し;
心臓の後負荷が大きくなるよう、該電極に電力を供給して血管を収縮させる、
ことを含んでなる前記方法もまた提供される。
【0103】
本発明の好ましい実施形態によれば、心臓を含む循環系を制御する方法であって、
動脈に隣接して電極を提供し;
心臓の後負荷が小さくなるよう、該電極に電力を供給して血管を拡張させる、
ことを含んでなる前記方法もまた提供される。
【0104】
本発明の好ましい実施形態によれば、心臓を有する循環系において血管の痙攣を制御する方法であって、
管腔が異常に収縮する結果となる痙攣中の毛細管を決定し;
管腔を拡張させる非刺激性電場をその毛細管にかける、
ことを含んでなる前記方法もまた提供される。
【0105】
循環系を制御する前記方法の2種以上をともに実施してもよいと理解されるべきである。
【0106】
本発明の好ましい実施形態では、その方法は心臓の少なくとも一部に非刺激性電場をかけることを含む。
【0107】
本発明の好ましい実施形態によれば、心臓を有する循環系を制御する装置であって、
少なくとも1つの主要な血管の付近に配置された複数の電極;
血圧を測定する血圧センサー;および
測定された血圧に応じて前記複数の電極に電力を供給する制御器、
を含んでなる前記装置もまた提供される。
【0108】
本装置は、前記制御器を作動させる外部制御を含むことが好ましい。
【0109】
あるいは、またはそれに加え、本装置は、心拍を検出するECGセンサーを含む。あるいは、またはそれに加え、前記制御器は前記血管を弛緩させて血圧を降下させる。あるいは、またはそれに加え、前記制御は前記血管を収縮させて血圧を上昇させる。
【0110】
本発明の好ましい実施形態によれば、腺の放出量を制御する方法であって、
腺の付近に少なくとも1つの電極を提供し;
腺に非刺激性電場をかける、
ことを含んでなる前記方法もまた提供される。
【0111】
非刺激性電場は腺におけるホルモン産生細胞の活性を阻害することが好ましい。その代わりとして、またはそれに加えて、非刺激性電場は実質的にDC電場である。その方法は、電場の極性を周期的に変更することが好ましい。ある極性は有意に長い時間適用されることが好ましい。
【0112】
本発明の好ましい実施形態では、前記の腺は膵臓である。その方法は、血中のグルコースレベルをモニターすることを含み、前記電場の印加はモニターされたレベルに応じて電場をかけることを含んでなることが好ましい。
【0113】
本発明の好ましい実施形態によれば、腺の放出量を制御する装置であって、
血流中の化学物質のレベルを測定するセンサー;
前記の腺に隣接した少なくとも1つの電極;および
測定されたレベルに応じて前記電極に非刺激性電場となる電力を供給する制御器、
を含んでなる前記装置もまた提供される。
【0114】
前記化学物質はグルコースであることが好ましい。その代わりとして、またはそれに加えて、前記装置は完全に埋め込み可能である。
【0115】
本発明の好ましい実施形態によれば、平滑筋器官の活性化プロフィールを制御する方法であって、
該器官の所望の活性化プロフィールを決定し;
該器官の一部に少なくとも1つの非刺激性電場をかけて、その活性化プロフィールを改良する、
ことを含んでなる前記方法もまた提供される。
【0116】
前記活性化プロフィールは機械的活性化プロフィールを含んでなることが好ましい。
【0117】
本発明の好ましい実施形態では、その方法は、
平滑筋の張力を測定し;
測定された張力に応じて非刺激性電場の印加を変更する、
ことを含む。
【0118】
その代わりとして、またはそれに加えて、その方法は、
平滑筋の圧力を測定し;
測定された圧力に応じて非刺激性電場の印加を変更する、
ことを含む。
【0119】
その代わりとして、またはそれに加えて、その方法は、
平滑筋に少なくとも1つの刺激性電場をかけることを含んでなる。
【0120】
その代わりとして、またはそれに加えて、非刺激性電場の印加は、筋肉に阻害性電場をかけることを含んでなる。
【0121】
その代わりとして、またはそれに加えて、非刺激性電場の印加は、筋肉の収縮力を減じる電場をかけることを含んでなる。
【0122】
その代わりとして、またはそれに加えて、非刺激性電場の印加は、筋肉の収縮力を高める電場をかけることを含んでなる。
【0123】
器官は胃であることが好ましい。その代わりとして、またはそれに加えて、器官は小腸である。その代わりとして、またはそれに加えて、器官は大腸である。その代わりとして、またはそれに加えて、器官は子宮である。
【0124】
本発明の好ましい実施形態によれば、平滑筋器官に対する機械的活性化プロフィールを命令する装置であって、
器官一面に配置するのに適合した少なくとも3つの電極;
器官の局部的な機械的活性を検知する少なくとも1つのセンサー;および
検知された局部的な機械的活性に応じて、前記電極のうちの選択されたものに電力を供給し、器官に対する特定の活性化プロフィールを命令する制御器、
を含んでなる前記装置もまた提供される。
【0125】
器官は子宮であることが好ましく、ここでは活性化プロフィールは分娩中の収縮パターンである。
【0126】
本明細書には本発明の多数の実施形態が主に方法として記載されているが、本発明の範囲にはこれらの方法を実施するのに適合した装置も含まれると理解されるべきである。特に本発明の範囲には、本発明の好ましい実施形態に従い電場をかけるようプログラムされたプログラム可能な電場発生装置が含まれる。本発明の好ましい実施形態において、プログラム可能な変数としては、波形、振幅、周波数、時速時間、遅延、同期化、およびその場所で測定された筋活性パラメーターに対する応答が挙げられる。そのある部分における筋肉の挙動は、その第2の部分に電場をかけることにより、例えば、ある部分への活性化シグナルの伝達を阻害することによるか、あるいはある部分に作用する力のレイアウトを変更することによって改変できると認識されるべきである。
【0127】
本発明は、次の本発明の好ましい実施形態の詳細な説明、ならびに添付の図面から、さらに明瞭に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0128】
図1は患者20の胃腸(GI)管22の概略図である。本発明の好ましい実施形態によれば、GI管の部分の刺激に対する収縮力および/または感受性の局部的制御は、局部的な非刺激性電場を制御される部分に直接かけることにより達成される。かかる非刺激性電場は制御部分においては伝導する活動電位を作り出さないが、到達時に、その電場が人為的または天然に生じる活性化シグナルに対するその部分の応答を改変する。特に、本発明者らはGI管の部分の収縮力を増す、または減じることが可能であることを見出した。さらに、それは低下反応も有し、またはそのために活性化シグナルの通常の振幅に対して全く反応しないように筋肉節を減感させることが可能である。この減感は可逆的であるが、制御する電場を取り除いた後に、一定期間持続させ得る。
【0129】
非刺激性電場の2つの特殊な波形が有益であることがわかっている。第1のタイプは実質的に一定の電場(その極性は、時折イオン分極効果を減ずるように切り換えてよい)である。この電場は制御される筋肉に対して、いずれの同期化もせず印加してよい。しかしながら、本発明者らは、制御される筋肉を刺激するのに必要な活性化シグナルの振幅を減ずるために、活性化シグナルが制御される筋肉に達する直前に阻害性電場を停止することが有用であることを見出した。非刺激性電場の第2のタイプは、活性化シグナルの到達と同時にかけられるパルスである。このパルスは、シグナルの到達前に、到達間に、または到達後に遅れて(活性化の後の長い遅れは活性化前のパルスの印加に等しい)のいずれかでかけられる。本発明者らは、活性化シグナル後にかけられる非刺激性電場が、筋肉収縮の定常期を延長することにより、制御される筋肉の収縮力を増す傾向にあると考える。活性化シグナルの到達後、より遅れてかけられる非刺激性電場が不応期を延長すること(恐らくは、活性化シグナルが脱分極化を引き起こさないように筋肉細胞を過分極化することにより)が仮定される。結果として、少なくとも筋肉細胞のいくつかは活性化シグナルに応答せず、筋肉の収縮力が低下する。このように、非刺激性シグナルが強いほど、より多くの細胞が過分極化し、収縮力が低下するであろう。極端な場合では、活性化シグナルに応答するような筋肉細胞はなく、その伝達が阻害されるだろう。非刺激性電場が、単一の筋肉繊維により達成される収縮力への影響を直接減じる可能性もある。
【0130】
本発明の様々な実施形態は、本明細書に記載のように薬剤治療とともに、共同性相互作用により、および/または所望の効果をもたらすための薬剤の用量を少なくするために、および/または電気的制御を用いて副作用を制限しつつ使用される薬剤の用量を引き上げるために使用できることに注目すべきである。さらに、かかる電気的制御は多部位ペーシングなどのGI管の電気的ペーシングとともに行ってもよい。本発明の好ましい実施形態によれば、GI管の活性化プロフィールはいずれも実質的に、選択的にGI管の部分をペーシングし、活性化シグナルがあるペーシングされた部分から次へと伝達されないよう、ペーシング部分の間に減感領域を作ることにより達成されると考えられる。さらに、かかる電気的制御は迷走神経の電気的刺激と組み合わせて実施してもよい。
【0131】
「電場」という用語は、筋肉を制御するために用いられる、非刺激性電場を記載するために用いている。「電場」および「電流パルス」という用語は、体内では、2つの電極間に電圧電位が生じる場合に双方ともに発生するため、本明細書では両者を置き換えて用いてもよい。本発明の好ましい実施形態では、この電場は少なくとも2つの電極間に定電流を維持することにより印加される。別法として、電流を制御する代わりに電圧電位を制御してもよい。
【0132】
一般に、筋肉組織はその嵩を増すことにより、頻繁かつ/または強い活性化に適合する。本発明の好ましい実施形態では、ペーシング部位を選択し、その部位の筋肉強度を増大させる。好ましくは、この部位の周囲領域を、活性化シグナルが残りのGI管へと伝達しないように減感させる。その代わりとして、またはそれに加えて、ある部分の筋肉の嵩は、その部位の収縮力を改変することにより増大される。一般に、最大の収縮量が、通常、筋肉の嵩の最大の増大をもたらすので望ましい。
【0133】
図2は、本発明の種々の好ましい実施形態を示すため、説明の目的で展開したGI管22の概略図である。GI管22には、胃24、十二指腸26、小腸27および大腸29が含まれる。
【0134】
本発明の第1の好ましい実施形態によれば、GI管の一部を減感し、および/または活性化シグナルから電気的に絶縁する。電気シグナルからの絶縁はその部分を取り巻く組織を減感させることにより達成され得る。
【0135】
潰瘍はGI管組織の炎症を引き起こし、その炎症組織は擬似活性化シグナルを生ずると考えられる。あるいは、その炎症組織は非常に低い興奮性閾値を示し得る。これらの双方の異常性は、胃24で不整脈を引き起こす可能性がある。本発明の好ましい実施形態では、潰瘍28を取り巻く組織を減感させることにより、潰瘍28による胃24の異常な電気的活性の発生を妨げる。正確な配置により、潰瘍28自体が減感されよう。その代わりとして、またはそれに加えて、非刺激性電場を潰瘍28を取り巻く領域にかけ、非活動電位伝達組織によりそれを囲い込む。
【0136】
本明細書で用いる場合、囲い込みとは、ある節を取り巻く組織の電気的活性を阻害することにより、その筋肉節を他の節から電気的に絶縁することをいう。従って、活性化シグナルはその節を出入りできない。ある節を完全に封鎖する代わりに、フェンスを使用して所望の経路の各側にフェンスを作ることにより所望の経路に沿って活性化シグナルを導くことができる。チャネリングの際、それはまた活性化前線の伝達媒介を改変するので、フェンスが適用される組織の伝導速度を顕著に低下させるに十分であろうことに注目すべきである。
【0137】
本発明の好ましい実施形態では、組織の減感は、潰瘍28を取り巻く組織に接触させた、電極30を含んでなる制御器32により行う。この実施形態では、制御器32は胃24の外側であって、体内または体外のいずれかにあるよう示されるが、他の好ましい実施形態では、制御器32は胃の内部に埋め込まれ、好ましくは内視鏡および/または電気的活性マッピング探針により配置され、さらに好ましくはクリップの使用などにより胃壁24に固定される。
【0138】
本発明のもう1つの好ましい実施形態によれば、通常、胃24の上部にある胃24のペースメーカー部分は、胃の他の部分から電気的に絶縁する。図2では、これは胃24の周囲のバンドにフェンス25を与えることにより達成される。その代わりとして、またはそれに加えて、胃24の残りを減感させてもよい。その代わりとして、またはそれに加えて、ペースメーカー領域自体を減感させて、その興奮速度を低下させてもよい。胃24の減感は、胃の望まれない活性化を特徴とする吐気、妊娠に関連した吐気、反射嘔吐および他の胃の病態の治療に有用である。
【0139】
症状の特殊な例は、胃24の空腹を遅らせることで、「満腹」感をもたらし、患者の食物の消費を減らす胃の減感により治療可能な肥満の治療である。胃の減感は、所望の活性化を達成する胃のペーシングとともに適用することが好ましい。あるいは、またはそれに加え、腸27もまた同様に、特に胃24からの電気的活性化シグナルが腸27へ到達するのを、十二指腸26および/または洞にフェンスを施すことなどで遮断することにより制御する。かかる例では、制御器32は磁気リードスイッチを用いるか、または高周波遠隔測定法(RF telemetry)を用いるなど、体外から制御可能であることが好ましい。かくして、制御器32は、患者がそれを必要とする場合に活性化および不活性化され得る。その代わりとして、またはそれに加えて、制御器32には、GI管22の、その部分の食物の位置および局部電気的活性などの様々な状態を検知するセンサーが含まれる。かかる実施形態において、制御器32は、その中の食物の存在および位置に応じて、GI管22の活性化プロフィールを改変できる。
【0140】
本発明のもう1つの好ましい実施形態によれば、GI管22の一部を減感し、および/またはそれを回復させるよう囲い込む。図2は縫合領域38、および領域38を電気的に絶縁し、かつ局部的な筋肉活性により縫合部を損傷しないよう1対のフェンス42と44を使用する制御器40を示している。領域38はまた潰瘍を除去したばかりの領域を含んでなってもよい。本発明の好ましい実施形態では、かかる制御器は腸の2つ節を接続するために用いられる吻合ボタンに組み込まれる。好ましくは、かかる吻合ボタンはその一方の側で電気的活性を検知し、その反対側で刺激性シグナルを用いて、腸の自然な収縮を保証する。領域38での電気的活性を完全に阻害する代わりに、局部的な電気的および/または機械的活性を断続的に与えることが望ましいであろう。その代わりとして、またはそれに加えて、縫合部の局部的伸縮力を減じるために局部的収縮力を実質的に減じてもよい。本発明の好ましい実施形態では、電極は腹腔鏡検査法(または開腹処置)の際に治療される領域に埋め込まれる。阻害性電場は、医師の見解により必要でないと判断されるまで印加する。
【0141】
本発明の好ましい実施形態では、電極は筋肉外部制御器と接続する。ひとたび電場が必要でなくなれば、例えば当技術分野で公知の引き抜き電極を用いて、例えば電極を巻き付けることによるか、または電極を筋肉に付着させている縫合をはずすことにより、電極を取り除けばよい。
【0142】
本発明の好ましい実施形態では、空腹が欲求される時間まで、胃の末端の数インチを減感させることにより空腹を抑制する。胃の制御器には、阻害または刺激性パルスをかけるために、胃の末端数インチに沿って埋め込まれた電極を含むことが好ましい。胃の制御器には、胃から固形消化物が出ていくのを止めることを阻害するか、胃に固形消化物を通過させることを阻害するおよび/または刺激することを停止させるかを患者に選択させる外部制御ボタンもまた含むことが好ましい。
【0143】
本発明の好ましい実施形態では、医薬の代わりに電気的制御器を用いて腸を弛緩させる。かかる使用が望ましい1つの例は、痙攣性便秘であり、緊張−痛み−便秘の悪循環を、大腸の緊張を弛緩させることにより断ち切ることができる。弛緩性電場は、埋め込まれた電極により経皮的にかけてもよいし、挿入した探針を用いてかけてもよい。
【0144】
本発明のもう1つの好ましい実施形態では、腸の虚血により起こる痛みが、患部の筋肉の収縮性を減じ、それによって酸素消費を減じ、および/またはうまく局部潅流させることにより軽減される。かかる制御器は圧力センサーを含み、さらにその制御器は予め設定された局部収縮力に達した後、収縮力を減じるよう調節されることが好ましい。
【0145】
本発明のもう1つの好ましい実施形態では、小腸27および/または大腸29を弛緩させて液体の排出がないようにすることにより、急性の下痢が治療される。かかる治療は、有利には、その上に電極を取り付けた探針を用いて行ってよい。その電極は、腸壁との完全な接触を保証する、探針から(放射状に)伸びる弾性電極であることが好ましい。この治療はまた、強い薬物療法を用いる患者やエイズ患者などの慢性的に炎症を起こした腸を有する患者に有用である。慢性の問題を抱えた患者には、電極をGI管の部分の外側に埋め込むことが好ましい。
【0146】
本発明のもう1つの態様は、GI管22の少なくとも一部の収縮性を高めて、典型的には、GI管22の少なくとも一部の収縮性が正常レベルを下回るまで低下する病状を補償することに関する。かかる病状は老齢の患者に典型的である。正常より劣る収縮力は、腸の一部が麻痺した患者、特に病的組織結合症(Aclazia)(後天性、または慢性)を有する患者、および広汎性全身硬化症、糖尿病性腸疾患および原発性内臓筋疾患などの他の障害にも見られる。かかる病状においては、GI管22の内部に取り付けるか、またはGI管22自体の筋肉内に埋め込んであるかのいずれかのワイヤー電極を用いて、および/またはGI管22の表面外部に埋め込んだ電極を用いて、非刺激性電場をかけることが好ましい。かかる電極は、GI管22の外側に沿って外科用探針を進入させ、その管の外側に沿った位置に電極を取り付けることにより埋め込むことが好ましい。あるいは、複数の封入制御器をGI管22に沿った複数の地点に埋め込んでもよい。各々の封入制御器には、電源、電極および外部制御により活性化して、非刺激性電場をかけることができる制御器を含む。そうでなければ、かかる封入制御器各々は、外部電源からコイルに伝達される高周波照射を非刺激性電場へ変換する誘導コイルを含んでなる。
【0147】
本発明のもう1つの態様は、GI管22の活性化プロフィールのより厳密な制御を達成するための、いくつかの異なるタイプの制御の同時適用に関する。本発明の1つの好ましい実施形態では、小腸27および/または大腸29の運動性は、戻り波を阻害することにより高まる。正常に活性化された腸では、腸内で食物を前進させる前進波と、また食物を腸に沿って後退させ、かつ食物のかき回しの手助けをする戻り波がある。本発明のこの好ましい実施形態では、前進波は阻害せず、戻り波を阻害して高い運動性を与える。戻り波はその原点、すなわち腸の末端部で、その位置にフェンスを適用することにより阻害することが好ましい。図2は小腸27の末端部にフェンス48を適用する制御器46を示している。制御器46はセンサー52および/またはセンサー50を用いて、前進波および/または戻り波をそれらの電気的活性によるか、またはそれらの機械的作用によるかのいずれかで検出することが好ましい。本発明の好ましい実施形態では、フェンス48は前進波と同期化し、戻り波を遮断するのに十分な時間だけ適用する。制御器46は内視鏡を用いて挿入することが好ましく、小腸内部からが好ましい。
【0148】
本発明のもう1つの好ましい実施形態によれば、電気的制御は、固着性ボーラス56を進入させるために用いられる。ボーラス56を進入させるために、電気的制御を領域60、すなわちボーラス56の前方にかけ、それを弛緩させる。領域58は、ボーラス56の後方および周囲にあり、その収縮性を高めるよう制御されることが好ましい。神経および/または筋肉への損傷のためにボーラスがこの場所に付けられると思われる場合、制御器54は恒久的に位置58に埋め込んでもよい。本発明の好ましい実施形態では、GI管22の重要な部分が配線される。複数のセンサーをその部分に沿って置き、その部分のボーラスを検出する。その後、ボーラスを進入させるための前記の方法を、検出した位置で用いる。複数のセンサーはインピーダンスセンサーであってよく、電場印加用の電極と同じ電極を用いることが好ましい。
【0149】
図3はGI管の平滑筋繊維の向きを示す、GI管22の切開部分72の部分切断図である。GI管22は、典型的には3つの筋肉層、すなわち薄い電気的伝導層(図示せず)、通常GI管22の長さに沿って並んだ繊維の内層72、および、通常層72の繊維に対し垂直に並んだ繊維の外層74よりなる。層72はGI管22の長さの局部的変化を制御し、一方、層74はGI管22の直径の局部的変化を制御する。
【0150】
本発明の好ましい実施形態では、非刺激性電場を層72かまたは層74のいずれかに選択的にかけ、局部的収縮力を高めるか、または減ずるかのいずれかを行う。この選択は層72の繊維と平行か、または層74の繊維と平行かのいずれかに電場の向きを調整することにより達成され得る。かかる電場は層72および層74の双方を刺激するので、刺激性電場を用いる場合、このタイプの選択はなされないことに注目すべきである。
【0151】
本発明の好ましい実施形態では、複数の個別電極78を有するネット電極76を用いて、この選択性を割り当てる。その主要な軸が繊維の向きと平行になるようにネットが置かれる場合、電極78のうち選択されたものを選択することにより、その層の1つと平行な向きを有する電場を発生させてもよい。電極78のうち選択されたものを選択し、対角にある電場を両層の繊維にかけることができる。その代わりとして、またはそれに加えて、電極78に選択的に電力を供給し、その結果双方の向きの電場を選択的にかける。特に、阻害性電場は一方向にかけてよいが、収縮性を高める電場は垂直方向にかけてよい。認められる限り、電極78を用いてペーシングシグナルを供給してもよい。本発明の好ましい実施形態では、電極78を用いて局部的な電気的活性を検知し、非刺激性電場に上手く時期を合わせる。
【0152】
平滑筋を制御に使用するのに好ましい電極のもう1つのタイプは、阻害電場をかけるのに有用な、フェンスを与えるための延長電極である。筋肉の最も内側の部分の層が活性化信号を伝達するため、その筋肉層の繊維と平行な電場をかけることにより、活性化信号の伝達は最も有利に制御される(高める、または減じる)。収縮性を高める電場を内層にかけることにより、活性化信号の伝達を高めてもよい。選択的に1つの層だけに電場をかけるもう1つの方法は、電極を筋肉内、すなわち層間に挿入して、実質的に1つの層だけが電場内にあるようにすることである。
【0153】
非刺激性電場を心筋にかけるための様々な装置と方法論は、Israel receiving Officeで出願者New Technologies(SA-YSY)Ltd.らにより出願された6つのPCT出願:1997年1月8日に出願されたPCT出願 PCT/IL97/00012、”Electrical Muscle Controller”、および1997年7月9日に出願された5つのPCT出願:PCT/IL97/00231、”Apparatus and Methods for Controlling the Contractility of Muscle”、PCT/IL97/00232、”Drug-Device Combination for Controlling the Contractility of Muscle”、PCT/IL97/00233、”Fencing of Cardiac Muscle”、PCT/IL97/00235、”Cardiac Output Controller”およびPCT/IL97/00236、”Cardiac Output Enhanced Pacemaker”に記載されている。これらの開示は、参照により本明細書に組み入れられる。特にこれらのPCT出願では、DC電場、AC電場、単極および二極電場ならびにかかる電場の組合せを含む、非刺激性電場をかけるために使用してよい様々な波形を記載する。さらにPCT/IL97/00012でも、光照射および高周波(RF)照射を用いて心筋細胞におけるカルシウムの移動に作用し、それによりそれらの収縮力に作用する可能性を記載している。これらの装置は本発明の好ましい実施形態によれば、平滑筋へ非刺激性電場を供給するよう適合され得る。
【0154】
本明細書に記載の装置を特定の生理機能に適合させる場合、非刺激性の大きさ、遅れ、および頻度を適合させる必要があることと考えられる。本発明の好ましい実施形態では、その装置は高周波照射により生体内プログラムに組み入れることが可能である。かくして、それは埋め込み可能であり、異なるパルスパラメーターのセットを試験して最適なセットを決定すればよい。さらに、制御される筋肉の調整により電極のインピーダンスが変化するため、そのパラメーターをしばらくして調整するか、または制御器の機能を変化させる必要があろう。
【0155】
認められる限り、短期の治療コースだけを必要とする患者もいれば、長期コースを必要とする他の患者もおり、いくつかの場合では、恒久的な治療が必要とされるだろう。本発明の好ましい実施形態では、本明細書に記載される装置は体内に埋め込むのに適合する。あるいは、かかる装置を1ヶ月未満といった短期間で体内に挿入するのに適合させる。この適合により電極用のための、およびバッテリーの寿命と制御の程度とにかかわる異なるトレードオフのための種々の物質の使用を提供する。あるいは、かかる装置は、体外にあるように、患者が保有するかまたは独立しているように適合させる。少なくともその電極は体内に挿入されるか、または体の管腔に挿入されることが好ましい。
【0156】
平滑筋活性がそれらの張力により改変されることもまた注目されるべきである。本発明の好ましい実施形態では、平滑筋の制御器は筋肉の張力を測定するセンサーを含み、測定された張力に応じて適用する電場を変化させる。その張力は平滑筋の管腔の外側で測定することが好ましい。あるいは、またはそれに加えて、その張力は平滑筋により形成される管腔内部で測定する。あるいは、またはそれに加えて、張力は平滑筋内部で測定する。
【0157】
本発明の好ましい実施形態では、筋繊維に関する電場の向き、および極性もまた、筋肉における所望の制御をもたらす最適な向きおよび/または極性を決定するため変更される。2つの直角をなす筋肉層は、保持張力、及びおそらく非刺激性電場に対する異なる応答等の異なる特徴を有することは注目されるべきである。本発明の好ましい実施形態では、筋繊維に対する電場の、0°、5°、10°、30°および45°などの様々な向きは、電極の位置を動かすことなく試験される。これはネットの各々の接合部に個別に電力を供給するネット型電極を用いて達成することが好ましい。従って、実質的に、任意の有効な電場の方向および極性を電極の位置を動かすことなく試験できる。この伝達方向は、一般に等しい活性化時間を示す等時性ラインに垂直であると考えられるので、かかるネット電極をセンサーネットとして使用し、さらに厳密に活性化前部の伝達方向を決定することができる。さらに、制御する電場の効果などの活性化プロフィールの変化、および/または不整脈は、ネットの複数の接合点で検知される電気的信号の変化から検出することができる。さらに機械的活性は、接合点、すなわちその筋肉の特性が測定される隣接した接合点、またはGI管の占有を決定する、平滑筋の反対側にある接合点のいずれかの個々の接合点間のインピーダンスの測定により制限され得る。
【0158】
平滑筋の収縮頻度は、通常、心筋よりかなり低く、平滑筋を制御するために、より単純な電子工学、およびより遅い応答電源の使用が可能になることは注目すべきである。さらに、平滑筋に沿った伝達時間は、通常、心筋よりかなり遅い。結果として、ある位置での活性化時間と2番目の位置での活性化時間の間は数秒であると思われる。従って、局部的活性化と非刺激性電場の局部的な適用の間の正確な遅れを保証するため、平滑筋の制御には活性化時間の局部的な決定が特に好まれる。かかる局部的な決定は局部的な検知により行うことが好ましいが、しかしながら本発明の他の好ましい実施形態では、局部的な活性化時間を推定伝達速度を用いて算出する。
【0159】
図4はGI管22の部分92の局部的制御を用いる結腸鏡90を進入させる方法を示す。最小侵襲の手法が受け入れられているので、結腸鏡を用いる大腸の定期検査、および内視鏡を用いる小腸の定期検査がより一般的となっている。結腸検査では、結腸鏡を肛門に挿入し、結腸に沿って進入させる。定期的にその進入を中断し、結腸鏡の先端部の周囲の結腸を空気で膨張させ、結腸鏡の進入を助け、結腸壁の検査を助ける。検査に先立ち、通常、結腸を弛緩させる薬剤を投与する。
【0160】
本発明の好ましい実施形態によれば、結腸鏡90は少なくともその先端部の場所に複数の電極94を有する。本発明の好ましい実施形態では、これらの電極を使用して弛緩性電場を結腸にかけ、かくしてそれを膨張させるのに必要な気圧を減じる。さらに、かかる弛緩は結腸鏡を進入させるのに必要な力を減じ、それによって貫通の危険は低くなる。本発明の好ましい実施形態では、その電極は結腸部分92を膨張させる場合であっても、それを埋め込むことができるよう結腸鏡90の先端部から延長可能である。その電極は一時的に結腸部分92へ装着できることが好ましい。
【0161】
本発明のもう1つの好ましい実施形態によれば、結腸鏡90の電極94を、結腸部分92自体に進入させるか、または進入を助けるために電力を供給する。この進入は、2つの方法のうち1つ、すなわち前進波を遮断し、戻り波で結腸鏡90を進入させることによるか、または選択的に層72および層74の筋肉層(図3)を刺激して結腸鏡90を進入させることによるかのいずれかで達成され得る。選択的な刺激計画として:層74を制御して、その先端部の場所でよりしっかりと結腸鏡90を捕らえること、および層72を刺激して結腸鏡90を進入させることが挙げられる。刺激のオーダーおよび結腸が刺激されるその地点により、かなりの程度まで、結腸鏡90の移動の方向が決定されるであろう。結腸鏡90に沿ったさらなる電極(図示せず)を用いて、同じ進入行為を達成するか、または結腸鏡90の長さに沿った層74を弛緩させるかのいずれかで、その進入を助けることが好ましい。筋繊維の特定の向きの選択的な刺激は、まず筋繊維の他の向きを阻害し、次いで刺激を与えることにより達成してもよい。結腸鏡90の先端部の場所で結腸部分92をペーシング(pacing)することにより、結腸部分92が平常のリズムをとり結腸鏡90を引き込むように、結腸鏡の引き込みを助けてもよい。
【0162】
認められる限り、結腸鏡について記載されたことは、内視鏡と、特にそれを引き込むことについては同様である。本発明の好ましい実施形態では、結腸鏡90は、いずれの局部的刺激をGI管22の残りへの伝達から遮断する囲い込み(fencing)電場をかける電極を含む。
【0163】
本発明のもう1つの好ましい実施形態によれば、胆管への入管に用いられる内視鏡は、弛緩させる電場をかけて、胆管から腸までの括約筋を拡張させる電極をその先端部の場所に含む。かかる拡張は、胆管をふさがない装置を使用する場合、胆石を破壊するための治療とともに用いて、破壊した石の破片が腸へ出ていくのを助ける。あるいは、かかる装置を使用して胆管の収縮性を刺激して、および/または高めて、かかる石の輸送を助け、および/またはその正常な機能を助ける。非遮断装置を小腸内部27などの胆管の外側に埋め込んでもよく、さらに電極のリード線だけがその管には必要であろう。あるいは、リード線をその管外部に埋め込んでもよい。
【0164】
図5は本発明の好ましい実施形態に従う、痔100の治療用カプセル剤102の概略図である。最近、痔の主な原因と痔および裂肛が治癒しない主な要因が結腸下部の張力の高まりにあることが決定的となった。高まった張力が血流を減らし、治癒を遅らせ、同時に痛みを生じさせる。結腸下部の張力が直腸部からの血液を、そのすぐ近くで止めることは注目されるべきである。局部用ニトログリセリン(痔の場所、および結腸内部の双方に)が結腸下部の張力を減じるために提案された。しかしながら、この薬剤はめまいなどの多くの副作用を有する。本発明の好ましい実施形態によれば、カプセル剤102を、局部的収縮を完全に阻害するか、または少なくともそれを減じる弛緩性電場をかける場合、結腸下部に挿入する。カプセル剤102は複数の電極104、電極に電力を供給する電源106、および好ましくはカプセル剤102を容易に除去するための付属品110を含むことが好ましい。カプセル剤102は圧力変換器(示さず)を用いて結腸の異常な圧力を検知し、弛緩性電場を、その時点のみに、またはかかる異常な圧力がかなりの時間持続した後にかけることが好ましい。その代わりとして、またはそれに加えて、張力センサーおよび/または電気的活性センサーを用いて結腸の局部的活性を検知する。
【0165】
本発明の好ましい実施形態では、女性患者に好適なカプセル剤102を、膣に挿入して結腸下部に作用する電場をかけれるように適合させる。膀胱の筋肉または直腸括約筋に弛緩性電場をかけることは一般的に望ましくないので、その電場を非対称に、かつ主として結腸に向かってかけるよう電極104を配置することが好ましい。このように、電極104は、好ましくはカプセル剤102の一方の側にのみ配置される。カプセル剤102には、患者が正確な向きでそれを挿入するよう印が付いていることが好ましい。カプセル剤を用いる他、制御器108を結腸の外側に埋め込んでもよい。
【0166】
図6は本発明の好ましい実施形態に従う、子宮の小部分への局部的阻害性電場の適用を示す、子宮120の概略図である。子宮の望ましくない電気的活性が女性において早産を引き起こすものと考えられる。かかる望ましくない電気的活性は、多くの場合、組織の小領域により、例えば、子宮の伸張が最大となる場合、子宮筋腫または筋腫近くで、またはその炎症を起こした位置で引き起こされる。心臓とは異なり、子宮の部分を切除すると、受胎能力が低下し、かつ/または子宮が不可逆的な損傷を受けると思われるので、これは望ましくないであろう。本発明の好ましい実施形態では、子宮筋腫を囲い込むことによるか、または子宮筋腫122およびそれを取り巻く組織を減感させることによる伝達から、子宮筋腫122からの電気的刺激は遮断される。図6は複数の電極126を用いて、かかる非刺激性電場を与える制御器124を示している。制御器124は子宮120の外部にあることが好ましいが、体内に埋め込まれることが好ましい。しかしながら、本発明の他の実施形態では、制御器124の電極126だけを、例えば切開法(laproscopic procedure)を用いて体内に挿入する。子宮後部へ挿入するのに必要な電極は腸を通して挿入してもよい。
【0167】
かかる早期の電気的活性を引き起こすと思われる子宮部分としては、炎症組織、瘢痕組織、子宮筋腫および子宮の奇形部分が挙げられよう。これらのタイプの組織は視覚診断(子宮鏡を用いる)によるか、または好ましくは電気生理学分野で公知の電気的マッピング探針を用いるかのいずれかで検出されよう。かかるマッピングは妊娠中に実施してもよく、その場合、電極をマッピング手法の間、または直後に子宮内部から埋め込んでよい。その場合、その制御器は体外に、または可能であれば膣内にあることが好ましい。
【0168】
図6では領域128として示されているが、少なくとも分娩時に子宮全体にペーシング信号を発生させる子宮の小領域があることが示唆されてきた。本発明の好ましい実施形態では、非刺激性電場を用いて、選択的にこの領域を阻害することによるか、それを囲い込むことにより分娩を遅らせる。
【0169】
本発明の1つの態様は、分娩経過中の、薬剤を用いて可能なものより厳密な制御を提供することに関する。薬剤の応答時間が十分でなく、副作用が非常に大きく、または好適な投与量を確立することが困難ないくつかの症状としては:
(a)早産の抑止、
(b)帝王切開の必要が示される分娩の抑止、
(c)子宮の収縮力の微細な制御が必要とされる状況、
(d)適切に進行してない分娩の補助、
(e)禁忌を示す場合の妊娠の抑止、
(f)分娩中の好ましい収縮プロフィールの指示
が挙げられる。
【0170】
図7は本発明の好ましい実施形態に従う、子宮120に取り付けられる、埋め込み可能な多部位刺激装置/阻害装置を示す。制御器130は、好ましくは実質的に子宮120すべてを覆うよう配置される複数の電極132を含む。これらの電極は例えばら切開検査処置中に子宮120の外側に取り付けてもよい。あるいは、電極132は皮膚などの体の外側にあってよいが、できる限り、子宮に隣接した腸に挿入する。本発明の好ましい実施形態では、早期帝王切開中、および/または切開検査法を用いるなど、妊娠に先立ち電極132が埋め込まれる。その代わりとして、またはそれに加えて、平滑筋を制御する電極を、平滑筋に供給する血管など、平滑筋に隣接する血管に埋め込む。個々の電極132の電力供給は、局部的な電気的活性の時期に合わせることが好ましい。電極132を用いて分娩を促し、かつ支援する刺激信号もまた提供される。
【0171】
本発明のもう1つの好ましい実施形態によれば、多部位ペーシングを用いて、好ましい活性化(収縮)を子宮に命令する。多部位ペーシングは収縮力の局部的制御(通常は増大)により補うことが好ましい。その代わりとして、またはそれに加えて、フェンスを子宮に与え、所望の方法で活性化信号を導く。種々の好ましい実施形態では、単独で、単一のペーシング部位と組み合わせて、または多活性化部位と組み合わせて、囲い込みが適用されることが注目されるすべきである。
【0172】
本発明の好ましい実施形態によれば、分娩を収縮力を高めることにより進行させ、および/または補助する。この収縮力の高まりがさらに収縮力を高める正のフィードバック効果を引き起こす。収縮力の高まりは人工妊娠中絶を補助するにも有用である。他の状況においては、胎児仮死の場合または子宮破裂の危険がある場合など、収縮力を減じる必要があり、または分娩を完全に抑止する必要があり、帝王切開を行うべきである。奇形または瘢痕の多い宮の場合、および早産の前歴を有する患者においては、制御器130を用いて分娩が起こらないよう阻止することが好ましい。電極132に電力を供給し、阻害電場を引き起こすことが好ましい。制御器130が局部的な電気的活性を検出する場合にのみ、それらに電力を供給することが好ましい。その代わりとして、またはそれに加えて、子宮120の収縮頻度に応じて電極132に電力を供給する。
【0173】
本発明のもう1つの好ましい実施形態によれば、局部用電場で子宮120の産道134および/または子宮頸を弛緩させ、えい児がそこを通って出てくるのを助ける。あるいは、分娩に先立ち、産道の収縮力を高めて流産を予防する。あるいは、またはそれに加え、産道の筋肉を刺激性信号を用いて刺激し、それらの収縮を引き起こし、かつ流産を予防する。
【0174】
子宮120は妊娠過程では、大きさにおいて非常に顕著な変化を受けるものと考えられる。従って、電極132のリード線は極めて軟性で、かつ弾性のあるものにすることが好ましい。本発明の1つの好ましい実施形態では、リード線はコイルワイヤーの形状であり、そのリードが延びればワイヤーが破断するのではなく、コイルが締まる。コイルは軟質コアのまわりに巻き付けることが好ましい。電極132のリード線は複数の弱い点を含むことが好ましく、そうすれば、所定の値を超える圧力がリード線にかかったとしても、リード線に隣接する組織構造を損傷させることはなく、予め選択された点の1つで破断する。
【0175】
本発明の好ましい実施形態では、電極132の各々は封入電源を含んでなり、制御器130は無線通信を用いて個々の電極を調整する。このように、電極132はワイヤーによる相互連結を必要としない。あるいは、電極132はそれらの電力供給を、拡張コンピューター制御(distributed computing)の技術分野で十分公知の技術を用い、中枢制御器を用いずに調整する。それらの活性を同期化する他、電極132の各々は局部的な活性に応じて稼働する。
【0176】
図8は痙攣を制御するための、子宮120への風船型挿入装置140を示す。挿入装置140は電源144によって電力供給される電極で、装置の外側に配置される複数の電源142を含んでなる。挿入装置140は子宮120の内壁と確実に上手く接触するよう埋め込み可能であることが好ましい。好ましい操作モードにおいて、電極142の様々なものが電気的活性センサーとして機能する。一度かかる電気的活性が検知されれば、阻害性電場をそれらの部位にかけ、さらなる電気的活性化の生起を防ぎ、かつ/またはその伝達を妨げる。あるいは、かかる装置に連続的に阻害性電場をかける。本発明の好ましい実施形態では、阻害性電場を電極142と腹部および/または背部に置いた外部電極間にかける。図面ではポイント電極が示されているが、延長電極などの他の形状の電極を使用してもよいと考えられる。その装置は、痙攣が予期されない場合には、体から除去することが好ましい。
【0177】
図9は膵臓152などの腺の放出量を変更する制御器150を示している。膵臓152などのいくつかの腺では、ホルモン産生細胞(膵臓のβ島細胞)の電気的刺激が血管154へのホルモン放出の媒介となる。多くの平滑筋の場合同様、電気的刺激は化学的信号により開始する。本発明の好ましい実施形態によれば、ホルモン放出細胞を、それらがこれらの化学的信号に応答しないよう減感させる、またはその細胞のいくつかが応答したとしても、周囲の細胞が電気的に不活性化されるため、これらの細胞は伝達する活性化信号を生起できない。従って、放出されるホルモン量は減少する。この方法は、腺がそのホルモンを産生する場合、特に癌などの疾患に有用である。
【0178】
制御器150はホルモン産生細胞の電気的活性を阻害する、または減じる電場を与えるために、電極158、および好ましくは第2の電極156を含むことが好ましい。制御器150のケースを、本実施形態、および他の前記の好ましい実施形態において第2の電極として用いてよい。認められる限り、血中のホルモンレベルとホルモン産生細胞の電気的活性を、現行の技術を用いて検出することはかなり困難である。従って、本発明の好ましい実施形態では、実質的に一定の阻害性電場をかける。電場の極性は、イオンに媒介される損傷および電極156と158のイオン化を妨げるように周期的に変更することが好ましい。あるいは、制御器150は局部的な電気的活性、すなわちホルモンレベルを測定するか、またはグルコースレベルなどのホルモンレベルと相互関係のある生体指標を測定し、示したように電極156と158に電圧をかけてもよい。
【0179】
本発明のもう1つの態様は、血圧および/または心臓における負荷などの他の循環パラメーターを制御することに関する。その制御は前記で引用したPCT出願で記載されるような心臓制御器の使用と組み合わせて達成される。図10は本発明の好ましい実施形態に従って、主要な血管へ取り付けられる、血圧および/または心臓負荷制御器を示す。心臓162は腹部大静脈168から血液を受け取り、それを大動脈164へ送り、かつそこから腹部大動脈166へと送る。大動脈164で痙攣が起こると、それは強く収縮し、心臓の後負荷を大きくする。多くの場合、このタイプの痙攣はめまいを引き起こすであろう。冠動脈が収縮した患者では、心臓の要求が高まって痛みを伴う狭心症が発現する。
【0180】
本発明の好ましい実施形態によれば、心臓162の後負荷は、大動脈を弛緩させることにより、すぐに小さくなる。あるいは、またはそれに加えて、心臓162の前負荷は、大静脈を弛緩させることにより、すぐに小さくなる。前負荷および/または後負荷のいずれかを小さくすることで心臓162から要求される仕事量が減少し、多くの場合で狭心症の痛みが止まるであろう。その代わりとして、またはそれに加えて、高血圧の急性症状の発現中に、大きな血管の壁を弛緩させて血圧を降下させる。あるいは、低血圧の急性症状の発現中などに血管を収縮させてもよい。心臓162の負荷を小さくすることは、例えば前記のPCT出願で記載されるように、そこでの筋肉細胞の不応期を延長することによるなど、心臓162の左心室の拡張を延長するしながら実施されれば、特に有益である。
【0181】
弛緩させる特定の血管の選択は、とりわけ、軽減することが望ましい負荷のタイプ、その高血圧が肺を冒すか全身性であるかどうか、および痙攣の場合には痙攣を起こしている血管が埋め込まれた電極を有するかどうかによる。
【0182】
本発明の好ましい実施形態では、痙攣中の血管を血管周囲の電極間のインピーダンスの変化を測定することにより検出する。あるいは、その血管が痙攣しているかを決定するのではなく、密接に結びついたすべての血管を弛緩させる。
【0183】
本発明の好ましい実施形態では、制御器160は腹部大静脈168を制御するための1対の電極170および172を含む。あるいは、またはそれに加えて、制御器160は腹部大動脈を制御するための1対の電極174および176を含む。あるいは、またはそれに加えて、制御器160は大動脈、好ましくは大動脈弓でまたは周囲を制御するための1対の電極178および180を含む。本発明の好ましい実施形態では、血管の筋繊維は主として血流の方向と垂直に置かれ、血流の方向と垂直な電場が望ましいため、その電極はネット型電極である。あるいは、またはそれに加えて、その電極は血流の方向と平行に配置された延長電極であり、1対の電極間に血流と垂直な電場をかける。制御器160は患者が痛みおよび/またはめまいを感じる場合に患者がそれを作動できるよう外部制御可能である。あるいは、またはそれに加えて、制御器160は自動化閉回路血圧制御用の血圧センサー(図示せず)を含む。あるいは、またはそれに加えて、制御器160はECG血圧センサーまたは血流センサーを含み、電場の脈管系への適用を心拍と同期化する。制御器160は患者が許容限界を超える血圧を降下させたり、または上昇させたりするのを防ぐフェイルセーフ安全切断装置(fail-safe cutoff)を含むことが好ましい。
【0184】
図11〜16は平滑筋の収縮力が、非刺激性電場の筋肉への直接的な適用により高められる、または減じられることを示す試験を記載する。
【0185】
雄、ニュージーランド白ウサギ(1-2体重Kg)を切開し、それらのGI管の様々な部分を除去し、次の試験に使用した。その動物にペントバルビタール(Ceva、France)、60mg/体重Kgを用い、静注により麻酔をかけた。腹部内壁を開き、腹部内臓を露出させた。GI管の必要な部分を摘出し、冷却した(4℃)酸素添加(95/5 O2/CO2)Krebs-Heseleit溶液(KCl 4.5, NaCl 118, NaHCO3 24, MgSO4 1.19, KH2PO4 1.18, グルコース 11 および CaCl2 2.52(mM)を含む)に入れた。次いで摘出した部分をさらに解剖チャンバー(Hugo Sachs Electronik(HSE),Germany)で切開して、GI筋肉の単一片を得、さらに臓器槽に入れた。臓器槽はHSEによる813(I-18E)型であり、これは温度制御器319型および660型増幅器を装備した力(force)変換器F30型を含む。この摘出工程の所要実時間は約3-5分である。
【0186】
図11は平滑筋細胞への非刺激性電場の効果を決定するために用いる試験装備の概略図である。GI筋肉部分200を臓器槽チャンバーに取り付ける、一方の末端をプラスチッククリップでそのチャンバーに固定し、一方、他方の末端を圧力変換器202にホックで留める。GI筋肉の長さを最大等積力となるよう調整する。臓器槽を温度制御し、GI筋肉を約36.1℃に維持した前記の酸素添加溶液で連続的に潅流させる(7-12ml/分)。試験に先立ち、その筋肉を30分の平衡期間の間、臓器槽にとどめておく。
【0187】
臓器槽は、試験プロトコールにより必要とされるペーシングパルスをかけるのに用いられた2つのAg-AgCl電極206を含む。これらの電極は各々の試験の前に塩素処理した。ペーシング刺激は定電源により供給した。ペーシング波形は矩形波パルスであった。約2〜3mm隔てて置かれた炭素電極208(Goodfellow,UKにより提供される炭素棒から成形した)を用いて非刺激性電場をかけた。定電源210により電極に電力を供給した。2つの定電源は、電流レベルがコンピューター制御により変更される国産の電源であった。これらの電源の出力を連続的にモニターし、定電流がもたらされることを確かめる。全試験をコンピューター212により制御し、PCI-MIO-16XE50またはAT-MIO-16E-2(National Instrument、USA)などのデータ取得回路を用いてデータを取得した。臓器槽を防振テーブル(TMC、USA)に置いた。ペーシング電流および非刺激性電流は双方とも定電流パルスであった。ペーシングの大きさは次の試験間では異なり、主要なパットで電極の分極化を阻止する。非刺激性電場(NT電流)の遅れはペーシング信号の開始からのものとする。
【0188】
図12〜17は、空腸のGI管部分を用いた場合の試験結果を示している。電場をかけ、変換器で測定した力は、ほぼGI管の方向に沿っていた。前記のように、向きの変化により非刺激性パルスの効果を変更できる。電場の極性を時々選択して力を増大させ、また時々力を低下させる。
【0189】
図12は本発明の好ましい実施形態に従う、非刺激性電場を適用した結果としての平滑筋の収縮力の高まりを示す試験結果のグラフである。非刺激性電場は「NT」と印を付けた黒塗りの棒として示される。
【0190】
この試験では、ペーシングは0.15Hz、継続時間30m秒および3mA電流であった。非刺激性電場はペーシング後、50m秒遅れてかける、10mAで200m秒電流パルスであった。図12でわかるように、約300%の収縮力の高まりが達成された。
【0191】
図13〜16は本発明の好ましい実施形態に従う、非刺激性電場を適用した結果としての平滑筋の収縮力の有意な低下を示す試験結果のグラフである。
【0192】
図13では、70%の収縮力の低下が達成された。そのペーシングは図12と同じであったが、非刺激性パルスはペーシング後100m秒遅れて、10mAで100m秒間かけた。非刺激性電場の効果が、その除去後しばらくの間続くことは注目されるべきである。さらに、非刺激性電場は筋肉の基礎緊張をも減じた、すなわちそれを弛緩した。
【0193】
図14では、収縮力の実質的な低下が達成された。そのペーシングは図12および13よりも速く、0.25Hz、継続時間30m秒および10mAであった。非刺激性パルスはペーシング後50m秒遅れて、10mA振幅で50m秒間かけた。この試験でも筋肉緊張の低下が見られた。
【0194】
図15では、収縮力の実質的な低下が達成された。そのペーシングは図14のものとは異なり、0.25Hz、継続時間30m秒および3mA振幅であった。非刺激性パルスはペーシング後、200m秒遅れて、10mAで60m秒間かけた。この試験でも筋肉緊張の低下が見られた。
【0195】
図16では、収縮力の実質的な低下が達成された。そのペーシングは図12および13のものと同様であり、0.15Hz、継続時間30m秒および3mA振幅であった。非刺激性パルスはペーシング後50m秒遅れて、10mAで100m秒間かけた。この試験でも筋肉緊張の低下が見られた。
【0196】
図17では、実質的に一定の非刺激性電場を用いて、収縮力の実質的な低下が達成された。そのペーシングは、0.25Hz、継続時間2m秒および5mA振幅であった。非刺激性パルスはペーシング後5m秒遅れて、15mAの振幅で3990m秒間かけた。ほぼ完全な収縮の阻害が認められ、この試験でも筋肉緊張の低下が見られた。
【0197】
図18は本発明の好ましい実施形態に従う、非刺激性電場を適用した結果としての膀胱の平滑筋の収縮力の高まりを示す試験結果のグラフである。膀胱部分を前記のように調製した。それを0.2Hzで、継続時間30m秒および6mA振幅でペーシングした。非刺激性電場はペーシング後30m秒遅れてかける、10mAの振幅を有する60m秒継続時間パルスであった。膀胱部分の静止張力が非刺激性電場を適用した結果として高まったことも注目されるべきである。
【0198】
図19は本発明の好ましい実施形態に従う、非刺激性電場を適用した結果としてのウサギ子宮の平滑筋の収縮力の高まりを示す試験結果のグラフである。子宮部分を前記のように調製した。筋肉部分は人為的にペーシングせず、自己ペーシングした。非刺激性電場は10mAの振幅、20m秒継続時間パルスであり、0.2Hzでかけた。非刺激性電場を適用の約30秒後、収縮力が有意に低下しただけでなく、組織の収縮が明らかに完全に阻害されていたことは注目されるべきである。電場の効果は、その除去後しばらくの間続いた。
【0199】
以上、好ましい実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明の範囲がこれらに限定されるものではないことは当業者により理解されよう。前記に記載される継続時間の特定の調整において、特定の患者への非刺激性信号の大きさおよび遅れは当業者の能力の範囲内にあり、また本発明の範囲内にあると考えられる。かくして、本発明の範囲は、請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0200】
【図1】胃腸(GI)管の概略図である。
【図2】本発明の種々の好ましい実施形態を示す、展開したGI管の概略図である。
【図3】GI管の平滑筋繊維の向きを示す、GI管の切開部分の部分的切断概略図である。
【図4】GI管の局部的制御を用いて結腸鏡を進入させる方法を示す。
【図5】本発明の好ましい実施形態に従う、痔の治療用カプセル剤の概略図である。
【図6】本発明の好ましい実施形態に従う、局部的阻害性電場の子宮の小部分への印加を示す子宮の概略図である。
【図7】本発明の好ましい実施形態に従う、子宮に取り付けられる、埋め込み可能な多部位刺激装置/阻害装置を示す。
【図8】痙攣を制御するための子宮用バルーン型挿入装置を示す。
【図9】膵臓などの腺の放出量を変更する制御器を示し;
【図10】本発明の好ましい実施形態に従う、主要な血管へ取り付けられる、血圧および/または心臓負荷制御器を示す。
【図11】平滑筋細胞に対する非刺激性電場の効果を決定するために用いられる試験装備の概略図である。
【図12】本発明の好ましい実施形態に従う、非刺激性電場を印加した結果としての平滑筋の収縮力の上昇を示す試験結果のグラフである。
【図13】本発明の好ましい実施形態に従う、非刺激性電場を印加した結果としての平滑筋の収縮力の有意な低下を示す試験結果のグラフである。
【図14】本発明の好ましい実施形態に従う、非刺激性電場を印加した結果としての平滑筋の収縮力の有意な低下を示す試験結果のグラフである。
【図15】本発明の好ましい実施形態に従う、非刺激性電場を印加した結果としての平滑筋の収縮力の有意な低下を示す試験結果のグラフである。
【図16】本発明の好ましい実施形態に従う、非刺激性電場を印加した結果としての平滑筋の収縮力の有意な低下を示す試験結果のグラフである。
【図17】本発明の好ましい実施形態に従う、非刺激性電場を印加した結果としての平滑筋の収縮力の有意な低下を示す試験結果のグラフである。
【図18】本発明の好ましい実施形態に従う、非刺激性電場を印加した結果としての膀胱の平滑筋の収縮力の上昇を示す試験結果のグラフである。
【図19】本発明の好ましい実施形態に従う、非刺激性電場を印加した結果としてのペーシングされていない子宮の平滑筋の収縮力の低下を示す試験結果のグラフである。
【符号の説明】
【0201】
200 GI筋肉部分
202 圧力変換器
206 Ag−AgCl電極
208 炭素電極
210 定電源
212 コンピューター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平滑筋の一部又は腺の付近に配置される少なくとも1つの電極と、
前記電極に、前記平滑筋又は腺の刺激を発生しない非刺激性電場を帯電させる制御器とを備え、
前記非刺激性電場は、血流中の化学物質のレベルを制御するように前記平滑筋又は腺の活性に作用することを特徴とする装置。
【請求項2】
血流中の前記化学物質のレベルを測定するセンサを備え、
前記制御器は、前記電極に電力を供給して、測定されたレベルに応じて前記非刺激性電場を発生させることを特徴とする請求項1記載の装置。
【請求項3】
前記化学物質はホルモンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記ホルモンはインスリンであることを特徴とする請求項3記載の装置。
【請求項5】
前記化学物質はグルコースであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの電極はGI管内に配置されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの電極は胃において配置されることを特徴とする請求項6記載の装置。
【請求項8】
前記電極は膵臓に隣接することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−190410(P2007−190410A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97590(P2007−97590)
【出願日】平成19年4月3日(2007.4.3)
【分割の表示】特願2000−502823(P2000−502823)の分割
【原出願日】平成9年7月16日(1997.7.16)
【出願人】(505323644)メタキュアー エヌブイ (1)
【Fターム(参考)】