説明

平版印刷版の加工方法及び装置

【課題】包装される保護用厚紙の含水率を確実にコントロールすることができ、且つ、コストや環境負荷の増加がない平版印刷版の加工方法及び装置を提供する。
【解決手段】平版印刷版の加工装置は、積層されたPS版10の上下面に当てボール62が積層された積層物を形成する集積装置40と、積層物を内装材92で包装する包装部90と、当てボール62の含水率を積層物の状態で検出する含水率検出部80とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は平版印刷版の加工方法及び装置に係り、特に平版印刷版を積層して包装するための平版印刷版の加工方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の製版法(電子写真製版法を含む)では、製版工程の自動化を容易にすべく、感光性印刷版や感熱性印刷版等の平版印刷版が広く用いられている。平版印刷版は、一般にシート状又はコイル状のアルミニウム板等の支持体に、例えば、砂目立て、陽極酸化、シリケート処理、その他化成処理等の表面処理を単独又は適宜組み合わせて行い、次いで、感光層又は感熱層の塗布、乾燥処理を行った後に所望のサイズに切断されることにより製造される。製造後の平版印刷版は、露光、現像処理、ガム引き等の製版処理が行われ、印刷機にセットされる。そして、印刷機にセットされた平版印刷版にインクが塗布され、これが転写されることにより紙面に文字、画像等が印刷される。
【0003】
ところで、製造された平版印刷版は厚さ方向に積層された後、防湿性の内装紙に包装され、さらに外装箱に収納されて荷扱いされる。その際、積層体の上下には保護用厚紙(当てボールともいう)が配置され、この当てボールによって、平版印刷版の湾曲や、外力による変形、損傷等が防止される。しかし、このように包装された平版印刷版であっても、平版印刷版の感光層や感熱層(以下、塗布膜ともいう)の感度が低下するという問題が発生する。これは、包装後に当てボールから発生する水分が塗布膜に影響するためであると考えられる。
【0004】
そこで、積層前の当てボールを所定の温湿度環境下で保存したり、積層前の当てボールの含水率を測定して所定値以下のものだけを使用したりすることが一般的に行われている。また、特許文献1には、積層直前の当てボールを加熱ロールで除湿して含水率を低減させる方法が記載されている。さらに、特許文献2には、当てボールの表面に低密度ポリエチレンをラミネートすることによって、水分の発生を防止する方法が記載されている。
【特許文献1】特開2006−248099号公報
【特許文献2】特開2006−256249号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2は、低密度ポリエチレンを施すために、コストや環境負荷が増加するという問題が生じる。一方、特許文献1は、積層前の当てボールの含水率を低下させるだけであり、包装時の当てボールを確実に所定の含水率以下に抑制することができない場合が生じる。たとえば、包装ラインが一旦停止した場合は、積層してから包装するまでに時間がかかり、当てボールの含水率が変化し、その状態で包装されるおそれがある。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みて成されたもので、包装される保護用厚紙の含水率を確実にコントロールすることができ、且つ、コストや環境負荷の増加がない平版印刷版の加工方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は前記目的を達成するために、積層された平版印刷版の上面および/または下面に保護用厚紙が積層された積層物を防湿性の包装材によって包装する平版印刷版の加工方法において、前記保護用厚紙の含水率が所定値以下であるか否かの検出を前記積層物の状態で行うことを特徴とする。
【0008】
請求項1の発明によれば、保護用厚紙の含水率を積層物の状態で検出するようにしたので、包装直前に正確な含水率を検出することができ、包装時の保護用厚紙を確実に所望の含水率以下に抑えることができる。これにより、包装後の平版印刷版が保護用厚紙の水分によって品質低下することを防止することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は請求項1の発明において、前記含水率を前記保護用厚紙のコーナー部近傍で検出することを特徴とする。請求項2の発明によれば、最も含水率の変化が大きい保護用厚紙のコーナー部近傍で含水率を検出するようにしたので、保護用厚紙の含水率をより正確に測定することができる。
【0010】
請求項3に記載の発明は請求項1または2の発明において、前記保護用厚紙の含水率を非接触式の赤外線センサで検出することを特徴とする。請求項3の発明によれば、非接触式の赤外線センサで保護用厚紙の含水率を検出するようにしたので、検出時に保護用厚紙が損傷することを防止できる。また、赤外線センサを用いたので、平版印刷版として感光性のものを使用した場合にも、平版印刷版が感光することを防止することができる。
【0011】
請求項4に記載の発明は請求項1〜3のいずれか1の発明において、前記含水率の検出値が所定値を超えた保護用厚紙を包装後に選別することを特徴とする。請求項4の発明によれば、含水率が所定値を超えた保護用厚紙を包装後に選別するので、保護用厚紙の含水率が確実に所定値以下の包装体のみを出荷することができ、平版印刷版の劣化を防止することができる。ここで、所定の含水率とは、包装後に保護用厚紙の水分が平版印刷版の塗布膜に影響しないような含水率であり、たとえば8%である。
【0012】
請求項5に記載の発明は請求項1〜3のいずれか1の発明において、前記含水率の検出値が所定値を超えた保護用厚紙を別の保護用厚紙と交換して包装することを特徴とする。請求項5の発明によれば、含水率が所定値を超えた保護用厚紙を別の保護用厚紙と交換して包装するようにしたので、包装される保護用厚紙を所定の含水率以下にコントロールすることができる。ここで、所定の含水率とは、包装後に保護用厚紙の水分が平版印刷版の塗布膜に影響しないような含水率であり、たとえば8%である。
【0013】
請求項6に記載の発明は前記目的を達成するために、積層された平版印刷版の上面および/または下面に保護用厚紙が積層された積層物を形成する積層装置と、前記積層物を防湿性の包装材で包装する包装装置と、を備えた平版印刷版の加工装置において、前記保護用厚紙の含水率を前記積層物の状態で検出する含水率検出装置を前記積層装置と前記包装装置との間に備えたことを特徴とする。
【0014】
請求項6の発明によれば、保護用厚紙の含水率を積層物の状態で検出するようにしたので、包装直前に正確な含水率を検出することができ、包装時の保護用厚紙を確実に所望の含水率以下に抑えることができる。これにより、包装後に保護用厚紙の水分が平版印刷版に悪影響を及ぼすことを防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、保護用厚紙の含水率を積層物の状態で検出するようにしたので、包装直前に正確な含水率を検出することができ、包装時の保護用厚紙を所望の含水率以下に抑えることができる。これにより、包装後の平版印刷版が保護用厚紙の水分によって品質低下することを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面に従って本発明に係る平版印刷版の加工方法及び装置の好ましい実施の形態について説明する。
【0017】
図1は、本実施の形態における平版印刷版の加工装置の構成を示す斜視図であり、シート状の平版印刷版10(以下、PS版10という)の加工ライン100を示している。
【0018】
同図に示すように、加工ライン100の上流側(図1の右上側)には、送出機14が配設されている。送出機14には、予めロール状に巻かれたウエブ12が装着され、このウエブ12が送出機14から順次巻き出される。送出機14から送り出された長尺状のウエブ12はカール矯正された後、合紙18が貼り合わされる。そして、帯電によりウエブ12と合紙18が密着されてノッチャー20に至り、ウエブ12に打ち抜き部が形成される。打ち抜き部が形成されたウエブ12は、裁断加工部22を構成する裁断刃24によって長手方向に連続的に裁断される。なお、裁断刃24は、打ち抜き部の位置でウエブ12の幅方向へ移動できるようになっており、ウエブ12の連続裁断を行いながらウエブ12の裁断幅を変更することができる。
【0019】
所定の裁断幅に裁断されたウエブ12は、指示されたタイミングで走間カッタ30により切断される。これにより、設定されたサイズのPS版10が製造される。このPS版10は、コンベア32によって集積装置40へ送られる。
【0020】
集積装置40の近傍には、裁切断部39が配設されている。この裁切断部39では、段ボールなどの保護用厚紙62(以下「当てボール62」という)が積層体60のサイズに合わせて裁切断される。裁切断された当てボール62は、当てボール乾燥部70において加熱ローラ72上を搬送されて乾燥される。加熱ローラ72の後段には、不図示の含水率センサ(たとえば非接触式の赤外線センサ)が設けられ、この含水率センサによって当てボール62の含水率が測定される。そして、含水率センサの測定値が所定値以下となるように、加熱ローラ72の表面温度や搬送速度が制御される。たとえば、当てボール62の含水率が8%以下、好ましくは7%以下になるように、加熱ローラ72の表面温度が約100〜400℃に制御され、さらに加熱ローラ72上を約5〜90秒間かけて搬送されるように制御される。なお、当てボール62の加熱手段は加熱ロールに限定するものではなく、温風を当てボールに吹き付けたり、光を照射したりしてもよい。また、当てボール乾燥部70を設ける代わりに、当てボール62を所定の温湿度で管理する乾燥室を設けてもよい。上記の如く所定の含水率以下に制御された当てボール62は、当てボール供給部75によって集積装置40に送られる。
【0021】
集積装置40では、上記の如く送られたPS版10と合紙18が所定枚数積み重ねられて積層体60が形成されるとともに、その積層体60の少なくとも上面に当てボール62が積層される。当てボール62が積層されることによって、積層体60を構成するPS版10の湾曲や、外力による変形、損傷等が防止される。以下、PS版10、合紙18、当てボール62を積層したものを積層物という。なお、当てボール62は、積層体60の上面だけでなく、下面にも積層するようにしてもよく、また、下面だけに積層するようにしてもよい。
【0022】
積層物は、搬送部35を経て含水率検出部80に送られ、さらに包装部90に送られる。含水率検出部80は、包装部90の直前に設けられており、この含水率検出部80において、包装直前の当てボール62の含水率((=当てボール62の水分質量/当てボール62の全体質量)×100)がセンサ82によって検出される。センサ82としては、当てボール62に非接触で含水率を測定できるものが好ましく、たとえば非接触式の赤外線センサ(株式会社チノー製 IRMA1100等)が用いられる。このセンサ82は、対象物(当てボール62)に赤外線を照射し、その反射光量を測定することで、対象物の吸光度(吸収量)を計測し、その成分量(含水率)を求めるものであり、具体的には、光源ランプから照射された光を光学フィルタにて波長選別して照射し、対象物によって吸収された赤外線を再度集光し、電気信号に変換して吸光度を求め、さらにサンプルテストから求めた検量線データに基づいて含水率を求めるものである。
【0023】
図2に示すように、センサ82は、当てボール62のコーナー近傍の上方位置に設けられており、二点鎖線Aで示す部分の含水率が検出される。したがって、センサ82で検出することによって、当てボール62のコーナー近傍の含水率が検出される。そして、当てボール62の含水率が所定値(たとえば8%)以下であるOK品と、所定値を超えたNG品との判別が行われる。この含水率データは、後述の包装体選別部96に送信される。
【0024】
なお、本実施の形態では、一カ所のコーナー近傍だけで含水率を検出する例で説明したが、複数箇所のコーナー近傍(すなわち、二点鎖線A〜Dのいずれか2〜4箇所)で検出することがより好ましい。この場合は、その複数箇所の全てにおいて水分率が所定値(たとえば8%)以下であればOKとなる。また、含水率の検出箇所は、コーナー近傍に限定するものではなく、中央部分等で検出するようにしてもよい。
【0025】
含水率検出部80で当てボール62の含水率が測定された積層物は、包装部90に送られる。そして、包装部90において、防湿性の内装材92によって包装され、さらに外装材94によって包装される。
【0026】
包装部90の後段には、包装体選別部96が設けられる。包装体選別部96では、OK品の当てボール62を含む包装体と、NG品の当てボール62を含む包装体の選別が行われる。OK品の当てボール62を含む包装体は、所定の搬送形態(たとえば自動製版用のスキッド41に積まれる形態等)になった後、出荷される。一方、NG品の当てボール62を含む包装体は、搬送部98によってNG品集積部(不図示)に送られる。NG品の当てボール62を含む包装体の取り扱いは、特に限定するものではないが、たとえば、包材を開封して当てボール62を交換した後、再包装して出荷してもよい。また、包装形態および搬送形態は上述したものに限定されるものではなく、たとえば、合紙18やその他の包装材料を省略してもよい。
【0027】
次に上記の如く構成された平版印刷版の製造装置の作用について説明する。
【0028】
含水率が所定値(8%)を超えた当てボール62を用いて包装体を形成した場合、包装後のPS版10の塗布膜は当てボール62の水分の影響を受けて劣化する。このため、含水率が所定値以下の当てボール62を用いて積層物を形成したり、積層物の搬送ラインを所定の温湿度に制御したりすることが一般におこなわれている。
【0029】
しかし、搬送ライン全体を均等な温度湿度に制御することは困難であるという問題がある。また、積層前の当てボール62の含水率を所定値以下にコントロールしても、包装時には当てボール62の含水率が変化することがある。たとえば、何らかの原因によって製造ライン100を停止した場合、積層されてから包装されるまでの時間が長くなり、当てボール62の含水率が変化することがある。このため、従来は、包装時の当てボール62を所定の含水率以下に確実に制御することができず、PS版10の塗布膜の品質が劣化することがあり、この品質劣化は包装を開封しなければ分からないという問題があった。
【0030】
そこで、本実施の形態では、含水率検出部80によって、当てボール62の含水率を包装直前の積層物の状態で検出し、さらにNG品の当てボール62を含む包装体を包装体選別部96によって取り出している。したがって、出荷された包装体には、所定の含水率以下の当てボール62だけが含まれており、包装後のPS版10の塗布膜が当てボール62の水分によって劣化することを確実に防止することができる。
【0031】
このように本実施の形態によれば、当てボール62の含水率を積層物の状態で検出するようにしたので、含水率が所定値以下の当てボール62を用いた包装体のみを確実に出荷することができる。よって、当てボール62の水分によって劣化することのない高品質のPS版10のみを出荷することができる。
【0032】
また、本実施の形態では、含水率が最も変化しやすい当てボール62のコーナー近傍で含水率を検出するようにしたので、当てボール62の含水率をより正確に検出することができる。よって、より確実に当てボール62の含水率をコントロールすることができる。
【0033】
なお、上述した実施形態では、NG品の当てボール62を包装後に選別して取り出すようにしたが、これに限定するものではなく、包装前に取り出して交換するようにしてもよい。すなわち、含水率検出部80と包装部90との間に、NG品の当てボール62を取り除く厚紙除去部と、取り除いた当てボール62の代わりに所定の含水率以下で管理された当てボール62を新たに積層する再積層部とを設けてもよい。この場合、包装部90に送られる積層物は全て当てボールが所定の含水率以下であり、包装後の平版印刷版の塗布膜の劣化を確実に防止することができる。
【0034】
また、上述した実施形態は、NG品の当てボール62を取り出すようにしたが、これに限定するものではなく、温風を当てるなどの乾燥工程によって段ボールを除湿するようにしてもよい。
【0035】
さらに、上述した実施形態は、PS版10への影響が大きい上面側の当てボール62の含水率を検出するようにしたが、これに限定するものではなく、下面側の当てボール62の含水率を検出するようにしてもよい。その場合、搬送部36であるベルトコンベアのベルトに測定用の孔を開け、その孔の下方に赤外線センサを上方に向けて配設するとよい。この場合にも、当てボール62の含水率を包装直前に検出することができるので、包装時の当てボール62の含水率を補償することができ、包装後のPS版10の塗布膜が当てボール62の水分によって劣化することを防止することができる。
【0036】
以下、本実施形態で使用されるウエブ12、PS版10について説明する。
【0037】
ウエブ12には、アルミニウム製の支持体上にあらかじめ感光層(又は感熱層)が形成されており、この感光層(又は感熱層)が形成された面が、PS版10の画像形成面(ウエブ12の表面)となっている。ウエブ12は、加工ライン100によって加工されて所望のサイズとされることで、印刷に使用可能なPS版10となる。
【0038】
また、支持体としてのアルミニウム板は、例えば、JIS1050材、JIS1100材、JIS1070材、Al−Mg系合金、Al−Mn系合金、Al−Mn−Mg系合金、Al−Zr系合金、Al−Mg−Si系合金等を適用し得る。メーカにおけるアルミニウム板の製造過程では、上記規格に適合するアルミニウムの鋳塊を製造し、このアルミニウム鋳塊を熱間圧延した後、必要に応じて焼鈍と呼ぶ熱処理を施し、冷間圧延により所定の厚さとされた帯状のアルミニウム板に仕上げる。
【0039】
PS版10は、長方形の板状に形成された薄いアルミニウム板の片面に、塗布膜(感光性印刷版の場合には感光層、感熱性印刷版の場合には感熱層)を塗布して形成されている。この塗布膜に、露光、現像処理、ガム引き等の製版処理が行われ、印刷機にセットされ、インクが塗布されることで、紙面に文字、画像等が印刷される。
【0040】
なお、PS版10(ウエブ12)の具体的構成は特に限定されないが、例えば、ヒートモード方式およびフォトン方式のレーザ刷版用の平版印刷版とすることによって、デジタルデータから直接製版可能な平版印刷版とすることができる。
【0041】
そして、塗布膜が塗布された面を画像形成面といい、この反対側の面、すなわち塗布膜が塗布されていない面を非画像形成面という。なお、本実施形態のPS版10は、印刷に必要な処理(露光や現像等)が施される前段階のものであり、場合によっては平版印刷版原版あるいは平版印刷版材と称されることもある。
【0042】
また、PS版10は、感光層又は感熱層中の成分を種々選択することによって、種々の製版方法に対応した平版印刷版とすることができる。本発明の平版印刷版の具体的態様の例としては、下記(1)〜(11)の態様が挙げられる。
【0043】
(1)感光層が赤外線吸収剤、熱によって酸を発生する化合物、および酸によって架橋する化合物を含有する態様。
【0044】
(2)感光層が赤外線吸収剤、および熱によってアルカリ溶解性となる化合物を含有する態様。
【0045】
(3)感光層が、レーザ光照射によってラジカルを発生する化合物、アルカリに可溶のバインダー、および多官能性のモノマーあるいはプレポリマーを含有する層と、酸素遮断層との2層を含む態様。
【0046】
(4)感光層が、物理現像核層とハロゲン化銀乳剤層との2層からなる態様。
【0047】
(5)感光層が、多官能性モノマーおよび多官能性バインダーとを含有する重合層と、ハロゲン化銀と還元剤を含有する層と、酸素遮断層との3層を含む態様。
【0048】
(6)感光層が、ノボラック樹脂およびナフトキノンジアジドを含有する層と、ハロゲン化銀を含有する層との2層を含む態様。
【0049】
(7)感光層が、有機光導電体を含む態様。
【0050】
(8)感光層が、レーザー光照射によって除去されるレーザー光吸収層と、親油性層および/または親水性層とからなる2〜3層を含む態様。
【0051】
(9)感光層が、エネルギーを吸収して酸を発生する化合物、酸によってスルホン酸またはカルボン酸を発生する官能基を側鎖に有する高分子化合物、および可視光を吸収することで酸発生剤にエネルギーを与える化合物を含有する態様。
【0052】
(10)感光層が、キノンジアジド化合物と、ノボラック樹脂とを含有する態様。
【0053】
(11)感光層が、光又は紫外線により分解して自己もしくは層内の他の分子との架橋構造を形成する化合物とアルカリに可溶のバインダーとを含有する態様。
【0054】
特に、近年では、レーザー光で露光する高感度感光タイプの塗布膜を塗布した平版印刷版や、感熱タイプの平版印刷版が使用されることもある(例えば上記した(1)〜(3)の態様等)。
【0055】
なお、ここでいうレーザー光の波長は特に限定されず、例えば、
(a) 波長域350〜450nmのレーザー(具体例としては、波長405±5nmのレーザーダイオード)。
【0056】
(b) 波長域480〜540nmのレーザー(具体例としては、波長488nmのアルゴンレーザー、波長532nmの(FD)YAGレーザー、波長532nmの固体レーザー、波長532nmの(グリーン)He−Neレーザー)。
【0057】
(c) 波長域630〜680nmのレーザー(具体例としては、波長630〜670nmのHe−Neレーザー、波長630〜670nmの赤色半導体レーザー)。
【0058】
(d) 波長域800〜830nmのレーザー(具体例としては、波長830nmの赤外線(半導体)レーザー)。
【0059】
(e) 波長1064〜1080nmのレーザー(具体例としては、波長1064nmのYAGレーザー)。
【0060】
等を挙げることができる。これらのうち、例えば、(b)及び(c)の波長域のレーザー光はいずれも、上記した(3)又は(4)の態様の感光層又は感熱層を有する平版印刷版の双方に適用可能である。また、(d)及び(e)の波長域のレーザー光はいずれも、上記した(1)又は(2)の態様の感光層又は感熱層を有する平版印刷版の双方に適用可能である。もちろん、レーザー光の波長域と感光層又は感熱層との関係はこれらに限定されない。
【0061】
PS版10の形状等は特に限定されず、例えば、厚み0.1〜0.5mm、長辺(幅)200〜1650mm、短辺(長さ)200〜3150mmのアルミニウム板の片面に感光層又は感熱層が塗布されたもの等とすることができる。
【0062】
使用される合紙18としては平版印刷版に用いられる一般的なものでよいが、代表例を下記に示す。合紙18としても、PS版10の塗布膜を確実に保護できれば、その具体的構成は限定されないが、例えば、木材パルプを100%使用した紙や、木材パルプを100%使用せず合成パルプを使用した紙、及びこれらの紙の表面に低密度ポリエチレン層を設けた紙等を使用できる。
【0063】
特に、合成パルプを使用しない紙では、材料コストが低くなるので、低コストで合紙18を製造することができる。より具体的には、漂白クラフトパルプから抄造した坪量20〜55g/m2、密度0.7〜0.85g/cm3、水分4〜6%、ベック平滑度10〜800秒、PH4〜6、透気度15〜300secの合紙が挙げられるが、もちろんこれに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本実施の形態の平版印刷版の加工装置の構成を示す斜視図
【図2】含水率の測定位置を示す斜視図
【符号の説明】
【0065】
10…PS版、12…ウエブ、14…送出機、18…合紙、20…ノッチャー、22…裁断加工部、24…裁断刃、30…走間カッタ、32…コンベア、39…裁切断部、40…集積装置、60…積層体、62…当てボール、70…当てボール乾燥部、72…加熱ローラ、75…当てボール供給部、80…含水率検出部、82…センサ、90…包装部、92…内装材、94…外装材、96…包装体選別部、98…搬送部、100…加工ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された平版印刷版の上面および/または下面に保護用厚紙が積層された積層物を防湿性の包装材によって包装する平版印刷版の加工方法において、
前記保護用厚紙の含水率が所定値以下であるか否かの検出を前記積層物の状態で行うことを特徴とする平版印刷版の加工方法。
【請求項2】
前記含水率を前記保護用厚紙のコーナー部近傍で検出することを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版の加工方法。
【請求項3】
前記保護用厚紙の含水率を非接触式の赤外線センサで検出することを特徴とする請求項1または2に記載の平版印刷版の加工方法。
【請求項4】
前記含水率の検出値が所定値を超えた保護用厚紙を包装後に選別することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の平版印刷版の加工方法。
【請求項5】
前記含水率の検出値が所定値を超えた保護用厚紙を別の保護用厚紙と交換して包装することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1に記載の平版印刷版の加工方法。
【請求項6】
積層された平版印刷版の上面および/または下面に保護用厚紙が積層された積層物を形成する積層装置と、前記積層物を防湿性の包装材で包装する包装装置と、を備えた平版印刷版の加工装置において、
前記保護用厚紙の含水率を前記積層物の状態で検出する含水率検出装置を前記積層装置と前記包装装置との間に備えたことを特徴とする平版印刷版の加工装置。

【図1】
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【図2】
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